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第2回 コンテンツ専門調査会 議事録


1.日 時:15年11月13日(木)8:30〜10:30
2.場 所:霞が関ビル東京會舘 エメラルドルーム
3.出席者:
【委 員】牛尾会長、岡村委員、角川委員、久保委員、久保利委員、熊谷委員、里中委員、重延委員、関根委員、浜野委員、日枝委員
【参考人】河口東京大学大学院教授、杉山デジタルハリウッド株式会社取締役学校長
【事務局】森口事務局次長
4.議 事:
(1) 開会
(2) 岡村委員ご発言
(3) 参考人からの意見聴取
(4) 参考人への質疑応答
(5) 自由討議
(6) 閉会


○牛尾会長 定刻よりも少し早いようでありますけれども、全委員そろいましたので、皆様の貴重な時間を有効に使うために、ただいまから「コンテンツ専門調査会」第2回会合を開催したいと思います。
 本日は前回に引き続き、早朝にもかかわらずお集まりを頂戴し、誠にありがとうございました。
 まず、前回御欠席されました岡村委員から、コンテンツ振興に関する御意見、前回ペーパーで配りましたけれども、生の声で今日は岡村委員から冒頭にお話を頂戴したいと思います。

○岡村委員 東芝の岡村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 前回、既にペーパーでお出しをしておりますので、簡単にお話をさせていただきますと、2つの問題について提起をさせていただきました。
 1つは、言うまでもなく日本の産業構造そのものを変えるために、このコンテンツ業を振興するという、極めて重要なミッションを持っている調査会だと認識をしておりますけれども、これを推進していくために、それぞれの団体が余りにも多過ぎるという状況の中で、すべての制作者、流通、送配信、あるいは私が所属しております電機メーカーを含めた技術的にサポートする体制、この辺が一本化をして、この任に当たる必要があるだろうと思っておりまして、是非推進母体を一本化するということを最初にお願いしておきたいと思います。
 私はデジタル・コンテンツ協会のリーダーを今、務めております。いろいろ前回の会合で御議論があった内容だと理解をしておりますけれども、力及ばずながらその推進母体として活動を続けておりまして、そういう意味で隠れた支持団体もあるということを御認識していただいて、一本化をして進めなければいけないということをひとつお願いをしておきたいと思います。
 もう一つは、言うまでもないことですけれども、技術の発展に伴いまして、コンテンツのデジタル化というのが21世紀のコンテンツの必須の課題だと。デジタル化されるということは、当然ネットワーク化されるということで、その間で起こってくるセキュリティーの問題について、あるいは著作権の保護の問題についてのデジタル化、あるいはネットワーク化における著作権の保護が極めて重要な問題になってきている。デジタル化という意味でとらえますと、単体ではある意味で保護がなされる技術が確立しているわけですが、これが一挙にインターネットに乗るというネットワーク化された中で、いかにしてセキュリティーを確保するかということが非常に大きな問題になるので、これは極めて電機屋としての技術的な問題に入ってくるわけですけれども、この問題の解決なくして恐らく発展はないと思います。
 したがって、この国際標準となる技術を日本から発信するという意味でも、非常に重要なことで、技術的なレベルは日本は非常に高いものがありますので、是非そういうこと通して国際展開へのリーダーシップを日本が取る。しかも、これは電機屋だけでできる話ではございませんので、是非ここに関わる産業は挙げてこの問題に取り組む必要があるということ、2点だけお願いをしておきたいと思います。
 よろしくお願いします。

○牛尾会長 どうもありがとうございました。
 それでは、次の議題に移らせていただきます。今の岡村委員の発言に対する御意見等は、後の討議のところで御一緒にお願いしたいと思います。
 本日は前回申し上げたとおり、コンテンツ人材に関する参考人としてお二人の方にお越しいただいておりますが、その前にコンテンツの人材の養成についての事務局において準備しました資料1につきまして、事務局から簡潔に御説明をお願いしたいと思います。

○森口次長 それでは、お手元の資料1をご覧いただきたいと思います。
 「コンテンツ人材養成について」という紙でございます。
 1ページめくっていただきまして2ページ、「1.コンテンツ人材の現状」と「コンテンツ人材の養成のための方策」という、大きな2つのポイントで整理をさせていただいております。
 3ページ目をご覧いただきますと、「コンテンツ人材の現状」ということで、これからいろいろ用語が出てくると思います。プロデューサー、エンタメロイヤー、ディレクター、クリエイターという用語が出てくると思いますが、そういう方々がどういう仕事をされているのかということを、映画を題材として整理したものでございます。
 浜野委員の著書を参考にさせていただいております。
 全体のフェーズとして左側の企画開発からプリプロダクション、制作、ポストプロダクション、マーケティング、流通・公開とこういったフェーズがございまして、それぞれでいろいろな仕事があるわけでございます。
 この草色で書いてある部分がプロデューサーがする仕事ということでございます。企画開発、プリプロダクション、あるいは後半のマーケティング、流通・公開というところが主体でございます。
 一番下の全体の「プロジェクトマネジメント」という辺りがプロデューサーの仕事かと思います。その中でも、濃い青色で囲ってある部分が幾つかございますが、こういうとろはエンタメロイヤーがサポートする部分ということでございます。
 真ん中の黄色い部分、これはいわゆるディレクター、その中でも薄いピンク色になっておりますものがクリエイターの仕事というイメージでございます。
 次の4ページでございますが、それぞれの人材についての課題を書いてございます。最初の上の方でございますけれども、「企画開発」「プロジェクトマネジメント」部門におきましては、ここに現状が書いてございますように、契約書の慣行、権利処理意識といったものが業界全体に乏しくて、ビジネスとして未成熟である。
 あるいは制作現場の管理、法的処理、資金調達・管理、戦略といったものが不十分である。
 また、こういう分野の人材のサクセス・ストーリーが不足しているという現状によりまして、真ん中にございますが、プロデューサー、エンタメロイヤーが不足をしている。その原因として、育成機関が不足しておるということがあろうかと思います。
 数字的に言いますと、ここにございますように、アメリカでは映画、映像、テレビというものに関連する学部が600 校ございます。大学の数では日本はアメリカの半分でございますけれども、現状では、ここにございますように、そういったものは約30校、これも何らかの科目があるというような、ほぼかすったようなものでも30校ということですから、実際にはもっと少ないというイメージかと思います。
 また、エンタメロイヤーについて言いますと、アメリカでは約4,000 人、自己申告ベースでインターネットサイトで調べるとございますが、日本では10名程度と。これはどういう段階までの方をエンタメロイヤーと言うかにもよりますが、いわゆる著名な方ということであると10名程度ではないかと思います。
 制作部門、クリエイターの部門では優れた若手が脚光を浴びて制作機会が与えられるという仕組みが乏しく、また、新しい技術の開発がアメリカ主導になっているということかと思います。その結果、人材発掘システム、新技術のコンテンツ制作現場の導入といったものが不十分であって、それがこういうことに結び付いているということかと思います。 5ページをご覧いただきますと、それを解決するための具体的な方策、これは関係の方々からいろいろ意見を伺ったものをまとめたもので、今後の議論の御参考にしていただきたいと思います。
 1つは、コンテンツの専門職大学院というものを整備してはどうかということでございます。ここにございますように、産業界、関係業界とも連携を取りながら、コンテンツ専門職大学院というものを整備していくということが重要ではないかということで提案させていただいております。
 6ページをご覧いただきますと、個々の人材についてのいろいろな研修、あるいは交流機会の確保ということが重要ではないかと思います。
 一番目は、日本でそういう制度が不十分である以上は、やはり海外留学といったものも拡充していく必要があるのではないかということで、関係各省、幾つかの留学制度等ございますが、それを拡充していく必要があるのではないかというのが1点目でございます。 2番目、特にエンタメロイヤー等につきまして、いわゆる弁護士の方々とエンタメ業界といったものの出会いの場が少ない。それを設定していくべきではないかということでございます。黄色い四角の中に3つほど書いてございますが、エンタメビジネス関係者と、弁護士、研究者との共同の研究会等の実施の奨励。
 あるいは、弁護士会等が主催する弁護士会向けのエンタメ関係の講習会、研修会。
 逆にエンタメ業界が主体となって弁護士の方々をいろんな場にお招きするといったことを奨励する必要があるのではないか。勿論、全体の弁護士、特に知的財産に関わる弁護士の数が少ないというのが最大問題ですから、それを増やしていくということも最大の課題であろうかと思います。
 7ページでございますが、クリエイターに関しまして、やはり才能ある者を発掘していくということが非常に重要であろうということでございます。真ん中のところにございますように、海外で有名な賞を取って海外で活躍される日本人は結構おられるわけでございます。そういった方々は、海外で花開いたわけですが、国内においても埋もれた人材というのはたくさんいるのではないかということで、やはり一番下に書いてございますように、各種コンペ、あるいはイベントの充実。ついせんだって行われました東京国際映画祭、あるいはメディア芸術祭といったものの充実を図っていく必要があるのではないかと思っております。
 また、優れた若手を顕彰する制度の創設・充実も必要なのではないかと思っております。 最後の8ページでございますけれども、「新技術の開発と活用」ということで、質の高いコンテンツを生み出すためには、最先端の技術を使っていく必要がございます。御承知のように、映画「マトリックス」のように、CG技術が非常にアメリカでも採用されているわけでございますが、そういう研究体制、教育体制といったものがアメリカでは整備されております。一方我が国では、そうした機関がほとんどないという現状でございますので、例えばMITメディアラボのようなものを我が国においても、最先端映像技術を研究教育する機関を整備する。
 あるいは、最先端コンピュータ技術とコンテンツ制作との融合といったものが重要になるのではないかということで、提案させていただいております。
 議論の御参考にしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○牛尾会長 ありがとうございました。時間の関係上、大変急いで御説明を頂戴しましたが、なかなか充実した問題提起であったと思います。
 では、参考人の方々を逐次御紹介させていただきます。
 初めに、東京大学大学院情報学環の河口洋一郎教授からお話を頂戴したいと思います。10分くらいで問題提起をお願いします。参考人の経歴等につきましては、資料2に入っておりますので、御参照願いたいと思います。
 では、早速でありますが、河口参考人、お願いいたします。

○河口参考人 河口です。おはようございます。こんな早く起きたのは久しぶりで、年に一回の入試のときしかないような気がするんですが、朝5時に起きました。
 今、森口次長の方からいろいろ詳しい話が出たんで、こちらは具体的に、私の立場からいろいろ参考的にやりたいと思います。

(スライド)
 東大に私が来たのは98年からなんですけれども、その前から吉川前総長たちが東大に芸術的な研究施設をつくらないと、このままでは国は滅ぶと、冗談なのかよく言っていたんです。東大でも開闢以来、百数十年間、そういうクリエイティブなものは全部避けてきていたようです。なぜ避けたかというと、論理的な世界でしか計れないもの以外は評価するのが容易でない。エモーショナルな感性の世界ははかり切れないところがあるんで、避けようということがあったようです。
 そうは言っても、21世紀の今日の議題になっているコンテンツという芸術性の高いものが産業界にも非常に影響するということで、無視できなくなってきています。
 今、私たちが関わっている中で、映像産業の中は、先ほどおっしゃられたようにハリウッド、アメリカ西海岸が中心として世界を席巻しておりますけれども、これに関して、日本が本当に先端映像の研究開発レベルでやっているかというと、あまりやっていないんです。高度な映像の研究開発という意味では、まだまだ非常に立ち遅れている気がします。これまで、美大や芸大は、多くのアーティストやデザイナーを輩出してきました。ところが、21世紀のデジタル社会では、美大や芸大では、太刀打ちできないものが多く出てきました。

(スライド)
 そこで、気になるのは国際社会で、ネット時代だと、国境がなくなってきたときに、欧米とかアジアの中で、これからの21世紀の日本独自の最先端映像技術を使った文化・芸術が生み出せる技術開発ができるかどうか。生み出せなければ、多分どんどん転落していくだろうと予測します。
 私が前にヨーロッパなどでCGの作品などで、いくつかグランプリを受賞したときに、テレビ局のインタビューで面白いことを言われたのは、冗談で「日本はそんなに作品で頑張らなくてもいいから」と、なぜですかと言ったら、日本は能、歌舞伎とか伝統芸能があるし、ビデオとかいろんな映像機器が普及しているので、それだけで十分なんです。ヨーロッパを中心としたところで最先端の芸術をやるから、日本は映像機械だけつくっていればいいんだよということで、パーティーのレセプションでインタビュアーから冗談を交えて言われてびっくりしました。そういう感じで、日本は欧米から見たら先端の芸術には出てきて欲しくない。せいぜい伝統芸能、奈良・京都のような観光地を保存しておけば、あとはビデオデッキとかをつくっていればそれでいいからということを言われてすごくショックだったんです。そうは言っていられない!ということで、独自の先端映像文化を出さなきゃいけないと。

(スライド)
 基本的には先ほどちょっと申し上げたように、今、日本ではゲームとかアニメーションとか、携帯ネット関係が結構進んではいるんですけれども、これを実際にアート系、文化・芸術に応用しているかというと、必ずしもそうではないところが多くて、去年などもSIGGRAPH国際大会で、インタラクティブ・メディア等を中心とした発表等もあったんですけれども、今年は論文が運よく1人か2人通ったんですけれども、去年などは日本からはグラフィックスに関する最先端の科学研究開発の論文が全滅でゼロだったんです。その代わり中国などは3本か4本通ったんです。韓国も通っているんです。台湾も通っているんです。
 日本がアジアで映像の科学技術ではトップかと思ったら、実はもう抜かれている。そういう体系的な教育をやってないんです。時代に対応したことをやっていないということですごく危機感を感じて、まだ国の力としては日本がアジアで進んでいるみたいですけれども、実際に研究開発の論文のレベルでは追い抜かれつつあるというのは非常にショックなことです。
 韓国のソウル大学などでも、デザインとかアートに関してすごい力を入れ始めました。中国では、北京大学は文系なので、法律とか経済をやっていますけれども、理工系のトップの清華大学なども同じように、ニューメディア、いわゆる多媒体、マルチメディアをすごい力を入れておりまして、上海などでも、最近すごいことを始めました。日本だったらトロンとかユビキタスのことをいろいろ頑張っているんですけれども、実はアジアのほかの国ではそれを応用した、ユビキタス・アートというコースをつくったり、ユビキタスを使ったデザインというコースをどんどん半年くらいで新設しているわけです。それを独立した大学にしている。これは非常に脅威的で、一方で東大を見ていると、そういう体系的なのがなされていないということは、人材育成が全くゼロに近い感じで教育していないんです。これは非常に危機感を感じています。美大や芸大ではできないものにも、国としては、着手しなければならなくなってきています。

(スライド)
 このようなことの中で、特に国際大会では日本の場合はバーチャル・リアリティーのインターフェースの技術とかロボットとかバイオ系、ゲノムというのは非常に進んでいる方なんですけれども、私はたまたま東大にいて考えるのは、アジアの中でも国際的に最も日本がデリケートに、精彩に進んでいるサイエンス。この世界を文化・芸術として価値を高めるためにどうしたらいいかと考えております。例えば具体的に東大だったら理学部とか工学部にはものすごい優秀な研究論文がいっぱいあるんです。ノーベル賞級にトライしているような、あれを実際に映像のコンテンツとして芸術的な価値を与えるにはどうしたらいいか、すごい興味があります。当然大学では普通の先生はみんな論文にしてしまうんです。論文ということは、要するに論理的に書くということです。
 ああいうすごいトップレベルの繊細な科学・技術論文を表現のために飛躍させる、私は飛躍関数すると言うんですが、飛躍するというのは表現のことなんですけれども、サイエンスの論理の世界に飛躍関数を入れて、そこからアートやデザインとしての価値を与える。これから実際に産業界と循環させるとによって、日本の高度なサイエンスやテクノロジーのことを論文だけに終わらせずに、それを文化・芸術としてアートに転用して、それを実際に産業界と循環させながら最高レベルの高度な水準の世界をつくり上げることによって、一気にほかの諸国に比べて、物すごいハイレベルのことができるんではないかという気がしています。
 例として、江戸時代に鎖国したときに出た浮世絵、山水画とか伝統的な絵画とか彫刻がありますね。あれは源流は中国なんですけれども、考えてみると、鎖国したときにすごい自己進化して、いいレベルでいったのが浮世絵で、地球の反対側のブラジルでも、北斎、歌麿、広重というのは結構知っているんです。向こうの大人でも子どもでもどこかで見たことがある。あれは自己進化系の中でも日本独自の文化としてものすごい高度に持ち上がったレベルなんですけれども、あのとき描くということと、彫る、刷る。要するに和紙に刷るわけです。それを流通させる。これは完璧に超一級のレベルで自己進化した例だと思うんです。あれは描くのも、刷るのも、流通させること自体が既に世界一級の独自の文化をつくり上げたんですけれども、ああいうことを考えると、やはり日本のデリケートな、繊細なテクノロジーをアートに利用するというのを根本的に考えると、非常に21世紀も可能性があると思うんです。それは是非ここでもう一回やらなければ、文化が滅びると国の産業も滅びるとよく言いますから、是非これを提案したい。

(スライド)
 科学の場合は論理の世界ですから、ひたすら論文化していくんです。産業界とこの世界が本当に循環しているか。これを実際に大学の研究レベルでもものすごく循環させた方がいいんじゃないかということで、サイエントとアート・産業界とを三巴に練っていく、醸造していく。お酒、アルコール、ワインをつくるようにですね。こういう流れをつくったら非常に面白い高度なコンテンツができるんじゃないかという気がしています。

(スライド)
 東大も含めてそうなんですけれども、ものすごい高度なレベルでのコンテンツの教育はまだやっていない。先ほど入った中国のトップの清華大学とか、韓国のソウル大学などはそれをすでにやっているわけです。これが今すごい大変なことで、あと3年、5年すると、人材的には完璧に抜かれる可能性があります。だから、先ほど言ったように、これを是非やって欲しいなと思います。

(スライド)
 私の立場としては、コンテンツをつくる側と輩出する側との新しい研究組織をやらないといけないんですけれども、ちなみに私の知っているアジア各国の先生などは、これに関して国家予算的にどんどん投下されてやっているということを聞いて、来月も上海で国際会議をやって、アジアのコンテンツ会議をやりますが、非常に活発であるけれども、ふと自分の国を見ると、それがまだ動いていないということが非常に悲しい。
 ここでちょっとCG映像を紹介します。
 私が実際に今CGをやっているのは、生命とは何か、自己組織化系、複雑系のことです。これからもなるべくバーチャルな空間での宇宙とか深海とか生物の発生とか、ああいういろんなサイエンス系の論文を徹底的に形象化するにはどうしたらいいかと考えておりまして、これなども画像としては、この後に出てくる増殖系のものが、自分で自分の色を付けていくような、物質そのものが自分で自分の色を決めるにはどうしたらいいかとか、いわゆるベクトル・エネルギーを色に変化させると、前もってデザイナーが色を決めなくても、自らどんどん、これはたまたまカラフルにやったんですけれども、これはわび・さびの色にもできるし、雪の色にもできるんですけれども、いわゆる生き物のように芸術生命体としてアート作品をつくることもできるわけです。
 私が今考えているのは、高度なレベルでのサイエンスの世界とかを、文化・芸術としての映像コンテンツに転用して、そこから更に産業界にいろんな新しい新素材を開発するところに持っていって、そこから循環しながら人材育成に持っていってどうかなということをすごい感じているところです。
 あとこれから重要なことは、サイエンスとか科学技術の中に、アート的な価値を与えるということは、エモーショナルな、情感的な世界をどんどん入れながらやっていかないとシミュレーションのみになってしまうんで、シミュレーションから映像芸術に価値を高めるにはどうするかということで、非常に重要なテーマがあると思うんです。
 ただ、ノーベル賞級の研究成果がいっぱい眠っているわけなんです。アメリカの西海岸とかヨーロッパ、アジア全体の中でやっていることの後を追うのではなくて、日本独自の文化をどうやってつくり出すかということを、さっき浮世絵を例に出したんですけれども、日本の最も誇れるものは徹底的に伸ばすということで映像コンテンツの方に持っていけば、非常に未来は明るくなると思います。
 時間が来たのでここで終わります。早口で申し訳ございませんでした。

○牛尾会長 大変興味深い問題提起がありましたが、質疑は次のデジタルハリウッド株式会社の杉山知之取締役学校長の後にまとめて議論したいと思いますので、次は杉山参考人からお話を頂戴したいと思います。


○杉山参考人 おはようございます。このような機会を与えていただいて大変感謝しております。私は94年からデジタルハリウッドというコンテンツ・クリエイターを育成するという事業を会社としてやっておりまして、そういった観点から私が経験してきたことを、数字等を踏まえて、プレゼンテーションをさせていただきたいと思います。
 題名としては「デジタルコンテンツ業界で、今後、ますます必要とされるプロデューサー、ディレクター」ということですけれども、いろんな業界の予想が出ております。いろいろの資料を見てつくっておりますけれども、2001年の例では、インターネットコンテンツ・ビジネスというのはまだ2,000 億円ちょっとということで、デジタルコンテンツということでも1兆8,000 億円。コンテンツ全体で考えればメディア全般を入れますので、11兆近くあるというところです。そして、インターネットコンテンツに関しては、実はブロードバンド等々ございまして、どんどん伸びるということになっておりまして、平成19年ということであれば、「情報通信白書」によれば、2007年には6,000 億円近くになると。2007年といっても本当にすぐですけれども、まだまだ伸びるという予想になっております。
 実はどういうものがこれから伸びていくのだろうということになりますと、映像系というものがこれから更に伸びていくでしょうという予想か立てられています。やはりここでも映画が下敷きになっておりますけれども、映像系のコンテンツビシネスというのは伸びる可能性は更にあるという状態でございます。
 もうすぐ地上波デジタル放送がいよいよ本格的に始まりますけれども、これについても、今までなかったものですから、非常に大きく伸びていく。ここでも主なるコンテンツは音声プラス映像ということになると思います。
 デジタル放送の場合、2番にも書きましたけれども、更にインターネットとの親和性が非常に高いですから、そういったもの。
 更に、携帯等々の端末機にも配信されるというふうになっていくわけです。
 インターネットとコンテンツビジネスの関係をちょっと示してみたのですけれども、まずコンテンツの仕事、映画、テレビ、ラジオ、出版、ゲーム、パッケージと書きましたけれども、こういったものと右側にあるIT、インターネットをやっているビジネスというのは、これまではなかなかぴったり一緒にいるものではなくて、特にBtoBの市場等々は、メーカーさん始め、非常に早く対応して立ち上がっておりますけれども、こういった部分と、コンテンツクリエイターというのは割と離れたことがいることが非常に多いです。そういう中でデジタルコンテンツビジネスというものと、その中にあるコンテンツ、映像、音楽、テキストみたいなものがEC市場というところにも入ってくるという時間帯になってきています。
 こういう部分においては、実は先進国というふうにアメリカを言いますけれども、アメリカとかヨーロッパにおいても、これからこういうことが始まる。世界的に見ても経験している人が非常にいないというところでございまして、映画等を取れば、例えばハリウッドはあれだけ映画をつくっているわけですから、当然映画に対する人材は育っているわけですけれども、そういう芽ではなくて、今後の方向を考えたときに、新しい融合が始まってきているという観点を皆さんにお知らせしたいなと思います。

(スライド)
 例えば「コンテンツ配信とインターネットにおけるスキーム例」というふうに書きました。これは中身を細かく説明しようというわけではなくて、先ほどもプロデューサーが重要であるということが出てまいりましたけれども、非常にいろんな契約をしていかなければならない。これまでのコンテンツホルダーと言われる方々と、コンテンツプロバイダーと言われる人たち、全然育ちが違うといいますか、一緒の業界にいなかったもので、いろんな形で契約をすり合わせてやっていかなければいけないと。
 こういうことも、まだまだ経験している方が業界で非常に少ないです。テレビ局の方、出版社の方、ゲーム会社の方、レコード会社の方、みんなまだ初めてで、きちんとした成功モデルというのもなかなか見つからない。
 それはなぜかと言えば、どんどん我々が使っているデジタルのいろんな端末の状態が毎年のように変わっていきますから、そうそうぴったり決まらないということですね。デジタルコミュニケーションの形が更に技術的に発展しておりますし、我々ユーザーも受け入れるものがどんどん変わってきているということですから、そういう意味で下にも書いたような、ちゃんとしたシステムをつくっていかなければいけいない、こういう経験者を増やしていかなければいけないということになります。

(スライド)
 これから、ますますワンソースマルチユースというのが一般的になると。このことについては、私たち業界の人は10年ぐらい前から将来はこうなるであろうと言っておりましたが、いよいよコンテンツのデジタル化が進んだお陰で、こういうことが言われています。 このネタというのは、大抵の場合は物語でございます。この原作に関しては、日本は皆さんもよく御存じのように、漫画とかアニメというところにかなりネタがあると言われております。
 それが最近では、これまで日本のゲーム会社が独自につくってきたゲーム、こういうところにネタがあると。そういうものが1つの物語が映画にもなり、ゲームにもなりテレビにもなる、またそこから出てくるパッケージソフト、音楽だけで独立しても売れますと、ウェブサイトのモバイル等々含めて、1個のネタで大きな意味での1つの作品ができるということになります。
 そうすると、一つずつ見ていただくとわかるように、映画なら映画のプロデューサー、テレビならテレビのプロデューサー、ゲームならゲームのプロデューサー、全部にそれぞれ縦割で育ってまいりました。
 しかし、これからは、いわゆるマルチユースですから、横に串刺すプロデューサー、横に串刺すディレクター、こういう人たちがいないといけないと。
 また、このモデルは非常に理にかなっておりまして、例えば最近では、5年前に始めたフランスのフルCGの映画のプロジェクト、ケイナというものなんですけれども、一応女の子の活躍する映画です。これは3年前から日本のゲーム制作会社ナムコさんが一緒に組みまして、映画の監督がゲームの方もある程度一緒に見るということで、映画とゲームを一緒につくっていきました。
 こうなりますと、制作費という面でもきちんと最初から重なってまいりますから助かりますし、お互いにビジネスモデルが確立しやすいと、ゲームの宣伝に映画がなりますし、映画の方にロイヤリティー収入があるということ、そのようなことが現実に、やっと1個目、はっきり組んだものが出てまいりまして、そういう例でもわかりますように、これからは本当に横に串刺すプロデューサー、ディレクターが要ると。そういう人が世界的にいるかというと、本当にアメリカに行ってもいないと思います。
 さて、私たちは去年になりますけれども、業界に実際にアンケートをかけています。大体1年1回定期的にディレクターとか、プロデューサーとか、クリエイターの方、いろんな層のプロの方にアンケートをかけているんですけれども、実際にこういった不足が出ております。
 特にプロデューサーです。次にディレクター。それからコンサルティングですね。コンサルティングは、やはり多業種の方と組まなければいけないので、自分の業界のことはよくわかるんだけれどもということになるわけです。こういった結果が現実に得られております。
 こういった状況から大学院レベルの高等研究機関がかなり要るんではないかという議論が出てきていると思います。いわゆるネットの業界とコンテンツの業界をつなげていきたいということになります。ここも新しいタイプのプロデューサーとディレクターとあります。
 これから、日本が世界のトップを切って、FTTHですね、光ケーブルが家の中に入ってくると思いますので、そこで活躍できると。5年から10年後でちゃんと花開くというか、世界のトップになるという意味なんですけれども、そういった人を育てたいなということが大学院のミッションです。
 今、人材の採用する基準の方は、コミュニケーション能力とか、仕事に対する熱意、こういうところを非常によく見るそうです。これもアンケート調査です。しかし、コミュニケーション能力とか、熱意というのは学校で教えられるものではないと思います。ですから、こういった能力をもともと持っている人に、他のことをきちんと教えていけば、プロデューサー、ディレクターになれるのではないかというふうに我々は思っております。 これは、たまたまちょっと手前みそでございますが、私たちは今、特区を利用いたしまして、専門職大学院の設立認可の申請中であります。ということで、大学院の特徴を6つ挙げております。
 ちょうど、ここにも専門職大学院と書いていただいたんですけれども、そういったことで、私たちが実際に、コンテツ業界を横に串刺すプロデューサー、ディレクターを育成しようとしているということで、本当に手前みそで申し訳ないんですけれども、こういったパンフレットも一番下に御用意しましたので、時間があるときに見ていただければと思います。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。

○牛尾会長 ありがとうございました。では、これから参考人のお二人に対する質疑応答並びに、それぞれの個別の御意見等について時間を割きたいと思います。
 いつものように御発言の方は、この名札を立ててください。平均3分ぐらいを発言の幅にしております。若干御意見がまとまったところで、河口参考人、杉山参考人に答えていただくというような形で進めたいと思います。
 では、皆様からの御意見を取りたいと思います。御発言がある方はお願いします。

どうぞ、角川委員お願いします。

○角川委員 コンテンツ人材の養成についての資料をつくっていただきました件に関しまして述べさせて頂きます。4ページにプロデューサー、エンタメロイヤーの不足ということが書かれておりますが、私も10年ばかりプロデューサー稼業もしておりますので、感じております。何かと問題が起こると、プロデューサーがいないから問題があるんだという話になって、逃げ口実になっているところがあります。
 それで、結構プロデューサーというのは、経験上わかったのは、やはり映画一本をつくるのでも、エグゼクティブプロデューサーというのと、それから本来のプロデューサー、それからラインプロデューサーとか、プロデューサーにも業務が専門化してきているんではないかなという感じがしております。
 特に、今、映画をつくるときに、制作委員会方式というのが割と定着しております。この方式を取ると、エグゼクティブプロデューサーというものが必要になってきて、制作委員会の会社同士がぶつかったときの調整だとか、そういうことで出てまいります。多少名誉職みたいなところもありますけれども、結構エグゼクティブプロデューサーという仕事も全体を俯瞰したり、最終的な企画の承認だとか、最終的な脚本の承認というので、非常に重要な部分であると思っております。
 それから、現場の本当のプロデューサーというのは、実務の一切を仕切るということで、今度は承認ではなくて決定していなければいけないということもあります。監督を決める、シナリオを決める、キャスティングを決めるということがあります。
 それからラインプロデューサーというのがありまして、これが今度はプロデューサーを決めたもののスケジュールを管理するとか、予算を立てるとか、ロケ案を立て、出かけていくとか、やはり結構重要な仕事が残っています。
 そのほかに、勿論、ラインプロデューサーにはスタッフが付かないとラインプロデューサーも動かないということになります。プロデューサーにラインプロデューサーがいなければ動かないというふうに普通は思いますけれども、ラインプロデューサーにもスタッフが付かないと動かないということが多い。
 それから、アソシエートプロデューサーというのも必要になってまいります。これはプロデューサーを補佐するということです。
 こういうことで、プロデューサーとは何かというものもどこかで一方で突き詰めて考えていかないと、何かプロデューサーという問題に逃げてしまうという危機感をちょっと感じたものですから、一言述べたいと思います。
 それから、エンタメロイヤーの不足ということは非常に感じています。このことに関して申しますと、実は日本ではなかなかエンタメロイヤーが登場する場がないんです。そこで今まで養成が、後れたんだと思います。前回、重延委員から、ヨーロッパではリメーク法とか、フォーマット法というものが検討されているという話が出ました。
 今、日本がいろいろリメークの権利をハリウッドに買い取られているんですけれども、これは実に廉価な値段にたたかれて買い取られている現状があります。そういう面でリメーク法ができれば、契約が終わった後でも、それを点検して問題があれば指摘していくような法律をつくってもらいたいなと。ここでエンタメロイヤーというものが必要になってくると思いますので、養成されていくと思います。
 実は角川でも、例えば『ザ・リング』という映画が、リングのリメークされたときに、アメリカのプロデューサーから訴えられたこともありますし、それからリングの海外販売では香港でも台湾でも訴訟を抱えています。
 そういう場合でも日本にはエンタメロイヤーがいないものですから、現地のロイヤーに頼むんですね。香港のロイヤー、台湾のロイヤー、アメリカのロイヤーと。日本の志のあるロイヤーはみんなアメリカの法律事務所に所属していて、日本の法律事務所には所属していないという現実がありますので、そういう面で本当にこの問題をどうやって育成するかというのは必要だと思います。
 そこで、やはり既にフランスなどに非常に正確な法律があったりしていますので、海外の事例研究というのは、とても必要なんではないかなと。海外の法律の研究、これを是非、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカ、そういうところで事例研究をしていただいて、こういう面でロイヤーが必要だということを入れていただきたいなというふうに思います。

○牛尾会長 久保利委員、どうぞ。

○久保利委員 久保利でございます。杉山参考人にちょっとお伺いしたいんですけれども、先生の御発表のうちの新しい専門職大学院というのをおつくりいただくと。その中で、結局この専門職大学院がつくる対象というのは、今、角川さんがおっしゃったプロデューサーをつくるということなのか、あるいはエンタメロイヤーまで視野に入れていただけているのか、この辺りについての構想をちょっとお聞かせ願いたいんですけれども。

○杉山参考人 エンタメロイヤーは、残念ながら含まれておりません。やはり、我々自体が先生として頼めるという人たちを考えたときに、やはりそういったロイヤーの方はほとんど知らないですし、まずは8年間ぐらい、多くのプロがデジタルの中で鍛えられたので、本当にプロに教えてもらおうということで、プロデューサーとディレクターというところから始めさせていただくということになります。
 ここに書いてあるように、日本でも10人ぐらいしかいないということですから、なかなか経験したロイヤーじゃないと育てられないと思うんです。よほど強力にプロジェクトを組まないと難しそうな気がしています。

○久保利委員 意見なんですが、確かに日本のエンタメロイヤーの数は少ない。だけど10人ということはないだろうと思うんです。どう見てももう少しいますね。要するに、これは著名な方をということであると10名かもしれないけれども、その下に付いている人たちを考えると、100 人や200 人はいるんではないかというふうには思いますが、それでも少ないと言えば少ない。
 問題は、需要と供給の問題なんです。弁護士というのは、需要があれば出てくるわけで、ヤミ金融だ、サラ金だ、いろいろ大変だと言えば、それをやる弁護士は出てくるわけで、それがビジネスになってくれば、ちゃんと成り立っていくわけなのです。結局今までは、私が30年前にエンタメロイヤーみたいなものを始めたとき、本当にシンガーソングライターの吉田拓郎、陽水というような人たちしか、このエンタメについて、実はこれがビジネスとしてどうなのかというのを真剣に考えていなかった。クリエイターの側はもっと、いいものさえつくればいいというふうなことで、ほとんどビジネスは考えていなかった。最近は大分変わってきましたね。
 ですから、そういう意味で言うと、エンタメロイヤーがなくて困るという声が出てきたということは、これはものすごいことでありまして、今まではそんな声も上がってこなかったという点で余りたくさんいなかった。
 そうなってくると、これをどう養成するかというので、まさに文科省と法務省でやっていらっしゃるロースクール、法科大学院。これとこの種の杉山さんが今お考えになっているような専門職大学院というものをどういうふうにリンクさせ、どういうふうに教育体系の中に相互乗り入れができるようにするかという問題が出てくるんだろうと思います。
 実は、私自身、大宮法科大学院大学というところが4月に開校しますが、そこでエンターテイメントと法という講義を持つことになっています。恐らく、他の大学院でもそういうものが出てくるんだろうと。
 そのときに、今のデジタルハリウッド、専門職大学院というところとどういうふうにコンビネーションが組めるのか、あるいはほかのものとも、あるいは河口先生のところともどういうコンビネーションが組めるのかという単位の互換性とか、いろんな意味で、少し具体的なものができたらば大変いいのではないかというふうに思います。
 以上です。

○牛尾会長 岡村委員、どうぞ。

○岡村委員 いろいろお話を伺っていて、いわゆる製造業者という立場から見ると、大変共感を覚えるんですけれども、やはり日本の製造業の発展のプロセスは、やはり技術がベースになって、この技術の発展が続く限りは、日本の製造業が世の中をリードし切れてきたと。
 しかし、やはりマネジメントの世界へ大きく、マネジメント優劣が企業の発展の優劣を決めるような、そういう世界の潮流に入ってきたときに、やはり日本の人材育成というのは、やはりかなり後れていると。
 30年前には、いわゆるビジネススクールというふうな概念は日本には全くなくて、事務系とか、文科系とか、あるいは法学部出身、経済学部出身、こういうものがやはりマネジメントをやるんだというようなことになっていたんですけれども、結局、理論的な裏づけがないままに、そういう人材が育たなかったということがあって、それでやれ日本からアメリカのビジネススクールへ留学したり、そんな形で人材が徐々に養成されてきたということで、ある意味でコンテンツ業界特有のマネジメントというのがあるんではなくて、やはり国際競争の中で生き抜くための一つの経営という問題に対する、そういうふうなミッションを持った人たちをいかにして育てるかというようなことを考えていくときに、やはり一つのビジネススクール、あるいは先ほどお話が出ました法科大学院の問題も含めて、全般的にそういう人材を養成するというふうにいかないと、コンテンツ産業に特有のマネジメントだけを育てるというふうなことでいくと、やや一つのシンボリックな教育のプロセスとしては必要かもしれないけれども、やはり全体に産業がもっと大きく展開したときにはいかないんではないかというふうな気がしております。
 1つ法律問題にしても、やはり残念ながら知的財産権、まさしく御本尊なんですけれども、知的財産権の問題と法律の問題というのは、これは製造業が国際的になっていくプロセスの中で大変後れているということに十数年前に気がついて、社内的に知財本部をつくったり、あるいは法務部門を強化したり、あるいは弁護士を会社に雇い入れたり、そんな形で育成をしてきたというプロセスがあります。
 したがって、やはりそこのところのプロセスをよくフォローしていくような形で、1つ大きな体系的な人材育成の仕組みを考えていただかないと、やはり個々の業務をどうしようかということだけに関心が集中すると、人材の育成がうまくいかなくなるんではないかということで、1つの産業としての歴史の中で考えていっていただければという気がいたします。

○牛尾会長 確かにおっしゃるとおりで、アメリカでも知的財産権が、アメリカの世界市場における競争力として非常に大事であるということを決意したのは、ヤングコミッティーで1986年、まだ17年しか経っていないんです。決して日本だけ極端に後れているわけではないということが1つ。
 それから、この業界を特殊化して、特殊事業があり過ぎるからどうのこうのという考え方は、健全な発展を妨げることになる。やはり日本でも製造業が、一番典型的な例ですが、技術とか、技能とか、そういうもののシーズ的なものに頼っていれば必ず売れるんだと思っている時代から国際化を通じて、やはりマネジメントやマーケティングというのが非常に大事になってきて、やはり一番多く効いたのはグローバリゼーションなんです。要するに、国際的に交流を繰り返した知的集積が、高度成長のときに効いてきて、いまや自動車やエレクトロニクスや、また流通でもマーケティングとマーチャンダイザーは、日本が一番レベルが高いわけですね。むしろ、本家本元の技術の方がむしろ後れている部分があるぐらい様子が変わってきていると。
 それで、河口参考人と、杉山参考人の話を聞いて、なぜこの分野だけが、今、河口参考人の説明なんかの例を見ると、ほとんどの国際市場で戦っている製造業というのは、こういうことを自動的にやっているわけです。分野別にトライアングルになって。
 この分野だけ、なんでそうならないのかというと、国際化や近代化や民主化といいますか、そういうものを阻む要素がどこかにあるんではないかと。それを取り除かないと、特殊的な事情として、避け難いものだと思ってしまうと、業界は進歩しないので。
 ハリウッド等は、むしろどこよりも早く国際化したものですから、非常に早く進歩しているけれども、なぜ日本がこの分野だけ、結果的にはいい作品が出ているにもかかわらず、それが普遍化して成功しないのかという理由は、何か近代化を邪魔する特殊要因がある為で、それを省いていくことが大いに大事な要素で、それを見つけることも非常に大事だろうと。 弁護士の話でも、渉外弁護士が足りないときに、やはり需給関係で渉外弁護士がそれほどなかったからという部分が非常に大きくて、最近では渉外弁護士の方がはるかに儲かるという、やはりそこに能力が集まるわけですね。
 だから、そういう点では、この分野に関しては、この分野の持っている特殊な非近代性を除去するべき。そして、フリー・フェアー・オープンというのは、自由化の大原則ですけれども、その3つの要素が足りない部分がどこにあるのかというようなことを本当は大きな目で見る。それを除去すれば、最終作品を見ていると、世界的な競争力の隠れた潜在力が山ほどあることはわかっているわけですから、すっといいものが流れるような仕組みをどこかにつくる必要があるんではないかという、そういう気がいたしました。
 違う分野では、自然に流れているところが、なぜこの世界だけ流れていないんだろうということは、それを阻むものは何かということを考える必要があると思っております。
 では、次に浜野委員お願いします。

○浜野委員 2人とも同僚みたいなので聞きづらいんですけれども、3点あります。現場の方を育てるということは大事なんですけれども、研究者の集積とか、学会すらないわけです。ですから教える人はだれなのか。杉山先生の回答があると思うんですが、その点を1つお聞きしたい。先日、CGアニメーターの育成機関として高名なシュパンフォコムの校先生のお話を聞いたんですが、フルタイムの先生は4人だけで、現場の一線の方が教えています。我々の大学の任用制度からすると、そんなことはあり得ないので、河口先生からその点をお聞きしたい。
 2番目は、受け皿の問題です。韓国もコンテンツで後れているということで、映像系とか、アニメーションとか、漫画の大学の学部学科設置をなんでも許可してしまって、60ぐらい大学ができたわけです。今年、卒業生を出したものの受け皿がなくて、社会問題化していて責任問題になっているということです。
 フランスにはアンテルミッタン・デュ・スペクタクル、すなわち非常勤芸能従事労働者という制度があって、自分を安売りしなくても、ある程度の能力のあるアーティスト、クリエイターというのは、国が丸抱えする受け皿つくって社会に出しているわけです。
 例えば、指折りで上がってくるような北京映画学院とか、台湾の国立芸術専門学校とか、フランスの国立学校のフェミスとか、ボブランとか、シュパンフホムとか、そういったものは1年に10人なり20人なりしか取らないで、完全にエリート教育なんですね。
 ですから、育てるというのは、いいんですが、受け皿をどうするのかということだと思います。それもちょっとお聞きしたいというのが2点です。
 3番目は留学です。コンテンツを広く考えるとフランス料理とか、ファッションとかも入るわけですが、意図的に外国人の留学生をたくさん取って、自国の文化の発信の協力者とかパートナーを育成するというパブリック・ディプロマシーの観点からもやっています。現在、アニメーションとかゲームとか漫画というのは日本で学びたいという方が外国に沢山いるので、留学について国際貢献からも大事な問題だと思うんです。これまでニーズがあるのに、日本側がそういった方々を受け入れなくて、ヨーロッパがやってきたようなパブリック・ディプロマシーの観点からの留学生の受け入れということをやってこなかったので、そういったことをどう考えるのかと。
 3点、お二人によくお聞きしたいと思います。

○牛尾会長 先に日枝委員、お願いします。


○日枝委員 先ほど牛尾会長から日本はどうして後れをとったのだろうかというお話がありましたが、非常に私の暴論かもしれませんが、隣りに岡村さんがおられるので大変恐縮ですけれども、日本は重厚長大中心の社会だったんですね。それで、文化とか、今でこそエンターテイメントと言いますけれども、古くは芸能界と言っていたんですね。芸能界に子どもが行きたいなんて言ったら親は絶対反対したはずですね。今でこそ、映画監督になりたいとか、プロデューサーになりたいというと、まあ認めようかという環境になってきましたが、そういう考え方が後れをとったベースにあるのだろうと思いますね。重厚長大の重視というのがあってこうなっているということをまず認識しなければいけないのではないかと。
 それで、こういう会議ができて、やっとエンターテイメントについて正当な産業としても文化としても日本が引っ張っていくということに光が当たったということは非常にいいことだろうなと。そこを変えないと、やはり無理だろうなと。
 我々自分自身の家族とか、いろいろな経験から言っても、芸能関係で働いていると言ったらあまり相手にされなかったのが、やっと今、エンタメという横文字になって初めてすばらしい産業として評価されるようになってきたなと。
 つまり、これは文化的なサポートと産業的なサポートと両方必要なんだろうと。この辺をもう一回考え直す必要があるというふうに私は考えています。
 もう一つは、どうして優秀な人たちが来ないかというと、さっき久保利先生もおっしゃっていたと思いますけれども、アメリカの場合は、ショービジネスとか、ショーが大好きな国民なんですね。日本は今言ったように重厚長大が偉いと、ここに銀行の方がいたら大変恐縮ですけれども、銀行とか、そういうものが偉いんだと。大体芸能関係はあまり評価されなかったという日本の歴史からそうなってきた。それにアメリカのようにショービジネスが発達していると、ものすごい訴訟がある。したがって、弁護士の先生が非常に多くなったということもある。
 ほとんどの映画会社、あるいはテレビ会社の経営者、プロデューサー、みんな弁護士の先生ですね。ほとんど弁護士の先生がやっていると。こうした違いが日本は後れているということのベースにあって、これからここを何とかして取り返していかないといけないのではないかなというふうに思います。
 もう一つは、クリエイター、クリエイターと言いますけれども、非常にクリエイターを育てるというのは難しいんですね。多分、日本で映画を当てている今の若い人、あるいは黒澤明さん、市川崑さん、この方々の多くは映画学校を出たわけではないんですね。黒澤明さんは旧制中学校、市川崑さんも旧制商業学校ですね。こういう方々が日本を支えてきた。篠田さんは早稲田大学の文学部というけれども、むしろ陸上競技部ではないかとも言われているんですけれども、それにしても、今はCGも使って、すばらしいものをつくっていると。
 したがって、学校をつくるというのは、よほど慎重に考えないといけない、つまりクリエイターというのは、学校で座学で教わるものではないんだろうと私は思うんです。
 私の経験から申し上げますと、私どもの会社に入ってくるのは、商学部だとか、法学部だとか、文学部とか、いろんな学部から入ってくる人間がほとんどで、多分心の中には子どものころから映像をつくりたいとか、音楽をつくりたいという夢があったわけですけれども、日本にそういう学校がない。したがって、早稲田だ、慶応だ、東大だと、そういうところを出て入ってきて、それでそういういい作品をつくると。
 したがって、私は大学院か、専門学校がいいと思うんです。
 というのは、どういうことかといいますと、たとえば伊比恵子さんなどは、日本の大学を出て、制作の現場を経てからアメリカの大学院を出て、それで向こうでドキュメンタリー監督として活躍しているという事実があるわけで、やはり学校では自分の仕事をブラッシュアップすると。日本は、大学を出たら就職して終わりというようなところがありますが、アメリカの場合は、一回大学で勉強して、実業に入って、また大学に入って、というシステム。
 そうすると、やはり専門学校とか、大学院とか、そういうものをつくった方がいいのかなというふうな気がしております。
 もう一つは、さっき言ったこととも繰り返しになるかもしれませんけれども、アメリカの場合、そういうエンターテイメントで活躍した人が、アメリカンドリームの実現者として、かなり多くいるわけですね。スピルバーグにしても、数多くそういう人がいる。やはりああいう人になりたいなというのは、子どものころからみんな思う。こういう夢をつくるのはどうしたらいいかということを考えることが必要ではないかなというふうに私は思います。
 もう一つは、まだ時間はもう少しあると思いますが、やはり学校をつくっても、そういう人たちが活躍できる場がなければ誰も行きません。ここにもしそういう人がいたら大変語弊があって恐縮ですけれども、各大学に昔は新聞学科というのがありました。
 例えば、私は早稲田大学ですけれども、今はもうその学科はありません。なぜかというと、新聞学科から新聞社が採用しないんです。そうしたら行く人がいないんです。映像学部をつくっても、どこにも就職できなかったら行くわけがないので、もしジャパニーズドリームができるとするならば、やはり学校だけつくるということではなくて、ドリームができるようなシステムをつくることが必要なのかと。
 もう一つは、クリエイターというのは、大学で教えるものではなくて、やはり感性というか、発掘していくものだろうというふうに私は思います。
 この中の一つのいい例としては、この前も私は申し上げたかもしれませんけれども、今村昌平さんがつくっておられる日本映画学校というのがありますが、ここが大変多彩な講師陣、あるいは多彩なネットワークを通じて、在校生、卒業生に仕事の場を与えているわけですね。それから彼が監督するのは、自分の学生を連れていって一緒に働かせていると。 そういう中で、下積みのADとか、そういうことをやりながらだんだん一本立ちしていく、森田監督とかはみんなそういうところから出てきている人たちです。
 もう一つは、それに付随しますけれども、そういう人たちが発表できる場、つまりフィルムフェスティバルとか、コンテストとか、そういうところで認められることによって、率直に申し上げますと、私どもテレビ会社とか、映画会社とか、プロダクションはその人を引っ張るわけですね、それで映画をつくってみないか、というような形になるんです。そういう発表の場をつくってあげて脚光を浴びさせてあげるということが必要なんではないかなというふうに、私は思います。
 それから、先ほど杉山さんがおっしゃっていたのかな、ワンソースマルチユースの話ですが、私は全く同感でありまして、アメリカの産業が伸びたというのは、単に映画だけがいいわけではなくて、つまり技術は勿論ですけれども、映画でまず全収入の半分ぐらいを得て、あとは音楽を出したり、あるいはマーチャンダイジングを出したり、裾野の広い収益をかせいでいる。これがワンソースマルチユース。したがって、私は、こうした『メディアプロデューサー』を養成する教育が必要ではないかなと。
 時間がないので、このぐらいにとりあえずしておきます。失礼しました。

○牛尾会長 ではこの辺で、それでは先に重延委員、どうぞ。

○重延委員 あとで意見はと思っているのですけれども、ちょっと参考人の御意見で1つだけ意見を伺えればと思うんですけれども、河口参考人の提示した三角形の構造があって、アマチュア、専門学校、大学研究所、に加えて多分アマチュアの部分というのがデジタルの世界では、この幅ではなくて広大な世界が今、生まれているのだろうと思うんです。
 今は割とトップレベルの専門機関というか、教育機関が必要だというのは、私も勿論そう思うのですけれども、ここに教育されなくても未曾有に広がるアマチュア、これは今、日枝委員がおっしゃったとおり、ここから突出して、途中の専門性を飛ばしてくる人が、もしかしたらデジタルの世界、映画の世界も既にあるわけですし、放送の世界も割とここを通らないで入ると。でも、特にデジタルの世界にはもっと大きいアマチュアの層がいて、そうするとこの辺の人材養成というか、この辺の人たちがもっと活躍するある種の場の持ち方というのは、どういう具合にとらえておけばいいのか、それをちょっと私の人材育成の考えの参考にさせていただければと思ったのです。

○牛尾会長 関根委員、どうぞ。

○関根委員 放送事業者の視点から意見を述べます。今、放送で言いますと我々は海外の放送局やプロダクションと共同制作というのをやっておりまして、プロデューサーという番組をつくるという立場から言えば、海外の一線のプロデューサーらと比べそんなに力量や能力が劣っているとは考えていません。現に我々のNHKでつくっている作品なんかは海外で結構売れています。ただ問題なのは、杉山さんの御指摘にありましたけれども、言葉の問題もあるんでしょうけれども、できた作品を海外に展開する上で、マネジメント経営のノウハウ、それと人脈、そういったものが徹底的に欠けているということです。やはり言葉以前の問題として、日本の放送業界の作品が世界になかなか流通しにくいということの理由がマネジメントに優れた人材が育っていないことにあると思います。
 どうすればいいかということは、これは簡単に解決するものではないと思いますけれども、こういった人材育成に向けて、どういうことをやっていけばつくっていけるのか、いろんな経験を踏まえながらやる以外ないとは思います。ともかく早く取り組むことです。
 もう一点、私は日枝さんと考え方もやり方も違うような気がするんですけれども、映像系の人材が不足しているというのは、これは前々から言われておりまして、何とかしなければ日本の放送界は立ちいかぬということで、私どもは今年の2月に川口にアーカイブスというのをつくりました。そのときに、埼玉県や川口市と一緒になりまして、早稲田大学に働きかけて専門学校として3年制の映像技術関係の学校をつくったんです。これは、今年から開校しています。
 1学年で年間50人ぐらいしか採ってないはずですけれども、開校されたからといってすぐに映像技術関係の人材が増えるというふうに我々は考えていません。ただ日本の放送界を中心に映像関係の人材の裾野を広げるという意味では、非常に有効なんじゃないかという気がいたします。
 それと、こうした人材の育成については、我々にはいろんなノウハウがありますので、プロデューサーとか、編集技術を持った者、そういった者が講師として講座を持ちながらいろんなノウハウを伝授しています。NHKだからやれるというところがあるのかもしれませんけれども、国に何かやってもらうというのを待っていたらとても間に合わない。やれるところからとにかくやっていくというふうにしないと、人材というのは育ってくるはずがないし、やれることをとにかくいろんな面でやっていくという意識が必要なんじゃないかと思います。
 今、出ている様々な議論についても、これまでいろいろなところで取り上げられてきているものが殆んどです。国にいろんなシステムをつくれとか言っても、なかなか立ち上がらないし、とにかくやれるところからやっていくという意識を大切にしていかないと、日本のコンテンツ産業というのは、なかなか盛んになっていかないのではないかという気がいたします。

○牛尾会長 ここで一度ここまでのところの、各委員からの質問をまとめて、河口参考人と杉山参考人から、コメントなり御意見なりを頂戴したいと思います。

○杉山参考人 それでは、覚えている限り答えさせていただきたいんですけれども、浜野先生おっしゃった、パブリックディプロマシーというところで、そういう意味も含めて大学院はいいなと思っていまして、私たち民間で学校をやっていますと、やはり留学生のビザを出せないのです。ですから、何とか文科省に認めていただけると、留学ビザが出せますので、海外から、今までも髄分お問い合わせがあったんですけれども、これまで受け入れられなかったということがあります。
 それから、教員の問題ですけれども、実は法科大学院ということを、多分念頭において文科省さんが考えて、専門職大学院というのは専任教員が1.5 倍必要だということになっているのです。ところが、我々デジタル・コンテンツのようなものを考えますと、むしろ専任教員はこれまでの規定の0.5 倍にしていただいて、現場の方が来て教えた方がいいんじゃないかということで、そこの部分が全部専門職大学院は1.5 倍だぞというのがいいかどうかというのは、ちょっと我々も内部で話しております。1.5 倍も専任教員だとかえって世の中に遅れてしまうんじゃないかという危惧を持っております。
 それから、今、エンタメという言葉で非常に子どもたちが、親も納得するという話ですけれども、まさに我々はそういうことを目の前で見てきまして、男の子が美大に行くなんて言ったら親は止めたと思うんですけれども、今は美大を出れば、セガさんであろうと何であろうと、ばんばんゲーム業界にそのまま入れてしまいますので、普通の文科系より非常に就職がいいということがございます。
 大学教育にプラスする教育ということなんですけれども、我々は今まで3万人卒業生を出したのですが、大体80%以上が4大卒の方で、平均年齢も26歳の方を教えてきました。そういう人たちですから、やりたくて学校に来ます。やりたくてやるというのが一番大事なことだと思うんです。
 そして、日本の場合は一番このゲーム業界にデジタルの映像をやっている人たちの集積があります。我々だけでもCGだけで5,000 人から7,000 人ぐらい業界に推し出しているのです。では、そういう人はどうなっているかというと、数年大きなゲーム会社さん等々に勤めた後、今、都内に、簡単に言えば1,000 人ぐらいのフリーのクリエーターがいます。その人たちは、手前の簡単な仕事を請負って何とか飯が食えるのでいいんですけれども、実はちゃんとしたプロジェクトがあれば、東京で1,000 人ぐらいのCGのクリエーターを集めるということは全然不可能ではないぐらい育ってきているのです。
 それから、教わらなくても、先ほどおっしゃいましたように、今、ツールが自分でも勉強すればできますので、全くアマチュアなのに十分なレベルでものをつくれるという人もいるんです。
 だから、なかなか発掘ということになると、私はコンテンツのファンドのようなものをつくっていただいて、若い人にむしろ制作費を渡してあげた方がいいんじゃないかと。若い人って今はお金がないんです、昔と違って、本当にうちの学生も、御飯一つを安くして、コンビに通って何とか食いつないでいるような人が今は多いのです。例えば1作品に100 万円あげるといったら大変なことなんです。どうしても、ロケしたり何なりしたら制作費がかかりますから、億なんていう単位じゃなくて、1プロジェクト100 万円ずつでもあげたら、どんどん実はものが出てくるんじゃないかというようなことも感じております。
 以上、そんな形でお答えいたします。

○牛尾会長 では、河口参考人、お願いします。

○河口参考人 この人材育成の話しで、いい例はジョージ・ルーカスが、ILM、すなわちインダストリアル・ライト&マジックで最先端の映像表現技術の開発してやっていますけれども、彼らは学生時代から映画をつくるための技術を持っていたんです。だから、圧倒的に『スター・ウォーズ』が当時、それまでの映画と全然違うレベルの、高度の宇宙映画をつくったわけです。だけど、それはいろんな方が案としてはみんな持っていたのに、それを実際に実現する技術を彼らは手に入れたからすごかったんです。米国のハリウッドの映画は、結局そうなんです。
 今、日本で大ヒットしている映画のほとんどは、例えばさっきちょっと言った国際学会でもそうなんですけれども、ジョージ・ルーカスのILMと、西海岸で最もトップのスタンフォード大学が共同でやっているんです。最高の頭脳と、映画制作のラボが共同でやっているということは、アイデアとかストーリーだけではなくて、それを実現するための映像の最新の技術を常に開発しながらやっているというのが一番重要で、それが実際の映画で、他のところと比べると差がつくんです。
 これがもうすごく歴然としていて、結局ルーカスとかスピルバーグがやったのはそこなんですね。それ以前の映画と圧倒的に画面のできが違う、だから見ても楽しいと。それがあるので、私がさっき言ったのは、ちょっと説明が足らなかったですけれども、最先端の科学技術を使って、一番ナウい映画のエンターテイメントに使うという循環ができているのが大成功している原因で、日本は全く追いつき、追い越すのは難しい。
 だから、たまたま宮崎駿さんがつくっている映画がヒットしているのは、あれはテクノロジーはともかく、アイデアで勝負しているんですね。だけど、ハリウッドの映画の場合は、それにプラス強力な最高レベルの科学技術が入っているためにその地位が揺がないんです。
 だから、私がさっき言った産業界との循環が絶対要るというのは、日本の科学技術を是非映像の新しい方法として使った方がいいというのそこなんです。ただこれを全部の作品でやるのは難しいので、やはり少数の、さっきちょっとおっしゃられた、難しいところはそこなんですね。アメリカの西海岸でやっている映画の方向と別の、独自の映像表現技術を開発するのが一番面白い。だから、まねをしようとしてはいけない。トップの開発レベルでは、新技術の開発をやらないといけないんです。だから、それを是非やらない限りは、常にアメリカ映画の後を追うことになるし、逆にさっき言ったように中国とか韓国なんかでやっている開発部というのは、大量の人数を入れてそこをねらってきているので、今までのものだと追い抜かれていくということが、現実に迫っております。
 それと、人材育成という意味では、おっしゃられたように、監督は黒澤明が100 人も要らない。あのジョージ・ルーカスとかスピルバーグがいっぱいいても、逆に彼らにとっては邪魔なんですね。だから、ものすごい違った性格の監督、ディレクター、プロデューサーがいれば面白いんですけれども、似たようなプロデューサー、ディレクターは要らないわけです。要するに、余ってしまう。だから、この辺、多様性に富んだ独創的なディレクター、プロデューサーをつくらない限りは、似たような人は逆に卒業した後職場がないことがあり得るので、私は独自の日本的なセンスを持った、独特の全然違う性格の人が出た方がいいので、そうじゃないと、もしアメリカのハリウッドにあるスピルバーグとかルーカスと同じような人が100 人いても、映画をつくる上では本当に無駄だと思います。
 それと、やはり先ほどおっしゃられた、いわゆる近代化を邪魔しているというのが、大学は当然20世紀型の、さっきの重厚壮大なる、重たい産業のことをずっとやってきて、それが日本を世界経済のトップに来たわけですね。それが実は21世紀ではもう世界的に変わってしまった。けど、大学がなかなか変われないんですね。これは文科省の制度上の問題もあるかもしれないですけれども、要するに変えられないんです。
 だから、例えばの話で、今日のコンテンツをつくる学部で一番面白いのは、多分文学部とかそういうところにつくるのも面白いんだけれども、やはり工学部につくった方が、絶対日本のいいところが出てくると思うんです。だから、工学部に総合芸術工学部とかそうい感じでつくっておいてスタートすると、非常にアートをテクノロジー化することによって産業界はどんどん循環しながら、外部からもいわゆる客員とかをどんどん呼び込んでいくというのが、一番日本的で、戦後の日本にあっていることを、いわゆる、重構造で船をつくったりいろんなことをやったあの技術を、今のエンターテイメントに応用することによってすごい生きてくる。だから私は理学部とか工学部を使った、サイエンティフィックなことを使った総合芸術工学部のようなものをつくるのが理想的かなと思います。
 だから、例えば理学部でも、宇宙とか、ものすごく研究が進んでいるんですね。『すばる』とか打ち上げているし、私の郷里の種子島からは宇宙へ向けてロケットを打ち上げているんですけれども、ああいう宇宙とかをアート的に発想すると映画にすることはできるわけだし、宇宙飛行士の毛利さんだって、科学未来館を全面的にアートで、仮想空間で埋めたいという話もよくするんです。
 だから、いわゆるさっき言ったアメリカの映画界が最先端の技術を得ることによって、断トツにヨーロッパの映画と違うことをやってしまって世界征服したようなことがあるので、これは是非大学自体も変えないといけない。変わらないとさっきおっしゃった、近代化を妨げる壁というのはありますが、自己反省的に教育から始まって、産業界との絡みがあるので、活性化を促したいところです。

○牛尾会長 重延委員が退室されるので、一言どうぞ。

○重延委員 済みません。私のわがままで、これからあるところで映像を教えなければいけないもので早退しますが、ただこういう御提案が出てある種の機関をつくるというのは、私は基本的には賛成なんだけれども、これだけではないと、さっき言ったアマチュアを含めた養成の方向ということに関しては、どこかで考えて広っていくというツールをつくることも重要です。
 1つは、やはり基本層の拡大というのがやはり大事だと思っているんです。ですから、それはもしかしたら小学生ぐらいからそこにツールを与えたり、あるいは私もそうですけれども、小学校のときにすばらしい映画を見ている。そういうことがきっかけになって、ドリームが生まれる。こういう人材養成につながってくるかもしれない。
 もう一つは、日枝委員のおっしゃったとおり、サクセス・ストーリーだと思います。サクセス・ストーリーを生み出す。ドリームとサクセス・ストーリーの間の中に人材育成機関ができて、トップレベルの人材を育成していくことは必要だと思います。
 ただ、映像学科をつくると人が集まりやすい程度の甘い考え方で集められると、実際に私も経験していますけれども、そこに集まってくるのは映像モラトリアムというか、ほとんど映像は好きだけれども、情熱はそんなにないという人がたくさん集まるんです。これは意味がないと思います。
 それから、海外に行ってもそういう方々が非常に多いんです。海外に行くだけで満足した人材もたくさんいらっしゃいます。
 でも、そういうことではなく、明確な目的を持ってトップをつくるか、あるいはドリームをつくるか、そういう目的をつくって人材育成機関をつくられた方がいいと思います。
 冗談でよくいいますけれども、国立大学の芸大とか、そこに映画科をつくるという考え方が哲学としてあってもいい。でも、非常に難しいらしいのでわざと言うんですけれども。
 あるいは、アニメーションが芸大に入ってもおかしくはない。わざと言っているんです。でも、もしかしたら芸大とは分離して国立の映像大学をつくるとか、あるいはこれから非常にアジアが重要だと思っているので、学びに行くんではなくて、ともにアジアと学ぶような大学とか大学院とか、そういうものが日本にあると非常に日本固有だけではなく、アジア全体として伸びる可能性が強いと思っていますので、その辺を具体的に考えていただければということで退席させていただきます。恐れ入ります。

○牛尾会長 ありがとうございました。

(重延委員退室)

○牛尾会長 それでは、次に久保委員、里中委員、熊谷委員の順番で、申し訳ありませんが、3分ずつぐらいでお願いします。

○久保委員 映像をやる人間にとって、北米というのは最大のマーケットでありコンペティターであると思うんです。ここでどう成功するかが、世界へ進出する上での大きなポイントになってくるんだと思います。
 北米マーケットで勝てる人材をつくらなければいけないということですが、その人材育成の環境に関しては、過去より現在は断然よくなってきていると思います。
 例えば、今、スピルバーグ映画のプロデューサーをしているジュリー・モーレンさんは、『ルパン三世』の実写映画化の権利を買い取って、デベロップメントと呼ばれる作業に入っています。
 それから、ワーナー・ブラザースは同様に『アキラ』という作品の権利を買い取って、デベロップメントをしています。
 それから、フォックスは『ドラゴンボール』の権利を買って、実写映画を作ろうとしています。多分数年後は日本人になじみのあるタイトルのハリウッド映画が、山のように日本に押し寄せてくるという時代を迎えることは、間違いないわけです。おもしろい時代になってきたなと思います。実写映画化の交渉は、今、すでに現在進行形で進んでいるわけでして、こうした作品はある程度ディールが成立してしまっています。国内ではこの交渉に関わるプロデューサーとロイヤーが本当に不足しています。今から育てようというんじゃなくて、今いなければいけないということからすると、決定的に手遅れと言えます。
 アメリカのエンターテイメント業界には、さまざまな落とし穴がいっぱいあります。先ほど角川委員が『リング』のお話をされましたが、成功するといろんな落とし穴がさらに大きくなって落ちる可能性があるわけです。落とし穴とは「契約」、「訴訟」、「異文化に対する理解」、「英語版の制作」などにあります。
 アメリカの場合は、ロイヤーが日本以上に多いですから、訴訟をつくっていかないと食べていけないロイヤーもいっぱいいるわけです。この人たちは、どんどん訴訟をつくっていくわけです。訴訟をつくる相手は中くらいの会社が選ばれます。大企業は訴訟をする方も勇気が要りますし、コストもかかりますからなかなか訴えられることはありません。
 反対に儲かってない会社を訴えてもお金を取れませんから、小さな会社も訴えられることは稀です。ということは、中くらい程度に儲かった日本企業などは格好の訴訟対象になるわけです。
 私たちはなるべく穴に落ちたという事実を皆さんにできる限り説明しています。ここにはこんな落とし穴がありますから気を付けてくださいということを、あちこちで説明しているわけです。大学等で機会をいただければ、スケジュールが許すかぎりなるべくうかがっています。ところが大学の中に専門学部がないということとなると、失敗談から成功へという流れがなかなか作られないし、ノウハウも検証された形で蓄積されていきません。これでは追いかけてくる韓国の人たちにすぐに抜かれてしまうでしょう。
 大学が、漫画・アニメ・ゲームというコンテンツ産業に対し、少しでも開かれた存在になるよう心から期待しています。

○牛尾会長 ありがとうございました。
 それでは、里中委員、どうぞ。

○里中委員 教育に関してなんですけれども、そういう場をつくったから人材が生まれるものではないというのは、よくわかるんですけれども、ではこれまで日本の教育で、普通文化科とか、英文科とか、国文科があって、文学者が育ったのかというと、何となくそういう学部があるだけですね。
 それに比べますと、何をやりたいのかという目的がはっかり見えているだけでも、何よりもあった方がいいと、だから今回は大学院の話ですけれども、教育機関、大学の在り方というのは先ほど河口先生は20世紀型とおっしゃっていますけれども、19世紀型で、やはり教育というのが変わらなければいけない。それと税制も変わらなければいけない。サクセス・ストーリーがないのは、成功することは恥かしいという日本人特有の美学がある。これが非常に邪魔をしているんだと思うんです。
 先ほど来、何が発展の邪魔をしているかというと、日本特有の武士の美学が邪魔をしている部分が随分あると思います。
 つまり、権利の主張をしないことが美しい、お金のことを口にしないのが美しいとされてきました。お金のことを口にした途端、汚い人間だとか、ましてやプロデューサーなんて、自分で働かないで人を操ってもうける悪いものだみたいな、そんな考え方がありました。
 そうではなく、人を生かす人だという、やはり見方を変えなければいけない。教育側も変わらなければいけないし、まず税制も変わっていただきたい。アーティストを育てるにはお金が必要です。でも、日本の税制では人を育てるお金というのは余り認められない。パトロンがいなければ芸術家が育たないわけです。だから、杉山さんがおっしゃっていて、1人100 万円あればと、ところがその100 万円をあげることによって、どれだけ税負担がかかってくるのか、それを考えると怖くて寄付もできないわけです。
 寄付したくても、日本はもうけるのが悪いことみたいになっていましたから、成功した人からは多く税金を取る。そうすると、仕事で成功していたときにはあんなに儲けていたのに、一過性のもので過ぎ去ってみれば「あの人は今」状態で、みんな貧しくなるわけです。あのときのお金が今あればと思っている方は、大変多いと思います。
 すべてみんなが、等しく公平に成功のチャンスを得られるためには、まず契約をシンプルにすること。なぜならば、海外からいろいろな引き合いがありましても、日本の漫画に関してこの作品の著作権者と話し合いたいんだけれども、出版社に行ったら作者の先生に聞かなければ返事はできないという。それで作者にコンタクトの取りようもない、アニメーションに関しては、制作会社、あるいはテレビ番組になったときのスポンサー、その他いろいろな権利者がごちゃ混ぜになっていて、作者自身が決定権を持てないということがたくさんあるわけです。
 もっと契約をシンプルにして、契約についても教育の場で教えるようにしていただきたい。そしてみんなが、まだまだ寝むっているすばらしいコンテンツを十分に生かしていただきたいと思います。
 心配なのは、先ほど久保委員がおっしゃっていた、何本かのハリウッド化される日本の映画、だれというと語弊があるので言えませんけれども、本当に日本人って人がよくて、対アメリカの契約書を読む能力がまずない。私の感覚からすると、非常に安いお金を約束されて喜んでいるわけです。それはだめだと言っても、私それ以上お金要らないしと。そういう問題じゃないんですね。そこで要求すると、何かせこい人間だと思われるという、ひいては国の文化を生かす業界全体のことという自覚がみんな少過ぎるわけです。
 海外では、特に韓国、中国では、産学共同で、国がパトロンとなって人材を育てている。それを是非取り入れたいということと、税制のこと、よろしくお願いしたい。それで契約についての、オープンなみんなの認識できるアピールをお願いしたいということと、クリエーターたちに対しての税制もよろしくお願いいたします。
 だれのために頼んでいるのかわかりませんけれども、失礼しました。

○牛尾会長 ありがとうございました。
 それでは、熊谷委員、どうぞ。


○熊谷委員 ゲーム業界含めまして、ちょっと御意見を幾つか申し上げさせていただきたいと思います。まず昨今のゲームのゲームコンテンツ業界は、全体的に産業としてシュリンクしているということは、もう既に皆さんの話題の中にも入ってきておりますし、否めないことだと思います。
 せっかくこれまでリードしてきたゲームコンテンツの業界がシュリンクしている理由というのは、まさにアイデア不足のところ、私どもつくっている側からしてみても、ああだこうだといいわけがましく言ってしまうところもあるんですが、そのアイデア不足という部分を補うためには、優秀なディレクター、プロデューサーがやはり数少ないということが問題視されております。先ほど受け入れの問題で、そういった土壌があるのかという話もありましたけれども、まさに少なくとも私どものグループの中では、本当に優秀なディレクター、プロデューサーを切望している状況にあります。
 実際、企業内のプロデューサーの仕事ぶりの説明をさせていただきますと、映画の業界と大きくは変わらないと思うんですが、ただディレクター、プロデューサーが育っていく環境はやはり特殊なものがあると思います。
 1つには、ゲームの制作現場の中で、ディレクターであるとか、プログラマーであるとか、デザイナーであるとか、クリエイティブを出身として経験を積み重ねてきたプロデューサー。一方では開発本部部長という形で組織長を兼ねているような方もいらっしゃいます。
 もう一つは、営業やマーケティング、プロモーションの出身で、そのままプロデューサーとなられる方がおられます。
 プロデューサーということでは、それぞれバランス感覚に不十分なところがありまして、例えばクリエイティブに特化して、ずっと開発現場にいた人間からしてみれば、ビジネス面に関する、例えば収支の管理だとか、契約関連業務に不慣れであったり、またビジネス面で強いような方々にとっても、実はマーケティング分析偏重型で、なかなかアイデアという部分ではクォリティーを見る鑑識眼がなかったりということがあります。
 一概には言えないんですが、ソフトメーカーとパブリッシャーを兼ねているメーカーのような企業がとても多い中で、事業部ごとの社内分業が前提になっているんです。こういった色彩が濃い中では、クリエイター出身とか、ビジネス畑出身とか、それぞれの弱点を克服することが、まず優秀なプロデューサーを排出していく上では重要なことだと考えています。ただこれがなかなか自社内努力では落着かないところがございますので、是非ともそこでは企業の枠を飛び出して、多くのいろいろなビジネスマインドのある方々と交流し、経験を積むことができるような環境を整えて頂きたいと思います。
 それと、あと人材育成プログラムの1例について御紹介させていただきたいんですが、私どものグループの方でも、このたびシンガポールの研修生を御紹介いただいて、彼らを受け入れる手はずを整えてそのカリキュラムをスタートしたところでございます。
 こちらのシンガポール政府が推進している研究生制度なんですけれども、非常に手厚いバックアップを研修生に対して行っておりまして、まずシンガポール国内の中で優秀なクリエイターになる素養がある人物たちを、それぞれの企業のニーズに合わせて募集を手伝っていただくことができます。また、衣食住のフォローから、簡単な日本語教育、滞在期間中の細々なバックアップまで、すべてシンガポール大使館の方と現地の役人の方々が協力してくださるという状況がある中で、受け入れる企業の側にとってみても、安心してカリキュラムを導入することができます。かつそのクリエイターというのは、もともとが優秀な工業大学の出身者であるとか、CGツールを使えることは前提、プログラミングができることは前提で入社いただいて、ただエンターテイメント・コンテンツをつくるというところに関してノウハウがないということで、企業の方に研修を申し入れているところがありますので、そういう意味では受け入れる側にとってみても、いきなり現場の中で技術を教えるということではなくて、コンテンツを一緒につくるということからスタートできるということがあります。
 彼らは、ある一定期間内、企業の中に在籍して一緒にものづくりを学んで、その後シンガポールの方に戻って実際に自分たちの国の中で、今度は新しいエンターテイメント産業というのをどんどん盛り上げていくというようなケースをつくっておられます。
 そういったところで、先ほど留学生の問題の御指摘がありましたけれども、まず国内の中でもそういった、例えば器をつくるだけではなく、研修制度のようなもの、それも企業の理屈と学ぶ側の理屈がきちんとバランスを取れるかたちで導入できたら、それぞれにとってメリットが大きいのではないかと思います。
 まだまだお話したいことがあるんですけれども、お時間ということで、1つだけ先ほどのエンターテイメントロイヤーの件についてお話させていただきたいんですが、私どもの方では、クリエイターがコンテンツをつくっていく中で、著作権問題にかかわらず肖像権の問題ですとか、商標、特許、さまざまな知的財産権に関するトラブルと闘いながらものづくりをしているような渦中にあります。
 そんな中で、これまではどちらかというと、防御、防御というか、自分たちのつくっているコンテンツの権利をどう守っていったらいいのかというところで、防戦一方の色彩が非常に濃いところがあります。
 逆にどうしてそういった体制になってしまうかというと、対アメリカだったりするんですけれども、非常に向こうのエンタメロイヤーの方々というのが、技術的にも優れていて、負けてしまうという、闘っても勝てない、というような弱腰な態度で臨むところがありまして、やはりそういったところではお力添えいただいたりだとか、相談に乗っていただけるようなロイヤーの方々が増えてきて、また優秀な方々が出てくれば、自信を持って立ち向かっていけるような気もいたしますので、そういったところでは本当にますますエンタメロイヤーの方々の出現を待ち望む声は身内でも大きいと思います。
 ということで、ちょっと尻切れトンボのところもありますけれども、以上とさせていただきます。

○牛尾会長 どうもありがとうございました。今日は、依田委員が欠席でありますが、資料5に依田委員からコンテンツ専門委員会に対する書面による意見が出ておりますので、御出席の皆さん、並びに事務局の方でこれをご確認いただきたいと思います。
 一応この辺で、コンテンツ振興に関する意見も出尽くしましたので、最後にもう一度両参考人から若干の御意見を2、3分ずつぐらい御発言をお願いしたいと思います。

○杉山参考人 今の中の御議論にもあったように、実は業界で私自体もコンテンツ制作会社、幾つもこの8年間で立ち上げてきたんですけれども、業界で今、必要とされているのは、やはり一つ審美眼、アートがちゃんとわかる、つくられた作品をちゃんと評価できる。これはやはり芸術系、今までではアートと言われていたところです。
 それから、マネジメントとかと申しますけれども、マーケットとかコンサルティングとかということになると、今で言えばMBAのプログラムに入っている部分なんです。それは日本の中で言えば、文系というところです。
 ところが、これが技術の中で、すばらしいスピードで発展していくデジタルコミュニケーションの技術を使いますので、コンピュータサイエンスについてきちっとわかってないと見誤るんです。あっという間に、半年先にはだめなものを今、一生懸命やってもしようがないということもあったりしますので、そうするとやはり理系なんですね。
 ですから、芸術系と文系と理系の部分が3つそろっていないと、これからのプロデューサーはなかなか難しいと、なおかつこれまでは縦割にきちっとビジネスモデルを持って育ってきた業界を超えて契約をしていかなければいけない。なおかつインターナショナルに契約も進めなければいけないということで、やはりこれはアマチュアレベルでは難しい、だれかがちゃんと、それぞれの経験者がきちっと教え込まないと、とても難しいと。
 ですから、何か大学院的なものをつくれば、2年間で、既に経験がある方であればあと1年間ぐらいぎゅっと、アメリカの大学のように徹夜でレポートを書くようなタイプの勉強をしていただければ、少しでも間に合うんじゃないかと思います。私たち自体も株式会社のまま専門職大学院をやるということで頑張りますので、是非応援していただきたいと思います。

○牛尾会長 これは特区はもう申請されたんですか。

○杉山参考人 今は、特区申請は全部終わりまして、文科省に設立の申請をしております。だから、これから細かく審査いただくと。

○牛尾会長 許可になるわけですか。

○森口次長 まあ、大丈夫だといいんですが。

○杉山参考人 大学の先生方に審査をしていただくんですね。やっと同じまな板の上に乗ったということですから、ここでただ3つに分かれているわけです、芸術系でも文系でも理系でもないんじゃないかと、どれなんだと。

○牛尾会長 特区は実験的にやってテストするわけですから。
 それでは、河口参考人、お願いします。

○河口参考人 先ほど杉山先生おっしゃったように、なぜ理系の方がコンテンツにいいかというと、やはりコンテンツのプロセスを知っているので、いろんなテクノロジーを使った場合のことを考えると、やはり理系のことを勉強したプロデューサーが一番強いんじゃないかと、知らないとどうしても表面的にだまされそうな感じなので、中身を知ってないといけないので、これは是非理系的な知識があった方が絶対いいと思います。
 それから、官公庁とか大きなミュージアムをつくるということで、例えば、フランスのパリが文化国家として、ギリシアとかイタリアの文化の流れを全部吸収しているんですね。よく見たらフランスにはオリジナルなものを創出しているというよりも、ヨーロッパの文化の歴史を全部吸い取っていると。わかりやすく言えばですね。吸収して、観光客を呼んで文化国家としての重要な役割を演じているという感じなので面白いと思います。
 だから、これからのアジアのことを考えると、やはり東京なら東京に、観光客がこれるようなまちづくりというのが必要で、例えばスタジオ・ジブリに行ったら何があるとか、そういう感じでやった方がいいと思います。
 去年、アジアのアニメーション会議に呼ばれて、私と宮崎さんが呼ばれたんですけれども、宮崎さんは直前にキャンセルしたんですけれども、そのときやはり中国の人の話を聞いていたら、尊敬するのはと言ったら、手塚治虫、宮崎駿、若いところで大友克洋とか、そういうことを言っていまして、みんな尊敬しております。
 だけど、中国ではあれを越すんだという教育をやっているわけです。いつ追い抜くかということで、戦闘状態で、いい意味で競争しながらやっていることが、向こうはよくわかっているなという感じです。
 あと教育で、今日のこれは是非重要なことなので、大学院教育ということで頑張ることはいいこととして、さらに10か年計画ぐらいで考えると、今の小学校、中学校の義務教育で「情報」というのが入っていますね。今の情報の教育はコンピュータの電源入れて、テキスト出して使い方を習って終わりという、どちらかと言うと、オペレーター教育で終わっているので、そこに教材としてアニメーションとか、日本の独特のものを小学校から入れることがものすごく重要な気がします。何かテーマとしては日本独自の文化の漫画、アニメーションみたいなものを、小学校からやらせると可能性として非常に面白いかなと思います。
 また、例えば東大でもやっているのは、大学院の中で、いわゆる東大に通常の入試で入ってくる人だけではなくて、社会人枠の大学院入試があるので、それは社会的に活躍している一芸入試のようなものがあって、もう十分社会的に認められている実力のある人が、社会人枠で入れますので、そこで学位、博士号を取れますので、そういう道はつくれつつあります。
 そういうことを簡単に。ただ、先ほどおっしゃられたように、変われるかどうかというのは、非常に皆さん全員のお力がないと日本は変われないかもしれないので、是非お願いします。

○牛尾会長 国立大学は、来年4月から独立法人化して、各大学は独立法人として特色を出したい。東京大学の場合でも、そういう各部門間を越えて400ぐらいのプロジェクトをやっているわけですから、是非東大で河口参考人等といった方々が大いに頑張って、そういう主張をされたらいいきっかけになるんじゃないですか。

○河口参考人 内部だけでやると、どうしてもポストとか場所の問題が出てくるので、やはり外部からも是非そういうことを言ってくれないと、変わりにくいんです。目に見えない壁となるものがいっぱいありますので、是非お願いします。

○牛尾会長 最後の一押しがあれば、それをサポートする素地は東大の中にあるんですか。

○河口参考人 はい、いろいろ動いています。エンターテイメント、メディア・アート、映像技術系はやろうと言っているんですけれども、ただ人数が少ないので。

○牛尾会長 今、何人ぐらいいるんですか。

○河口参考人 まだ数えるぐらいですけれども。

○牛尾会長 5、6人ですか。

○浜野委員 興味を持っている学生さんはたくさんいるんですけれども。

○河口参考人 どこか遮るものがあるんですね。
 だけど、さっきおっしゃったように、東大の場合は例えば少数人数で、15人か20人ぐらいのすごい少数のプロデューサーとか、アートを養成するところがあれば、そんなに仰山要らないので、やはり卒業してから指導する立場に立って、ミュージアムとか、美術館、シアター、そういうものをプロデュースできるように、厳選した、10人、20人ぐらいで十分だと思います。

○牛尾会長 東大というのは、丘の上の町のように周囲から視線が注がれやすいというところがあって、やはり東大がそういうものをつくり出すと、各大学が全部つくり出すという。そして、私学にも。今、関根委員から早稲田大学の例がありましたけれども、来年の春からの1年間ぐらいというのは、内部の動きにこういう外部の動きが連動していかないとだめなので、内部的にもお願いしたいと思います。

○河口参考人 はい。

○牛尾会長 では、コンテンツビジネス振興に関する人材の議論につきましては、この辺で一応終了したいと思います。参考人のお二人、大変に長い間拘束をしまして申し訳ありませんでした。一応ここでお二人には御退席していただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

(河口参考人・杉山参考人退室)

○牛尾会長 それでは、最後にコンテンツビジネス振興に関し、各種意見書が提出されておりますので、御紹介させていただきます。
 資料6は、日本経団連の産業問題委員会、エンターテイメント・コンテンツ産業部会から、当専門調査会に対して提出されました意見書でありまして、この部会の会長である依田委員は、本日、欠席しておりますので、代わりまして角川委員から御説明をお願い致します。

○角川委員 今、お話がありましたように、意見募集が専門委員会に出ておりましたけれども、経団連からも出ております。
 これは、本当は依田さんがコンテンツ産業のトップ40人をまとめて、エンターテイメント・コンテンツ産業部会を統率されておりまして、そこで中間報告として出されたものであります。
 これは、経団連として正式な提言として公表すべく内部手続を行っている段階でございますので、大筋では修正されないと思いますので、ここで御案内したいというふうに思います。
 皆さんのお手元に資料6がありますので、これをちょっと見ていただきたいと思います。 「はじめに」の中ごろのところに「日本経団連は、本年8月、重要性を増しつつあるエンターテイメント・コンテンツ産業が直面している政策上、ビジネス上、倫理上の諸問題について、関係企業トップの参加の下に、業界横断的に交流・検討・情報発信する場をはじめて立ち上げた」と。本当に経団連では初めて立ち上げたと思います。時間的制約もあったけれども、このような中間報告をまとめたと書いております。
 2ページ目に、これも中断のところに「デジタル化・ネットワーク化に伴う状況の変化」ということで、これも中ほどのところですが、こうした状況を最大限活かした新たなビジネスモデルを構築し、情報発信者、これは権利者のことだと思いますけれども、権利者がコンテンツに対する適正な対価を得ることを可能にしなければならない。新たな創造を生む基盤として、これはブロードバンドの普及ということを念頭に置いていると思いますが、著作権の保護強化とコンテンツの円滑な流通・利用とのバランスをとった仕組みを構築していく必要があるというふうにしております。
 私の知るところでも、経団連が初めて著作権の保護強化といったことで発言したのは初めてではないかなと思っております。
 3ページ目になりますが、ここでは国際競争力のあるコンテンツの創造、海賊版対策の対応ということで、コンテンツの海外展開の障害となっている海賊版・模造品等への対策は、既に産業界としては自らでき得る範囲内で解決に向けた行動をとっているが、国家間の問題を含んでいることから、政府による本格的な対応が必要な時期に来ているということで、国にこういう要望を出しております。
 そういうことを含めまして、4ページ目に結論的なことが書いてございます。
 こうした諸外国に比べて、我が国のエンターテイメント・コンテンツ産業のビジネス環境は劣悪であると。文化・芸術交流の視点からの取り組みはあっても、国益増進の一環として、文化戦略を持ち、各省庁がこれを共有して推進するという視点に乏しかったことは否めないと。このままでは、本来国際競争力のあるはずのコンテンツすら、世界的な競争において脱落しかねない。
 こんな危機意識の下で、今後、政府において、エンターテイメント・コンテンツ産業の国家戦略上の重要な役割を認識し、また、デジタル化に対応した新たな視点から、個々の制度の改変にとどまらず、それぞれの制度・施策が有機的に関連し、省庁の垣根を取り払った総合的なエンターテイメント・コンテンツ戦略を構築すべきであると。
 それから、著作権制度を含めたコンテンツの法的保護についても、より産業政策的な視点に立って議論を深めていくことが望まれるというふうにしております。
 ここで、初めて産業著作権、国策としての海外に向けての産業著作権という視点で産業育成が必要だということに言及しているわけであります。
 その代表として、こうしたエンターテイメント・コンテンツのバックボーンとなる基本的理念と国の役割をエンターテイメント・コンテンツ・ビジネス振興法(仮称)として制定し、個々の具体的なコンテンツ政策の指針とすべきであるということで終えております。 前回の調査会で、映像コンテンツの認証の研究会を省庁を超えてつくっていってほしいということを私から申し上げましたけれども、なかなかこの機会を逃すと、本当にまた日本が3年、5年後れてしまうと思いますので、どうかそのことについても、経団連もこんな形で対応すべきだとしておりますので、この後は、時間もございませんので、具体的な課題については読んでいただくことにいたしまして、こういうことでよろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。

○牛尾会長 このコンテンツ問題をコンテンツ専門部会から我々が頂戴するとともに、日本経団連の中の多くの提言の中の重要項目として、ワン・オブ・ファイブとか、ワン・オブ・スリーぐらいの感じで奥田会長のところで発言してもらうと、省庁全体が動きやすい。
 専門部会から、この当専門調査会だけというのは、単なるプロポーザルだけになってしまうので、冒頭に言いましたように、ヤングコミッティーでは知的所有権等が一番プライオリティが高いと決定したことが大統領を動かしたわけですから、そういう意味では、日本経団連の産業政策の中で何よりもこれだというようなところで、経団連の中でのプライオリティーを高めてほしいということを、是非依田委員にお伝え願いたいと思います。

○角川委員 18日に、経団連の理事会でこれが正式に承認されますので、その後に、今、牛尾さんがおっしゃったことをまた伝えていきたいと思います。

○牛尾会長 重要な項目の1つではなくて、重点3項目か、4項目にこれを入れて頂きたいと。

○角川委員 はい。

○牛尾会長 続きまして、資料7を御参照願いします。
 資料7は、第1回専門調査終了後に、コンテンツビジネス振興に関する意見募集を行いました結果を事務局がまとめたものであります。
 内容について、事務局から簡潔に説明してください。

○森口次長 資料7をご覧いただきたいと思います。
 先月の10月17日から10月30日まで意見募集を行っております。首相官邸のホームページの掲載で周知を図っておりまして、電子メール、ファックス、郵送等によりコメントをいただいております。
 結果として32件、個人7件、団体25件から御意見をいただいておりまして、次のページ以降にまとめてございます。
 今後いただいた御意見については、この専門調査会での検討の参考とさせていただきたいと思います。
 以上でございます。

○牛尾会長 ありがとうございました。以上のように、コンテンツビジネス振興に関する関係確認の要望は大変に強いものがあります。
 つきましては、来年3月に予定しておりますとりまとめに先立って、中間の議論として、来年度の予算や法律にも反映した観点から、これは平成16年度の予算が暮れから来年にかけて討議、決定されますので、それに間に合うように当専門調査会としても中間とりまとめを行い、国に対する今後のコンテンツビジネス振興に向けた方向性について提言を行いたいと思っておりますが、いかがでしょうか、異議ございませんか。

(「異議なし」と声あり)

○牛尾会長 ありがとうございました。それでは、そのように進めさせていただきたいと思います。
 事務局には、前回及び本日の議論や各種意見書等を踏まえて、中間とりまとめの作成をお願いし、次回の会合において皆様に御議論を頂戴したいと思います。
 案の作成に当たっては、各委員とそれぞれ事務局が個別に伺いまして御意見を頂戴したいと思っております。
 その上で、総括的にまとめて次回に議論したいと思います。本件につきましては、御質問、御意見ございますか。

○関根委員 コンテンツ振興ということでよろしいわけですか。振興ですから、規律とか、規制という内容はできるだけ入らないように対応していただきたいと思います。これは要望であります。

○牛尾会長 振興の観点は、規制とか行政の介入がより少なくということですね。

○関根委員 そうです。

○牛尾会長 それは当然だと私も思いますが、そういう疑念を持たれないようにしてください。
 あとございませんか。
 では、特にないようでありましたら、そういう御趣旨を十分勘案し草案をまとめて、あと御意見は個別に訪問したときに率直に申し上げてください。是非お願いいたします。
 それでは、予定の時間よりも若干早いですけれども、本日の専門調査会をこれにて閉会したいと思います。
 次回は、資金調達、国際展開及び中間とりまとめ案ということで、12月8日月曜日、午前8時30分から本日と同じこの場所で開催したいと思います。
 では、本日は御多忙のところありがとうございました。これをもって終了いたします。