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コンテンツ専門調査会

日本ブランド・ワーキンググループ(第4回)議事録


1.日 時:平成17年2月25日(金)14:00〜15:30
2.場 所:霞ヶ関東京會舘エメラルドルーム
3.出席者:
【委 員】牛尾会長、阿久澤委員、阿久津委員、麻生委員、太田委員、小山委員、辻委員、土肥委員、浜野委員、原委員、三國委員、皆川委員、山田委員、中山本部員
【事務局】荒井事務局長
4.議 事:
(1) 開会
(2) 日本ブランド戦略の推進について
(3) 閉会


○牛尾座長 では、定刻になりましたので、ただいまから、「コンテンツ専門調査会」第4回「日本ブランド・ワーキンググループ」を開催します。
 本日は、農林水産省の総合食料局山田次長、経済産業省大臣官房薦田地域経済産業審議官、文化庁加茂川次長の御出席をちょうだいしております。
 なお、本委員の麻生委員は今度、全国知事会会長になられて、改めて御紹介をいたします。
 では、議事に入ります。本日の議題は「日本ブランド戦略の推進について」でありますが、早速ですが、事務局から資料について、説明をお願いしたいと思います。
 資料1〜3について、説明をお願いいたします。

○荒井局長 資料に沿って御説明いたします。
 資料1は、事前に御確認いただいておりますが、第3回会合の議論の整理をしたものであります。
 次に、資料2及び資料3は、日本ブランド戦略の推進(案)の概要及び本文であります。取りまとめに当たりましては、本会合での御発言や各方面からいただいた御意見などを基に原案を作成し、委員の皆様から論点の追加や修正意見等をいただきながら、取りまとめたものであります。
 資料2をご覧いただきたいと思いますが、1ページをめくっていただきまして、2ページ「1.基本的方向(日本の良さを世界に伝える)」ということで、日本の文化力をベースに、日本ブランドの確立をして、世界から愛され、尊敬される日本を目指すということであります。
 (2)は、我が国の優れたライフスタイルとして、食、地域ブランド、ファッションを活かしてブランドづくりをする。この基本は民間の自由な競争であります。
 3ページは、「(3)日本ブランド構築のための課題」「(4)日本ブランド構築のための基本理念」ということで、日本人の能力・個性を発揮する、自由な競争、伝統と創造を活かす、消費者の視点を入れるということであります。
 4ページは、具体策でございますが、資料3に沿って御説明いたします。
 資料3では、提言とそれに関する各委員及び参考人の御発言などを論点として紹介するとともに、生産者の声や関連の取組みの例なども併せて記載しております。
 最初に目次がございまして、1ページが「はじめに」。
 2ページから「第1部 基本的方向」で、2ページ、3ページは資料2で御説明した内容でございます。
 4ページから「第2部 日本の魅力向上のための具体策」ということで、Iが「魅力ある日本をつくるための3つの目標と12の提言」でございまして、4ページからは「目標1 豊かな食文化を醸成する」ということで、5ページが「【提言1】民間が主体となって優れた日本の食文化を評価し発展させる」。
 6ページが「【提言2】食育や安全・安心と正直さが伝わる食材づくりの推進により日本の食のブランド価値を高める」。
 7ページが「【提言3】調理師養成施設、料理業界、大学等は食を担う多様な人材を育成する」。
 8ページが「【提言4】日本食に関する正しい知識や技術を広く普及し積極的に海外展開する」でございます。
 10ページからは、目標2として「多様で信頼できる地域ブランドを確立する」でございまして、11ページが「【提言5】生産者、観光業者、大学等の連携により地域ブランドづくりに戦略的に取り組む」。
 13ページが「【提言6】農林水産品に関する基準を整備・公開し、消費者に信頼される地域ブランドをつくる」。
 14ページが「【提言7】地方自治体と産地が一体となって効果的に情報発信する」。
 15ページが「【提言8】地域ブランドの保護制度を整備する」でございます。
 16ページからは「目標3 魅力あるファッションを創造する」でございまして、17ページが「【提言9】デザイナーに対し、ビジネス機会を提供し、素材との連携により魅力あるファッションを生み出す」。
 19ページが「【提言10】大学等や産業界はデザイナー及びデザイナーのパートナーとなる人材を発掘・育成する」。
 21ページが「【提言11】在外公館やJETROの広報及びビジネス支援を通じ、内外の目を日本のファッションに向ける」。
 23ページが「【提言12】不正競争防止法を改正し、模倣品・海賊版対策を強化するとともに、新たな観点からのブランド保護の在り方を検討する」。
 24ページがUとして、「日本ブランドの戦略的な発信」でございます。
 以上でございます。

○牛尾座長 前回から本日に至るまで、知財事務局が各委員の皆さんのところへ持ち寄りまして、いろんな御意見をちょうだいして、事実上、持ち回り委員会を開いたような形で、本日のこの資料3にまとまりましたので、基本的にこういう方向でとりまとめましたことを御了解をちょうだいしたいと思いますが、こういう方向でようございますか。

(「異議なし」と声あり)

○牛尾座長 どうもありがとうございました。
 むしろ、ここからどのように発展させていくかということで、各省からもいろんな積極的な反応も出ておりますし、既に内閣官房の観光立国推進戦略会議で方向を出して、いよいよ国土交通省を中心に各地に観光戦略を今、発信をしている真っ最中ですが、それとやはり今回のレストラン等、食分野やファッション分野、地域再生に関連する地域ブランド分野は非常に連携をするので、このグループとも観光グループを交流してまいりたいと思っていますし、また地域再生計画、要するに地域の産業活性化、景気活性化についても、ここの点は地域との関連も非常に深い。
 山田委員の御出身の組織などにも連動して、かなり多様な組織を連動して、これの実現を考える。実現するに対して、まだ必要な法整備も出てまいりますので、何とか1年以内の間に極めて効果的な結果を出したいと思いまして、一応これをまとめた後、フォローアップを当然ここでするわけなんですけれども、そういうこともこの委員会を活用させていただくことを考えて、これを出発点として考えたいと私は考えております。
 それでは、そういうまとめについて、今後の問題を込めて、皆様から御発言をちょうだいしたいと思いますが、御発言する方は、毎回言っていますようにネームプレートを立てていただいて、大体3分ぐらいで発言を回していきたいと思います。
 御意見ございましたら、どうぞ。
 麻生委員、何かございますか。

○麻生委員 第1点は、今回、ソフトパワー、文化力ということを明確に位置づけて、日本の世界での活躍、イメージの向上を図っていくんだというはっきりした政策を確立したということは、非常に大きな意義があると思います。
 日本は工業製品のすばらしさにおいては、大変世界的に高い評価を得ているわけですが、そちらが得意であるがゆえに、反面、このソフトパワーの意識が弱かった。これを明確にしたということは非常に大きな意義があります。
 2番目に、地域ブランドについて、はっきりした方針が今回出てまいりました。これは非常に地域としては、まさに産官学一体となってやっていくというテーマでございますし、方法論も非常に違っています。違っておりますけれども、地域から世界に向かってブランドをつくり上げていくんだという目標設定ができたということは、活動の組織化、方向をつくり出す上で、非常にはっきりした体系を提起したという意味で、非常に大きなことになってまいります。
 これはそれぞれの地域で工夫していくことでありますけれども、このような枠組みをつくったということは非常に役立つと考えております。
 3番目の点は、今回は大きく3つの分野についてソフトパワーということを論じましたが、実はソフトパワーの範囲というのは非常にまだ広大です。多くの分野があるわけです。 例えば、特に私どもが非常に目標としています、東アジアにおけるソフトパワーの争いということを考えました場合には、今、非常に流行の映画、アニメーションとか、ポップミュージックとか、あるいはデジタルアートというようなものもございますし、どちらかというとファーストフード系の食べ物の競争。こういうようなことが非常に活発に行われているという状況であります。
 そういう意味で、是非将来はもう少しこのソフトパワーの中身と言いましょうか、これを広げて考えていく。そして、また現実には、ファッションも含めてそうですけれども、東アジアで非常に新しい競争が行われている。これに対して、我々も積極的に入っていく、あるいはリードしていくという考え方でやっていく必要が非常にあるのではないかというふうに思っている次第でございます。本当にありがとうございました。

○牛尾座長 今、麻生委員の最後に申された、アニメとテレビ、映画と音楽は、実はこの前の「コンテンツ専門調査会」で取り上げまして、今度3月31日にこの日本ブランド・ワーキンググループのメンバーと前のメンバーと合同の「コンテンツ専門調査会」の会議を開いて、皆さんもそれぞれ顔なじみにもなってほしいし、情報の交換をしたいと思います。
 アニメ、音楽、レコード、出版まで込めて、かなり成果が出たんですね。やはりこの業界もまた海賊版の乱造の問題もあるし、アニメなど、そういうテレビ映画などの場合は製作者に余りお金が回らないような仕組みになっていて、流通やそういう方向がみんな付加価値を取ってしまう慣行を是正する必要があるだろうということを、かなり大胆に発言したものですが、3月31日にもう一度皆さんに集まってもらって両方の交流もして、今、麻生委員がおっしゃったように、幅広いソフトパワーについて考えていきたい。
 昨日、この内容を持って、総理に30分御報告をしたんですけれども、やはり知育・徳育・体育に次いで、三國委員もおっしゃっていた食育というのは、総理は非常に気に入っておりまして、食育調査会主催の会合で熱心に語られている記事も見たことがありますが、食育というのを非常に大きく取り上げられており、この間、三國委員がお話になったようなことについても、文部省の方も非常に覚悟をしているようでありますので、十分成果を上げていきたいと思っています。 では、ほかに御意見ございますか。小山委員、いかがですか。

○小山委員 おはようございます。何度か参加をさせていただきまして、いろいろなお話とこのまとめを見ていますと、三國委員も私もそうなんですけれども、料理をつくるというところから人生がここまで来ているんですけれども、国家的とか、あるいはこういう場所で食のことを日本の国が本当に真剣に取り上げていただけるような場所ができたことは本当に感謝をしております。
 衣食住とか言いますけれども、本当に食べ物というのは食べられないと生きていけないので、大切な仕事に携わっているというように、私たち自身は思っておりますけれども、それが本当に国家的に取り上げられる、あるいは国として考える場所ができたことがまずすばらしいことだと感謝をしております。
 その上で、この国が何をしなければならないかということが、幾つかお話が出て、それは大変幸せなことだったと思いますし、私自身も10年以上にわたって海外で日本料理を教えたり、私の学校や店に向こうの料理人が勉強に来たりという経過からいうと、第1ステージは海外においては終わっているように思います。どこの都市に行っても日本料理店もありますし、回転寿司があったりとか、いい形で広まってはいます。それを日本国内においては本物が行っていないとか幾つかのことがありますけれども、私たちもハンバーグやスパゲッティーを食べてきた国でございますから、一応それは大変すばらしい成果であると、私はとらえております。
 その上でこの結果を踏まえて、第2ステージに入るというのが、日本の食文化あるいは日本料理を通じて日本という国のすばらしさを世界に広めていくための、そういう意味では下地が十分にできているという時代に入ったと思います。
 反対にその時点において、次なるステージのことを始めるに当たって、外に向かって何かをやる、発信ということも大切ですけれども、実は大きな津波のような、世界中の食文化が日本食というものを、長寿も踏まえて、日本の食文化に対して、ありとあらゆる欲求あるいは発信を求めているような時代が来たときに、果たしてこの国の中にそういうものに対して準備、あるいは着々とそのことに対して構えをしている人間、あるいは組織の人々がいるのかというようなことが今回非常によくわかったように思います。ブランドというのは、その国の人が大切にしているものを世界中の人が求めるものですから、是非とも日本食というものをもう一度国内でもきちんととらえて、食育も通じて、日本の地域に根ざす食の大切さみたいなことも今回取り上げていくと、食文化と地域文化というものが実は2つにして1つのものであるということがよくわかると思いますので、そういう意味合いで、私は食文化研究所のようなものをこの国につくるのが大切なように思います。 そのことによって核ができる。そうすると、情報を求めてきたり、あるいは発信したり、いろんなときに絶えずいつも考えている人がいないとなかなか難しい。
 そのことによって、本来日本の大切なものが20世紀は外国のものを取り入れる時代であるとしたら、この新しい世紀において日本がトップランナーとして情報を伝えられると。それは21世紀の大切なものが人の幸せというところが、実は癒しであったり食であったり長寿であったりするというところで関わってくるというふうに思います。
 そういうことが大切だというふうに思う、あるいは思っていただけるような、このような発信の場ができたことが今回のすばらしい成果だと思いますし、委員長がおっしゃるように、これをステージとして、次に向かっていくということも大切だと思うので、私たちの業界も通じて、ますますそういうことが高まっていくのだと思っております。大変ありがたいことだと思っております。ありがとうございます。

○牛尾座長 ほかに御意見ございませんか。
 浜野委員、どうぞ。

○浜野委員 明治維新のときに列強の政治的植民地化を避けるために、文化的植民地化を選んだわけですが、それで150 年間ずっときました。それを是正しようという立場を表明したのがこの委員会だと個人的には思っています。小山委員がおっしゃったように第一歩にすぎなくて、150 年間の経緯がありますから、実現は簡単ではないのではないかと思います。
 日本の留学生はどうですかと海外の先生方によく尋ねることにしているのですが、共通して言われるのは、お国自慢をしないのは日本人の学生だけだということです。他国の留学生は、とくとくと自分の国の自慢をするのに、日本人に日本のことを紹介してほしいと言うと、うーんと考え込んで、結局何も言わないらしい。
 本当に信じて、本当によさを理解していなければ、日本ブランドと言ってもうその発信になってしまいますから、やはり自分たちは本当は愛しているとか大事だと思わないと、その発信する力もない。ですから、三國委員がやっていらっしゃるようなこととかは、私はものすごく大事だと思って、是非小さな頃から優れたものに触れることも大事にしていただきたい。小山委員がおっしゃるように、あくまでも第一歩だと思っております。
 もう一つは、これはもう是非やっていただきたいことがあります。国内で我々が頑張るということも大事なんですが、海外で日本のことを愛して、紹介してくださったり普及してくださったりしているたくさんの外国人の方とか在外邦人がいらっしゃるんですが、ほとんど孤立無援です。例えば、マッカーサーの副官だったフォービアン・バワーズという方は、GHQが止めさせようともくろんでいた歌舞伎を命を賭して歌舞伎を守ったわけです。しかし、晩年は貧困の中でマンハッタンで孤独死されました。死ぬ直前に日本政府が勲章を上げたのはよかったんですけれども、天国に勲章を持っていったって仕方ないわけです。
 フランスのように、時期を逸することなく、我々の気持ちを海外の方に表現するような顕彰事業を制定していただきたいと思います。海外ではそういう形で謝意を表しているのですから、我々も海外の人にはそういう態度で接していただきたい。
 海外の方への顕彰事業が書かれてはいますが、是非実行していただきたいと思います。
 以上です。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 山田委員、どうぞ。

○山田委員 大変簡潔にわかりやすく方向が示されておりまして、大賛成であります。まとめの方法としましても、目標を出されて、提言を出されて、論点が出されて、取組事例、更に委員の発言も簡潔に整理されているわけでありまして、こういう形で同時に掲載される新しいまとめの形は大変わかりやすくて、我々も今後大いにいろんなところでこれを参考にしたいなというふうに思います。
 ところで、2点ほど補強的に申し上げさせていただきますが、第1点は、先週タイに出張しました。この調査会に参加させてもらっているということもありますので、特にきょろきょろしながら周りを見てきたわけでありますけれども、タイのバンコク国際空港はそれこそタイシルク、民芸品、トロピカルフルーツなどタイ産の多様な商品がそれこそところ狭しと並んでいるんです。空港全体がそれこそ本当にマーケットのように楽しい空間であったかというふうに思います。
 それに比べまして、出発の成田空港は海外のブランド品は大変たくさんあるわけでありますけれども、自国産のものを余り置いていないということが明らかだったというふうに思っております。
 当然このまとめにも整理されているわけでありますけれども、国際空港が日本ブランドの情報発信基地として、しっかり位置づけてもらって、戦略的な取り組みを進めることが本当に必要ではないかと、こんなふうに思いました。
 第2点は、本日お見えの委員の皆さんに比べて、情けないですから、余り大きい声では言わないんですが、私の反省も含めて申し上げるわけですが、我々はアジアのモンスーン下における、米を主食にしている9か国の農業者の組織と「協力のためのアジアグループ」というのを組織しておりまして、毎年2回はいろんな形でセミナーを開いたりしているわけです。
 しかし、私はなんと10年英語を勉強しましたが、通訳を連れていかないと、言わば会議に同席できないわけです。ところが、アジアグループの皆さんは、我々と同じ農業者組織のメンバーですけれども、韓国、インド、フィリピンは勿論でありますが、ベトナム、インドネシア、タイであったって、ほとんど皆さん全部英語をきちんとしゃべられるわけです。
 日本ブランドを海外に普及するということでありますけれども、日本の技術を持った人を勿論育成していくことの大事さというのは間違いないわけで、それらの人が発信する力になっているというふうに思いますけれども、英語力を同時に開発しておかないと難しいわけであります。国際化は同時に英語力を、これは最近若い人は留学も含めまして、多様な勉強の機会もあって、広がっているというふうに思いますが、しかし、私は本当にアジアの国々に比べても英語力が場合によったら弱いのではないかというふうに思います。 そういう分野の国際化も是非念頭に置いて展開していただけたらありがたいなと、こんなふうに思います。

○牛尾座長 阿久澤委員、どうぞ。

○阿久澤委員 全体的なまとめは大変よくできているなという感じがしますけれども、ファッションについて、ちょっと一言言いたいと思います。
 この概要の資料で日本の文化力の発現としてのアウトプットである日本ブランドを世界に発信して、世界から愛される、尊敬される日本にしていこうという最終的な目的があるわけですが、そうした場合、ファッションの中で、日本には民族衣装である着物というものが現実にあるわけです。そして、10万以上の人がその産業に携わっているわけですが、これに全く触れることなくて、洋装ファッションだけを取り上げていくというのはいかがなものかという気が若干します。
 先ほど、小山先生の方は、食文化の多様化ということも非常に意義があるということでしたけれども、ファッションの世界でも当然そういうことは言えるわけであると思うのです。勿論、今更着物を世界の人の着せようなどというアナクロなことを考えるわけではないですけれども、日本人が日本の文化を誇る、その1つの要素として武器として、着物というのは非常に大事なものだと思いますので、その辺もちょっと考慮していただいた方がいいのではないかというのが1点です。
 もう一つ言わせていただきます。実はこれは冒頭に本当は言っておかなければならなかったんでしょうけれども、ファッションと食と地域ブランドという3つの項目立てで論議を進めてきました。そして、まとめるに当たっては、その順番として食、地域ブランド、ファッションという順番になっています。
 しかし、食とファッションというのは、地域ブランドを構成要素とする、その上に花開いた産業です。これはそれぞれ非常に重要だけれども、位置づけが少し違うと思います。したがって、地域ブランドは一番前の方へ持ってくるか、それとも一番後に持ってくるか、そして、その意義も少し解説していただいた上で、地域ブランド自体も非常に知的財産ですので、勿論この中には入ってくるわけですが、その上に花開いた文化を世界に発信させていこうというような観点でとらえていただいた方がいいのではないかなという気がします。
 以上です。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 原委員、どうぞ。

○原委員 今、着物のお話があったので、ちょっと先に言われたしまったというところもあるんですが、浜野委員はいつも着物を着ていらっしゃいますが、日本人は100 年前までは着物を着ていた。ファッションのいろいろなことが今回初めてこうやって話されるようになったというところの原点には、洋服を取り入れた歴史が浅くて、日本人はやはり、たかがファッションというところがある。それをされどファッションとするために、私は私なりに30年間仕事としてファッションをやってきたつもりですけれども、なかなか簡単なことではなく、先ほど、小山委員がおっしゃったように食べないで暮らしていけないけれども、やはり人の前に裸で出ていくことはできなくて、人間は洋服を着て、今の日本人はほぼ洋服を着て人の前に出ていく。
 ただ、今ここにいらっしゃっている方のほとんどが、これからもし何かがあって洋服を1枚も買わずに一生を過ごさなければならなくなったとしても何とかなるくらいのものを持っている方が多い。そのくらい皆がもはや十分に持っているのに新しいものを買わせるという部分がファッションにはあるので、その辺では食べなくては死んでしまうというのとは違う意味で、つくったり売る方としては真剣につくらなくてはいけない。
 それと同時に、ファッションといって大ざっぱにくくって話している部分と、今ここにいらっしゃる方、皆さんが着ていらっしゃる背広とネクタイもファッションです。そういう部分では、自分たちが自信を持ってよそに売るには、自分自身が個人的に着ることに対しても、もっと男の方も含めて、恥ずかしからずに関心を持つことがすごく大事であると思います。
 それと先ほど、着物のお話がありましたけれども、私個人としては、やはり洋服の仕事をやっていくと、どうしても着物の方もとても気になるし、日本人の体形とかいろんな条件は、やはり着物が無条件に似合います。今日、受付できれいな黒い着物を着た方が1人いらしたのでびっくりしましたけれども、先ほどの歌舞伎と同じように、いろんなことで歌舞伎も以前よりは元気を取り戻して、お客さんも増えて、それを見にいく人が着物を着るというような現象も起こっているので、そういう部分がどこかに残っていさえすれば、それこそ日本なり東京を訪れた人がまた違う意味の日本のよさを、そんなに無理をしないでも見ることができると思います。
 それと、私はいつもここで一番考えてしまうのは、こういう催しで女は私1人で、最初はこの任務をお受けするかどうかで悩んだりで、そちらの方に気を取られていたんですけれども、つくづく考えると普段の生活ではもうちょっと周りでこのファッションの世界では女の人がたくさん働いているはずなんですけれども、こういうところに出てくると、私だけが女というのは何かちょっとすごく心もとないというか、あとファッションの大きな会社などでも、やはり上に立っている方は男の方が多くて、女の人の意見を取り入れる部分が必要なのかもしれないのに、目指している人が今まではいなかったのかもしれないけれども、もう少し違ってきていいのではないかと思いました。
 以上です。

○牛尾座長 ありがとうございます。
 どうぞ。

○太田委員 今からちょうど20年前、私は当時ニューヨークに住んでいましたが、日本でアメリカやパリみたいなデザイナーの会をつくろうといって、呼び戻されて日本に帰ってきて、東京ファッションデザイナー協議会というNPOみたいなものをつくったわけです。そのときにいろんなお役所の方からも、社団法人にしないかとかお話があったんだけれども、デザイナーというのはどうなるかわからないので、みなし法人のままの方がいいといって、20年間みなし法人でずっと会をやっています。そのとき、お役所の委員会に初めて出させてもらい、まずやはりデザイナーたちを何とかしてほしい、そしてデザイナーよりもデザイナーを取り巻くパートナーたちの育て方というのをちゃんとやってほしいという話をしました。その当時はたしか通産省のこういう資料にも、ファッションビジネスという言葉はカタカナでなかったなんです。必ず繊維産業と書いてあったんです。ファッションと書いていけなかったんですね。だから、デザイナーというのもたしか書いていけなかったんではないかと思います。当時もう既に世界で活躍している人はいっぱいいたんだけれども、ファッションビジネスという言葉は使ってはいけなかったんですね。
 そこから考えると、20年経って、こういう内閣府でデザイナーを育てようではないかということが活字に出るということは、20年かかったかなという気もするし、ありがたいなという気もします。
 欧米と比べて、やはりそれぞれの産業界が自分でやらなければいけない、民でやらなければいけないことはいっぱいあるんだけれども、一方で官に旗を振っていただけると、もっと火が付くということは幾つかあると思うんです。この前も出たと思いますけれども、例えば、ミッテランさんにしてもそうだったし、今のシラクさんもそうだし、公邸を使って世界のマスコミ、デザイナーも呼んで、皆さんありがとう、フランスのものをもっと買ってよというようなパーティーもするし、アメリカではメトロポリタン・ミュージアムでファッションデザイナー協議会のパーティーをやって、そこにたしかヒラリーさんが来たり、そういう官がちょっと後押しをするだけでものすごくニュース性が出てきて、わっとなる。これは民にはできない。今年はデザイナー協議会ができて20年、20年間一度総括しなければいけない時期に来ているんですけれども、できれば東京コレクションが終わったときに首相官邸でパーティーをしてくれるとか、そういうことがあれば、かなり違ってくるのではないかなという気がします。
 もう一点、20ページの中の上から2つ目に、「目白デザイン専門学校は、ニットメーカー」、これは工場さんですけれども、そんなに豊かではないはずの工場さんたちと組んで、実はこの間、文部大臣が土曜日に学校が休みだったので、もうちょっと違った教育、教える場をという話がありましたけれども、この目白デザイン専門学校さんと墨田区の工場さんが、一緒になってキッズスクールを始めて、三國委員と同じように、何か子どもたちに一緒にやってみようよと言って、ものをつくるって面白いよということを、学校が休みの土曜日にやっている。それを地域のお母さんたちの間で、自分たちの子どもたちが喜々としてやっている姿を見て、非常に評判がいい。しかし、続けたいけれども、実はお金がない、補助もない。だから、みんな持ち出しでやっているんですね。 やはり、そういう子どもたちが食べ物にもっと関心を持ったり、ものをつくるということを面白がったりということを普通の授業時間ではない、空いている土曜日にとか、そういうことをもっともっと民ではなくて官が一つの指針を出していくと、全国のいろんなところで盛んになっていくはず。土曜日に何か違ったことをやるという、感性もしくは文化力を付けるための教育がもうちょっとなされたら、すごく変わっていくのではないかなと思います。

○牛尾座長 民がイニシアチブを取って官ができるだけ積極的にバックアップするという形が一番いいと思うんですが、その初めの段階では、やはり官が先に出ることが、ちょっと間違うと非常に反発を食う。その辺は非常に難しいところがあると思うんですが、おっしゃる意味では、やはり相当公的なものがバックアップしていくということは非常に大事だと思います。
 土肥委員、どうぞ。

○土肥委員 このジャパンブランド・ワーキンググループの成果の1つとしては、地域ブランド、これが1つ大きくあるだろうと思います。
 この地域ブランドは確かに非常にいい制度なんですけれども、当然ながら万能ではないんです。ブランドの創出、育成、確立したものの保護という段階から言うと、真ん中辺りのところ、つまり育成辺りのところに関する制度でありまして、その前の創出の部分については地域ブランド制度は及ばないということになります。
 したがって、ここの部分、つまり創出の部分については、やはり何らかの検討が今後とも必要なんだろうと思われます。
 当然ながら、ブランドというのは国がつくるわけではなくて、その帰属主体がつくるわけでありますから、その主体に対して、どういうふうにするとそのブランドというものが立ち上げられるかという支援といいますか、考え方を示していくということが多分必要なのではないかと思います。
 地域ブランド制度は、確立したブランド保護の部分に及ばないんです。ブランドイメージそれ自体の保護というのは、少なくとも日本の知財の中には的確な保護制度はない。やはり混同だとか、商標的な使用あるいは商品等表示としての使用という、別の要素があって初めて保護されるということになりますので、ブランドのイメージそれ自体が毀損されるとか、出所の混同なしにそのブランドのイメージそれ自体が利用されたり毀損されたりするところに及ばないので、ここのところは依然として検討が必要だと思います。これが1点。
 2つ目は、ブランドというのは、やはりそのイメージに対して信頼が伴わなければならないと思うのです。つまりそのブランドの持っている品質に対する信用、質に対する信用、そういう信用というのは非常に重要であります。
 これも帰属主体が確立していくわけでありますけれども、そこのところに実は余り共通の尺度というのはありませんので、そういう尺度というもの、基準の確立というようなことは国ができる。そういう支援というのは官ができるんだろうと思います。
 3つ目、これが最後ですけれども、やはりこういうものをつくり上げて、このブランドというものをつくっていくわけですけれども、ブランドというのはほかから違うということを意味しているんですね。他とは違う。つまりそこが大事なんですけれども、それと同時に内外において、価値の連携を図っていく。つまりその価値の標準化とか、価値を広げる。つまりブランドというのは他とは違うんだけれども、それをつないでいく。それは国の中においてもそうだということになりますし、つまり幾つかの地域ブランドが連携していって、ブランド力の価値を標準化していく。
 それから、外においてもそういうことでありまして、国の外においても日本だけで、確かに独自のものというものを発信していく必要があるんですけれども、共通できるそういう部分については数を増やしていく。それは言わば技術の標準化ではなくて価値の標準化を図っていく。そういう仕組みづくりというものを今後とも必要ではないかということでございます。
 以上です。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 皆川委員、どうぞ。

○皆川委員 ファッションの場合、先ほど、阿久澤委員がおっしゃっていただいたように、国際的なファッションという軸と国内にある伝統産業ということの両立ということが非常に大切かなと思っております。
 伝統的にずっと培われたものというものと、あとは国際的に流通しているファッションという流れの融合点について日本のファッションとして、もう少しスポットを当てて、クリエーター、デザイナーやまたは携わる生産の方たちが、それをより強く意識していくということが今後必要ではないかなと思っております。
 そういう意味では国内の技術や生産業者の保護ということは非常に大事だなと思っておりますが、そのときに、では保護するということと、今度は自分たちが守るということを実際につくっている方たちが意識するということも非常に大事になってきます。ファッションのデザイナーやブランドということだけが前面に出されていきますと、実際につくっている方たちが、自分たちが目の前でつくっているものがどんなブランド価値を持っているかということを知らないままに今過ぎているような気もしておりますので、実際につくっている現場の方やすべてのファッション産業に関わる方というものが、そのブランド価値というものを意識して、それに対してプライドや喜びを持っていくということは、今後の日本のファッションにとって非常に重要ではないかなと思っております。
 勿論それは食でも同じことが言えると思いますが、ブランドというのは、やはりブランドを自分たちがやっているというプライドと、それをやっているという喜びを持たない限り、本質的な価値というのは生まれないのではないかなと思っておりますので、この日本ブランドという意味では、個々のブランド価値というのは大事だと思いますが、それを日本というブランドにしていこうといったときには、日本の文化を含めて、ブランドということの価値をそれに携わる人すべてに意識をしてもらうような運動が今後必要ではないかなと思っております。

○牛尾座長 どうもありがとうございました。
 三國委員、いかがですか。

○三國委員 前回もそうなんですけれども、皆さんにちょっとお勉強していただくコーナーでございまして、私はフランス料理をやっているので、フランス人として発言したいんです。フランス料理というのは非常に、会長もこの間おっしゃったように、ファッションと食ということで、シャネルとアラン・デュカスが銀座でやって、そこで大成功しているんですけれども、実は世界中の日本人以外の人種というのは4味しか持っていないんです。甘い、酸っぱい、しょっぱい、苦いと、日本人だけが5味といって、うまみ。
 そのうまみというのは、すべて我々外国から見ると、日本人は全部うまいんですね。歌舞伎も上手だし、それをうまいという。だから、手先が、異常と言うと言い方が変ですけれども、世界では圧倒的に日本人が器用なんです。それは5味を持っている、感性が1つ余計にあることによるんです。ですから、日本人の我々は気が付いていないですけれども、日本人そのものがブランドなんです。それをやはり日本人はそう気が付いていない。我々フランスから見ると、1つよけいに感性があるわけです。だから、手仕事でもファッションでも料理でも陶芸でも考えでも、すべて世界一、それが日本人全員が日本ブランドの資格を持っているのに、それにやはり気が付いていないというのが非常にフランス人から見て残念かなと。
 ちなみにフランス料理というのは、今、現代フランス料理、アラン・デュカスまで行くんですけれども、実は現在、どうして現代フランス料理が世界のトップになっていると、それは日本料理に非常に影響されています。今から100 年前にエスコフィエという人が、それまでは世界中にレシピというものはなかったんです。その100 年前にエスコフィエという人が、パリのホテルリッツの料理長なんですけれども、彼が初めてレシピを作りました。それまではレシピがなくて、みんな家業的にやっていたんですね。そのレシピで、ロンドン、パリ、ニューヨークで同じ日に同じ時間に300 名の同じ料理をよーいどんでつくらせたんです。その100 年前にレシピというのがロンドン、パリ、ニューヨークで、そこでフランス料理というのは世界中でつくられるようになって、世界中の人が食べるようになったんです。ですから、晩餐会がどうしてフランス料理かというと、そういう理由なんです。それは日本料理でもなく中華でもない。それがフランス料理になったというのは、世界中で同時にレシピがあればつくれるようになったと。それが100 年前です。
 50年前に今度は、フェルナンド・ポワンさんという人が、辻先生のお父様が一緒にお仕事をしていたんですけれども、そのフェルナンド・ポワンさんという人が現代フランス料理エスコフィエという料理をもっと軽くしようと。現代、流通も材料もよくなったということで、そこで今、そのポール・ボキューズさん、ロブションさん、アラン・シャペルさんがみんな、いわゆる見習いとして修行するんです。ここからレシピが始まるんですけれども、30年前、そのポール・ボキューズさんとトロワグロさんという弟子が日本に来るんです。皆さん御存じかもしれないですけれども、煉瓦屋さんという、そこでポール・ボキューズさんが初めて30年前に料理長になるわけです。トロワグロさんというのがソニーのマキシムで初めて30年前に料理長になるわけです。
 その2人が、それまではフランス料理というのは10人盛りとか20人盛りで、プラッタでこういう席でやるとサーバーしていたんです。それがボキューズさんとトロワグロさんが日本の懐石に出会うわけです。一人ひとり、一つひとつ、そこから、しゃきしゃきとかこりこりというのは日本料理から、クロカンとかというんですけれども、色鮮やかに、それまでフランス料理は色をべったり火を入れて、栄養価も何も考えていなかったんです。ボキューズさんとトロワグロさんが日本懐石に出会って、それで彼らが30年前、フランスの戻って、ヌーベルバーク、ヌーベルキュイジーヌ、それはファッションの時代と同じなんですけれども、革命を起こしたんです。その時代にはまだアラン・デュカスもロブションも出てきていないんです。
 1970年代に、ポール・ボキューズさんとトワグロさんが革命を起こしたんです。それで今のヌーベルキュイジーヌに一皿一皿料理を懐石のように盛るんだと。春、夏、秋、冬と四季折々、今まではお皿など変えていなかったんですね。それを全部変えた。それを全部日本から勉強して、今の新フランス料理というのが、日本の懐石から影響されて、それが今、世界中にフランス料理のベースというふうにあるんです。
 その影響を受けているのが、いわゆるアラン・デュカス。私と同じ世代なんですけれども、我々がそれを影響を受けて、今の現代フランス料理をつくっているということなんです。日本がいかに優れている、日本そのものが既にブランドであり、日本人そのものが世界のいわゆるブランドであるということを、これは我々外国から見ると、さっき先生がおっしゃったように、日本人が日本のことを自慢しないというのは、何で日本の人は気が付いていないんだろうなというのが、逆にフランス人から見るとすごく不思議な点です。そういうところをまた大きな議論も大切なんですけれども、やはり自分たちが既にブランドであるということを認識するのが、やはり一番近道なのかなという気がします。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 では、辻委員、どうですか。

○辻委員 今の三國委員のおっしゃった話を逆に日本人の立場から見ていただくと、よくわかると思うんですけれども、伝統を守るとか保護をするというにはいろんな見方があって、私はここで言う伝統というのは過去の積み重ねであると同時に、将来の発展に向けての素材でもあると考えています。それは保護されるというよりも、むしろ過去においても、また将来にわたっても常にチャレンジを受けながら、よいものだけが残っていくものであると。それだけ大変厳しいものなのではないかと考えています。
 どうしても日本は島国ですので、保護されやすいというふうに考えがちですけれども、逆に保護し過ぎようとする傾向があるのではないかというふうに考えています。文化財などの保護が大切なことは言うまでもありませんけれども、それは古い当時の最先端であったからこそ価値があるわけであって、時代のチャレンジを否定するような伝統や逆に目新しいだけの安易な創作ではなくて、歴史の重みにうち勝って、その上に新しい価値を創造すること。それ自体を私も先日からずっと申し上げているような伝統の発展的な継承であるというふうに考えています。それをまさしく実現されていたのが三宅一生さんであり山本耀司さんであり、その他著名なデザイナーの方々であるというふうに考えおります。
 もう一つ、先ほど、官と民の話があったんですけれども、勿論これは民間の力によって、消費者の力によってブランドというものができ上がっていくと。この基本形態は私も賛同しております。
 ただし、やはり我々がこれからいろんな団体、各省庁に働きかけていくにしても、逆に各官庁関連の方が横断的に何らかの形でつながっていただかなければ、我々としても民間の力だけでは無理という、ある意味では太田委員のおっしゃっていただいたことと同じことなんですけれども、もう少し緩やかな横断的な各官庁との連携が必要であり、勿論、牛尾会長の方から、この内閣府の知財本部自体がある意味での検証もしくはチェック機能を果たすというふうにおっしゃっていただいたわけなんですけれども、そういったことでその横断的なものがあって、我々がこれから起こしていく運動、アクションプランに対して、常に検証していただきたいということが私の願いです。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 では、阿久津委員。

○阿久津委員 今、三國委員のお話というか「講義」を聞かせていただいて、ますます食に対する興味が深まりました。やはりブランドをつくるというときには、物語ること、それを言葉にしてちゃんと相手に伝えるということが非常に重要だと思います。先ほど麻生委員がおっしゃっていたように、日本はこれまで非常に優れた工業製品を世界中の市場に提供してきました。その際には、とりわけ語る必要もなかった。いいものをそれなりの価格で世に出していけば、世界中の人たちがそれを買ったわけです。
 それがこうやって競争環境も厳しくなってきて、日本という国もそろそろ次のステージに進まなければいけないという認識が高まり、最近日本企業の間では、モノづくり企業からモノ語り企業に脱皮しようということを言う人たちが増えてきました。もう少し語ることをしなければいけないということです。先ほど浜野委員もおっしゃっていましたけれども、日本人は学生に限らず、結構な聞き上手ではあるものの、語るのはあまり得意ではないという傾向があるようです。だから、もう少し積極的に語っていこうと。語ることによって、皆川委員がおっしゃったように、つくる人たちをはじめブランドに関わるいろいろな人たちが「ブランドの意味」を共有して、そこからプライドを持ったり喜びを感じたりして、仕事をすることができるようになるはずです。そうすると、それが国外の方々にも伝わって、日本ブランドがよりよく世界に伝わっていくことにつながるだろうと思います。
 本日承認された推進案と提言は非常によくまとめられていると思いますが、実はこれをドラフトで見たときに、日本ブランドとは何かということをもう少し明確に提示しなくてはいけないのではないでしょうかということを事務局にお伝えしました。しかし、あれこれ事務局とやりとりをしているうちに、それにはまだ時期尚早かなという結論に達しました。というのも、やはり国のブランドというのは製品ブランドよりもずっと広い概念ですから、これからもこういう場でもっと国のブランドというのは何かということを語ったり議論したりする必要があると思ったわけです。そうした議論を深めていくことによって、国のブランドづくりに今後関わることになる多くの人々にとって、きっとプラスになるはずだと考えております。

○牛尾座長 最後でございますが、中山本部員、どうぞ。

○中山本部員 この推進案には結構なことがいろいろたくさん書いてありまして、これは是非実施をしてほしいんですけれども、私は法律家ですので、法律マターという観点から見てみますと、意味があるというか、法改正が必要なのは地域ブランドだろうと思います。15ページには、法改正を検討すると書いてます。そして、実は昨日の産業構造審議会の知的財産政策部会では、商標法を改正するということが決まりまして、通常国会で多分実現する運びになるだろうと思います。
 その手法としては、団体商標を利用するとされています。商標というのは個々の事業者が取るわけですけれども、この団体商標というのは事業者の団体が取ってメンバーである事業者に使わせるというシステムです。
 ところが、この団体商標というのはかなりくせ者でして、昔から議論されており、立法したり、廃止したり、また立法したりしているのですが、なかなかうまくいきません。
 勿論、今度の改正は従来の轍を踏まないように、それなりの仕掛けをつくって、改正をするわけですけれども、ただ、この問題は一片の法律をつくればうまくいくというものではないわけです。これは地域ブランドと今すぐに頭に浮かぶのは、フランスのワインなどですけれども、あれはプランドを育成し守っていくという、非常に強い意思と内部統制、そういうものがあって初めて地域ブランドであるあのブランドがワールドワイドになっているわけです。
 翻って我が国の現状を見てみると、フランスのワインの組合に匹敵するような強い意思と実行力があるかというところはかなり疑わしい面があると思うんです。ということは、やはり現段階では役所が啓蒙、教育ということに力を入れなければいけないと思います。元来は知的財産というのは私財ですから、官庁がどのくらい出て行くべきか、という点には問題もあるんですけれども、ただ、この地域ブランドの対象としている事業者の多くは農業あるいは中小企業なんです。そういう我が国の現状を考えて見ますと、まだまだ官のやるべきところはいっぱいあるだろうという気がいたします。
 特に農業関係などは従来余り知的財産になじみがないわけでして、したがって、かなり役所が強いリーダーシップを取って啓蒙をしてほしいと思います。

○牛尾座長 時間が来てしまいましたので、昨年11月以来、4回にわたる非常にスピーディーな会合で、皆さんも戸惑われたと思いますが、食、地域ブランド、ファッションと多岐にわたって議論していただいて、また今日は大変にそれぞれ考えさせられる、またこれからの仕事をする場合に大変参考になる御意見を皆さんからちょうだいして、ありがとうございました。
 今回これをとりまとめて、日本ブランドの構築あるいはその他の分野等々を網羅して、民間の自由な活動の基本を更に伸ばしていこうと思っております。
 今回のレポートで特に論点としては、個人の皆さんの発言をそのままここに掲載しました。というのは、5年ぐらい経って振り返ると、この分野というのは最も発展して最もふくれ上がっている分野であり、次の発展はこういうところから出てくるだろうと思うので、5年ぐらい経って見ると、こんなことを言っていたのかということがいっぱい出てくると思うんです。だから、個人のひらめきというのは、妙に角を取りますと、せっかくの発言の意味がなくなるので、文責は我々が負いますけれども、個人の名前で皆さんの御意見を全部書きます。
 これをどのように民間活力がしかも総力として、またソフトパワーとして1つの多様ではあるけれども強い流れで日本の活力の源泉になるようにするにはどうすればいいのか、これから取り計らってまいりたいと思います。
 今回、冒頭に申しましたように、3月31日にこの日本ブランド・ワーキンググループのメンバーと従来の映画、音楽、アニメ、ゲームソフト関係のメンバーを一堂に会しまして、「コンテンツ専門調査会」の分科会として、これをまとめて、それを今、御発言の中山本部員も本部員をしていらっしゃいます「知的財産戦略本部」に報告をして、かなり大きなものになりますけれども、何とか年内相当具体的なものにしたいというふうに考えております。
 一番魅力的ではあるけれども、行政レベルでは未開の分野でありまして、こういう顔ぶれが座るのもきっと初めてだろうと思います。そういう点ではこの会合が出発点として民主導型の国の重要な分野として、しかも地方が中心の作業になると思いますが、今、三國委員や皆川委員がおっしゃっているように、日本そのものが既に個人芸あるいは民間の力の中で相当レベルの高いものを持っている、潜在力を持っている。それをどう引き出すかということも新しい行政の在り方だと思うので、十分な努力をしていきたいと思っております。
 次回3月31日、日が決まってしまっておりますが、できるだけ時間を取り繕っていただいて会合をしたいと思いますし、その後に必要なフォローアップをどうやっていくかということも、そのときに議論したいと思います。
 これをするためには、例えば、ファッションやレストランの例を取りますと、レストランはレストランの業界そのものがどういうコンセンサスを持つことが大事なのか、個性的ではあるけれども、ある意味でのコンセンサスと協力体制というのは必要。しかし、ちょっと想像しただけでも、それは大変なことでありまして、ここの分野でコンセンサスというのは取れるんだろうかという気もしますけれども、やはり動き出すと自然に出てくる。 ファッションでも、やはりファッションから着物までということを考えることで、なかなか簡単ではございませんが、しかし、やはりそういう新しい世紀の初めとしてのコンセンサスは必要だと考えました。
 そういうことを準備しながら、次回にそういう議論を展開したいと思います。本日の会合はこれにて終了したいと思います。
 今日は大変ありがとうございました。