○牛尾会長 ありがとうございました。それでは、続きまして久保利委員お願いします。○久保利委員 弁護士の久保利でございます。私ごとですけれども、私は弁護士になって33年たつんですが、30年間エンターテイメントのビジネスに関わってきた部分がございます。
その中で、今般の知財戦略本部の本部員になり、計画をつくり、そして今この専門調査会のメンバーということになったわけですけれども、私はやはり基本的なことは、今回国策として知財国家というものをつくっていく意味というものはクールジャパンといいますか、最近東南アジアで随分日本の映画も音楽も非常に人気があるようでありますけれども、まさにこの国というものをどういう形で世界にアピールをしていくかという基本戦略をつくってそれを具体化していくことです。それによって産業としてのコンテンツ産業というものが一人前の産業になるのではないが。私はずっと見ていて、流通、制作、下請、現場で働く人々の関係というのはどう見ても産業と言うにはまだまだ脆弱な部分があるのではないかと思っております。
したがって、クールジャパンをつくるためにはどうしたらいいのかという基本戦略をつくっていく必要があるんだろう。その場合にもちろん一つひとつの権利、貸与権であるとか、肖像パブリシティー権であるとか、輸入権であるとか、いろいろな個別の権利を確立していくということももちろん一つの役割だと思いますけれども、その一つひとつの継ぎはぎとしてではなくて、全体としてそれがどういう関係に立って今後の国策がどう進むのかということまで視野に入れて、是非この専門調査会で実りのある結論を議論の上でつくれたら大変すばらしいのではないかと思います。
その点で今、久保さんもおっしゃいましたけれども、このメンバーは本当にいろいろな関係の方々がいらっしゃるわけでありまして、ある意味で言いますとこのコンテンツ産業そのものを担っている皆さんということでもあるわけです。思い出しますと、司法制度改革のときには法曹三者、裁判官、検事、弁護士は、おまえらはまな板の上のコイだ。おまえらをどう料理するかというときに、おまえらがいろいろなことをあれこれ言うのはなま板の上のコイが包丁を持っているようなもので、こんなものはろくなことにはならんというふうにさんざん言われました。そういう部分がないとは言いませんけれども、やはり一番その業界の問題点を知っているのもやはりまな板の上のコイであります。そういう点から言いますと、十分その立場を認識した上で相互によく実態をわかっている方々が、自分たちの自己改革を含めてこういうふうにしていったらどうだろうかという積極的な提案をしていただけたらと思います。そういう意味では、まな板の上のコイが包丁を持って何か言うなというふうなことを私は絶対言うつもりはありませんけれども、その分だけ逆にそれぞれが生産的な前向きの議論を、うちの業界はここが問題だ、これを改革できたらどうだ。それは隣の世界にはこういう影響になる。それはどうだというふうに連携を保ちながら、新しい戦略がつくれたらすばらしいのではないかと思います。
そういう点で、すばらしいメンバーに恵まれてこの議論が活発になり、かつ一つひとつの個別業界の利益代表同士の言い合いにならないように、私も決して法曹界の利益代表として言うつもりはありませんので、是非そういう議論が会長の下でつくれたらすばらしいと期待しているところでありますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○牛尾会長 ありがとうございました。それでは、続きまして熊谷委員お願いいたします。○熊谷委員 セガの方でゲームコンテンツの開発会社ということでヒットメーカーより参りました。ゲームのコンテンツを制作しております。ゲーム制作の現場なんですけれども、昨今も徐々に変化を遂げておりまして、さまざまな技術革新等で現場の物づくりの状況も変わってきています。
ところでゲームコンテンツと申しますと、ここ二十数年ほどの歴史を持つまだ若い業界ではあるのですが、こちらのコンテンツビジネスの世界におきましても、当初はやはり日本の国内製のコンテンツが非常に世界、ワールドワイドで人気を博しておりまして御評価をいただいていたわけですけれども、徐々にそれがアメリカやヨーロッパですとかアジアの日本以外の国から出てくるコンテンツに巻き返しを今、図られている次第です。優秀なクリエーターの方々が日本以外の国でどんどん育っておられて、そして日本でも市場力を持つようなコンテンツが徐々に入ってきています。
その中で殊、ゲームコンテンツという部門におきましては、日本がこれまでリードしてきたというところもございますので、できる限りその競争力を取り戻す。そのためには、よいコンテンツを生み出す基盤の整備に注力していけたらいいなというふうに考えております。
やはりクリエーターの育成の問題ですとか、流通の問題ですとかというところでは我々クリエーター、またはその業界の諸団体の方々とも問題を共有していることと思いますので、そういったところでまた発言させていただきながら解決する方向で前向きに取り組んでまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
○牛尾会長 ありがとうございました。では、続きまして里中委員お願いします。
○里中委員 私はずっと現場の人間で、自身も創作に携わってきたわけなので、どうしても創作者の立場からという見方をしてしまうかもしれませんけれども、おこがましい言い方ですが、漫画あるいはアニメーションその他の日本の文化というものを形づくる一つの大切な要素だと信じてやってまいりましたので、この分野がより活性化することが日本文化の価値を高めると信じて頑張っていきたいと思います。
いろいろと心強い方がメンバーにいらっしゃるのでいいんですけれども、例えば先ほど久保委員の方から少しお話がありましたが、ポケットモンスターの展開というのは日本としては珍しく積極的にコンテンツを売り込んだ結果、ああなった。もっと早くああいうことをしていれば、もっと早く、そして多くの利益が得られたと思うんですけれども、結局一企業が頑張って戦略を立ててやらなければああいう展開ができなかったと思っております。世界各地の至るところであのポケモンのキャラクターを見る度に、ここに至るまでの御努力に頭が下がると同時に、こういうことをやればできるのにどうしてやれないのか。非常にもったいないという、さまざまなほかのキャラクターに対しての思いがありました。 日本の企業というのは基本的には皆さん、結果を求めるべきではないということが美学とされてまいりましたので、一人ひとり皆、余り経済性ということを考えずに頑張ってきた面があると思うんです。
ただ、このままだともったいなさ過ぎるというのは、コンテンツそのものがアピールの仕方によりましては我が国の物の考え方、我が国の人々の心を伝える大変重要なツールになり得ると思っております。映画とか漫画、アニメーション、テレビドラマ、音楽、すべてが、ほかの国の人たちに対して我が国の心を伝える重要なアイテムだと思っております。 戦後生まれの私たちにとりましては、アメリカ映画から受けたアメリカ人の価値観、アメリカ文化、アメリカ人というのはこういうふうに考えるんだ、アメリカの正義とはこういうことなんだと、悪い言葉で言えば洗脳かもしませんけれども、映画やテレビドラマに親しむことによってアメリカへの愛着を深めていったように思います。アメリカは見事に国家戦略としてこういう文化的な素材を使った。特に映画を使ったと思います。それによって感動を与えて、なおかつお互いの国民性を理解することにつながるのであれば大変すばらしいことではないかと思っております。
ただ、今の日本の現状でコンテンツビジネスというまだ一般には何のことだと言われるようなこの分野で、これまでは民間、一企業、一個人の努力に頼るしかなかったんですが、ここまできますと是非やはり国単位で、国として積極的に支援していただきたいと思っていた矢先ですので、大変うれしく思います。
国際展開の重要性というのは経済的な面だけではなく、申し述べております文化的、あるいは心を伝えるという意味で大変重要だと思っております。私が属しております漫画の世界では、先ほど来、少しお話が出ておりますけれども、漫画だけに限らず、小説その他の出版業界というのはこれまで戦後、著作権の中に含まれる貸与権というものを行使しないでやってきたわけです。つまり、日本国民がより安くといいますか、できれば無料で文化的環境に身を置けるように、そのことを国として支援するために、本来著作権の中に含まれる貸与権を行使せずにきたわけです。音楽業界がそれを行使できるようになったときも、出版業界は行使するという積極的な動きを持たずにやってまいりました。
今、本もいろいろな読まれ方をいたします。レンタルということもありますし、図書館という問題もあります。あるいはウェブ上でも見られるということもあります。これまで日本文化を支えてきた出版業界、私たち漫画家に限らず、小説家の方々にとってもその貸与権を行使できないということが創作への支え、励みを少し変えてしまう。また、若い方たちにとって入って魅力のある世界だと思われなくては、はっきり申し上げて経済的にも正当な見返りがない世界だと思われては魅力のある世界だと思われなくなって、入ってきたがる方が少なくなると大変だという危機感を感じておりますので、これまで権利を制限されておりました貸与権の行使ということを是非認めていただきたい。認められる運びになると期待してはおりますけれども、是非もう一歩の支援をよろしくお願いいたします。 また、これまで漫画に長く関わっておりまして、諸外国からの日本の漫画を研究したり、日本の漫画について知りたいというニーズが大変高まっております。だけど、公的なところで漫画の資料、データ、そういうものを海外のどこからでもアクセスできて、資料館として答えられる窓口がないということを非常に悔しく思っておりました。できましたら、漫画博物館なり資料館なりは欲しいわけですけれども、建物を建てるのは大変ですからデジタル上の資料館でも構わないと思います。多言語に対応できて、作者名からでも作品名からでも、ほんの少し作品内容を紹介して漫画に関わる情報をすべて発信できる資料館が、我が国の文化の一環としてこういうものがあると提示するのに必要な時期に差し迫っていると思います。
なぜこんなに焦るのかといいますと、各出版社とも古い時代のものは合本として出版物が残っています。ただ、最近は各出版社ともデジタル化が進んでおりまして、資料はどこからでも取り出せますけれども、漫画の黎明期であります我が国の漫画が世界において漫画のルネッサンスを立ち上げたと私は思っておりますが、そのころの資料が合本もどんどん酸化いたしますし、昨今の社会的状況で出版社が倒産したり、合本の行方がわからなくなったり、いろいろなことがございます。各出版社にもお願いはしておりますけれども、人手がない。デジタル化はすべてできない。しかも、そういう資料館をつくった場合にその運営管理はどうなるのだろうかということがネックになっておりますので、是非国のお力でそういうものをつくっていただきたい。
できれば希望ですが、そこではやはり閲覧権、展示権などを発生させて、提供してくださった出版社、作家に対して、形だけでも見返りがあれば、より協力が得やすいかなと考えております。
話にも出ておりますが、演劇において午後8時以降も子役が使えるということも、労働基準法と、先ほど来申しております貸与権、閲覧権、展示権を行使しないということも、すべて戦後の日本が貧しかった時代に、なるべく負担のない形で大衆に文化的環境を与えるということと同時に、労働基準法は労働者が不当に搾取されないように、労働者をよりよい労働環境に置こうということでつくられたものだと私は受け止めております。
今、24時間体制で世界に情報を発信するという時代ですから、労働時間の何時から何時までというよりも、個々の労働に関して何時間とかという個別の対応が必要かと思いますので、それによって演劇、ビジネス、その他がより活性化するとすてきなことだと思っております。
では、コンテンツビジネスをどうやっていくかというと、個々の業界でやっていくと大変な面もありますので、コンテンツビジネス全体を振興するために何か一括して皆でできる、あるいは支え合う場が必要かなということと同時に、プロデューサーの育成ということは是非必要だと思っておりますので、教育機関で文化を支えるプロデューサーの育成ということを支援していただきたいと思います。
いろいろなことを申し上げまして、すみません。時間をオーバーしましたが、今後それぞれの会合で皆様の御意見を伺いながら発言する機会があればと思います。よろしくお願いいたします。
○牛尾会長 ありがとうございました。では、続きまして重延委員お願いします。
○重延委員 テレビマンユニオンの重延でございます。私は放送という仕事から始めましたけれども、放送だけではなくて映画制作、音楽コンサート、あるいはCSの編成などに携わって、広がりのある意味でこのソフトの世界を見ているのですけれども、実は昨日までカンヌに行っていました。今カンヌでMIPCOMという会合がありまして、これは放送を中心としたコンテンツビジネスをどう動かしていくかという会合です。これは6か月に1度カンヌで開かれているわけですけれども、その度ごとに伺ってみて、やはり急速な変化をしているんです。この急速な変化をしているということをどうとらえるかということはとても大事なことのように思います。
ただ、9.11があって、アメリカがなかなか参加できなくなったとか、この前の4月はSARSの問題でアジアの方々が来ないという経験を踏まえて、ちょうど1年半あるブランクを経た10月のMIPCOMだったんですけれども、やはり大きく変わっていました。大きなうねりが見えてきたのは、1つはやはりコンテンツそのもののただパッケージされたものを売り買いするというだけではなくなってきているんですね。
言い方を変えれば、例えはフォーマット権とかリメイク権というコンテンツから生まれるものがどう動くか。そのことに対しての議論が大変盛んでした。コンファレンスがあっていろいろな会合があるんですけれども、テーマの多くはそのフォーマット権、リメイク権、つまり発想のオリジナリティの強さというものをどうビジネス展開できるか。実際にヨーロッパはコンテンツビジネスに関しては非常に弱かったんですけれども、今はそのフォーマット権というある考え方によって、これをアメリカに逆に売るという形がとても進んでいます。
ですから、御存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、エンデモールというオランダの会社はビッグブラザーというリアリティショーをアメリカに相当高い金額でしっかりとビジネスとして売り込んでいて、他にサバイザーというのもありましたし、幾つかのフォーマット販売が生まれた。こういうリアリティショーの次は何かというのがもう今のテーマになっているんですね。そういう意見がたくさん交わされるようなところになっている。 それからもう一つはNHKさんなどがリードしているハイビジョン、ハイデフィニッションTVがやはりヨーロッパでも考えられ始めている。特にBBCが真剣に考え始めたからヨーロッパは動き始めた。もちろんそれに加えてDVDと、こういうものが急激に動いてきています。
ただ、私がカンヌに行って感じたのは、日本がそれにどう参加していくかということなんです。正確な数字はまだ集計されていませんけれども、私の印象では、MIPCOMに参加している参加者の編成は放送局が大体4割くらい、3割ぐらいがシンジケーションというか、流通関係、残りの3割がプロダクションと、世界的にはこういう構成なんです。
ところが、日本あるいはアジアは放送局がほとんど中心です。それで、実際にはシンジケーションはほとんどない。プロダクションは日本の場合はアニメだけ、アニメはビジネスになっているというか、流通があるんです。だけれども、日本の制作プロダクションでブースを持っているものはゼロです。
なぜか。ここにマーケットが生まれない。そういうことを考えると、私もプロダクションの一つでありますけれども、非常に残念な思いをしてきました。多くの世界中のプロデューサーも集まってきているけれども、日本のプロデューサーにはほとんどお会いしません。そういうことから考えると、この時代の大きなうねりの中で何かが遅れている。何かをしないでいるという感じがつくづくとするんです。その背景に何があるかということをやはりしっかりと議論をして、そこで世界の大きなうねりのスピードに追いつくような、負けないようなことにすることが重要と考えます。
実際にアジアの韓国、中国から非常に多くの方々が参加してきています。この流れの中で日本が過去のシステムだけではなくて、新しいシステムでそういうことに迎えるような状況をつくるのがとても重要ではないかとつくづくと感じました。
コンテンツの問題というのは、ただコンテンツを売ればいいということではなくて、このデジタルの時代にはやはり今までの既成概念を変えて新しくビジネスとして、それからもちろん文化として、この両側面を持ちながら変えられる新しい観点が要るんだろうと思うんです。それはデジタルが唯一の変革のチャンスであって、このデジタルという最後のチャンスを有効にもう一回考え直す。ですから、コンテンツという問題は大きく考えれば放送と通信の問題も抱えているわけですし、それからハードとソフトの問題も抱えている。それからもう一つ、組織と個人というか、組織とクリエーター、この問題を抱えていると思うんです。ここに著作権の問題が入ると思いますが、こういったことを頭に入れながらコンテンツをどう生かしていくか、あるいはコンテンツをつくる人をどう生かしていくかということを今すぐ考えないと、やはりこのうねりからは置いていかれますよという気がいたします。
ただ、私は一つだけとてもいいなと思うのは、日本人というのは才能があるなとつくづく思います。カンヌに行く前にパリに寄りましたらちょうどパリコレクションがあって、日本のデザイナーは大変国際的な活躍をしていますね。それから、パリではお寿司の食文化がとてもはやっていて、これもやはり一つの日本の文化だと思うんですけれども、そういう日本のある種の才能というものがあり、自信を持って世の中に出ていける可能性は十分あると思います。ですから、その可能性を生かしていけるアイデアがこういう会から生まれていって、国と、それから個人が一緒になってつくるということであればすばらしいと思っております。
○牛尾会長 ありがとうございました。では、続きまして関根委員お願いします。
○関根委員 NHKの関根でございます。先ほど配布された資料の6−1の7ページに、コンテンツ産業の海外収支とありますけれども、その中の放送番組についての輸出、輸入というところで、大体輸出1に対して輸入は5という数字が出ています。データそのものはかなり古いんですけれども、恐らく実態というのは変わっていないか、むしろ輸入というのはもっと増えているのではないか。恐らくここにはパッケージ中心で放送権というライセンスの問題が入っていないんじゃないかと思うんです。これは御承知のようにオリンピックをやるにしても、ワールドカップをやるにしても今、放送権という問題を抜きにしては語れません。しかもこれはどんどん高騰していきまして、我々放送事業者にとっては大変な負担になっているんですけれども、そういう中で知的財産を守ってコンテンツ流通を促進させる。その上で低迷している日本経済の活性化を図ろう。更に国際展開の上でもこのコンテンツの優位性を確保しようということについて、我々としても全く異論はないし、いろいろな形で協力できることは協力していきたいというふうに考えています。
そうは言ってもNHKは放送事業者でありますので、やはり放送ということを最優先に考えなければいけませんし、放送をやった後の番組の二次展開といったものについては、できるだけ可能な範囲で円滑な流通が行われるようにやっていきたいと考えています。
我々が今、国内外で実施していることについて簡単に御説明いたしますと、国内展開についてはビジネスベースで、放送したあとの2次展開としていろいろな番組、DVD、そういったものも我々の関連団体などを通じて売っています。更に国内のCSとか、CATV事業者といった方々の振興という側面からいろいろな番組の提供もしています。
一方、国際展開でありますけれども、これについてビジネスベースで我々がつくった番組、そういったものを海外にいろいろな形で売っています。ドキュメンタリーあり、ドラマあり、アニメありでして、14年度の実績で44の国におよそ4,300本の番組を出しました。その一方でNHKの組織の性格上、無償協力ということで、特に発展途上国に向けましていろいろな教育関係の番組といったものも出しています。これは14年度の実績で33の国に対しておよそ3,500本の番組を無償で提供しています。国のODAなども使ってやっていますし、更に国際発信というものをやっています。
NHKはラジオ放送を始めてから今年で78年、テレビを始めて50年になりますので、いわゆる放送コンテンツというのは大量に抱えています。抱えてはいますけれども、いわゆる権利関係ということに気づき始めたというのは最近でありまして、まだまだ我々が持っている放送コンテンツについていろいろな権利処理をやっていかなければいけません。
そういったコンテンツ流通の環境整備の一環としまして、今年の2月から埼玉県の川口にNHKアーカイブスという我々のコンテンツを保管し、継承し、またそれを展開していくという意味で作った施設を運用し始めています。ともかくこれからコンテンツを流通させる上では権利処理という問題は欠かせませんので、今、古い番組等についてはいろいろな権利処理をやっているということであります。
ただ、一言言っておきたいのは、この放送コンテンツを流通させる上で考えていただきたいのは、いわゆる無償ではないということです。権利処理するにしてもコストはかかりますので、ただではないということが1点です。
それともう一つ、権利関係については我々はどうしても取材対象者といった方々との信頼関係に基づいて放送番組というものはつくっているわけですから、そういった信頼関係を損なわない範囲で権利処理を我々NHKの責任でやっていかなければいけない。それに代わる方法論がいろいろな形でこれから出てくるのではないかと思いますけれども、少なくともやはり番組をつくったところが責任を持ってきちんと対処していくということが必要なんじゃないかと思います。そういうことも踏まえながら、これからこの場でいろいろな議論を展開していきたいと考えています。
最近の傾向としまして、先ほど重延さんからお話がありましたけれども、放送は技術革新の成果を取り入れた文化とよく言われていますが、我々が40年近くかけてつくってきましたハイビジョンという技術についてはアメリカでは既に広がっていますし、ヨーロッパでもようやく最近ハイビジョン技術に対する興味を持ち始めています。今いろいろな意味で、我々のところにハイビジョンを使っての番組制作という申込みがきています。ちょうど国際展開での優位性を確保するという意味でも、一つの大きな転換期になるんじゃないかと我々は考えていますし、いろいろな意味で国際競争政策も含めてこのハイビジョンの技術というものをこれから世界各国に展開していきたいと考えています。そういったものも含めて、こういった場を活用しながらコンテンツ流通についてのいろいろなありようというものを探っていきたいと考えています。
○牛尾会長 ありがとうございました。では、続きまして浜野委員お願いします。
○浜野委員 東京大学の浜野でございます。お話があったように、コンテンツというのは大事なビジネスなんですけれども、文化資源としても大事です。海外から漫画とかアニメーションとか音楽とかゲームを通して日本を見ていますので、国家ブランディングとしての文化戦略の中でコンテンツビジネスが重要だという位置付けをしていただきたいと思います。フランスでも鳥山明さんが最も著名です。首相とか日本の経済人を通して日本を見ているのではなくて、コンテンツを通してフランス人は日本を見ているわけですから、文化という点でも大事であろうかと思います。
その大事さを知らないのは実は日本国民ではないのかと思っています。その認知を上げる必要があります。コンテンツビジネスが文化でありつつ産業であり、それがとても大事であるのに、経済人の方は、色物だという目で見ていらっしゃる方がすごく多く、研究者もそうなので人のことを言えないんですが、重要性の認知を上げていただきたい。
作家の方は、最近になってすごいすごいと言われることに違和感を感じています。これまでずっと放っておかれたのに何となくビジネスといった途端にほめてくれるということに対して違和感を感じているのです。ですから、そういったことをなくすために国内から認知を上げていただきたいということが1点であります。
2点目は、私は大学で教えておりますので、やはり人材育成のことに対して危機感を持っています。現場では本当に人材の枯渇とか、不足というのが大きな問題になっています。コンテンツビジネスで成功した例を見ますと、例えばクラシック音楽にしても、バレエにしても、フランス料理にしても、オートクチュールのファッションにしても、ハリウッドにしても、見事な人材育成システムを持っていています。留学生を受け入れて仲間を増やして外に出します。昨日もシンガポールの女性から電話があって、国費留学で日本でアニメーションのことを勉強したいといいます。1か月に1人くらい私の電話があります。受け皿がないためにそういった留学生の方を日本に呼んで学んで帰っていただくことができないということで、本当に残念です。
もちろんクリエーターとかプロデューサーとかエンタメロイヤーとかも必要なんですが、先ほど熊谷さんからもお話があったように、技術も重要です。ゲームは技術でアドバンテージを取っていたので非常に有利だったんですけれども、ほかのコンテンツはほとんどアメリカに技術を押さえられています。技術の研究開発の場がありません。最近、韓国政府は各大学に付けたIT研究所をコンテンツの研究所にもするということで組織改正をしましてコンソーシアムをつくってエンターテイメントテクノロジーの技術開発に、力を入れています。日本ではそれをするところが一つもないわけですから、バランスのいい人材育成が必要だと思います。ハリウッドのシステムというのは非常によくて、日本の人材育成とは全く違い、よくできています。チャンスがあればアメリカの例を見ていただくといいかと思います。
3番目は重延さんからもお話があった流通の問題です。どうも民間の努力だけではできないので、国際展開について何らかの措置をしていただきたいと思っております。
例えば2002年にシンガポールはメディア21ビジョンを出しました。GDPに占めるコンテンツの売上げが今1.56%なんですが、ここ10年の間に3%という目標値を立てています。韓国は海外売上げの上位5位に入るとか、目標設定を期間を限定してやっています。そういったことをここで議論できるのか、あるいは新しい振興法のようなものを、目標設定を明確にした議論をできたらやりたいなと思っております。以上です。
○牛尾会長 ありがとうございました。では、続きまして日枝委員お願いします。
○日枝委員 ちょっと遅れまして申し訳ございません。最初の説明がどういうことであったかを無視をいたしまして、日ごろ考えているコンテンツについて、放送側からの考え方も含めてお話を申し上げたいと思います。
まず、基本的に今、皆さんがおっしゃっているように、最近でこそコンテンツというこものが非常に脚光を浴びてきたわけでございますが、日本の歴史を言うまでもなく、やはり鉄は国家なりで重厚長大なものが産業を支えているという日本の歴史の中で、コンテンツというものが昨今急に出てきたというものが実感であります。したがいまして、いろいろな問題がまだ未解決のまま進んできている。したがって、こういう委員会ができて一つひとつ保護していこうということになるのではないか。それに対して、大いに私ども放送局側としても実は期待をいたしているわけでございます。
ちょっと最近まではソフトと言っておりました。ただ、コンピュータができてからはソフトと言うよりも情報の中身ということでコンテンツということになってきたわけでございますが、私どもがとってまいりました政策が参考になるかもしれませんので申し上げますと、コンテンツというのは非常に狭くは考えておりません。私は放送局の人間でございますが、放送番組だけという理解をしておりません。かつてから映画もつくっておりまして、これもコンテンツでございます。それに基づく出版もコンテンツでございます。また、それに基づくDVDですとか、いろいろな形のパッケージ系のCD、これもコンテンツでございます。それから、いろいろなおもちゃ等のマーチャンダイジング、これもコンテンツでございます。つまり、私どもは一つのクリエーターがおつくりになったコンテンツをブロックバスターに、つまりいろいろなものの権利を派生させていくということがどうもこの一番の問題であるのかなと。今まで日本にはない発想であって、鉄は国家なりの日本ではなかなか出てこなかったろう。
コンテンツの権利について私が知る限り、非常に熱心におっしゃっていたのは漫画『サザエさん』の長谷川町子さんでありました。今から30年近く前になりますけれども、大変に権利については厳しい御意見を持っておりました。ただの我々放送関係者、あるいは映画の関係者、出版の関係者は、何であの人はあんなに権利をきつく言うんだろうかというのが当時の日本の状況だったと思います。今の時代を考えると隔世の感があるわけでございますが、やっとそういう面が出てきたのかなと。
したがいまして、コンテンツを考える場合には創造、クリエーター、それからそれを保護してあげなければ何の意味もないので保護の問題、それからやはりそれをどうやって活用するか。それから、それをどうやって流通するか。この4点をこの会議でどういうふうに詰めていくかということ、これがコンテンツ、知的財産、つまりそういうものが広がっていくためのものの取り組みであろうかと思います。
私は、これはお世辞でも何でもありません。里中さんがおられるからでもありませんし、久保さんがおられるからでもありませんけれども、一つのコンテンツがこれだけ大きな収益、利益を生むかということは、多分かなりのお年の方はわからないんだろうと私は思います。ポケモンあるいはいろいろなアニメーションが出てきても、これだけ何百億の最終利益を生むということがわかっていない。これは今、言った4つ、つまりクリエーターの育成があり、あるいはそれを保護し、活用し、流通しているから出てくるのであって、ひと昔前でしたらこういうふうな利益にはならなかったと私は思います。それが利益を生むから、実は日本の代表的な文化になっていくんだろうと思います。
ただ、日本の文化であるのは、例えば相撲とか歌舞伎とか言っておりますけれども、実はこの新しい現代の文化にアニメーションとか映画とか音楽とかが出てきていいわけでございますが、これが正しいかどうかは別にして、映像、映画というのは言語の壁が非常にある。この辺をどういうふうにこれから解決していくかが非常に残されている問題だと思います。
それからもう一つはクリエーターの問題でございますが、アメリカはクリエーターがすごい豪邸に住んで大変な利益を得ている。日本の場合、プロデューサーですとか監督ですとかクリエーターがすばらしい利益を得ることがあるでしょうか。この辺の問題というものを解決しないと、幾らコンテンツ産業の育成と言っても、これはできないだろうというのが1つです。
それから久保利先生がおられますけれども、アメリカの場合のプロダクションにしろ、放送関係にしろ、これらのマネジメントをしているのは皆さん弁護士の方です。権利があってクリエーターができるという発想です。日本の場合は、作品があって、さあそれからどうやって権利をつくっていこうかという世界です。この違いが非常に大きいということを私は考えておりまして、総論的で大変恐縮でございますが、その辺からこの委員会でいろいろ手分けをしながら議論をしていけば、まだまだ将来のある大きな産業に伸びると私は思っております。ありがとうございました。
○牛尾会長 ありがとうございました。最後に依田委員お願いしたいと思います。
○依田委員 依田でございます。もう先輩の方々が非常に内容のあるお話をされましたのでかいつまんでお話をさせていただきます。
まず、お話をさせていただく前に資料の6−2の22ページなのでございます。着うたという皆さんには耳新しい言葉があると思うんですが、この市場規模でございますが、サービス開始10か月後の時点の2003年9月で500万件のダウンロードになっています。これは、auというKDDIの13機種だけでの実績でございますから、JフォンあるいはNTTドコモの参入はまだしておりません。そういう意味では非常に大きなビジネスになりつつあるということだけ、まず最初に資料の訂正をお願いしたいと思っております。
既にいろいろ御発言があったとおり、私は今回非常に特徴的に感じておりますのは、このコンテンツというものが文化論、そしてまた産業論としていよいよ取り上げられてきたということで、今までにない大きな流れだと思っております。これに国家観どのように乗せていくかという久保利先生のお話もございますが、決して業界エゴ的なことではなくて、特に私はレコード業界を代表しておりますが、それと同時に経団連のエンターテイメントコンテンツ産業部会の部会長も仰せつかっておりまして、先ほどから非常に幅広いエリアにおいてのお話を興味深くお聞きいたしました。
レコード産業は、104年前に欧米から著作権制度が導入されたんです。日本音楽著作権協会が64年前に創立されました。そして、61年前に社団法人日本レコード協会が創立されて、著作隣接権という立場から権利というものを大事にしながら今日までまいりました。そのビジネス環境が今、大幅に変わりつつあるという中で、今回このコンテンツビジネスについての提言の中で、重要性あるいは関連人材の育成等もさることながら、国際展開あるいはまたブロードバンド時代におけるコンテンツ流通の促進というものがいかに大切であるかということを痛切に感じておりまして、その辺のことをちょっと申し上げさせていただきたいと思います。
まず、人材については申すまでもありません。エンターテイメントロイヤーが全く不足しております。私どものレコード業界で、エンターテイメントロイヤーは数えるほどしかおられません。私どもが長いことお願いしているエンターテイメント系の弁護士さんは、私どもの相手方の作家あるいはアーティストの弁護士も兼務している。同じ弁護士さんがこちらと向こうの両方にまたがった弁護をするようなケースが多々あります。それほど日本にはまだエンターテイメントロイヤーが不足しているということを一つ申し上げたいと思います。
それから、国際展開の重要性では音楽関係は輸出が29億円に対して輸入が251 億円でございまして、完全な入超ということです。日本国家が非常に海外戦略を重視してまいりましたし、これからも海外戦略というものが大事な中で、我々はどのようにこれを打破していくのかというところが非常に今、問題になっております。
その中で、世界の大きなマーケットである東南アジア、ここに約20億近い華僑系、中国系の人たちが住んでいる。そこで日本の音楽、アニメ、映画、雑誌等が非常に渇望されている中で、特に私どもがこれから積極的に進出するためには、海賊版についてのクライングベイビー、嘆くばかりではなくて、その海賊版とフレンドリーに競争しながら、現地できちんとした産業を立ち上げるということが必要だろうと思っております。
そんなことで、今ジェトロさんもいろいろな現地での海賊版対策あるいはまた模造品対策等もおやりになるようで、この辺については私どもも積極的に参加したいと思っておりますが、それと同時にやはり現地で積極的に販売した、その結果として日本に逆流してくる商品について、正規品の逆流についての安全弁といいますか、担保としてレコード輸入権の創設というものを今お願いしているということであります。
それから、ブロードバンドにおけるコンテンツ流通の促進ということをちょっと申し上げたいと思います。先ほど里中さんがおっしゃられましたし、あるいはまた久保委員もおっしゃられましたが、とにかくアニメ漫画、そういう人たちがつくり上げたもの、それがやはり音楽のJASRACのようにきちんと管理できるシステムができないかというようなお話もございましたが、私どもの場合で言いますと1982年にデジタル商品であるCDが登場しまして、デジタル商品を使った業界としては一番古い業界だと思っております。
その中で過去、長年にわたってデジタルアーカイブ化ということについて取り組んでまいりました。これも既に総務省等のいろいろなプロジェクトも組んでおりまして、かなりの高度な認証システム等ができ上がっております。この辺をもっと国家戦略の意味で活用していただければ、私どもももっと幅広く進むことができるであろうと思っておりまして、音楽ソフトのいわゆるデータベース化あるいはデジタルアーカイブ化だけではなくて、映像も含めた、あるいは出版も含めた幅広い展開ができるのではないかと思いまして、この辺は国家戦略として取り上げていただけると、もっとスケール感のある規模の広いものになるのではないかと考えております。
そういうようないろいろな問題を含めますと、レコード業界といいますよりも音楽業界で2年前に特筆すべきことが1つあります。それは、2001年に文化芸術振興基本法という法律ができました。これができたことによって、文化庁で初めてポップミュージックを取り上げることがスタートしました。きちんとした公式のコンサート行事にポップミュージシャンが取り上げられるような時代がきたということは、やはり文化芸術振興基本法以来のことだろうと考えておりまして、私共のコンテンツビジネスを促進するためにもコンテンツビジネス振興法の制定をして、その振興法を一つのバックボーンにして今、各委員がおっしゃっておられるような点についての各論をその下につくり上げていくと、非常に力強い日本のコンテンツ産業が開けるのではないかと思っております。ちょっと長くなりましたので、これで失礼いたします。ありがとうございました。
○牛尾会長 ありがとうございました。大変さまざまな、しかも明快な問題提起をありがとうございました。
なお、本日欠席の岡村委員からは資料7でコンテンツ専門調査会についてペーパーで意見発表がありましたので、それぞれ各自読んでいただきたいと思いますが、これも非常に興味深い問題提起であるかと思います。
いろいろな御意見が出ましたが、重延委員がおっしゃった、今のコンテンツがベンチャーだとするときこそ、このような問題を考える最後のチャンスであり、非常に重要な時期にきているので、非常にこれは的を得たものだと思います。
今から4年くらい前に経済産業省が事務局の産業競争力会議がありまして、私もそれに出ておりましたが、そのときの一番初めの議論がどちらかと言えば重厚長大で機械の償却をどうやって有利に進めるかというような議論から入っておりました。私はそのときにも申し上げたんですけれども、同じような目的で発生したアメリカのヤングコミッティでは非常に幅広く経営者並びに学会に議論を展開した結果、知的所有権こそアメリカを守る最も大事なものだと大きく問題を提起されました。
単にそれは経済界の提案としてではなくて、レーガン大統領の諮問機関として、それが国家として採択をして、そのあらゆる外交手段の中で知的所有権が外交交渉の基本になったとさえ言えるわけです。中国に対しても再三、知的所有権を経済交流の大きなかぎにする。認めた部分だけは品物を買うというようなことがあったような気がいたします。
それともう一つは、国内問題と国際問題はアメリカのように同じ波長でいっている場合は非常にやりやすいんですが、日本の場合は国際的にはやはり個人芸で非常に優れたものが自分の力ですっと伸びていっている。非常に個人職人芸的に成功して、あとからいろいろなことがついてくる。国内問題は非常に混乱状態で、何が何だかわからない状態の中から、進んだ業界から順番に整理をされていっているという状態でありますので、国内問題と、国際問題は同じ次元でうまくまとまらない部分がある。そこの整合をとるのは相当難しくて、だから政府も非常に逡巡していたんだと思いますが、経済産業省が去年からこの問題に取り組んで、今度は内閣官房で具体的な問題に取り組んだことはぎりぎりだけれども、まだ十分間に合うという気が私はしております。
ただ、同じコンテンツ問題でも分野によって違うんですね。今、御提起があった流通とか、クリエイティブの保護とか、あるいは活用等々、皆ハードとソフトの問題も込めて、組織と国の問題も込めて、分野別に大変違う。
私もこの6月までKDDIの会長をしていましたのでコンテンツの問題は非常に議論しましたが、電話の場合はとにかく流通の方が先に多くの客をつかんでしまって、音声よりもデータの方が多くなってきた。このデータの大部分がコンテンツということです。コンテンツも発信側ではコンテンツ以外にアプリケーションとかソリューションという概念をつくって、そういうものの中でまたハードのプラットフォームをどう変えていくかという議論と相互にやっていきました。
今、御紹介のあった着うたとか着メロというのは、本当に1年間でこんなに爆発的に売れるとは思わなかった。今でもすごい勢いで伸びている。とにかく需要がどんどん入ってくる。こういうことは従来では想像がつかないニーズで、日本の経済は需要不足と言われているが、ある面ではものすごく需要が供給を上回って存在している。そのように非常にアンバランスに活力があることは成長要因としては非常に可能性のあることです。バランスが取れていくと成長は大体止まるんですけれども、基本的に成長期は、初めはあらゆる点でアンバランスである。そういう点では、明らかにこのコンテンツを中心とした世界はコンテンツ全部が限りなく伸びているのではなくて、非常にアンバランスに伸びているんです。その為、日本のコンテンツ産業の前途は可能性があると考えた方がいい。
一番伸びていない吹きだまりになったコンテンツを軸にしてこの問題を解決するのではなくて、一番伸びていっているコンテンツの部分を基軸に置いて、新しい日本のこの分野の整理をしてシステム化するべき。やはり個人も尊重するけれども、それを発現する場であるシステムをきちんとしたものにする。特にシステムの方はそのまま国際的に通用するような仕組みでないと具合が悪い。その基準は、一番伸びているものを軸にして考えていく。日本の場合、政府が入ると一番競争力の低いところを常に考えてオーガナイズするものですから、全く国際的に通用しなくなってしまうので、一番競争力のあるところからオーガナイズしていって、それによってだんだん古く置き去りにされたコンテンツを失っていくということを考えていくことが大事だろうと私は思います。
製造業の場合でも、伸びるものを軸にして伸ばしているから日本の製造業は競争力がありますが、伸びていないところの救済策ばかりやっていると全然伸びないのであります。
また、この業界は玉石混交になりやすい。玉石混交は大いに結構で、やはり玉も石も混ざっているから伸びるのであって、それを市場が黙っていても分けてくれる。世界のマーケットが黙っていてもそれを整理してくれることは、ハードよりもソフトの方が更にそういうことがきちんとされているという気がします。
そういう意味で、今後の展開の中で人材の問題とか資金調達、海外展開、流通、この4つの問題は大変に重要で、とりあえずここに書いてありますようにテーマ毎に順番に議論をしますが、これは非常に入り組んだ関係になっていますので、例えば、人材を議論しようと思うと資金や流通の問題が絡んでくるというところがあるので、それは余りかたくなに分けて議論しようとしない方がいいだろうと思います。
今日は10時15分閉会でありますので残りの時間、御意見のある方から自由に御発言をちょうだいして、今後の問題整理なり、産業展開についての参考にしたいと思います。
御発言されたい方はネームプレートを立てていただければ私が指名しますが、5人くらいしかできませんので3分を厳守していただいて御発言をお願いしたいと思います。
では、角川委員からどうぞ。
○角川委員 皆さんのお話をよくお聞きして、改めてこの推進計画に触れております創造、保護、活用、流通が重要だなと今、日枝さんの御指摘になったとおりなんですけれども、こういう中で映像の場合にはまだそういう権利者や、それから持っている会社、法人著作権みたいなものとの調整をすることが全くできていない。それが、里中さんからお話があったように海外から問合せがあってもなかなか答えられないとか、いろいろな問題を含んでいると思います。
そういう中では依田さんから、音楽の世界では既にそういう調整機関ができている、認証機関もできているというお話がございましたので、私はそろそろ映像についてもそういうコンテンツの調整機関、それから認証機関というものを組織しなければいけない時期にきているのではないかと御提案したいと思います。
これについては、既に実は6年くらい前のインターネットがスタートしたときからインターネット上における映像の認証機関みたいなことの提案というのはあったわけですけれども、結局それは従来ソフトウエアさんの提案だとか、広告代理店の提案だとか、そういうことでコンテンツホルダーの側に立った提案でなかったために非常にその具体性を欠いてきたんだと思うんです。それで、今回この調査会は本当にコンテンツホルダーの方々が皆さん全員そろっておりますので、こういうところでそういう映像コンテンツの認証機関の在り方というものを具体的に考えていく、いい本当に限られた機会だとつくづく感じております。
そこで、関係する事業者の方に集まっていただいて、関係する省庁は非常に幅広いものですから、そういう方々にも合わせて広げていったらいかがかと思います。
○牛尾会長 では、皆さんから御意見を先に伺ってからと思います。里中委員、どうぞ。○里中委員 海外展開なんですけれども、先ほど来話が出ております、我が国がこういう産業にかける支援なり費用が少な過ぎるということについて、現場の実感として一言申し上げます。
これまで海外展開につきましても、海外から問合せがきて漫画を我が国に出したいとくるのを待っていただけなんです。待っているだけでも手一杯で、各出版社でもできる限り海外には出したくない。なぜかといいますと、海賊版の問題がある。幾ら海賊版を出さないように、つまり先ほどお話がありましたように現地で正規の出版物を出すと海賊版がなくなるんじゃないかという議題の下に正規契約をしますと、正規出版と同じ日に5パターンぐらいの海賊版が出るんです。国や地域によりましては、正規に輸入した情報を裏で幾つもの業者で分け合う。だから、契約上は1万部発行になっておりましても、実売は20万部とかあるわけですけれども、そういう裏社会のようなものができ上がっているという実態があります。ですから、正規の出版物を出したからといって海賊版がなくなるということは、なかなかこれはひとすじ縄ではいかない。
ところが、痛しかゆしでして、海賊版によって浸透していく作品もあるわけです。海賊版によって余りにも浸透し過ぎますと、そろそろ正規物を出さなくちゃしようがないだろういうことで受けて、その正規出版を認めるという逆のケースもあります。名前を出すのは失礼ですけれども、例えば中国などは海賊版の不買運動を国としてやりますと言っても、彼ら自身が著作権というものに対する認識がまだまだですので、わからないわけです。実際に海賊版についてこれをやめましょうと言っても聞きませんので、著作権はなぜ大切かというと将来の中国の若者たちがクリエーターになったときに著作権がちゃんと守られていなければ損をしますということで攻めていかないと、なかなか御理解いただけないんです。
そういう活動もほとんど個人的にやってきたわけですけれども、海外、特に韓国などは国が支援しまして漫画家の活動などにも支援策を出しているわけです。はるか昔、15年以上前になると思いますが、韓国に行きますと漫画家たちの集まりのところに日本の漫画本の新刊がずらっと並んでいる。これはどうしたんだと。日本語の文化を輸入したり発表したりするのは当然まだ許されていないころなんですけれども、これは国から支援金をいただいて、いいものを見て追いつき追い越せということで、当時のお金で日本円にして年間25万円と言っておりましたが、日本の漫画を買うためだけに使うお金として支給されている。ついては日本は幾らもらっていますかと言われて、一度ももらったことがないので、ありませんと言いましたが、海外からよく言われます。
あとは、ヨーロッパやアメリカで漫画やアニメーションのフェスティバルがあるわけです。先ほど映画の話もありましたけれども、商売になる部分では会社単位でブースを出したりします。ところが、去年フランスのアングレームの漫画フェスティバル、これはヨーロッパ各国に漫画を売り込む見本市のようなものでもあるわけですけれども、そこに作品を持ってきて交渉ができるわけです。これは漫画家から聞いた話なので額が本当かどうかわかりませんけれども、韓国はそのイベントのためだけに国から日本円にして2億円もらっていると言うんです。それはフルに活動できるわけです。私たち日本人はどうしているかといいますと、いつも自ら手弁当で行って自分の勉強のために見学するという形で海外のそういうイベントには参加しております。ですから、経済効果がないとなかなか企業としても乗り込めないのは事実ですが、そこで指をくわえていますとさらわれてしまう。
最近も、韓国のモバイル事業者が日本の漫画を中国へ売りたいと言ってきました。中国の広大な人民に自国のモバイル製品を売りたい。それを広めるためには漫画が一番いいだろう。ところが、漫画となれば日本だ。日本の漫画と契約をして、中国で日本の漫画の魅力でモバイルを売っていこうということがありました。
こういうことが最近多いんですね。うかうかしていると、中身を利用されてよそがもうけるということになります。もちろんきちんと著作権料はいただきますけれども、そういう動きがあるということも付け加えさせていただきたいと思います。長くなりましてすみません。
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