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知的財産推進計画2005



2005年6月10日

知的財産戦略本部




知的財産推進計画2005 目次
総論
 1.知的財産戦略の理念
 2.「知的財産立国」実現に向けた取組方針
 3.知的財産戦略の歩み
 4.知的財産推進計画2005の策定と実施

第1章 知的財産の創造
 1.大学等における知的財産の創造を推進する
 (1)機関一元管理の体制整備を推進する
  1)機関一元管理を原則としたルールづくりを促す
  2)研究者の流動化に配慮したルール整備を行う
 (2)知的財産に関する総合的な体制を強化する
  1)大学の知的財産本部を強化する
  2)TLOを強化する
  3)知的財産人材情報の充実を図る
  4)紛争処理の体制整備を支援する
  5)対応窓口を明確化する
  6)大学知的財産本部・TLOを評価する
  7)大学の知的財産活動についての情報公開を促す
  8)大学知的財産本部やTLOの連携を強化する
 (3)知的財産関連活動に関する費用を充実する
 (4)大学・研究開発型独立行政法人の評価において知的財産に関する取組状況に配慮する
 (5)研究開発において特許情報を活用する
 (6)研究施設・設備を改善する
 2.知的財産を軸とした産学官連携を推進する
 (1)産学官連携の基盤を強化する
  1)大学等の事務・運営体制の改革を支援する
  2)橋渡し機能を強化する
 (2)産学官連携に関するルールを整備する
  1)共同研究・受託研究のルールを明確化する
  2)大学等の秘密管理を推進する
  3)契約の柔軟性を確保し弾力的運用を図る
  4)利益相反に関するルールを明確化する
 (3)国立大学法人がライセンス対価として株式取得できることを周知する
 (4)大学発ベンチャーを促進する
 (5)日本版バイ・ドール制度の適用対象を拡大する
 3.研究者の創造環境を整備する
 (1)知的財産の創造を重視した研究開発を推進する
  1)研究者にインセンティブを付与する
  2)研究開発評価において知的財産を活用する
 (2)研究における特許発明の使用を円滑化する
 (3)研究ノートの導入を奨励する
 (4)知的財産管理の電子化を促進する
 4.企業における質の高い知的財産の創造を推進する
 (1)基本特許の取得を重視した企業戦略を推進する
 (2)企業の三位一体の経営戦略による創造活動を推進する
 (3)企業による産学官連携活動を促進する
 (4)技術戦略マップを活用した戦略的研究開発を推進する
 5.魅力あるデザインの創造を推進する
 (1)デザイン戦略を推進する
 (2)グッドデザイン事業を抜本的に拡充する
 (3)公共事業等におけるデザイン・景観に配慮した社会資本整備を推進する
 (4)大学等におけるデザインの産学官連携を推進する
 (5)新日本様式ブランドを推進する
 (6)デザインの創造基盤の整備を行う

第2章 知的財産の保護
 T.知的財産の保護を強化する
 1.特許審査を迅速化する
 (1)世界最高水準の迅速・的確な特許審査を実現する
 (2)特許情報の利用環境を整備する
 2.出願人のニーズに応じた柔軟な特許審査を推進する
 (1)ニーズに応じた審査時期を担保する
 (2)出願人との意思疎通を密にする
 (3)先端技術分野や国際関連出願の審査体制を強化する
 (4)利用者の利便性を向上させる
 3.知的財産権制度を強化する
 (1)世界をリードする知的財産制度の構築に向けて取り組む
 (2)医薬の新しい効能・効果を発現させる方法の技術の物の特許による保護の運用状況等を注視する
 (3)遺伝子治療・再生医療の特許制度を整備する
 (4)デザイン保護のために意匠制度を整備する
 (5)ブランド保護のために商標制度を整備する
 (6)営業秘密等の保護を強化する
  1)特許出願による技術流出を防止するための新たな制度を整備する
  2)営業秘密の保護と技術流出の防止を徹底する
  3)医薬品の試験データの保護を強化する
  4)情報開示制度における営業秘密の保護を確保する
 (7)データベースの保護を強化する
 (8)植物新品種の保護を強化する
 (9)知的財産の保護を強化するための制度を整備する
 (10)知的財産権侵害に係る刑罰を見直す
 4.紛争処理機能を強化する
 (1)知的財産高等裁判所に期待する
 (2)証拠収集手続を拡充する
 (3)裁判外紛争処理を充実する
 5.世界特許システムの構築に向けた取組を強化する
 (1)日米欧三極特許庁間で特許の相互承認の実現を図る
 (2)日米欧三極特許庁の出願明細書の記載様式の統一を進める
 (3)アジア地域の特許制度や運用の調和に向けた取組を進める
 (4)国際的な審査協力を推進する
 (5)特許協力条約の改革を推進する
 (6)途上国における権利取得を円滑化する
 (7)特許制度の国際的な調和を促進する
 (8)国際的な審査情報ネットワークを構築する
 6.知的財産の国際的な保護及び協力を推進する
 (1)デザインの国際的な保護及び協力等を推進する
 (2)商標の国際的な保護及び協力を推進する
  1)商標の国際登録制度の利用を促進する
  2)途上国に対する人材育成等の協力を推進する
  3)商標制度の国際的な調和を推進する
 (3)植物新品種に関する審査協力と制度整備を促進する
 (4)国際的な紛争処理に係るルールの整備を促進する
 (5)自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)等を活用する
 (6)知的財産に関連する法律の英訳を国際的に発信する
 U.模倣品・海賊版対策を強化する
 1.外国市場対策を強化する
 (1)侵害発生国・地域への対策を強化する
  1)海外市場での模倣品・海賊版対策を強化する
  2)侵害状況調査制度を活用する
  3)侵害発生国・地域に対し具体的要請を行う
  4)模倣品・海賊版の被害の実態を調査する
 (2)二国間の枠組みを活用する
 (3)欧米との連携を強化する
  1)EU・欧州各国との連携を強化する
  2)米国との連携を強化する
 (4)多国間の取組をリードする
 (5)模倣品・海賊版拡散防止条約を提唱し実現を目指す
 (6)アジア諸国の模倣品・海賊版対策の能力構築を支援する
 2.水際での取締りを強化する
 (1)侵害判断・差止めを専門的かつ簡便・迅速に行う制度を確立する
 (2)裁判所の仮処分命令を活用する
 (3)当該輸入者に関係なく同一製品の輸入を差し止める
 (4)裁判外紛争処理機関を活用する
 (5)模倣品等の流通態様に応じた取締りを強化する
  1)模倣品・海賊版の税関での取締りを強化する
  2)形態模倣品の取締りを強化する
  3)部分品・部品取外しによる脱法行為に対する取締りを強化する
 (6)個人輸入等の取締りを強化する
 3.国内での取締りを強化する
 (1)インターネットを利用した侵害の対策を総合的に推進する
  1)インターネットオークションを通じた模倣品・海賊版の販売による消費者の被害を防止する
  2)オークションサイト等を通じた模倣品・海賊版の取締りを強化する
  3)古物営業法における取締り及び犯罪抑止対策を強化する
  4)ファイル交換ソフト等を用いた著作権侵害を取り締まる
 (2)肖像等を不正に使用した商品を取り締まる
 (3)ノウハウ等の海外への流出を防止する
 (4)警察による取締りを強化する
 (5)育成者権の侵害対策を強化する
 4.官民の連携を強化する
 (1)政府内の連携を強化する
 (2)侵害発生国・地域の当局との当局間の連携を強化する
 (3)官民・民民の連携を強化する
 (4)民間企業の体制を強化する
 (5)国民啓発を強化する


第3章 知的財産の活用
 T.知的財産を戦略的に活用する
 1.企業の戦略的経営を促進する
 (1)知的資産重視の経営戦略を推進する
 (2)知的資産経営の情報開示を促進する
 (3)知的資産指標を策定する
 (4)知的財産による資金調達の多様化を図る
 (5)知的財産を活用したビジネスの担い手創出を支援する
 2.知的財産の活用を促進する
 (1)知的財産信託の活用を促進する
 (2)知的財産権のライセンスを安定させる
  1)倒産・譲渡時における知的財産権のライセンスの保護を図る
  2)ソフトウエア利用上の課題を整理する
 (3)知的財産の円滑・公正な利用を促進する
 (4)知的財産権のライセンスに関する保険の利用を促進する
 (5)租税条約を活用し国境を越えた知的財産の利用を促進する
 3.国際標準化活動を支援する
 (1)戦略的に国際標準化活動を強化する
  1)国の研究開発プロジェクト等において知的財産戦略と標準化戦略とを一体的に推進する
  2)官民による戦略的な国際標準化活動を強化する
  3)民間の国際標準化活動を促進する
  4)諸外国の国内規格策定の動きに適切に対応する
 (2)技術標準に関連する知的財産権の取扱いルールを整備する
  1)技術標準の策定・普及を妨げる必須特許の権利行使に対し対処する
  2)パテントプールに関する環境を整備する
 U.中小・ベンチャー企業を支援する
 (1)中小・ベンチャー企業に対する情報提供・相談を強化する
  1)弁理士・弁護士情報を提供する
  2)経営戦略に根ざした知的財産戦略を支援する
 (2)研究開発や知的財産の権利取得を支援する
  1)研究開発を支援する
  2)知的財産の権利取得を支援する
 (3)海外展開を支援する
 (4)国内における知的財産侵害対策を強化する
 (5)知的財産信託の活用及び知的財産による資金調達の拡大を行う
 (6)知的財産に関する教育や研修を充実する
 (7)中小・ベンチャー企業の優秀な技術を顕彰する
 V.知的財産を活用して地域を振興する
 1.地域における知的財産戦略を推進する
 (1)地方公共団体の知的財産に関する戦略策定を奨励する
 (2)地方公共団体における相談機能の充実を奨励する
 (3)地方公共団体の知的財産に関する助成制度を奨励する
 (4)地域の中小企業の知財戦略を支援する体制を整備する
 (5)地域の自然資源等をいかした知的財産の創造及び活用を行う
 2.地域において知的財産を活用する
 (1)地方公共団体における知的財産権の取扱いを改善する
 (2)公共調達において知的財産を有効活用する


第4章 コンテンツをいかした文化創造国家への取組
 T.コンテンツビジネスを飛躍的に拡大する
 1.業界の近代化・合理化を支援する
 (1)契約慣行の改善や透明化に向けた取組を奨励・支援する
 (2)独占禁止法等を厳正に運用する
 (3)弾力的な価格設定など事業者による柔軟なビジネス展開を奨励する
 (4)統計資料を整備する
 2.コンテンツの制作・投資等を促進する
 (1)「完成保証制度」を充実させる
 (2)ファンドによる資金調達に対する投資を促進する
 (3)コンテンツに対する評価手法を確立する
 (4)コンテンツの制作・投資等を促進するためのインセンティブを付与する
 (5)フィルムコミッション等の映像製作活動を支援する
 3.人材育成を強化し、顕彰を充実する
 (1)プロデューサーや創作者等を育成する
 (2)経営・法務・財務の専門家の活用を奨励する
 (3)人材育成の事業を支援する
 (4)映像産業振興機構の活動を支援する
 (5)有能な人材を発掘し顕彰する
 (6)教育や啓発を充実する
 4.コンテンツ流通大国に向けた改革を進める
 (1)デジタル時代に対応した幅広い改革を進める
 (2)新しいビジネスモデルと技術を開発する
   1)コンテンツ流通市場を形成する
   2)コンテンツ利用に係る関係者間の合意を形成する
   3)既存のコンテンツの有効活用を図る
   4)コンテンツを安心して利用するためのシステムの開発・普及を行う
   5)デジタルシネマ技術の研究開発や普及を推進する
   6)コンテンツ流通のためのシステム整備を行う
   7)メディア芸術に関する研究開発を推進する
   8)家庭等で円滑にコンテンツを利用するための技術開発を行う
   9)ハイビジョン技術の研究開発に対する支援等を行う
  10)公共ネットワークを活用したコンテンツ流通を促進する
  11)新しいコンテンツづくりを促進する
 (3)法制度の改革を進める
  1)私的使用複製などの基本問題について方向を得る
  2)デジタル化時代に対応した権利制限について方向を得る
  3)契約・利用の観点からライセンシーの保護などについて方向を得る
  4)司法救済の観点から間接侵害などについて方向を得る
  5)技術的保護手段等の回避等に係る法的規制の対象について方向を得る
  6)権利者の利益と公共の利益とのバランスに留意する
  7)政令等への委任について方向を得る
  8)著作権法の表現・用語を整理する
  9)国際的な著作権制度の調和を推進する
 (4)青少年の健全育成への自主的な取組を奨励・支援する
 5.海外展開を拡大する
 (1)JETRO、NEXI等を通じた海外展開を支援する
 (2)東京国際映画祭の抜本的な強化を進める
 (3)世界への発信を強化する
 (4)アジアとの連携を強化する
 6.ライブエンターテインメントを振興する
 (1)業界の近代化・合理化を支援する
 (2)集積化に向けた取組を奨励する
 (3)観光との連携を進める
 (4)実演家の活動環境を整備する
 7.コンテンツのアーカイブ化に関する取組を奨励・支援する
 (1)コンテンツのアーカイブ化を促進する
 (2)フィルムセンターの充実を図る
 (3)放送番組センターの充実を図る
 (4)文化遺産を公開し、活用する
 (5)歴史的公文書を保存・公開し、活用する
 (6)地域におけるデジタルアーカイブの拡充やネットワークの利活用を推進する
 (7)デジタル情報のアーカイブ化を促進する
 (8)コンテンツ制作の現場スタッフの技術の保存を奨励・支援する
 (9)デジタルアーカイブ化のための研究開発を行う
 8.改革のロードマップを実現する
 9.コンテンツ促進法を的確に運用する
 (1)コンテンツの創造、保護及び活用を促進する
 (2)「コンテンツ版バイ・ドール制度」の積極的な利用を促進する
 U.ライフスタイルをいかした日本ブランド戦略を進める
 1.豊かな食文化を醸成する
 (1)優れた日本の食文化を評価し、発展させる
  1)民間の食文化研究を促す
  2)食の発展に貢献した者を積極的に顕彰する
 (2)国民運動として食育を推進する
 (3)安全・安心と正直さが伝わる食材づくりを推進する
 (4)食を担う多様な人材を育成する
 (5)日本食に関する正しい知識や技術を広く普及し、海外展開を積極的に行う
 (6)優れた日本産の食材を世界に普及させる
  1)食材の輸出を倍増する
  2)輸出相手国内での知的財産権の管理を強化する
 2.多様で信頼できる地域ブランドを確立する
 (1)魅力ある地域ブランドを生成する
  1)戦略的な地域ブランドづくりを支援する
  2)産学官の連携及び観光産業との連携を支援する
 (2)地域ブランドを大きく展開する
 (3)地域ブランドの価値を向上させる
 (4)地域ブランドに対する消費者の信頼を向上させる
  1)地域ブランドに関する基準を整備・公開する
  2)景品表示法を厳正に運用する
  3)JAS法に基づく品質表示の適正化への取組を強化する
  4)外食産業による原産地等の表示を促進する
 (5)地方公共団体と産地が一体となった効果的な情報発信を奨励・支援する
 (6)地域ブランドの保護制度を整備・活用する
 3.魅力あるファッションを創造する
 (1)日本のファッションの魅力を高め、国際発信力を強化する
  1)産業界における中・長期的発展戦略の策定を促す
  2)東京の展示会等の日程の集中化により発信力の相乗効果を図る
  3)発信の場・見せる場を提供する
  4)日本のファッションを積極的に海外に発信する
 (2)日本のファッションビジネスの国際競争力を高める
  1)つくり手の能力を高め、ビジネスの基盤を強化する
  2)取引の公正・透明化を促す
 (3)デザイナー及びデザイナーのパートナーとなる人材を発掘し育成する
  1)新進デザイナーの事業活動を支援する
  2)ファッションに関する学部、専門職大学院の設置を推進する
  3)民間機関における人材育成を充実させる
  4)子どもの頃から美的な感性を磨く機会を充実する
  5)子どもに創作とビジネスを同時に体験させる
  6)ファッションビジネスに貢献した者をタイムリーに表彰する
 (4)知的財産の利用環境を整える
  1)知的財産権の普及啓発を行う
  2)デザインを守る法律を整備する
 4.日本の魅力を戦略的に発信する
 (1)日本の魅力を再評価する
 (2)日本文化の発展や海外発信に貢献した者を顕彰する
 (3)海外への戦略的な情報発信を行う


第5章 人材の育成と国民意識の向上
 1.知的財産関連人材育成の総合戦略を推進する
 2.知的財産関連の専門人材を育成する
 (1)知的財産専門人材を量的・質的に拡大する
   1)弁護士の大幅な増員や資質の向上を図る
   2)裁判官の知的財産に関する識見の充実を期待する
   3)弁理士の大幅な増員や資質の向上を図る
   4)審査官・審判官の資質の向上を図る
   5)サーチャーの資質の向上を図る
   6)技術翻訳者の資質の向上を図る
   7)標準化に関する人材を育成する
   8)ポストドクター等を知的財産専門人材として活用する
   9)産学連携を担う若手人材の育成を図る
  10)人材交流により実務能力の向上を図る
 (2)知的財産専門人材育成機関を整備する
  1)柔軟で実践的な知的財産教育の環境を整備する
  2)法科大学院における知的財産教育を推進する
  3)知的財産専門職大学院における知的財産教育を推進する
  4)技術経営(MOT)プログラムを推進する
  5)知的財産人材の研修や能力評価に関する民間の自主的な取組を推奨する
 3.知的財産の教育及び普及・啓発を推進する
 (1)知的財産教育を推進する
  1)幼少から大学の各段階における知的財産教育を推進する
  2)知的財産教育の手法を研究する
  3)知的財産の教育者を育成する
  4)国際的な連携を進める
  5)人材間のネットワークを形成する
 (2)国民の知的財産意識を向上させる
  1)行政職員の知的財産意識を向上させる
  2)産業界の意識を改革する
  3)国民の啓発活動を強化する
  4)知的財産に関する総合的かつ学際的な研究を推進する
  5)国際的な研究・研修機能を充実させる
  6)知的財産関連統計の充実・活用を図る


<成果>
 知的財産戦略の進捗状況
 1.創造分野
 2.保護分野
 3.活用分野
 4.コンテンツビジネスの飛躍的拡大
 5.人材の育成と国民意識の向上


<参考>
 1.知的財産戦略本部 名簿
 2.専門調査会 名簿
 3.設置根拠
 4.知的財産推進計画2005 策定までの経緯
 5.用語集




総 論


1.知的財産戦略の理念
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《我が国を取り巻く環境の変化》
   我が国は、バブル崩壊以降、長期化する不良債権問題など数々の要因が複合的に重なり合って、未曾有の不況に陥ったが、近年の構造改革の推進により、ようやく、負の遺産から脱却しつつある。企業も、それまでの総花的な事業形態が行き詰まり、利益率の高い筋肉質企業を目指して経営資源の選択と集中を着実に進めている。今や国も企業も反転攻勢の段階にきているが、現在と80年代までとは、競争力の源泉が変化している。
 第1の変化は、世界経済の成長において、技術革新・イノベーションが果たす役割の重要性が増大している点である。「知識経済」という言葉に象徴されるように、今日の経済活動において知識が生み出す付加価値の重要性は、以前に比べて格段に高まっている。現在、企業が直面している競争は、同一製品・サービスをめぐる伝統的な価格競争というよりも、他社とは差別化した革新的な製品・サービスをめぐるダイナミックな競争に比重を移しつつある。今後、少子高齢化の進展に伴い労働人口が減少し、国境を越えて生産拠点の最適立地が進む中で、我が国の経済成長の鍵を握るのは、まさにイノベーションによる高付加価値化と生産性の向上である。
 第2の変化は、科学技術にとどまらず、コンテンツやブランドといった広い意味での知的財産が、国家の魅力を高めていることである。近年、我が国の映画、アニメ、ゲームソフトといったコンテンツは、世界で高い評価を受けており、日本のイメージを「かっこいい日本」へと大きく変化させ始めている。また、食、ファッション、地域ブランドといった我が国の独創性と伝統を組み合わせた日本ブランドは、世界の関心の的となっている。既に、欧米、韓国、中国等の諸外国では、こうした分野の振興を国家戦略と位置付け、強力に施策を展開している。今や国家が魅力を競う時代となっている。
《「知的財産立国」の実現に向けて》
   こうした「知識経済」や国家の魅力を競う時代にあって、イノベーションやコンテンツ、ブランドを経済成長の原動力とし「魅力ある日本」を実現していくためには、知的創造活動を刺激し、活性化するとともに、その成果を知的財産として適切に保護し、有効に活用することが必要である。
 このような認識に基づき、2002年2月に小泉総理大臣が知的財産戦略を国家戦略とする旨の施政方針演説を行い、7月には知的財産戦略会議において、知的財産戦略大綱が取りまとめられ、「知的財産立国」を目指すこととなった。
 ここで、「知的財産立国」とは、これまで我が国を支えてきた「ものづくり」に加えて、技術、デザイン、ブランドやコンテンツといった価値ある「知恵づくり」、「情報づくり」、すなわち知的財産の創造を発展の基盤に据えるというビジョンに裏打ちされた国家戦略である。より具体的には、次のような国家戦略である。
1)  日本人の持つ発明や創作の能力を十分に発揮することを基本的目標とする。我が国は天然資源に恵まれず、狭い国土であるが、明治維新以来、日本人の勤勉さと器用さで世界トップの工業国家になることに成功した。21世紀は知価社会であり日本人の持つ優れた創造力・創作力を発揮することが重要となる。
2)  世界四大発明を歴史で学ぶように、発明や著作物は世界の文化や文明の発展に貢献している。既に日本発の電気製品や映画・アニメ・音楽などが世界の人々の生活を豊かにしているが、日本人の発明や著作物により世界文化や文明の発展に貢献し、世界で名誉ある地位を占めることを目指す。
3)  経済的に見れば、21世紀は、技術力の競争が主となり、技術競争に勝ち残った国だけが経済的繁栄を享受することができる。このため、知的財産を核として、我が国の経済社会の発展を目指す。
4)  社会制度的には発明や著作物は無体財産であり、法的に保護されて始めて経済的な意味を持つ。国全体で思い切った改革を目指す。
   知的財産戦略大綱を受けて、2002年11月には知的財産基本法が国会で全党一致で制定され、翌年3月には、内閣に知的財産戦略本部(以下、「戦略本部」という。)が設置された。こうして、「知的財産立国」の実現に向け、知的財産推進計画(以下、「推進計画」という。)を国を挙げて推進する体制が整い、大きな歩みが始まった。
《知的創造サイクルの活性化》
   知的財産を有効に活用して国富を増大させるためには、研究開発部門やコンテンツの制作現場において質の高い知的財産を生み出し、それを迅速に権利として保護し、経済活動としてその実用化・商品化を行うことが求められる。そうした流れを確固としたものにすることにより、知的財産を拡大再生産し、知的財産の創造、保護、活用の好循環(「知的創造サイクル」)を生み出すことが重要である。
 「知的財産立国」は、知的財産に関係する一部の人々の営みによって実現されるものではなく、知的財産によって得られる果実を万人が享受し、その恩恵に啓発されて、万人による知的財産の創造活動が始まる流れにより実現されるものである。
 真の「知的財産立国」を実現するためには、創造、保護、活用、そしてそれらの活動を支える卓越した人材の育成など、国民全体の参画が必要であり、それぞれの取組を最大限に行うことはもちろんのこと、それらを一体的、有機的な連携の下に行うことにより、知的創造サイクルを早く大きく回すことが可能となる。
 知的創造サイクル活性化のための施策を効果的に進めるためには、対象となる知的財産の特性によって施策の重点を考えていくことが必要である。
 すなわち、特許のように行政の関与により権利が発生する知的財産については、迅速に権利を付与することが、知的創造サイクルが活用に向けて回転し出すためにまず不可欠となる。
 一方、著作権については、権利者とユーザーとの間を効率的につなげることが重要な鍵となる。インターネットに代表されるように、必ずしもその流通過程に有体物を介する必要のないデジタルコンテンツビジネスの世界では、流通構造改革を進めることにより、今後、知的創造サイクルの新たなモデルが次々と生み出されるであろう。
 いずれにせよ、あらゆる知的財産に関して、不当な利益を享受する模倣品や海賊版といった、知的創造サイクルに対するフリーライドを防止するための取組が不可欠である。
知的創造サイクルを早く大きく回す



《知的財産で世界を牽引する》
   我が国の知的財産戦略に少なからぬ影響を与えたのは、1980年代以降の米国の取組である。
 米国においては、1929年に関税・特許控訴裁判所が設立され、特許商標庁からの控訴事件等を専門的に扱っていたが、特許侵害訴訟における控訴審レベルの判決が不統一であり、その弊害が大きくなっていたことから、1982年に特許関連訴訟を専属的に扱う連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)が設立された。CAFCの設立は判例の統一を主眼としたものであったが、それにより権利の安定性や判決の予測可能性が向上したことで、結果として、特許を重視した事業活動の展開に大きく貢献することとなった。このため、CAFCの設立は、米国における特許重視(いわゆる「プロパテント」)の政策の流れの中で中心的な役割を果たしたと考えられている。
 また85年には、大統領の諮問委員会により、米国の競争力に関する報告書、いわゆる「ヤング・レポート」が取りまとめられた。その後、米国は、ガット・ウルグアイラウンドにおいて締結された「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)や二国間交渉を通じて、知的財産権の保護が不十分な国において保護水準の引上げを図り、米国企業の海外展開を側面的に支援した。
 このように、米国における80年代の多くの改革や知的財産を重視する姿勢への変化が、本格的な情報化時代の到来や知識経済化の進展といった社会経済情勢の変化に呼応した形で、米国産業の国際競争力を回復・強化させ、長期にわたる経済成長の実現に貢献した。
 さらに、2004年12月には、アメリカ競争力評議会の国家イノベーション・イニシアティブが「イノベート・アメリカ」と題する報告書を取りまとめた。同報告書は「イノベーションこそが米国の21世紀における成功を決定付ける唯一の最も重要な要素となる」とした上で、知的財産制度をイノベーションのためのインフラの一つとして位置付け、特許の質の向上や審査の迅速化等のための具体策を提示している。
 翻って、我が国は米国に20年遅れて国家レベルで知的財産戦略の取組に着手したわけであり、米国以上に迅速で思い切った改革が求められている。無論、改革を急ぐあまり単に米国の制度をそのまま導入することであってはならない。むしろ、米国の取組を参考としつつも、個人の能力を発明や創作の分野で十分に発揮させ、我が国の経済社会や文化を豊かなものにし、世界文明の発展に貢献する観点から、知的財産制度の改革と実施において、世界をリードしていくべきである。そのためには、大学、企業、政府等のあらゆる部門で、従来の制度や慣行をゼロから見直し、改革していくことが不可欠となる。



2.「知的財産立国」実現に向けた取組方針
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《3つの視点》
   我が国の知的財産制度は、特許法にせよ著作権法にせよ、その起源は明治時代にまで遡る。また、現行法の枠組みが形成されたのも、特許法、意匠法、商標法は1959年(昭和34年)、著作権法は1970年(昭和45年)であり、いずれも既に数十年が経過しているが、その間我が国経済社会は大きく変化している。
 古くから社会に存在する制度であればあるほど、その制度が時代の要請に応えているか否かを不断に検証する必要がある。今日の経済社会の変化のスピードは極めて早く、その変化はダイナミックである。これまでも累次の制度改正が行われてきたところであるが、「知的財産立国」という目指すべき目標が明らかとなった今こそ、経済社会情勢の変化に受動的に対応するのみでなく、これを先取りする改革を行って、早急に経済を再生発展させる必要がある。このため、以下のような方針をもって、「知的財産立国」の実現に取り組むこととする。



(1)従来の枠にとらわれない、知的財産に関する特例を作る
   我が国産業の国際競争力を強化し、活力ある経済社会を実現できるよう、従来の枠にとらわれることなく、大胆かつ柔軟にそうした仕組みを構築すべきである。
 特に国際的な知の大競争の時代となっている今日、現状に拘泥したり、改革に躊躇して問題を先送りするなど必要な見直しを行わないことにより、国家としての競争力が著しく損なわれるリスクが高まっている。このため、行政、司法、大学、企業などにおける知的財産に関わる者すべてが、「知的財産立国」に向けて、既成概念、従来からの体系や既得権益にこだわらず、思い切った改革を断行することが求められている。



(2)国際競争力のある制度で世界をリードする
   今や世界はボーダレス化しており、国家が魅力を競う時代、「企業が国家を選ぶ時代」になっている。知的財産戦略を企業経営の中核に位置付ける企業が増える中、企業にとって魅力ある知的財産制度を構築すれば、世界から多くの企業が集まり、様々な事業活動が活発となって、国全体が発展する。また、質の高いコンテンツやブランドを発信している国は、世界中の人々に、行ってみたい、住んでみたいと好印象を持たれており、いわゆる「国家ブランド」も高い。
 既に世界各国の間で知的財産の競争は激化しており、我が国においても、それに遅れることなく世界をリードする魅力ある制度を構築すべきである。



(3)時機を逸することなく、迅速に改革を行う
   「私は、かなり現実に拘泥せずに世界を見つめていたつもりであるが、やはり日本の現状に心をとらわれ過ぎていた。今や世界はものすごいスピードで進歩している。」とは、今から50年前の本田宗一郎氏の言葉である。
 いわんや、現在の世界は、「ドッグ・イヤー」や「マウス・イヤー」と言われるほど大変なスピードで変化し続けており、その中で淘汰されないためには、時機を逸することなく変化に適合できるよう、企業もさることながら、国の制度も変化し続けなければならない。
 ややもすれば制度改革自体が目的となりその実施に力を入れないこともあるが、特に知的財産に関しては単に制度を改革するだけでは不十分であり、制度の実施により具体的な成果を出すことが重要である。



《5つの配慮事項》
(1)ユーザーの視点を考えた政策
   知的財産は保護されるだけではなく、有効に活用されて初めて意味がある。活用のための保護であり、活用こそが市場を拡大させ、収益をもたらし、新たな創造を引き出す。優れた知的財産が、ユーザーに十分に活用され、さらに優れた知的財産を生み出すことができるよう、今後は、ユーザーの視点を考えた政策が求められている。例えばコンテンツに関し、日本のユーザーが外国のユーザーに比べサービスや価格の面で遜色のない状況にあるか国際比較することが必要である。



(2)中小・ベンチャー企業への支援
   中小・ベンチャー企業は、我が国の産業における基盤的技術を担うとともに、素材の加工や部品の供給などを行うことにより、産業基盤を支えている。また、地域における雇用の創出など地域経済の担い手としても大きな役割を果たしている。
 「知的財産立国」を目指し、様々な施策が進められている中で、中小・ベンチャー企業の知的財産に対する意識も高まりつつある。このような流れを加速し、より多くの中小・ベンチャー企業が知的財産を創造し、それを有効に活用し事業化していくことを戦略的に進めることが重要であり、政府は、そのための施策を推進すべきである。



(3)地域の振興
   近年、地方分権の流れの中で、地域の特性をいかした特色ある地域社会が実現されつつある。そうした中で、地方公共団体においても、知的創造の拠点である大学等を地域の核として、関連研究機関、研究開発型企業との産学官連携によって、革新的な技術開発を実現するなど、知的財産に関する取組が本格化しつつある。また、そこで生まれる人的ネットワークを基盤とし、技術情報、経営情報などの経営資源を関係者間で共有することを通じて、地域クラスターを形成し、地域特有の新規事業を開拓するという動きも本格化しつつある。加えて、昨今、農水産品を含め地域の特産品のブランド化(地域ブランド)を図ったり、フィルムコミッションのようにコンテンツの制作を支援することで魅力ある地域づくりを図るなど地域の知的財産戦略も広がりを増しつつある。
 政府は、全国各地において特色ある発明や創作が生み出されたり、地域独自のブランドが発信され、国全体が知的財産を核として豊かになれるよう、こうした取組を推進していく必要がある。



(4)行政・司法のサービスの向上
   「知的財産立国」を実現する主役は、行政や司法ではなく、国民やユーザーである。行政と司法は、社会のネットワーク化が進展している状況を踏まえ、知的創造サイクルを早く大きく回すために、国民やユーザーの要望に真摯に耳を傾け、出願手続の合理化や、先駆的な発明等に関する紛争処理手続の見直し、積極的な情報提供など、国民やユーザーの立場に立って思い切ったサービスの向上に努める必要がある。



(5)競争政策の重要性と表現の自由の重視
   知的財産権の強化は情報化時代の必然である反面、権利の強化には競争上の弊害と、表現の自由などの現代社会が有している基本的価値との抵触という問題が考えられる。
 競争上の弊害の除去については、独占禁止法を中心とした競争法がその中心を成し、必要に応じてその強化も欠かせない。米国においては、知的財産の独占に対しても独占禁止法が厳しく適用されており、そのことが競争を生み出し、その結果として新たな産業の発展につながっている。我が国においても、バランスのとれた適切な対応が必要である。
 また、知的財産の保護があまりに過度となった場合には、公正かつ自由な競争、学問・研究の自由、表現の自由などといった現代社会が有している基本的価値と抵触する可能性がある。したがって、これらの基本的価値に留意しつつ、バランスのとれた知的財産制度を目指す必要がある。
 なお、大学においては、知的財産の創造、活用への期待に応えていくことが求められる一方、大学における本来的な役割である教育・研究を忘れてはならない。さらに、大学における知的財産に関する制度設計は、大学における学問・研究の多様性を踏まえた柔軟なものとすることが肝要である。



3.知的財産戦略の歩み
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(1)戦略本部発足までの経緯
   知的財産の重要性に関する国民の認識の高まりを受けて、2002年2月の小泉総理大臣の施政方針演説において、「研究活動や創造活動の成果を、知的財産として、戦略的に保護・活用し、我が国産業の国際競争力を強化することを国家の目標」とすること、そして、「このため、知的財産戦略会議を立ち上げ、必要な政策を強力に推進」することが盛り込まれた。
 これを踏まえ、政府部内においては、迅速に体制整備が進められた。すなわち、施政方針演説の翌3月には、内閣総理大臣以下関係閣僚並びに民間有識者からなる知的財産戦略会議が発足した。また、7月には同会議において知的財産戦略大綱が決定され、知的財産の創造、保護・活用に関する具体的な改革工程が明記されるに至った。さらに、11月には知的財産基本法が制定され、翌2003年3月には戦略本部が設置された。



(2)推進計画の決定
   戦略本部においては、知的財産を核に産業の国際競争力を強化し、国富を増大させる「知的財産立国」を実現するため、2003年7月に約270項目の施策を盛り込んだ推進計画2003が策定された。なお、これに先立ち、6月には、総合科学技術会議「知的財産戦略専門調査会」において、大学などの知的財産活動の促進などを内容とする知的財産戦略が策定され、戦略本部の推進計画に反映された。
 さらに、推進計画2003の進捗状況なども踏まえ、必要な施策の追加を行って、2004年5月には、約400項目に及ぶ施策を盛り込んだ推進計画2004が策定された。
 なお、推進計画は、毎年度着実に成果を上げ、同時に情勢の変化に機敏に対応するため、民間企業で広く行われているローリング・プラン方式を採用している。



(3)専門調査会の活動
   推進計画の決定の際に、更に調査検討が必要とされた知的財産政策の重要課題について対応策を明らかにするため、権利保護基盤の強化に関する専門調査会、コンテンツ専門調査会及び医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会の3つの専門調査会が設置され、2003年秋から議論を開始した。
 権利保護基盤の強化に関する専門調査会においては、2003年12月に「特許審査を迅速化するための総合施策について」及び「知的財産高等裁判所の創設について」が、2004年5月に「模倣品・海賊版対策の強化について」が、さらに2005年4月には「中小・ベンチャー企業の知的財産戦略の推進方策」が取りまとめられた。
 コンテンツ専門調査会においては、2004年4月に「コンテンツビジネス振興政策」が取りまとめられた。また、11月には、コンテンツ専門調査会の下に日本ブランド・ワーキンググループが設置され、2005年2月に「日本ブランド戦略の推進」が取りまとめられた。
 医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会においては、2004年11月に「医療関連行為の特許保護の在り方について」が取りまとめられた。
 なお、総合科学技術会議は、2002年1月に知的財産戦略専門調査会を設置し、大学等の知的財産の創造・活用や研究開発・知的財産戦略・標準化戦略の一体的推進などに関して、毎年「知的財産戦略について」を取りまとめている。2005年度については、5月に大学発知的財産権の積極的活用と知的財産関連人材の戦略的育成・確保について取りまとめた。



(4)推進計画の主な成果
   これまでの推進計画に基づき施策が推進され、多くの具体的成果が挙がっている。
 創造分野では、大学知的財産戦略本部や技術移転機関(TLO)が全国各地で設置され、大学等の研究成果を民間に移転する体制の整備が進んだ。また、職務発明の対価の問題については、特許法第35条が改正され、2005年4月から施行されている。
 保護分野では、特許審査迅速化計画の策定や任期付審査官の大量採用の開始により、審査期間短縮のための体制整備が進むとともに、知的財産に関する訴訟を専門に扱う知的財産高等裁判所が法律に基づき設置され、質の高い審理判断を迅速に行うことが期待されている。また、近年財産的価値が高まっている営業秘密については、他人の営業秘密を不正に取得、使用又は開示した者に対する罰則が不正競争防止法に設けられた。模倣品・海賊版問題については、関税定率法の改正により、水際での取締りが強化された。
 活用分野では、信託業法の改正により知的財産を信託業の対象とすることが可能となり、知的財産の管理・活用が容易化された。また、2005年3月に新破産法が施行され、破産時における知的財産のライセンシーの立場の保護が強化された。中小・ベンチャー企業に対しては、従来技術調査支援が開始された。さらに、「知的財産情報開示指針」の策定を受け、2004年度には11社で知的財産報告書が作成された。
 コンテンツ分野では、「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」(コンテンツ促進法)が制定され、コンテンツの創造、保護、活用の促進に関し、国、地方公共団体及び関係者が、一体となって施策の総合的、効果的な推進を図ることとされた。また、「エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク」の結成、映像産業振興機構の設立など民間での取組も始まっている。
 知的財産専門人材の育成については、法科大学院や知的財産専門職大学院が設置され、教育体制の充実が図られた。また、「弁護士知財ネット」や日本弁理士会のアクセスポイントなどの人材ネットワークも形成されてきている。
 知的財産基本法の制定以来、これまでに成立した知財関連法は18、第162国会提出済みの知財関連法案は3に及ぶ。
 なお、主だった成果を「知的財産戦略の進捗状況」として巻末に添付している。
 
 
(参考)これまでに成立した知的財産関連法又は第162国会提出済みの法案
これまでに成立した知的財産関連法又は第162国会提出済みの法案
 
4.知的財産推進計画2005の策定と実施
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(1)策定
   戦略本部は、知的財産を取り巻く環境の変化に合わせ、知的財産基本法に基づいて推進計画の見直し作業を行い、この度、「知的財産推進計画2005」を取りまとめた。見直しに当たっては、次の各点に留意した。
 第1に、過去2年間で改革が実現した知的財産制度を的確に運用することにより具体的な成果を挙げることに努めた。2003年以来、知的財産高等裁判所の創設、大学の知的財産本部の設置、特許庁の体制強化、税関での水際取締体制の整備など多くの体制や法令の整備が行われてきたが、これらが当初予定した成果を挙げるようモニタリングすることが必要である。
 第2に、国民やユーザーからパブリックコメントなどを通じて表明されたニーズにこたえ、施策の見直しにつなげていくよう努めた。
 第3に、国レベルと並行して地域における知的財産戦略も進展するよう、中央だけでなく地方の視点も盛り込んだ。
 第4に、グローバリゼーションの進展に合わせ、国際的な視点に立って制度を見直した。世界特許や模倣品・海賊版拡散防止条約など国際制度の形成に当たり、世界に貢献することを心がけた。
 今回これらに留意しつつ、既存の施策を一層の具体化するとともに、進展が不十分な課題に対する施策の追加や新たな課題への取組を盛り込んだ。この結果、実施すべき施策は約450項目となった。



(2)実施
   「知的財産立国」を実現していく上で、我が国にはもはや一刻の猶予も許されない。
 推進計画に盛り込まれた施策の実施に当たっては、担当府省が責任を持って取り組まなければならない。担当府省が複数に及ぶ場合には、互いに緊密な連携を取って実施していかなければならない。このため、推進計画における具体的施策ごとに担当府省が付されている。
 戦略本部は、担当府省の取組状況を恒常的に確認するとともに、施策の取組が遅れている場合などには、その実施を促すこととする。また、担当府省が複数に及ぶ場合などで、意思疎通が十分に図られていないなどの理由により、施策の実施が遅れている場合には、戦略本部が総合調整を行うこととする。推進計画における具体的施策の担当府省として、特に戦略本部は明記されていないが、以上のような意味において、戦略本部はすべての施策の実施に関与することになる。
 また、重要性の高い政策課題については、担当府省の取組と同時に戦略本部においても調査審議することとする。そのため、知的財産戦略本部令(平成15年2月政令第45号)第2条の規定に基づき、戦略本部に専門調査会を設置する。
 さらに、戦略本部は、総合科学技術会議、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部や観光立国推進戦略会議など他の政策会議・戦略本部とも有機的に連携していくこととする。
 「知的財産立国」は、広く国民全体が意識を共有することによって初めて実現されるものである。そのため、戦略本部は、広く一般からの意見を不断に求めるとともに、地方における取組を活性化させて、また忌憚のない意見を聞くため、全国各地において、知的財産戦略に関する説明会やシンポジウムを開催することとする。


第1章 知的財産の創造

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 知的創造サイクルは、知的財産の創造から開始される。独創的かつ革新的な研究開発成果を生み出し、それを社会に還元するメカニズムを抜きにして「知的財産立国」は実現しない。特に、我が国の研究資源の多くを有する大学・公的研究機関等の役割は極めて大きい。
 今後我が国が「知的財産立国」を目指すためには、大学・公的研究機関等において発明、ソフトウエア、データベース等の優れた知的財産が創出され、それが社会において最大限に活用されるメカニズムを構築するとともに、非凡な才能を有する研究者の創作意欲をこれまで以上に刺激する必要がある。
 また、企業に対しては、知的財産戦略の量から質への転換を促し、質の高い知的財産創造を実施する基盤を強化するとともに、産学官連携への取組の強化がなされる必要がある。
 このような認識に基づき、以下の施策を講ずることにより、大学・公的研究機関や企業における質の高い研究成果の創出を促すとともに、優れた知的財産を創出した研究者を十二分に評価する社会の実現を目指す。


1.大学等における知的財産の創造を推進する

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(1) 機関一元管理の体制整備を推進する
1)機関一元管理を原則としたルールづくりを促す
i) 多くの大学等において、発明等の帰属について機関一元管理の体制が整備されたところであるが、まだ未整備の大学等においては、2005年度中できるだけ速やかに、知的財産の効率的活用が図られるよう、発明等について原則機関帰属へ切り替え、大学等の機関一元管理の体制を整備するよう促す。また、研究等において用いるマテリアル(微生物、実験動物・植物等の生物資源、化合物や材料のサンプル等)や、ソフトウエア、データベース、デジタルコンテンツ等、発明等と同様に移転の対象となるものについても、大学等において創造されたものについては、原則機関帰属とすべく、その取扱いルールを明確化するよう促す。
 また、機関帰属となった知的財産権については、社会に無償開放するものか否かについて明確化するよう促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


A)多くの大学等において、研究者が研究成果を創出した場合には所属機関(大学知的財産本部等)に届け出る規定が整備されたところであるが、まだ未整備の大学等においては、2005年度中できるだけ速やかに、同様の規定を整備するよう促す。また、大学院生・大学生がした発明等については、権利の帰属は一般的には大学院生・大学生となると考えられるが、大学の施設を用いてした発明や指導教員による教育・研究との関連が深く教員と学生との共同発明と考えられるもの等については、大学へ届出ることが望ましい。このような取扱いに関する規定を整備した上で、大学等で特許出願等を行わない発明等に関する権利の研究者への返還を可能とするルールの整備を促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


2)研究者の流動化に配慮したルール整備を行う
 2005年度中できるだけ速やかに、研究者が所属機関を異動した場合において、自己の研究の継続が可能となるよう、また、発明者としての適切な還元を受けられるよう、研究者と機関の間のルールを明確化するよう促す。
 なお、原則機関帰属ルールを採用している大学等に所属する研究者が他の機関へ異動した場合の、その研究者の研究成果である発明等の取扱いについては、その発明等が生じた時点で所属している機関の取扱いルールに基づくものとすることが望ましい。
 その際、契約上の工夫等に加えてその他の手段の可能性も広く検討し、研究者が、異動前の大学等に権利帰属された自らの発明等の存在によって、異動後の大学等において研究を継続することに支障が生ずることがないよう、また産学官連携プロジェクトとして支障のないよう、柔軟な措置を講ずるよう促す。
 また、研究者が大学等として特別の予算を手当てしている研究プロジェクトや産学官連携の研究プロジェクトに参画している等の場合には、異動後の機関が異動前の研究成果(研究途上の成果を含む)を確認することや秘密保持や異動後の一定期間内の出願については、異動前の機関の確認を得ることなど柔軟な措置を講じておくことが重要である。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


(2)知的財産に関する総合的な体制を強化する
  大学知的財産本部が多くの大学に整備されたことや技術移転機関(TLO)の整備が進んだことを踏まえ、2005年度も引き続き、各大学の創意工夫に基づく知的財産本部の機能の一層の充実・強化を図るとともに、各大学の状況に応じた多様な形態の知的財産管理体制が実現されるよう支援を行う。
  また、機関一元管理の下で大学等個々の機関が自らの知的財産ポリシーを明確化し、各研究成果の活用方法の選択や特許出願について、TLOに蓄積された技術移転に関する知見・ノウハウを最大限活用するため、TLOとのより一層の連携強化を図るなどして、迅速かつ的確に行えるよう体制を整備するよう促す。


1)大学の知的財産本部を強化する
i)2005年中できるだけ速やかに、モデルとなる大学知的財産本部の知的財産活動を評価し、特に活発な活動を実施し、国際競争力強化に貢献が期待されるスーパー産学官連携本部を厳選して、その活動への支援を強化する。
(文部科学省)
A)2005年度も引き続き、実績の上がってきている大学知的財産本部が、そのノウハウを近隣の他大学へ移転する取組を評価し、その活動を支援する。
(文部科学省)
B)2005年度から、地域における中小企業等と連携し、地域の特性を活かした地場産業の活性化を図るなど地域貢献型の大学知的財産本部の知的財産活動を評価し、その活動への支援を強化する。
(文部科学省)


2)TLOを強化する
 2005年度も引き続き、新設されるTLOに対する一定期間の財政支援や海外出願に対する支援を行う。
 また、2005年度も引き続き、大学知的財産本部やTLO等において迅速かつ柔軟な契約を実現するとともに、マッチング機能を高めるため、スーパーTLOを核として、研究人材等を技術移転スペシャリスト等として育成し、技術移転に関わる実務実施者の能力向上の取組を支援する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


3)知的財産人材情報の充実を図る
 日本弁理士会により、弁理士に関する情報を収集整理してデータベース化し、大学の求めに応じて適切な人材の紹介が行われているところであるが、2005年度も引き続き、弁理士、弁護士、産業界それぞれの関係団体の協力を得て、大学知的財産本部の活動に参画できる優秀な人材(民間企業において知的財産に関する知識経験が豊富な者及び高度な実務能力を有する弁理士や弁護士)に関する情報公開の周知、及び更なる充実を図り、大学等の求めに応じて適切な人材を紹介・斡旋できるようにする。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


4)紛争処理の体制整備を支援する
i)大学等が関与する紛争処理に関する問題等が顕在化しつつある。2005年度から、大学等がこの問題について対応するための体制整備に対し支援する。
(総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)
A)2005年度中に、大学等を対象として訴訟費用の負担軽減や損害賠償金の補填等を図るため、民間の知財保険の活性化などの具体的方策について検討を行い、必要に応じて制度の整備を行う。
(総合科学技術会議、金融庁、文部科学省、経済産業省)


5)対応窓口を明確化する
 2005年度中に、大学に対し、共同研究や技術移転等に関し、大学知的財産本部とTLOとの関係を明確にするとともに中小・ベンチャー企業など企業側が利用しやすいよう対応窓口の一元化をさらに促進するよう促す。また、窓口において提供する情報の種類や内容についても充実するよう促す。
(文部科学省、経済産業省、関係府省)


6)大学知的財産本部・TLOを評価する
i)2005年度も引き続き、大学知的財産本部・TLOの活動業績に関して毎年フォローアップを行う。産学官連携推進活動に係る連携体制の評価手法を確立し、2005年度から、それに基づく評価を行い、その結果を公表する。また、評価結果を資源配分や制度改善に反映させる。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省)
A)TLOについては、その活動に関する種々の分析を行い、2005年度中にその結果を公表するとともに、TLOにフィードバックし、TLOの能力向上に向けた自主的な取組を促す。
(総合科学技術会議、経済産業省)


7)大学の知的財産活動についての情報公開を促す
 2005年度も引き続き、大学知的財産本部整備事業の実施状況の調査・公表を行うとともに、各大学に対し、所有する知的財産権、ライセンス件数や特許出願件数等の活動実績、知的財産本部における民間からの人材登用状況及び知財ポリシー等の定期的な公開を促す。
(文部科学省)


8)大学知的財産本部やTLOの連携を強化する
 大学知的財産本部とTLOの全国的な連携組織である「大学知財管理・技術移転協議会」が設立され、多くのTLOや大学知的財産本部が参加しているところであるが、更なる強化・拡充を図るため、2005年度も引き続き、以下に取り組む。
i)産学官連携・技術移転に関する成功事例を調査し、情報の交換や共有、情報ネットワークの構築を促すとともに、意見調整やケーススタディなどを活用した人材育成等の活動の充実が図られるようにする。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省)
A)全国のTLOが相互に連携をとって、大学知的財産本部、TLOが未整備の大学や公的研究機関(地域におけるものを含む。)からの技術移転について支援する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
B海外の技術移転機関等との連携を推進する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


(3)知的財産関連活動に関する費用を充実する
i)2005年度も引き続き、大学やTLOへの海外及び国内出願経費を含む特許関連経費の支援を、競争的原理の下で充実する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
A)競争的資金については、間接経費の一部を特許関連経費に充当できることを「競争的資金の間接経費に係る共通指針」において明確化したところであるが、2005年度も引き続き、これを周知し、その積極的な使用を奨励するとともに、競争的資金の質的・量的な充実を図る。
 なお、競争的資金以外の政府研究資金の間接経費についても、同様の措置を講ずる。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
B)2005年度も引き続き、大学等が主体的に取り組む共同研究等について、その研究成果を事業化に結びつけるための知的財産の戦略的取得・維持に必要な資金を十分確保する。また、そのため、企業等から提供される研究費のうち、知的財産の取得・維持に必要な経費を間接経費としてあらかじめ確保することを奨励する。その際、繰越や他の研究成果への転用を可能とする等の柔軟な取扱いをするよう促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
C)2005年度中に、大学等と企業との共同研究及び委託研究に関し、企業の研究開発経費の支出を促進するためのインセンティブについて検討を行い、必要に応じ措置を講ずる。
(文部科学省、経済産業省、関係府省)
D)2005年度も引き続き、企業及び個人から大学への寄附に関する税制優遇措置について、積極的にその利用の促進を図る。
(総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)
E)2005年度も引き続き、科学技術振興機構(JST)が各地域に設置した特許化支援事務所において各大学等の研究者が行った発明に対する従来技術調査を行っていることを広く周知し、その活用を促す。
(総合科学技術会議、文部科学省)


(4)大学・研究開発型独立行政法人の評価において知的財産に関する取組状況に配慮する
 2005年度も引き続き、国立大学法人及び研究開発型独立行政法人に対する事後評価にあたっては、各機関の特性に留意しつつ、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」を踏まえ各機関の知的財産に関する取組状況に配慮して行い、その結果を公表する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


(5)研究開発において特許情報を活用する
i)2005年度中に、大学等における知的財産の創造・活用基盤を整備するため、2005年度からの論文等の書誌情報と特許情報との統合検索システムの運用開始に向けて、データベース管理などの支援を行う。また、大学等の研究現場における特許情報へのアクセス環境を高度化するため、学術情報ネットワークなどを通じて特許情報が高速かつ高機能で検索できるようシステムの整備を行う。
(総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)
A)2005年度も引き続き、大学等を対象として、研究の絞り込みや無駄な出願の回避のため、大学等が行う従来技術調査やパテントマップの作成等を支援する。また、特許電子図書館(IPDL)の機能向上に努めるとともに、大学等において専用回線を介してIPDLを利用可能とする 。
(総合科学技術会議、経済産業省)
B)2004年度に行った学術コンテンツポータルシステムの開発成果を踏まえ、2005年度中に、学術論文情報や全国の大学図書館等が所蔵する図書・雑誌の目録所在情報等、学術情報資源の総合的な流通基盤環境の本格的な提供を開始する。また、2005年度も引き続き、中小・ベンチャー企業と大学等との連携を促進するため、大学等における研究者、研究成果、研究活動等のデータベース整備の充実・強化を図るとともに、活用を促進する。
 さらに、2005年度も引き続き、日本発の電子的な学術雑誌の育成により大学、学協会等からの研究情報発信機能を強化するとともに、日本の研究成果の国際発信方策に関する調査を行い、研究情報の国際的な流通を促進する仕組みを整備する。
(総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)


(6)研究施設・設備を改善する
 研究施設・設備の改善については、2005年度も引き続き、文部科学省の「国立大学等施設緊急整備5か年計画」等を踏まえ、一層の推進を図る。
(総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)


2.知的財産を軸とした産学官連携を推進する

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(1)産学官連携の基盤を強化する
1)大学等の事務・運営体制の改革を支援する
i)2005年度中に、大学等に対し、例えば、知的財産権の活用等を通じた社会貢献に積極的な研究者がその活動を実施するのに十分な時間と労力をかけることができるよう、研究、教育、産学官連携等のそれぞれの任務について、勤務形態の柔軟化に配慮したエフォート管理を導入するなどして、学内における適切な業務分担が行われるよう自主的な取組を促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
A)大学においてその個性・特色に応じ産学官連携活動に積極的に取り組むよう大学の産学官連携活動へのインセンティブを高めることは重要である。このため、2005年度から、大学の評価や資源配分を行うにあたり大学における産学官連携活動にも留意する。また、産学の共同研究に対して支援する 際についても、大学に関する同上の評価に留意しつつ実施する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
B)2005年度から、大学等に対し、中小企業を始めとする企業に対する共同研究や技術指導などを研究者の職務と位置付け、それを研究者の評価対象とすることについて、自主的な取組を促す。
(文部科学省)
C)2005年度から、大学等において教職員の知財意識を高めるための知的財産や産学官連携に関する研修等の取組を支援する。
(総合科学技術会議、文部科学省)


2)橋渡し機能を強化する
i)2005年度から、大学等に対し、中小・ベンチャー企業との技術移転や共同研究、委託研究を円滑に進めるため、大学等のシーズと企業のニーズとのマッチングをすることや、大学等の研究を企業において事業化可能とすること等の大学等と企業との橋渡し機能を充実するよう支援する。また、大学等において、TLOに蓄積された技術移転に関する知見・ノウハウを最大限活用する体制を整備するとともに、TLOとのより一層の連携強化を図るよう促す。また、大学等と企業の橋渡し機能として、アドバイザー等の専門家の活用や公設試験研究機関、民間事業者等の活用を図ることを大学等に対し促す。さらに、2005年度中に、参考のために、これらに関する成功事例集を作成・公表する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
A)2005年度中に、大学等において、企業との共同研究を戦略的・組織的に展開できる体制を整備拡充する。
(総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)
B)2005年度から、大学等において知的財産に係る契約や法務に関する問題への適切な対応を図るため、「弁護士知財ネット」等知的財産に詳しい弁護士の活用や、大学等において企業等の法務経験者やライセンス交渉の実務経験者等を確保するよう促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)


(2)産学官連携に関するルールを整備する
1)共同研究・受託研究のルールを明確化する
 大学等が自らの戦略的な知的財産の活用及び共同研究・受託研究の促進を図るために、2005年度も引き続き、大学等に対し、民間企業との共同研究・受託研究を実施する場合の考え方、例えば、以下のような取扱いルールを明確化するとともに、契約書の雛形、運用マニュアル等を自ら整備し、外部に対して積極的に公表することを促す。
営業秘密等秘密情報の取扱い
共同研究成果としての知的財産権の帰属
民間企業等への権利譲渡、ライセンス等に関する考え方
他の大学(国内・国外)等の研究者との連携により知的財産が生じた場合の権利関係等の取扱い
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


2)大学等の秘密管理を推進する
i)大学やTLOに対し、共同研究等において秘密情報の漏洩を防ぐため、営業秘密の管理や職員・学生等の守秘義務を徹底するよう促すとともに、共同研究等に参加する企業に対しても同様の趣旨を徹底するよう促す。また、不正競争防止法の改正を踏まえ、2005年度中に、営業秘密に関する指針等について、必要な見直しを行うとともに、周知を図る。さらに、知的財産権の帰属に関する大学内における取扱いルールが、教員・職員と大学院生・大学生とでは異なることを外部に対して周知することを促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
A)2005年度から、産学の共同研究に参画する学生やポストドクターについて、産業界に対しては学生等の人件費を適切に計上すること、及び大学等に対しては契約関係を明確化することを促すことにより、学生等の守秘義務を徹底する。
 そのため、2005年度から、大学及び産業界が、学生の位置づけ等について双方の理解を深めるよう、立場の違いを前提とした基本的考え方を整理し、どのような秘密保持の契約形態があり得るかについて、議論を深めるための場を提供する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


3)契約の柔軟性を確保し弾力的運用を図る
i)2005年度から、大学やTLOに対し、企業の実情や研究・技術移転の実態に応じ契約料等の契約内容や契約実務における運用をより柔軟に行うよう促す。また、2005年度中に、大学やTLOが行っている契約実務について評価を行うとともに、参考のために、契約の内容や実務の弾力的な運用の事例集を作成・公表する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


A)2005年度も引き続き、共有特許については、例えば不実施主体である大学の特性や企業における実施化促進といった点など、産学が双方の立場に配慮しつつ、柔軟な契約締結が確保されるよう話し合いの充実を図るよう促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
4)利益相反に関するルールを明確化する
B)2005年度中に、大学に対し、利益相反マネジメントに関するガイドラインを整備するなどして可能な限り判断基準を明確化することを促す。
(総合科学技術会議、文部科学省)
C)2005年度中に、利益相反マネジメントに関する事例研究の結果を周知するとともに、大学知財管理・技術移転協議会等において具体的な利益相反マネジメントのノウハウについて情報共有を図ることにより、各大学の利益相反マネジメント能力を高めるよう促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省)


(3)国立大学法人がライセンス対価として株式取得できることを周知する
i)国立大学法人の保有する技術の移転を促進するため、国立大学法人が知的財産権のライセンスの対価として株式を取得することが一定のルールの下で可能となることが明確化されたところ、2005年度中に、株式取得時や売却時の留意事項など取扱いの解説を作成し、大学等に積極的に周知することにより、早期定着を図る。
 また、研究開発型独立行政法人においても同様の運用を可能とするよう2005年度中に検討を行い、その結果に応じて措置を講ずる。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
A)2005年度中に、大学等に対し、利益相反マネジメントの実施に当たっては個人情報の保護に十分留意するよう促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)
B)2005年度中に、大学等に対し、利益相反や株の問題に関する対応体制を整備するよう促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)


(4)大学発ベンチャーを促進する
i)2005年度から、大学等に対し、大学発ベンチャーを支援するため、研究施設・設備等や大学保有特許の使用等に関し優遇措置を導入するよう促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)
A)2005年度も引き続き、大学発ベンチャーを対象に、産学のマッチングによる実用化研究や実証試験等に対する支援を行う。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
B)大学発ベンチャーにおいては経営に必要な専門的知識を有した人材の確保が困難であることにかんがみ、2005年度も引き続き、弁護士、公認会計士等の専門家派遣を行うとともに、大学を核としたベンチャーキャピタル、金融機関等の大学発ベンチャー支援者のネットワークの強化を図る。
(総合科学技術会議、経済産業省、関係府省)
C)2005年度中に、大学等の自主的な判断により、大学等の研究者や学生等を対象として、ベンチャーを起業することの意義、課題等について理解を与えるための教育ができるよう支援する。
(総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)


(5)日本版バイ・ドール制度の適用対象を拡大する
 2005年度も引き続き国が発注する請負契約により実施する研究開発事業についてもその成果物である知的財産権を請負者に帰属させることができるよう検討をした上で、関連法案を国会に提出する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


3.研究者の創造環境を整備する

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(1)知的財産の創造を重視した研究開発を推進する
1)研究者にインセンティブを付与する
 2005年度も引き続き、大学等に対し、企業における職務発明の取扱いにも配慮しつつ、研究者の研究成果に関する権利を承継し、実施料収入を得た場合の研究成果を創造した研究者個人又は研究者の所属する学部・学科等に還元すべき金額の支払いルールを明確化するよう促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


2)研究開発評価において知的財産を活用する
 2005年4月に改定された「国の研究開発評価に関する大綱的指針」を踏まえ、知的財産の創造が想定される分野の資源配分や業績の評価については、2005年度から、評価項目に知的財産権の取得・活用の状況を指標として活用する。
 なお、研究開発の成果、評価結果の公表や、研究者等の業績評価の結果、競争的研究資金制度の採択審査の結果等の公表については、知的財産の保全の観点に配慮する。
(総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)


(2)研究における特許発明の使用を円滑化する
i)2005年度中に、大学等において自由な研究環境が確保されるように他者の特許発明の使用円滑化を図るため、国費原資の特許発明についてのライセンスに関するガイドラインを作成し、研究コミュニティ全体に広く普及する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
A)2005年度から、大学等における試験研究で用いられる、汎用性が高く代替性の低い遺伝子改変動物やスクリーニング方法等の特許化された材料や手法等に係る特許権の特許法上の取り扱いについては、上記@)のガイドラインの普及による効果、影響等を見守る一方で、国費原資ではない特許発明を含め、各国における対応、国際的な議論の動向等を踏まえて検討し、必要に応じて法改正を含めた措置を講ずる。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


(3)研究ノートの導入を奨励する
2005年度も引き続き、研究ノートの積極的導入を図るとともに、研究ノートの記載・管理方法についての研修を奨励する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)


(4)知的財産管理の電子化を促進する
 2005年度も引き続き、電子媒体の活用により研究ノートの機能を代替する可能性や問題点について検討し、必要な取組を行う。
 また、課題となる電子文書の真実性の確保について、時刻認証等の技術の進展やe−文書法施行などの状況にかんがみ、信頼性の向上と普及に向けた取組を促進する。
(総務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)


4.企業における質の高い知的財産の創造を推進する

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(1)基本特許の取得を重視した企業戦略を推進する
2005年度も引き続き、世界文明の発展に寄与する観点から、発明者の創作意欲を刺激して質の高い基本特許を取得するなど、量から質へ特許戦略を転換するよう、企業経営者等との意見交換会等を通じて企業に対し促す。
(経済産業省)


(2)企業の三位一体の経営戦略による創造活動を推進する
2005年度も引き続き、企業経営者等との意見交換会等を通じ、知的財産戦略、事業戦略、研究開発戦略の企業の三位一体の経営戦略により、技術の先行き、知的財産の状況や将来の事業展開を睨んだ効率的な創造活動を推進するよう促す。
(経済産業省)


(3)企業による産学官連携活動を促進する
i)2005年度も引き続き、産業界に対し、企業の経営戦略に大学等との連携を積極的に位置付けるとともに、産学官連携の取組や実績等について積極的に公表することを促す。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
A)2005年度も引き続き、大学等と企業との交渉を円滑にかつ効率的に行うため、産業界に対し、各企業の産学官連携の窓口を明確化するよう促す。
(文部科学省、経済産業省)


(4)技術戦略マップを活用した戦略的研究開発を推進する
 2005年度から、2004年度に策定された「技術戦略マップ」を活用し、企業・大学等を問わず効果的な研究開発の推進を図るとともに、特許動向等の技術動向や市場動向等を踏まえて技術戦略マップのローリング(見直し)を行う。
(経済産業省)


5.魅力あるデザインの創造を推進する

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(1)デザイン戦略を推進する
「戦略的デザイン活用研究会」が策定した「競争力強化に向けた40の提言」(2003年6月)に基づき、2005年度も引き続き、我が国のデザイン戦略を総合的に推進する。
(経済産業省、関係府省)


(2)グッドデザイン事業を抜本的に拡充する
 2005年度も引き続き、消費者や生産及び流通関係者等のデザインに対する理解と関心を深めるとともに、商品等のデザイン水準の向上を図ることを目的として、毎年、選定、表彰を行っているグッドデザイン賞事業(Gマーク制度)について、以下のようなことに取り組むことにより、その抜本的拡充を推進する。
a)ブランドや企業、デザイナー等の表彰制度を創設するなど表彰対象の拡大
b)国内のみならず海外で販売されている商品も対象とする
c)企業と学生・新進デザイナーとのマッチング支援
d)フェア「グッドデザインプレゼンテーション」の拡充等
(経済産業省)


(3)公共事業等におけるデザイン・景観に配慮した社会資本整備を推進する
 2005年度から、建築物や道路建設等の国の公共事業等に係る景観評価や「景観法」に基づき作成される景観計画に基づく事業等について、必要に応じ入札時に総合評価落札方式等によりデザインを評価対象に含めることを奨励するとともに、デザイナーを景観アドバイザーや景観検討委員会等の委員として積極的に参加させるよう努めるなど、デザイン・景観に配慮した社会資本整備を推進する。
(農林水産省、国土交通省、関係府省)


(4)大学等におけるデザインの産学官連携を推進する
 2005年度も引き続き、工学系大学や美術系大学等のデザイン力をいかした産学官連携活動の自主的な取組を促す。
(文部科学省、経済産業省)


(5)新日本様式ブランドを推進する
 日本ブランドを世界に発信していくため、2005年度中に、日本の伝統文化に見いだされるデザイン・機能・コンテンツなどを現代生活に合わせて再提言する新日本様式ブランド(例えば、「ネオ・ジャパネスク」)の在り方について、官民共同で検討し、その確立に向けて取り組む。
(経済産業省)


(6)デザインの創造基盤の整備を行う
i)戦略的なデザインの創造が促される環境を整備し、広く国民の優れたデザインへの理解と関心を高めるため、2005年度も引き続き、セミナー、シンポジウム等のイベントを開催する。
(経済産業省)
A)魅力あるデザインを創造する人材の育成を支援するため、2005年度も引き続き、専門学校等の教育内容の充実やデザインマネジメント人材育成を行う。
(文部科学省、経済産業省)
B)特許庁の保有するデザイン関連情報を公開・提供するため、2005年度も引き続き、デザイン関連情報の整理標準化データの外部提供の拡大について検討を行うとともに、2005年度から、2004年度に作成した整理標準化データ(米国)の提供を行う。
(経済産業省)
C)魅力あるデザインを創造するために有用なデザイン情報を整備し、広範な利用に供するため、2005年度も引き続き、人体寸法を始めとする人間特性に関する基盤整備を行う。
(経済産業省)





第2章 知的財産の保護

T.知的財産の保護を強化する

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 知的財産の創造のインセンティブを確保するとともに、その効果的な活用を図るには、知的財産の適切な保護が不可欠であり、そのための制度や体制は、今後もより一層充実させていかなければならない。新たに生み出された知的財産を、制度の国際的な調和や技術革新の進展も踏まえて適正に保護するとともに、権利取得手続の充実と迅速化のための体制を整備し、紛争処理手続の充実のための取組を進めることによって、知的財産の保護を十全ならしめる基盤の構築を目指す。


1.特許審査を迅速化する

 経済のグローバル化や熾烈な国際競争の中で、従来にも増して権利の早期確定の要請が増大している。権利の 早期確定は、重複研究の排除、国内技術開発競争の活性化などを通じ、研究開発投資の収益貢献度を拡大し、我が国企業の国際競争力の向上に資する。また、発 明の早期権利化により、積極的に研究開発に取り組むトップランナーが、独創的な高付加価値商品によって優位性を確保することが可能になるほか、革新的な技 術を有する中小・ベンチャー企業の競争力強化にも資する。
 他方、特許審査の現状を見れば、2004年度の審査請求件数は約38万件(2003年度の約1.7倍)と 予想を超えるペースで急増し、これにより、特許庁の懸命な努力にもかかわらず、審査順番待ち件数は約52万件(2004年度当初)から一気に約65万件 (2004年度末)へと拡大し、特許審査の順番待ち期間は26ヶ月(2004年度末)で横ばいとなった。係る状況の中、2004年度は、審査官117名の 増員(任期付審査官98名の増員を含む)、登録調査機関として2機関の新規登録、従来技術調査の外注件数の拡大(約16万件から約18万件へ)、審査官用 端末(約1250台)の機能向上など、審査処理件数の増加のための取組が行われた。これらの取組により2004年度における年間の処理件数は23万6千件 と前年と比較し6千件増加したものの、審査順番待ち期間を短縮するには至っていない。
 このような事態は、我が国企業の国際競争力の観点から、非常事態との認識に立ってこれを早急に解決すべく 官民挙げて緊急に特別の対策を講ずる必要がある。
 また、出願人の意見として、我が国には審査請求制度があることにより企業の特許戦略に合わせた権利取得が 可能となっているという意見がある一方、審査請求の期限まで請求しないことが習い性となり、現実に権利化が遅れて、結果として出願から実際に特許登録され るまでの期間が米国に比べ極めて長くなって、国際競争上不利となっていると指摘する意見がある。また、権利化の帰趨が長期間明らかでないため、出願人以外 の者、特に中小・ベンチャー企業の負担を大きくさせ、そうした企業の成長の妨げとなっているとする意見もある。


(1)世界最高水準の迅速・的確な特許審査を実現する

 特許審査の順番待ち期間を最終的にはゼロとするという最終目標を目指し、審査順番待ち案件の一掃に向けた 総合施策の実施に取り組む。

ア)特許審査の迅速化を着実に実現するため、特許審査の順番待ち期間についての中期目標及び長期目標を以下のと おり定める。

 中期目標(2008年)  20ヶ月台

 長期目標(2013年)  11ヶ月

イ)上記中期・長期の目標を実現するため、2005年度も引き続き、以下の施策を強力に実施する。

a) 特許の出願・審査請求構造改革を推進する

 経営戦略上、真に必要な特許出願・審査請求を行うよう促す


 企業活動において生まれた「知」を保護するには、特許権だけではなく、実用新案権、営業秘密(ノウハ ウ)、意匠権、著作権等様々な手段があり、これらを経営戦略に沿って適切に使い分けることが重要であるとの認識を高め、真に必要な特許出願・審査請求を行 うよう、企業に対し要請する。

質の高い特許取得を促す


 企業に対し、質の高い特許を重点的に取得することが重要であるとの認識を高め、特許出願・審査請求の厳選 を促す。

出願取下・放棄制度の利用を促す


 企業に対し、審査請求を行ったがその後権利化の必要性が低下したものについて出願取下・放棄制度(審査請 求料の一部返還制度)の利用を促す。

 日本弁理士会に対し協力を要請する


 弁理士が出願人に対して従来技術調査手法を指導すること、出願人が弁理士を選択する際の有益な情報を充 実・公表することなどについて、日本弁理士会に対し協力を要請する。

b)特許庁の人的体制を充実する

審査官・任期付審査官を確保する


 引き続き必要な審査官及び中期目標期間において必要な任期付審査官を十分に確保する。

審査官を重点配置する


 審査官を技術分野の社会的重要性、特許審査順番待ち案件及び今後の出願・審査請求動向の見通しや従来技術 調査の外注の状況等を踏まえ、重点的に配置する。

専門補助職員を活用する


 専門補助職員を技術説明や従来技術文献調査、特許情報検索のデータベース整備等で、審査官の補助として活 用する。

c)審査効率を向上させる

 米・欧特許庁のサーチ・審査結果を積極的に利用する


 日本と米・欧共通の特許出願のうち、米・欧特許庁でサーチ結果・審査結果が既に出ているものについては、 その結果を特許審査において積極的に利用する。

従来技術調査の外注を拡大する


 登録調査機関への民間参入を促すとともに、登録調査機関への従来技術調査の外注を拡大する。

審査効率の高い外注手法へ移行させる


 登録調査機関を活用した従来技術調査外注において、審査効率の高い手法(直接対面で説明)への移行を進め る。

日本弁理士会に対し協力を要請する


 明細書等の出願書類を作成するに当たり技術的に簡単・明瞭な文言を用いて明確かつ簡潔に記載するよう、日 本弁理士会に対し協力を要請する。

d)  特許審査迅速化に必要な基盤を整備する

特定登録調査機関への参入を促す


 特定登録調査機関の交付する調査報告を提示して審査請求したときにその手数料を減額する制度の利用を促進 するため、特定登録調査機関への民間参入を促す。

審査官に対する研修体制を強化する


審査官の審査能力・効率を向上させるため、研修体制を強化する。

従来技術文献を調査する人材を育成する


 登録調査機関における従来技術調査の質を向上させるため、同調査機関の人材を育成する。

特許電子図書館(IPDL)の検索機能を強化する


 出願人等が従来技術情報を迅速に検索することができるよう、特許電子図書館(IPDL)に関連外国出願や 審査で用いた従来技術情報などを検索できる機能を追加する。

特許情報等の提供サービス機能を強化する


 審査官が有するサーチノウハウを外部向けに加工した上で順次公表する。

ウ)経済産業省においては、上記中期・長期の目標を達成するための毎年度の実施計画を当該年度の知的財産推進計 画の作成の時期に合わせて策定し、前年度の目標及び実施計画の達成状況とともに知的財産戦略本部に報告し、公表する。

エ)知的財産戦略本部においては、上記報告について総合的かつ多面的な検証を行い、必要に応じ、政府内外の関係 者に対する情報の提供や協力の要請その他必要な措置を講ずる。
(経済産業省)


(2)特許情報の利用環境を整備する

i)  特許電子図書館(IPDL)に関し、2005年度は、有益な特許情報等を迅速に得ることができるよう、関 連外国出願や審査で用いた従来技術情報などを検索できる機能を追加するとともに、特許公報等のPDFファイルを一括ダウンロードできるようにする。また、 2005年度から、テキスト検索の際の入力機能の向上や全文テキスト検索機能の追加、図面の画質の向上についても必要な措置を講ずる。
(経済産業省)

A) 2005年度は、インターネットを通じた登録実用新案公報の発行を実現する。その他の登録公報について は、2006年度以降順次インターネットを通じて提供する。
(経済産業省)

B) コンピュータ・ソフトウエア技術に関する研究開発や出願人による従来技術調査を促すため、特許庁のコン ピュータ関連情報データベース(CSDB)に関し、2005年度も引き続き、新たな文献の充実や検索機能の向上を行うとともに、著作権者から利用許諾が得 られた一次文献や抄録についてIPDLを通じて公開する。
(経済産業省)

C) 2005年度も引き続き、中小・ベンチャー企業に対し、特許情報活用の専門家を派遣するなど広く特許情報 の活用のための支援を充実する。
(経済産業省)


2.出願人のニーズに応じた柔軟な特許審査を推進する

(1) ニーズに応じた審査時期を担保する

i) 2005年度も引き続き、大学・TLOや中小企業の出願、外国関連出願、事業化が間近な出願などを優先的 に通常よりも早く審査する早期審査制度を周知し、適切に対応する。
(経済産業省)

A) 国際標準に関わる出願や実施化に時間が掛かる出願等に対して、適切な権利取得が図られるよう、産業構造審 議会の取りまとめに従い、2005年度も引き続き補正の制限や分割時期の緩和について検討し、必要に応じ制度を整備する。
(経済産業省)

B)  バイオ関係等の先端技術においては、追加実験やデータ拡充が必要であることなどを踏まえ、米国のような一 部継続出願制度の導入、国内優先権制度の優先期間(現行1年)の延長について幅広い観点から2005年度に検討し、必要に応じ法改正等制度を整備する。
(経済産業省)


(2)(2)出願人との意思疎通を密にする

i)2005年度も引き続き、審査予定の出願や審査開始時期等の審査計画情報を出願人に提供するとともに、審査 官等との直接の意見交換の機会に乏しい地方の中小・ベンチャー企業等を対象とした巡回審査・審判を推進するなど、出願人との連絡を密にする。
(経済産業省)

A)2005年度も引き続き、関連する技術分野の特許出願等を一括して審査する関連出願連携審査制度を周知し、 企業の戦略的な特許取得に向けた活用を促す。
(経済産業省)


(3) 先端技術分野や国際関連出願の審査体制を強化する

i)ライフサイエンス分野における審査官を2003年度当初の3倍に拡充するなど、2005年度も引き続き、先 端技術分野に関する出願や国際関連出願に重点を置いて審査体制を強化する。
(経済産業省)

A) 2005年度も引き続き、先端医療等の先端技術の審査・審判、国際的な審査協力の推進等のため、審査官及び 審判官の学会派遣や研修等を強化する。また、特許審査における医師等による助言体制を強化する。
(経済産業省)


(4)利用者の利便性を向上させる

i)産業財産権に関する出願手続や各種書類のインターネットを通じた閲覧を2005年度中に実現する。また、イ ンターネットを通じた特許審査の手続書類等の閲覧の無料化について2005年度中に検討を行い、必要に応じ法改正等制度を整備する。
(財務省、経済産業省)

A)出願料等の手数料のインターネットを通じた納付を2005年度中に実現する。また、銀行口座からの自動引落 とし、クレジットカード等の活用を含めた決済方法の在り方を2005年度中に検討し、必要に応じ制度を整備する。
(財務省、経済産業省)

B)コンピュータの基本ソフト(OS)は各種様々であるが、電子出願ソフトが対応できる基本ソフト(OS)の対 象の拡大について2005年度中に検討し、必要に応じ措置を講ずる。
(経済産業省)

C)2005年度も引き続き、新しい技術概念に迅速・適正に権利を付与することが「知的財産立国」を実現する上 で重要であるとの認識に立って審査に臨む。また、その際に権利範囲が明確となるよう心掛ける。
(経済産業省)

D)2005年度から、審査や説明会等を通じて、明細書等の出願書類を技術的に簡単・明瞭な文言を用いて明確か つ簡潔に記載するよう徹底する。また、出願書類において用いる用語や表現方法等の記載の明確化を図るため、解説書、説明会等において徹底する。
(経済産業省)

E)中小・ベンチャー企業には翻訳作業に関する負担が重いことを踏まえ、外国語書面出願の翻訳文提出期間(現行 2ヶ月)の延長について幅広い観点から2005年度に検討し、必要に応じ法改正等制度を整備する。
(経済産業省)

F)白黒図面だけでなくカラー図面の添付の許容について幅広い観点から2005年度に検討し、必要に応じ法改正 等制度を整備する。
(経済産業省)

G)拒絶理由通知の応答期間(現行60日)の延長などについて、2005年度に利用者の利便性向上等の観点から 検討し、必要に応じ制度を整備する。
(経済産業省)

H)特許証等における特許権者、発明者の名前の表示について、2005年度中にユーザーのニーズ、他の証書類の 例を踏まえ検討し、必要に応じ措置を講ずる。
(経済産業省)


3.知的財産権制度を強化する



i) 産業財産権に関する出願手続や各種書類のインターネットを通じた閲覧を2005年度中に実現する。また、イ ンターネットを通じた特許審査の手続書類等の閲覧の無料化について2005年度中に検討を行い、必要に応じ法改正等制度を整備する。
(財務省、経済産業省)

A)出願料等の手数料のインターネットを通じた納付を2005年度中に実現する。また、銀行口座からの自動引落 とし、クレジットカード等の活用を含めた決済方法の在り方を2005年度中に検討し、必要に応じ制度を整備する。
(財務省、経済産業省)


(1)世界をリードする知的財産制度の構築に向けて取り組む

 これまで進めてきた知的財産戦略については引き続き加速化していくことが重要であるが、他方、国際的な知 の大競争の中で、我が国が知的財産を梃子に世界文明の発展にいかに積極的に貢献していくかが重要な視点であり、地球的視野をより重視して、知的財産の創 造、保護、活用のいわゆる知的創造サイクルが全体として調和的に発展する仕組みを作り上げることが求められる。このため、国際的な科学技術の発展、経済の 構造変化を予知し、より長期的、総合的な国益を念頭におくとともに、例えば所得の低い発展途上国が知的創造サイクルの中で適切な役割を果たしていけるよう 配慮しつつ、様々な新しい時代的な要請に対して柔軟、迅速かつ戦略的に対応すべく、2005年度から知的財産制度の在り方について総合的な見直しを行い、 必要に応じ制度を整備する。
(関係府省)


(2)医薬の新しい効能・効果を発現させる方法の技術の物の特許による保護の運用状況等を注視する

「医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法」の技術については、物の特許による保 護を図るべく特許審査基準が2005年4月に改訂された。「医療関連行為の特許保護の在り方について(とりまとめ)」において「物の発明と方法の発明とで はその対象範囲や効力が異なり、物の発明だけで保護することには限界があるため、これらの技術を発明の本旨に従い方法の特許として保護することについて、 関係当局においてその可能性を追求する努力を続ける必要がある」とされたことを受け、2005年度は、「医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果 を発現させる方法」の技術について、特許審査基準の運用状況等を注視する。
(経済産業省)
(3)遺伝子治療・再生医療の特許制度を整備する

 近年、遺伝子治療や再生医療の分野においては技術の革新に目覚ましいものがあることから、2005年度か ら、当該分野における革新的な最先端の技術やその動向について調査し、将来の課題としてこうした技術の進歩に対して特許制度がどうあるべきかについて検討 を行い、必要に応じ制度を整備する。
(総合科学技術会議、経済産業省)


(4) デザイン保護のために意匠制度を整備する

 魅力あるデザインを創造し、より価値の高い製品を提供する環境を整備するため、意匠の定義の見直し、無審 査登録制度の導入、類否判断の手法の明確化、関連意匠制度や部分意匠制度の在り方の見直しなどについて2005年度中に検討し、必要に応じ意匠法の改正等 制度整備を行う。
(経済産業省)


(5)ブランド保護のために商標制度を整備する

 魅力あるブランドを活用して、より価値の高い商品・サービスを提供する環境を整備するため、2004年度 までに商標及びその使用の定義、著名商標の保護、模倣品対策及び地域ブランドの保護などについて検討を行ったが、2005年度は、小売業・卸売業の商標の サービスマークとしての保護、コンセント制度の導入などについて検討し、必要に応じ商標法の改正等制度整備を行う。
(経済産業省)


(6)営業秘密等の保護を強化する

1)特許出願による技術流出を防止するための新たな制度を整備する

 他社が出願・権利化することへの恐怖心から本来秘匿すべきノウハウまで特許出願するなど、企業による防衛的な出願が大量に存在する。これは審査の遅延に つながるだけでなく、出願公開制度により国内はもとより海外にも意図せざる技術流出をもたらすという問題を引き起こしている。この問題は、企業の出願行動 にその一因があるとはいえ、 他方で現行の先使用権制度の使い勝手が悪いといったことや、コスト面での制約から海外でも特許を取得するものは出願全体の1割にも満たないという現実か ら、特許出願による意図せざる技術流出は不可避なものとなっている。このような現実に照らせば、企業が本来秘匿しておきたい技術について、防衛的な特許出 願のほかに自己防衛できる手段として、技術の種類や企業の知財戦略等に応じて柔軟に対応できる多様な手立てを用意しておくことが必要である。このため、自 己の技術を防衛するための手立てについて、2005年度中に、その要件や効力の在り方、証明の方法などに関し多面的に検討し、必要に応じ法改正等制度を整 備する。アジア諸国などに対しても、同様の制度の整備を働きかける。
(経済産業省)



2)営業秘密の保護と技術流出の防止を徹底する

i)営業秘密管理や技術流出防止に関する企業の取組を進めるため、「営業秘密管理指針」や「技術流出防止指針」 について、2005年度も引き続き、大企業、中小企業、大学等に広く周知徹底する。

A) 金型図面等に含まれる知的財産の管理保護等を内容とした「金型図面や金型加工データの意図せざる流出の防止 に関する指針」については、金型取引の対象範囲を拡大した改正下請代金支払遅延等防止法のフォローアップ調査(2004年度)の結果を踏まえ、2005年 度は同指針を必要に応じ改訂するとともに、引き続き、金型製造者及びユーザーの双方に対し、同指針及び改正下請代金支払遅延等防止法の周知徹底を図る。

B)2005年度も引き続き、社団法人日本金型工業会の作成した金型図面等に押印する「マル秘マーク」及び「取 引基本契約書モデル」の普及等を通じて、金型製造者による知的財産の管理保護についての自主的な取組を促す。
(経済産業省)



3) 医薬品の試験データの保護を強化する

 厚生労働省から新規医薬品の承認を受けるために申請する試験データは、薬事法に基づき、新規医薬品の市販 後における品質、有効性、安全性を確保する観点から、6年の再審査期間が設けられ、後から簡略化して行う同等の医薬品の申請に使用できないよう実質的に保 護されている。知的財産を保護し、新規医薬品の開発に対するインセンティブを向上させる観点からの保護の強化等について、例えば10年間の保護期間を設定 する等、幅広い観点から2005年度末までに検討し、必要に応じ制度を整備する。
(厚生労働省、経済産業省)



4)情報開示制度における営業秘密の保護を確保する

 化学物質の安全性に係る情報開示制度(MSDS制度)等の情報開示制度により流出してしまう恐れのある企 業の営業秘密を保護するため、公共の安全の確保等の法目的を踏まえ2005年度中に検討を行い、必要な制度の改善を行う。
(厚生労働省、経済産業省)


(7)データベースの保護を強化する

2004年度は、産業構造審議会においてデータベースの保護について検討されたが、今回、不正競争防止法に よる保護の仕組みは導入しないこととし、権利を与える sui generis 型の保護の導入も含め検討を進めることが適切であるとされた。2005年度から、データベースの保護の在り方について改めて検討し、必要に応じ制度を整備 する。
(文部科学省、経済産業省)


(8)植物新品種の保護を強化する

i)植物の新品種の育成者の適切な保護を図るため、育成者権の効力の及ぶ範囲を収穫物から直接に生産される加工 品のうち政令で定めるものにまで及ぶよう拡大し、育成者権の存続期間を25年に延長するなどの見直しを含んだ種苗法の一部を改正する法律案が2005年通 常国会に提出されている。同法案が成立した場合には、改正後の植物新品種保護制度について周知を図るとともに、適切な権利行使等を促進する。また、農業者 が自家増殖を行うに当たって育成者権者の許諾を必要とする植物の範囲の拡大について検討を行い、2005年度末までに必要な制度改正を行う。
(農林水産省)

A) 2005年度も引き続き、収穫物及び当該収穫物を原料とした加工品について、侵害品の判定を容易にするため のDNA品種識別技術の開発を促進する。
(農林水産省)

B) 品種登録のための平均審査期間を、栽培試験や審査の効率化を進め、2010年度までに2.5年に短縮する。
(農林水産省)

C) 農業者等が種苗の増殖や譲渡に当たって意図せずに権利侵害してしまうことを防ぐため、2005年度は、民間 作成の登録品種の統一マークの普及を支援する。
(農林水産省)


(9)知的財産の保護を強化するための制度を整備する

 大企業が取引関係において従属的な地位にある中小企業の知的財産について不当な取扱いをしているという指 摘、訴訟において被害企業が損害に見合う十分な賠償を受けられず侵害企業の侵害し得であるという指摘、知的財産侵害訴訟は、その立証に必要な証拠が侵害者 側に偏在しているため、特に、証拠調査能力に乏しい中小企業には立証が極めて困難であるという指摘、また、侵害訴訟に付随して無効審判請求や周辺特許の関 連訴訟が多発されるため、特に、資力等に乏しい中小企業には訴訟対応が極めて困難であるという指摘等、知的財産の保護に関し、様々な法制度上、実務上の問 題が指摘されている。

 これらの事情にかんがみ、最近改正された証拠開示制度等の周知徹底を図るとともに、中小企業関連法制や独 占禁止法上の指針等による中小企業の知的財産の保護や大企業の優越的地位の濫用の防止、損害額の算定制度等知的財産に関する損害賠償制度による権利者の適 正な救済の実現、知財訴訟における立証責任等の面における訴訟当事者の負担の軽減等の諸課題について、実態の把握や民事訴訟における知財訴訟の位置付け、 訴訟実務等を考慮しつつ2005年度も引き続き検討を行い、必要に応じ法制度等を整備する。
(公正取引委員会、法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)


(10)知的財産権侵害に係る刑罰を見直す

知的財産権侵害に対する抑止効果を高めるため、知的財産権の侵害に係る刑罰(懲役)の上限を10年とするこ とについて2005年度から検討し、必要に応じ制度を整備する。
(法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)


4.紛争処理機能を強化する

(1) 知的財産高等裁判所に期待する

i) 2005年4月に設置された知的財産高等裁判所においては、知的財産や技術に精通した専門委員等の活用を通 じて技術的専門性を高めることや、早期の事実上の統一的な判断による裁判の予見性を高めること、経済社会の実態にあった運用を行うことなどの各方面からの 期待に応えるべく、一層適正・迅速な裁判を実現することが望まれる。裁判官については、ビジネスの実情に関する知見や国際感覚に一層磨きをかけるため、民 間における研修や国際交流を活発に行うことが望まれる。また、知的財産高等裁判所に関する情報を国際的に発信することが望まれる。

A) 2004年4月から開始された専門委員制度について、2005年度は、制度利用者の信頼性等の確保を図りつ つ、同制度が効果的に機能することが望まれる。


(2) 証拠収集手続を拡充する

 刑事訴訟における営業秘密の保護の在り方について、2005年度も引き続き、産業界等のニーズの調査に基 づき検討を行い、憲法上、特に、裁判の公開原則との関係で可能であれば、必要に応じ制度を整備する。
(法務省、経済産業省)


(3) 裁判外紛争処理を充実する

i) 2004年の裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)により、裁判外紛争解決手続のうち民 間事業者の行う和解の仲介(調停、あっせん等)の業務を認証する制度が2006年5月末日までに実施されることになっている。知的財産に係る紛争処理手段 の選択肢を幅広く提供する観点から、裁判外紛争処理(ADR)機関の機能強化・活性化を図るため、2005年度も引き続き、知的財産に係る紛争処理を行う 民間事業者に対し、同認証制度の周知を図る。
(法務省、経済産業省)

A) 2005年度も引き続き、日本弁護士連合会、日本弁理士会等の関係者間で、知的財産の評価や標準化に関する 特許権等の判定や紛争処理など、利用の可能性のある分野について検討を行い、所要の措置を講ずるよう要請する。
(法務省、経済産業省)

B) 特許庁の判定制度とADR機関との適切な役割分担についても、司法制度改革におけるADRの在り方の検討を 踏まえて、2005年度も引き続き検討を行い、必要に応じ制度を整備する。
(法務省、経済産業省)


5.世界特許システムの構築に向けた取組を強化する


(1)日米欧三極特許庁間で特許の相互承認の実現を図る

 各国毎への特許出願は、出願人にとって手間と費用の両面で膨大な負担であり、また各国の特許庁にとっても 出願が増加する中、重複的な審査は非効率で国際的に無駄である。特に日米欧三極特許庁に対する特許出願は、全世界(約130万件)の約8割(約106万 件)であり、このうち約20万件が三極で重複的に審査されている。科学技術や企業活動はグローバル化を急速に進めており、もはや観念的な議論をしている段 階ではなく、具体的な行動を加速化する段階に達している。

 幸い日米欧三極特許庁間の努力により、既に審査基準の調和に向けた取組が相当に進みつつあり、またサー チ・審査結果についての相互比較調査や国際審査官協議が行われているほか、他庁のサーチ・審査結果を相互に有効活用するためのネットワーク(ドシエ・アク セス・システム)も既に稼働している。

 このような状況を受け、出願人及び特許庁の相互の利便性の向上を図るため、世界特許システムの実現に向 け、日本特許庁がリーダーシップを発揮し、2005年度から、制度・運用の調和を進めつつ、以下のような取組を具体化する。

ア)a)日本の審査が実際上米・欧より遅れており審査順番待ち期間が年々延びているという深刻な現実にかんがみ、出 願人の要請を踏まえ、日本と米・欧共通の特許出願のうち、米・欧特許庁で審査された特許出願について、日本特許庁が審査に際しサーチを重複的に行わずに特 許付与の諾否を決めることができるよう、「次世代型ドシエ・アクセス・システム」を構築し、2005年度から運用を開始する。(第1ステップ)

b)また、a)に並行して、日本が技術的に世界をリードする先端技術分野等における日本と米・欧共通の特許出願 について、出願人の申立てにより日本特許庁が速やかにサーチし、その結果を同システムにより米・欧特許庁に提供し審査に活用してもらう。(第1ステップ)

イ)a)次に、日米欧三極特許庁相互に、審査に際しサーチを重複的に行わずに第二庁が速やかに特許付与の諾否を決め ることができるよう、三極間のサーチ・審査結果の相互利用を進める「特許審査ハイウェイ制度」(仮称)を構築する。(第2ステップ)

b)また、a)に並行して、日米欧三極特許庁における審査・権利付与を均質で安定したものとするため、米・欧特 許庁が日本語文献についても十分にサーチできるよう相互協力を進める。(第2ステップ)

ウ)
 上記イ)の取組状況を見つつ、日米欧三極特許庁間で、一国で成立した特許は他国でも原則認めるよう、実質 的な特許相互承認制度を実現する。(第3ステップ)

エ)
 米・欧特許庁以外の外国特許庁への対象拡大についても、上記ア)〜ウ)と並行して進め、最終的に世界特許 を実現する。
(経済産業省)


(2) 日米欧三極特許庁の出願明細書の記載様式の統一を進める

 2005年度から上記(1)の日米欧三極特許庁間での取組と並行して、日米欧三極特許庁の出願明細書の記 載様式の統一(One Format)に向けた取組を、記載様式変更による出願人への影響等にも配慮しつつ、官民協力して進める。
(経済産業省)


(3)アジア地域の特許制度や運用の調和に向けた取組を進める

 中国、韓国をはじめとするアジア地域におけるビジネスの緊密化が進んでおり、将来的にはアジア地域の特許 制度の統一が期待されている。2005年度も引き続き、二国間や地域的な枠組みを通じて、アジア地域に対する審査協力や人材育成、情報化に関する協力を行 うとともに、アジア地域の特許制度や運用の調和に向けた取組を官民協力して進める。
(経済産業省)


(4)国際的な審査協力を推進する

 2005年度も引き続き、日米欧の三極特許庁間、さらにはその他の先進国との間においても、サーチ・審査 結果を相互に利用するプロジェクトや国際審査官協議を一層推進する。また、日本の出願人が国際的に権利取得を目指す出願について、特許協力条約(PCT) を利用した国際出願の一層の活用を促進するとともに、早期審査制度の活用を促し、審査結果情報を国際的に早期発信する。
(経済産業省)


(5) 特許協力条約の改革を推進する

 2005年度も引き続き、世界知的所有権機関(WIPO)におけるPCT改革の議論において、利用者の利 便性向上、国際調査機関・国際予備審査機関の先行技術調査や予備審査の一層の活用に向けた議論に精力的に取り組むことにより、国際的な権利取得の円滑化に つながる制度構築を進める。
(外務省、経済産業省)


(6) 途上国における権利取得を円滑化する

 2005年度も引き続き、我が国出願人の海外での権利取得を容易にし、十分な保護を図るため、途上国によ るPCTへの加入や我が国において特許となった場合に、その結果に基づき特許を付与する、いわゆる修正実体審査の制度上又は運用上の受入れなどを、二国間 や地域的な枠組みを通じて戦略的に推進する。また、途上国における特許法制度の整備や運用の改善に資するべく、専門家の派遣や研修生の受入、現地セミナー の開催、技術協力プロジェクトの実施などを通じて、引き続き人材育成や情報化に関する協力を推進する。
(外務省、経済産業省)


(7) 特許制度の国際的な調和を促進する

i) 2005年度も引き続き、WIPOにおける実体特許法条約に関する議論に精力的に取り組み、米国における出 願公開制度の全面導入、先発明主義の見直しやグレースピリオドの統一を含めた特許制度の国際的調和のための議論を促進する。
(外務省、経済産業省)

A)2005年度も引き続き、国際的な権利取得の円滑化を図るために、出願人の母国語による特許出願及びその翻 訳文における誤訳の訂正を第三者の利益とのバランスを考慮しつつ可能にする制度が各国において採用されるよう、WIPO等の場において、国際ルール作成の 議論を促進する。
(外務省、経済産業省)
(8)国際的な審査情報ネットワークを構築する

i)我が国の審査結果を海外に発信し、日米欧三極特許庁間や途上国への審査協力を推進するため、2005年度も 引き続き、我が国のサーチ・審査結果に関する情報を英語に機械翻訳し海外の特許庁において利用可能とする高度産業財産ネットワーク(AIPN)の利用環境 の充実を行うとともに、その利用の拡大を図る。また、2005年度も引き続き、我が国の公開特許公報の英文抄録を作成し、諸外国に無料で提供する。
(経済産業省)

A)我が国のサーチ・審査結果がAIPNを通じて他国の審査において有効に活用され、我が国出願人の権利取得の 迅速化、翻訳負担の軽減に資するように、2005年度も引き続き、英語への機械翻訳用の辞書の一層の充実を図り、特許庁保有の辞書を外部に公開するなど、 産業界での日英機械翻訳の活用を促進する。
(経済産業省)


6.知的財産の国際的な保護及び協力を推進する


(1) デザインの国際的な保護及び協力等を推進する

 我が国で創作されるデザインの国際的保護を図るために、2005年度も引き続き、アジア諸国等に対して、 日本の意匠審査結果の提供を通じた審査協力や意匠専門家の派遣や研修生受入を通じた体制整備のための協力を推進する。
(経済産業省)


(2)商標の国際的な保護及び協力を推進する

1)商標の国際登録制度の利用を促進する

 マドリッド協定議定書に基づく商標の国際登録制度は、商標の国際的な権利取得を容易にする制度であるた め、2005年度も引き続き、二国間や地域的な枠組みを通じて、加盟が遅れているアジア地域等の加入を働きかけるとともに、我が国出願人による利用を促進 する。

 また、同制度の発展につながるよう、2005年度に開始されるWIPOにおけるマドリッド・システムの見 直しの議論に積極的に参加する。
(外務省、経済産業省)

2) 途上国に対する人材育成等の協力を推進する

 途上国における商標法制度の整備や運用の改善に資するべく、専門家の派遣や研修生の受入、現地セミナーの 開催、技術協力プロジェクトの実施などを通じて、2005年度も引き続き、人材育成や情報化に関する協力を推進する。
(外務省、経済産業省)



3)商標制度の国際的な調和を推進する

i)2005年度も引き続き、WIPOにおける商標法条約改正に関する議論に精力的に取り組み、商標制度の利用 者の更なる利便性の向上につながるよう議論を促進する。
(外務省、経済産業省)

A) 海外で権利を取得する出願人の手続負担を軽減し、各国特許庁の業務負担の軽減に資するため、2005年度も 引き続き、日米欧の三極特許庁間で、指定商品・役務に関する表示の標準化を一層推進する。
(外務省、経済産業省)


(3)植物新品種に関する審査協力と制度整備を促進する

i)国際間における迅速・的確な権利保護を図るため、2005年度も引き続き、以下の取組を行い、将来的な相互 承認制度の導入等を検討し、必要に応じ制度を整備する。

a)国際的な審査の調和のための審査基準の見直し等を行う。

b)特に、中国、韓国等の間で審査官等による定期的な協議を実施し、審査協力を推進する。
(外務省、農林水産省)

A)アジア地域等における新品種保護制度の整備の充実を図るため、2005年度も引き続き、植物新品種保護国際 同盟(UPOV)を通じた制度整備への支援や専門家を養成するための研修を実施するとともに、自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)の交渉の場 など、様々な機会を利用して、制度の整備及び充実について働きかけを行う。
(外務省、農林水産省)

B)2005年度から、中国及び韓国に官民合同ミッションを派遣し、保護対象植物の拡大等品種保護制度の充実や 運用の改善を働きかける。
(農林水産省)


(4) 国際的な紛争処理に係るルールの整備を促進する

 インターネット等による国境を越えた知的財産権の行使や紛争処理に関する国際ルールを明確化するため、 2005年度も引き続き、知的財産権の有効性や侵害等に関する訴訟の国際裁判管轄等に関する議論に積極的に取り組む。
(法務省、外務省、文部科学省、経済産業省)


(5) 自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)等を活用する

 自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)や投資協定などの二国間・複数国協定の交渉の機会におい て、交渉相手国の知的財産制度の整備や実効的なエンフォースメントの確保を促し、我が国産業界等の要望に沿ったTRIPS協定等の規定以上の知的財産の保 護が達成されるよう、2005年度も引き続き積極的に働きかける。
(外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)


(6)知的財産に関連する法律の英訳を国際的に発信する

 我が国の知的財産に関連する法律などが国際的に理解され、利用しやすくするため、2005年度も引き続 き、関係府省や関係団体と協働しつつ、正確かつ統一された英訳の国際的な発信を推進する。


(内閣官房司法制度改革推進室、法務省、文部科学省、
農林水産省、経済産業省、関係府省)

U.模倣品・海賊版対策を強化する

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 中国をはじめとする海外市場においては、模倣品・海賊版により被害を受ける我が国企業があらゆる業種で増加してきている。模倣内容も商標から意匠・特許・種苗にまで拡大し、高度技術化、大規模流通化が進んでいる。模倣品・海賊版は製造国・地域から世界中に拡散し、特に近年、模倣品・海賊版と犯罪組織やテログループとの繋がりが指摘されるなど、模倣品・海賊版問題は世界各国が協力して取り組むべき問題である。また、我が国においても、税関における模倣品・海賊版の輸入差止件数が近年急増していることから、模倣品・海賊版の国内市場への流入も強く懸念されている。
 模倣品・海賊版の問題は、権利者が本来得るべき利益を奪い、新たな知的財産の創造意欲を減退させるとともに、消費者の企業ブランドへの信頼を低下させ、消費者自身の利益を阻害するものである。また、模倣品・海賊版は国際市場における企業間の適正な競争を著しく阻害するとともに、消費者の健康や安全に被害を及ぼすものである。
 我が国が「知的財産立国」を目指す上では、国内はもとより海外においても我が国企業を模倣品・海賊版による被害から守るよう、官民挙げて強力な対策を講ずることが強く求められている。


1.外国市場対策を強化する

 海外市場における模倣品・海賊版による被害は近年、高度技術化・大規模流通化が進展するとともに、アジアから世界中に拡散している。我が国企業も自己の利益を守るべく侵害発生国・地域で活動しているが、侵害発生国・地域の当局への取締要請や制度改善要求は、企業の努力だけでは難しい。特に中小企業にとっては手続、人材、費用などの面で負担が過大であり、なすすべを持たないというのが実態である。このため政府による被害実態に応じた適切な支援が強く求められている。
 特に、近年は犯罪組織の模倣品・海賊版の流通への関与が懸念されており、さらには模倣品・海賊版の販売による不正な利益が犯罪組織やテログループの資金源となっていることが指摘されるなど、模倣品・海賊版問題は世界各国が協力して取り組むべき課題となっている。
 また、不良な製品が世界各国に拡散し、健康に害を及ぼしたり、爆発事故を起こしたりして消費者の健康や安全が脅かされるといった問題も引き起こしている。
 このような状況にかんがみ、模倣品・海賊版問題を、世界の競争秩序の維持、日本の産業競争力強化の観点から知的財産の保護問題としてとらえることはもとより、世界の通商問題として再認識し、対策を強化すべきである。


(1)侵害発生国・地域への対策を強化する
1)海外市場での模倣品・海賊版対策を強化する
@)模倣品・海賊版対策を我が国外交上の重要施策と位置付け、2005年度も引き続き、全ての在外公館において、知的財産権侵害対応マニュアルを活用しつつ、大使自ら先頭に全館挙げて、我が国企業の個別の被害実態の把握やそれに対する取締当局の対応状況のフォロー、取締当局への要請などの支援活動を積極的に行うとともに、企業等が利用しやすいよう配慮する。
(外務省)
A)2005年度も引き続き、企業からの海外での権利取得や権利行使に関する相談に応じ、対応方法や手続等に関する助言や調査会社等の紹介などの具体的な支援を在外公館や日本貿易振興機構(JETRO)等において実施する。
(外務省、経済産業省)
B)2005年度も引き続き、模倣品・海賊版被害にあった場合の対応策や事例など、我が国の企業が侵害国において訴訟提起などの権利行使をするために必要なノウハウなどの情報を収集し、資料としてまとめ、企業へ配布する。
(外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
C)2005年度も引き続き、我が国の企業による諸外国での模倣品・海賊版対策の取組を支援するため、国際知的財産保護フォーラム、コンテンツ海外流通促進機構、不正商品対策協議会等の民間団体の諸外国での活動を支援する。
(警察庁、外務省、文部科学省、経済産業省)
D)2005年度から、海賊版の摘発活動を容易にするため、コンテンツ海外流通マーク(CJマーク)の普及や調査・摘発活動を支援する。
(警察庁、文部科学省、経済産業省)
E)2005年度も引き続き、模倣品・海賊版に関する国際的な紛争を効果的に解決するため、民間業界団体等による国際的な仲裁・調停機関の設立、定期的な意見交換、その他協力活動を奨励する。
(経済産業省)
2)侵害状況調査制度を活用する
@)政府においては、海外における我が国企業の知的財産権侵害による被害の重大性にかんがみ、2005年度から、「知的財産権の海外における侵害状況調査制度」の活用を促進する。
(外務省、経済産業省、関係府省)
A)2005年度から、定期調査や事業者からの申立に基づく調査等を基に、諸外国の模倣品・海賊版対策に関する報告書を作成・公表するとともに、侵害発生国・地域に対して問題の改善を強力に要請する。
(外務省、経済産業省、関係府省)


3)侵害発生国・地域に対し具体的要請を行う
@)2005年度も引き続き、中国をはじめとするアジア諸国などの侵害発生国・地域に対し、デザイン模倣対策の強化、執行の強化、再犯防止の強化、周知商標の認定促進、水際における権利者負担の軽減など、具体的な制度改善や取締りの実効ある強化について閣僚レベルをはじめ様々なレベルで強力に要請する。
(外務省、文部科学省、経済産業省、国土交通省、関係府省)
A)海外における模倣品・海賊版を撲滅するためには、知的財産を重視する風土を醸成し、自ら模倣品・海賊版を生まない国となることが肝要である。このため、2005年度も引き続き、侵害発生国・地域において対策に取り組む当局や団体との連携を強化するとともに、模倣品・海賊版が社会悪であることを侵害発生国・地域の国民が広く認識するよう、啓発活動の支援に取り組む。
(外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)


4)模倣品・海賊版の被害の実態を調査する
 中国をはじめとする海外市場において、模倣品・海賊版の被害を受ける我が国企業が増加していることにかんがみ、2005年度も引き続き、模倣品・海賊版による被害の実態等を調査・分析し、その結果を広く公表するとともに、国際交渉にも活用する。
(外務省、文部科学省、経済産業省)


(2)二国間の枠組みを活用する
@)2005年度も引き続き、アジア諸国との自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)や投資協定・税関相互支援協定などの二国間・複数国間協定に、知的財産関連の法制度の整備のみならず、実効的なエンフォースメントの確保のための条項を盛り込むよう積極的に交渉する。また、エンフォースメントも含めた実際の執行状況等を協定上のメカニズムの場等を利用してレビューする。
(外務省、関係府省)
A)2005年度も引き続き、二国間協議においては、我が国企業の被害実態などを取り上げて取締強化や制度改善を要請するなど、戦略的かつきめ細かく対応する。
(外務省、関係府省)


(3)欧米との連携を強化する
1)EU・欧州各国との連携を強化する
 2005年5月に開催された日・EU定期首脳協議において、アジアにおける模倣品・海賊版問題に対応するため、「アジアにおける知的財産権の執行に関する日・EU共同イニシアティブ」を更に推進していくことが合意された。2005年度も引き続き、侵害発生国・地域への働きかけをより有効に行うため、首脳間、閣僚間をはじめとする日・EU間の定期協議や個別協議などを積極的に活用するとともに、上記イニシアティブに基づく作業計画に基づき取組を推進し、EUとの連携を強化する。
 また、EUとの連携を効果的に行うために、日仏間をはじめ欧州各国との二国間協議など欧州各国との連携を進める。
(外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)


2)米国との連携を強化する
 2005年度も引き続き、アジアにおける知的財産権の保護を推進するため、首脳間、閣僚間をはじめとする日米間の二国間協議などを積極的に活用し、米国との連携を強化する。
(外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)


(4)多国間の取組をリードする
@)2004年6月のシーアイランド・サミットの議長総括において、知的財産の不正使用及び海賊行為と闘う必要性が認識された。2005年度も引き続き、G8サミットをはじめとして、経済協力開発機構(OECD)、アジア太平洋経済協力(APEC)、アジア欧州会合(ASEM)、世界貿易機関(WTO)、世界知的所有権機関(WIPO)等の国際機関・フォーラムにおいて、模倣品・海賊版問題が首脳をはじめハイレベルで取り上げられるよう、準備や働きかけを行う。
(外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
A)OECDにおいて検討が開始されている模倣品対策プロジェクトについて、2005年度も引き続き、諸外国と連携しつつ積極的に議論を推進する。
(外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
B)APECにおいて、2004年11月の首脳宣言、閣僚共同声明の中に知的財産権の保護を進めることが盛り込まれ、我が国が提案及び策定をリードした「知的財産権政策進捗マッピング」が合意された。2005年3月には、模倣品・海賊版の取引の削減、インターネット上の著作権侵害の削減、模倣品・海賊版対策のための協力強化等を柱とする「APEC模倣品・海賊版対策イニシアティブ」を日米で共同提案し、同年6月の貿易担当大臣会合において合意された。2005年度は、閣僚会議に向けて同イニシアティブに提示されたガイドライン策定の作業を行う。また、引き続き知的財産権政策進捗マッピングの活用やAPEC知的財産権包括戦略の推進、各国・地域における知的財産権サービスセンターの早期設置について、積極的な働きかけを行う。
(外務省、経済産業省、関係府省)
C)ASEMにおいて、2004年10月に開催された第5回首脳会合の議長声明及び経済宣言の中に、今後、知的財産権の分野での活動を強化することが盛り込まれた。2005年度は、首脳会合で採択された事項を着実に実施するため、ASEM貿易円滑化行動計画の下、知的財産権分野での活動に積極的に取り組むとともに、欧州とも協力し、知的財産権保護のためにアジア・ 欧州間で協力する。
(外務省、関係府省)
D)2005年度も引き続き、WTOの対中国経過的レビューメカニズム及び知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)の法令レビュー、貿易政策検討制度(TPRM)を積極的に活用し、アジア諸国・地域に模倣品・海賊版を取り締るよう強力に要請する。
(外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
E)2005年度も引き続き、WIPOにおいて、模倣品・海賊版のエンフォースメント問題を主要議題として取り上げ、模倣品・海賊版の取締りをWIPO加盟国が一体となって取り組むべき問題であるとの認識を加盟国間で共有するよう積極的に取り組む。
(外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)


  
(5)模倣品・海賊版拡散防止条約を提唱し実現を目指す
 模倣品・海賊版問題は、特定の国に止まらず世界各国に拡散しており、また犯罪組織やテログループの資金源となったり、消費者の健康や安全を脅かす問題であることにかんがみ、TRIPS協定を補完する実効性のある措置として、各国と連携しつつ、世界税関機構(WCO)、国際刑事警察機構(インターポール)などの国際機関と協力して、模倣品・海賊版の拡散防止を明確な国際規範とする条約を提唱し、早期にその実現を目指す。このため、2005年度は、例えば、以下のような項目をはじめとして日本提案を幅広く検討し、各国との協議を行う。
a)模倣品・海賊版の輸出・通過の禁止と水際措置
加盟国は、模倣品・海賊版が製造国・地域から世界中に拡散することを防止するため、模倣品・海賊版の輸出・通過を禁止する。税関当局は、輸出・通過されようとしている模倣品・海賊版を没収する。
b)個人輸入の禁止と水際措置
加盟国は、個人による模倣品・海賊版の輸入を禁止する。税関当局は、輸入されようとしている模倣品・海賊版を没収する。
c)形態模倣行為の禁止と水際措置
加盟国は、不正競争からの有効な保護を確保するために、形態模倣行為を禁止する。税関当局は、輸出又は輸入されようとしている形態模倣品を没収する。
d)水際でのマーク外し
税関当局は、不正商標商品について、例外的な場合を除くほか、輸入者が違法に付された商標を単に除去することをもって、当該商品の輸入を認めてはならない。
e)犯罪収益の没収及び犯罪人の引渡
加盟国は、知的財産犯罪について「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」に倣った規定を置くこと等により、当該犯罪の収益の没収及び犯罪人の引渡を可能とする。
f)協力・運用・紛争解決
当局間の適切な情報交換や相互協力を推進するとともに、運用状況の報告や紛争解決のメカニズムを整備する。
(外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)


(6)アジア諸国の模倣品・海賊版対策の能力構築を支援する
@)開発途上国における貿易投資の拡大と経済発展のために知的財産権の適切な保護が不可欠であることにかんがみ、2003年8月に決定されたODA大綱を踏まえ、2005年度も引き続き、個別の援助計画において必要性及び優先度に応じ開発途上国の知的財産制度の整備・執行の強化を支援する。
(外務省、関係府省)
A)模倣品・海賊版対策に積極的に取り組むアジア諸国の政府関係者や民間の団体・企業等に対し、各府省が実施している知的財産権の保護に関する能力構築(キャパシティービルディング)を、2005年6月に策定された「知的財産保護協力・能力構築支援戦略」に基づき、2005年度から、我が国企業と協力しつつ、関係府省や国際協力機構(JICA)、JETRO等の関係団体が協調して実施する。 また、毎年度終了後に事業内容のレビューを行う。
(警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、
文部科学省、農林水産省、経済産業省)


2.水際での取締りを強化する

 侵害発生国・地域において製造された特許権侵害品等が日本国内に流入しており、水際での特許権侵害品等の取締りの強化が緊急の課題となっている。水際取締りに関する制度整備は、2005年の関税定率法の改正により、税関が侵害疑義貨物を発見した場合に、一定要件の下、権利者の申請により税関がサンプルを権利者に提供し、分解検査させることができるようになるなど、着実に進められている。 しかしながら、特許権侵害品等は製品の外観のみから侵害を判断することは困難な事案が多いほか、輸入者が法的・技術的問題について反論を行う事案もあるため、権利者・輸入者の正当な利益を損なわないように配慮した上で、当事者の意見、専門家の関与等により特許権侵害品を効果的に差し止める制度を整備する必要がある。 また、商標権侵害品等の取締りについては、税関の努力により、最近の偽ブランド品などの知的財産権侵害品の輸入差止実績は大幅に増加しているが、手口の巧妙化や流通形態の多様化により、依然として模倣品・海賊版が国内に大量に流入している。このような状況を打開し、偽ブランド品等の模倣品を水際で締め出すためには、法制度の整備も含め、水際での取締りを更に強化する必要がある。


(1)侵害判断・差止めを専門的かつ簡便・迅速に行う制度を確立する
 水際での特許権等の侵害品には、外観のみから判断が可能なものから、当事者の主張を基にした専門的な侵害判断を要するものまで、多様な事案が含まれる。また、模倣品・海賊版対策はそのスピードが重要であり、特に中小企業にとっては手続や費用の負担の少ないことが実際上不可欠である。さらに、公正で透明な判断手続の整備や両当事者に対する意見聴取の機会の確保等が必要との意見も出されている。このため、権利者が事案の性質や権利者のニーズに応じて多様な手続を活用できるよう、2005年度中に、水際対策における技術判定能力の重要性や制度の利便性・手続の公平性等にかんがみ、これまでの累次の制度改正の実施状況等を踏まえ、技術等を専門的に判断するための制度的仕組みについて更に検討を行い、必要に応じ法制度等制度を整備する。
(財務省、農林水産省、経済産業省)


(2)裁判所の仮処分命令を活用する
 税関長は、侵害認定手続期間内に裁判所の仮処分命令があった場合には、特段の事情がない限り当該命令における侵害判断と同一の侵害判断に基づいて侵害認定が行われていること、及び水際における迅速な救済の必要性にかんがみ、2005年度も引き続き、裁判所には、仮処分命令が迅速になされるよう訴訟運営面での対応が望まれる。


(3)当該輸入者に関係なく同一製品の輸入を差し止める
 侵害品差止めの迂回を防止し、その実効を担保する観点から、一旦侵害品と判断された後に当該侵害品と同一品と疑われる物品が輸入されようとする場合には、同様に差止める必要がある。2005年度から、輸入者の如何を問わず、侵害品との同一性やライセンスの有無等を判断することにより輸入の差止めが簡便かつ迅速になされるよう、税関での運用を徹底する。
(財務省)


(4)裁判外紛争処理機関を活用する
 2005年度から、特許侵害事案の多様性にかんがみ、権利者、輸入者の両当事者が日本知的財産仲裁センター等の裁判外紛争処理(ADR)機関を活用する場合、その結果により侵害の判断が行われるよう、税関での運用を徹底する。
(財務省)


(5)模倣品等の流通態様に応じた取締りを強化する
1)模倣品・海賊版の税関での取締りを強化する
@)並行輸入や個人輸入と偽った輸入や、個人による小口貨物を利用した輸入が、国内に偽ブランド品や海賊版が氾濫する原因の一つとなっている現状を踏まえ、それらの取締りを一層強化するよう、2005年度も引き続き、税関と権利者との連携の強化、税関の検査設備や情報システムの強化、必要な税関職員の確保、税関職員の能力の向上を進める。
(財務省)
A)模倣品・海賊版が侵害品発生国・地域から第三国で積み替えて輸出を行うなどの新たな手口が発生している現状を踏まえ、税関が輸出・通過貨物についても水際で機動的に取締りを実施できるよう、2005年度から、模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)の議論と並行して制度面から幅広く検討し、必要に応じ法改正等制度改善を行い、税関での取締りを強化する。
(法務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)


2)形態模倣品の取締りを強化する
 形態模倣品、周知表示の混同を惹起する製品及び著名表示を冒用する製品を輸入禁制品に追加する関税定率法改正案が2005年通常国会で成立し、商標権侵害品に付されたマークを税関で切除することにより通関する脱法行為の取締りも可能となるほか、形態模倣品等に関する処罰規定を導入し、商品の内部構造の模倣やマーク切除による脱法行為の取締りを可能とする不正競争防止法改正案が2005年通常国会に提出されている。同法案が成立した場合には、これらの内容について周知を徹底するとともに、形態模倣品等の輸入について税関での取締りを強化する。
(財務省、経済産業省)


3)部分品・部品取外しによる脱法行為に対する取締りを強化する
 意匠権侵害品の部品を税関で取り外すことにより通関する脱法行為を防止するため、2005年度も引き続き、意匠法について検討し、必要に応じ法改正等制度改善を行い、税関での取締りを強化する。
(財務省、経済産業省)


(6)個人輸入等の取締りを強化する
 模倣品・海賊版の個人輸入や個人所持は、現状では法律で禁止されておらず、また模倣品・海賊版に対する国民の意識も極めて低い。このため、模倣品・海賊版の個人輸入・個人所持が社会悪であることを国民に明確にするとともに、模倣品・海賊版が氾濫することを防止するため、2005年度中に、模倣品・海賊版の個人輸入・個人所持の禁止について更に検討を行い、必要に応じ新法の制定等法制度を整備する。
(警察庁、法務省、財務省、文部科学省、経済産業省)


3.国内での取締りを強化する

 インターネットオークション等による大量の偽ブランド品、偽CD・DVDの売買や映画や音楽などファイル交換ソフトを用いた著作権侵害が横行しているほか、模倣品により消費者の健康に害を及ぼしたり、安全が脅かされるといった問題も起こってきている。また、個人の肖像等を不正に使用した商品の売買なども増えている。このように、国内において模倣品・海賊版の被害がますます深刻化している状況にかんがみ、国内においても取締りを一層強化する必要がある。  また、模倣品・海賊版の海外での製造を防ぐため、国内におけるノウハウ等の流出を防止するための対策について、法制度の整備を含め、強化する必要がある。


(1)インターネットを利用した侵害の対策を総合的に推進する
1)インターネットオークションを通じた模倣品・海賊版の販売による消費者の被害を防止する
 インターネットオークションを通じた模倣品・海賊版の販売は犯罪行為であり、アジア諸国に知的財産権の侵害行為に対する取締り(エンフォースメント)の強化を求めているところであるが、国内においても大量の模倣品・海賊版の販売が行われている。こうした消費者の被害及び知的財産権の侵害の深刻さとそれに対する対策の緊急性にかんがみ、2005年6月末を目途に、以下を内容とする対策を強力に実施する。また、その実施状況や模倣品・海賊版の被害の状況等を注視し、対策の効果について随時検証するとともに、それらを踏まえ、個人情報の保護、インターネットオークションの健全な発展やオークション事業者間の公平性、オークション事業者と出品者、権利者との間の利害調整の問題などにも配慮しつつ、さらなる対策の必要性について総合的に検討を行い、必要に応じ法制度等を整備する。
 イ)特定商取引に関する法律(特定商取引法)の運用を強化する。
a)特定商取引法の規制対象となる「販売業者」の判断基準について、インターネットオークションにおける模倣品・海賊版の被害等の実態を踏まえ作成し、所要の手続に則り、同法のガイドラインとして早急に具体化する。その際、例えば、模倣品・海賊版の販売が頻発する商品分野毎に数量的基準を示すなど、できる限り具体的に定性的及び定量的な判断要素を明らかにする。
b)同ガイドラインの周知徹底を図るとともに、特定商取引法に違反する販売業者に対する法執行を強化する。
c)特定商取引法に違反する販売業者に対する取締りを強化する。
 ロ)次のような項目を内容とするオークション事業者による業界自主規制ルールを整備し、自主的取組を強化するよう促す。
a)販売業者に対する特定商取引法の表示義務の遵守を強く働きかける
b)特定商取引法に違反する販売業者であることが判明した場合のオークションサイトへの出品の拒否、オークションサイト上の出品情報の削除や出品契約の解除を行う
c)販売業者に該当すると判明している場合は個人として出品できないようにするシステム上の措置を講ずる
d)権利者から「権利侵害」の申告があった場合に出品情報を削除する
e)全出品者に関する氏名(名称)、連絡先等の情報の取得及び権利者から「権利侵害」の申告があった場合に当該出品者の氏名(名称)、連絡先等の情報を法令に従って速やかに権利者に対して開示する
f)模倣品・海賊版問題に関する対応窓口を設置する
(警察庁、経済産業省、関係府省)


2)オークションサイト等を通じた模倣品・海賊版の取締りを強化する
 2005年度は、権利者等、オークション事業者及び捜査機関等が情報を共有するスキームを早期に構築し、オークションサイトを通じた模倣品・海賊版の取締りの効率化及び強化を図る。また、オークションサイト等を通じて発注される模倣品・海賊版の輸入を税関が積極的に取り締まる。
(警察庁、財務省)


3)古物営業法における取締り及び犯罪抑止対策を強化する
 2005年度も引き続き、悪質な出品者の取締りを強化するとともに、オークション事業者に対し、出品者の本人確認の徹底等古物営業法に定める遵守事項等についての指導を強化する。
(警察庁)


4)ファイル交換ソフト等を用いた著作権侵害を取り締まる
 ファイル交換ソフト等を用いて音楽等を送信するサービスにより著作権侵害の問題が生じていることにかんがみ、2005年度も引き続き、ファイル交換 ソフト等を用いた著作権侵害を取り締まる。
(警察庁)
(2)肖像等を不正に使用した商品を取り締まる
 芸能人、スポーツ選手等の肖像や氏名を不正に使用した商品の売買を取り締まるため、著名表示の冒用行為への刑事罰の導入などを規定した不正競争防止法改正案が2005年通常国会に提出されている。同法案が成立した場合には、2005年度中に想定されるようなケースを示すなどして同法の周知を徹底するとともに、違反行為の取締りを強化する。
(警察庁、法務省、経済産業省)


(3)ノウハウ等の海外への流出を防止する
 ノウハウ等が技術者等を通じて海外に流出することを防止するため、不正の競争の目的で、営業秘密を日本国外に持ち出して使用・開示する行為及び退職者が営業秘密を使用・開示する行為に対する刑事罰を拡充することなどを規定した不正競争防止法改正案が2005年通常国会に提出されている。同法案が成立した場合には、2005年度中に「営業秘密管理指針」を改訂し周知を徹底する。
 また、対象となる秘密を明示した形での秘密保持契約の慣行の定着を促し、2005年度から、実施状況を調査し、その結果を踏まえ、契約や不正競争防止法違反による民事的救済によっても保護が不十分である場合には刑事罰を科す方向で早急に検討し、必要な制度整備を行う。
(警察庁、法務省、経済産業省)


(4)警察による取締りを強化する
@)模倣品・海賊版の供給ルートを遮断するため、2005年度も引き続き、模倣品・海賊版の密売等により不正な利益を得ている犯罪組織の実態を的確に解明し、その取締りを強化するとともに、この種の犯罪と国際テログループの資金源活動のつながりを視野に入れた警察活動を推進する。
(警察庁)
A)2005年度も引き続き、警視庁が全国に先駆けて発足させた模倣品の鑑定能力を有する商標権侵害品真贋予備鑑定捜査員制度の活用等様々な捜査手 法を駆使し、模倣品・海賊版の販売事犯の取締りを強化する。
(警察庁)
B)2005年度も引き続き、不正商品対策協議会をはじめとする各業界団体と警察当局との連携をより強化し、確度の高い情報に基づいた効果的な取締りを実施する。
(警察庁)


(5)育成者権の侵害対策を強化する
 個々の植物品種の育成者による権利侵害の調査や侵害の立証には限界がある。このため、植物新品種の不正な利用を防止し、育成者権の適切な保護を図ることを目的として、2005年度から、種苗管理センターに品種保護対策官(品種保護Gメン)を設置し、国内外における権利侵害の実態調査等を行うとともに、侵害の判定等を支援するための品種類似性試験(比較栽培、DNA分析)を引き続き実施することにより、植物品種の育成者権の侵害対策を強化する。
(農林水産省)


4.官民の連携を強化する

 政府の模倣品・海賊版対策の関連府省は多岐に渡り、関係府省間で被害実態に関する情報の共有や政府一体となった取組が遅れているのが現状である。今後、模倣品・海賊版問題に対し国を挙げて外国市場対策、水際及び国内での取締りを進めていく上では、関係府省がその垣根を越え強力に連携するとともに、企業にとってもより利便性の高い体制を整備することが不可欠である。
 また、政府のみならず関連団体においても、国内での団体間の連携はもとより諸外国の団体との連携も強化するとともに、政府とも一体となって効果的な模倣品・海賊版対策を実施することが求められている。


(1)政府内の連携を強化する
@)外国市場対策や水際及び国内での取締りに関し、関係府省が一体となって対策に取り組むよう、2005年度も引き続き、以下のような対策に取り組み、関係府省の連携を強化する。
a)政府模倣品・海賊版対策総合窓口の周知徹底と連携の強化
 政府模倣品・海賊版対策総合窓口の周知を徹底するとともに、権利者や企業等からの相談に対し、迅速に対応するために関係府省の連携を強化する。2005年度から、中小企業知的財産権保護対策事業に関する受付も行う。また、総合窓口年次報告書を毎年度作成する。
b)関係府省の情報共有
 関係府省で模倣品・海賊版に関する情報を共有できるようネットワークやデータベースを構築する。
c)取締当局による情報の活用
外国市場での模倣品・海賊版の製造・流通情報や被害情報等を警察・税関が活用し、当該模倣品等の国内市場への流入防止、国内からの排除を進める。
d)政府の政策への反映
国内外で収集・分析した各種情報に基づき模倣品・海賊版対策に関する政策を立案・実施するとともに、その結果を関係者にフィードバックする。
e)関係府省の政策調整と総合的実施
各種対策については、関係府省間で相互に調整を行うとともに、「模倣品・海賊版対策関係省庁連絡会議」を機動的に開催し、政策調整を密に行い、総合的に実施する。
(警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、
文部科学省、農林水産省、経済産業省) 
A)権利取得や模倣品対策の助言、現地の弁理士・弁護士・調査機関の紹介、個別案件の相談や関係府省への連絡、侵害国政府当局への要請など、企業の相談に応じるため、2005年度も引き続き、JETRO、日本商工会議所、日本弁護士連合会、弁護士知財ネット、日本弁理士会及び発明協会等で構築したネットワーク(通称:ニセモノ相談ネット)の積極的な活用を促進する。
(経済産業省、関係府省)
B)水際取締り及び国内取締りの双方がより効果的に行われるよう、2005年度も引き続き、模倣品・海賊版対策情報連絡会議を通じ、警察、税関の情報交換や連携を進める。
(警察庁、財務省)


(2)侵害発生国・地域の当局との当局間の連携を強化する
 侵害発生国・地域の当局(権利付与官庁、警察当局、税関当局、行政取締当局、司法当局)との連携を具体的に強化するため、2005年度も引き続き、日常的な情報交換に加え、相互支援協定の締結や当局間での定期協議などを進める。
(警察庁、外務省、財務省、文部科学省、経済産業省)


(3)官民・民民の連携を強化する
@)侵害発生国・地域の当局との交渉や働きかけを効果的に行うため、2005年度も引き続き、官民合同ミッションの実施等を通じ官民の連携を強化する。
(文部科学省、経済産業省、関係府省)
A)2005年度も引き続き、QBPC(商標保護委員会)やBSA(ビジネス・ソフトウエア・アライアンス)といった諸外国の模倣品・海賊版対策団体と国内の模倣品・海賊版対策関連団体間の連携の強化及び国内での関連団体間の連携の強化を積極的に奨励する。
(文部科学省、経済産業省、関係府省)
B)2005年度も引き続き、2004年11月に日中間の電子電気業界による意見交換等を受けて開始された双方による実態調査や専門家育成セミナー等の取組を奨励する。
(経済産業省)


(4)民間企業の体制を強化する
@)2005年度も引き続き、関係府省がより緊密に連携を取りつつ、企業等を対象にした模倣品・海賊版対策のためのセミナーを全国各地で開催する。
(警察庁、財務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
A)2005年度も引き続き、主要業界団体に模倣品・海賊版対策に係る委員会の設置などの組織の充実・強化を奨励するとともに、我が国企業に海外事業拠点の模倣品・海賊版対策のための体制の強化を奨励する。
(文部科学省、経済産業省)


(5)国民啓発を強化する
 模倣品・海賊版を撲滅するためには、模倣品・海賊版が社会悪であることを国民に広く認識してもらうことが重要であり、そのため、2005年度も引き続き、国民への啓発活動を進めるとともに、学校教育等を通じ適切な消費行動等についての教育を進める。
(警察庁、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)







第3章 知的財産の活用

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T.知的財産を戦略的に活用する

 「知的財産立国」を実現し、我が国産業の国際競争力を向上させるためには、企業等が知的財産や技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の目に見えない企業の知的資産を「価値創造の源泉」として正確に認識することが重要である。なかでも知的財産の活用を事業活動の中核に据え、それを最大限発揮できるよう知的財産の創造や保護を図ることが重要である。そのためには、政府において、知的財産の創造・保護・活用の知的創造サイクルが早く大きく回るような基盤を構築するとともに、知的財産の有効活用が促進されるよう制度整備や支援を行うことが必要である。
 このため、以下の施策を講ずることにより、企業における知的資産重視の経営を促し、知的財産の戦略的な活用に向けて企業を支援するとともに、知的財産の活用を促進するための制度整備を総合的に推進する。また、我が国の企業が有する技術や知的財産の価値実現の最大化に資するだけでなく、我が国はもとより世界中の消費者にとっても有益な国際標準化を支援していくこととする。
1.企業の戦略的経営を促進する
(1)知的資産重視の経営戦略を推進する
 企業は自らの「将来の経済的便益を生み出す競争優位の源泉」を正確に認識し、その競争力の源泉たる人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の見えざる「知的資産」を重視した経営(「知的資産経営」)に取り組むことにより、持続的な収益を生み出す経営に取り組んでいくことが重要である。とりわけ、技術立社を目指す企業は、知的財産を「知的資産経営」の中核に位置づけ、事業戦略、研究開発戦略、知的財産戦略を三位一体で取り組むことが重要である。2005年度以降、このような「知的資産経営」の促進等につき検討を行う。
(経済産業省)
(2)知的資産経営の情報開示を促進する
 「知的資産経営」に取り組んでいる企業が、証券市場における投資家等を含めたステークホルダーから適切な評価を受けることができるよう、2005年度は、自主的な知的資産経営に関する情報開示の在り方について、以下の取組を行う。
@)知的資産重視の経営を行っている企業が、投資家を含むステークホルダーからその取組について適切な評価を受けられるよう、2005年度中に「知的資産経営開示ガイドライン」の策定を行う。
(経済産業省)
A)特に知的財産については、知的資産経営における位置づけをさらに具体化するものとしての位置づけ、目的を明確にした上で、経済産業省が作成・公表した「知的財産情報開示指針」(2004年1月公表)を踏まえた「知的財産報告書」の作成企業が100社を超えるよう、2005年度も引き続き、普及啓発を行う。その際、「知的財産報告書」を年次報告書とともに継続的に発行すること、様々なメディアや電子媒体を活用し広く一般に利用しやすく提供すること、「知的財産報告書」を用い投資家向けの説明会を開催すること等、企業に対し「知的財産報告書」の効果的な利用方法について啓発を行う。さらに、各企業の「知的財産報告書」が広くかつ正確に投資家に評価されるよう、効果的な利用方法等について投資家や各証券市場に対しても普及啓発を行う。
(経済産業省)
B)研究開発・特許関連情報の有価証券報告書等における任意記載の方法について、「知的財産報告書」の活用を含め、2005年度も引き続き検討を行い、必要に応じその明確化を図る。
(金融庁、経済産業省)
(3)知的資産指標を策定する
 企業の知的資産は百社百様であるため、それを内部管理し、活用し、開示するための知的資産指標は各企業によって異なるものの、共通的に利用される指標も存在すると考えられる。この認識に基づき、2004年度は知的財産戦略指標の策定に向け整理を行ったが、2005年度は、知的資産指標を策定し、それが実際に企業で活用されるよう促進する。
 なお、策定された指標は、その数値自体に意味があるものではなく、各企業の知的資産経営のやり方によって指標の重要性は異なる。
(経済産業省、関係府省)
(4)知的財産による資金調達の多様化を図る
@)2005年度も引き続き、エクイティ投資、プロジェクトファイナンス、政策金融等、知的財産を活用した多用な資金調達制度の利用促進を図る。
(経済産業省、関係府省)
A)知的財産権者による新たな発明又は著作物の創作等に資するため、当該知的財産権者の知的財産権を他の事業者に移転、譲渡又は利用許諾等を行う特定目的会社等に対する日本政策投資銀行の融資制度を創設したが、2005年度は、想定される融資スキームや過去の融資事例を公表し、その利用促進を図る。
(総務省、財務省、文部科学省、経済産業省)
B)知的財産を経営戦略上重要と位置付ける中小・ベンチャー企業を含む事業者に対して、知的財産を活用した資金調達が円滑になされるよう、2005年度も引き続き、日本政策投資銀行が行う知的財産担保融資の事例を公表し、その利用促進を図るとともに、民間における同様の取組も積極的に奨励する。
(財務省、経済産業省)
(5)知的財産を活用したビジネスの担い手創出を支援する
 企業や大学等公的研究機関の知的財産管理や知的財産戦略能力の補完を図る観点から、特許流通・技術移転のための人材、情報のネットワークの構築等知的財産の活用のための基盤整備を図るとともに、特許流通・技術移転の専門家養成、専門家のネットワーク化などを目的とした国際特許流通セミナーの開催、知的財産権取引業者のデータベース化及び公開等について2005年度も引き続き実施する。特許情報検索、特許マップ作成、知的財産戦略プラン作成、マッチング交渉、ライセンシング交渉等の知的財産ビジネスを活性化するための施策を2005年度も引き続き実施する。
(経済産業省)
2.知的財産の活用を促進する
(1)知的財産信託の活用を促進する
 知財信託については、2004年度には担い手の拡大等の信託業法の改正が行われたが、さらに企業のニーズに対応して知財信託が円滑に行われるよう、2005年度は以下の取組を進める。
@)特許を受ける権利等についても信託が円滑に行われるよう、2005年度中に特許出願に関する公示方法等の在り方について検討し、必要に応じ適切な措置を講ずる。
(経済産業省)
A)グループ企業内における管理信託において、事業を行う親会社が受託者である場合にも信託財産たる知的財産を自ら利用することを可能にする観点から、2005年度中に、受託者の忠実義務に関する制度の改善等の検討を行い、必要に応じ法改正等制度を整備する。
(法務省)
B)特許権の受託者は、自ら特許発明を実施していないため、当該特許権の侵害にもとづく損害賠償請求に際して損害額の推定等の規定を用いることができない。このため、2005年度から、委託者が事業を行っている場合の受託者における損害額の推定等の規定の在り方について検討し、必要に応じ法改正等制度を整備する。
(経済産業省)
C)知財管理信託の利便性向上の観点から、一定規模以上の特許権等を信託する場合における登録制度の在り方について、2005年度中にそのコストを含め幅広く検討し、必要に応じ制度を整備する。
(経済産業省)
(2)知的財産権のライセンスを安定させる
1)倒産・譲渡時における知的財産権のライセンスの保護を図る
知的財産権のライセンス契約におけるライセンサーが破産した場合に、当該ライセンスが第三者に対して対抗力を有することを条件として、管財人の解除権を制限し、ライセンシーの立場を保護する内容を含む新しい破産法が2005年1月に施行された。2005年度は、破産時以外にライセンサーが知的財産を第三者へ譲渡した場合やライセンシーが特許の通常実施権について未登録の場合等におけるライセンシーを保護するための方策について検討し、必要に応じ制度を整備する。
(経済産業省)
2)ソフトウエア利用上の課題を整理する
ソフトウエアを巡るイノベーションを促進するため、ソフトウエアに係る知的財産権の利用・取引をより円滑化するための課題等の検討を行い、必要に応じ措置を講ずる。また、オープンソースソフトウエアを活用したビジネスの更なる円滑な発展を図るため、2005年度には、オープンソースソフトウエアを活用してシステム構築を行う際のベンダーとユーザーの間での責任分担や権利者の権利行使の課題等について検討を行い、必要に応じガイドラインの公表を行う。
(経済産業省)
(3)知的財産の円滑・公正な利用を促進する
@)2005年度も引き続き、権利の濫用行為等の知的財産権分野における独占禁止法違反について、知的財産タスクフォース(知的財産の専門チーム)の活用により取締りを重点的に行う。
(公正取引委員会)
A)研究開発成果等については、その適切な管理に加え円滑な流通体制の整備が必要である。このため、研究成果物を含めた植物、動物、微生物等の遺伝資源等を広く収集し、特性評価・保管・提供等を行う体制(ナショナルバイオリソースプロジェクト、ジーンバンク事業、イネゲノムリソースセンター、生物遺伝資源保存施設)を整備し、2005年度も引き続きその活動を促進する。また、有用遺伝子の単離・機能解明に重要となる研究材料の保存及び民間企業等への提供体制について、2005年度も引き続き充実を図る。
(文部科学省、農林水産省、経済産業省、関係府省)
(4)知的財産権のライセンスに関する保険の利用を促進する
 海外における知的財産に関する円滑なライセンス活動を促進するためには、ライセンス先の破産や不払いなどライセンス料の回収ができない場合のリスクをカバーする保険の活用を図ることが必要である。このため、2005年度も引き続き、日本貿易保険(NEXI)の「知的財産権等ライセンス保険」の利用を促進する。
(経済産業省)
(5)租税条約を活用し国境を越えた知的財産の利用を促進する
 知的財産権等の使用料について源泉地国免税とする内容を含む日米新租税条約が2004年3月に発効し、適用が開始された。2005年度も引き続き、他の国々と租税条約を改正していく際には、総合的な観点も踏まえつつ、できる限り早期の締結を図るべく、基本的にはこの条約の考え方に基づいた議論を行っていく。
(財務省)
3.国際標準化活動を支援する
(1)戦略的に国際標準化活動を強化する
1)国の研究開発プロジェクト等において知的財産戦略と標準化戦略とを一体的に推進する
@)2005年度も引き続き、将来的にその成果の普及が期待され広く社会に影響を及ぼす可能性の高い研究開発については、早期の段階から標準化戦略を立て、成果が得られたものについて、官民を挙げて標準化活動に取り組む。
(総合科学技術会議、総務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
A)2005年度も引き続き、国の研究開発プロジェクトの実施計画において知的財産戦略及び標準化戦略を明確に位置付け、そのために必要な活動財源の確保を図るとともに、知的財産権の取得及び標準化活動に積極的に取り組む。また、大学・公的研究機関についても、2005年度も引き続き、自主的に同様の取組を行うよう促す。
(総合科学技術会議、総務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
2)官民による戦略的な国際標準化活動を強化する
@)2005年度から、国際標準化機関におけるパテントポリシー(特許等の取扱いに関する方針)の改善やそのガイドライン、FAQ(質疑応答集)の作成に向けた戦略、国際幹事国(国際標準化機関の規格作成委員会における幹事を努める国)等の引受やそれに対する支援についての戦略、国際幹事国業務等に携わることのできる人材の育成に関する戦略等、我が国の国際標準化活動を強化するために必要な戦略を、国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)については(財)日本規格協会内の国際標準化支援センターの協力を得て日本工業標準調査会が、国際電気通信連合(ITU)については情報通信審議会が、互いに十分な連携を図りつつ、立案し実施する。
なお、戦略を立案する際には、重点分野(環境・エネルギー、情報家電・ブロードバンド・IT、健康・バイオテクノロジー、ナノテクノロジー・材料)を中心に資金配分や支援を重点的に行うなど配慮する。
(総務省、経済産業省)
A)我が国が国際標準化活動を戦略的にリードするため、2005年度も引き続き、日中韓の情報通信標準化に関する会合、アセアン基準認証協力プログラム、太平洋地域標準会議等の機会を通じて、我が国と密接な経済関係にあるアジア諸国と共同で国際標準を開発するなど、連携強化に向けた取組を推進する。
(総合科学技術会議、総務省、経済産業省、関係府省)
B)国内標準化プロセスを国際標準化プロセスへのステップとして活用できるようにするため、2005年度も引き続き、国内標準化の審議を迅速化していち早く国際標準として提案するなど、国際標準化を目指した国内的取組を強化する。
(総合科学技術会議、総務省、経済産業省、関係府省)
C)日本発の国際標準化を一貫性をもった形で迅速かつ効率的に進めるため、2005年度も引き続き、各府省間の連携及び産学官の連携を一層強化し、継続的に情報交換・意見交換等を進めるとともに、諸外国の標準化活動の動向把握・分析や国際標準化に関する審議においても適切な連携を図る。また、大学、公的研究機関及び企業の人材が国際標準化活動へ積極的・継続的に参加し、国際標準化活動で主要な分野における国際幹事等を取得できるよう、2005年度も引き続き、国としての戦略的取組を強化する。
(総合科学技術会議、総務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
3)民間の国際標準化活動を促進する
@)国際標準化が我が国企業の産業競争力に与える影響の経済的効果の分析など標準化に関する研究を2005年度も引き続き行うとともに、当該研究で得られた情報を産業界等に周知にし、標準化活動の普及に活用する。
(総合科学技術会議、総務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
A)A)標準化活動の重要性を普及啓発し、特に企業、大学等のトップの標準化活動に対する認識を高めるため、企業、大学等のトップに対する標準化活動に関するセミナーを2005年度も引き続き開催する。
(総合科学技術会議、総務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
B)2005年度も引き続き、企業における国際標準化活動の統轄部署の設置及び知的財産部署との連携や、国際標準化に携わる人材の積極的な評価、国際標準化提案への戦略的な取組を推奨する。
(総務省、経済産業省)
4)諸外国の国内規格策定の動きに適切に対応する
諸外国における国内規格の策定は今後も頻発することが予想され、特に、国際規格とは異なる国内規格を義務づける行為や特定の規格を優遇する行為はWTO/TBT協定違反となる恐れがあり、我が国企業にとっては脅威となっている。我が国として、諸外国における国内規格に関する動きをいち早く察知し、官民連携で対応する仕組が必要である。このため、2005年度中に民間企業等からの申立に基づき政府が調査を行い、その結果に応じて二国間協議やWTO紛争処理手続等により相手国政府に改善を要請するなど、適切に対応するための制度を必要に応じて整備する。
(外務省、総務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、関係府省)
(2)技術標準に関連する知的財産権の取扱いルールを整備する
1)技術標準の策定・普及を妨げる必須特許の権利行使に対し対処する
@)技術標準に必須な特許(必須特許)の権利者による当該技術標準の利用者に対するライセンス拒否や法外なライセンス料の請求は、技術標準の策定・普及を阻害するものである。これを回避するため、以下の措置を講ずる。
 a) 国際標準化機関における現行のパテントポリシーやそのガイドライン、運用に関するFAQ(質疑応答集)について2005年度中に見直しを行い、国際標準化機関に対しその改善を提言する。
(総務省、経済産業省)
 b) 当該技術標準の利用者に対する必須特許の通常実施権の設定の裁定の可能性について、権利者と利用者間の利益衡量や国際標準化戦略を踏まえつつ2005年度も引き続き検討し、必要に応じ制度を整備する。
(経済産業省)
A)特許権者が共同の標準策定作業に参画しながら意図的に当該特許の存在を明らかにせず当該特許を含む技術を必須なものとする技術標準が確立された後になって特許権を主張するなどして標準化を著しく阻害する行為、又はこのような行為を通じて自らの独占的地位の維持を図る行為等に対する独占禁止法の適用可能性について検討を進め、2005年度中に独占禁止法上の指針を取りまとめる。
(公正取引委員会)
2)パテントプールに関する環境を整備する
@)パテントプールを効率的かつ円滑に機能させるため、2005年度中にライセンス料の低減や必須特許の鑑定・価値評価等のための方策について検討し、結論を得る。特に、必須特許の鑑定・価値評価については、裁判外紛争処理(ADR)やパテントプール参加企業から中立的な専門家(弁護士、弁理士等)の活用等についての具体的方策を明らかにする。
(総合科学技術会議、総務省、経済産業省)
A)パテントプールの形成・運用には独占禁止法上の問題が発生する可能性があることから、これについての独占禁止法上の指針について2005年度中に取りまとめる。
(公正取引委員会)


U.中小・ベンチャー企業を支援する

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 中小・ベンチャー企業は、我が国の産業における基盤的技術を担うとともに、素材の加工や部品の供給等を行うことにより産業基盤を支えている。また、地域における雇用の創出など地域経済の担い手としても大きな役割を果たしている。
 「知的財産立国」を目指し、様々な施策が進められている中で、中小・ベンチャー企業の知的財産に対する意識も高まりつつある。このような流れを加速し、より多くの中小・ベンチャー企業が知的財産を創造し、それを有効に活用し事業化に結びつけていくことを戦略的に進めていくことが重要である。
 しかしながら、現実には中小・ベンチャー企業は、経済力、人材等の面で知財の創造・活用に当たって様々な障害や困難に直面している。
 したがって、中小・ベンチャー企業が、革新的な技術を創造し、それを知的財産として活用して戦略的に事業展開ができるよう政府としても抜本的な対策を講ずる必要がある。
(1)中小・ベンチャー企業に対する情報提供・相談を強化する
1)弁理士・弁護士情報を提供する
 2005年度から、中小・ベンチャー企業による弁理士・弁護士の利用を容易にするため、中小企業・ベンチャー総合支援センター等(以下「支援センター」という。)の窓口を整備し、専門分野・実績や料金・経営状況等の弁理士に関する情報提供や紹介・派遣を行うとともに、弁護士知財ネットの活用を図る。また、都道府県等中小企業支援センター等の関係機関に対し、同様の取組を行うよう促す。
(経済産業省)
2)経営戦略に根ざした知的財産戦略を支援する
@) 2005年度から、中小・ベンチャー企業が事業展開を考えて知財戦略を進められるように、支援センターの窓口を整備し、経営戦略の中で知財戦略を提供できるようなコンサルタントや弁理士等を紹介する。また、都道府県等中小企業支援センター等の関係機関に対し、同様の取組を行うよう促す。
(経済産業省)
A) 2005年度も引き続き、中小・ベンチャー企業に対して知的財産の専門家やコンサルタントを派遣し、経営課題、発展段階に応じたタイムリーな特許取得後のアドバイスを行ったり、知的財産戦略策定等の支援を行う。また、知的財産の専門人材と中小・ベンチャー企業を支援する機関との連携を強化することにより中小・ベンチャー企業における知的財産の戦略的な活用モデルの創出や活用事例についての情報提供を行う。
(経済産業省)
(2)研究開発や知的財産の権利取得を支援する
1)研究開発を支援する
 現在、研究開発型独立行政法人が保有する最先端の大型研究施設・設備について、使用研究者・分野に限らない広い活用がなされるための方策が推進されていることについて周知徹底を図るとともに、中小・ベンチャー企業の研究開発を促進し、新たな知的財産が創造される環境を整備するため、大学や研究開発型独立行政法人が国のプロジェクト等において使用した先端的な研究設備・機器等を、そのプロジェクト終了後に、中小・ベンチャー企業等が容易に使用できるようにするための方策について、2005年度中に検討し、必要な措置を講ずる。
(文部科学省、経済産業省、関係府省)
2)知的財産の権利取得を支援する
@) 2005年度から、中小・ベンチャー企業の費用負担を軽減するため、現行の審査請求料・特許料の減免措置の利用の抜本的な拡大を図るとともに、減免措置の拡充など更なる負担の軽減につき幅広い観点から検討し、必要に応じ適切な措置を講ずる。また、申請手続も簡素化する。
(経済産業省)
A) 2005年度から、日本弁理士会に対し、費用やサービスその他の面で中小企業の個別の事情を考慮して適切な配慮を払うよう促す。
(経済産業省)
B) 2005年度も引き続き、中小・ベンチャー企業の国内外での権利取得を促進するために、中小・ベンチャー企業に対する研究開発や事業化の支援事業における国内外特許取得関連費用等の助成やコンサルティングの拡充を図る。
(総務省、経済産業省)
C) 2005年度も引き続き、中小・ベンチャー企業を対象として、研究開発の絞り込みや無駄な出願の回避のため、特許出願前の従来技術調査の支援を拡充する。
(経済産業省)
(3)海外展開を支援する
 海外で事業展開を行うに際しては、海外での権利取得や模倣品・海賊版対策が必要となるが、このような取組には多大な費用がかかるため、優れた技術を持つ中小・ベンチャー企業に対して、モラルハザードとならないよう配慮しつつ、海外出願や海外における模倣品・海賊版対策などの支援や企業からの相談体制の整備などを抜本的に強化するため以下の施策を行う。
@) 2005年度から、中小・ベンチャー企業が海外特許出願の際に必要となる出願費用、翻訳費用、海外弁理士費用等に対する助成を拡充する。
(総務省、経済産業省)
A) 2005年度から、海外における模倣品被害に対し、中小・ベンチャー企業が迅速に対応できるよう助成制度を拡充する。
(経済産業省)
B) 2005年度から、支援センターの窓口を整備し、翻訳会社、海外弁理士等を紹介したり、海外出願に際しての手ほどきなどを行う。また、都道府県等中小企業支援センター等の関係機関に、同様の取組を行うよう促す。
(経済産業省)
C) 2005年度も引き続き、中小・ベンチャー企業について、海外出願・翻訳等の権利取得手続や現地での被害実態調査、公安・行政当局との交渉・要請、訴訟提起等の権利行使に関する活動についての相談・助成をはじめとする具体的な支援を強化するとともに、中小企業に対する諸外国の法制度及びその運用、模倣品・海賊版の被害実態・対策に関する情報の提供などの方策をさらに強力に進める。
(総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)
(4)国内における知的財産侵害対策を強化する
@) 2005年度から、日本経団連その他の産業団体等に対し、中小・ベンチャー企業をはじめとする他者の知的財産権を尊重することを企業行動の中核に据えた知財憲章等の策定を通じて、会員企業に徹底するよう促す。
(経済産業省、関係府省)
A) 大企業が優越的地位を濫用し、例えば中小企業の製造能力を超えるロットを一時に大量発注して対応できないという理由で事実上その技術を取り上げるとか、共同研究や試作品作成を持ちかけて技術を横取りすることを可能とするような一方的に優位な契約を締結するなど、巧妙な手口により中小・ベンチャー企業の技術が模倣されたり、盗用されたりしているという指摘が多い。このため、2005年度から、支援センターの窓口を「知財駆け込み寺」として機能するよう整備し、大企業から知的財産権侵害を受けた場合の対応や摘発、公正取引委員会への申告などについて相談を行う。また、都道府県等中小企業支援センター等の関係機関に対し、同様の取組を行うよう促す。
(経済産業省)
(5)知的財産信託の活用及び知的財産による資金調達の拡大を行う
@) 中小・ベンチャー企業による知財信託の活用を容易にするため、知財信託の担い手を事業組合や財団法人等に拡大することなど信託制度の活性化について、2005年度から検討を行い、必要に応じ制度を整備する。
(金融庁)
A) 2005年度から、中小・ベンチャー企業が知的財産に基づく資金調達を更に円滑に行えるよう検討を行い、制度の整備や運用の改善を行う。
(金融庁、経済産業省)
B) 2005年度から、訴訟費用の負担軽減や損害賠償金の補填等を図るため、民間の知財保険の活性化などの具体的な方策について検討を行い、必要に応じ制度を整備する。
(金融庁、経済産業省)
(6)知的財産に関する教育や研修を充実する
 2005年度も引き続き、中小・ベンチャー企業における経営者や技術者・研究者等の知的財産に関する知見、特許明細書等の書き方、特許権侵害に対する対応力などを充実するため、講義・研修等を行う。
(経済産業省)
(7)中小・ベンチャー企業の優秀な技術を顕彰する
 2005年度も引き続き、中小・ベンチャー企業による知的財産の創造、保護、活用を一層活発化させるとともに我が国の産業競争力の強化を図るため、国民経済の高度化や産業の発展、画期的な技術革新等に貢献した技術を広く顕彰する。
(経済産業省、関係府省)


V.知的財産を活用して地域を振興する

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 地方公共団体は、地域に展開する中小・ベンチャー企業や農林水産業者、大学等の活性化を通じた地域振興を図るべく知的財産に関する各種取組を始めており、この流れを一層推進するためにも、知的財産を活用した地域振興を積極的に支援することが重要である。
1.地域における知的財産戦略を推進する
(1)地方公共団体の知的財産に関する戦略策定を奨励する
@) 政府の「知的財産立国」への取組に合わせて、地方公共団体においても、特許、商標やコンテンツ等の知的財産を活用した地域振興についての取組が着実に広がっている。2004年度には、既に14都道府県が知的財産戦略を策定し、13県が策定中又は策定予定である。また、大阪市では2004年度に知的財産戦略を策定し、横浜市においても2005年度の策定を目指すなど、市町村における知財戦略づくりも始まっている。地方公共団体において、知的財産の創造、保護及び活用に関し、新しい技術や地域の魅力あるコンテンツを生み出し、それらの権利化や効果的な活用などその区域の特性をいかした自主的な施策を策定するため、2005年度も引き続き、情報提供をするなど地方公共団体の知的財産戦略策定等の取組を奨励する。
 また、その際地域の大学と地方公共団体とが密接に連携をすることなどにより、地域における知財戦略を効果的に推進するよう奨励する。
(総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)
A) 2005年度も引き続き、地方公共団体が自主的に連携し知的財産の戦略策定に向けた情報共有や知的財産政策の共同調査研究などに取り組むことに対して情報提供するなど地方公共団体の取組を奨励する。
(総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、関係府省)
B) 2005年度から、地域の知的財産に関する情報を東京その他の地域の企業や大学等が活用できるよう地方公共団体が、地域の知財戦略についてホームページによる情報発信を行うよう奨励する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省)
(2)地方公共団体における相談機能の充実を奨励する
 東京都、埼玉県、愛知県など全国各地域で、知的財産に関するセンターを設置し、知的財産権の取得方法や特許情報の検索方法などに関する相談や専門家による個別相談に応じたり、知的財産の取扱いに関するマニュアルを配布するなどの活動を活発化してきている。このような活動の重要性にかんがみ、2005年度も引き続き、全国の地方公共団体に対し先行事例等について情報提供するなど、地方公共団体の取組を奨励する。
(経済産業省、関係府省)
(3)地方公共団体の知的財産に関する助成制度を奨励する
 東京都や大阪府などでは、地方公共団体独自の事業として外国特許出願に関する助成や海外の模倣品・海賊版対策に関する助成、弁理士費用の助成などを行うようになってきている。地域の中小企業等に対する助成の重要性にかんがみ、2005年度から、全国の地方公共団体に対し先行事例等について情報提供するなど、地方公共団体の取組を奨励する。
(経済産業省、関係府省)
(4)地域の中小企業の知財戦略を支援する体制を整備する
 地域の中小企業の知的財産の戦略的な活用を支援するため、2005年度から、地方経済産業局ごとに、地域の官民からなる「地域知財戦略本部」を新たに整備し、地域産業や地域の大学の特性等を活かした地域独自の「地域知財戦略推進計画」の策定を進めている。今後、同計画に基づき、人材データベースを構築するとともに、地域の知財駆け込み寺等の知財関係機関や人材のネットワークなどを強化する。
(経済産業省)
(5)地域の自然資源等をいかした知的財産の創造及び活用を行う
 自然資源(海洋生物、山間植物等)の中には、有効成分や有用な遺伝子を含有するものも多くある。2005年度から、地域の大学等及び企業に対し、産学官連携によって、自然資源を利用した研究開発を行い、その成果について知的財産として権利取得を行うとともに、これを活用した新製品、新事業の開発に積極的に取り組むよう促すとともに、研究開発活動を積極的に支援する。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
2.地域において知的財産を活用する
(1)地方公共団体における知的財産権の取扱いを改善する
 2005年度に、地方公共団体に対し、地方公共団体が保有する知的財産権に関する譲渡契約の柔軟化や特許許諾の運用の見直しなど、地方公共団体における知的財産権の取扱いについて制度の整備や運用の改善を行うよう促す。
(関係府省)
(2)公共調達において知的財産を有効活用する
@) 2005年度に、地方公共団体に対し、中小・ベンチャー企業の知的財産を尊重するとともに調達等において侵害品を購入しないようにするなど、知財意識を高めるよう促す。
(関係府省)
A) 2005年度に、技術や品質・性能等が評価要素となる官公需契約において知的財産の権利者が不利な扱いを受けないよう、運用の改善を行う。また、地方公共団体に対しても同様の措置を講ずるよう促す。
内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、
厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省
B) 2005年度に、官公需契約において、中小・ベンチャー企業の知的財産を活用した製品を用いることがその目的達成上合理的と考えられる場合には、当該製品の優先的な調達が積極的に進められるよう運用の改善を行う。また、地方公共団体に対しても同様の措置を講ずるよう促す。
内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、
厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省






第4章 コンテンツをいかした文化創造国家への取組

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 我が国には、映画、音楽、ゲーム、アニメなどのエンターテインメント・コンテンツだけでなく、ファッション、食、地域ブランド等の知的・文化的資産が大きな広がりを持って存在している。
 こうした知的・文化的資産も含めたコンテンツは、「知的財産立国」の実現を目指している我が国にとって重要な資産であり、これらの活性化を図ることにより、新しいビジネスチャンスの創出や海外市場への展開が期待できる。
 また、知的・文化的資産も含めたコンテンツの活性化は、我が国の多様で豊かな文化力の向上を促すとともに、これらの海外に向けた発信を通じ、新しい時代にふさわしい「日本ブランド」の確立にも貢献するなど、文化創造国家の大きな原動力として、積極的な取組が求められている。
 本章では、コンテンツビジネスの拡大とライフスタイルをいかした日本ブランド戦略について、それぞれ施策を取りまとめている。今後は、コンテンツビジネスや、食、地域ブランド及びファッションなどのライフスタイルに加え、観光や文化・外交分野での取組とも連携しながら、日本の魅力を戦略的に発信することにより、日本ブランドを確立・強化することが必要である。


T.コンテンツビジネスを飛躍的に拡大する

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 我が国のコンテンツ(映画、音楽、アニメ、ゲームソフトなど)は世界的に高い評価を受けているが、これまで共通した理念の下に関係者が一致団結してその振興に取り組んできたとは言えなかった。
 しかしながら、コンテンツビジネスは事業規模が大きく、また関連する産業分野が幅広いことから、我が国経済の牽引役として期待されるばかりでなく、海外における我が国のイメージ向上にも大きな役割を果たしており(いわゆる「ソフトパワー」)、国家戦略を考える上で重要な分野である。
 今後、コンテンツビジネスが成長発展を遂げる上で達成すべき課題としては、「業界の更なる近代化・合理化」「活躍する者や産業としての重要性に対する評価・社会的認識」「海外・新分野への展開」が挙げられる。我が国コンテンツ産業が、諸外国との競争に打ち勝つとともに、日本文化の発信を通じて海外における日本理解の増進を図るため、コンテンツビジネスの振興を国家戦略の柱として明確に位置付け、消費者からの視点も取り入れながら関係者が一体となって以下の施策を迅速かつ強力に展開する必要があるとして3年間の集中改革期間を設定した。
 その1年目を経て、資金調達手段の多様化や人材育成に向けた取組などの改革が進み、コンテンツビジネスの飛躍的拡大に向けた道筋が立てられた。
 集中改革期間の2年目を迎え、諸課題の速やかな達成を目指した積極的取組を進める。
1.業界の近代化・合理化を支援する
(1)契約慣行の改善や透明化に向けた取組を奨励・支援する
@) 漫画家・アニメーター等の個人のコンテンツ創作者と出版社・アニメ制作会社などの間の契約について、関係者の共通理解に基づく契約慣行の改善や透明化に向けた取組を2005年度も引き続き、奨励・支援する。
(文部科学省、経済産業省)
A) 放送番組については、2005年度も引き続き、放送事業者の策定した制作委託取引に関する自主基準の遵守徹底を促進するとともに、「放送番組の制作委託に係る契約見本」の活用状況のフォローアップを促すことにより、制作体制の公正性や透明性をより一層高めるための自主的な取組を奨励し、番組制作費用の契約及び管理の徹底に向けた関係者の取組を促進、奨励する。
(総務省)
B) 著作権の所在を明確にし、様々な二次利用に対応した多様な契約形態慣行が定着するよう、「アニメモデル契約」について、その活用状況や先進的な海外の契約例の調査等を踏まえ、2005年度中に、必要に応じ措置を講ずる。
(経済産業省)
C) 映画興行について、2005年度中に、制作者が成果に応じた配分を得ることができるような取引関係の構築に向けた関係者の取組のほか、入場者数の明確化や興行収入等の透明化に向けた取組を促進、奨励する。
(経済産業省)
D) 映画、音楽配信、アニメ、ゲームソフトなどのコンテンツ業界における業界構造や契約・流通の慣行などについて、2005年度中に実態を調査し、公表する。
(経済産業省)
E) 上記@)〜D)については、「エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク」等の法律家との協力も得ながら取り組むよう奨励する。
(総務省、文部科学省、経済産業省)
(2)独占禁止法等を厳正に運用する
@) 2005年度も引き続き、独占禁止法及び下請代金支払遅延等防止法の普及啓発・相談対応の充実を図るとともに、コンテンツ制作に係る下請取引を行う事業者に対して下請代金支払遅延等防止法に基づく書面調査を実施する等、両法に違反する行為に対して、両法を厳正かつ迅速に運用する。
(公正取引委員会、経済産業省)
A) コンテンツ業界における独占禁止法違反を迅速に発見するため、2005年度も引き続き、必要な審査専門官の確保など知的財産タスクフォースの体制を整備することにより、公正取引委員会の調査・情報収集活動の強化を図る。
(公正取引委員会)
(3)弾力的な価格設定など事業者による柔軟なビジネス展開を奨励する
 2005年度も引き続き、消費者利益の向上を図る観点から、事業者による書籍・雑誌・音楽用CD等における非再販品の発行流通の拡大及び価格設定の多様化に向けた取組を奨励する。
(公正取引委員会、文部科学省、経済産業省)
(4)統計資料を整備する
 我が国のコンテンツの市場規模等について、諸外国とより精密に比較できるような統計資料の収集体制を整備し、2005年度中に、コンテンツに関する統計資料を取りまとめ、公表する。
(総務省、経済産業省)
2.コンテンツの制作・投資等を促進する
(1)「完成保証制度」を充実させる
 金融機関等による資金調達スキームを活用するため、「完成保証制度」などの環境整備について、2005年度中に、関係金融機関等に働きかけるとともにその運用に伴って顕在化する問題点等について検証を行う。
(総務省、財務省、文部科学省、経済産業省)
(2)ファンドによる資金調達に対する投資を促進する
 映画等の制作に係る資金調達の円滑化を図る観点から、ファンド組成における情報開示を進め、商品ファンド法を活用した資金調達が一層活発化し、必要な投資家保護措置等が講じられるよう、2005年度も引き続き検討を行うとともに、投資サービス法についての金融審議会における審議の中での検討等を踏まえ、必要に応じ制度の見直し・整備を行う。
(金融庁、経済産業省)
(3)コンテンツに対する評価手法を確立する
@) 映画等のコンテンツの制作・投資を促進するため、諸外国の制度も参照しつつ、コンテンツに対する評価手法の確立やディスクロージャー(公開手法)方法の体系化などについて、2005年度に普及啓発を行う。
(文部科学省、経済産業省)
A) 2005年度から、音楽に係る著作権、著作隣接権の資産評価手法の確立と資金調達システムを構築する場合における問題点を整理することにより、既存の音楽著作権等を活用した新たなビジネスモデルの創出を支援する。
(文部科学省)
(4)コンテンツの制作・投資等を促進するためのインセンティブを付与する
 コンテンツの制作・投資等を促進するためのインセンティブについて、2005年度中に検討を行い、必要に応じ所要の措置を講ずる。
(総務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
(5)フィルムコミッション等の映像制作活動を支援する
@) 映像制作のロケーションについての手続が円滑に進むよう、フィルムコミッションの要望も踏まえ特区制度も活用しつつ、2005年度も引き続き、地域における大規模ロケーション施設や撮影所等の保有や活用の在り方について検討を行い、全国の関係行政機関等に対し、映像制作及び道路や公的施設の円滑な利用についての理解増進に向けた働きかけを行う。
(文部科学省、経済産業省、国土交通省、関係府省)
A) 日本映画の創造活動を活性化させるとともに、地域文化の振興に資するため、2005年度も引き続き、各地のフィルムコミッションが持っているロケーションに必要な情報をインターネット上に集約してデータベースを構築する。
(文部科学省)
3.人材育成を強化し、顕彰を充実する
(1)プロデューサーや創作者等を育成する
@) 2005年度も引き続き、「コンテンツ人材」の育成に向けて、専門職大学院(法科大学院を含む)その他大学における自主的取組(組織の設置などを含む)への支援を一層充実するとともに、当該機関に対し、海外の人材育成機関との提携を推奨するほか、大学と産業界の連携・協力の促進など、大学における教育の充実のための環境整備を行う。また、コンテンツに関わりの深い専門職大学院等においても、その自立的な活動を促進するため、教育活動等の質を適正に評価する認証評価機関の整備に向けた取組を奨励する。
(文部科学省、経済産業省)
A) センスと技能に恵まれた若いプロデューサーや創作者が海外の先進事例に触れ、自らの才能を存分に伸ばすことができるよう、2005年度も引き続き、海外留学や海外研修を支援する。
(文部科学省、経済産業省)
B) 創作者等の動機や能力を高めるため、2005年度も引き続き、世界の第一線で活躍するプロデューサーや創作者等を招聘し、セミナー、シンポジウムなどを開催する。
(総務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
C) ブロードバンドの普及が飛躍的に加速する中、高品質なデジタルコンテンツを制作する優れたプロデューサーや創作者の養成や技能向上を図るため、2005年度も引き続き、人材育成のための支援を行う。
(文部科学省)
D) 2005年度も引き続き、資金調達から権利許諾、販売先の確保までを総合的にコーディネートできる「プロデュース機能」のほか、法律や財務、営業などの専門知識を備えた人材を育成するため、教育機関等との連携協力の下、経済産業省において2003年に策定、2004年に使用評価をもとに追加改訂した冊子「プロデューサー養成カリキュラム」の普及を行うとともに、それらの人材が活躍できる環境づくりを支援する。
(経済産業省)
E) 2005年度も引き続き、映画などの映像作品を制作するためのデジタル編集設備の効果的な活用及びそれに伴う人材養成の方策について調査研究を行う。
(文部科学省)
(2)経営・法務・財務の専門家の活用を奨励する
@) 2005年度も引き続き、法律や財務、営業などの専門知識に加え、コンテンツビジネスに関する経営感覚を併せ持つ者の活用を支援する。
(経済産業省)
A) 2005年度も引き続き、「エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク」の活用など、法律家と事業者や創作者などとの交流活動を奨励・支援する。
(総務省、文部科学省、経済産業省)
(3)人材育成の事業を支援する
@) 2005年度も引き続き、情報通信に関する人材研修事業の一環として、放送番組などコンテンツ制作等の専門的な知識や技術の向上を図るための研修事業に対する支援を行う。
(総務省)
A) 2005年度も引き続き、映画関係団体等が学校や制作現場などと連携して行う、制作現場における実践的な実習を支援し、専門性の高い職能人材の養成を行う。
(文部科学省)
(4)映像産業振興機構の活動を支援する
 2005年度も引き続き、映画、放送、ゲーム、アニメ、音楽等の各業界が、一体となって映像産業振興機構の活動に協力することを奨励するとともに、映像産業振興機構が行う、以下のような活動を支援する。
インターンシップの充実など産学連携による人材の育成とその活用
金融機関による出資・融資の斡旋などによる作品制作助成
各種政策助成措置の斡旋による起業支援
内外市場の整備・開拓の取組や関係者間の連携の取組
(総務省、文部科学省、経済産業省)
(5)有能な人材を発掘し顕彰する
 2005年度も引き続き、斬新かつ優れたコンテンツを供給できるよう、類稀なる才能をもった「埋もれた宝」を発掘し、我が国の「コンテンツ人材」の層を厚くするとともに、映画、音楽、アニメ等の各種コンペティションの取組を支援するとともに、コンテンツビジネスに携わる人材の社会的認知の向上を図るため、優れた業績を残した人材を顕彰する取組を幅広く支援する。
(総務省、文部科学省、経済産業省)
(6)教育や啓発を充実する
@) 2005年度も引き続き、子供がコンテンツの持つ魅力や素晴らしさを享受できるよう、学校等の自主的な取組等により、映画や演劇等を鑑賞する機会の拡大を図るとともに、国民誰もがコンテンツを創作、発信できるようにするための取組を促進、奨励する。
(文部科学省)
A) 国民生活においてコンテンツは不可欠なものになってきていることにかんがみ、コンテンツの制作や利用等に関するルールの認知及びモラルの向上を図るべく、2005年度も引き続き、著作権に関する教育・啓発の充実を図るとともに、ITを利用したコンテンツの利用におけるモラル及びマナーの啓発に努める。
(文部科学省)
4.コンテンツ流通大国に向けた改革を進める
(1)デジタル時代に対応した幅広い改革を進める
 既存の流通機構にとらわれない新しいビジネスの流れが進む中で、コンテンツ流通大国に向けて、放送番組等とインターネットの関係や著作権等の課題、業界の近代化・合理化などの幅広い改革について2005年度中に結論を得る。
(総務省、文部科学省、経済産業省)
(2)新しいビジネスモデルと技術を開発する
1)コンテンツ流通市場を形成する
 コンテンツ制作者が多様な流通経路の中から選択的にコンテンツを発信できるよう、海外における先進事例の調査研究等を踏まえ、2005年度から、コンテンツの仲買機能を果たす「目利き役」が存在する流通市場の創設に向けた取組を行う。
(総務省、経済産業省)
2)コンテンツ利用に係る関係者間の合意を形成する
@) 映画や放送番組などのコンテンツが、インターネット配信の手段により有効に活用されるよう、著作権管理団体と利用者団体協議会との協議等を踏まえ、2005年度も引き続き、権利者等の関係者間の協議を奨励するとともに、法的・技術的環境の整備について国際的な検討に積極的に参加する。
 また、映画や放送番組などのコンテンツのブロードバンドサービスを利用した電気通信役務利用放送における活用に向けて、2005年度も引き続き関係者間の協議を奨励するとともに、著作権法上の位置付けについて、市場や国際的な動向も踏まえつつ検討を行うなどにより、そのようなコンテンツの活用を促進する。
(総務省、文部科学省、経済産業省)
A) ブロードバンド等におけるコンテンツの円滑な二次利用に向けて、2005年度は、著作権等管理事業者制度が広く活用されることにより権利の集中管理が進むよう関係者の取組を奨励する。
(文部科学省)
3)既存のコンテンツの有効活用を図る
 既存の教育番組の二次利用や教育分野におけるデジタル放送の活用方策等の検討結果を踏まえ、学校教育におけるデジタル放送の効果的な活用方策を開発し、その普及促進を図るため、各機関の連携による実証的なモデル事業を2005年度から実施する。
(総務省、文部科学省)
4)コンテンツを安心して利用するためのシステムの開発・普及を行う
@) 自由に利用できる範囲等を権利者があらかじめ意思表示するシステムの普及拡大に向けて、あらかじめ定められた範囲の利用を認める自由利用マークの普及を進めるとともに、2005年度中に他の団体での同様の取組により自由に利用できるコンテンツ等を集めたポータルサイトの開設に向けた取組を奨励する。
(文部科学省)
A) インターネット上において違法・有害な情報が増大し、これらに関係する可能性のある事件、犯罪が多発している等の状況にあって、利用者が安全なコンテンツを容易に選択できるよう、2005年度中に、コンテンツの安全性を事前かつ容易に判断できるようにするためのマーク制度の創設に向けた検討を行い、結論を得て、必要に応じ所要の措置を講ずる。
(総務省)
5)デジタルシネマ技術の研究開発や普及を推進する
 2005年度も引き続き、欧米の取組状況も参考にしながら、諸外国に先駆けたデジタルシネマ技術の研究開発を行い、その成果を国際規格策定に向けた議論へ反映させるとともに、映画配給者と上映事業者との仲介及び各地域の公的施設等での上映実証実験などデジタルシネマの普及拡大に向けた取組を行う。
(総務省、文部科学省、経済産業省)
6)コンテンツ流通のためのシステム整備を行う
@) 汎用メタデータ体系や権利許諾システムを実利用につなげ、CCD(デジタル時代の著作権協議会)等が進める権利者IDやコンテンツIDの付与の取組及びそれらを統合する取組などのコンテンツに係る権利情報の整備を進めることにより、コンテンツ流通の円滑化の基盤構築及び権利許諾プロセスの簡易化を図るために幅広い関係者の取組を促進するとともに、2005年度も引き続き、その権利や内容等の属性情報(メタデータ)を提供するためのポータルサイトの整備を促進するなど、プラットフォームづくりに向け必要な支援を行う。
(総務省、文部科学省、経済産業省)
A) 革新的技術の研究開発など事業者による自主的な取組を促進するとともに、2005年度も引き続き、大容量コンテンツの流通技術、個人間における適切なコンテンツ流通技術等のブロードバンド・コンテンツ流通に関する支援、コンテンツ保護や権利者が総合的に管理する技術及びネットワーク環境に適合した契約システムを盛り込んだ新たなビジネスモデルの開発に向けた取組を支援する。
(総務省、経済産業省)
B) 映画作品に関する情報提供や映画製作者と上映事業者等との交流の場として、2005年度中に、インターネット上に日本映画情報システムを設ける。
(文部科学省)
7)メディア芸術に関する研究開発を推進する
 メディア芸術の高度化を支える先進的科学技術の創出に関する研究開発を科学技術振興機構における研究領域の一つとして設定し、その取組を推進するほか、実用的な意義が大きく、革新性の高い独創的な技術開発を推進するため、科学技術振興機構における研究課題の一つとして、文化財関係の公開・展示技術等を対象分野とし、2005年度も引き続き、その取組を推進する。
(文部科学省)
8)家庭等で円滑にコンテンツを利用するための技術開発を行う
 多彩なコンテンツ流通形態や利活用を可能とするコンテンツ流通の仕組みの構築に向け、コンテンツに係る権利の適切な保護の実現と、家庭やその周辺でのコンテンツ利用における高い自由度・利便性の確保を両立するため、消費者等の視点を重視しつつ、コンテンツ利用技術の開発・実証を2005年度から行う。
(総務省、経済産業省)
9)ハイビジョン技術の研究開発に対する支援等を行う
 2005年度も引き続き、映像技術の高度化を図る観点から、高精細度画像関連技術の研究開発を支援するとともに、ハイビジョン技術の海外への普及を促進する。
(総務省)
10)公共ネットワークを活用したコンテンツ流通を促進する
 学校、図書館、公民館、市役所などを高速・超高速で接続する地域公共ネットワークと都道府県情報ハイウェイ等の相互接続による全国的な公共ブロードバンド・ネットワークを構築し、教育コンテンツ等の共同利用を促進するための実証実験を2005年度から行う。
(総務省)
11)新しいコンテンツづくりを促進する
 2005年度から、大学等及び企業に対して、例えば、コンテンツをモノ、特に地域の特色ある工芸品等に埋め込み、これらのモノに楽しさ、いやし、などを演出するといった融合される新しいコンテンツづくり、モノづくりに積極的に取り組むよう促す。その際、できあがったコンテンツとモノが融合した製品について、知的財産としての適切な保護の方策について検討を行い、必要に応じ所要の措置を講ずる。
(総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
(3)法制度の改革を進める
1)私的使用複製などの基本問題について方向を得る
@) 私的使用目的の複製については、条約上の規定、私的使用目的の複製や技術的保護手段の進展等の実態を踏まえて、範囲の明確化などに関して検討を行い、2007年度までに結論を得る。
(文部科学省)
A) 共同著作物に係る共有著作権の行使については、他の共有者の利益との調整を図るための制度の整備に関して検討を行い、2007年度までに結論を得る。
(文部科学省)
B) 著作物の「利用権」については、産業財産権のように著作権法上明確に位置付けて物権化することや、第三者への対抗要件として独占的な利用許諾を登録する制度を創設すること等に関して検討を行い、2007年度までに結論を得る。
(文部科学省)
C) 著作者人格権の在り方については、国際動向等を踏まえ、2005年度中に専門家による調査研究を実施し、理論的・体系的な整理を行う。
(文部科学省)
D) 私的録音録画補償金制度に関し、権利者、消費者、関連産業等を含めた関係者の意見を踏まえ、対象機器等の取扱い等について実態に即した検討を行うとともに、技術的保護手段の進展やコンテンツ流通の変化等を勘案しつつ、本制度の見直し等について検討を行い、2005年中に結論を得る。
(文部科学省、経済産業省)
E) 映画の著作物については、その保護期間が「公表後50年」から「公表後70年」に延長されたが、映画以外の著作物に係る保護期間の在り方についても、著作物全体を通じての保護期間のバランスに配慮しながら検討を行い、 2007年度までに結論を得る。
(文部科学省)
2)デジタル化時代に対応した権利制限について方向を得る
@) キャッシング等通信過程の効率化を目的とする複製、機器内で不可避的に生じる一時的な蓄積(複製)、機器の保守・修理に伴う複製等に関する権利制限の拡大について検討を行い、2005年中に結論を得る。
(文部科学省)
A) いわゆる放送新条約の検討状況を踏まえ、放送事業者への放送前信号に係る権利、譲渡権の付与等に関して検討を行い、2007年度までに結論を得る。
(文部科学省)
3)契約・利用の観点からライセンシーの保護などについて方向を得る
@) 著作権が譲渡された場合や著作権者が破産した場合等においてライセンシーを保護するため、契約上の地位を第三者に主張し得る制度に関して、他の知的財産権法における検討状況を踏まえて検討を行い、2007年度までに結論を得る。
(文部科学省)
A) 権利制限規定と契約との優先関係等、著作権法と契約法との関係性に関して整理、検討するともに、著作権法上契約に関する規定が少ないことから、私的自治を尊重しつつ、契約に係る所要の規定を整備することについて検討を行い、2005年中に結論を得る。
(文部科学省)
B) 登録制度の利用促進の観点から登録手続の電子化の推進について検討を行うとともに、共有著作権、著作物の「利用権」及びライセンシーの保護に係る制度整備等との関連で登録制度を見直すことや、原始的著作権者の登録制度を創設することなどに関して検討を行い、2007年度までに結論を得る。
(文部科学省)
4)司法救済の観点から間接侵害などについて方向を得る
@) 著作権法には、特許法等と異なり間接侵害規定が設けられていないが、他の知的財産法との整合性の観点も踏まえて、間接侵害規定を創設することに関して検討を行い、2005年中に結論を得る。
(文部科学省)
A) 法定賠償制度の創設等を含めて、著作権侵害に係る損害賠償請求や不当利得返還請求等の役割・機能等に関して総合的に検討を行い、2007年度までに結論を得る。
(文部科学省)
5)技術的保護手段等の回避等に係る法的規制の対象について方向を得る
 技術的保護手段の有用性を担保する観点から、接続管理(アクセスコントロール)回避行為への刑事罰の導入、接続管理回避サービス(技術的保護を解除する特定情報(シリアルナンバー等)の公衆への提供など)、放送受信機器におけるコピー制御信号への無反応問題等について、将来の管理技術開発への影響等を踏まえつつ、法的措置の必要性の有無について、2005年度も引き続き検討を行い、必要に応じ所要の措置を講ずる。
(総務省、法務省、文部科学省、経済産業省)
6)権利者の利益と公共の利益とのバランスに留意する
 コンテンツの保護を強化する一方で、権利者の利益と公共の利益とのバランスに留意することが必要であり、社会的に必要と考えられる公正な利用を促進する観点から、著作権法の「権利制限規定」の適当な分野における拡大等について検討を行い、2005年中に結論を得る。
(文部科学省)
7)政令等への委任について方向を得る
 情報技術の進展など社会情勢の変化に機動的に対応し得るよう、法技術的な観点等から著作権法の規定に係る政令等への委任が可能かどうか検討を行い、2007年度までに結論を得る。
(文部科学省)
8)著作権法の表現・用語を整理する
 実質的内容に変更を加えるか否かとは別にわかりやすい著作権法とするため、条文の表現をより平易化すること、正確化することなど、規定を整理することに関して検討を行い、2007年度までに結論を得る。
(文部科学省)
9)国際的な著作権制度の調和を推進する
@) デジタル化・ネットワーク化に対応して著作権等を適切に保護するため、現在WIPOで検討が進められている視聴覚的実演や放送機関に関する新条約(「放送機関の保護に関する条約(仮称)」及び「視聴覚的実演に関する条約(仮称)」)の早期採択に向けて、2005年度も引き続き、積極的に議論に貢献する。
(総務省、外務省、文部科学省)
A) 2005年度も引き続き、アジア諸国を中心に、二国間や自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)の交渉の場など、様々な機会を利用して、1996年に採択された「著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)」や「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)」への早期加入を働きかける。
(外務省、文部科学省)
B) 途上国における著作権制度の普及・整備を支援するため、WIPOなどの協力を得て、2005年度も引き続き、途上国の政府職員や集中管理団体の職員を対象とした研修やセミナーの開催、著作権制度及び集中管理制度に関する専門家の派遣を行う。
(外務省、文部科学省)
(4)青少年の健全育成への自主的な取組を奨励・支援する
@) 一部のコンテンツが青少年を含め社会全般に悪影響を及ぼしているとの指摘があることを踏まえ、健全なコンテンツの普及拡大を図る観点から、2005年度も引き続き、有害なコンテンツから青少年を守るための業界による自主的な取組や、一部のコンテンツが身体に及ぼす影響も含めて、業界等による定量的な調査研究等の取組を支援する。
(警察庁、総務省、文部科学省、経済産業省)
A) 2005年度も引き続き、青少年の健全育成に資するため、漫画、CD、ゲーム等の万引きを防止するための関係業界による自主的な取組を支援する。
(警察庁、関係府省)
5.海外展開を拡大する
(1)JETRO、NEXI等を通じた海外展開を支援する
@) 2005年度も引き続き、コンテンツ海外流通促進機構への支援、映画・放送番組等コンテンツの海外見本市への出展や海外映画祭への出品の際に必要となる字幕作成のための支援等を行うことにより、コンテンツ産業の海外市場への進出を支援する。
(総務省、外務省、文部科学省、経済産業省)
A) 2005年度も引き続き、JETROによる海外市場調査など公的機関の情報収集機能を強化するとともに、映画、放送番組、アニメ、音楽、ゲームソフト、出版物等のコンテンツ関連企業が海外進出する上で留意すべき事項(判例や規制等)をまとめたハンドブックを作成するなど、必要な情報提供を行う。
(総務省、外務省、文部科学省、経済産業省)
B) 海外においてコンテンツビジネスを展開するためには、知的財産に関する保険の充実が不可欠である。このため、2005年度も引き続き、海外でのライセンス活動についてのリスクを補填する、NEXIの「知的財産権等ライセンス保険」の利用を促進する。
(経済産業省)
(2)東京国際映画祭の抜本的な強化を進める
 東京国際映画祭が3大国際映画祭に比肩する高い国際評価を得ることができるよう、2005年度も引き続き、映画祭にマーケット機能を付与してその場での商取引を可能にすることを支援するとともに、開催時期に合わせ地域映画の上映やシンポジウムなど映画関連の各種イベントを集中して実施することを支援するほか、ゲーム、音楽その他のコンテンツ関連イベントも併せて開催することを支援することで、東京国際映画祭の抜本的な強化を進める。
(文部科学省、経済産業省)
(3)世界への発信を強化する
@) 2005年度も引き続き、我が国において海外映画制作が行われることによる経済波及効果や国際マーケットへの進出の観点から、国際ルールの範囲内で、民間団体による海外諸国の団体との合作協定や交流促進協定(相互の映画祭支援や映画人教育交流支援等)締結、創作者等の国際交流などを支援するとともに、国際共同制作を促進する。
(外務省、文部科学省、経済産業省)
A) 我が国のコンテンツをいかして国家イメージを向上させるため効果の高い、国際交流基金、ODA等を通じたアニメ・教育番組など我が国コンテンツの海外発信支援について、2005年度も引き続き推進する。
(総務省、外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
(4)アジアとの連携を強化する
@) アジア全体のコンテンツ制作・流通のハブとなることを目指し、アジア各国のコンテンツ産業のトップを集めた「アジアコンテンツ産業セミナー」を2005年度に開催する。
(外務省、経済産業省)
A) アジアにおける信頼できるライセンシーづくりを目指し、2005年度にライセンシー研修事業等を実施する。また、アジアとの戦略的な連携・協業を図り、更なる国際展開を促進することを目的に、「アジアコンテンツビジネス研究会」を開催し、アジアをリードする高クリエイティブ性の維持・拡大を目指し、多種多様な作品を多種多様な形態で流通するビジネスモデルの構築を促進する。
(経済産業省)
6.ライブエンターテインメントを振興する
(1)業界の近代化・合理化を支援する
 コンテンツの重要な一部分であるライブエンターテインメントについては、業界の近代化・合理化に向け、2005年度中に、出演契約書のひな型の作成や舞台出演契約締結の徹底など、業界の自主的取組を奨励する。
(文部科学省、経済産業省)
(2)集積化に向けた取組を奨励する
 目の前で展開する本物志向の魅力を備えたライブエンターテインメントを集中的に国民が楽しむことができるよう、特定地域へのホール・劇場・映画館等の集積化などに向けた関係者の自主的な取組を2005年度から奨励、支援する。
(文部科学省、経済産業省、国土交通省)
(3)観光との連携を進める
 観光振興や地域の活性化につながるといったライブエンターテインメントの特性を活かし、地域・観光情報を含めたライブエンターテインメントのシアターカレンダーの作成等、観光との連携に関する関係者の自主的な取組を2005年度から奨励、支援する。
(文部科学省、経済産業省、国土交通省)
(4)実演家の活動環境を整備する
 2005年度も引き続き、プロダクション等に所属しない実演家等が、安全で安心して活動に取り組めるよう、実演家等の事故災害補償の在り方や労働契約によらない場合の出演契約の書面化の促進について検討した上、必要に応じ所要の措置を講ずる。
(文部科学省、厚生労働省)
7.コンテンツのアーカイブ化に関する取組を奨励・支援する
(1)コンテンツのアーカイブ化を促進する
 日本の漫画やアニメ等の貴重な資料、写真の散逸を防ぐとともに、海外からの視察者等への一元的な情報提供の場を確保する観点から、2005年度も引き続き、漫画やアニメ関係資料、写真の収集保存について、地域や民間等における取組に積極的に協力するとともに、それらの取組を奨励する。
(文部科学省)
(2)フィルムセンターの充実を図る
 映像コンテンツ制作の環境整備を一層促進するため、フィルムセンターにおける映像コンテンツの保存機能、普及や上映機能の充実を図るとともに、東京国立近代美術館フィルムセンターの独立機関化の円滑な実現に向け、2006年度中に取組を進める。
(文部科学省)
(3)放送番組センターの充実を図る
 放送番組センターによる放送番組の収集・保存機能、展示機能等の充実を図るため、関係者の意見を踏まえつつ、2005年度中に検討を行い、結論を得る。
(総務省)
(4)文化遺産を公開し、活用する
 2005年度も引き続き、文化遺産のオンライン構想を推進することにより、情報通信技術を活用して有形及び無形の貴重な文化遺産を幅広く公開や活用ができるよう、所要の措置を講ずる。
(総務省、文部科学省)
(5)歴史的公文書を保存・公開し、活用する
 歴史的公文書の公文書館への移管を促進し、そのデジタルアーカイブ化等を推進するとともに、2005年度から、歴史的公文書の散逸防止等に向けた現用公文書の集中管理に係る取組の検討及び電子媒体により作成された公文書等の管理・移管・保存の在り方の検討を開始するなど、貴重な歴史的公文書が幅広く保存・公開され、国民が活用できるよう、所要の措置を講ずる。
(内閣府)
(6)地域におけるデジタルアーカイブの拡充やネットワークの利活用を推進する
 地域における伝統・文化デジタルアーカイブの拡充やネットワークの利活用を推進するため、2005年度も引き続き、地域におけるデジタルコンテンツの制作や流通等の促進方策について検討し結論を得るとともに、地域におけるデジタルコンテンツに係る取組への顕彰活動を支援する。
(総務省、文部科学省、経済産業省)
(7)デジタル情報のアーカイブ化を促進する
 2005年度も引き続き、ホームページなどウェブ情報として存在する、散逸しやすい有用なデジタル情報のアーカイブ化や、その情報の利活用を促進するための技術や仕組みの構築及び実証を行う。
(総務省)
(8)コンテンツ制作の現場スタッフの技術の保存を奨励・支援する
 継承が困難となりつつある映画、アニメ等の現場スタッフの技術について、2005年度から、伝承・体系的な保存に取り組む大学等の関係者の自主的な取組を奨励、支援する。
(文部科学省、経済産業省)
(9)デジタルアーカイブ化のための研究開発を行う
 2005年度も引き続き、教育、文化や芸術分野における知的資産の電子的な保存や活用など、デジタルアーカイブ化に必要なソフトウエア技術基盤の構築のための研究開発を実施する。
(文部科学省)
8.改革のロードマップを実現する
 2006年度末までの「集中改革期間」における改革を実効あるものとするため、関係府省の取組の促進を図るとともに、目標の達成状況について毎年度点検を行い、「コンテンツビジネス改革のロードマップ」の改訂を行う。
(関係府省)
9.コンテンツ促進法を的確に運用する
(1)コンテンツの創造、保護及び活用を促進する
 コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関して基本理念や施策の基本となる事項並びにコンテンツ事業の振興に必要な事項等を定めたコンテンツ促進法が2004年6月に施行され、国、地方公共団体及びコンテンツ制作等を行う者の取組が加速化されたところであるが、2005年度も引き続き、関係者全体が同法を的確に運用し、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に寄与する。
(関係府省)
(2)「コンテンツ版バイ・ドール制度」の積極的な利用を促進する
 コンテンツ促進法第25条に規定する「コンテンツ版バイ・ドール制度」の関係府省における取組状況の定期的な調査等を通じ、2005年度も引き続き、同制度の積極的な利用を推進する。
(関係府省)


U.ライフスタイルをいかした日本ブランド戦略を進める

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 世界から愛され尊敬される日本となるためには、我が国の文化力を一層向上し、魅力ある「日本ブランド」を確立・強化していく必要がある。
 その際、食・地域ブランド・ファッションは、海外でも十分通じる優れたものが豊富に存在しており、こうした日本の優れたライフスタイルをいかした「日本ブランド」づくりが国家戦略上も重要である。
 これまで、ライフスタイルビジネスは、民間がその主役を担ってきているが、政府は、こうした民間の自由な競争の阻害要因を取り除き、更なる発展に必要な環境整備や支援に努めていくことが必要である。
 また、我が国の優れたライフスタイルやその背景にある文化について、国民自身が評価し、振興や教育に努めていくとともに、これまで関心が薄かった海外市場に対し、今後積極的に海外展開を行い、日本の魅力について戦略的に情報発信することが重要である。
1.豊かな食文化を醸成する
(1)優れた日本の食文化を評価し、発展させる
1)民間の食文化研究を促す
 2005年度から、料理業界、企業、大学、専門学校等が連携して実施する食文化研究の取組や伝統的な食文化を保存・活用する取組を積極的に支援するとともに、「食文化研究推進懇談会」など民間が主体となった具体的取組の成果を積極的に政策に反映する。
(文部科学省、厚生労働省、農林水産省、関係府省)
2)食の発展に貢献した者を積極的に顕彰する
 2005年度から、海外で活躍している者や外国人を含め、若い才能豊かな料理人や食の発展に貢献した者に対する顕彰を充実させる。
(文部科学省、厚生労働省、農林水産省)
(2)国民運動として食育を推進する
@) 食育基本法案が2005年通常国会に提出されている。同法案が成立した場合には、同法案を的確に運用する。
(内閣府、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、関係府省)
A) 2005年度から、生産者、料理人、食文化研究家、管理栄養士・栄養士、食生活改善推進員などが実施する、農業体験学校や地産地消、料理実習、バランスのとれた適切な食生活の普及などの実践的な食育活動に対する支援を充実させる。
(厚生労働省、農林水産省)
B) 子どもたちへの食育を充実させるため、学校においては、2005年度から、栄養教諭を中核とした食育を推進するとともに、専門調理師等の地域の優れた人材の協力を得て、学校と家庭、地域とが連携した食育を推進する。
(文部科学省)
(3)安全・安心と正直さが伝わる食材づくりを推進する
 消費者に信頼される食材のブランドづくりを推進するため、2005年度から、安全・安心で高品質な食材の生産体制を強化するとともに、流通段階等においても産地・生産者の情報等の積極的な提供を図る。
(農林水産省)
(4)食を担う多様な人材を育成する
@) 料理人の資質の向上のため、2005年度も引き続き、「調理師」及び「専門調理師・調理技能士」を育成するとともに、2005年度から、専門学校などの調理師養成施設等と料理業界の連携の促進など、調理師養成施設等において、基礎的な教育や多様なニーズに対応した実学的教育の充実のための環境整備を積極的に行う。
(文部科学省、厚生労働省)
A) サービスや経営を含めた総合的なマネジメント力を持った料理人等を育成するため、2005年度も引き続き、食関係の学部、学科の設置など、大学等による自主的な取組を支援する。
(文部科学省)
(5)日本食に関する正しい知識や技術を広く普及し、海外展開を積極的に行う
@) 2005年度から、海外の料理店を通じた日本食の普及を支援するとともに、在外公館やJETROによる日本食やその背景にある文化のPRを強化する。
(外務省、農林水産省)
A) 日本の料理技術を海外に伝えるため、2005年度に、海外でのワークショップや外国人シェフを対象とした日本の料理店等での実務研修など、料理人等の団体や専門学校が行う自主的な取組を積極的に支援する。
(外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省)
B) 料理人や料理店の積極的な海外展開を支援するために、2005年度にJETROが開始する海外調査の結果について積極的に活用する。
(厚生労働省、農林水産省)
(6)優れた日本産の食材を世界に普及させる
1)食材の輸出を倍増する
 農林水産物・食品の輸出額を2009年度までに倍増するため、2005年度から、海外の小売店における通年型の販売促進活動、商談会、テスト輸出など、販路の創出・拡大の取組を強化するとともに、輸出のネックになる各国の輸入に関する諸制度等の改善を求めていく。
(外務省、農林水産省)
2)輸出相手国内での知的財産権の管理を強化する
 輸出相手国内においても食材のブランド価値が的確に保護されるよう、2005年度から、新品種の育成者や生産者等が現地で育成者権、商標権等の知的財産権を取得、行使するよう支援するとともに、制度が不十分な国に対しては、制度の整備や改善を要求する。
(外務省、農林水産省、経済産業省)
2.多様で信頼できる地域ブランドを確立する
(1)魅力ある地域ブランドを生成する
1)戦略的な地域ブランドづくりを支援する
@) 生産者の意識喚起や戦略づくりを支援するため、2005年度から、業種間の連携や地域間の交流などを通じ、フォーラムの開催やアドバイザーの派遣を実施するとともに、各地におけるブランド化の成功事例を調査・提供する。
(農林水産省、経済産業省)
A) 特色ある原材料や気候風土をいかし、あるいは伝統的な手法により生産・製造された地域産品について、2005年度から、消費者の視点に立った調査、評価を行うことにより、多くの国民から支持される魅力ある地域ブランドづくりを促す。
(農林水産省)
B) 地域の特性をいかした製品の魅力を高め、全国さらには海外の市場においても通用する高い評価(ブランド力)を確立するため、2005年度も引き続き、地域の中小企業が共同で行う製品開発、販路開拓等を支援する。
(農林水産省、経済産業省)
2)産学官の連携及び観光産業との連携を支援する
 2005年度から、生産者、製造業者、流通業者、小売業者、大学、公的研究機関、地方公共団体等の産学官が連携した取組を支援するとともに、「観光カリスマ塾」の実施や観光産業との連携の事業化支援、成功事例集の作成・公表などを通じて、地域ブランドと観光産業との連携を支援する。
(文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省)
(2)地域ブランドを大きく展開する
@) 国内大規模消費地や海外市場への地域ブランドの展開を促進するため、2005年度から、地域ブランドを生産・販売する生産者団体や中小企業等による展示会や見本市の開催・出展、市場調査に対する支援を強化する。
(農林水産省、経済産業省)
A) 魅力のある地域ブランドを発掘し、ブランド力の強化と輸出を促進するため、2005年度から、JETROの国内貿易センターに配置される貿易の専門家を活用する。
(農林水産省、経済産業省)
(3)地域ブランドの価値を向上させる
 地域ブランドの価値を向上させるため、2005年度から、知的財産の活用マニュアルの作成やセミナー等での普及・啓発活動を行うことにより生産者等の戦略的な知的財産権の取得・活用を促すとともに、権利侵害の取締りを強化することによりニセモノを排除する。
(農林水産省、経済産業省)
(4)地域ブランドに対する消費者の信頼を向上させる
1)地域ブランドに関する基準を整備・公開する
@) 2005年度から、地域ブランドの地理的範囲や生産方法、品質などの基準の雛形を作成し、産地に提供することにより、地域ブランドの基準の明確化に対する支援を強化する。
(農林水産省)
A) 全国各地の地域ブランドに関する基準や情報について、消費者が簡易に閲覧できるようにするため、2005年度から、政府や食品関連団体のホームページで公表する。
(農林水産省)
2)景品表示法を厳正に運用する
 地域ブランドに関し消費者取引の適正化を図るため、2005年度も引き続き、一般消費者の協力を得て、景品表示法違反については都道府県とともに、厳正かつ迅速に対処する。
(公正取引委員会)
3)JAS法に基づく品質表示の適正化への取組を強化する
@) 2005年度も引き続き、地方農政事務所や食品表示ウオッチャーによる活動により、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)に基づく不正表示の取締りを強化する。
(農林水産省)
A) 銘柄名に含まれる地名と主たる飼養地が異なる畜産物については、2005年度中に、主たる飼養地が属する都道府県名等の表示を義務化し、また、加工食品については、原料原産地表示の対象となる食品を大幅に拡大し、2006年度中に表示を義務づけるなど、JAS法に基づく品質表示基準を強化する。
(農林水産省)
4)外食産業による原産地等の表示を促進する
 外食産業における原産地等の表示を促すため、2005年度中にガイドラインを整備するとともに、2005年度から、外食産業による原産地等の表示の自主的な取組を奨励・支援する。
(農林水産省)
(5)地方公共団体と産地が一体となった効果的な情報発信を奨励・支援する
 2005年度も引き続き、地域ブランドの認証制度や地域ブランドを活用した観光戦略づくりなど、地方公共団体による自主的な取組を支援するとともに、地方公共団体が自主的に連携してネットワークを形成し、地域ブランドの海外展開の促進や国内外の違法地域ブランドの流通防止などに取り組むことを奨励する。
(農林水産省、経済産業省、国土交通省)
(6)地域ブランドの保護制度を整備・活用する
 地域の名称及び商品又は役務の名称等からなる商標について、地域団体商標として登録を可能とする「商標法の一部を改正する法律」が2005年6月に成立しており、これを地域ブランドの保護手段として積極的に活用する。また、育成者権の保護を加工品へ拡大する種苗法の改正案が2005年通常国会に提出されており、同改正案が成立した場合には、これも積極的に活用する。さらに、2005年度から、不正競争防止法を積極的に活用して、地域ブランドを保護する。
(農林水産省、経済産業省)
3.魅力あるファッションを創造する
(1)日本のファッションの魅力を高め、国際発信力を強化する
 2030年には衣料品輸出のGDP比を先進国並みにすることを目指し、東京を海外の有力なバイヤーやジャーナリストを呼び込めるような情報発信地とするため、以下のような施策を行う。
1)産業界における中・長期的発展戦略の策定を促す
 世界をリードする日本ファッションを確立するため、例えばクリエーションの創の力・素材の匠の技・アパレルや小売の商の力の連携による国際競争力の向上、新進デザイナーによる創造活動の活性化、ファッションビジネスにおける人材育成や海外市場の開拓などを盛り込んだ中長期的発展戦略を、産業界において、2005年度中に策定することを促す。
(経済産業省)
2)東京の展示会等の日程の集中化により発信力の相乗効果を図る
 2005年度中に、東京を海外からの有力なバイヤーやジャーナリストを呼び込める情報発信地とするため、質の高いファッション関係のイベントが一定期間に集約されるような産業界の取組を促す。
(経済産業省)
3)発信の場・見せる場を提供する
 2005年度も引き続き、国立美術館においては、ファッションを展示活動の対象とする取組が行われるよう促す。また、国立美術館や国立博物館において、休館日や閉館後の施設を活用して、ファッションショーや新製品発表会等の企業向けの貸出しについて取り組むよう促す。さらに、地方公共団体においても、同様の取組を自主的に行うことを奨励する。
(文部科学省、関係府省)
4)日本のファッションを積極的に海外に発信する
@) JETROでは中国等海外におけるテキスタイル及び衣料品の展示会の主催などにより日本ファッションの総合展示会を海外で展開する取組を行っていくところであるが、2005年度も引き続き、在外公館やJETRO等を通じて産業界やデザイナーのブランド発信を促進するなど、積極的に広報及びビジネス支援を行う。
(外務省、経済産業省)
A) 2005年度中に、産業界として、日本のファッションビジネス情報を総合的に発信する体制を整えるよう促す。
(経済産業省)
(2)日本のファッションビジネスの国際競争力を高める
1)つくり手の能力を高め、ビジネスの基盤を強化する
@) 2005年度も引き続き、素材ビジネスが下請体質から脱却するため、ファッション製品の素材からの差別化に主体的に貢献できるよう、デザイナー等を活用し、市場の潜在的ニーズを踏まえた商品開発を自ら行う取組を支援する。
(経済産業省)
A) 2005年度中に、素材ビジネスの持つ匠の技、デザイナーの持つ創の力、小売・アパレル等の持つ商の力を融合して新たな強い価値を創造するため、「クリエーション・ビジネスフォーラム」を開催する。また、この開催に対して産業界の協力を促すとともに、積極的に広報を行う。
(経済産業省)
B) 2005年度から、企業においては国内外を問わずインターン等の受入れのさらなる充実など、海外の人材との協働や諸外国との人材交流により、国際市場への展開を前提としたブランド開発を促す。大学や専門学校においても、2005年度から海外のファッションスクールからの研修生や留学生の受入れの取組などを通じ、国際感覚の中でデザイン創造力を育成することを促す。
(文部科学省、経済産業省)
2)取引の公正・透明化を促す
 2005年度も引き続き、産業界における商取引を改善し、独占禁止法及び下請代金支払遅延等防止法の厳正な運用を行うとともに、多様な企業や個人が、公正で透明な取引関係の中で高い付加価値を生む事業活動に取り組めるよう、民間におけるガイドラインの制定・普及等を促す。
(公正取引委員会、経済産業省)
(3)デザイナー及びデザイナーのパートナーとなる人材を発掘し育成する
1)新進デザイナーの事業活動を支援する
 a)2005年度も引き続き、産業界が、国内外における展示会等の開催において、新進デザイナー等にビジネス機会を提供するなど、日本のファッションビジネスに対する内外のバイヤーやジャーナリストの関心を高める工夫をすることを推進する。
 b)2005年度から、百貨店など産業界が、潜在力のある国内の新進デザイナーに対し、売り場の提供などビジネス機会を提供する工夫を行うことを促す。
 c)2005年度から、中小企業へのビジネス支援制度の利用を促進するとともに、産業界におけるデザイナーへの資金面の支援を促す。
(経済産業省)
2)ファッションに関する学部、専門職大学院の設置を推進する
 2005年度も引き続き、デザイナー、ビジネスマネジメント人材及びデザイン創作活動を支える人材の育成を充実するため、ファッションに関する学部、専門職大学院の設置など大学等による自主的な取組を支援する。
(文部科学省)
3)民間機関における人材育成を充実させる
i) 2005年度から、民間機関において、産地の特徴をいかしたテキスタイル開発人材やものづくりの分かる商品の企画・開発人材の育成を図り、デザイナー、ビジネスマネジメント人材及びデザイン創作活動を支える人材の育成を充実することを促進する。
(経済産業省)
A) 2005年度中に、産業界において、「新人デザイナーファッション大賞」をアジア最高峰の新進デザイナーの登竜門とすべく、その強化を図るよう支援する。また、2005年度も引き続き、繊維産地の組合において、地方公共団体等と共同しつつ、若手デザイナーや学生を対象としたコンクールの開催、充実を図るよう支援する。
(経済産業省)
4)子どもの頃から美的な感性を磨く機会を充実する
 2005年度も引き続き、国立美術館、国立博物館のみならず地域の美術館、博物館においても、小中学生の観覧について年間を通じた優遇措置を実施することや子ども達への教育普及活動など、子どもの頃から美的な感性を磨く機会を充実することを促す。
(文部科学省、関係府省)
5)子どもに創作とビジネスを同時に体験させる
 学校、自治体及び産業界の協力の下、小学生高学年を対象に、ファッション・キッズ・スクールを開校し、商品デザインなどの企画制作から販売活動までの一連のビジネスを体感させることを通じて、創造性を育成し、自己実現の楽しさを体感させているところであるが、2005年度も引き続き、こうした学校や産業界の自主的な取組を促す。
(文部科学省、経済産業省)
6)ファッションビジネスに貢献した者をタイムリーに表彰する
 2005年度も引き続き、日本のファッションの発展に貢献した者に光を当てるため、官民問わず、ビジネス面での功績なども含め考慮した上で、現在活躍している人をタイミングよく表彰する。
(経済産業省)
(4)知的財産の利用環境を整える
1)知的財産権の普及啓発を行う
 2005年度中に、各事業者の知的財産権の意識を高めるため、ファッションビジネス全体として模倣を排除する姿勢を表明するとともに、産業界が主催するセミナーやイベントにおいて、デザインに関連する部分について知的財産権を取得することを奨励する。
(経済産業省)
2)デザインを守る法律を整備する
 模倣となる商品形態を明確化する内容を盛り込んだ不正競争防止法改正案が2005年通常国会に提出されている。同法案が成立した場合、2005年度中速やかに、その内容を周知する。
(経済産業省、関係府省)
4.日本の魅力を戦略的に発信する
(1)日本の魅力を再評価する
@) 2005年度も引き続き、日本の魅力について国民の理解の向上を図るため、我が国の伝統や文化の理解向上に関する教育を充実する。
(文部科学省)
A) 2005年度も引き続き、大学が自主的な判断により競争的資金なども活用して、食やファッションなど我が国の文化・ライフスタイルに関する教育を充実することを支援する。
(文部科学省)
B) 2005年度から、日本の魅力の源泉である我が国のライフスタイルやそれに関する技術に関し、その魅力の理解を高める調査研究を推進・奨励するとともに、必要に応じ記録のアーカイヴ化や文化・技術遺産の調査・保存に努める。
(文部科学省、経済産業省、関係府省)
C) 2005年度から、政府の公式行事における正装の奨励や夕食会や晩餐会等での日本食の提供を積極的に行うなど、政府も自ら率先して日本の魅力を高める努力を行う。また、国際儀礼における日本食の提供方法の開発や国際的な認知度の向上に関する取組も積極的に推進する。
(外務省、関係府省)
(2)日本文化の発展や海外発信に貢献した者を顕彰する
 2005年度も引き続き、日本文化の発展や海外への紹介に功績のあった者を積極的に顕彰の対象とする。その際、海外の功労者の把握に努め、外国人を積極的に顕彰するとともに、年齢にとらわれることなく、速やかに顕彰することにより、我が国の文化的魅力を伝達することを積極的に支援する。
(外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、関係府省)
(3)海外への戦略的な情報発信を行う
@) 2005年度から、個々の企業等の海外展開であっても、日本ブランドの発信に貢献するという国益にかんがみ、在外公館等が率先して、催し物の場所の提供や相手国政府への仲介などにより、民間を支援するよう努める。また、政府自らも、在外公館等を通じて「日本ブランド」の発信を積極的に推進する。
 また、2005年度から、国際空港等、外国人の目に付きやすい場所を活用し、日本に関する各種情報の発信や「日本ブランド」産品の販売等を促進する。
(外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、関係府省)
A) 2005年度の出来るだけ早い時期に、ハイレベルの関係府省会議を設置し、在外公館、JETRO、国際観光振興機構、国際交流基金なども活用した日本の魅力の発信戦略を立案・実施する。あわせて、我が国の魅力について、海外向けを中心とした発信を積極的に行うとともに、海外における日本のイメージについて調査・把握を行い、上記戦略への反映を行うなどの取組を推進する。
B) 2005年度に、官公需契約において、中小・ベンチャー企業の知的財産を活用した製品を用いることがその目的達成上合理的と考えられる場合には、当該製品の優先的な調達が積極的に進められるよう運用の改善を行う。また、地方公共団体に対しても同様の措置を講ずるよう促す。
内閣広報室、内閣府、外務省、文部科学省、
経済産業省、国土交通省、関係府省
B)2005年度から、我が国の文化発信において、全体的かつ継続した取組を行うため、海外のニーズや国内の状況を把握し、国内の芸術団体や芸術系大学等に情報を提供するなど、連携協力する体制を構築し、我が国の文化の海外への発信を効果的かつ効率的に推進する。
(外務省、文部科学省)




第5章 人材の育成と国民意識の向上
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 知的財産制度を支えるのは人である。大学、企業、法曹、弁理士、行政等の各界において、知的財産の創造、保護、活用といった知的創造サイクルの各分野の知的財産人材として、研究、生産、営業、企画、企業経営、コンテンツ、ビジネス、法務等の各職種それぞれの役割に応じた多種多様な人材が求められており、そのような異なるスキルを持つ、国際的に通用する人材をより多く確保・育成していく必要がある。
 このため、このような役割に則した専門家や実践的な実務家を育成し、企業や大学等で積極的に活用することが重要と考えられる。
 加えて、児童・生徒、学生、社会人それぞれに対して知的財産に関するきめの細かい教育を行って国民の知的財産に対する理解を深めていくことも必要である。

1.知的財産関連人材育成の総合戦略を推進する
 知的財産人材として、各界(大学、企業、行政、法曹、弁理士など)、各分野(知的創造サイクルの創造、保護、活用)、各職種(研究、生産、営業、企画、企業経営、コンテンツ、ビジネス、法務など)において、異なるスキルを持つ、国際的に通用する人材が求められている。これらの人材を多数育成し、競争により質を高めていくことが必要である。
 そのため、2005年度から10年間で知的財産人材を現在の約6万人から12万人へ倍増し、マルチメジャー人材や国際展開のできる人材、ビジネス・マインドの高い人材を育成し、積極的に活用していくことを目標とし、以下のような具体的な「知財人材育成総合戦略」を推進する。
ア)知財人材像の明確化
 各界、各分野、各職種の知財人材に関し、質及び人数に関する現状とニーズを調査し、求められる役割や活用の場とそれに対応する人材像を明らかにする。
イ)各知財人材のスキルの明確化
   各知財人材に求められているスキル(知識、技術・技能の範囲とレベル)を調査し、目標を設定する。
ウ)育成手段の明確化
   各知財人材に求められる知識、技術・技能を身に付けるための仕組みを構築し、10年間のロードマップを作成し、毎年度その評価を行う。
エ)対応策
a)大学・研究機関における人材育成
 ・理系研究者:知財創造を中心とした知財知識の習得
 ・教員:理系分野、経営関連分野等における知的財産教育の充実
 ・知財本部・TLO職員:外部人材の導入、外部人材のノウハウの導入
 ・事務職員:一般的な知財知識の習得
 ・コンテンツ人材:実務家教員による教育の充実
 ・法科大学院:博士課程修了者の進学支援
b)企業における人材育成
 ・研究、開発者、生産者:知財の創造、保護を中心とした知財知識を習得
 ・営業、企画者:知財の保護、活用を中心とした知財知識の習得
 ・知財部員、法務部員:知財研修の充実、他部門・外部人材との人事交流
 ・経営者:研修の充実や他部門との交流人事
c)司法関係機関による法曹人材の育成
 裁判官、弁護士:国際交流、外部における研修の推進、知財・技術に関する研修の充実
d)知財関連機関における人材育成
 ・弁理士:スキルの明確化と高度化、弁理士研修の強化
 ・従来技術調査人材:特許審査官の検索ノウハウの提供
 ・技術翻訳者:技術、知財、外国語教育の充実
 ・経営コンサルタント:中小企業大学校などにおける知財研修の充実
e)行政機関における人材育成
 ・知財関連官庁:専門研修の充実、外部との人事交流の推進、国際交流の推進
 ・一般:調達担当官や各種相談担当官などの行政担当者への研修の充実
 (総合科学技術会議、法務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)


2.知的財産関連の専門人材を育成する
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(1)知的財産専門人材を量的・質的に拡大する
 1)弁護士の大幅な増員や資質の向上を図る
i)2005年度も引き続き、法曹人口の大幅な増加を図る。その中で、知的財産に強い弁護士を増加させる。
 (法務省)
ii)司法試験において、受験者が選択する科目により、著しい不公平が生ずることがないよう、2005年度も引き続き出題の在り方を検討し、適切に対応する。
 (法務省)
iii)知的財産法に関する研修には、多数の弁護士が自主的に参加しているところであり、2005年度も引き続き、知的財産に関する研修への参加や講義の受講等弁護士の自己研鑽を通じて、知的財産に強い弁護士が増加することを期待する。また、2005年度も引き続き、弁護士が企業内で知的財産実務に直接携わることができるよう意識の改革や環境の整備を促す。
 (法務省、関係府省)
iv)2005年度から、知的財産に強い法曹を積極的に育成するため、知的財産や技術に精通した人材など、多様な人材がインセンティブを感じられるような多面的対策を検討し、必要な措置を講ずる。
 (総合科学技術会議、法務省、文部科学省、関係府省)
 2)裁判官の知的財産に関する識見の充実を期待する
  2005年4月に設置された知的財産高等裁判所をはじめとする知的財産関係訴訟を取り扱う裁判所において、知的財産に関する裁判が、経済社会の実態をも踏まえ、より適正かつ迅速に行われるよう、国際交流や知的財産に関する研修の充実により、裁判官の知的財産に関する識見がより一層充実することを期待する。
 3)弁理士の大幅な増員や資質の向上を図る
i)2005年度も、弁理士の大幅な増加を図る。その中で、経営や会計など企業の知的財産戦略に関連した分野にも明るい弁理士を増加させるよう、関係研修機関等の取組を促す。
 (経済産業省)
ii)弁理士の量的・質的拡大を図るため弁理士試験の在り方を見直すべく、2005年度から検討を開始し、必要に応じ弁理士法の改正法案を提出する。
 (経済産業省)
iii)新たな制度の運用状況や弁護士・弁理士の活動状況などの実情も踏まえ、特定侵害訴訟における単独受任等の検討も含めた弁理士の積極的活用等について、2005年度以降検討を行う。
 (法務省、経済産業省)
iv)弁理士の資質の向上を図るため、基礎的な新人弁理士の研修や知的財産に関する国際制度・実例による研修など幅広い観点からの弁理士研修の充実のほか、弁理士試験合格者の実務能力を担保する方策、いわゆる付記弁理士のための研修等について、2005年度も引き続き、日本弁理士会の取組を促すとともに、大学(法科大学院、知的財産専門職大学院)、工業所有権情報・研修館等を活用する。
 (文部科学省、 経済産業省)
 4)審査官・審判官の資質の向上を図る
i)今後大量に採用が予定される任期付審査官については、通常より短期間で育成していく必要があるため、2005年度も引き続き、審査・審判実務の経験者を含む外部人材の活用を含め、研修機能を強化する。
 (経済産業省)
ii)任期付審査官は、特許審査の経験を有する貴重な人材であることから、2005年度に中小企業支援など任期終了後の知的財産人材としての具体的な活用方策を検討し、その結果を明らかにする。
 (経済産業省)
iii)2005年度も引き続き、先端医療等の先端技術の審査・審判、国際的な審査協力の推進等のため、審査官及び審判官の学会派遣や研修等を強化する。
 (経済産業省)
iv)2005年度も引き続き、植物品種に関する高度かつ先端的な知識の習得と国際的な審査協力の推進等のため、審査官の研修等を強化する。
 (農林水産省)
 5)サーチャーの資質の向上を図る
i)2005年度も引き続き、独立行政法人工業所有権情報・研修館において、登録調査機関で従来技術文献の調査を行う調査業務実施者を育成する研修を着実に実施する。また、この調査業務実施者に対して、特許審査官の検索ノウハウを積極的に提供する
 (経済産業省)
ii)2005年度から外国文献の調査を行う人材を育成すべく、サーチャーの中国語・韓国語等を含む外国語教育を充実させるよう、弁理士事務所や調査機関の取組を促す。
 (経済産業省)
 6)技術翻訳者の資質の向上を図る
  2005年度より、技術翻訳者を養成するため技術、知的財産制度、中国語・韓国語等を含む外国語の教育を充実させるよう、弁理士事務所や技術翻訳機関の取組を促す。
 (経済産業省)
 7)標準化に関する人材を育成する
  大学その他の教育機関において、2005年度も引き続き、標準化に関する人材育成を進める。これを通じて、例えば、大学に対し、ビジネスに直結する標準化に関する人材の育成や既存の知的財産専門家コース、技術経営(MOT)コース等における標準化に関する教育の提供等が行われるよう、その自主的な取組を奨励する。
 (総合科学技術会議、総務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)
 8)ポストドクター等を知的財産専門人材として活用する
  知的財産関連の紛争を未然に防止し、また、発生した場合に迅速に処理するためには、法律と技術の両方をわかる人材を弁護士として比較的短期間に相当数育成することが求められる。このような高度な知的財産専門人材の育成のため、2005年度中にポストドクターを含め博士課程修了者が法科大学院に進むインセンティブについて検討し、必要な措置を講ずる。
 (総合科学技術会議、文部科学省、関係府省)
 9)産学連携を担う若手人材の育成を図る
  2005年度から、若手研究人材に対してTLO、知的財産本部、大学発ベンチャー、ベンチャーキャピタル等でOJTの研修を通じて知的財産を事業化に結びつけるための能力開発を行う取組を支援する。
 (総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
 10)人材交流により実務能力の向上を図る
i)2005年度も引き続き、工業所有権情報・研修館における審査基準や特許請求の範囲の理想的な記載方法等をテーマとした、弁理士・弁護士・企業の知的財産部員による討論研修を奨励する。
 (経済産業省)
ii)知的財産関連業務は広範にわたり、各知財専門人材が幅広い分野に精通していることが求められており、組織的にも広範にわたる知的財産関連業務に迅速かつ的確に対応できるよう、2005年度も引き続き、産学官連携サミット、知的財産に関する研究会、知的財産相談窓口など様々な機会を通じて知的財産専門人材の交流や情報交換の場を形成する。
 (総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
(2)知的財産専門人材育成機関を整備する
 1)柔軟で実践的な知的財産教育の環境を整備する
i)2005年度も引き続き、法科大学院、技術経営(MOT)プログラム、知的財産専門職大学院、知的財産を専攻する学部・学科について、夜間及び休日専門の法科大学院の創設や夜間の講座の拡充等、社会人教育や実務家教員の参画を容易にするための各大学の取組を促すとともに、大学の特性に基づきそのような取組を適切に評価することを促す。
 (総合科学技術会議、文部科学省)
ii)2005年度も引き続き、法科大学院、知的財産専門職大学院、MOTの学生の経済的負担の軽減に資する措置を実施する。
 (文部科学省、関係府省)
iii)2005年度も引き続き、知的財産分野に必要な技術と法律・経営といった文理融合型の人材や法科大学院、知的財産専門職大学院、MOTの各プログラムを総合的に理解した人材の充実を図るため、各大学におけるジョイント・ディグリーの取組を奨励する。
 (文部科学省)
iv)2005年度も引き続き、知的財産分野に精通し、研究開発、経営、起業等に豊富な知識・経験を有する民間企業等の人材を、法科大学院、知的財産専門職大学院、MOT、知的財産を専攻する学部・学科の教員又は講師として積極的に活用するよう促す。
 (総合科学技術会議、文部科学省)
v)2005年度も引き続き、競争原理に基づいて優れた取組を選定し財政支援を行う各種のプログラムにおいて、知的財産の分野を支援する。その上で、知的財産教育に取り組む法科大学院や、知的財産専門職大学院、更には技術経営プログラムなどにおける優れた取組を促進し、高等教育機関における知的財産教育を充実させる。
 (文部科学省、関係府省)
 2)法科大学院における知的財産教育を推進する
i)2005年度も引き続き、法科大学院の教員資格については、法学部の教育経験にとらわれず、実務経験を重視して、専任教員に関する審査を行う。
 (文部科学省)
ii)2005年度は、2004年度に調査分析した法科大学院の入学者選抜状況を公表し法科大学院にも周知することにより、各法科大学院の入学者選抜方針に基づく入学試験において理系出身者に配慮することや、法科大学院の学生が他の大学院等における技術系科目を受講できるようにするといった法科大学院の自主的な取組を促す。
 (文部科学省)
iii)2005年度も引き続き、法的素養を有する者が技術的素養を習得して知的財産人材として活躍できるよう法科大学院と理系大学院との連携を促す。
 (文部科学省)
iv)74校すべての法科大学院において知的財産法の教育に取り組んでいるが、2005年度も引き続き、知的財産に重点を置いた教育を行うなど知的財産法に関する教育を一層充実させる法科大学院の自主的な取組を促す。加えて、米国LLM(法学修士コース)なども参考にして、知的財産専門家の教育を充実させる法科大学院の自主的な取組を促す。
 (文部科学省)
v)2005年度も引き続き、弁護士、弁理士その他の社会人が、リカレント教育の一環として、知的財産についての基本的な知見を習得したり、知的財産についてのより一層専門的な研究を行うために、法科大学院において知的財産法の講義を受講したり、研究を行うことができるよう、法科大学院の自主的な取組を促す。
 (文部科学省)
 3)知的財産専門職大学院における知的財産教育を推進する
  2005年度も引き続き、知的財産専門職大学院において、弁護士、弁理士に限らず、広く知的財産に携わる専門家を目指す者に対して、実務、ビジネス、知的財産政策、国際面を含めた教育を施し、知的財産ビジネスを多方面で支援できる知的財産専門家の育成を促す。
 (総合科学技術会議、文部科学省)
 4)技術経営(MOT)プログラムを推進する
i)2005年度も引き続き、科学技術の事業化を戦略的にマネジメントでき、国際的にも通用する専門家を養成するため、技術系大学卒、技術者を主な対象に、文理融合による実践的教育を行うMOTプログラムを実施する各大学の自主的な取組を促す。
 (総合科学技術会議、文部科学省)
ii)2003年度には約1千人であったMOTプログラムの受講者を2007年度までに年間1万人とすることを目指し、各大学におけるMOTの教育プログラムの開発支援を行う。その際、技術の標準化や知的財産管理に関する内容を盛り込むよう各大学の自主的な取組を促す。
 (総合科学技術会議、経済産業省)
 5)知的財産人材の研修や能力評価に関する民間の自主的な取組を推奨する
  2005年度も引き続き、知的財産関連人材への動機付けを高めるとともに、そのような人材を求める側のニーズに応えるべく、団体、企業による知的財産の研修や実務者や翻訳者などの能力を評価する検定を利用することによって知的財産人材の育成を進める民間の自主的な取組を推奨する。
 (経済産業省、関係府省)
3.知的財産の教育及び普及・啓発を推進する
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(1)知的財産教育を推進する
 1)幼少から大学の各段階における知的財産教育を推進する
  小学校の早い段階から初等中等教育、大学・大学院での教育の各段階において、知的財産の創造や知的財産の尊重等知的財産マインドの醸成を図るため、2005年度も引き続き、各段階に応じた知的財産教育を推進する。また、2005年度から、理系等の学生に対しては、学部・大学院の段階で、知的財産の基礎について学ぶ機会をつくるよう促す。
 (総合科学技術会議、文部科学省)
 2)知的財産教育の手法を研究する
i)2005年度は、特許権や著作権などを統一した知的財産教育のプログラムを策定するとともに、学校での知的財産教育を支援するため、初等中等教育向けの統一した教材の作成・提供、教員向けの研修等の実施や手引書の作成、学校における知的財産教育の具体的手法の研究開発など、知的財産に関する教育事業を実施する。
 (文部科学省、経済産業省)
ii)eラーニングは、いつでもどこでも効率よく自己研鑽を図る手段として、知的財産の多様な研修機会の提供に資するものであることから、2005年度も引き続き、特許庁職員に対する研修から導入を開始し、順次、産学官の人材育成においてその導入を進める。
 (総合科学技術会議、経済産業省)
 3)知的財産の教育者を育成する
 初等中等教育や大学、民間企業など広範な分野において知的財産に関する人材の育成が求められているため、2005年度も引き続き、最新かつ実践的な教育プログラムに関する研究やその成果について積極的に情報提供するとともに、集中的な研修を通じて指導者・講師を養成する。
 (総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省)
 4)国際的な連携を進める
 知的財産を巡る問題は国際的な色彩を一層強めていることを踏まえ、各国の知的財産制度などに精通し、国際的にも通用する知的財産人材を育成するため、2005年度も引き続き、大学がそれぞれの目的・理念等に応じ、海外の大学等との連携を進め、海外の知的財産専門家などを活用することを促す。
 (総合科学技術会議、文部科学省)
 5)人材間のネットワークを形成する
i)2005年に構築された弁護士知財ネットや日本弁理士会の地域アクセスポイントなどのネットワークが相互に有機的な連携を図るよう促すなど、2005年度も引き続き、知的財産に関するネットワーク構築を積極的に支援する。
 (総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
ii)2005年度も引き続き、法学・経済学・理工学など幅広い観点から知的財産権制度について研究を推進していくとともに、次世代の知的財産制度を担う人材や研究者等を育成し、これらの人材のネットワークを形成する。
 (文部科学省、経済産業省)
(2)国民の知的財産意識を向上させる
 1)行政職員の知的財産意識を向上させる
  2005年度から知的財産専門官庁や知財関連部署は、専門研修を充実するとともに、外部との人事交流や懇談会などを通じ、大学や企業などのユーザーのニーズを把握し、質の高い知的財産行政サービスを提供する。一般の行政官庁においては、幹部を始め、調達担当官や各種相談担当官など、行政担当者の知財意識を高めるため、研修の充実等の方策を講ずる。
 (文部科学省、農林水産省、経済産業省、関係府省)
 2)産業界の意識を改革する
  2005年度も引き続き、企業の経営者側が優れた研究成果の価値を見いだす、言わば「目利き機能」の向上を図ることにより、知的財産活用能力の向上を図るよう奨励する。また、各企業の経営者、実務担当者が、知的財産を正しく理解し、得られた研究成果を知的財産として戦略的に保護・活用できるよう、企業の経営者、実務担当者向けの知的財産戦略セミナー、シンポジウムの開催や企業と関係府省との意見交換を行う等の普及啓発活動を行う。
 (総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、関係府省)
 3)国民の啓発活動を強化する
  2005年度も引き続き、児童・生徒、大学生、社会人一般、実務者向けに、民間の知的財産の専門家をも活用しつつ、それぞれの特性を踏まえた知的財産に関するセミナーの開催を行うとともに、国民から募ったキャッチフレーズのキャンペーンを行うなど普及・啓発事業を充実させる。
 (文部科学省、経済産業省)
 4)知的財産に関する総合的かつ学際的な研究を推進する
  2005年度も引き続き、情報学や環境学の発達によって、情報産業や環境関連産業が発達したことにかんがみ、科学技術、コンテンツ、法学、経営学等の多様なアプローチに基づき、知的財産に関する総合的かつ学際的・横断的な研究を推進する。
 (総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省)
 5)国際的な研究・研修機能を充実させる
  2005年度も引き続き、アジアの知的財産人材育成の推進、及び我が国の実務者の国際競争力の向上等を図るため、官民の適切な役割分担の下で、知的財産研究・研修機能の充実を図る。
 (文部科学省、経済産業省)
 6)知的財産関連統計の充実・活用を図る
  2005年度も引き続き、ユーザーの多様なニーズに対応した政策展開に資するよう、知的財産政策の企画立案の基礎となる知的財産関連調査統計の充実を図るとともに、その幅広い活用を図る。
 (総務省、経済産業省)



<成果>
知的財産戦略の進捗状況
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1.創造分野
 (1)大学知的財産本部
   2003年7月、大学の知的財産の管理・活用を戦略的に実施するため、「大学知的財産本部整備事業」実施機関として全国で43の大学知的財産本部が発足した。大学知的財産本部は、民間企業経験者や弁理士等の外部人材の活用を進めており、2004年6月時点では約1,300名の人員のうち約500名が外部人材である。
 なお、産学官連携を行っている全国の国公私立大学等490校に対する調査によれば、約6割の293校が知的財産の管理活用体制を整備済み又は整備予定である。
 (2)技術移転機関(TLO)
   大学等の研究成果を民間に移転する技術移転機関(TLO)については、2003年度に承認TLO5機関、認定TLO2機関、2004年度には承認TLO3機関、認定TLO1機関が発足したため、2004年度末時点で全国の承認TLOは39機関、認定TLOは6機関となった。
 また、技術移転実績が特に優れたTLO(スーパーTLO)を他のTLOの専門性を補完する存在として重点支援することにより、技術移転人材の育成及び技術移転システムの強化を図るため、2004年度において7機関がスーパーTLOとして選定されている。
 (3)機関帰属原則を始めとする学内ルール
   2004年4月の国立大学法人化を契機に、「大学知的財産本部整備事業」の実施機関である大学を中心に、産学連携や技術移転活動を効率的に実施するために大学教員の発明に対する権利を大学に帰属させるという機関帰属原則を始めとして、各種のルールが整備されつつある。
 なお、産学官連携活動を行っている全国の国公私立大学等490校に対する調査によれば、機関帰属原則を採用している大学等は、約4割弱の187校である。

「大学知的財産本部整備事業」実施43機関のルール整備状況(2004年6月)
「知的財産ポリシー」を整備済みの機関40件
「職務発明関係規定」を整備済みの機関41件
「利益相反ポリシー」を整備済みの機関29件
出所:総合科学技術会議第21回知的財産戦略専門調査会(2005年1月27日)資料4

 (4)大学発特許出願件数及び実施料
   大学知的財産本部やTLOの整備等を受けて、大学の特許出願件数及び実施料収入は増加している。他方、日米を比較すると、特許出願件数に比べて技術移転実績には格差が存在する。

「大学等の特許出願件数」及び「大学等の実施許諾件数及び実施料収入」については、文部科学省資料(国立大学等の国有特許分)及び経済産業省資料(承認TLOに係る特許分)により合算して算出。
 (出所:文部科学省)


技術移転活動の日米比較
 日本米国
機関数大学知財本部等の整備119機関
承認TLO39機関
165機関
大学研究者数178千人186千人
特許出願件数2,981件7,203件
ライセンス件数593件3,855件
ロイヤリティ収入9.8億円1,071億円
・日本の機関数は、2004年6月現在(文部科学省)、承認TLO数は2005年5月現在(経済産業省調べ)
 ・日本の特許出願件数、ライセンス件数、ロイヤリティ収入は、文部科学省資料(国立大学等の国有特許分)と経済産業省資料(承認TLOに係る特許分)により合算して算出(2003年度)。
 ・米国の数字は、2003年度実績("AUTM License Survey 2003FY"より)
 ・大学研究者数は日本、米国ともに1999年(OECD調べ)

 (5)大学発ベンチャー
   2001年5月、大学発ベンチャーを3年間で1000社にすることを目標とした「大学発ベンチャー1000社計画」が掲げられた。その後、大学発ベンチャーの数は着実に増加しており、2003年度には199社が、2004年度には129社が新たに設立された。2004年度末時点で、大学発ベンチャーの設立累計は1,112社に及んでいる。
 これによる経済効果は、雇用者数で直接効果が約1.1万人、売上高が約1,600億円、間接的な経済波及効果は約2.1万人、約3,000億円と推計される。

 (6)競争的資金の間接費の特許関連経費への充当
   特許関係経費を安定的に確保するための一つの方策として、2005年3月、「競争的資金の間接経費の執行に係る共通指針」が改正され、競争的資金の間接費を特許関連経費に充当できることが明確化された。

 (7)大学における営業秘密の管理
   大学において産学連携の推進や知的財産の適切な管理を円滑に進めるために、2004年3月、契約における秘密管理モデルが作成され、2004年4月、「大学等における営業秘密管理指針作成のためのガイドライン」が取りまとめられた。

 (8)大学知財管理・技術移転協議会
   大学知的財産本部及びTLOの連携・協力を促進するため、2003年8月、米国大学技術管理者協会(AUTM)をモデルとして、従来の「TLO協議会」が「大学知財管理・技術移転協議会」に改組され、大学知的財産本部の参加が可能になった。2005年3月時点で、38のTLO及び29の大学知的財産本部が「大学知財管理・技術移転協議会」に参加している。

 (9)職務発明
   職務発明に係る相当の対価を巡っては、昨今、紛争が多発し、企業の研究開発投資活動への不安定性の増大や従業者が使用者の報償規程に納得していないといった問題が明らかとなった。このため、特許法第35条が改正され、2005年4月に施行された。改正後の新職務発明制度では、使用者等と従業者等との間の相当の対価に関する自主的な取決めが尊重され、相当の対価が不合理であるか否かは、使用者等と従業者等の間の協議の状況などの手続的な要素を重視して判断される。
 2004年9月には、使用者等と従業者等が対価を取り決める際の参考となるような手続事例集が作成・公表された。
 これを受けて、民間企業や大学等において、職務発明規程の見直しが進められている。日本知的財産協会が2005年1月に会員企業に対して行った調査によると、約95%の企業が基準の開示を行う仕組みを考えており、70%以上(大企業では80%以上)の企業が2005年4月1日に新規定を施行(遡及施行を含む。)している。

 (10)日本版バイ・ドール制度
   国の委託研究開発において委託成果に関する知的財産権を委託者に帰属させる日本版バイ・ドール制度については、それが適用されるものの割合は、2002年度に88%、2003年度には94%に達した。知的財産権が委託者に帰属され、特許出願された件数は、1999年は57件、2002年は1,271件、2004年には2,422件と、年々増加している。
 また、2004年6月、国が制作を委託又は請け負わせたコンテンツ(教養又は娯楽の範囲に属するもの)に係る知的財産権については、受託者又は請負者に帰属させることができる「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」が成立し、2004年9月に施行された。


日本版バイ・ドール制度に係る特許出願の件数(特許庁調べ)
2.保護分野
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I.保護の強化
(1)知的財産高等裁判所の発足
   2005年4月、紛争のスピード処理、判決の予見可能性(事実上の判断の早期統一)と技術等の知的財産に関する専門性への対応を高めることを目的として、知的財産高等裁判所が発足した。知的財産高等裁判所の発足は、知的財産重視の国家的意思表示でもあり、今後は、国内外に積極的に情報発信を行い、海外からの模倣品の流入についての抑止的効果も期待されている。
 知的財産高等裁判所は、法律に設置根拠を有する裁判所として、司法行政面での一定の独立した権限が付与されている。具体的には、所長が配置され、司法行政事務に関して独自の裁判官会議が設けられるとともに、独自の事務局も設置されている。
 知的財産高等裁判所には、4か部に加え、事実上の判断の早期統一を図るため、5人合議制の特別部も設置された。また、専門性の高い知的財産訴訟等を適切に処理するため、専門委員制度に基づき、知的財産高等裁判所や地方裁判所(東京・大阪)に、2005年4月現在で173人の専門家が専門委員として任命されている。さらに、知的財産高等裁判所独自のホームページを開設するなど国内外への情報発信を行う用意も進められている。
 知的財産高等裁判所の取扱事件は、従前の東京高等裁判所知的財産部の取扱事件と同様であり、主要な類型は以下のとおりである。
 (ア) 民事訴訟法の改正により東京地方裁判所又は大阪地方裁判所の専属管轄とされた、特許権、実用新案権、回路配置利用権又はプログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴えについての終局判決に対する控訴に係る訴訟事件であってその審理に専門的な知見を要するもの
 (イ) 東京高等裁判所の管轄区域内の地方裁判所に提起された、意匠権、商標権、プログラムの著作物についての著作者の権利以外の著作者の権利、出版権、著作者隣接権、育成者権又は不正競争による営業上の利益の侵害に関する訴えについての終局判決に対する控訴に係る訴訟事件であってその審理に専門的な知見を要するもの
 (ウ) 特許庁の審決の取消訴訟等
 (エ) その他主要な争点の審理につき知的財産に関する専門的知見を要する事件(商号に関する事件や(ア)、(イ)の民事訴訟を本案とする民事保全事件など)
(2)特許審査の迅速化
1)目標の設定
   我が国の特許審査の順番待ち期間は欧米に比べ長期化し、2003年末時点で26ヶ月に達した。このため、特許審査の順番待ち期間を最終的にはゼロにするという最終目標を目指して、順番待ち期間がピークを迎える5年後(2008年度)には順番待ち期間を20ヶ月台にとどめることを中期目標とするとともに、10年後(2013年度)には11ヶ月を達成することを長期目標とすることが決定された。

米国:審査請求制度はなく、全出願を審査。
欧州:特許庁が出願から1年半以内に調査レポートを作成、その後6ヶ月以内に審査請求。
日本:審査請求期間7年間(2001年10月から3年間に短縮。実質平均は4.1年。)
審査順番待ち期間:審査請求から審査官による審査結果の最初の通知(主に特許査定又は拒絶理由通知)が出願人等に発送されるまでの期間。例えば、2004年の審査順番待ち期間である26ヶ月は、2004年1月から12月までに審査結果の最初の通知が出願人等に発送された全案件(23.4万件)について、審査請求から出願人等への発送までの期間を算出し、その合計(614万月)を件数(23.4万件)で除することにより、平均値として求めたもの。

出願から審査着手までの平均期間(2003年)(上記グラフに基づき計算)
日本74ヶ月(うち審査請求までの期間49ヶ月)
米国18ヶ月
欧州45ヶ月(審査請求までの期間を含む)


2)特許審査の迅速化
   上述1)の目標実現のため、法律の手当てを必要とするものについて検討が加えられ、2004年6月、「特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律」が成立した。同法により、従来技術調査機関についての公益法人要件の撤廃、特定の従来技術調査機関の調査報告を提示して審査請求を行った場合の審査請求料の軽減制度の導入、実用新案登録の存続期間の延長等が図られた。
3)任期付審査官
   特許庁の人的体制の充実を図るため、任期付審査官について、2004年度、2005年度に、それぞれ98名ずつ増員した。
4)先行技術調査機関への新規参入
   2004年10月に、「特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律」が施行され、特許審査に必要な従来技術調査の特許庁からの外注について公益法人だけでなくそれ以外の者の参入が可能となった。2005年3月に、従来技術調査についての登録調査機関として2機関が新規に登録された。
5)審査効率の高い外注手法への移行
   2004年度の審査請求件数は約30万件である(2005年1月時点)。登録調査機関に対し従来技術調査外注を約18万件に拡大し、うち13万件を審査効率の高い手法(直接対面で説明)で行った。
6)出願・審査請求構造改革
   2005年4月に、「特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律」が施行され、特定登録調査機関の交付する従来技術の調査報告書を審査請求時に提示した場合には審査請求料が減額されるようになった。
 我が国の特許査定率は欧米に比べて低いことを踏まえ、2004年度において特許庁は延べ207社に対して出願・審査請求の改善を要請した。

日米欧特許査定率の比較(2003年)
 特許査定率
日本50%
米国64%
欧州59%
(出所:"Trilateral Statistical Report")
(3)紛争処理機能の強化
   2005年4月に「裁判所法等の一部を改正する法律」が施行され、知的財産関連訴訟の紛争処理機能が強化された。同法により改正された点は以下のとおりである。
 ア) 知的財産事件における裁判所調査官の権限の拡大・明確化
 知的財産に関する事件の審理において、裁判所調査官が期日において当事者に対する釈明や証人等に対する発問を行い、裁判官に対して意見を述べるなどの権限を有することが明確化された。
 なお、2005年4月時点で知的財産事件を担当する調査官は全国で21人(知的財産高等裁判所11人、東京地方裁判所7人、大阪地方裁判所3人)が任命されている。
 イ) 知的財産の侵害訴訟の審理における営業秘密の保護強化及び侵害行為の立証の容易化
 特許権等の侵害訴訟において、営業秘密の使用及び開示を制限する秘密保持命令(違反は刑事罰の対象)が創設されたほか、営業秘密が問題となる訴訟における当事者尋問等の公開停止の要件及び手続が規定された。
 ウ) 特許権等の侵害に係る訴訟と特許等の無効審判の関係の整理
 特許権等の侵害訴訟において、特許等が無効審判により無効とされるべきものと認められる場合には、特許権等の権利行使が制限されることとなった。また、裁判所と特許庁との間の進行調整を図るため、このような攻撃・防御の方法が提出されたときは、裁判所はその旨を特許庁長官に通知するとともに、特許庁長官は裁判所に対して侵害訴訟における訴訟記録のうちその審判において審判官が必要と認める書面の写しの送付を求めることができることとなった。
(4)医療関連行為の特許保護
   2004年11月、医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会において、医療関連行為の特許保護の在り方が次のようにとりまとめられた。
 医師の行為に係る技術を含めないことを前提に、
 ア) 医療機器の作動方法を特許の対象とすべきこと。
 イ) 医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法の技術については、まずは、物の特許による保護の拡大の可能性を可能な限り追求し、それを審査基準等に明確化することにより、物の特許として保護すべきであるが、これらの技術を方法の特許として保護することについても、その可能性を追求する努力を続ける必要があること。
 これを受けて、2005年4月、「産業上利用することができる発明」及び「医薬発明」に関して、特許・実用新案審査基準を改訂した。
(5)実用新案の保護
   2005年4月に「特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律」が施行され、実用新案の保護期間が10年となり、実用新案登録に基づく特許出願が可能となった。
(6)地域ブランドの保護
   2005年6月、地域ブランドを適切に保護することにより、競争力の強化と地域経済の活性化を支援するため、地域名と商品名からなる商標について、団体商標としてより早い段階で登録を受けることを可能とする「商標法の一部を改正する法律」が成立した。
(7)営業秘密の保護
   2004年1月、他人が有する製造技術や顧客リスト等の営業秘密を不正に取得、使用又は開示した者に対する処罰規定を盛り込んだ改正不正競争防止法が施行された。
 2005年2月、営業秘密を国外で使用・開示した者の処罰や在職中に申し込み・請託を受けて退職後に営業秘密を漏洩した退職者の処罰、さらに、アクセス権限がない場合の営業秘密侵害罪の犯人が属する法人の処罰など、営業秘密の保護を強化する「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が国会に提出された。
(8)植物新品種の保護
   2003年7月、登録品種の収穫物段階の権利侵害に対する罰則を設けること等を内容とする改正種苗法が施行された。
 2005年3月、育成者権の効力を登録品種の収穫物から生産される加工品へ拡大するとともに、育成者権の存続期間を延長することを内容とする「種苗法の一部を改正する法律案」が国会に提出された。
(9)知的財産権侵害に対する刑事罰の強化
1)著作権法
   2005年1月に、改正著作権法が施行され、著作権等侵害の懲役刑と罰金刑の上限が、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金から、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に引き上げられるとともに、これらの併科も可能とされた。
2)不正競争防止法
   2005年2月、不正競争防止法上の懲役刑と罰金刑の上限を、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金から、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に引き上げるとともに、これらの併科を可能とする「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が国会に提出された。
3)種苗法
   2005年3月、収穫物から直接に生産される加工品のうち政令で定めるものについて育成者権又は専用利用権の侵害を行った者を罰則の対象とする「種苗法の一部を改正する法律案」が国会に提出された。
(10)世界特許システムの構築に向けた取組
   グローバル化の進展に伴い、世界的に特許出願が増加している。特に日米欧三極の出願件数の合計は世界の特許出願の8割に達するとともに、多くの出願が三極に重複して出願されている。このため、日米欧三極特許庁間では、先行技術調査結果の相互利用の推進、電子包袋システムの構築、制度調和、国際審査官協議といった点に関する協力を進めるための協議が続けられた。
 2004年10月、日本国特許庁は、審査関連情報を日英機械翻訳システムにより米国特許庁や欧州特許庁が英語で利用できるシステムの運用を開始した。
U.模倣品・海賊版対策
(1)模倣品・海賊版対策加速化パッケージ
   2004年12月、海外における模倣品・海賊版対策を中心にこれを加速化する政府の行動計画を「模倣品・海賊版対策加速化パッケージ」として、知的財産戦略本部において決定した。
(2)海外市場対策
 1)外交当局の体制
   2004年7月、外務省経済局に知的財産権侵害対策室が設置され、2005年3月には在外公館向けに知的財産権侵害対応マニュアルが作成されるとともに、すべての在外公館において知的財産担当官が指名された。
 2)企業・団体等による模倣品・海賊版対策を支援する
   2004年9月、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は、コンテンツ海外流通マーク(CJマーク)を制定し海外への商標登録出願を行うとともに、海賊版対策を目的とした委員会(CJマーク委員会)を設立した。商標登録がされるまでの間にも、CODAが主体となり海外の取締当局と連携して、著作権に基づく各社共同の権利執行を実施したところ、海外市場において日本コンテンツの海賊版CD、DVD等約45万枚が押収される等の成果を上げている。
 3)侵害状況調査制度
   2005年4月に、我が国の事業者からの申立に基づいて、政府が調査を実施し、その結果を踏まえて二国間協議等を行うため、以下を内容とする「知的財産権の海外における侵害状況調査制度」が導入された。
 i) 外国における知的財産制度・運用等に問題があることにより、知的財産権に関し利益が適切に保護されていない、又はそのおそれがある場合、我が国の事業者は、政府に調査の申し立てることができる。
 ii) 政府は、事業者の申立から原則として45日以内に、当該申立に基づく調査実施の可否について決定する。
 iii) 政府は、調査結果を原則として6ヶ月以内に申立者に回答する。
 iv) 政府は、調査結果に基づき、二国間協議又はWTO等の国際約束上の紛争処理手続により、問題の解決を図る。
 4)欧米との連携
   2004年6月、日・EU定期首脳会議において、「アジアにおける知的財産権の執行に関する日・EU共同イニシアティブ」が合意され、当該合意に基づいて日・EU間での情報・意見交換や中国での共同セミナーが実施された。
 2005年3月、日仏首脳会談において、「日仏新パートナーシップ宣言」が合意され、アジアにおける模倣品・海賊版対策の推進が重要との認識で一致した。
 2005年5月、日・EU定期首脳会議において、アジアにおける模倣品・海賊版問題に対応するため、「アジアにおける知的財産権の執行に関する日・EU共同イニシアティブ」を更に推進していくことが合意された。
 5)多国間協議
 i) APEC首脳会議・閣僚会議(2003年10月)
 首脳宣言及び閣僚共同声明において、知的財産権の保護が盛り込まれた。その際、我が国が提案したIPRサービス・センターの設立、知的財産権に関する包括戦略が承認された。
 ii) 世界模倣品撲滅会議(2004年5月)
 WCO(世界税関機構)及びインターポール(国際刑事警察機構)の主催により開催され、世界の模倣品取引が約5000億ユーロ(65兆円)に達することが報告された。
 iii) シーアイランド・サミット(2004年6月)
 G8サミットにおいて初めて模倣品・海賊版対策の必要性が取り上げられた。
 iv) ASEM(アジア欧州会合)首脳会合(2004年10月)
 議長声明及び経済宣言において取り上げられた。
 v) APEC首脳会議・閣僚会議(2004年11月)
 首脳宣言及び閣僚共同声明において、知的財産権の保護が盛り込まれた。
 vi) APEC貿易担当大臣会合(2005年6月)
 日米韓で共同提案した「APEC模倣品・海賊版対策イニシアティブ」が承認された。
 6)二国間協議
   2004年11月、日中韓首脳会合において、知的財産権の保護に関して日中韓が協力を強化していくことが合意された。
 7)ODA大綱
   2003年8月、政府開発援助大綱が改定され、知的財産権の適切な保護への協力等を通じ、開発途上国の持続的成長を支援することが盛り込まれた。
 8)民間における海外市場対策
 i) 2002年12月、2004年5月及び2005年4月に、国際知的財産保護フォーラムが、中国にミッションを派遣し、模倣品・海賊版問題について中国政府等と意見交換した。
 ii) 2004年11月、日米財界人会議が、模倣品・海賊版問題の改善を提言した。
 iii) 2004年11月、日中間で電子電気業界及び担当省庁による意見交換等が実施された。

(3)水際対策
 1)関税定率法の改正
 i) 特許権等を侵害する物品の水際取締り
 2003年4月に、特許権、実用新案権及び意匠権を侵害する物品が輸入差止申立制度の対象となり、特許庁への意見照会制度が導入されるとともに、育成者権を侵害する物品が輸入禁制品に追加された。このうち特許権については、2004年には、80件、11万点の輸入差止実績がある。
 ii) 輸入者名等の通知
 2004年4月に、認定手続の開始時に、権利者、輸入者双方にそれぞれの相手方の名称等を通知するとともに、輸出者の名称等及び税関に提出された書類等から判明する範囲内で生産者の名称等を権利者に通知する制度が導入された。
 iii) サンプル分解制度
 2005年4月に、認定手続において、一定の要件の下、権利者からの申請により税関が当該物品の見本(サンプル)を権利者に提供し、検査させることができる制度が導入された。
 iv) 不正競争防止法と水際措置のリンク
 2006年3月に、不正競争防止法で輸入が規制されている周知表示の混同を惹起する製品、著名表示を冒用する製品、形態模倣品を輸入禁制品に加えるとともに、経済産業省への意見照会制度が導入される予定である。
 v) 育成者権に関する意見照会制度
 2005年4月に、育成者権を侵害するおそれのある物品の認定手続における農林水産省への意見照会制度が導入された。

 2)税関による取締りの強化
 i)  税関による知的財産権侵害物品の水際での取締実績は近年急増している。
出所:「平成16年の知的財産権侵害物品の輸入差止状況」財務省関税局

(4)国内対策
 1)不正競争防止法等改正法案
   2005年2月、著名表示の冒用行為及び商品形態模倣行為に対して刑事罰を導入する「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が国会に提出された。
 2)警察による取締り
   知的財産侵害事犯による検挙件数は近年増加傾向にある。また、2004年11月には、警視庁に模倣品の真贋判定等の専門知識を有する予備鑑定捜査員を49人配置した。
出所:「平成16年中における生活経済事犯の検挙件数について」警察庁
 3)品種保護Gメン
   2005年4月、種苗法の登録品種の海賊版の真贋判定等の専門知識を有する「品種保護Gメン」を4名配置した。

(5)啓発の強化
   2004年6月、消費者が知的財産権等の適正な保護に配慮しなければならない旨を定めた「消費者基本法」が施行された。

(6)体制の強化
 1)模倣品・海賊版対策関係省庁連絡会議
   2004年7月、関係8省庁が一体となって模倣品・海賊版対策に取り組むため、内閣官房に模倣品・海賊版対策関係省庁連絡会議が設置された。
 2)一元的な相談窓口の整備
   2004年7月、経済産業省製造産業局に模倣品対策・通商室が設置され、8月、同室に一元的な相談窓口として「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」が開設された。2005年4月末までに、同窓口には111件の相談が寄せられ、うち1件について、現地の大使館を通じて相手国政府に改善を求めたほか、JETROに多数の案件を紹介した。

3.活用分野
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(1)知的財産の活用状況
   2003年の知的財産活動調査によれば、我が国に存在する特許権の6割以上が未利用特許(防衛特許を含む)と推定されており、依然として未利用特許の割合は高い。  また、技術貿易収支については、2003年に初めて黒字となったものの米国と比較するとその差は大きい。

出所:日本は、日本銀行「国際収支統計月報」、米国は、商務省"Survey of Current Business"

(2)知的財産の情報開示
   2004年1月、企業の知的財産への取組が投資家等によって適切に評価されるよう、企業による自主的な知的財産の情報開示のための「知的財産情報開示指針」が策定された。これを受けて、2004年度においては11社が知的財産報告書を作成した。2005年度には、21社の作成が予定されている。
(3)知的財産信託
   2004年12月に新信託業法が施行され、知的財産権を含めた財産権一般が受託可能財産となるとともに、信託業の担い手が金融機関のほか株式会社一般に拡大され、承認TLOやグループ企業内での信託に関する特例も設けられた。
 これを受けて、信託銀行と法律事務所が共同して中小企業の有する知的財産を有効に活用し、権利侵害にも適切に対応するために知的財産信託を活用するケースや映画やアニメなどのコンテンツについて信託スキームを利用して事前に資金を調達するケースなどが計画されている。
(4)知的財産権担保融資
   日本政策投資銀行が1995年より開始した知的財産担保融資は2004年度までの融資実績が約160億円、件数ベースでは約260件に上っている。最近では、地方銀行と協調して地域の中小・ベンチャー企業に融資するケースもあり、知的財産を活用した地域振興のツールとしての役割を担っている。
(5)ライセンシーの保護強化
  2005年1月に新破産法が施行され、第三者対抗要件を備えている知的財産権のライセンス契約については、破産管財人の解除権が制限され、ライセンシーの立場が保護されることとなった。
(6)日米租税条約の改正
   2004年3月、知的財産を含む無体財産権の使用料について源泉地国免税を含む日米租税条約が国会で批准され、2004年7月から源泉徴収される租税について適用が開始された。
(7)知的財産関連情報へのアクセスの利便性の向上
   2003年度において、意匠公報DB(英語版)等の提供等のサービスの拡充を行うとともに、特許庁の特許電子図書館(IPDL)の有する特許情報へのアクセス改善を実施した。
(8)中小・ベンチャー企業の支援
 1)中小企業経営革新法の改正法案
   2005年4月、中小企業の有する知的財産の適切な保護に必要な施策を総合的に推進するよう努める旨の規定を盛り込んだ「中小企業経営革新支援法の一部を改正する法律」が施行された。
 2)特許料等の減免
   2004年4月に、特許料・審査請求料の減免対象の一類型である「資力に乏しい法人」の要件のうち「設立5年以内」が「設立10年以内」に緩和されるとともに、別の減免の類型である「研究開発型中小企業」の対象に、中小創造法認定事業、SBIR補助金等交付事業又は経営革新支援法の承認計画に関する研究開発事業に関連した出願を行う中小企業が追加された。減免制度の利用実績は、2003年が750件、2004年が2,335件である。
 (参考)日米の特許減免制度の概要
 我が国では、研究開発型中小企業、資力に乏しい個人・法人及び大学等の研究者等を対象に、審査請求料の免除又は半額軽減、特許料(第1年分から第3年分)の免除又は半額軽減又は3年間猶予の措置を要件に応じて適用している。2004年の実績は、約4,300件である。
 米国では、親会社や子会社等関連企業も含めた従業員数が500人以下の国内外の中小企業、個人、非営利団体は、一律に料金が半額となる制度がある。当該制度の利用は約11万件である。
 なお、欧州特許庁については、企業規模に着目した料金減免制度はない。
 3)従来技術調査の支援
   2004年6月より、中小企業の特許出願について民間調査事業者による従来技術調査結果を提供する制度が導入された。2004年度の利用実績は、1,200件である。
(9)中小・ベンチャー企業の支援
   2003年以降の政府レベルの動きとあわせて、地方公共団体においても、その地域の特性をいかした地域の知的財産戦略の策定等の自主的な取組が進展した。2005年3月時点では、14都道府県(北海道、秋田県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、福井県、愛知県、大阪府、島根県、福岡県及び長崎県)が既に知的財産戦略を策定したほか、13県(千葉県、神奈川県、新潟県、石川県、長野県、三重県、滋賀県、奈良県、和歌山県、鳥取県、佐賀県、大分県、宮崎県)が知的財産戦略を策定中又は策定予定である。
 また、都道府県以外の地方公共団体においても、知的財産戦略の策定やフィルムコミッションによる地域振興などの動きが広がっている。判明している限りにおいても、大阪市が知的財産戦略を策定したほか、横浜市が策定を検討している。

4.コンテンツビジネスの飛躍的拡大
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(1)コンテンツ市場の規模
   我が国のコンテンツビジネスの市場規模は、2004年で約13.3兆円と2003年の約12.8兆円に比べて微増している。
 しかしながら、対GDP比で国際比較すると、日本は2.3%と、米国の4.6%はおろか、世界平均の3.3%にも及んでいない。
コンテンツビジネスの国際比較(2003年)
 コンテンツ市場GDPコンテンツ/GDP
日本0.1兆ドル 4.3兆ドル2.3%
米国0.5兆ドル10.9兆ドル4.6%
世界1.2兆ドル36.5兆ドル3.3%
出所:PricewaterhouseCoopers,"Global Entertainment and Media Outlook:2004-2008",世界銀行ホームページ

(2)コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律
   2004年6月(一部の規定は9月)に、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関し、国、地方公共団体及び関係者が、その基本理念を共有し、一体となって、関連する施策の総合的かつ効果的な推進を図ることを目的とする「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」が施行された。
(3)ロードマップ
   2004年12月、知的財産推進計画2004第4章に定めるコンテンツ関連施策について、2006年度末までの取組をさらに具体化する「コンテンツビジネス改革のロードマップ」が取りまとめられた。
(4)業界の近代化・合理化
 1)放送番組の制作委託契約
   2004年3月、契約による著作権の扱いを公正な協議により取り決めるなどの内容を盛り込んだ「放送番組の制作委託に係る契約見本」が作成され、2005年3月には、当該契約見本に対応した放送事業者による制作委託取引に関する自主基準が公表された。
 2)法律専門家の活用
   2004年4月、法律家と事業者や創作者との交流活動等のため、「エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク」が設立され、2005年5月末時点で会員数は約440名に達している。
 3)改正下請代金支払遅延等防止法の施行
   2004年4月に改正下請代金支払遅延等防止法が施行され、改正法において追加されたサービス分野の下請取引について、公正取引委員会及び中小企業庁により、親事業者約3.4万社、下請事業者約4.6万社を対象とした書面調査が、2004年7月から実施された。
 4)独占禁止法役務ガイドラインの改定
   2004年3月、コンテンツ業界の取引適正化のために、取引上優越した地位にある委託者が、コンテンツに係る権利の譲渡を事実上強制した場合や一方的に受託者のコンテンツの二次利用について制限等を行った場合などには独占禁止法上問題となることが、公正取引委員会の「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針(役務ガイドライン)」の改訂により明確化された。
 5)資金調達手段の多様化
   2004年度に、日本政策投資銀行において、コンテンツ等の知的財産権を流動化する手法を用いた資金調達制度(「知的財産有効活用支援事業」)が創設された。
 また、2004年3月、ファンド組成に係る人的構成要件が緩和され、商品ファンド法の許可を受けて銀行や事業会社から資金を集め複数の映画制作費に充てる35億円のファンドが組成されたり、個人投資家から一口10万円で映画制作費10億円を集める取組などが進められている。
 さらに、2004年5月、民間の知的財産投資協議会により、コンテンツやエンターテインメント事業を対象とした公募型ファンドについて、投資家が会計処理や事業内容などの様々なリスク情報を把握できるようにするためのディスクロージャーガイドラインが作成された。
 6)人材育成
   大学におけるコンテンツ分野の人材育成については、大学設置に関する抑制方針の撤廃、専門職大学院制度の創設、学部等の改組に関する届出制の導入等の大幅な制度改正(2003年度)をも背景として、各大学の自主的な取組が進んでいる。
 具体例は多岐にわたるが、2004年度には、例えば、東京電機大学、神奈川工科大学、中京大学、立命館大学、梅花女子大学、倉敷芸術科学大学、広島国際学院大学等においてコンテンツ分野を含む人材育成が開始された。また、構造改革特区制度の下では、専門職大学院としてデジタルハリウッド大学院大学が設置された。さらに、2004年度に文部科学省の科学技術振興調整費の「新興分野人材養成」プログラムにおいて、東京大学のコンテンツ人材養成に関する課題が採択された。慶應義塾大学においても、「戦略的研究拠点育成」プログラムで設置した「デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構」において、デジタルコンテンツの人材育成に取り組んでいる。
 2005年度には、例えば、東京芸術大学、城西国際大学、東京工科大学、静岡産業大学、名古屋芸術大学、名古屋文理大学、宝塚造形芸術大学等において、コンテンツ分野を含む人材育成が開始された。
 7)映像産業振興機構の設立
   2004年12月に、映画、放送番組、アニメーション、ゲーム、音楽等の映像コンテンツ産業を国際競争力ある産業とするため、人材育成、作品制作支援、企業支援、内外の市場開拓などを目的とした民間機関が設立され、2005年5月にNPO法人として認可された。
 8)新技術の研究開発
   2004年度より、科学技術振興調整費の研究対象課題として、「デジタルコンテンツ創造等のための研究開発」を設定しており、審査の結果、2004年5月に東京大学を中心とした「デジタルシネマの標準技術に関する研究」が採択された。
 9)東京国際映画祭
   開催された東京国際映画祭が2004年度に抜本的に強化され、映画国際取引市場などマーケット機能が付与されたほか、ゲーム・コミックフェア等も同時開催された。その結果、総入場者数は、2003年の131,000人から176,000人に増加した。
 10)日仏映画協力覚書の調印
   2005年4月、日本映像の国際展開の中心となる団体として、日本映像国際振興協会(ユニジャパン)が設立された。ユニジャパンは、日本映画の海外映画祭への出展等を支援してきた日本映画海外普及協会と、東京国際映画祭の開催によって日本映画を海外に発信してきた東京国際映像文化振興会が統合したものである。ユニジャパンは、5月の第58回カンヌ国際映画祭において、フランス国立映画 センター(CNC)と、日仏両国の映画産業が配給や資金調達などで連携する「日仏映画協力覚書」を調印した。
 11)著作物の裁定制度
   2005年3月、文化庁は、裁定申請に必要な手続き、申請様式例等を説明した「著作物利用の裁定申請の手引き」を公表。併せて、申請者の経済的負担を軽減する観点から手続きの見直しを行い、不明な著作者を探す場合の一般への協力要請について、ホームページへの広告掲載でも可とした。
 12)音楽レコードの還流防止措置
   2005年1月に改正著作権法が施行され、アジア諸国など物価水準の異なる国において許諾を受けて生産された商業用レコードが、我が国に還流してくることを防止する措置が導入された。この効果として、2005年1月から3月までの間、133タイトル(延べ229タイトル)がアジア諸国にライセンスされた。なお、2004年度に日本で発売された音楽レコードは約9,000タイトルである。
 13)音楽のネット配信市場
   我が国の2003年における音楽のインターネット配信の市場規模は、約36億円であり、前年から1.4倍の伸びとなっており、我が国においても着実に進展しつつある。一方、海外の音楽インターネット配信は、2004年3月に世界で3億ダウンロードを記録するものがあるなど、急激に伸張しており、この動きからは出遅れている感がある。
 また、2004年11月に開始された携帯電話向け音楽配信サービスは、翌年4月には500万ダウンロードを記録するなど、着実にビジネスとなっている。

5.人材の育成と国民意識の向上
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(1)知的財産人材の現状
   知的財産関連人材の定義や統計資料の未整備等の要因のため正確な人数の把握は困難であるが、2005年6月現在、我が国には、多く見積もって6万人程度の知的財産関連人材が存在するものと推計されている。
(2)知的財産に強い弁護士
   近年、我が国の司法試験合格者数は増加しており、2004年の合格者数は1,483名である(1990年499名、2000年994名)。さらに2010年頃には、約3,000名程度が司法試験に合格するものと見込まれている。この結果約2.5万人の法曹人口は、2018年頃までには約5万人に倍増することが見込まれている。
 このうち、弁理士登録をしている弁護士は約320人、また、エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークの会員は約430名である。また、2004年3月に開始した日本弁護士連合会による知的財産法研修には約3,000名の弁護士が参加している。さらに、2005年4月には全国各地で知的財産関連業務に対応できる弁護士のネットワークとして弁護士知財ネットが発足し、約1,200名の弁護士が参加している。
 なお、米国では、特許弁護士(Patent Attorney、弁護士資格を有し、かつ、特許商標庁の試験に合格して特許手続の代理ができる者)だけでも約2.2万人に上る。さらに米国や中国の司法試験合格者及び法曹人口は、我が国を大きく上回っている。

法曹人口の国際比較
出所:第9回権利保護基盤の強化に関する専門調査会資料5別紙(2004年5月13日)

(3)弁理士
   我が国の弁理士試験合格者数は近年増加しており、2004年の合格者は633名である(1990年174名、2000年303名)。この結果、弁理士数は、約6,100名に達している。
 なお、米国では、特許弁護士が約2.2万人、パテントエージェント(特許商標庁の試験に合格して特許手続の代理ができるが、弁護士資格は有していない者)が約7,000人存在する。
 また、特定侵害訴訟における弁護士との共同受任が可能となったいわゆる付記弁理士制度については、日本弁理士会による能力担保研修を修了した985名の弁理士のうち、970名が2004年10月に実施された特定侵害訴訟代理試験を受験し、613名が合格した。2005年4月時点では約1,000名以上の弁理士が付記登録している。
(4)新司法試験における知的財産法の選択科目化
   2004年8月、知的財産法を2006年に開始される新司法試験の選択科目の一つとすることについて司法試験委員会の答申が出された。
(5)法科大学院
1)知的財産法の講義
   2004年4月より全国に設置された68校すべての法科大学院において、知的財産法関連の授業科目が開設された。また、2005年4月に、新たに開講する6校の法科大学院においても、知的財産法が開設された。
2)夜間における授業の実施
   2005年5月現在、9校の法科大学院において夜間にも授業が実施されている。
3)理系及び芸術系の入学者
   2004年4月の法科大学院入学者5,767人のうち、社会人は2,792人と約半数に及ぶが、理系出身者は486名(8.4%)、芸術系その他は233人(4.0%)である。
(6)大学、大学院における知的財産に関する教育
   知的財産に関する授業科目に関し、学部レベルでは、2003年度には232校が開設している(2001年度は183校、2002年度は207校)。また、研究科レベルでは、90校が開設している。

知的財産権に関する授業科目を開設している大学(2001〜2003年度)
※研究科については2003年度実績より調査
出所:文部科学省ホームページを基に作成

(7)知的財産専門職大学院
   2005年4月に、知的財産の名を冠する専門職大学院として、東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科知的財産戦略専攻[入学定員80名]、大阪工業大学大学院知的財産研究科知的財産専攻[入学定員30名]が開設された。
(8)技術経営(MOT)コース
   2005年1月時点において、約2,300人のMOT人材コースが設置された。
(9)知的財産研修・教育
 i)  2004年度より、独立行政法人工業所有権情報・研修館において、弁護士・弁理士・企業の知的財産部員計16名を対象として討論実務研修が開始された。
 ii)  2004年度より、独立行政法人工業所有権情報・研修館において、登録調査機関の調査業務実施者になるための調査業務実施者育成研修が開始され、2004年度は160名が受講した。
 iii)  大学等専門・高等教育機関に対しては約50万部の産業財産権標準テキストが、また、初等・中等教育機関に対しても約50万部の産業財産権副読本が提供された。
 iv)  全国の中学3年生に対して、約126万部の著作権読本が配布された。
(10)民間検定・研修
 i)  2004年3月に、民間検定として知的財産検定が開始され、これまでに約5,500人が受検した。
 ii)  2004年12月に、民間検定として知的財産翻訳検定が開始され、約130人が受検した。
 iii)  知的財産協会は研修事業として、定例コース(基礎コースと専門コース、総合コース、海外コース)と知財改革リーダー育成のための特別コース、及び臨時コースを開催しており、2003年度は、13,600人以上が受講した。
(11)推進計画の普及啓発
   知的財産推進計画に関し、2003年4月以降これまでに全国各地の219会場において、約32,000人に対して説明及び意見交換を実施した。
   
   この成果編は、知的財産基本法第23条第5項及び第6項の規定を踏まえ、知的財産推進計画の達成状況の調査と施策の効果の評価を行ったものである。



 

1.知的財産戦略本部 名簿
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(内閣総理大臣及び国務大臣)
本部長小泉純一郎内閣総理大臣
副本部長細田 博之内閣官房長官/男女共同参画担当大臣
棚橋 泰文科学技術政策・食品安全・情報通信技術(IT)担当大臣
中山 成彬文部科学大臣
中川 昭一経済産業大臣
本部員麻生 太郎総務大臣
南野知惠子法務大臣/青少年育成及び少子化対策担当大臣
町村 信孝外務大臣
谷垣 禎一財務大臣
尾辻 秀久厚生労働大臣
島村 宜伸農林水産大臣
北側 一雄国土交通大臣
小池百合子環境大臣/沖縄及び北方対策担当大臣
村田 吉国家公安委員会委員長/防災・有事法制担当大臣
大野 功統防衛庁長官
伊藤 達也金融担当大臣
竹中 平蔵経済財政政策・郵政民営化担当大臣
村上誠一郎規制改革・産業再生機構・行政改革・構造改革特区・地域再生担当大臣


(有識者)阿部 博之総合科学技術会議議員
安西祐一郎慶應義塾長
角川 歴彦(株)角川ホールディングス代表取締役会長兼CEO
川合 真紀東京大学大学院新領域創成科学研究科教授/理化学研究所主任研究員
久保利英明弁護士(日比谷パーク法律事務所代表)/大宮法科大学院大学教授
下坂スミ子弁理士(下坂・松田国際特許事務所所長)
中山 信弘東京大学大学院法学政治学研究科教授
野間口 有三菱電機(株)執行役社長
御手洗冨士夫キヤノン(株)代表取締役社長
森下 竜一アンジェスエムジー(株)取締役/大阪大学大学院医学系研究科寄附講座教授
(五十音順、敬称略;2005年6月現在)
 

2.専門調査会 名簿
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(1)権利保護基盤の強化に関する専門調査会
 

阿部 博之総合科学技術会議議員/知的財産戦略本部員
伊藤 眞東京大学大学院法学政治学研究科教授
久保利英明弁護士(日比谷パーク法律事務所代表)/大宮法科大学院大学教授/知的財産戦略本部員
下坂スミ子弁理士(下坂・松田国際特許事務所所長)/知的財産戦略本部員
高林 龍早稲田大学大学院法務研究科教授
竹田 稔弁護士/弁理士(竹田稔法律事務所)
中川 丈久神戸大学大学院法学研究科教授
野間口 有三菱電機(株)執行役社長/知的財産戦略本部員
山田眞次郎(株)インクス代表取締役
吉野 浩行本田技研工業(株)取締役相談役

:専門調査会会長
(五十音順、敬称略;2005年6月現在)
 
(2)コンテンツ専門調査会
 

阿久澤宏一郎(財)伝統的工芸品産業振興協会専務理事
阿久津 聡一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授
麻生 渡福岡県知事
牛尾 治朗ウシオ電機(株)会長
太田 伸之(株)イッセイ・ミヤケ代表取締役社長
岡村 正(株)東芝社長
角川 歴彦(株)角川ホールディングス代表取締役会長兼CEO/知的財産戦略本部員
久保 雅一(株)小学館キャラクター事業センター センター長
久保利英明弁護士(日比谷パーク法律事務所代表)/大宮法科大学院大学教授/知的財産戦略本部員
熊谷 美恵(株)セガAM統括本部第三AM研究開発部部長
小山 裕久日本料理店「青柳」主人/学校法人平成調理師専門学校校長
里中満智子漫画家
重延 浩(株)テレビマンユニオン代表取締役会長・CEO
辻 芳樹学校法人辻料理学館辻調理師専門学校理事長・校長
土肥 一史一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授
浜野 保樹東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
原 由美子ファッションディレクター
日枝 久(社)日本民間放送連盟会長
三國 清三オテル・ドゥ・ミクニ オーナーシェフ
皆川 明ミナ ペルホネン デザイナー
山田 俊男全国農業協同組合中央会専務理事
依田 巽(株)ギャガ・コミュニケーションズ会長

:専門調査会会長
(五十音順、敬称略;2005年6月現在)
 
(3)医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会本部設置根拠
 

秋元 浩武田薬品工業(株)常務取締役
井村 裕夫(財)先端医療振興財団理事長/(独)科学技術振興機構顧問
上田 実名古屋大学大学院医学系研究科教授
片山 英二弁護士/弁理士(阿部・井窪・片山法律事務所)
北村惣一郎国立循環器病センター総長
見城美枝子青森大学社会学部教授/エッセイスト
田村 善之北海道大学大学院法学研究科教授
野中 博日本医師会常任理事
平田 正協和発酵工業(株)代表取締役会長
広井 良典千葉大学法経学部教授
森下 竜一アンジェスエムジー(株)取締役/大阪大学大学院医学系研究科寄附講座教授/知的財産戦略本部員

:専門調査会会長
(五十音順、敬称略;2005年6月現在)
 

3.設置根拠
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(1)本部設置根拠
 ○知的財産基本法(平成14年法律第122号)(抄)

第四章 知的財産戦略本部

(設置)

第二十四条 知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推

 進するため、内閣に、知的財産戦略本部(以下「本部」という。)を置く。

(所掌事務)

第二十五条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 推進計画を作成し、並びにその実施を推進すること。

 二 前号に掲げるもののほか、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策で重

  要なものの企画に関する調査審議、その施策の実施の推進並びに総合調整に関

  すること。

(組織)

第二十六条 本部は、知的財産戦略本部長、知的財産戦略副本部長及び知的財産戦

 略本部員をもって組織する。

(知的財産戦略本部長)

第二十七条 本部の長は、知的財産戦略本部長(以下「本部長」という。)とし、

 内閣総理大臣をもって充てる。

2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

(知的財産戦略副本部長)

第二十八条 本部に、知的財産戦略副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、

 国務大臣をもって充てる。

2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

(知的財産戦略本部員)

第二十九条 本部に、知的財産戦略本部員(以下「本部員」という。)を置く。

2 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。

 一 本部長及び副本部長以外のすべての国務大臣

 二 知的財産の創造、保護及び活用に関し優れた識見を有する者のうちから、内

  閣総理大臣が任命する者

(資料の提出その他の協力)

第三十条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係

 行政機関、地方公共団体及び独立行政法人の長並びに特殊法人の代表者に対して、

 資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。

2 本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項

 に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

(事務)

第三十一条 本部に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房

 副長官補が掌理する。

(主任の大臣)

第三十二条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にい

 う主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

(政令への委任)

第三十三条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定め

る。

 ○知的財産戦略本部令(平成15年政令第45号)(抄)
 


(専門調査会)

第二条 知的財産戦略本部(以下「本部」という。)は、専門の事項を調査させる

  ため必要があるときは、その議決により、専門調査会を置くことができる。

2 専門調査会の委員は、当該専門の事項に関し学識経験を有する者のうちから、

 内閣総理大臣が任命する。

3 専門調査会の委員は、非常勤とする。

4 専門調査会は、その設置に係る調査が終了したときは、廃止されるものとする。

 

(2)専門調査会設置根拠
 ○平成15年7月8日知的財産戦略本部決定
 

「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」の重要政策課題に関する
専門調査会の設置について
平成15年7月8日
知的財産戦略本部決定
1.知的財産戦略本部令(平成15年政令第45号)第2条の規定に基づき、知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画に係る重要政策課題の調査のため、以下の専門調査会を置く。
(1)医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会
 本年夏以降の特許に係る新審査基準の運用状況を踏まえつつ、医療関連行為の特許保護の在り方に関する調査・検討を行う。
(2)コンテンツ専門調査会
 コンテンツビジネス振興に係る課題に関する調査・検討を行う。
(3)権利保護基盤の強化に関する専門調査会
 模倣品・海賊版対策、知的財産の専門人材育成、知的財産権利化促進や司法制度等、知的財産の権利保護基盤の強化(エンフォースメント)に係る課題に関する調査・検討を行う。
2.専門調査会の委員は、知的財産戦略の推進に関し学識経験を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命(当該委員が知的財産戦略本部員の場合にあっては、知的財産戦略本部長が指名)する。
3.専門調査会の会長は、委員の互選による。
4.専門調査会は、必要があると認める時は、参考人を招いて意見を聞くことができる。
5.専門調査会の庶務は、関係府省の協力を得て、内閣官房において処理する。
6.前各項に掲げるもののほか、専門調査会の運営に関する事項その他必要な事項は、会長が定める。
 

4.知的財産推進計画2005 策定までの経緯
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2002年 2月 4日小泉総理大臣施政方針演説
2月25日知的財産戦略会議発足
3月20日第1回知的財産戦略会議
4月10日第2回知的財産戦略会議
5月22日第3回知的財産戦略会議
6月14日第4回知的財産戦略会議
7月 3日第5回知的財産戦略会議
知的財産戦略大綱決定
9月19日第6回知的財産戦略会議
10月16日第7回知的財産戦略会議
12月 4日知的財産基本法公布
2003年 1月16日第8回知的財産戦略会議
3月 1日知的財産基本法施行・知的財産戦略本部発足
 内閣官房に知的財産戦略推進事務局を設置
3月19日第1回知的財産戦略本部会合
4月18日第2回知的財産戦略本部会合
5月21日第3回知的財産戦略本部会合
6月20日第4回知的財産戦略本部会合
7月 8日第5回知的財産戦略本部会合
 【「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」の決定、専門調査会の設置】
10月 8日第1回権利保護基盤の強化に関する専門調査会
 【2005年6月10日現在で13回開催】
10月15日第1回コンテンツ専門調査会
【2005年6月10日現在で6回開催】
10月31日第1回医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会
 【2005年6月10日現在で11回開催】
12月11日権利保護基盤の強化に関する専門調査会報告書
 【「知的財産高等裁判所の創設について」、「特許審査を迅速化するための総合施策について」】
12月17日第6回知的財産戦略本部会合
2004年 4月 9日コンテンツ専門調査会報告書
 【「コンテンツビジネス振興政策」】
4月14日第7回知的財産戦略本部会合
5月13日権利保護基盤の強化に関する専門調査会報告書
 【「模倣品・海賊版対策の強化について」】
5月27日第8回知的財産戦略本部会合
 【「知的財産推進計画2004」の決定】
11月22日医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会報告書
 【「医療関連行為の特許保護の在り方について」】
11月24日第1回コンテンツ専門調査会日本ブランド・ワーキンググループ
 【2005年6月10日現在で4回開催】
12月16日第9回知的財産戦略本部会合
 【「模倣品・海賊版対策加速化パッケージ」の決定】
2005年 2月25日 コンテンツ専門調査会日本ブランド・ワーキンググループ報告書
 【「日本ブランド戦略の推進」】
4月25日権利保護基盤の強化に関する専門調査会報告書
 【「中小・ベンチャー企業の知的財産戦略の推進方策」】
4月26日第10回知的財産戦略本部会合
6月10日第11回知的財産戦略本部会合
 【「知的財産推進計画2005」の決定】
 

5.用語集
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アーカイブ文書や記録を集積すること
アクセスコントロール接続管理
インセンティブ 動機づけ
ウェブ情報コンテンツが置かれているインターネット上から取られる情報
エクイティ株主持ち分(=株主資本)。期間内に利益に応じて配当が受けられるもの。
エンフォースメント権利の執行
オープンソースソフトウエアソフトウエアのソースコード(人間が読むことができるプログラムの内容)を開示するとともに、その自由な複製や改変を認めているもの
キャパシティービルディング能力の育成
コンテンツ映画、アニメ、ゲームソフトの著作物等
グレースピリオド新規性喪失の例外が認められる期間
サーチ検索
ジョイント・ディグリー一定期間に複数の学位を取得できる履修形態
デジタルコンテンツコンピュータを用いて作成された映像、データベース、ソフトウエア等
デジタルシネマ映画の撮影から上映までを、フィルムを使わずにデジタルデータで行うこと
バイ・ドール制度政府資金により得られた研究成果の知的財産権を、受託先に帰属させることができる制度
パテントプール特許等を所有する複数の権利者が、それぞれの所有する特許等のライセンスをする権限を特定の組織に集約し、当該組織を通じて各権利者が必要なライセンスを受けるシステム
ファイル交換ソフトインターネットを通じ不特定多数のコンピュータ間でファイル(記録された情報・データ)を共有するためのソフト
フィルムコミッション自治体を中心に設立された野外撮影を誘致・支援する非営利組織
フォローアップ物事や計画の徹底のため、その展開を調査すること
ブロードバンド広帯域・高速の通信の普及で実現される次世代コンピューターネットワーク
プロジェクトファイナンス完成後の施設の稼動による利益で借入れの元利を返済する事業融資方式
ポータルサイトインターネット上の総合窓口サイト
ポストドクター主に博士課程修了後、引き続き大学等の研究機関で研究業務に従事する者。任期を付して雇用される場合が多い。
モラルハザード経営倫理の欠如
ライセンサー許諾者
ライセンシー被許諾者
ライセンシング実施許諾
リカレント教育社会人が、職場から学習の場に戻って、生涯にわたって繰り返し学習すること
ADR裁判外紛争処理
APECアジア太平洋経済協力
ASEMアジア欧州会合
CSDB特許庁が保有するコンピュータ関連の審査のためのデータベース
eラーニングインターネットなどの利用による教育研修
EPA経済連携協定
FTA自由貿易協定
IPDL特許電子図書館
JETRO日本貿易振興機構
JICA国際協力機構
LLM法学修士コース
MOT技術経営
NEXI日本貿易保険
PCT特許協力条約
sui generisラテン語で独自のものの意。データベースの「権利を与えるsui generis型の保護」とは、データベースに物権的権利を与え、データベース独自の保護制度を設けること。
TBT協定貿易の技術的障害に関する協定
TLO技術移転機関
TPRM貿易政策検討制度
TRIPS協定知的所有権の貿易関連の側面に関する協定
UPOV植物新品種保護国際同盟
WCO世界税関機構
WIPO世界知的所有権機関
WPPT実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約
WTO世界貿易機関
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