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第1回 コンテンツ専門調査会 議事録


1.日 時:15年10月15日(水)8:30〜10:15
2.場 所:霞が関ビル東京會舘 エメラルドルーム
3.出席者:
【委 員】牛尾会長、角川委員、久保委員、久保利委員、熊谷委員、里中委員、重延委員、関根委員、浜野委員、日枝委員、依田委員
【事務局】荒井事務局長
4.議 事:
(1) 開会
(2) 会長の選任
(3) 専門調査会の運営について
(4) 今後の進め方について
(5) 自由討議
(6) 閉会


○荒井事務局長 時間でございますので、ただいまからコンテンツ専門調査会の第1回会合を開催させていただきます。皆様におかれましては、お忙しい中、本専門調査会の委員就任を御快諾いただき、ありがとうございました。また、本日は早朝にもかかわらずお集まりいただき、ありがとうございました。
 私は、内閣官房知的財産戦略推進事務局長の荒井でございます。後ほど委員の互選により、この専門調査会の会長をお決めいただきますが、それまでの間、議事の進行を務めさせていただきます。
 この専門調査会の趣旨は、お手元の資料1のとおりでございます。お手元に資料がございますが、資料1をごらんいただければと思います。1の(2)にございますように、本専門調査会ではコンテンツビジネス振興に係る課題に関する調査・検討を行うことにしておりますので、よろしく御審議のほどをお願いいたします。
 今回は委員の初顔合わせの会合でもございますので、最初に今回委員をお願いしました方々を御紹介させていただきたいと思います。資料2の名簿をごらんください。あいうえお順に御紹介させていただきます。
 牛尾治朗委員でございます。
 岡村正委員でございます。本日は所用のため御欠席となっております。
 角川歴彦委員でございます。
 久保雅一委員でございます。
 久保利英明委員でございます。
 熊谷美恵委員でございます。
 里中満智子委員でございます。
 重延浩委員でございます。
 関根昭義委員でございます。
 浜野保樹委員でございます。
 日枝久委員でございます。本日、渋滞でちょっと遅れておられますが、後ほど御出席いただくことになっております。
 依田巽委員でございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、次にこの専門調査会の会長を選任していただきたいと思います。先ほどの資料に戻っていただきまして、資料1の3にございますように、専門調査会の会長は委員の皆様の互選によりお願いすることになっております。どなたか御推薦をお願いできますでしょうか。

○依田委員 牛尾会長にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○荒井局長 ただいま牛尾委員という御意見がございましたが、皆様いかがでございましょうか。

(「異議なし」と声あり)

○荒井局長 それでは、牛尾委員が会長と決定いたしました。ここからの議事の進行は牛尾会長にお願いしたいと思います。それでは牛尾会長、よろしくお願いします。

○牛尾会長 では、皆様の御推挙をちょうだいしましたので会長を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは初めに、資料1の6で、専門調査会運営に関する事項を会長が定めることになっております。コンテンツ専門調査会の運営については資料の3を御参照願いたいと思います。また、コンテンツ専門調査会の公開の手続につきましては、資料4に詳しく記載されております。
 なお、本日はあらかじめ事務局より各委員の御了解を資料3、4についてはちょうだいしているということでありますので、御了解をちょうだいしたいと思います。
 また、急な事情により私が本専門調査会に出席することができなくなった場合に、会合の議事進行をしていただく方をその時点で選んでお願いすることにしたいと思っておりますので、あらかじめそういう緊急の場合の御了解をちょうだいしたいと思います。
 では、早速議事に入らせていただきます。まずこの専門調査会の今後の進め方について事務局から説明をしていただきます。

○荒井局長 それでは、お手元の資料5をごらんいただきたいと思います。「コンテンツ専門調査会の今後の進め方(案)」でございます。
 1は日程及び主な討議テーマでございますが、本日、10月15日は第1回会合ということで、委員の皆様に自由討議をお願いしたらどうかと思っております。
 11月13日の第2回会合については人材、12月8日の第3回会合については資金調達、海外展開、それから来年は2月に第4回会合で流通について御討議いただいたらどうかと思っております。それから、来年の3月には第5回会合で取りまとめをお願いしたいと思います。
 2にございますように、今お話し申し上げましたとおりのテーマは今後の検討によりまして変更があり得ることにしていただいてはどうかと思っております。
 3は、必要に応じ参考人からの意見聴取及び中間的な取りまとめを行うこととしていただいてはどうかと思っております。以上でございます。

○牛尾会長 今後の進め方について今、事務局長から御説明がありましたが、御意見、御質問がございましたらお受けしたいと思います。

○角川委員 結構忙しいですね。

○牛尾会長 そうですね。
 では、後から御質問がありましたらそのときに申し述べていただいて、次の議題に移りたいと思います。資料6は参考資料として事務局がまとめたものでありますが、その内容について事務局から簡潔に説明をしてください。

○荒井局長 それでは資料6−1と6−2とございますが、最初に6−1を説明させていただきます。
 「我が国のコンテンツビジネスの飛躍的拡大に向けて」ということで、6−1は現状編でございます。2ページにこの目次が書いてございますが、3ページにございますように、世界のコンテンツ産業を見たときに、2000年に1.04兆ドルだったものが2002年に1.1兆ドル、これが今後2006年には1.4兆ドルと高成長が期待される分野と思われます。
 4ページは「アジア太平洋地域のコンテンツ産業の現状」でございますが、世界全体の平均が6.5%と予測されているのに対し、アジア太平洋地域はそれよりも高い7.1%という予想がなされております。
 5ページは2で我が国のコンテンツ産業の現状と世界との比較でございますが、日本のコンテンツ規模は1,091億ドルという推計がなされておりまして、GDPが4.9兆ドルに対し、約2%に当たります。一方、アメリカの場合には5,000億ドルでございまして、GDP約10兆ドルに対して5%ということでございます。世界全体は1兆ドルということで、GDPが30兆ドルでございますので、世界平均の比率3%より日本の場合には低いというのがここの数字でございます。
 6ページは、アメリカに比べて日本のコンテンツの海外売上げ規模は低いということでございますが、日本の海外売上げ規模は31億ドルでございますので、海外との比率が3%という数字になりますが、アメリカの場合には855億ドルで17%に当たっているということでございます。
 7ページは、海外収支を見たものでございます。コンテンツの海外収支はゲームソフトの場合には輸出が非常に多いわけでございますが、ほかの分野においては輸入の方が多いという数字が出ております。
 8ページは、諸外国の例としてまずアメリカでございます。20世紀初頭はアメリカでも欧州映画が主流でございましたが、振興策の展開によりましてアメリカ映画のコンテンツ産業は競争力を拡大し、世界市場に進出し、一番下にございますように世界のコンテンツ市場の半分はアメリカが占めているという推計もございます。
 9ページはアジアを見たものでございますが、例えば韓国の場合に文化観光部をつくったり、文化コンテンツ振興院、韓国ソフトウェア振興院、映画振興委員会など、いろいろつくっておりまして力を入れているというのが韓国の状況でございます。
 10ページは、ヨーロッパの例でございます。イギリスの場合、従来イギリスは伝統に縛られて重厚長大な産業が中心のイメージが強かったわけでございますが、コンテンツを始めとするクリエイティブな産業を振興して積極的に海外に輸出することで新しい国家のブランドイメージを図っていくというのがイギリスの政策というふうに伝えられております。 11ページはフランスでございまして、フランスの場合には国立映像センターによる支援やユニフランスによる支援が有名でございます。
 12ページは日本の場合で、コンテンツ産業はどういう様子かということで、市場規模としては11兆円ということで非常に大きいわけでございますが、12ページの一番下にございますが、更にこれから21世紀になって知識社会になっていけば、日本を支えていく重要な産業に発展する可能性があるというふうな御指摘もございます。
 以上が現状でございますが、もう一つの資料の6−2をごらんいただきたいと思います。今のような現状に対してどんな課題があるかでございますが、2ページに目次がございます。これは皆さんからの御指摘の課題で網羅しているものではございませんが、7つの課題をここにリストアップしてございます。
 3ページが第1の課題ということで、コンテンツに関連する人材が不足しているのではないかという御指摘でございます。創作者やプロデューサー、エンタメロイヤーなどの育成の中核となる大学については、アメリカや韓国については充実しているけれども、日本の場合には映画専門の学科が3つあるだけではないかというような御指摘もございます。 4ページはアメリカの例で、アメリカの場合には例えば映画だけでも関連するコースを持っているものが500あるという御指摘もございます。南カリフォルニア大学を始め、いろいろな大学が有名でございます。
 5ページは韓国でございますが、韓国でも人材育成にいろいろ取り組みが進んでいるということで、国立韓国映画学院とか韓国アニメーションアカデミーとかいろいろできているということでございます。
 6ページは第2の課題でございまして、実演家の活動環境を更に整備することが必要ではないかという御指摘もございます。このことは、優れたコンテンツに国民が広く触れるためにも重要だという御指摘で、例えば6ページの1番に書いてありますように子役の出演時間についても更に多様化が必要ではないかという御指摘もございます。現在、労働基準法によって18歳未満の方は午後8時までとなっておりますが、7ページにございますように9時まで延ばす方向で検討がなされておりますが、8ページの下にございますが、9時ではなくて更に延ばしてほしいという御要望も出されております。
 9ページはお金の問題、資金調達の関係でございますが、資金調達の多様化が必要であるとの御指摘がございます。例えばアメリカのような完成保証制度をつくれば、制作会社は金融機関から資金調達が可能となるのではないかという御指摘でございます。
 10ページは信託制度の活用でございますが、知的財産信託制度、流動化信託の仕組みによってコンテンツを含む知的財産のライセンス料を裏付けとした金融商品を発行し、複数の投資家から資金を集めることが可能になるということでございますので、こういう方向で現在信託業法の改正の作業が進められております。
 11ページは第4の課題でございますが、海外でのビジネス展開が必要だという御指摘でございまして、日本製コンテンツの本格的な進出が必要ではないかという御指摘でございます。
 12ページは、現在のところ日本のコンテンツに対し、非常に需要が高いアジアにおいては海賊版の市場も非常に大きいということでございますので、正規版を十分に流通させて効果的な海賊版対策を講じれば、日本にとって大幅な収入増が見込まれるのではないかという御指摘でございます。
 13ページは、アメリカの場合には強力な対抗措置をもって海賊版対策を行っているということで、スペシャル301条の例が書いてあります。
 14ページは、CDをアジアでビジネス展開した場合には現地の物価水準に合わせることが必要なので、その場合には外国盤が国内に還流するおそれがあるということで、欧米では輸入権を設けてこれに対応しているので日本でも検討してはどうかという御指摘がございます。
 15ページは第5の課題でございますが、コンテンツの制作部門を活性化していただいてはどうかということでございまして、放送分野について諸外国では制作部門の活性化の観点からいろいろな措置がとられてきたというアメリカやイギリス、フランスの例が書いてあります。
 16ページは、日本の場合、制作部門には利益のリターンが少ないというような御指摘もなされております。
 17ページは、放送事業者と番組制作の会社との契約では、二次利用の権利を放送事業者が持つ場合が少なくないというような御指摘もございます。
 18ページはブロードバンドなど、新しい分野におけるコンテンツビジネスがまだ未確立だということでございまして、特に21世紀ブロードバンドの時代を迎えますので、安全で確実に取引できるコンテンツ流通管理システムが必要だという御指摘もございます。
 19ページの場合、ブロードバンドで配信する場合にはコンテンツは非常に多くの創作者の知的所産の集合でございます。それによりますので、コンテンツを二次利用する場合には著作権者の多くの方々の許諾が必要だということを一覧表に書いてあります。
 20ページは音楽の例でございますが、著作権管理事業者という仕組みによる円滑な著作権許諾システムが実現されているという一つの音楽の場合の例を書いているわけでございます。
 21ページから23ページまで、ブロードバンドの配信の現状でございますが、現在はまだまだスタートしたばかりでございますので、成功したビジネスモデルはまだ少なく、今後の開発に皆で知恵を出すことが必要だという御指摘でございます。
 22ページには着メロとか着うたとか、日本で考え出して成功したビジネスモデルの例も書いてございます。
 24ページは第7の課題でございますが、このように新しい時代を迎えておりますので、著作権制度についても新しい時代に即応した機動的な制度改正が求められているという御指摘もございます。
 以上、いろいろな課題についての御指摘をまとめたものでございますが、決してこれは網羅したものではないということを重ねて申し添えます。以上でございます。

○牛尾会長 ありがとうございました。大変にまとまったいい問題提起であったと思います。
 本日は初顔合わせでもありますので、各委員の皆様全員から大体3、4分を目安に自由に御意見をちょうだいしたいと思いますが、一番初めの問題提起はあいうえお順でお話をちょうだいしたいと思います。岡村委員は欠席していらっしゃいますので、角川委員からお願いします。

○角川委員 今回のこの調査会は、先ほども説明がございましたけれども、知的財産戦略本部が推進計画というものを7月8日に取りまとめられて、その下に今回こういう形で発展的に具体化していこうということだと思っております。その意味では知的財産戦略本部に私と、それから久保利先生が参加しておりましたので、この流れについて私もそれを交えながら一言申し上げたいと思っております。
 コンテンツビジネスという立場で、今回文化庁が管轄になります著作権というものは著作権者の権利の調整ですけれども、コンテンツビジネスというのはそれに基づきながら是非"産業"という視点から発展させていきたいということを念頭に置きながら今回の調査会に参加したいと思っております。
 日本のコンテンツは、海外でも非常に高い評価を受けるようになってきております。例えば『千と千尋の神隠し』がアメリカでアカデミー賞を受賞するというふうなこともありますし、先ほども資料にポケモンの紹介などがございました。しかしながら、必ずしも先ほどのアメリカや韓国、フランスという国家支援の下にこういうものが成功したというのではなくて、創作者が非常にひ弱な経営基盤の中で日陰の花みたいにして咲いた存在じゃないかと思っております。
 そういう面では、もちろん国がそういうことに気が付いて国家的に支援しようと言ったときからで結構だと思うわけです。今はそういうものがないとひ弱な花はいつでも枯れてしまうような、そんな環境にあるのではないかという危機意識を持っております。そういった点で、私はコンテンツというものを是非国家全体あるいは日本の社会全体で支援していくような形を取ってもらえたらと思っているわけであります。
 それから、コンテンツというのは、著作権のライツホルダーが複雑でなかなか流通しないといった問題があります。ブロードバンド上でも今はアダルトビデオとアニメだけが動いていて、実際の映画がなかなか動かないという環境がありますけれども、それはいろいろな問題点が内包しているから動かないのでありまして、それについてせっかくのブロードバンド時代にこういうふうにすれば動くのではないかということを具体的、現実的な提案をさせていただきたいと思っております。
 また、子役の問題も先ほど指摘されましたけれども、これは松竹さんにおける歌舞伎座の世界も、あるいは東宝さんはミュージカルなども直面しておりますが、お話を聞きますと、生まれたときからこの子を歌舞伎の俳優に育てようと思っている。そういうことで芸術というものが維持されている部分もあるわけですけれども、そういった点で夜8時ということになってしまうと、今は大体9時から9時半まで上演しておりますので、子どもが出るものは歌舞伎座にかからないということになってしまうということで、今は9時というところまで話がきているようですけれども、是非10時までの就労をお願いしたいということを私も聞いてまいりました。
 そういうことで、私は是非今回はコンテンツのビジネスを振興して、先ほどもアメリカのGDP5%に対して日本は2%ということでございますので、1%ずつ増やして将来は5%に達するように事業者全員が気持ちをそろえていって、コンテンツを持っているホルダーの原作者の人たちも一緒になって大きな成功をして、そして大きな成功の中でパイを分け合うという環境をつくっていければと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。少し長くなりました。

○牛尾会長 ありがとうございました。続きまして、久保委員お願いします。

○久保委員 皆さん、おはようございます。小学館グループで映像ライセンスの仕事をしております久保と申します。このような御高名の方々がいらっしゃる会議の末席に加えていただきまして、大変光栄に思っております。
 私自身はポケモン、ポケットモンスターのテレビ映画の責任プロデューサーを務めております。ポケモンは先ほどの資料にもありましたように世界67か国で放送され、45か国で劇場公開を行っており、まさしく日本文化の先兵として世界進出をしていったわけでございます。その過程の中で、さまざまな経験をさせていただきました。
 まさしく私はその現場で日本コンテンツの輸出作業を行っていたわけでございます。このような会議では余り現場的な意見は歓迎されないかもしれませんが、今年大ヒットした映画、『踊る大捜査線』にもあるように、さまざまなコンテンツの問題は現場で起きているということでございますので、私の役目はその現場の声を少しでも皆様にお伝えすることにあると思っております。何とぞ御海容の心をもってして御理解いただければと存じます。
 1998年に海外展開を始めたポケモンを皮切りに、現在では世界のテレビアニメの60%は日本製と言われるほどに拡大してきております。では、なぜ日本製のアニメーションが国際競争力を持っているのか。その答えは、今日は里中先生もいらっしゃいますが、漫画、つまりコミックにあると思っています。
 現在、日本の地上波テレビ局ではアニメの番組は1週間で60本も放送されております。そして、その60%はコミックを原作としたアニメになっております。視聴率で見ると、アニメ番組トップ15のうち13番組までがコミックを原作にしたアニメです。ですので、日本を代表する人気アニメ番組のほとんどがコミックを原作にしているということが言えると思います。
 コミックを原作にしますとキャラクター、世界観、ストーリーが一気に用意されることになりますので、アニメ映像を制作する上で必要な絵コンテそのものということも言えると思います。ですので、映像を制作する上で大幅なる省力化、制作費の節約、制作時間の短縮が図れるわけでして、日本のアニメーションがなぜ海外で受けているのかということで言えば、コミックがアニメを後ろで支えているからなのです。
 つまり、よいコミックがあればよいアニメ作品を短期間でつくることが可能なわけでして、コンテンツとしてアニメを強化するためには、コミックをよりパンチアップしていく必要があると思っております。
 ところが、ここ数年、コミック業界は軟らかな右肩下がりの状況でございます。その原因は、中古書店と漫画喫茶という問題があると思っております。貸与権を持たない出版物は、中古書店と漫画喫茶の問題に法律的に踏み込むことができません。結果として、本来ならばコミック作家にいくはずのロイヤルティが10%ほどダウンしているという報告もございます。
 依田委員がやられている音楽であれば、JASRACなどを通して使用料を徴収することはできるわけですが、コミック作家を守るためには新しい仕組みが必要になってきていると理解しております。既にそのために関係者の努力が払われているということを承知してはおりますが、アニメプロデューサーの立場でも是非ともその行動を更に前へ進めていただきたいと考えております。
 今お話をしましたように、優れたコンテンツが継続されて生み出されていくためには、クリエーターの創作物がしっかりとビジネスに結び付き、その価値が最大化され、きちんと利益がクリエーターの元に還元されていく仕組みが重要です。
 お手元にカラーコピーを1枚お配りいたしましたのでごらんいただければと思います。これを見ていただきますと、アニメーション産業は右側の黄色いところにある部分ですが、アニメ業界は2兆1,860億ほどの規模がございます。これは雑誌、出版を合わせた出版業界の規模とほぼニアリーイコールであり、流通で言いますとダイエーさんの売上げと近いのではないかと思っています。
 重要なことはその売上げの内訳でございますが、ほぼ2兆円がキャラクターのライセンス収入から上がっています。つまり、アニメ業界はアニメをつくる制作費から成り立っているわけではなく、玩具、アパレル、ゲーム、文具、お菓子、飲料などの映像二次使用からくるロイヤルティがその大部分を占めているということです。
 アニメ業界は漫画、アニメ、ライセンスというコンテンツの制作の一連の流れをもって成立しているわけですから、ライセンス収入がもしも第三者によって阻害されるということが起きてしまうと、業界自体が崩れてしまうことになると思います。先ほど角川会長はおっしゃっていましたが、誠に脆弱な上にコンテンツが成り立っているということが事実であると思います。
 今お話ししましたように、日本文化を海外展開に進めていくある種の先兵としてアニメーションは担っているわけですが、アニメ会社は実は余り魅力的には見えていません。アニメ業界の株価を見ても非常に低迷しておりますし、どこかの外資が高額でアニメ会社を買いにきたという話もないわけです。アニメーションは放送局や映画会社の社内で制作することのできないコンテンツですから、海外に負けない質の高いコンテンツをつくるためにはプロダクションの体質改善が必要なわけです。その意味からもプロダクションをより魅力的に見える、よりプロダクションのポジションを上げる作業が必要なのではないかと思っています。
 アニメ業界の回りには、海賊版の問題、著作権の問題、ブロードバンド送信の対応、海外盤版の問題、そして余り気付かれませんが、保険の問題というものがあります。さまざまな問題が未解決の状態で累積しておるわけですが、今まで民間だけで何とかこれらを解決しようと努力してきたのです。今回、このように官民合わさって解決策を探ろうということは大変私どもにとっても歓迎すべきことですし、ここからは是非とも、よろしく御協力いただければと思っております。
 見渡しますと、この会議にはテレビ局の代表の方々も出席していらっしゃいます。どうぞ、さまざまなクリエーターを抱えているアニメプロダクションが少しでも大きく育つように御支援をいただきたいと存じます。テレビ局とアニメプロダクションは長らく共存共栄の精神でお互いに売上げを伸ばしてきたと理解しております。しかしながら、ここ数年はプロダクションは生かさず殺さずというような風潮が少し見受けられるように感じます。アニメプロダクションが今よりも魅力ある会社になれば、アメリカのディズニーに対抗できる質の高いコンテンツをつくることも可能になるわけですし、アニメプロダクションが魅力的に見えれば人材育成も容易になることは間違いないわけですから、さまざまな御協力のお願いをこの場でさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○牛尾会長 ありがとうございました。それでは、続きまして久保利委員お願いします。○久保利委員 弁護士の久保利でございます。私ごとですけれども、私は弁護士になって33年たつんですが、30年間エンターテイメントのビジネスに関わってきた部分がございます。
 その中で、今般の知財戦略本部の本部員になり、計画をつくり、そして今この専門調査会のメンバーということになったわけですけれども、私はやはり基本的なことは、今回国策として知財国家というものをつくっていく意味というものはクールジャパンといいますか、最近東南アジアで随分日本の映画も音楽も非常に人気があるようでありますけれども、まさにこの国というものをどういう形で世界にアピールをしていくかという基本戦略をつくってそれを具体化していくことです。それによって産業としてのコンテンツ産業というものが一人前の産業になるのではないが。私はずっと見ていて、流通、制作、下請、現場で働く人々の関係というのはどう見ても産業と言うにはまだまだ脆弱な部分があるのではないかと思っております。
 したがって、クールジャパンをつくるためにはどうしたらいいのかという基本戦略をつくっていく必要があるんだろう。その場合にもちろん一つひとつの権利、貸与権であるとか、肖像パブリシティー権であるとか、輸入権であるとか、いろいろな個別の権利を確立していくということももちろん一つの役割だと思いますけれども、その一つひとつの継ぎはぎとしてではなくて、全体としてそれがどういう関係に立って今後の国策がどう進むのかということまで視野に入れて、是非この専門調査会で実りのある結論を議論の上でつくれたら大変すばらしいのではないかと思います。
 その点で今、久保さんもおっしゃいましたけれども、このメンバーは本当にいろいろな関係の方々がいらっしゃるわけでありまして、ある意味で言いますとこのコンテンツ産業そのものを担っている皆さんということでもあるわけです。思い出しますと、司法制度改革のときには法曹三者、裁判官、検事、弁護士は、おまえらはまな板の上のコイだ。おまえらをどう料理するかというときに、おまえらがいろいろなことをあれこれ言うのはなま板の上のコイが包丁を持っているようなもので、こんなものはろくなことにはならんというふうにさんざん言われました。そういう部分がないとは言いませんけれども、やはり一番その業界の問題点を知っているのもやはりまな板の上のコイであります。そういう点から言いますと、十分その立場を認識した上で相互によく実態をわかっている方々が、自分たちの自己改革を含めてこういうふうにしていったらどうだろうかという積極的な提案をしていただけたらと思います。そういう意味では、まな板の上のコイが包丁を持って何か言うなというふうなことを私は絶対言うつもりはありませんけれども、その分だけ逆にそれぞれが生産的な前向きの議論を、うちの業界はここが問題だ、これを改革できたらどうだ。それは隣の世界にはこういう影響になる。それはどうだというふうに連携を保ちながら、新しい戦略がつくれたらすばらしいのではないかと思います。
 そういう点で、すばらしいメンバーに恵まれてこの議論が活発になり、かつ一つひとつの個別業界の利益代表同士の言い合いにならないように、私も決して法曹界の利益代表として言うつもりはありませんので、是非そういう議論が会長の下でつくれたらすばらしいと期待しているところでありますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○牛尾会長 ありがとうございました。それでは、続きまして熊谷委員お願いいたします。○熊谷委員 セガの方でゲームコンテンツの開発会社ということでヒットメーカーより参りました。ゲームのコンテンツを制作しております。ゲーム制作の現場なんですけれども、昨今も徐々に変化を遂げておりまして、さまざまな技術革新等で現場の物づくりの状況も変わってきています。
 ところでゲームコンテンツと申しますと、ここ二十数年ほどの歴史を持つまだ若い業界ではあるのですが、こちらのコンテンツビジネスの世界におきましても、当初はやはり日本の国内製のコンテンツが非常に世界、ワールドワイドで人気を博しておりまして御評価をいただいていたわけですけれども、徐々にそれがアメリカやヨーロッパですとかアジアの日本以外の国から出てくるコンテンツに巻き返しを今、図られている次第です。優秀なクリエーターの方々が日本以外の国でどんどん育っておられて、そして日本でも市場力を持つようなコンテンツが徐々に入ってきています。
 その中で殊、ゲームコンテンツという部門におきましては、日本がこれまでリードしてきたというところもございますので、できる限りその競争力を取り戻す。そのためには、よいコンテンツを生み出す基盤の整備に注力していけたらいいなというふうに考えております。
 やはりクリエーターの育成の問題ですとか、流通の問題ですとかというところでは我々クリエーター、またはその業界の諸団体の方々とも問題を共有していることと思いますので、そういったところでまた発言させていただきながら解決する方向で前向きに取り組んでまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

○牛尾会長 ありがとうございました。では、続きまして里中委員お願いします。

○里中委員 私はずっと現場の人間で、自身も創作に携わってきたわけなので、どうしても創作者の立場からという見方をしてしまうかもしれませんけれども、おこがましい言い方ですが、漫画あるいはアニメーションその他の日本の文化というものを形づくる一つの大切な要素だと信じてやってまいりましたので、この分野がより活性化することが日本文化の価値を高めると信じて頑張っていきたいと思います。
 いろいろと心強い方がメンバーにいらっしゃるのでいいんですけれども、例えば先ほど久保委員の方から少しお話がありましたが、ポケットモンスターの展開というのは日本としては珍しく積極的にコンテンツを売り込んだ結果、ああなった。もっと早くああいうことをしていれば、もっと早く、そして多くの利益が得られたと思うんですけれども、結局一企業が頑張って戦略を立ててやらなければああいう展開ができなかったと思っております。世界各地の至るところであのポケモンのキャラクターを見る度に、ここに至るまでの御努力に頭が下がると同時に、こういうことをやればできるのにどうしてやれないのか。非常にもったいないという、さまざまなほかのキャラクターに対しての思いがありました。 日本の企業というのは基本的には皆さん、結果を求めるべきではないということが美学とされてまいりましたので、一人ひとり皆、余り経済性ということを考えずに頑張ってきた面があると思うんです。
 ただ、このままだともったいなさ過ぎるというのは、コンテンツそのものがアピールの仕方によりましては我が国の物の考え方、我が国の人々の心を伝える大変重要なツールになり得ると思っております。映画とか漫画、アニメーション、テレビドラマ、音楽、すべてが、ほかの国の人たちに対して我が国の心を伝える重要なアイテムだと思っております。 戦後生まれの私たちにとりましては、アメリカ映画から受けたアメリカ人の価値観、アメリカ文化、アメリカ人というのはこういうふうに考えるんだ、アメリカの正義とはこういうことなんだと、悪い言葉で言えば洗脳かもしませんけれども、映画やテレビドラマに親しむことによってアメリカへの愛着を深めていったように思います。アメリカは見事に国家戦略としてこういう文化的な素材を使った。特に映画を使ったと思います。それによって感動を与えて、なおかつお互いの国民性を理解することにつながるのであれば大変すばらしいことではないかと思っております。
 ただ、今の日本の現状でコンテンツビジネスというまだ一般には何のことだと言われるようなこの分野で、これまでは民間、一企業、一個人の努力に頼るしかなかったんですが、ここまできますと是非やはり国単位で、国として積極的に支援していただきたいと思っていた矢先ですので、大変うれしく思います。
 国際展開の重要性というのは経済的な面だけではなく、申し述べております文化的、あるいは心を伝えるという意味で大変重要だと思っております。私が属しております漫画の世界では、先ほど来、少しお話が出ておりますけれども、漫画だけに限らず、小説その他の出版業界というのはこれまで戦後、著作権の中に含まれる貸与権というものを行使しないでやってきたわけです。つまり、日本国民がより安くといいますか、できれば無料で文化的環境に身を置けるように、そのことを国として支援するために、本来著作権の中に含まれる貸与権を行使せずにきたわけです。音楽業界がそれを行使できるようになったときも、出版業界は行使するという積極的な動きを持たずにやってまいりました。
 今、本もいろいろな読まれ方をいたします。レンタルということもありますし、図書館という問題もあります。あるいはウェブ上でも見られるということもあります。これまで日本文化を支えてきた出版業界、私たち漫画家に限らず、小説家の方々にとってもその貸与権を行使できないということが創作への支え、励みを少し変えてしまう。また、若い方たちにとって入って魅力のある世界だと思われなくては、はっきり申し上げて経済的にも正当な見返りがない世界だと思われては魅力のある世界だと思われなくなって、入ってきたがる方が少なくなると大変だという危機感を感じておりますので、これまで権利を制限されておりました貸与権の行使ということを是非認めていただきたい。認められる運びになると期待してはおりますけれども、是非もう一歩の支援をよろしくお願いいたします。 また、これまで漫画に長く関わっておりまして、諸外国からの日本の漫画を研究したり、日本の漫画について知りたいというニーズが大変高まっております。だけど、公的なところで漫画の資料、データ、そういうものを海外のどこからでもアクセスできて、資料館として答えられる窓口がないということを非常に悔しく思っておりました。できましたら、漫画博物館なり資料館なりは欲しいわけですけれども、建物を建てるのは大変ですからデジタル上の資料館でも構わないと思います。多言語に対応できて、作者名からでも作品名からでも、ほんの少し作品内容を紹介して漫画に関わる情報をすべて発信できる資料館が、我が国の文化の一環としてこういうものがあると提示するのに必要な時期に差し迫っていると思います。
 なぜこんなに焦るのかといいますと、各出版社とも古い時代のものは合本として出版物が残っています。ただ、最近は各出版社ともデジタル化が進んでおりまして、資料はどこからでも取り出せますけれども、漫画の黎明期であります我が国の漫画が世界において漫画のルネッサンスを立ち上げたと私は思っておりますが、そのころの資料が合本もどんどん酸化いたしますし、昨今の社会的状況で出版社が倒産したり、合本の行方がわからなくなったり、いろいろなことがございます。各出版社にもお願いはしておりますけれども、人手がない。デジタル化はすべてできない。しかも、そういう資料館をつくった場合にその運営管理はどうなるのだろうかということがネックになっておりますので、是非国のお力でそういうものをつくっていただきたい。
 できれば希望ですが、そこではやはり閲覧権、展示権などを発生させて、提供してくださった出版社、作家に対して、形だけでも見返りがあれば、より協力が得やすいかなと考えております。
 話にも出ておりますが、演劇において午後8時以降も子役が使えるということも、労働基準法と、先ほど来申しております貸与権、閲覧権、展示権を行使しないということも、すべて戦後の日本が貧しかった時代に、なるべく負担のない形で大衆に文化的環境を与えるということと同時に、労働基準法は労働者が不当に搾取されないように、労働者をよりよい労働環境に置こうということでつくられたものだと私は受け止めております。
 今、24時間体制で世界に情報を発信するという時代ですから、労働時間の何時から何時までというよりも、個々の労働に関して何時間とかという個別の対応が必要かと思いますので、それによって演劇、ビジネス、その他がより活性化するとすてきなことだと思っております。
 では、コンテンツビジネスをどうやっていくかというと、個々の業界でやっていくと大変な面もありますので、コンテンツビジネス全体を振興するために何か一括して皆でできる、あるいは支え合う場が必要かなということと同時に、プロデューサーの育成ということは是非必要だと思っておりますので、教育機関で文化を支えるプロデューサーの育成ということを支援していただきたいと思います。
 いろいろなことを申し上げまして、すみません。時間をオーバーしましたが、今後それぞれの会合で皆様の御意見を伺いながら発言する機会があればと思います。よろしくお願いいたします。

○牛尾会長 ありがとうございました。では、続きまして重延委員お願いします。

○重延委員 テレビマンユニオンの重延でございます。私は放送という仕事から始めましたけれども、放送だけではなくて映画制作、音楽コンサート、あるいはCSの編成などに携わって、広がりのある意味でこのソフトの世界を見ているのですけれども、実は昨日までカンヌに行っていました。今カンヌでMIPCOMという会合がありまして、これは放送を中心としたコンテンツビジネスをどう動かしていくかという会合です。これは6か月に1度カンヌで開かれているわけですけれども、その度ごとに伺ってみて、やはり急速な変化をしているんです。この急速な変化をしているということをどうとらえるかということはとても大事なことのように思います。
 ただ、9.11があって、アメリカがなかなか参加できなくなったとか、この前の4月はSARSの問題でアジアの方々が来ないという経験を踏まえて、ちょうど1年半あるブランクを経た10月のMIPCOMだったんですけれども、やはり大きく変わっていました。大きなうねりが見えてきたのは、1つはやはりコンテンツそのもののただパッケージされたものを売り買いするというだけではなくなってきているんですね。
 言い方を変えれば、例えはフォーマット権とかリメイク権というコンテンツから生まれるものがどう動くか。そのことに対しての議論が大変盛んでした。コンファレンスがあっていろいろな会合があるんですけれども、テーマの多くはそのフォーマット権、リメイク権、つまり発想のオリジナリティの強さというものをどうビジネス展開できるか。実際にヨーロッパはコンテンツビジネスに関しては非常に弱かったんですけれども、今はそのフォーマット権というある考え方によって、これをアメリカに逆に売るという形がとても進んでいます。
 ですから、御存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、エンデモールというオランダの会社はビッグブラザーというリアリティショーをアメリカに相当高い金額でしっかりとビジネスとして売り込んでいて、他にサバイザーというのもありましたし、幾つかのフォーマット販売が生まれた。こういうリアリティショーの次は何かというのがもう今のテーマになっているんですね。そういう意見がたくさん交わされるようなところになっている。 それからもう一つはNHKさんなどがリードしているハイビジョン、ハイデフィニッションTVがやはりヨーロッパでも考えられ始めている。特にBBCが真剣に考え始めたからヨーロッパは動き始めた。もちろんそれに加えてDVDと、こういうものが急激に動いてきています。
 ただ、私がカンヌに行って感じたのは、日本がそれにどう参加していくかということなんです。正確な数字はまだ集計されていませんけれども、私の印象では、MIPCOMに参加している参加者の編成は放送局が大体4割くらい、3割ぐらいがシンジケーションというか、流通関係、残りの3割がプロダクションと、世界的にはこういう構成なんです。
 ところが、日本あるいはアジアは放送局がほとんど中心です。それで、実際にはシンジケーションはほとんどない。プロダクションは日本の場合はアニメだけ、アニメはビジネスになっているというか、流通があるんです。だけれども、日本の制作プロダクションでブースを持っているものはゼロです。
 なぜか。ここにマーケットが生まれない。そういうことを考えると、私もプロダクションの一つでありますけれども、非常に残念な思いをしてきました。多くの世界中のプロデューサーも集まってきているけれども、日本のプロデューサーにはほとんどお会いしません。そういうことから考えると、この時代の大きなうねりの中で何かが遅れている。何かをしないでいるという感じがつくづくとするんです。その背景に何があるかということをやはりしっかりと議論をして、そこで世界の大きなうねりのスピードに追いつくような、負けないようなことにすることが重要と考えます。
 実際にアジアの韓国、中国から非常に多くの方々が参加してきています。この流れの中で日本が過去のシステムだけではなくて、新しいシステムでそういうことに迎えるような状況をつくるのがとても重要ではないかとつくづくと感じました。
 コンテンツの問題というのは、ただコンテンツを売ればいいということではなくて、このデジタルの時代にはやはり今までの既成概念を変えて新しくビジネスとして、それからもちろん文化として、この両側面を持ちながら変えられる新しい観点が要るんだろうと思うんです。それはデジタルが唯一の変革のチャンスであって、このデジタルという最後のチャンスを有効にもう一回考え直す。ですから、コンテンツという問題は大きく考えれば放送と通信の問題も抱えているわけですし、それからハードとソフトの問題も抱えている。それからもう一つ、組織と個人というか、組織とクリエーター、この問題を抱えていると思うんです。ここに著作権の問題が入ると思いますが、こういったことを頭に入れながらコンテンツをどう生かしていくか、あるいはコンテンツをつくる人をどう生かしていくかということを今すぐ考えないと、やはりこのうねりからは置いていかれますよという気がいたします。
 ただ、私は一つだけとてもいいなと思うのは、日本人というのは才能があるなとつくづく思います。カンヌに行く前にパリに寄りましたらちょうどパリコレクションがあって、日本のデザイナーは大変国際的な活躍をしていますね。それから、パリではお寿司の食文化がとてもはやっていて、これもやはり一つの日本の文化だと思うんですけれども、そういう日本のある種の才能というものがあり、自信を持って世の中に出ていける可能性は十分あると思います。ですから、その可能性を生かしていけるアイデアがこういう会から生まれていって、国と、それから個人が一緒になってつくるということであればすばらしいと思っております。

○牛尾会長 ありがとうございました。では、続きまして関根委員お願いします。

○関根委員 NHKの関根でございます。先ほど配布された資料の6−1の7ページに、コンテンツ産業の海外収支とありますけれども、その中の放送番組についての輸出、輸入というところで、大体輸出1に対して輸入は5という数字が出ています。データそのものはかなり古いんですけれども、恐らく実態というのは変わっていないか、むしろ輸入というのはもっと増えているのではないか。恐らくここにはパッケージ中心で放送権というライセンスの問題が入っていないんじゃないかと思うんです。これは御承知のようにオリンピックをやるにしても、ワールドカップをやるにしても今、放送権という問題を抜きにしては語れません。しかもこれはどんどん高騰していきまして、我々放送事業者にとっては大変な負担になっているんですけれども、そういう中で知的財産を守ってコンテンツ流通を促進させる。その上で低迷している日本経済の活性化を図ろう。更に国際展開の上でもこのコンテンツの優位性を確保しようということについて、我々としても全く異論はないし、いろいろな形で協力できることは協力していきたいというふうに考えています。
 そうは言ってもNHKは放送事業者でありますので、やはり放送ということを最優先に考えなければいけませんし、放送をやった後の番組の二次展開といったものについては、できるだけ可能な範囲で円滑な流通が行われるようにやっていきたいと考えています。
 我々が今、国内外で実施していることについて簡単に御説明いたしますと、国内展開についてはビジネスベースで、放送したあとの2次展開としていろいろな番組、DVD、そういったものも我々の関連団体などを通じて売っています。更に国内のCSとか、CATV事業者といった方々の振興という側面からいろいろな番組の提供もしています。
 一方、国際展開でありますけれども、これについてビジネスベースで我々がつくった番組、そういったものを海外にいろいろな形で売っています。ドキュメンタリーあり、ドラマあり、アニメありでして、14年度の実績で44の国におよそ4,300本の番組を出しました。その一方でNHKの組織の性格上、無償協力ということで、特に発展途上国に向けましていろいろな教育関係の番組といったものも出しています。これは14年度の実績で33の国に対しておよそ3,500本の番組を無償で提供しています。国のODAなども使ってやっていますし、更に国際発信というものをやっています。
 NHKはラジオ放送を始めてから今年で78年、テレビを始めて50年になりますので、いわゆる放送コンテンツというのは大量に抱えています。抱えてはいますけれども、いわゆる権利関係ということに気づき始めたというのは最近でありまして、まだまだ我々が持っている放送コンテンツについていろいろな権利処理をやっていかなければいけません。
 そういったコンテンツ流通の環境整備の一環としまして、今年の2月から埼玉県の川口にNHKアーカイブスという我々のコンテンツを保管し、継承し、またそれを展開していくという意味で作った施設を運用し始めています。ともかくこれからコンテンツを流通させる上では権利処理という問題は欠かせませんので、今、古い番組等についてはいろいろな権利処理をやっているということであります。
 ただ、一言言っておきたいのは、この放送コンテンツを流通させる上で考えていただきたいのは、いわゆる無償ではないということです。権利処理するにしてもコストはかかりますので、ただではないということが1点です。
 それともう一つ、権利関係については我々はどうしても取材対象者といった方々との信頼関係に基づいて放送番組というものはつくっているわけですから、そういった信頼関係を損なわない範囲で権利処理を我々NHKの責任でやっていかなければいけない。それに代わる方法論がいろいろな形でこれから出てくるのではないかと思いますけれども、少なくともやはり番組をつくったところが責任を持ってきちんと対処していくということが必要なんじゃないかと思います。そういうことも踏まえながら、これからこの場でいろいろな議論を展開していきたいと考えています。
 最近の傾向としまして、先ほど重延さんからお話がありましたけれども、放送は技術革新の成果を取り入れた文化とよく言われていますが、我々が40年近くかけてつくってきましたハイビジョンという技術についてはアメリカでは既に広がっていますし、ヨーロッパでもようやく最近ハイビジョン技術に対する興味を持ち始めています。今いろいろな意味で、我々のところにハイビジョンを使っての番組制作という申込みがきています。ちょうど国際展開での優位性を確保するという意味でも、一つの大きな転換期になるんじゃないかと我々は考えていますし、いろいろな意味で国際競争政策も含めてこのハイビジョンの技術というものをこれから世界各国に展開していきたいと考えています。そういったものも含めて、こういった場を活用しながらコンテンツ流通についてのいろいろなありようというものを探っていきたいと考えています。

○牛尾会長 ありがとうございました。では、続きまして浜野委員お願いします。

○浜野委員 東京大学の浜野でございます。お話があったように、コンテンツというのは大事なビジネスなんですけれども、文化資源としても大事です。海外から漫画とかアニメーションとか音楽とかゲームを通して日本を見ていますので、国家ブランディングとしての文化戦略の中でコンテンツビジネスが重要だという位置付けをしていただきたいと思います。フランスでも鳥山明さんが最も著名です。首相とか日本の経済人を通して日本を見ているのではなくて、コンテンツを通してフランス人は日本を見ているわけですから、文化という点でも大事であろうかと思います。
 その大事さを知らないのは実は日本国民ではないのかと思っています。その認知を上げる必要があります。コンテンツビジネスが文化でありつつ産業であり、それがとても大事であるのに、経済人の方は、色物だという目で見ていらっしゃる方がすごく多く、研究者もそうなので人のことを言えないんですが、重要性の認知を上げていただきたい。
 作家の方は、最近になってすごいすごいと言われることに違和感を感じています。これまでずっと放っておかれたのに何となくビジネスといった途端にほめてくれるということに対して違和感を感じているのです。ですから、そういったことをなくすために国内から認知を上げていただきたいということが1点であります。
 2点目は、私は大学で教えておりますので、やはり人材育成のことに対して危機感を持っています。現場では本当に人材の枯渇とか、不足というのが大きな問題になっています。コンテンツビジネスで成功した例を見ますと、例えばクラシック音楽にしても、バレエにしても、フランス料理にしても、オートクチュールのファッションにしても、ハリウッドにしても、見事な人材育成システムを持っていています。留学生を受け入れて仲間を増やして外に出します。昨日もシンガポールの女性から電話があって、国費留学で日本でアニメーションのことを勉強したいといいます。1か月に1人くらい私の電話があります。受け皿がないためにそういった留学生の方を日本に呼んで学んで帰っていただくことができないということで、本当に残念です。
 もちろんクリエーターとかプロデューサーとかエンタメロイヤーとかも必要なんですが、先ほど熊谷さんからもお話があったように、技術も重要です。ゲームは技術でアドバンテージを取っていたので非常に有利だったんですけれども、ほかのコンテンツはほとんどアメリカに技術を押さえられています。技術の研究開発の場がありません。最近、韓国政府は各大学に付けたIT研究所をコンテンツの研究所にもするということで組織改正をしましてコンソーシアムをつくってエンターテイメントテクノロジーの技術開発に、力を入れています。日本ではそれをするところが一つもないわけですから、バランスのいい人材育成が必要だと思います。ハリウッドのシステムというのは非常によくて、日本の人材育成とは全く違い、よくできています。チャンスがあればアメリカの例を見ていただくといいかと思います。
 3番目は重延さんからもお話があった流通の問題です。どうも民間の努力だけではできないので、国際展開について何らかの措置をしていただきたいと思っております。
例えば2002年にシンガポールはメディア21ビジョンを出しました。GDPに占めるコンテンツの売上げが今1.56%なんですが、ここ10年の間に3%という目標値を立てています。韓国は海外売上げの上位5位に入るとか、目標設定を期間を限定してやっています。そういったことをここで議論できるのか、あるいは新しい振興法のようなものを、目標設定を明確にした議論をできたらやりたいなと思っております。以上です。

○牛尾会長 ありがとうございました。では、続きまして日枝委員お願いします。

○日枝委員 ちょっと遅れまして申し訳ございません。最初の説明がどういうことであったかを無視をいたしまして、日ごろ考えているコンテンツについて、放送側からの考え方も含めてお話を申し上げたいと思います。
 まず、基本的に今、皆さんがおっしゃっているように、最近でこそコンテンツというこものが非常に脚光を浴びてきたわけでございますが、日本の歴史を言うまでもなく、やはり鉄は国家なりで重厚長大なものが産業を支えているという日本の歴史の中で、コンテンツというものが昨今急に出てきたというものが実感であります。したがいまして、いろいろな問題がまだ未解決のまま進んできている。したがって、こういう委員会ができて一つひとつ保護していこうということになるのではないか。それに対して、大いに私ども放送局側としても実は期待をいたしているわけでございます。
 ちょっと最近まではソフトと言っておりました。ただ、コンピュータができてからはソフトと言うよりも情報の中身ということでコンテンツということになってきたわけでございますが、私どもがとってまいりました政策が参考になるかもしれませんので申し上げますと、コンテンツというのは非常に狭くは考えておりません。私は放送局の人間でございますが、放送番組だけという理解をしておりません。かつてから映画もつくっておりまして、これもコンテンツでございます。それに基づく出版もコンテンツでございます。また、それに基づくDVDですとか、いろいろな形のパッケージ系のCD、これもコンテンツでございます。それから、いろいろなおもちゃ等のマーチャンダイジング、これもコンテンツでございます。つまり、私どもは一つのクリエーターがおつくりになったコンテンツをブロックバスターに、つまりいろいろなものの権利を派生させていくということがどうもこの一番の問題であるのかなと。今まで日本にはない発想であって、鉄は国家なりの日本ではなかなか出てこなかったろう。
 コンテンツの権利について私が知る限り、非常に熱心におっしゃっていたのは漫画『サザエさん』の長谷川町子さんでありました。今から30年近く前になりますけれども、大変に権利については厳しい御意見を持っておりました。ただの我々放送関係者、あるいは映画の関係者、出版の関係者は、何であの人はあんなに権利をきつく言うんだろうかというのが当時の日本の状況だったと思います。今の時代を考えると隔世の感があるわけでございますが、やっとそういう面が出てきたのかなと。
 したがいまして、コンテンツを考える場合には創造、クリエーター、それからそれを保護してあげなければ何の意味もないので保護の問題、それからやはりそれをどうやって活用するか。それから、それをどうやって流通するか。この4点をこの会議でどういうふうに詰めていくかということ、これがコンテンツ、知的財産、つまりそういうものが広がっていくためのものの取り組みであろうかと思います。
 私は、これはお世辞でも何でもありません。里中さんがおられるからでもありませんし、久保さんがおられるからでもありませんけれども、一つのコンテンツがこれだけ大きな収益、利益を生むかということは、多分かなりのお年の方はわからないんだろうと私は思います。ポケモンあるいはいろいろなアニメーションが出てきても、これだけ何百億の最終利益を生むということがわかっていない。これは今、言った4つ、つまりクリエーターの育成があり、あるいはそれを保護し、活用し、流通しているから出てくるのであって、ひと昔前でしたらこういうふうな利益にはならなかったと私は思います。それが利益を生むから、実は日本の代表的な文化になっていくんだろうと思います。
 ただ、日本の文化であるのは、例えば相撲とか歌舞伎とか言っておりますけれども、実はこの新しい現代の文化にアニメーションとか映画とか音楽とかが出てきていいわけでございますが、これが正しいかどうかは別にして、映像、映画というのは言語の壁が非常にある。この辺をどういうふうにこれから解決していくかが非常に残されている問題だと思います。
 それからもう一つはクリエーターの問題でございますが、アメリカはクリエーターがすごい豪邸に住んで大変な利益を得ている。日本の場合、プロデューサーですとか監督ですとかクリエーターがすばらしい利益を得ることがあるでしょうか。この辺の問題というものを解決しないと、幾らコンテンツ産業の育成と言っても、これはできないだろうというのが1つです。
 それから久保利先生がおられますけれども、アメリカの場合のプロダクションにしろ、放送関係にしろ、これらのマネジメントをしているのは皆さん弁護士の方です。権利があってクリエーターができるという発想です。日本の場合は、作品があって、さあそれからどうやって権利をつくっていこうかという世界です。この違いが非常に大きいということを私は考えておりまして、総論的で大変恐縮でございますが、その辺からこの委員会でいろいろ手分けをしながら議論をしていけば、まだまだ将来のある大きな産業に伸びると私は思っております。ありがとうございました。

○牛尾会長 ありがとうございました。最後に依田委員お願いしたいと思います。

○依田委員 依田でございます。もう先輩の方々が非常に内容のあるお話をされましたのでかいつまんでお話をさせていただきます。
 まず、お話をさせていただく前に資料の6−2の22ページなのでございます。着うたという皆さんには耳新しい言葉があると思うんですが、この市場規模でございますが、サービス開始10か月後の時点の2003年9月で500万件のダウンロードになっています。これは、auというKDDIの13機種だけでの実績でございますから、JフォンあるいはNTTドコモの参入はまだしておりません。そういう意味では非常に大きなビジネスになりつつあるということだけ、まず最初に資料の訂正をお願いしたいと思っております。
 既にいろいろ御発言があったとおり、私は今回非常に特徴的に感じておりますのは、このコンテンツというものが文化論、そしてまた産業論としていよいよ取り上げられてきたということで、今までにない大きな流れだと思っております。これに国家観どのように乗せていくかという久保利先生のお話もございますが、決して業界エゴ的なことではなくて、特に私はレコード業界を代表しておりますが、それと同時に経団連のエンターテイメントコンテンツ産業部会の部会長も仰せつかっておりまして、先ほどから非常に幅広いエリアにおいてのお話を興味深くお聞きいたしました。
 レコード産業は、104年前に欧米から著作権制度が導入されたんです。日本音楽著作権協会が64年前に創立されました。そして、61年前に社団法人日本レコード協会が創立されて、著作隣接権という立場から権利というものを大事にしながら今日までまいりました。そのビジネス環境が今、大幅に変わりつつあるという中で、今回このコンテンツビジネスについての提言の中で、重要性あるいは関連人材の育成等もさることながら、国際展開あるいはまたブロードバンド時代におけるコンテンツ流通の促進というものがいかに大切であるかということを痛切に感じておりまして、その辺のことをちょっと申し上げさせていただきたいと思います。
 まず、人材については申すまでもありません。エンターテイメントロイヤーが全く不足しております。私どものレコード業界で、エンターテイメントロイヤーは数えるほどしかおられません。私どもが長いことお願いしているエンターテイメント系の弁護士さんは、私どもの相手方の作家あるいはアーティストの弁護士も兼務している。同じ弁護士さんがこちらと向こうの両方にまたがった弁護をするようなケースが多々あります。それほど日本にはまだエンターテイメントロイヤーが不足しているということを一つ申し上げたいと思います。
 それから、国際展開の重要性では音楽関係は輸出が29億円に対して輸入が251 億円でございまして、完全な入超ということです。日本国家が非常に海外戦略を重視してまいりましたし、これからも海外戦略というものが大事な中で、我々はどのようにこれを打破していくのかというところが非常に今、問題になっております。
 その中で、世界の大きなマーケットである東南アジア、ここに約20億近い華僑系、中国系の人たちが住んでいる。そこで日本の音楽、アニメ、映画、雑誌等が非常に渇望されている中で、特に私どもがこれから積極的に進出するためには、海賊版についてのクライングベイビー、嘆くばかりではなくて、その海賊版とフレンドリーに競争しながら、現地できちんとした産業を立ち上げるということが必要だろうと思っております。
 そんなことで、今ジェトロさんもいろいろな現地での海賊版対策あるいはまた模造品対策等もおやりになるようで、この辺については私どもも積極的に参加したいと思っておりますが、それと同時にやはり現地で積極的に販売した、その結果として日本に逆流してくる商品について、正規品の逆流についての安全弁といいますか、担保としてレコード輸入権の創設というものを今お願いしているということであります。
 それから、ブロードバンドにおけるコンテンツ流通の促進ということをちょっと申し上げたいと思います。先ほど里中さんがおっしゃられましたし、あるいはまた久保委員もおっしゃられましたが、とにかくアニメ漫画、そういう人たちがつくり上げたもの、それがやはり音楽のJASRACのようにきちんと管理できるシステムができないかというようなお話もございましたが、私どもの場合で言いますと1982年にデジタル商品であるCDが登場しまして、デジタル商品を使った業界としては一番古い業界だと思っております。
 その中で過去、長年にわたってデジタルアーカイブ化ということについて取り組んでまいりました。これも既に総務省等のいろいろなプロジェクトも組んでおりまして、かなりの高度な認証システム等ができ上がっております。この辺をもっと国家戦略の意味で活用していただければ、私どもももっと幅広く進むことができるであろうと思っておりまして、音楽ソフトのいわゆるデータベース化あるいはデジタルアーカイブ化だけではなくて、映像も含めた、あるいは出版も含めた幅広い展開ができるのではないかと思いまして、この辺は国家戦略として取り上げていただけると、もっとスケール感のある規模の広いものになるのではないかと考えております。
 そういうようないろいろな問題を含めますと、レコード業界といいますよりも音楽業界で2年前に特筆すべきことが1つあります。それは、2001年に文化芸術振興基本法という法律ができました。これができたことによって、文化庁で初めてポップミュージックを取り上げることがスタートしました。きちんとした公式のコンサート行事にポップミュージシャンが取り上げられるような時代がきたということは、やはり文化芸術振興基本法以来のことだろうと考えておりまして、私共のコンテンツビジネスを促進するためにもコンテンツビジネス振興法の制定をして、その振興法を一つのバックボーンにして今、各委員がおっしゃっておられるような点についての各論をその下につくり上げていくと、非常に力強い日本のコンテンツ産業が開けるのではないかと思っております。ちょっと長くなりましたので、これで失礼いたします。ありがとうございました。

○牛尾会長 ありがとうございました。大変さまざまな、しかも明快な問題提起をありがとうございました。
 なお、本日欠席の岡村委員からは資料7でコンテンツ専門調査会についてペーパーで意見発表がありましたので、それぞれ各自読んでいただきたいと思いますが、これも非常に興味深い問題提起であるかと思います。
 いろいろな御意見が出ましたが、重延委員がおっしゃった、今のコンテンツがベンチャーだとするときこそ、このような問題を考える最後のチャンスであり、非常に重要な時期にきているので、非常にこれは的を得たものだと思います。
 今から4年くらい前に経済産業省が事務局の産業競争力会議がありまして、私もそれに出ておりましたが、そのときの一番初めの議論がどちらかと言えば重厚長大で機械の償却をどうやって有利に進めるかというような議論から入っておりました。私はそのときにも申し上げたんですけれども、同じような目的で発生したアメリカのヤングコミッティでは非常に幅広く経営者並びに学会に議論を展開した結果、知的所有権こそアメリカを守る最も大事なものだと大きく問題を提起されました。
 単にそれは経済界の提案としてではなくて、レーガン大統領の諮問機関として、それが国家として採択をして、そのあらゆる外交手段の中で知的所有権が外交交渉の基本になったとさえ言えるわけです。中国に対しても再三、知的所有権を経済交流の大きなかぎにする。認めた部分だけは品物を買うというようなことがあったような気がいたします。
 それともう一つは、国内問題と国際問題はアメリカのように同じ波長でいっている場合は非常にやりやすいんですが、日本の場合は国際的にはやはり個人芸で非常に優れたものが自分の力ですっと伸びていっている。非常に個人職人芸的に成功して、あとからいろいろなことがついてくる。国内問題は非常に混乱状態で、何が何だかわからない状態の中から、進んだ業界から順番に整理をされていっているという状態でありますので、国内問題と、国際問題は同じ次元でうまくまとまらない部分がある。そこの整合をとるのは相当難しくて、だから政府も非常に逡巡していたんだと思いますが、経済産業省が去年からこの問題に取り組んで、今度は内閣官房で具体的な問題に取り組んだことはぎりぎりだけれども、まだ十分間に合うという気が私はしております。
 ただ、同じコンテンツ問題でも分野によって違うんですね。今、御提起があった流通とか、クリエイティブの保護とか、あるいは活用等々、皆ハードとソフトの問題も込めて、組織と国の問題も込めて、分野別に大変違う。
 私もこの6月までKDDIの会長をしていましたのでコンテンツの問題は非常に議論しましたが、電話の場合はとにかく流通の方が先に多くの客をつかんでしまって、音声よりもデータの方が多くなってきた。このデータの大部分がコンテンツということです。コンテンツも発信側ではコンテンツ以外にアプリケーションとかソリューションという概念をつくって、そういうものの中でまたハードのプラットフォームをどう変えていくかという議論と相互にやっていきました。
 今、御紹介のあった着うたとか着メロというのは、本当に1年間でこんなに爆発的に売れるとは思わなかった。今でもすごい勢いで伸びている。とにかく需要がどんどん入ってくる。こういうことは従来では想像がつかないニーズで、日本の経済は需要不足と言われているが、ある面ではものすごく需要が供給を上回って存在している。そのように非常にアンバランスに活力があることは成長要因としては非常に可能性のあることです。バランスが取れていくと成長は大体止まるんですけれども、基本的に成長期は、初めはあらゆる点でアンバランスである。そういう点では、明らかにこのコンテンツを中心とした世界はコンテンツ全部が限りなく伸びているのではなくて、非常にアンバランスに伸びているんです。その為、日本のコンテンツ産業の前途は可能性があると考えた方がいい。
 一番伸びていない吹きだまりになったコンテンツを軸にしてこの問題を解決するのではなくて、一番伸びていっているコンテンツの部分を基軸に置いて、新しい日本のこの分野の整理をしてシステム化するべき。やはり個人も尊重するけれども、それを発現する場であるシステムをきちんとしたものにする。特にシステムの方はそのまま国際的に通用するような仕組みでないと具合が悪い。その基準は、一番伸びているものを軸にして考えていく。日本の場合、政府が入ると一番競争力の低いところを常に考えてオーガナイズするものですから、全く国際的に通用しなくなってしまうので、一番競争力のあるところからオーガナイズしていって、それによってだんだん古く置き去りにされたコンテンツを失っていくということを考えていくことが大事だろうと私は思います。
 製造業の場合でも、伸びるものを軸にして伸ばしているから日本の製造業は競争力がありますが、伸びていないところの救済策ばかりやっていると全然伸びないのであります。
 また、この業界は玉石混交になりやすい。玉石混交は大いに結構で、やはり玉も石も混ざっているから伸びるのであって、それを市場が黙っていても分けてくれる。世界のマーケットが黙っていてもそれを整理してくれることは、ハードよりもソフトの方が更にそういうことがきちんとされているという気がします。
 そういう意味で、今後の展開の中で人材の問題とか資金調達、海外展開、流通、この4つの問題は大変に重要で、とりあえずここに書いてありますようにテーマ毎に順番に議論をしますが、これは非常に入り組んだ関係になっていますので、例えば、人材を議論しようと思うと資金や流通の問題が絡んでくるというところがあるので、それは余りかたくなに分けて議論しようとしない方がいいだろうと思います。
 今日は10時15分閉会でありますので残りの時間、御意見のある方から自由に御発言をちょうだいして、今後の問題整理なり、産業展開についての参考にしたいと思います。
 御発言されたい方はネームプレートを立てていただければ私が指名しますが、5人くらいしかできませんので3分を厳守していただいて御発言をお願いしたいと思います。
 では、角川委員からどうぞ。

○角川委員 皆さんのお話をよくお聞きして、改めてこの推進計画に触れております創造、保護、活用、流通が重要だなと今、日枝さんの御指摘になったとおりなんですけれども、こういう中で映像の場合にはまだそういう権利者や、それから持っている会社、法人著作権みたいなものとの調整をすることが全くできていない。それが、里中さんからお話があったように海外から問合せがあってもなかなか答えられないとか、いろいろな問題を含んでいると思います。
 そういう中では依田さんから、音楽の世界では既にそういう調整機関ができている、認証機関もできているというお話がございましたので、私はそろそろ映像についてもそういうコンテンツの調整機関、それから認証機関というものを組織しなければいけない時期にきているのではないかと御提案したいと思います。
 これについては、既に実は6年くらい前のインターネットがスタートしたときからインターネット上における映像の認証機関みたいなことの提案というのはあったわけですけれども、結局それは従来ソフトウエアさんの提案だとか、広告代理店の提案だとか、そういうことでコンテンツホルダーの側に立った提案でなかったために非常にその具体性を欠いてきたんだと思うんです。それで、今回この調査会は本当にコンテンツホルダーの方々が皆さん全員そろっておりますので、こういうところでそういう映像コンテンツの認証機関の在り方というものを具体的に考えていく、いい本当に限られた機会だとつくづく感じております。
 そこで、関係する事業者の方に集まっていただいて、関係する省庁は非常に幅広いものですから、そういう方々にも合わせて広げていったらいかがかと思います。

○牛尾会長 では、皆さんから御意見を先に伺ってからと思います。里中委員、どうぞ。○里中委員 海外展開なんですけれども、先ほど来話が出ております、我が国がこういう産業にかける支援なり費用が少な過ぎるということについて、現場の実感として一言申し上げます。
 これまで海外展開につきましても、海外から問合せがきて漫画を我が国に出したいとくるのを待っていただけなんです。待っているだけでも手一杯で、各出版社でもできる限り海外には出したくない。なぜかといいますと、海賊版の問題がある。幾ら海賊版を出さないように、つまり先ほどお話がありましたように現地で正規の出版物を出すと海賊版がなくなるんじゃないかという議題の下に正規契約をしますと、正規出版と同じ日に5パターンぐらいの海賊版が出るんです。国や地域によりましては、正規に輸入した情報を裏で幾つもの業者で分け合う。だから、契約上は1万部発行になっておりましても、実売は20万部とかあるわけですけれども、そういう裏社会のようなものができ上がっているという実態があります。ですから、正規の出版物を出したからといって海賊版がなくなるということは、なかなかこれはひとすじ縄ではいかない。
 ところが、痛しかゆしでして、海賊版によって浸透していく作品もあるわけです。海賊版によって余りにも浸透し過ぎますと、そろそろ正規物を出さなくちゃしようがないだろういうことで受けて、その正規出版を認めるという逆のケースもあります。名前を出すのは失礼ですけれども、例えば中国などは海賊版の不買運動を国としてやりますと言っても、彼ら自身が著作権というものに対する認識がまだまだですので、わからないわけです。実際に海賊版についてこれをやめましょうと言っても聞きませんので、著作権はなぜ大切かというと将来の中国の若者たちがクリエーターになったときに著作権がちゃんと守られていなければ損をしますということで攻めていかないと、なかなか御理解いただけないんです。
 そういう活動もほとんど個人的にやってきたわけですけれども、海外、特に韓国などは国が支援しまして漫画家の活動などにも支援策を出しているわけです。はるか昔、15年以上前になると思いますが、韓国に行きますと漫画家たちの集まりのところに日本の漫画本の新刊がずらっと並んでいる。これはどうしたんだと。日本語の文化を輸入したり発表したりするのは当然まだ許されていないころなんですけれども、これは国から支援金をいただいて、いいものを見て追いつき追い越せということで、当時のお金で日本円にして年間25万円と言っておりましたが、日本の漫画を買うためだけに使うお金として支給されている。ついては日本は幾らもらっていますかと言われて、一度ももらったことがないので、ありませんと言いましたが、海外からよく言われます。
 あとは、ヨーロッパやアメリカで漫画やアニメーションのフェスティバルがあるわけです。先ほど映画の話もありましたけれども、商売になる部分では会社単位でブースを出したりします。ところが、去年フランスのアングレームの漫画フェスティバル、これはヨーロッパ各国に漫画を売り込む見本市のようなものでもあるわけですけれども、そこに作品を持ってきて交渉ができるわけです。これは漫画家から聞いた話なので額が本当かどうかわかりませんけれども、韓国はそのイベントのためだけに国から日本円にして2億円もらっていると言うんです。それはフルに活動できるわけです。私たち日本人はどうしているかといいますと、いつも自ら手弁当で行って自分の勉強のために見学するという形で海外のそういうイベントには参加しております。ですから、経済効果がないとなかなか企業としても乗り込めないのは事実ですが、そこで指をくわえていますとさらわれてしまう。
 最近も、韓国のモバイル事業者が日本の漫画を中国へ売りたいと言ってきました。中国の広大な人民に自国のモバイル製品を売りたい。それを広めるためには漫画が一番いいだろう。ところが、漫画となれば日本だ。日本の漫画と契約をして、中国で日本の漫画の魅力でモバイルを売っていこうということがありました。
 こういうことが最近多いんですね。うかうかしていると、中身を利用されてよそがもうけるということになります。もちろんきちんと著作権料はいただきますけれども、そういう動きがあるということも付け加えさせていただきたいと思います。長くなりましてすみません。

○牛尾会長 では、熊谷委員どうぞ。

○熊谷委員 先ほどクリエーターのお話が何度か出てきましたけれども、民間と技術研究者との関係についてもひとつ申し上げたいと思います。
 ゲームコンテンツ、殊、デジタルエンターテイメントの世界におきましては、さまざまな基礎研究分野で開拓された技術を応用してまいりました。例えば人体の動きをキャプチャリングしますモーションキャプチャーの技術でありますとか、または油圧式の軸が付いた乗り物を動かして軍事シミュレーターのようなものをエンターテイメントの世界で生かしまして、そういったアトラクションを制作したりですとか、またはインタラクティブなコンテンツを制作したりとかといったような形で、さまざまな技術分野でまず基礎研究として研究者の方々が立ち上げましたプロジェクトを、我々のエンターテイメントのエッセンスを加えて広く世界に普及することに努めてきたわけです。
 そういった技術分野と民間の開発者、クリエーターとの情報交換の場というものがまだまだ薄いように思います。かなり現場レベルでさまざまなカンファレンスを開催したりですとか、意見交換をするような場を設けたりといったような活動もあるのですが、やはりもっともっとそういった新しい技術とクリエーターの出会いの場というものを更に機会としてつくっていけたらいいなと思います。

○牛尾会長 では、依田委員どうぞ。

○依田委員 先ほど牛尾会長から、伸びているコンテンツを伸ばすという御指摘がありました。そのとおりだと思いますが、レコード産業が今10%くらいのダウンをしていますので、音楽業界は終わりかというような印象になっても困りますので。
 ちなみに申し上げますと、昨年の1年間の日本音楽著作権協会の収入はそれでも0.7%伸びておりますから、最大のレコード産業の落ち込みをほかの音楽セクターでカバーしている。それが先ほど申し上げた着メロであり、着うたであり、確実にその産業は伸びています。
 もっと積極的に言えば、里中委員がおっしゃった中国の問題ですけれども、我々は絶望視していません。これをどのようにきちんと前向きにとらえて、それを逆手にとって海外進出するかということで今、一生懸命やっておりまして、こういうときは普通レコード輸入権のことを申し上げるので牛尾会長はまたかと思われたかもしれません。今日は申し上げませんが、そういう意味でとにかく頑張っていきたいということでございますので、一緒にできればいいなと思います。

○牛尾会長 それでは、時間は残り少ないですが、日枝委員と久保委員からお願いします。

○日枝委員 さっき角川さんから、番組の認証をそろそろどうだというお話がありました。確かに音楽はJASRACがあって管理されていて、映像の方がないんですね。私は民間放送連盟という立場ではなくて、そういうふうにしていかないと、これだけメディアが多くなってきていろいろなところで使われるときにはやはりそういうものが必要だな、検討に値するなというふうに聞いておりました。したがって、我々の業界の中でも議論をしていったら一つの進歩になるかと思います。
 それで、幾つかさっき申し遅れたんですけれども、こういう会議になると必ずすぐに人材の育成と出てくるんですが、人材の育成というのはそう簡単なものではなくて、人材がうまくできたらコンテンツ王国になっているはずなんです。非常に卑近な例を言って恐縮ですけれども、多分テレビ局ですばらしい番組をつくって、このすばらしい番組というのは質的な面、視聴率的な面、いろいろな角度がありますけれども、実はもちろん専門の学校を出てきた方もおられますが、政治経済ですとか、法律ですとか、商科ですとか、理工学部とか、こういう人間が実はコンテンツをつくっているんです。
 ですから、その辺もよく考えませんと、どういう専門学校をつくったらいいのか。あるいは、専門学校よりもさっき留学というお話がございましたが、留学生を入れる、あるいは日本からハリウッドとか、そういう現場に留学をさせて勉強させる。それを支援する。そして、それを受け入れる日本の受け皿のそういうシステムをつくるなど。最近一番いいコンテンツをつくる制作者が出てきているのは今村昌平さんの学校ですね。ここからは今、各テレビ局とも非常にいい作品、視聴率のいい番組をつくっている若手の人たちが出てきております。これは学校と言っても今村昌平さんの執念でつくった学校ですけれども、こういうところからいい人が出てきている。これは一つの参考になるかと思います。
 それからもう一つは皆、潜在的にはそういう能力を持っていても、普通のそういう専門学校などだと物をつくるところに入れない。例えば私どもはテレビ局、プロダクション、いろいろあると思いますけれども、なかなかそういうところに入れないというようなことで才能が死んでしまう。これをどういうふうにして発掘するかということも人材育成の非常に大きなことなのかなと私は思います。
 それから、先ほども申し上げましたけれども、もう一度くどいようですが、ロイヤーですね。これを育てるとプロデューサーとか、そういう人たちでアメリカがこれだけコンテンツが盛んになったのはロイヤーがしっかりしているからです。久保利さんのような優秀な方がおられて、その方がコントロールしながらコンテンツをつくっていく。これがないと、やはり産業としてのコンテンツの育成というのはなかなかできないんじゃないかと思います。
 それから資金調達がここにも書いてございますが、資金調達もただ単にどんどん貸していったのでは話題の不良債権がどんどん増えてしまうだけだろうと私は思いますので、やはりコンテンツがわかる銀行というか、支援措置のお金を持っている人がいないと、これは本当に不良債権の山になって、大体コンテンツというのは10本あるうち2本くらいしか当たらないというのが今までの常識ですから、そこにどんどんお金を出していっても不良債権の山になる。したがって、それがわかるシステムというものをつくらないと、単に資金調達ということではだめではないかと私は思います。以上です。

○牛尾会長 では、最後になりますが、久保委員、1、2分でお願いします。

○久保委員 先ほど里中委員と依田委員の方から中国のお話がございましたので、中国の最も新しい情報を皆さんにお伝えしたいと思います。
 海賊版問題で騒がれています中国ですが、今、恐ろしい勢いで急成長していますコンテンツビジネスがあります。それは携帯向けのゲームのコンテンツのことです。きっちりとした資金回収ができて、既にそれを扱っている人たちは数百億円以上の富を手にしているという現状があります。中国では携帯電話がある種のステータスになっています。また、不正があればすぐ止めることも可能ですから、海賊版がなかなか発生しづらいシステムになっているんだと思います。現在、中国の方々は100円、200円という使用料を平気でどんどん払っていらっしゃいまして、それを提供している人たちは確実にもうかっています。
 実際にそこで遊ばれているゲームを見ますと、日本でファミコン時代にあったヒット作のドラゴン何とかなどに似ているものが大変多くございます。ここのところを日本として真っ先に押さえにいくべきではないでしょうか。中国でしっかりとしたビジネスが成立しているジャンルなのですから、会長もおっしゃいましたように伸びているところには真っ先に手を打ちたいということであれば、まずここに日本として何か物を言っていきたいと思います。
 それと、先ほどもちょっと言いましたが、保険の問題です。海賊版の問題は保険で解決できる可能性もあります。このことに関して日本の保険業界は全く積極的に動いていないように思います。アメリカには、訴訟を受けた場合等に対する保険というものはきっちりとあるわけですが、日本の法人がなかなかそれを安価に手に入れることができない環境があるように思います。ですので、保険についても是非とも皆様の御意見をいただければと考えます。ありがとうございました。

○牛尾会長 ありがとうございました。
 まず角川委員から、また日枝委員からもコメントのあった映像コンテンツの認証に関する検討は確かに大事な問題だと思いますので、御提案のように一回この事務局の方で関係する事業者を集めていただいて、次回ぐらいにその検討状況のお話をちょうだいして、どの程度で進めるかということを決めたいと思います。
 それから人材の育成、それからロイヤーの問題ですが、ロイヤーはロースクールが来年から発足してもそれが実るまでにはまだ5年ぐらいかかりますが、5年たってもなかなか難しいと思うんです。だから、これは相当アファーマティブなことをしないといけない。同時に、法の裏側にあるのは行政のレベルで、行政はこの分野に対してレベルが低い。国、地方とも低い。これをどうやって高めるかというのは、経済産業省を見ていますと大変なピッチでレベルが上がってきていますので、行政の方は少し拍車をかければスピードは早いかと思います。行政のレベルが法律のレベルを少し上回っておけば、行政がしばらくカバーできると思うので、これは一回知的本部の方で国、地方のコンテンツに対する行政の理解の知識レベル、発想というものを検討する必要があると思います。
 最後に、人材の問題であります。次回に人材について議論したいと思いますが、やはり教育効果というのは非常に大事ですが、育成される人材が果たして優秀かどうかという点にいささか疑問があるんです。しかしながら、人材育成の視点は非常に大事で、かなり透き間の多い育成システムがたくさんあることは大いに結構ですが、最終的には育成機関を通じて自力で上がってくる人が一番優秀な人でありますから、余り完璧な育成システムをつくると骨抜きになってしまうという気がします。
 そういう意味で、人材の実情等を、問題提起をできる人を2名くらい参考人としてお呼びして問題提起をしてもらおうと思っておりますが、何しろこの委員会は準備期間も非常に短いので、個別に皆さんの御意見を聞きながら、最終的には会長である私に御一任をちょうだいして参考人は決めさせていただきます。その過程においては個別に御相談しますので、どんどん御意見を出してもらえれば非常にありがたいと思います。
 次回は11月13日8時半から開催します。事務局の方からまた事前の御説明、御意見を聞くということは遅滞なく行われますので、よろしくお願いいたします。
 最後に、事務局長から何かございますか。

○荒井局長 特にありません。

○牛尾会長 それでは、本日はこれをもって終了いたします。どうもありがとうございました。