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地球温暖化対策推進大綱
目 次第1 地球温暖化対策推進大綱の見直しの背景と意義
第2 地球温暖化対策に関する基本方針
第3 6%削減約束の達成に向けた方針
第4 6%削減約束の達成に向けた地球温暖化対策の推進
第5 定量的な評価・見直しの仕組み
第6 温室効果ガス排出量・吸収量の算定のための国内制度の整備第7 観測・監視体制の強化及び調査研究の推進第8 地球温暖化対策の国際的連携の確保第9 6%削減約束の達成に向けた地球温暖化対策の工程表
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第1 地球温暖化対策推進大綱の見直しの背景と意義1.地球温暖化に関する基本的認識地球温暖化問題は、人の活動に伴って発生する温室効果ガスが大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることにより、地球全体として、地表及び大気の温度が追加的に上昇し、自然の生態系及び人類に悪影響を及ぼすものであり、その予想される影響の大きさや深刻さから見て、まさに人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題の一つである。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告によれば、全球平均地上気温は1861年以降現在まで0.6±0.2℃上昇していること、全球平均海面水位は20世紀中に10pから20p上昇していること等が明らかにされており、氷河の後退、永久凍土の融解等の観測の結果、地域的な気候変化が世界の多くの地域における種々の物理・生物システムに影響を既に与えているとしている。そして、その原因に関して、過去50年間の温暖化の大部分が人間活動に起因しているという、新たな、かつ、より確実な証拠が得られたと述べている。また、将来予測については、21世紀中に全球平均地上気温は1.4℃から5.8℃上昇し、海水の膨張などにより21世紀末には海面が9cmから88cm上昇すると予測している。さらに、その影響としては異常気象の発生のほか、生態系への影響や、マラリアなどの感染症や浸水被害を受ける人口の増大等の人間社会に対する影響があるとしている。さらに、どのような温度上昇でも開発途上国で正味の経済的損失が生じ、先進国でも数℃以上の温度上昇で正味の経済的損失が生じ、これにより南北格差が拡大するとしている。2.国際社会における取組(1)気候変動枠組条約の採択・発効
(2)京都議定書の2002年発効に向けた取組
3.これまでの取組と京都議定書の6%削減約束の達成への挑戦我が国は、1990年10月に「地球温暖化防止行動計画」を「地球環境保全に関する関係閣僚会議」において策定し、二酸化炭素の排出量を2000年以降1990年レベルで安定化することなどを目標にして、各種の対策を講じてきた。この目標値は、気候変動枠組条約においても言及されているが、2000年においてこれは達成されていないとみられる。一方、1997年12月の京都議定書の採択を受けて、1998年6月に、地球温暖化対策推進本部において、2010年に向けて緊急に推進すべき地球温暖化対策をとりまとめた「地球温暖化対策推進大綱」を決定した。 また、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)の制定及びそれに基づき基本方針を策定することなどを通じて、我が国における温暖化防止対策推進の基礎的な枠組みを構築するとともに、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(昭和54年法律第49号。以下「省エネルギー法」という。)の改正等の各種の国内対策を実施した。 しかしながら、温室効果ガスの排出量は依然として増加しており、1999年度の我が国の温室効果ガスの排出量は、基準年(二酸化炭素、メタン、一酸化ニ窒素については1990年、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄については1995年。以下同じ。)比で約6.9%の増加となっている。また、現行の対策・施策だけでは、2010年の温室効果ガスの排出量は基準年比約7%程度増加になると予測され、京都議定書の約束を達成するためには、今後一層の対策を進めていくことが必要となっている。 我が国は、京都議定書締結について国会の承認が得られ次第、京都議定書を締結する方針であるが、エネルギー効率が既に世界最高水準にある我が国にとって、京都議定書における我が国の6%の削減約束(以下「6%削減約束」という。)を達成していくことは、決して容易なことではなく、国、地方公共団体、事業者及び国民が一体となって、約束達成に挑戦していく必要がある。「地球温暖化対策推進大綱」の見直しは、こうした状況を踏まえ、国、地方公共団体、事業者、国民の総力を挙げた取組を強力に推し進めるため、京都議定書締結に先立ち、京都議定書の6%削減約束の達成に向けた具体的裏付けのある対策の全体像を示すとともに、温室効果ガスの種類その他の区分ごとに目標並びに対策及びその実施スケジュールを記述することとし、併せて個々の対策についての我が国全体における導入目標量、排出削減見込み量及び対策を推進するための施策を定めたものである。
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第2 地球温暖化対策に関する基本方針1.地球温暖化対策の目指すべき方向今後の地球温暖化対策に当たっては、まず、増加基調にある温室効果ガスの総排出量を早期に減少基調に転換し、その減少基調を京都議定書の6%削減約束の達成、更なる長期的・継続的な排出削減へと導くことを目指す。(1)京都議定書の6%削減約束の達成
(2)温室効果ガスの更なる長期的・継続的な排出削減
2.地球温暖化対策の策定・実施に当たっての基本的な考え方(1)環境と経済の両立に資する仕組みの整備・構築京都議定書の6%削減約束の達成への取組が、我が国の経済活性化、雇用創出などにもつながるよう、技術革新や経済界の創意工夫を活かし、環境と経済の両立に資するような仕組みの整備・構築を図る。 (2)ステップ・バイ・ステップのアプローチ
(3)国、地方公共団体、事業者及び国民が一体となった取組の推進
(4)地球温暖化対策の国際的連携の確保
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第3 6%削減約束の達成に向けた方針1.温室効果ガス排出量の現状と今後の排出量の見通し1999年の我が国の温室効果ガスの総排出量は13億1400万t-CO2である。旧大綱策定時においては、特段の対策を講じなければ温室効果ガスの排出量は大幅に増加すると見込まれていたところ、旧大綱に基づき様々な対策の推進を図ってきた結果、これまでの現行対策を前提とした場合の2010年時点での温室効果ガスの総排出量の見通しは、約13億2000万t-CO2となり、基準年比で約7%の増加に抑制することができると見込まれる。一方、我が国の温室効果ガス全体の基準年排出量(以下「基準年総排出量」という。)は12億2900万t-CO2であり、京都議定書における我が国の6%削減約束を達成するためには、その値の6%減である11億5500万t-CO2に削減することが必要である。したがって、京都議定書における我が国の6%の削減約束を達成するため、現行対策に加えて、さらに約13%(約1億6500万t-CO2)相当分の追加的排出削減の達成を図ることとする。2.温室効果ガス別その他の区分ごとの目標京都議定書の6%削減約束については、当面、次の目標により達成していくこととする。その際、@〜Dの目標のうち、第1約束期間において、目標の達成が十分に見込まれる場合については、こうした見込みに甘んじることなく、引き続き着実に対策を推進するとともに、今後一層の排出削減を進めるものとする。 なお、国としての京都議定書上の約束達成義務及び京都メカニズムが国内対策に対して補足的であるとする原則を踏まえ、国際的動向を考慮しつつ、京都メカニズムの活用について検討するものとする。
3.個々の対策に係る目標京都議定書の6%削減約束の達成に向けた具体的裏付けのある対策の全体像を示すため、本大綱においては、前述の温室効果ガス別その他の区分ごとの目標を達成するための個々の対策についての我が国全体における導入目標量、排出削減見込み量及び対策を推進するための施策を規定することとし、以下の「第4 6%削減約束の達成に向けた地球温暖化対策の推進」において、各分野ごとに表形式で示すこととする(表1〜11を参照)。また、導入目標量又は排出削減見込み量を設定することが困難な対策についても、一層の排出削減に向け、その着実な実施に遺漏無きを期すものとする。個々の対策についての我が国全体における導入目標量・排出削減見込み量については、温室効果ガス別その他の区分ごとの目標を達成するため、技術的・経済的に導入・実施が期待される水準として定めるものとする。
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第4 6%削減約束の達成に向けた地球温暖化対策の推進1.地球温暖化対策の総合的計画的推進京都議定書目標達成計画の策定、地球温暖化対策推進本部の法定化、国民の取組の強化等を定めた「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(地球温暖化対策推進法改正法案)」の成立に全力を尽くすとともに、京都議定書の発効後、本大綱を基礎として同法に基づく京都議定書目標達成計画を速やかに策定し、京都議定書の6%削減約束の達成に向けた総合的かつ計画的な取組を推進する。また、京都議定書目標達成計画の策定に当たっては、「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議」(平成9年8月22日内閣総理大臣決裁により開催)において、委員の意見を聴取するものとする。なお、本大綱については、これまでの関係審議会等におけるパブリック・コメントや審議の結果等を踏まえつつ、その策定作業を行ったところであるが、京都議定書目標達成計画の策定に当たっては、本大綱を基礎としつつ、さらに国民各界各層の意見を幅広く聴くものとする。 2.エネルギー需給両面の対策を中心とした二酸化炭素排出削減対策の推進我が国の温室効果ガス排出量は、石油、石炭、天然ガス等のエネルギーを起源とするものが約9割である。過去2回の石油危機を経て、国民各層の努力、各種エネルギー政策の下、需要面においては省エネルギーが進展し、供給面においては石油代替エネルギーである原子力・天然ガスの比重が着実に高まりつつある。この結果、GDP当たりのエネルギー消費量、二酸化炭素排出量は、欧米諸国に比し概して低い水準にあり、既に世界でも有数の温暖化対策・省エネルギー先進国となっている。他方、エネルギーは、国民生活、経済活動にとって必要不可欠のものである。経済的に厳しい状況に直面した90年代においても、エネルギー消費は増大し、その結果、2000年度のエネルギー起源の二酸化炭素排出量は、90年度比約10%増(速報値)となっている。京都議定書の6%削減約束を達成するため、エネルギー起源の二酸化炭素について2010年度においては、これを1990年度水準まで削減することを我が国は目標として掲げているところである。 <エネルギー起源の二酸化炭素に係る排出削減量>1998年の「地球温暖化対策推進大綱」(旧大綱)では旧大綱で提示された対策を講じなければ、2010年度のエネルギー起源の二酸化炭素排出量は、1990年度に比べて20%以上もの増加になると見込んでいた。1998年以降、旧大綱に基づき、エネルギー需給両面の対策を強力に推進しているところであるが、現在の政策の枠組みを維持した場合でも、2010年度のエネルギー起源の二酸化炭素排出量は約1126百万t-CO2となり、約1053百万t-CO2であった1990年度に比べ約73百万t-CO2増加すると見込まれる。これは、需要面においては、民生、運輸乗用車部門を中心としたエネルギー需要が1990年度に比べると大幅に伸び、供給面においては、発電用の燃料を中心として、旧大綱策定時に想定したとおりには原子力等の非化石エネルギーの導入が進まず、むしろ安価な石炭が大幅に増加することが見込まれることによる。このため、2010年度におけるエネルギー起源の二酸化炭素排出量を1990年度レベルに抑制するため、旧大綱に盛り込まれた措置を着実に実施するとともに、更なる省エネルギー対策、新エネルギー対策及び新たに燃料転換等の対策を実施する。また、安全性の確保を大前提として、原子力を引き続き着実に推進していくこととする。これらの追加対策による2010年度の排出削減量は、需要面での排出抑制対策(省エネルギー対策)で約22百万t-CO2、新エネルギー対策で約34百万t-CO2、燃料転換等で約18百万t-CO2となる。また、これらの対策が実施された際の各部門における2010年度における排出量は、産業部門は約462百万t-CO2(▲7%)、民生部門は約260百万t-CO2(▲2%)、運輸部門は約250百万t-CO2(+17%)となる(( )内は1990年度の各部門別の排出量からの削減割合)。各追加対策による削減量及び各部門毎の排出削減量は本大綱において京都議定書の約束を果たすための目標として位置づけられるが、部門ごとの排出削減目標量については、我が国が潜在成長率どおりの経済成長をとげつつ、エネルギーの供給側における安全性を前提とした原子力の推進、新エネルギー導入対策、燃料転換対策等の対策が所期の効果をあげ、かつ、エネルギー需要側の各部門における対策が所期の効果をあげた場合に達成することができると試算される目安として設定するものである。 地球温暖化問題はエネルギー問題と密接な関係があり、今後、環境と経済を両立させつつ、京都議定書の6%削減約束を達成するため、エネルギー需給両面において各般にわたる対策をより一層強化し、環境調和型のエネルギー需給構造の構築を行う。また、事業者による京都メカニズムの活用についてはエネルギー起源の二酸化炭素排出抑制をより確実なものとするための有効な対策である。なお、エネルギー需給面における二酸化炭素排出量削減については、各対策による排出の削減が当該対策のみで達成されるのではなく、本大綱に盛り込まれた需給両面の全ての対策の効果をあわせた結果、当該対策の効果として算出される試算値である。このような観点から、対策の評価を行う際には、削減量や導入目標量を用いつつ、エネルギー需給構造全体の観点に立って一定の幅をもって行うことが適当である。 <エネルギー需要面の二酸化炭素排出削減対策(省エネ対策)の推進>国民経済上できる限り効用を変えない範囲での最大限の省エネルギーを図ることは、最も優れた温暖化対策の一つである。また、エネルギーの需要主体は極めて多岐に亘り、個々の需要者の創意工夫等の主体的対応なくして、二酸化炭素排出量削減への実効性ある効率的対応は難しい。かかる認識の下、エネルギー需要面の対策は、産業部門における自主的対応と民生・運輸部門における省エネ機器・システムの技術開発・導入促進、これに必要な環境整備を中心とする。こうした対応により、国民生活における現状の経済的厚生水準を確保しつつ、先進的省エネルギー機器開発、省エネルギー設備等への投資を通じ新たな経済成長がもたらされることが期待され、環境と経済の両立を目指すことが可能と考える。特に、90年代の経済的低迷の中で、エネルギー消費が1990年度比で見ると大きく増加している民生、運輸乗用車部門については、その増加の抑制が喫緊の課題である。 民生部門については、石油危機以降も一貫してエネルギー需要が増加してきている。このうち家庭部門においては、新たな機器の普及やより快適な生活を求める国民のニーズにより、機器の保有台数の増加や使用時間、使用条件が変わることが需要の増加要因となっている。業務部門においては、産業構造の変化等によるオフィスビルや商業施設等の床面積の増大が需要の主たる増加要因となっている。このため、民生部門においては、各種機器の効率改善の強化、エネルギー管理の徹底、住宅・建築物の省エネルギー性能の向上等により対策を強化する。 また、運輸部門については、1990年度から1995年度まではエネルギー消費に伴う二酸化炭素排出量が1990年度比17%増と大きく伸びているが、1995年度以降は自家用乗用車からの排出量が1999年度に1995年度比11%増となっている他は横ばいとなっており、運輸部門全体として1999年度の排出量は1995年度比で5.6%増となっている。しかしながら、運輸部門からの二酸化炭素排出量は依然として1990年度に比して高い水準にあることから、自動車交通対策、モーダルシフト・物流の効率化、公共交通機関の利用促進等の対策を引き続き充実させ実施していく。 こうした需要面での対策により、2010年度の効果として、原油換算で、現行対策として約5000万KL、更なる追加対策として700万KLの削減が見込まれる。更なる追加対策による二酸化炭素削減量は約22百万t-CO2と見込まれる。 (1)自主行動計画の着実な実施とフォローアップ
〔現行対策〕
〔追加対策〕
(2)エネルギー管理の徹底
〔現行対策〕
〔追加対策〕
(3)機器の効率改善の強化
〔現行対策〕
〔追加対策〕
(4)住宅・建築物の省エネ性能の向上
〔現行対策〕
〔追加対策〕
(5)自動車交通対策
〔現行対策〕
〔追加対策〕
(6)環境負荷の小さい交通体系の構築
〔現行対策〕
〔追加対策〕
(7)新たな省エネルギー型技術等の開発・普及
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<エネルギー供給面の二酸化炭素削減対策の推進>エネルギー供給面においては、二度の石油危機を経て、石油代替エネルギー政策の下、原子力、天然ガス等の比重が高まり、エネルギー供給の多様化が進展した。他方、近年、エネルギー分野での自由化の進展、より一層の効率化要請の中、安価な石炭燃料への依存が高まりつつあり、二酸化炭素排出量の増加の一因となっていることも否定できない。エネルギー起源の二酸化炭素排出量が全体の約9割を占める状況下、今後、 地球温暖化対策との調和と安定供給確保を実現するためには、原子力、新エネルギー等の非化石エネルギーの一層の導入促進が必要である。また、引き続きエネルギー供給の太宗を占める化石エネルギー間における燃料転換を促進し、効率化への要請も満たしつつ、環境調和型のエネルギー供給構造の実現を目指す。 (1)新エネルギー対策
*)これらの省エネルギー効果については、エネルギーの需要面での取扱いとなっている。
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(2)燃料転換等
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(3)原子力の推進
原子力の推進に当たっては、安全性の確保を大前提として、立地地域はもとより電力消費地を含めて国民的な合意形成に向けた取組を行うことが必要である。また、国民の一人一人が原子力を含むエネルギー問題について理解を深め、自ら考え、判断する力を身に付けるための教育を推進するための環境整備を図る必要がある。原子力発電施設等の立地地域については、これまで、いわゆる「電源三法」及び「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」に基づき、防災面にも配慮しつつ、各種の地域振興策が講じられてきたところであるが、今後ともその着実かつ一層の推進を図り、原子力立地の推進に向け、関係省庁が十分連携し、政府一体となって取組を行う。 また、限りあるウラン資源の有効利用を図るとともに、原子力発電所の長期安定的な運転継続を確保するため、核燃料サイクルについて、その研究開発も含め、国内における確立を着実に進めていく。さらに、原子力発電を利用する上での重要課題である高レベル放射性廃棄物の最終処分施設の立地に向けて引き続き努力をしていく。
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エネルギー起源のCO2排出抑制対策[マトリックス表(別紙参照)]
3.非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素の排出抑制対策の推進非エネルギー起源二酸化炭素排出抑制対策として、廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進による廃棄物焼却量の抑制、原材料やバイオマスエネルギー源として化石燃料の使用量を抑制でき、再生産可能な木材の有効利用等を実施してきた。また、メタンの排出抑制対策として、ごみ直接埋立の縮減、ほ場の管理の改善、家畜の飼養管理に関する技術研究等を実施してきた。一酸化二窒素の排出削減対策についても、工業過程での排出抑制対策、廃棄物・下水汚泥等の焼却施設における燃焼温度の高度化等を進めてきた。石灰石の消費、アンモニアの製造等に伴い排出される二酸化炭素を計上している工業過程からの1999年度の排出量(5,400万t-CO2)は、同分野の1990年度の排出量に対して12.8%減少している。これは1999年度のセメント生産量が1990年度に対して12.4%減少したことなどが要因として挙げられる。また、化石燃料由来の廃棄物(廃油、廃プラスチック類)の燃焼等による二酸化炭素の排出は、二酸化炭素総排出量の約2%を占めるに過ぎないが、1999年度の排出量(2,300万t-CO2)を同分野の1990年度の排出量と比較すると、約1.5倍に増加している。 一方、メタンと一酸化二窒素の1999年度排出量(それぞれ2,500万t-CO2、1,800万t-CO2)は、1990年度と比較してそれぞれ12.4%、21.1%減少している。メタンについては水田面積の減少に伴う農業部門での減少、一酸化二窒素については、化学繊維原料の製造を行っている事業場において、製造工程に分解装置を導入したことが大きく寄与している。 現行の対策・施策により、非エネルギー起源二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素の排出量は2010年にこれらの分野の1990年比で2.8%(基準年総排出量比0.29%)減少するものと見込まれ、追加的な対策を実施することにより、1990年比で4.8%(基準年総排出量比0.5%)減少するものと見込まれる。
注1)混合セメントの利用拡大等削減量を明記していない対策により、合計で約260万t-CO2以上の削減を達成することとする。 注2)農地からの二酸化炭素の排出については、マラケシュ合意を受け、今後排出・吸収目録に算入することとし、排出削減を図ることとしている。
4.代替フロン等3ガスの排出抑制対策の推進(1)これまでの取組代替フロン等3ガスは、温室効果ガス排出量全体に占める割合は約3%(1999年度CO2換算ベース)に過ぎないが、モントリオール議定書に基づき生産・使用の削減が進められているオゾン層破壊物質の有力な代替先である等のため、その増加をいかに抑制するかが課題となっている。このため、自然体ベースから約3,400万t-CO2を削減することを目標に、現行対策として、以下のものを一体として取り組んできた。
これらの取組の結果、2000年の実排出量は、1995年比で26.2%減少し、順調な成果があがっている。 (2)今後の対策・施策
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※対基準年総排出量比約+5%(自然体ベース約107百万t-CO2)からの削減 5.革新的な環境・エネルギー技術の研究開発の強化地球温暖化問題は、21世紀を通じて対応が必要な問題であり、この対応のためには、現在の段階で考えられる実施可能な対策の適用などによる取組だけではなく、現在の想定を超えた技術革新を推進していくことによるブレークスルーを図る必要がある。革新的技術開発については、第1約束期間までに国民各界各層の努力による更なる地球温暖化防止活動の推進と合わせて基準年総排出量比で2%の排出削減を図ることを目標としている。現在までに、2010年に向け、革新的な環境・エネルギー技術として、超臨界流体利用技術等のエネルギー利用部門における省エネルギー関連技術や超高効率太陽光発電等の現在の技術水準を超えた革新的技術開発を強力に推進してきた。また、地球温暖化問題の究極的な解決に向けた対策を強力に推進するため、地球温暖化防止上の効果を期待した革新的な水素製造技術や二酸化炭素の貯留・固定化技術等の技術開発、エネルギー利用効率を改善する超鉄鋼、超耐熱材料等の研究開発を計画的に実施してきた。 革新的な環境・エネルギー技術については、将来的に温室効果ガス削減効果が期待されるものの、現時点においては研究開発段階にあるため、早急な技術の確立が必要である。 このため、2010年に向けて最大限の効果を確保するため、効果が期待される技術について、その早期確立に向け、強力に推進していく。具体的には、革新的なエネルギー転換を図る技術、製品の使用時におけるエネルギー効率を大幅に向上する基盤的技術、製造プロセス等における大幅な省エネルギーを図る革新的なプロセス・システム技術について技術開発の一層の強化を図る。さらに、得られた技術開発成果の積極的な公開などの導入・普及に向けた取組についても総合的に実施する。 一方、温暖化対策は長期的な視野に立って、短期的な技術開発と長期的な技術開発などを戦略的に組み合わせて対応すべきものであることから、技術開発の成果が現れるまでの期間が長い技術についても、有望な技術であれば技術開発を実施する。 これら革新的な環境・エネルギー技術開発の推進にあたっては、「科学技術基本計画」(平成13年3月閣議決定)を踏まえて地球温暖化対策技術等に関する研究開発を実施していくとともに、総合科学技術会議における地球温暖化研究イニシャティブのもと総合的な推進を図る。
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6.国民各界各層による更なる地球温暖化防止活動の推進人々の価値観を含め、現在の社会経済システムやライフスタイル・ワークスタイルの在り方は温室効果ガスの排出に大きく関わっている。地球温暖化対策の実行は、現在の経済社会システムを変革していくことでもあり、国民各界各層の理解と行動及び協同を求めるための普及啓発や情報提供を、各種媒体の活用など既存の仕組みも最大限活用しつつ、国民各界各層一体となって強力に推進する必要がある。本大綱においては、主として政府等による情報提供、広報活動、教育等を通じた普及啓発によりその推進を図るべき対策であって、国民各界各層の特段の努力によって実現する取組と言えるものを「国民各界各層による更なる地球温暖化防止活動」と位置付け、こうした取組の推進により、第1約束期間までに革新的技術開発と合わせて基準年総排出量比で2%の排出削減を図ることを目標とする。国民各界各層による更なる地球温暖化防止活動として、例えば、別表に掲げられた対策が実施されたとすると、基準年総排出量比で最大で約1.8%の排出削減を図ることが可能である。 しかしながら、内閣府が行った「地球温暖化防止とライフスタイルに関する世論調査」(2001年7月)によれば、国民の地球温暖化防止のための取組の意欲は高い反面、これまで十分な取組がなされていないのが現状である。 その要因としては、@国民各界各層に対する地球温暖化防止活動についてのこれまでの普及啓発・情報提供がまだ不十分であること、A単発的な対策が中心であり、継続的に普及啓発・情報提供するための体制整備が不十分であり、特に、地域レベルで、行政、各種事業者、住民等を巻き込んだパートナーシップによる対策を推進するための基盤整備が不十分であること、B各家庭等において、製品の購入時、使用時など、地球温暖化防止のために具体的にどのような取組を行うことができるのかについて必要な情報提供・アドバイスが十分になされていないこと、などが上げられる。 これまで地球温暖化対策推進法に基づく全国地球温暖化防止活動推進センター、都道府県地球温暖化防止活動推進センター及び地球温暖化防止活動推進員や、省資源・省エネルギー国民運動の展開等により、各種の普及啓発活動を行ってきたところであるが、これまでの各種施策に加え、@「環の国くらし会議」等の開催等を通じた地球環境時代にふさわしいライフスタイルの形成に向けた運動の全国的展開(「環の国くらし会議」の開催等)、A地域レベルでの取組の基盤整備、B経済便益を生ずるような対策が実施されるよう、各家庭等での取組を調査し、指導及び助言を行う「温暖化対策診断」を実施することとする。 また、国民運動の展開、地域レベルでの取組推進のための基盤整備、家庭における取組の促進・支援の仕組み等を活用しながら、地球温暖化防止活動の普及啓発等を推進していく。 (1)地球温暖化防止活動推進のための基盤整備
(2)地球温暖化防止活動の普及啓発等の推進等
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7.温室効果ガス吸収源対策の推進(1)森林・林業対策の推進森林・林業基本法に基づき2001年10月に閣議決定された森林・林業基本計画に示された森林の有する多面的機能の発揮に関する目標と林産物の供給及び利用に関する目標どおりに計画が達成された場合、京都議定書第3条3及び4の対象森林全体で、森林経営による獲得吸収量の上限値(対基準年総排出量比3.9%、4,767万t-CO2)程度の吸収量を確保することが可能と推計される。 上記は森林・林業基本計画に基づく試算であり、今後、算定方法等について精査、検討が必要である。また、現状程度の水準で森林整備、木材供給、利用等が推移した場合は、確保できる吸収量は対基準年排出量比3. 9%を大幅に下回るおそれがある。 吸収量の確保は、政府はもとより、森林所有者、林業及び木材産業の事業者、更には地方公共団体や森林及び林業に関する団体を含め、関係者全体による多大な努力が必要である国民的課題であり、森林・林業基本計画の目標達成に必要な森林整備、木材供給、木材の有効利用等を着実かつ総合的に実施することが不可欠である。 わが国に必要な吸収量を確保するため、以下に示す施策を強力に推進するとともに、吸収量の報告・検証体制の強化を図る。
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(2)都市緑化等の推進
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8.京都メカニズムの活用(1)基本的な考え方
(2)京都メカニズムの活用に必要となる施策等 1. 当面必要となる措置等の実施
事業参加者が、共同実施(JI)及びクリーン開発メカニズム(CDM)に係る事業を行い、「排出削減単位」又は「認証された排出削減量」(クレジット)を取得しようとする場合には、京都議定書第6条1(a)及び第12条5(a)の規定に基づき、関係締約国の承認を受けることが必要とされている。 このため、関係省庁合同により、共同実施(JI)及びクリーン開発メカニズム(CDM)に係る事業の承認申請の受理・確認等を行うための体制を速やかに整備するものとする。 イ 国別登録簿等の整備
ウ その他の施策等
CDM理事会に我が国代表が選任されたことを活かし、環境十全性を確保するとともに、経済合理的なルールが策定されるよう国際ルールの策定に積極的に貢献する。 2. 2008年以降の本格的な活用に向けた必要な制度の在り方等の検討
9.その他(1)事業活動に伴う温室効果ガス排出量・原単位の把握・公表の推進事業者は製品の製造から使用、廃棄に至るまで多様な事業活動を行っており、その活動の一つ一つが温室効果ガスの排出源となっている。個々の事業者がこうした多様な排出源ごとに技術的経済的に最も効果的な対策を講じていくためには、自らの事業活動に係る排出の状況(排出量・原単位)を把握することが重要である。さらに、事業者は社会的存在であり、単独に又は共同して、自らの排出の状況(排出量・原単位)に関する情報を自主的に公表することが推奨される。 (2)家庭におけるエネルギー消費等に伴う温室効果ガス排出量の把握の促進
(3)ポリシーミックスの活用
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第5 定量的な評価・見直しの仕組み1.基本的考え方第1約束期間までの社会経済動向の見通しが不透明である中で、本大綱の実効性を確保し、京都議定書の約束を確実に達成していくためには、第2ステップ開始前及び第3ステップ開始前に、温室効果ガスの種類その他の区分ごとの目標の達成状況、個別の対策についての我が国全体における導入目標量・排出削減見込み量の達成状況、本大綱に盛り込まれた施策の進捗状況等に加え、各主体による排出削減に向けた取組の積み重ねと今後の課題を適正に評価し、必要な対策の見直し又は追加を行うこと等、柔軟に対策・施策の見直しを行うことが不可欠である。この際、この大綱の前提とした各種経済フレームについても必要に応じて評価・見直しを行った上で、当該評価・見直し結果を踏まえて柔軟に対策・施策の見直しを行うことが適当である。 このため、地球温暖化対策推進本部は、毎年、地球温暖化対策の具体的措置の推進状況を点検するとともに、2004年及び2007年に本大綱の内容の見直しを行う。その際、「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議」において、地球温暖化対策として講じる個別の措置の進捗状況及び本大綱の評価・見直しについて、委員の意見を聴取する。 2.定量的評価・見直し方法の概略本大綱の評価においては、
により排出量・吸収量増減の要因分析を行うとともに、目標達成見込み等を評価する。 この評価結果に基づき、京都議定書の6%削減約束を確実に達成するため、必要に応じて温室効果ガス別その他の区分ごとの目標、個々の対策についての我が国全体における導入目標量・排出削減見込み量及び対策を推進するための施策等を総合的に見直すものとする。 (1)エネルギー起源二酸化炭素の排出抑制対策の評価方法
(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素の排出抑制対策の評価方法
(3)代替フロン等3ガスの排出抑制対策の評価方法
(4)革新的技術開発の評価方法
(5)国民各界各層の更なる地球温暖化防止活動の評価方法
(6)吸収源の活用の評価方法
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第6 温室効果ガス排出量・吸収量の算定のための国内制度の整備京都議定書においては、第1約束期間の1年前までに温室効果ガスの排出量及び吸収量の算定を行うための国内制度を整備する義務があるとされており、国内制度整備のためのガイドラインについては、議定書の第一回締約国会議で決定される。 温室効果ガス排出量・吸収量の算定に当たっては、これまで関係各省の協力の下で環境省において取りまとめを行い、温室効果ガスの排出・吸収目録は、外務省を通じて気候変動枠組条約事務局への提出を行ってきたところであるが、引き続き温室効果ガスの排出・吸収目録に関する全体のとりまとめを環境省において行うとともに、これまでの関係各省の協力を基本とし、京都議定書に基づき定められるガイドラインに即して、排出量・吸収量算定のための国内体制を速やかに整備する。 具体的には、京都議定書の発効に際して、同議定書に基づき温室効果ガスの排出・吸収目録に関する全体的とりまとめを行う機関として環境省を指定し、関係各省が相互に協力して、定められた期限までの温室効果ガスの排出・吸収目録の迅速な提出、データの品質管理、目録の検討・承認プロセス、京都議定書に基づき派遣される専門家検討チームの審査への対応等に関する体制を整える。 一方、吸収源による吸収(排出の場合もある)量の測定・監視・報告等の手法については、現在IPCCにおいて、その具体的かつ詳細な内容を定める「グッドプラクティスガイダンス」の作成作業が行われており、COP9(平成15年)で決定される予定となっている。我が国としては、IPCCを中心に実施される国際的な検討に積極的に参加するとともに、第1約束期間の1年前までに吸収源による吸収量の測定・監視・報告等の国内制度を整備する。 第7 観測・監視体制の強化及び調査研究の推進温室効果ガス、気候変動及びその影響等を把握するための総合的な観測・監視体制を強化するとともに、気候メカニズムの解明、地球温暖化の現状把握と予測、今後予想される自然や社会・経済への影響評価、温暖化及びその影響を緩和したり適応するための技術や方策について、国際協力を図りつつ、政府一体となって戦略的・集中的に調査研究を進める。また、地球環境に関する情報を整備し、その流通を促進する。これら観測・監視体制の強化及び調査研究の推進にあたっては、「科学技術基本計画」(平成13年3月閣議決定)を踏まえて実施していくとともに、総合科学技術会議における地球温暖化研究イニシャティブのもと総合的な推進を図る。 第8 地球温暖化対策の国際的連携の確保地球温暖化対策の実効性を確保するためには、すべての国が温室効果ガスの排出削減に努めることが必須であり、我が国としては、今後、米国や開発途上国を含むすべての国が参加する共通のルールが構築されるよう、最大限の努力を傾けていくものとする。また、我が国が発表した「京都イニシャティブ」の実施など、森林の保全・回復や温室効果ガスの排出削減に係るODA等の活用等を図ることにより、引き続き地球温暖化対策に取り組む開発途上国等の努力を積極的に支援していくものとする。 第9 6%削減約束の達成に向けた地球温暖化対策の工程表 |