○細田内閣官房長官 小泉総理は、あと数分かかるそうでございますので、ただいまから第10回「知的財産戦略本部会合」を開催いたします。本日は、御多忙のところ御参集いただき、誠にありがとうございます。
議題に入る前に一言申し上げます。民間有識者本部員の皆様においては、これまで2年間にわたり、知的財産戦略の推進に御尽力いただき、ありがとうございます。今後も引き続き知的財産立国の実現に向けて御協力いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。 それでは、本日はまず、本部の下に置かれた2つの専門調査会における検討状況について、各会長から御報告いただきます。
次に知的財産推進計画の実施状況について事務局から報告させた後、新たな政策課題について、皆様で意見交換をしていただくことといたしたいと思います。
初めに「権利保護基盤の強化に関する専門調査会」の阿部会長から御報告お願いします。
○阿部本部員 スクリーンをごらんいただきたいと思います。
(PP)
知的財産という点から中小・ベンチャー企業を見てみますと、必ずしも日が当たっていないという実態がだんだん明らかになってきております。
そこで、中小・ベンチャー企業のいろんな御意見を伺いますと、大学はどうも産学連携は大企業に向いておりまして、中小企業から見ると硬直的である。あるいは大企業に技術を横取りされて困っているとか、こういうようなたぐいの意見が少なからず見られるわけであります。
中小・ベンチャーはもともと費用が余りない、あるいは人も余りいない、組織もないということで特許費用が高くて出願できないとか、相談したくてもどこへ行ったらいいかわからないとか、そういうような御意見がたくさんあるのであります。
(PP)
そういうことで専門調査会としては、推進方策を議論させていただきました。
まず、産学連携につきましては、中小企業にもやさしい大学の事務処理の弾力化を進めたい。例えば中小ベンチャー企業に対して、減免措置利用の抜本的拡大等の負担の軽減をしたらどうか。
情報提供相談窓口を整備する。
大企業の優越的な地位の乱用のようなものがあったときに、知財駆け込み寺みたいなものを整備していくということ等を盛り込んで、お手元にあります資料1のBにまとめさせていただいたものでございます。
(PP)
それとは別に、専門調査会におきまして、中小に限らず、推進計画2005に向けて取り組むべき課題についてさまざまな意見交換をして、そこで出てきた課題について御紹介をさせていただきます。
例えば、日本は1年に40万件に近い特許の出願をするわけでありますが、ほとんどが特許として権利化をされておりません。特に外国の特許になりますと、10分の1以下でございます。したがって、残ったものはどうかというと、出願のために情報が公開されまして、ある企業を海外から見ておりますと、その企業がどういうことを考えているかということが分析するとよくわかる。そういう意味での技術流出をどう防止したらいいか。
世界特許というのは大変難しいんですけれども、ここまで国境が低くなってきますと、早期実現を何とか実現できないだろうか。また、侵害に対する刑事罰をより強化できないだろうか。
模倣品・海賊版につきましては、一国ではとても対応できませんので、拡散防止条約のようなものを提唱していったらどうか。
あるいは個人輸入、個人所持の取り締まりについてもより強化していくべきではないか。 インターネットによる海賊版・模倣品はほとんど野放しに近い状態であるという報告もありますので、そういうものもきちんと対策していくべきではないか。
こういった問題提起がございまして、今後、検討させていただきたいと思っているところであります。
よろしく御審議いただければと思います。
○細田内閣官房長官 ありがとうございました。御意見などは後ほどの意見交換の際に一括してお願いしたいと思います。
次に「コンテンツ専門調査会」の牛尾会長から御報告をお願いします。
○牛尾専門調査会会長 それでは、資料3と「日本ブランド戦略の推進」という冊子をごらん願いたいと思います。
「コンテンツ専門調査会」では昨年4月にコンテンツビジネス振興政策を提言しました。この提言に基づきまして、資料3の2ページに、知的財産推進計画2004において、国家戦略としての3か年計画を実施することにいたします。この1年間には民間を中心に精力的な取り組みが見られまして、後で角川さんから報告があると思いますが、東京国際映画祭の活性化や、日本映画のリメーク版も高く評価されて、最近では「Shall we dance?」がアメリカ映画になって大変に人気を博しておりますが、そういう成果も出てまいりました。
法制面でもコンテンツ促進法制定のほか、著作法改正や信託業法の改正も行われまして、確実に進んでおります。
また、デジタル・コンテンツを巡る環境に目を向けますと、著作権制度が時代の変化に対応できていない点や、ITを活用したコンテンツの流通、二次利用が進んでいない点など、コンテンツ技術の発展にとってはいろんな問題点がクローズアップされてまいりました。
昨年提言しましたコンテンツ業界の近代化や合理化が不十分であるということは、この1年間にいろんな問題を提言して、すぐに出てまいりました。これから改善が進まなければならないと思っております。
4ページにITとデジタル・コンテンツの連携など、コンテンツ専門調査会においては、今後新たなコンセプトで既存の法制度を乗り越えたひと回り大きいスケールの幅広い議論をすることが必要だと考えております。
資料4に日本ブランド戦略の推進という冊子がありますが、これはコンテンツ専門調査会で昨年11月、従来のテレビ・映画や音楽やアニメやゲームソフトとは別に、日本ブランド・ワーキンググループを設置しまして、食、地域ブランド、ファッションといったライフスタイルに活用した新しい日本ブランドの構築について検討を行いました。日本ブランド戦略推進について、3つの目標と12の提言を掲げたものであります。
また、それが非常に発展しまして、食の方では、食の分野を日本ブランド・ワーキンググループで検討した後に、民間が主体になって食文化研究推進懇談会が発足をしました。特にレストラン、料理店というのは非常にまとまりが悪いところであったんですが、このたびの文化推進には東京吉兆の湯木さんや京都の瓢亭の高橋さん、また、青柳の小山さん、フランス料理の三国さん、辻調理師専門学校の辻さんや服部学園の服部さんも入れて、この業界の人が一堂に会して、日本料理というものについて基本的に考える。そして、日本食に関する国民の理解促進が、やがては農業分野にも非常に大きな意義を持つだろうというので幅広く、これは民のベースでやっております。地域ブランド分野では、地域ブランド保護のために、商標法の改正等を今、国会に提出をしております。
ファッションに関しても、フランスやイタリアのファッションに比べて日本のファッションは、短期的には非常にヒットするんですが、なかなかファッション・デザイナーの世界というものは最終的に経営が行き詰まる場合が多いんです。そういう点で、百貨店を中心に新進デザイナーの発展、育成について前向きな取組みを始めております。
アジアにおいては日本のファッションというのは大変に評価が高いということを聞いております。
また、報告書ではこれからの日本ブランドの戦略的な発信を行うために、公式行事における日本食の提供の促進、在外公館、国際空港を通じた日本ブランドの発信、日本文化の発展を考える必要がある。
大体、世界の空港は帰り道にお土産を買い忘れると、必ずその国のいいものは置いてあって買えるんですが、成田とか日本の空港はフランス等の海外ブランド品が置いてあって、日本のものは全然売っていないという大変奇妙な現象があります。
そういう点では、やはり日本の食べ物まで込めて、そういうものをきちんと置く必要があるということも、既に作業を開始しております。
資料3の4ページのとおり、21世紀においては、こういう大きな文化創造国家が必要ですが、これは経済財政諮問会議の下での「日本21世紀ビジョン」でも、日本の将来の行く道は、経済だけではなくて、文化創造、文化力というものを大きく前へ出さないといけないということが論じられています。
我が国の魅力の発信について、いろんな場を通じて、事実、バンドン会議などの総理のスピーチでも述べられたように、日本があらゆる分野において単に経済のみならず、文化、平和、そしていろんな日常活動においての日本人の信頼性というのは相当高まってきていると確信をしております。そういう意味ではコンテンツ専門調査会が、日本ブランド・ワーキンググループの取組みに加えて、観光立国推進戦略会議とも連携する必要があります。最近の日中の問題で観光はちょっと頓挫しておりますけれども、「日本21世紀ビジョン」でも観光は2030年には500 万人から4,000 万人に達するという数字が出ておりますので、観光立国や文化・外交戦略と連携しながら、食・ファッションという生活コンテンツのみならず、映画や音楽やアニメ等も込めて、そういう文化創造国家への道を、この知的財産戦略を通じて確実なものにしたいという問題提起を行いました。
以上であります。
○内閣官房長官 ありがとうございました。御意見は後ほど一括してお願い申し上げます。 次に知的財産戦略の実施状況につきまして、荒井事務局長から御報告願います。
○知的財産戦略推進事務局長 事務局の荒井でございます。資料5は、知的財産の戦略の実施状況です。
2ページに今国会に4本の知的財産関連法案が提出されておりまして、関税定率法の改正法は既に成立しております。
3ページ、知的財産の保護につきましては、今月1日に知的財産高等裁判所が発足いたしました。
4ページ、活用及びコンテンツにつきましては、信託業法が改正され、知的財産が信託の対象となりました。
5ページ、人材につきましては、知財に強い法曹の養成が進んでおります。
6ページ、地方自治体の知的財産戦略づくりが広がっております。
7ページは、今後の検討課題を掲げております。
資料6は、推進計画の見直しに関するパブリック・コメントの結果をとりまとめたものでございます。
以上でございます。
○細田内閣官房長官 それでは、意見交換に入りたいと思います。先ほど御説明いただいた、各専門調査会の報告や推進計画の実施状況を踏まえ、知的財産推進計画2005を作成するに当たり、取り込むべき政策課題について、自由に御発言をいただきたいと思います。
まず、民間有識者本部員からお願いいたしたいと思います。
安西本部員、お願いします。
○安西本部員 資料9に基づいて申し上げます。
大学の知財活動につきまして、この知財戦略本部の活動があって、相当に急スピードでもってそれぞれの大学が知財活動を進めるようになりました。
ここでは慶応義塾大学の例を用いて、その成果を申し上げておきたいと思います。
1ページ、慶応の場合には、知的財産権、国内出願608 件、外国出願226 件等々、また、ライセンス契約は140 件、ライセンス収入が2億円。
慶応義塾大学発の新製品を20以上社会に提供しております。
大学の知財が創出した企業が11社。
それから、13億円、これは国や民間がありますけれども、知財を実用化する研究開発費を獲得しております。
2ページ、慶応義塾発の新製品、細かくは申し上げませんけれども、また、3ページ目は特にバイオの関連の新製品を載せておきましたので、ごらんいただければと思います。 4ページ、知財が創出した企業が多々ございまして、それぞれに活躍を始めているという状況でございます。
5ページ、特にその中で1つ、メタボローム解析技術の開発と実用化について申し上げておきたいと思います。食品とか薬とか体外から体にいろいろと吸収した物質が分解されてアミノ酸、脂肪等々になっていく過程を代謝と申しますけれども、その分解されてできていく物質をすべて高速で測定する技術の開発をいたしまして、特許を取りました。これは2社にライセンスをして、その2社が機器は自由につくって、技術を普及するようにしております。
地域の貢献として、特に山形県の鶴岡市におきまして、バイオキャンパン特区をつくっていただきまして、そこでさまざまな開発を行っている状況にございます。
6ページ、遺伝子工学等々いろいろありますけれども、特に一番右側の全代謝物(メタボローム)についての解析を行うということでございます。
7ページ、そのメタボロームの測定装置でございます。
8ページにありますように、微生物の1,692 成分の代謝物質の一斉分析に成功しております。これは約20分余りで解析ができる。例えば薬の候補物質を添加した細胞から効能や副作用のある成分を解析するとか、食品の分析でありますとか、酒でもそうですけれども、おいしい酒の成分を高速で分析するということが十分できますので、今、鶴岡の慶応の研究所でそういうことの開発を進めております。
最後のスライドでございますけれども、その仕組みは鶴岡にある慶応義塾の先端生命科学研究所がございまして、そこで発明されたものあります。慶応義塾からアントンプレナーの支援資金を出しまして、その生命科学研究所を母体にして、新企業を成立いたしました。ヒューマンメタボロームテクノロジーズと申します。
一方で慶応の知的資産センターが特許の出願をいたしまして、特許を得まして、その特許のライセンスを横川アナリティカルシステムズと日本電子に出しております。この2社が機器をつくって、その機器は自由に販売できるようになっております。それでこの技術を広めていきたい。
上のヒューマンメタボロームテクノロジーズにつきまして、この会社が創薬、食品の開発を全代謝物の計測・解析技術を使って応用技術を発展させるという仕組みになっておりまして、機器の開発、あるいは実際の食品、薬等々の分析を総合的に行えるような仕組みになっているという状況にございます。
是非これから2005の計画におきまして、大学の知財につきましても、改めて支援をしていただきますように、知財をキープしていくはなかなか資金的にも大変な状況がございまして、今、成果を申し上げましたけれども、是非財政面や新企業設立面でのバックアップをお願いしたいということを申し上げておきます。
ありがとうございました。
○細田内閣官房長官 次に角川本部員お願いします。
○角川本部員 先ほど配られた資料3の4ページ目に「文化創造国家−世界に愛され尊敬される日本へー」ということで、観光立国、2010年に1,000 万人の訪日外国人を達成しようというのが出ておりますけれども、私はこの観光立国においても、コンテンツ・ビジネスを活用することによって、この1,000 万人が実現するのではないかということをお話ししたいと思います。
小樽に映画「Love Letter 」で台湾、韓国の人たちが多く訪れることになったのは御存じのとおりだと思います。
また、「冬のソナタ」で日本の中年女性たちが韓国に押しかけているということも最近の話です。
また、最も最近の話としては、小説「ダ・ヴィビンチ・コード」が世界的に売れて、フランスのルーブル美術館に、本当に劇的に訪問者が増えているということが言われております。
これらは映画ソフト、テレビドラマソフト、出版というものが観光を推進していくために非常に有用であるということを示していると思います。是非このコンテンツを活用して、観光立国1,000 万人を達成するということを検討していただきたいと思います。
また、もう一つ申し上げたいのは、最近二国間の自由貿易協定というものが討論されておりますけれども、ここにおいても農産物という大きな問題、難しい問題ばかりではなくて、是非知財についても相互に活用し合うということを二国間協定でも検討していただきたいと思います。
ありがとうございました。
○細田内閣官房長官 次に川合本部員お願いします。
○川合本部員 私は知財を創出し、利用展開をするという機関の立場で2点ほど申し上げたいと思います。
1点は、公的研究機関と企業との間の共同研究をする際に、迅速な連携をする上で問題になっているということで、前回も御紹介いたしました特許法第73条の解釈についてでございます。
共有特許は、共有者の同意を要せずにその実施をすることが原則ですが、これは企業の立場でございまして、実際に実施をする機関ではないところでは、不実施補償料を取得するというのが公的研究機関の立場ということで、いつもこの2つが相対することになるんですけれども、公的機関で創出された知財を実施に移すという提携が非常に盛んになるに従って、この不実施補償料の支払いについて企業側と公的機関の間でなかなか折衷点が見つからないようなケースがあるということで前回お話しさせていただきました。
これはやはり迅速な研究展開をする上で、法律の解釈に対して多様性と柔軟性とを双方が理解することによって、迅速な研究展開が可能になるということが両方が理解をする。
前回ここで紹介させていただいた後で、滞っておりましたけ契約が非常にうまく進むようになりまして、御手洗さんの御協力を得まして、大変いい成果が出ているんじゃないかと思います。
第2点目は、次スライドにございます。細かくて恐縮なんてすけれども、これは特許を創出する研究開発の立場から特許法第69条にあります試験または研究の範囲、リサーチツールというところでございます。
現法律では大学や公的機関での研究活動そのものが特許侵害の免責にならないものですから、特許の範囲がカバーがされてしまっておりまして、自由な迅速な研究に対して、障害になっているケースが多々見られるようになってまいりました。
また、リサーチツールとしての特許でも、特にバイオ系のツールマテリアルに関しての特許の範囲がかなり厳しゅうございまして、迅速な研究展開に多少支障を来している場合がございますので、これらも少し柔軟な対応ができるように、取り扱いルールを明確にしていく必要があると思います。
以上、2点です。
○細田内閣官房長官 ありがとうございます。
次に久保利本部員お願いします。
○久保利本部員 推進計画2005のうちの基盤の強化に関連する部分で、特に大きな問題として、模倣品・海賊版対策というのが掲げられております。それに関連して資料11で意見を申し上げたいと思います。
まず1つは、模倣品・海賊版というのは、すべて犯罪組織の資金源である。したがって、これを元から絶たなければ、全世界においてこの種の犯罪組織がますます肥大化をしていく。そうだとすれば、国際規範として模倣品・海賊版不拡散条約というふうなものをつくる必要があるだろうと。
そういうものをもし国際的につくっていこうとすると、1つのネックが我が国自身にありまして、それは個人で輸入したり所持しているというだけでは罰せられないというところがあるわけでありまして、そうすると、海賊版・模倣品だという事実を知った上で輸入・所持をしているということを罰するような何らかの方策を考えなければいけないのではないか。
かと言って、それを特許法とか著作権法とか商標法とか全部変えていくのは大変なんで、何か1つの法律をつくる。そのためには、いろんな試案があるわけでありますけれども、関係省庁の中で早急にこの検討に入る。フランスにおけるロンゲ法という法律もありますけれども、これを検討する必要があるのではないかというのが第1点。
併せて、それをした上で国際的な規範をつくる。
第2番目といたしましては、インターネットを利用したさまざまな取引がございますけれども、このインターネットでオークション等々で売られているものの7割とも8割とも言われるものが、実は著作権、商標権等を侵害している違法品であるということが言われているわけであります。
そうだとすれば、この反復継続して出品する者がいるわけでありますが、そういう者に対して通信販売に該当する通信販売の業者であるという観点から、氏名等の情報ははっきりと実名、顕名で開示されるべきではないのか。そうすることによって、これらを規制し、コントロールすることが可能になっていくのではないかと考えるわけでありまして、そういう点で更にこの点についての対策の強化ということを推進計画2005では取りこむべきではなかろうかと考える次第でございます。
以上でございます。
○細田内閣官房長官 ありがとうございました
次に下坂本部員お願いします。
○下坂本部員 私の方からは世界特許システムの早期実現という点について提案させていただきます。
第1図に示しましたものは、「三極統計報告2002版」でございますが、これによりますと、世界の特許出願件数は約129 万件ございます。そのうち日米欧の三極特許庁に対する特許出願件数は約104 万件、これは世界全体の約8割を占める数でございます。
また、これら三極の出願中、日本から米国と欧州に、米国から日本と欧州に、欧州から日本と米国に出願されている重複的出願は延べ20万件近くにのぼると考えられます。これらに対しまして、三極特許庁が、それぞれ重複審査を行っているというのが現状でございます。
第2図。現在、日米欧三極における悩みがございます。それは出願人、特許庁の双方にございまして、出願人にとっては世界各国ごとに権利化するのは、手続が重複して、複雑であり、出願等にかかる費用も膨大となるため、大変だということでございます。
三極の特許庁にとりましては世界的な出願急増で審査未処理件数の増加。これはいわゆる滞貨処理に苦しんでいるという状況にあります。
このような中にありまして、重複的出願につきまして、各国がそれぞれ重複して審査することは、極めて非効率的であると言わざるを得ません。
そこでまずは世界の特許出願の約8割を占める三極特許庁間におきまして、審査結果の単なる利用にとどまることなく、相互に補完サーチを伴うという形の実体審査の相互承認に向けて動くことが重要だと考えております。
そして、将来的にはもう一歩進めまして、完全な実体審査の相互承認体制の構築が必要だと。これは肝要だと考えます。
なお、相互承認に関しましては、特許は国家主権の問題が絡むという指摘もございますけれども、奨励制度である特許よりももっと国家主義、公権力の行使という色合いの強い電気通信機器、電気製品、化学品、医薬品といった規制分野においてさえ、20年前の試験データの相互受け入れに始まり、現在では相互承認の対象となっております。
したがいまして、特許においてできないことはないというふうに考えております。
以上です。
○細田内閣官房長官 ありがとうございました。
次に中山本部員お願いします。
○中山本部員 各論につきましては、これから行われます有識者会合で述べますので、ここでは総論的なことをお話ししたいと思います。
戦略計画の2004は知的財産に関する多くの問題を洗い出しておりまして、それはそれなり高く評価できると思います。去年の4月の会合でも申し上げましたけれども、この2004は400 項目余りを列挙しているために、網羅的ではあるのですけれども、多面、総花的でもありまして、国家戦略が見えにくくなっているという面も否定できないと思います。
多くの項目を羅列するだけだと、全体としての迫力というものに欠けると考えております。各委員あるいは参考人から出されましたいろんな意見を単に羅列するだけではなく、いま、国家戦略として知的財産の分野において何が最重要かという検討を十分にして欲しいと考えております。
それでないと、戦略計画というものが単なる陳情の束になりかねないという危惧をしているわけであります。
最近は知的財産に関連の薄い問題もこの戦略本部の領域に入ってまいりましたので、なかなかまとめにくい面もあるわけですけれども、戦略計画2005におきましては、しっかりとした議論をして、何が国家戦略として最も重要であるかという点が見えるように、そういう戦略計画にしてほしいと思っております。
そのためには、知的財産制度の本質論も議論をする必要があると考えております。
あえて言いますと、現在の我が国の知的財産の実体法は、ほぼ世界の最高水準にありまして、それほど大きな、根本的な問題はなく、通常の手直し的な改正で済むと私は考えております。
それに対して、いかにして知的財産制度を実効あらしめるか、具体的には知的財産利用・流通の問題はまだ十分とは言えず、今後はこの利用・流通の面を中心に検討が進められるべきであると考えております。
知的財産の活用という観点からは、戦略計画2004においても力が入っております摸倣品・海賊版対策等は、今後も継続していかなければいけないだろうと思います
また、著作権、特許権もまだまだ十分に活用されているとは思えない面もあるわけでございまして、知的財産を活用しやすくするシステムというものをこれからは指向していくべきだろうと思います。
総論的な話で恐縮ですが、以上でございます。
○細田内閣官房長官 ありがとうございました。
次に、野間口本部員、お願いします。
○野間口本部員 私は、資料13を使いまして、知的財産を活用する上で重要な国際標準につきまして、述べたいと思います。
「知的財産に裏づけされた日本発技術の国際標準化は、産業競争力の強化につながる」と思っております。国際標準の対象分野、昨今、情報通信から自動車、FA(ファクトリー・オートメーション)、ナノテクなどに広がってきております。これらの分野で、日本発技術の国際標準化を進めていくことは、我が国の企業競争力の強化に極めて重要だと思っております。
この知財の推進計画によりまして、国際標準化に関する政府の取組みは相当進展してまいりまして、私どもも力強く感じているところでございますが、この取組みを定着させていくためには、この推進計画2005においても国際標準化活動の強化を推進していただきたいと思っております。
そういう点で、具体的でございますが、調査開始申立制度など3点につきましてお話しさせていただきたいと思います。
これは、少し具体的な話でございますが、端的なお話をしますと、A国と書いてございますのは、実は中国でございますが、最近国際標準と異なる国家標準を決めようとしまして、一種の非関税障壁になるような事態が生じようといたしまして、こういった状況を見まして、米国の企業がアピールしまして、米国通商代表部がWTOに反するということでクレームを申し立てまして、その施行を延期させたということがございました。
このように、民間からのアピールを受けまして、政府も堂々と異議を申し立てて、結果として公正な貿易競争が行われるような形に持って行くべきではないかと思います。
そのためにも、我が国でもこの調査開始申立制度を整備していただきたいということでございます。
2番目でございますが、国際標準につきましては、標準獲得には民間が頑張るのが第一でございますが、国の支援も欧米との競争上必要でございまして、人材の面、あるいは特にアジア地区での多国間の連携などを是非よろしくお願いします。
今年の4月に、国際標準化支援センターを財団法人日本規格協会に設置していただいて、国際標準化活動への支援体制が整備されたことは、高く評価されるところでございますが、これは限られたリソースの中で、最大限のその成果を生かすような取組みをこれからやっていく必要があろうと思っております。
特にその中でも、人材育成とか、先ほど申しました日中韓、あるいはアジア諸国でのグルーピング、連携といったものが、欧米に対する1つの極としての、日本を中心とした活動が必要ではないかと思っております。
それから、知的財産と技術標準でございます。これにつきましては、次をめくっていただきまして5ページでございますが、最近標準に関する特許を保有する企業が、標準化活動が行われている段階で、標準化活動から抜け出しまして、標準が策定された後、その特許の権利を行使する事例が起こっております。
このようなことをやりますと、自由な競争を実質的に制限してしまうことになります。こういった行動に対しては、独禁当局を始めとして、その対策を是非強化していただきたいと思っております。
またこのような行為を未然に防ぐためには標準化機関での特許取り扱いルールを改善する必要があります。国際標準化機関におきましては、従来、特許を別の世界のものとして関与してこなかったわけですが、最近IEC、ISO、ITU連携の世界標準協力が設定され、技術標準に関する特許の取り扱いルールについての議論が開始されました。この議論を促進するために、日本がリーダーシップを発揮していただきたいということでございます。
以上でございます。
○細田内閣官房長官 ありがとうございました。
次に、御手洗本部員、お願いします。
○御手洗本部員 資料14でございますが、新しく2005年の知財推進の取組みにつきまして、3つの項目を挙げておりますが、その前に過去2004年につきましては、これまでの取組みや小泉本部長のリーダーシップの下に、各関係省庁の努力によりまして、全く異例のスピードで知財改革がなされましたことを、産業界として大変評価し、心から感謝しております。同じぐらいのスピードで、この新しい取組みも取り組んでいっていただきたいと思っております。
資料の2ページにその全容を書いてございますが、その中で阿部委員も先ほど触れましたが、国家的に憂慮すべきである特許公報による技術流出の問題について話してみたいと思います。
資料の3ページをごらんいただきたいと思います。これは、今年の2月の『週間ダイヤモンド』に掲載されたものであります。毎年、36万件の特許が出願されまして、公開されております。そのうち、国内及び海外で、両方とも特許により発明が保護されているものは、わずかに3万件でございます。したがいまして、30万件以上が海外に対して、ただで技術公開を行っておるということにもなります。
4ページを見ていただきたいんですが、企業としては、生産方法等の発明の中では、そのプロセスやノウハウとして社内で機密管理しておきたいものがたくさんあります。しかし、それらの生産方法も、もし他社に特許を取られてしまうと困るというような恐怖心から、生産方法等のノウハウを防衛として出願せざるを得ないということが、この大量出願の大きな理由になっております。
36万件のうち、生産方法そのものの発明は、およそ5万件にわたりますが、生産方法を含む発明ということになりますと40%強になるわけであります。
資料の5ページを見ますと、アジアを中心に多くの国がIPDL、日本の特許電子図書館のデータにアクセスをしていることがわかります。例えば、韓国からは実に1日に6万件近いアクセスがあります。特許公開市場でみんなが勉強しているということが、如実にわかるわけであります。
次に、資料の6ページをごらんいただきたいんですが、それではこの技術公開をせずにノウハウを守る方法があるかと言いますと、特許法上先使用権というものがあります。先使用権というのは、他社が特許を取得しても、その出願の際に既に社内で実施していれば、それが保護されるという権利でありまして、防衛手段として活用されております。しかし、企業にとって現在の先使用権は、必ずしも使い勝手のよいものではありません。
まず第1に、先使用権による保護の範囲の問題があります。これは、他社の出願の時点で、実施している会社が保護されるということになっております。近年、生産拠点が移動し、拡大し、企業のダイナミックな活動の範囲の広がりを考えますと、親会社の先使用権による保護の範囲を、複数の子会社等に拡大することが必要となってきております。
次に、資料の8ページを見ていただきたいんですが、その問題になった場合の先使用権の立証の問題があります。既に公証制度がありますが、必ずしも知的財産の保護の立証のためにできたものではありません。知的財産保護のために、例えば、どの程度の物証を準備すべきなのかという点等、幾つかの視点で見直す必要があるものと思われます。
いずれにしても、詳しい説明は省略しますが、更に突っ込んだ検討を行って、是非使い勝手のよい先使用権を整備して、大量出願によって技術が流出するという問題を解決していくことが大変重要ではないかと考えております。
最後に、先ほど下坂委員も触れられましたが、世界特許は国ごとに出願するコストの削減や重複審査の解消にもなりますので、早期実現に向けて努力していくことが大切であります。よろしくお願い申し上げます。
以上でございます。
○細田内閣官房長官 ありがとうございました。
次に、森下本部員、お願いします。
○森下本部員 私の方から、3点今日お話ししようと思います。本日は、後ほど飲み込み型内視鏡という、医療方法特許の拡大に関連した実例を御紹介しようと思いますが、その前に資料15を見ていただきたいと思います。もう既にほかの方もお話しされましたので、この話は余りいたしませんけれども、大学、あるいはベンチャーにかかった経験から非常に知財に関連した人材、特に幅広い人材の不足を痛感しております。是非、そうした人材育成の総合戦略を進めていただきたいと思います。
もう一点は、既に川合本部員も述べられましたけれども、大学の試験研究、リサーチツールの特許法上の取り扱いに関しましても、特に大学で今、非常に大きな問題になっております。是非御検討いただければと思います。
今日は、先般の医療方法特許の拡大に拡大して、最先端技術を使ったものを1つ御紹介したいと思います。これは、オリンパスさんが開発したものなんですが、残念ながら総理のお手元に1つだけ実物が行きまして、あとは稼働しないタイプが中心になりますけれども、それぞれ置いていただいております小さいタイプが、これがカプセルになっております。これを実際に飲み込んで胃の中を写すというスタイルでありまして、今、見ていただくとわかりますように、かなり拡大力と、それから、これは特に日本の技術が中心なんですが、非常に鮮明な解像度があります。オリンパスさんの持っているカメラ技術が利用されておりまして、非常に鮮明なものになっております。
実際にこちらの方で御説明いたしますけれども、この内視鏡は手のひらサイズで非常に小さいものなんですが、これを外にレシーバーを置くことによって、アンテナを装着しております。こちらに実際に写ってまいります。これはイヌの胃の画像なんですけれども、見てわかりますように、非常に鮮明に見えてまいります。内視鏡を飲まれた方は非常に多いかと思いますが、余り飲みたい方はいらっしゃいませんで、こういうものが出てくれば非常に医療技術として患者さんにとっていいものになると思います。
将来的にはということで、無線でエネルギーを外から供給することによって、継続的にそうしたような画像も出すことができますし、自分で動くようなマイクロマシーンをつくることによって、実際に動かすことができます。
そこから、更に薬剤を出すことによって、治療というのも将来可能になる可能性があると。
○小泉内閣総理大臣 これ現像はどうするんですか。
○森下本部員 現像は、飲んでそのまま流れていきますので、必要ありませんが、最後は出たものを回収しなければいけないということが、ちょっと問題なんですけれども。
○小泉内閣総理大臣 これは遠隔操作ではなくて、自然でいいんですね。
○森下本部員 はい。ただ、先ほど将来的にと言いましたように、外から遠隔操作で動かすこともできるようになりますので、場合によっては望む場所に持って行って治療というのが、近い将来にできるようになると思います。
○小泉内閣総理大臣 これは、今、日本で使われているんですか。
○森下本部員 今、オリンパスの方で臨床治験をやっておりまして、臨床治験が終了いたしますと、厚生労働省の方の許可を得まして発売が近々になるんではないかと思います。
○小泉内閣総理大臣 これを飲むんですか。
○森下本部員 はい。
○小泉内閣総理大臣 ちょっと大きいですね。
○森下本部員 今のところは、そうですね。そのままトイレに流すわけにはいかないそうですので、回収の方法が最後に取らなければいけないということです。ただ、こういうものが普及いたしますと、非常に楽になってまいります。
こうしたような、日本の先端技術が、医療方法の特許に拡大することによって、ますます世界的に通用するものができてきております。
○小泉内閣総理大臣 世界でもやっているんでしょう。
○森下本部員 今、競争で始まっておりまして、ただ、画像的、内容的にはもうオリンパスさんの方が一番いいというふうに聞いております。
是非、医療特許の拡大によってこういうものが増えてくることを期待しておりまして、非常に困難な議論をとりまとめていただきました事務局を、高く評価したいと思っております。
引き続き、こうしたような新しい医療技術、特に日本の持つものづくりが結び付くような医療技術が出てくると思いますので、是非、遺伝子治療、再生治療の進展に伴う特許制度の拡大というのも考えていただきたいと思っております。
以上です。
○細田内閣官房長官 ありがとうございました。
次に、阿部本部員、お願いします。
○阿部本部員 この3年間、小泉総理の大号令の下、我が国の知財戦略は急速に進展してまいりました。これらの一連の改革は、まさに的を得たものであり、引き続き加速をしていかなければならないと考えております。
ただし、振り返ってみますと、これらの改革は、例えば、米国に遅れている部分や関係業界などの要請の強いものなど、個別的な対策が中心になりがちだったように思います。これからは、加えて、戦略全体の方向を議論していく、今は好機ではないかと考えます。
その視点はどういうことかと言いますと、グローバルな知の大競争の中で、我が国が知的財産をてこに世界文明の発展にいかに積極的に貢献していくかにあると考えます。そのためには、地球的視野をより重視して、知的財産の創造、保護、活用のいわゆる知的創造サイクルを全体として調和的に発展する仕組みをつくり上げることが求められます。どこかが突出しますと、やはり歪みが生じてまいります。
その際、国際的な科学技術・経済の構造を予知しつつ、より長期的、総合的な国益を念頭に置くとともに、例えば、所得が極端に低い発展途上国もあるわけでありますので、そういうところも知的創造サイクルの中で適切な役割を果たしていけるよう、配慮していくことが必要があろうかと考えます。
知的財産戦略本部では、こういったような観点も踏まえて、次のステップの知財戦略を検討する時期が来たと考えますので、よろしくお願い申し上げます。
○細田内閣官房長官 次に政府側から、時間の関係で簡潔にお願いします。
まず、棚橋大臣、お願いします。
○棚橋科学技術政策担当大臣 大学等の知的財産活動については、ここ数年間で研究成果の機関一元管理など、権利取得のための体制整備が着実に進められ、大学の知的財産の活用を通じた産学連携を推進するための環境が整ってきたと認識されております。
他方、先ほど阿部専門調査会長からもお話があったように、制度の運用面で、大学における中小企業やベンチャー企業への対応が、必ずしも十分でないとの声も聞かれており、今後は使いやすい制度の運営に心がけ、不断の運用改善を図るとともに、必要な場合には制度を改善し、産学連携の一層効果的な推進を図っていくことが必要でございます。
同時に、川合本部員のお話にもございましたが、大学における研究の一層の振興と、研究成果を社会に還元するという観点から、権利の創造から保護、活用までも含めた、知的創造サイクルをバランスよく推進するための課題が顕在化してきていると考えております。このような観点から「総合科学技術会議」といたしましても、本年1月「知的財産戦略専門調査会」を再開し、大学等の知的財産をより円滑に、かつ効率的に活用させるための方策及び知財人材を育成するための方策等について、積極的に検討を進めているところであります。具体的には、知的財産権と研究者の自由な研究活動との関係、知的財産を活用した産学連携による地域活性化、弁理士や大学の知的財産実務家等、知的創造サイクルを担う人材の育成戦略等についてさまざまな御意見をいただいているところでございます。5月中に提言としてとりまとめる予定でありますが、このとりまとめた内容については、今回の推進計画2005にしっかり反映していただきたいと思っております。
今後とも「知的財産戦略本部」と密接に連携を取りつつ、関係省庁の協力を得て、特に牛尾専門調査会会長のお話もございましたように、コンテンツ・ビジネスの振興も視野に入れながら、知的財産創造立国の実現に努めてまいりたいと思っております。
以上でございます。
○細田内閣官房長官 次に、尾辻厚生労働大臣、お願いします。
○尾辻厚生労働大臣 日本ブランド戦略の推進についての中で、食を担う多様な人材の育成に努めるということが提言されたところでございますが、その食を担う人材の1つとして、厚生労働省としては調理師の養成を行いますとともに、更に専門的な知識及び高度な技術、技能の向上に資するために、専門調理師及び調理技能士制度を設けているところでございます。食を担う専門的な人材の育成や活用につきましては、大変重要なことでございますので、今後関係省庁にも御協力をいただきながら、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
○細田内閣官房長官 次に、小島文部科学副大臣、お願いします。
○小島文部科学副大臣 文部科学省では、知的財産推進計画に基づく取組みに積極的に取り組んでいるところでございます。創造分野においては、大学において優れた特許等が生み出させるよう十分な支援を行うとともに、今年度から新たに我が国の国際競争力を強化し、組織的に産学官連携を推進するため、スーパー産学官連携本部を整備するなど、大学の研究成果の社会への還元が円滑かつ迅速に行われるように取り組んでまいりたいと思っております。
また、著作権法については、文化審議会著作権分科会において、デジタル化時代に対応した権利制限の見直し等について、具体的な検討を鋭意進めているところでございます。今後とも、海賊版対策や知的財産に強い人材養成を含め、知的財産の創造及び活用に向けた取組みをより一層推進してまいります。
○細田内閣官房長官 次に、保坂経済産業副大臣、お願いします。
○保坂経済産業副大臣 本年は、我が国特許制度が発足いたしましてから、120 年目の節目の年を迎えました。この年は、明治18年、1885年でございまして、特許専売条例というのが制定されまして、くしくもそのときの総理大臣が高橋是清さんでございまして、俗に言うライオン宰相でございます。
4月18日の「発明の日」には、小泉総理にも御出席をいただきまして、感謝状、功労賞等を授与されましたが、受賞者に続く人材の育成が重要と痛感した次第でございます。
なお、御紹介申し上げますが、中山本部員におかれましては、総理大臣感謝状、おめでとうございました。
また、キヤノン社長の御手洗本部員におかれましても、最優秀の意匠活用優良企業といたしましての表彰をさせていただきました。おめでとうございました。
そういうことがございました。
「権利保護基盤強化専門調査会」の中小企業関係でございますが、知的財産を活用して中小経営や地域経済の活性化を図るために、各地にございます経済産業局ごとに、地域の知財戦略本部を設置いたしまして、官民挙げて総合的に中小企業支援に向けて頑張っているところでございます。
なお、料金減免措置につきましては、対象を拡大する旨、このたびの中小企業3法の中で簡素化とともに決定させていただきました。
なお、先ほど申し上げまた、高橋総理でございますが、初代の特許庁長官の時代でございます。
次に「コンテンツ専門調査会」の関係でございますが、牛尾会長さんからもお話がございましたとおり、国際映画祭の年に、今年でございますが、アジアの関係大臣参加も得て、国際的なセミナーを実施する予定になっております。なお、商標法改正法案の早期成立を図るところに今、努力をしております。
模倣品・海賊版対策につきましても、不正競争防止法の早期成立を図るように頑張っておりまして、6月に実は中国にハイレベルの官民合同ミッションを派遣する予定になっておりますが、非常に微妙な時期になっております。
なお、最後に特許審査迅速化につきましては、昨年、本年度と98名の任期付きの審査官を増員いたしまして、審査請求の期間の短縮、あるいは順番待ちの案件が増大する中でございますので、その短縮、未処理件数の解消に全力を挙げているところでございます。
以上でございます。
○細田内閣官房長官 次に、山本総務副大臣、お願いします。
○山本総務副大臣 我が国におけるコンテンツ・ビジネスは、着実に進展をしつつございまして、この流れを加速化するとともに、総務省としては一層の環境整備を図る予定でございます。
具体的には、放送コンテンツのブロードバンド流通に係る権利クリアランス処理システムの実利用を目指し、近く関係者の検討組織を立ち上げる予定でございます。これにつきましては、過去3年間実証実験を行ってきたものでございます。
著作権の権利許諾に係る課題の整理や、法制度的対応の検討をいたし、35ミリフィルム並みの高品質な800 万画素級のデジタルシネマのネットワーク伝送技術の研究開発を立ち上げてまいりたいと思っております。
なお、先ほど久保利先生から御指摘がございました、インターネットを利用した模倣品・海賊版の問題についてでございますが、現在、知的財産推進計画2004を受けまして、権利者団体、オークション事業者等、関係者が模倣品出品物の削除に関する、具体的な対処方策を検討いたしておりまして、総務省としてはこの検討を積極的に支援しておるところでございます。
○細田内閣官房長官 次に、上田財務副大臣、お願いします。
○上田財務副大臣 税関を所管する立場から一言申し上げます。税関におきましては、知財侵害物品の水際取り締まりに、これまでも積極的に対応してきたところでございます。具体的には、平成15年度、16年度と制度改正を行いまして、それに続いて17年度におきましても、知財推進計画2004の検討課題について、関税・外国為替等審議会で御審議をいただきまして、その結果を踏まえて今国会で、先ほど御紹介ありましたように、関税定率法の改正をしたところでございます。
内容としては、御承知のとおりでありますが、形態模倣品などの輸入禁制品への追加、権利者による見本の分解検査の導入などが含まれているところでございます。
また、税関の体制整備も引き続いて取り組んでおりまして、今年度も担当者の増員、あるいは弁理士を職員に採用するといったことも積極的に実施しております。
今後は、こうした取組みも踏まえまして、今般、改正した制度を強化した体制の下で着実に実施していくということが重要であるというふうに考えております。
今後の制度の見直しの必要性については、まずはその実施状況等を踏まえ上で考えていくべきだろうというふうに考えているところでございます。
以上です。
○細田内閣官房長官 次に、常田農林水産副大臣、お願いします。
○常田農林水産副大臣 農林水産省では、知的財産推進計画2004に盛り込まれました施策について、植物新品種の保護の強化に向けた種苗法改正法案を、今国会に提出するなど、積極的に取り組んでいるところであります。
本年3月25日に閣議決定されました、今後の食料・農業・農村政策の基本方向を定める、食料・農業・農村基本計画の下においても、攻めの農政を柱とし、新品種等の知的財産権の保護・活用や産地ブランドの育成・確立、食育活動の推進、そして、牛尾専門調査会会長からもお話がありました、日本食の海外展開等を通じて、農林水産物の輸出の倍増を目指してまいりたいと思っております。
知的財産推進計画2005においても、農林水産物の高付加価値化、農業経営基盤の強化、ひいては食料自給率の向上にも資することになるよう、積極的に対応してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○細田内閣官房長官 ありがとうございました。
ほかにございますか。外務副大臣、どうぞ。
○逢沢外務副大臣 1分だけお時間いただきたいと思います。中国について、中間的な御報告を申し上げたいと思いますが、中国政府は昨年12月21日に、いわゆる知的財産権侵害における刑事事件の処理についての、新たな対処方針、基準を発表いたしまして4か月が経過したわけでありますが、例えば、各種協力行為については、共犯と認める。あるいは、刑事訴追基準を引き下げるということを発表したわけでありますが、しかし、その後我が国企業が関係する具体的な改善例というものが、残念ながら報告されておりません。その実効性については適切に中国政府に発言をしていかなければならないと考えております。
しかし、中国は中国で努力もいたしておりまして、20日から今日の26日まで、中国政府は知的財産権保護週間というのを定めて、いろいろキャンペーンを行ったようであります。努力はあったとするものの、実効性の確保ということについて、しっかり発言をしてまいりたいと思います。
また、全在外公館、これは日本の在外公館に、知的財産権担当官を指名いたしました。不勉強な者もまだおるかとも思いますが、しっかり取り組んでまいりたいと思います。御指導のほど、よろしくお願いいたします。
以上です。
○細田内閣官房長官 ありがとうございました。
ほかによろしゅうございますか。
皆様から多くの貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。今後の推進計画見直しのスケジュールにつきましては、資料8のとおり、まず有識者本部員の方々に集中的に検討を行っていただき、草案をとりまとめていただきたいと思います。その上で、次回本部会合において、その草案を御審議いただき、推進計画2005を決定いたしたいと思いますが、御了承いただけますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○細田内閣官房長官 ありがとうございました。
併せて、有識者本部員会合のとりまとめを、阿部本部員にお願いしたいと思いますが、御了承いただけますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○細田内閣官房長官 ありがとうございました。
それでは、最後に知的財産戦略本部長の小泉総理大臣から御発言をいただきたいと思います。
その前にプレスが入室いたします。
(報道関係者入室)
○小泉内閣総理大臣 今お話を聞いていて、大事なことばかりで、スピード感も大事なんだけれども、結局、知的財産というのは人間ですね、人材、どの分野でも、それは日本は模倣がうまいと言うけれども、昔から新しいものをつくる創造力も大したものだと思います。食にしても、あるいはキヤノンだってライカを抜いてしまったからね。自動車だってそうでしょう。追い付け追い越せどころじゃないよ。とても考えられないようなことをやり抜いてきたわけですから、映画だって黒澤明監督だけではないからね。日本の知的財産は宝の山ではないかと、ただ気づいてないだけで、眠っているだけです。
観光だってそうでしょう、今、500 万人だけれども4,000 万人来ると。これは夢じゃないですよ。そういう面において、今までの皆さんの御協力によってここまでやってきた、これからも知的財産立国、最先端の知的財産立国を目指して、よろしく御指導お願いしたいと思います。政府、各役所も連携して、これは日本の将来の発展の原動力ですよ。よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○細田内閣官房長官 それでは、予定の時間がまいりましたので、本日の会合をここで閉会いたしたいと存じます。本日の会合の内容については、事務局に記者会見を行わせます。
次回の会合につきましては、6月10日、午後5時から開催いたします。
本日は、御多忙のところ誠にありがとうございました。
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