はじめに
沖縄は、1972年の本土復帰後も日米安全保障体制の下で実質的に過重な負担を担ってきた。日本全国の面積の
0.6%を占めるに過ぎない沖縄に米軍専用基地の75%が存在して、高密度の軍事活動が展開されることに伴い、様々な影響が沖縄の経済と民生に生じている。
米軍基地の集中的な存在は、量的質的に沖縄県、特に基地の所在する市町村に困難な
問題をもたらしてきた。沖縄米軍基地は、米国の施政下にあった27年間に軍事上の必要性から一方的に収用されて形成されたところに最大の特徴がある。基地の多くは、各地域の平坦な一等地を占めており、その結果、市民の生活・経済空間が大きく浸食されている。また虫喰い的に存在しているところも多く、地域の交通や計画的発展にとって制約となっている。
さらに、高密度の訓練活動等に伴う騒音などの問題だけでなく、事件・事故の処理状況など多くの問題が重なって住民の生活や経済活動を圧迫し、閉塞感を増幅してきた。その結果、これら市町村では将来の展望を開き難く、地域の自立的な発展への活力が阻害されてきたことは否めない。
日米安全保障体制は、日本が全体として国の安全の確保のために選択した基盤であるから、安全保障に関する量的質的負担は、本来国民が等しく担うべきものである。その負担が沖縄のとりわけ基地所在市町村に集中している実情に鑑み、これらの地域住民の人々が直面している困難な問題の改善のためには、国全体として特別の配慮が講ぜられるべきである。
本懇談会はこのような認識に基づき、米軍基地が所在する市町村の抱える困難を住民の立場から緩和するための施策を内閣官房長官に提言するために設置された。
8月19日の発足以来、本懇談会は、ほとんどの米軍基地所在市町村を訪問し現地の実情を視察するとともに地元の要望を聴取し、東京及び沖縄において計10回にわたって会合したほか、3次にわたる作業部会を沖縄で開催し、短期間ではあったが、鋭意提言の取りまとめに取り組んできた。
各市町村から多くの要望が提出されたが、それらの真剣な検討を踏まえて、本懇談会は、基地の整理・縮小後をも展望して、雇用機会の創出と地域の自立的な発展につながる希望のあるプロジェクトを例示し、地域の内発性に基づく積極的な計画を支援するための枠組等を以下のとおり、提案する。
また、本懇談会は、沖縄政策協議会、沖縄米軍施設・区域に関する日米特別行動委員会、沖縄米軍基地問題協議会等の場が所掌するべき問題は直接取り扱っていないが、各市町村から出された要望については、本懇談会の直接の担当範囲を越える問題であっても、その性格を整理してあり得べき対応ぶりについて意見を表明する。
第1 市町村の実情と要望
1. 本懇談会の限られた作業によって市町村の全ての状況を掌握できた訳ではないが、それでも米軍基地の集中が市町村の経済発展の機会を制約し、騒音や環境等の面でも大きな被害を与えていることは痛切に感じられたところである。こうした負担と閉塞感は、特に嘉手納、金武、北谷、伊江、沖縄、宜野湾、読谷といった市町村について大きいものと認められたが、基地の存在に伴う生活上の不便はほとんどの市町村に共通して見られた。
2. また、基地の存在の大きさによる閉塞感の強い市町村ほど、経済的には基地関連収入に依存せざるを得ないため、将来の自立的な発展の展望が描きにくい状況にある。このことは、将来、基地返還がなされた場合にも、新たな創造、開発意欲が生まれにくく、むしろ深刻な停滞を生じかねない問題をはらんでいる。したがって、早期に各自治体を中心とした地元が積極的な自立策を講じていく必要があり、これを国や沖縄県が支援することが不可欠である。
3. 今回聴取した市町村の要望は、大規模な都市再開発から照明灯の設置に至るまでの各種プロジェクト、米軍に対する要望、県全体の振興開発の中で処理されるべき事項、つぶれ地補償の問題、返還跡地利用の促進策など、長年にわたってさまざまな困難を味わってきた人々の要望を反映して多くの項目にわたり、その数は百数十(別表)に及んだ。
4. 基地所在市町村のこうした窮状を緩和するためには、まず米軍基地の整理・縮小を引き続き推進することが基本的に重要であり、この点についての日米両国政府の継続的な努力を期待したい。
第2 基地所在市町村振興のための特別プロジェクト
1. 本懇談会は、基地所在市町村について、基地の存在による閉塞感を緩和するためには、下記の目的を達成するプロジェクトを実施していくための相当期間にわたる新しい枠組みが必要との結論に達した。
2. 懇談会としては、こうしたプロジェクトが達成できるよう予算上十分な措置を講ずることを政府に求めたい。このような新しい枠組みについては、総額も含め平成9年度予算編成作業に際して明らかにされることが望ましい。
3. また、この枠組みを円滑に運営するために、政府は、市町村のプロジェクトに関する窓口を定めるとともに政府内に連絡調整の場を設け、関係市町村等との連携を密にしながらプロジェクトの育成と実施を図ることが望ましい。
第3 プロジェクトの考え方
1. プロジェクトは、国際都市形成構想を核とする沖縄県の総合的な開発構想と相互に補完しつつ、沖縄の真の発展のために相乗効果をもち、沖縄県からも最大限の協力が得られるものであることが望ましい。
またこれらのプロジェクトは、基地所在市町村の要望に込められた地元の人々の内発性を重視するところにその特色がある。これら市町村の閉塞感を軽減し、将来への自立的発展への可能性を見出すためのプロジェクトは、そこに住む人々が愛着と誇りをもって育てていけるものでなくてはならないからである。そのため、プロジェクトを進めるに際しては、地元の人材や資本の育成を考慮し、地元の意見を十分徴して、計画を策定し実施していくことが大切である。
2. 沖縄の各地域には、独特な文化と深い伝統があり、また美しい自然と環境に恵まれている。沖縄県では、これら固有の条件を活用して新しい時代の健康、保養、医療、教育、文化、スポーツ、芸術活動、観光などを発展させることができよう。また、沖縄県は、地理的に太平洋と東シナ海に面し、アジアの中核に位置し、新たな経済発展の核としてフリートレードゾーン構想等を提示しているが、そうした構想と連動したハイテク産業やベンチャービジネス育成も可能であろう。
そうした分野の発展と経済振興に結びつく活動の例としては、人材育成のための研究教育、高齢者用等の長期滞在型コミュニティー形成、伝統工芸の振興、花卉、園芸など適切な農水産業育成、音楽や芸術活動の支援、セラピスト等の育成のためのスポーツトレーニングセンターや環境保全研究教育機関の設置なども考えられよう。
情報化のめざましい進展によって急速に国家間の垣根が低くなりつつある今日、すぐれたプロジェクトを推進することができれば、その有用性は国際的な広がりの中で評価され、沖縄の発展を促進することになるであろう。
3. これらの条件を結びつけ、将来の発展に結実させる鍵を握るのは、人材である。人材の育成は、活性化戦略の中核となる。各プロジェクトは、そうした戦略を支え促進するものであることが望ましい。
4. これらのプロジェクト策定に当たっては、現在の米軍基地を固定的に考えず、基地の返還後の姿も念頭において計画を作るべきであるが、その際、基地従業員の雇用不安解消の措置を講ずる必要がある。
5. 本懇談会は、基地所在市町村の多様な要望を踏まえ、また意見交換をする中で、前記第2-1.の考え方に合致し、しかもその有用性と具体性が高いと思われる計画や構想を、若干数、以下に「具体的プロジェクト」として例示した。これらは、必ずしも市町村の要望そのものの形ではないが、懇談会自身の判断によって再構成して提案するものである。このようなプロジェクトについては、その早急な推進のために当該市町村と協議して具体的調査が速やかに開始されることを期待する。
6. 「具体的プロジェクト」は、いわば第一段階としての例示を懇談会として行ったものであり、この例示に含まれなかった基地所在市町村にも同様にプロジェクトを実現する機会は当然に開かれている。今後、それらの市町村が本提言の考え方を踏まえ、例示を参考に有益なプロジェクト構想を練って、政府が定める窓口に要請するよう期待したい。
7. 基地所在市町村に対して行うプロジェクトの大半は、周到な調査を必要とするものであるが、金武町における町を明るくするための照明灯の設置や名護市における人材育成に資する多目的ホールの整備など早急に着手できるものについては、平成9年度から実施することが望ましい。
第4 具体的プロジェクト
1)既成市街地を活性化するプロジェクト
多くの市町村が、基地の周辺に無秩序に形成された稠密かつ未整備の市街地を抱えている。市街地の老朽化により環境がさらに悪化し、商業機能等が衰退し、活力が低下している市町村も見られる。
そうした市町村においては、新市街地整備との連携や土地の高度利用化による再開発を進め、過密の弊害を解消し、活力を回復する必要があり、市街地改善に向けた計画づくりや再開発事業等に対する支援策を共通の施策として取り上げていく必要がある。
<<嘉手納タウンセンター(仮称)>>
そのひとつの例として嘉手納町を取り上げる。
町域の83%が基地で占められている嘉手納町の場合は、すでに面的拡大の余地がなく、基地返還の見通しも得られていないため、市街地の拡大による過密解消は困難であり、また高度利用化を促す潜在力も十分でないという八方塞がりの状況にあるので、町の活性化の拠点として嘉手納ロータリー周辺の総合的な再開発を行う。
その中核的プロジェクトとして町の活性化の拠点となる多目的ビルの建設、町民広場の整備等を行うとともに、雇用効果のある施設、商業・サービス機能の導入などを進め、雇用機会の創出や若者の定着、更には国際交流を図る。
2)新しいふるさとづくりによる地域振興を図るプロジェクト
日本の人口は急速に高齢化しつつあり、21世紀に入るとほどなく世界で最も高齢化した国となるので、高齢者が安心して健康で豊かに暮らせる成熟した日本の新しいふるさとづくりが求められている。沖縄は温暖な気候と美しい自然環境に恵まれ、しかも日本一の長寿県であり、最良の条件を有している。
とりわけ、日の昇る東海岸は北風も遮られ、やすらぎのあるコミュニティーづくりに最適である。すぐれた医療や介護機能を整備すると同時に、活力ある高齢者や高齢者以外でも新しい暮らしや仕事の環境を求める人々が定住したくなるような夢と生き甲斐のある地域づくりが必要である。新しい住民の知識、技術、資産や健康のための労働参加も地域活性化の貴重な資源となる。
また、高度医療施設を活用した途上国の医療関係者への技術移転等を通じて、国際交流を促進することも望ましい。
<<ふるさとづくりモデル地区(仮称)整備(金武町)>>
このような地域づくりの先行的な拠点として、金武町に高度医療や総合的介護機能を含むセンターを設置して基礎的なインフラを用意するとともに、ブルービーチなど美しい海岸や森と水に恵まれた環境の下で長期滞在及び定住型施設を整備する。
将来においては、こうした拠点が既存集落と有機的な関係を保ちながら、隣接市町村を含め広域的なネットワークとして展開することを期待したい。
なお、金武町においては新開地区の環境整備も併せて行う必要がある。暗く、さびれた状況の中では事件や事故も起きやすいので、アメリカ的色彩を生かした明るい交流の場づくりが行われるべきである。
3)離島における産業振興プロジェクト
離島は、水の供給や学校教育施設の不足(特に高等学校の欠如)などさまざまな問題を有している。経済圏域がきわめて狭いため、産業振興も容易でない。しかし美しく豊かな海洋や温暖な気候に恵まれ、それらを有益な資源として活用するならば、観光、スポーツ、滞在型の保養、教育研修活動、特色のある農業や漁業等を発展させる可能性は少なくない。海洋をまるごと魚と共生する夢のある場とするなどの事業も考えられてよい。
<<伊江マリンタウン(仮称)>>
伊江村は、花卉栽培などを奨励して離島の不利を克服すべく努力しているが、美しい自然と伝統芸能などを結びつけた独自の観光産業を振興する基盤として、島の表玄関としての伊江港後背地の整備と、魚と共生する自然水族館プロジェクトの実現を取り上げる。
4)広域拠点育成プロジェクト
中南部都市圏への一極集中による弊害を解消するために、沖縄本島においては南北の二極構造の形成を目標とすべきであるが、そのためには、発展基盤が脆弱な北部の振興が急務であり、交通体系や産業基盤を整備し、人材を育成する必要がある。
<<人材育成センター(仮称)(名護市)>>
名護市は、北部地域の発展を推進する中核的拠点として重要な位置にあり、北部の研究学園都市的機能を有することが期待される。そうした役割を長期的将来を見据えて一層強化するために、発展戦略の根幹となる人づくりに焦点をあて、将来の産業発展、技術開発、国際活動を担う人材養成のための施設と教育研究プログラムの整備を名桜大学との連携等を図りながら行う。
また、留学生等を中心とした国際交流を支援する。
5)青少年の教育・啓発プロジェクト
沖縄県は、戦後長年にわたって米国による統治下におかれ、本土復帰後も基地関連産業が沖縄経済の基幹になり、また、石油危機に伴う企業合理化の進展等により、企業誘致による地域や産業の振興はこれまで目立った成果をあげていない。
そのため、産業構造が3次産業に特化し、工場の立地が少ないため、青少年が幅広い産業活動の現場を目にし、将来の夢を育む機会を十分に提供できなかったことが、地域の産業振興の担い手となる人材育成を阻む要因ともなっている。沖縄県の将来展望を担う人材を育成するために、青少年の豊かな情操を培い、自己形成を助ける魅力的な学習の場を形成する必要がある。
<<子供未来館(仮称)及びその周辺施設の整備(沖縄市)
未来を担う青少年を育成し地域の産業振興を図るために、青少年の豊かな情操を培うとともに、生涯学習、ボランティア活動、自然体験学習、先端技術学習に重点を置き、親子が一緒になって学べる拠点施設として、「こども未来館(仮称)」を整備する。
さらに、この施設周辺一帯を県民共有の財産となる総合的なレクリエーション施設として発展させるために、「こども未来館(仮称)」の周辺施設(動物園、周辺緑地、アクセス道路、駐車場等)を整備することを、「こども未来館(仮称)」の整備と併せて取り上げる。
第5 米側に要望すべき事項
市町村からは、基地が市民生活に及ぼす圧力や影響を緩和するために多くの要望が寄せられたが、本懇談会としてはそれらの要望を踏まえ、以下の事項について政府が日米合同委員会等の適切な場で米側と折衝することを要請する。これらのうちいくつかは、米側との事務的な話し合いのなかで過去にも取り上げられてはいるが、今一度日米当局の再考を求めたい。
(1) 米軍による植栽
キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ等における米軍の訓練・演習の結果、樹木が消失し赤土が露出したまま放置されている区域のうち可能な部分について、米軍による植栽を依頼する。
これは自然の現状回復を図り海への赤土流出を減少させるために極めて望ましいが、不発弾処理の必要性と基地内立ち入りの可能性の点から言っても、この作業は米軍自身の手によって行われる必要がある。植栽のための苗木は、保水力のあるものを選んで日本側が供与する。
(2) 基地内通行
「はじめに」に述べた米軍基地形成の経緯から、米軍基地が地元の経済活動や生活を分断している事例は多い。もとより基地の保安及び機能維持の観点から基地内通行の実現は原則的に困難であるとは考えるが、例えばキャンプ桑江内の通行を求める北谷町の要請など、必ずしも基地機能を損なわずに住民の通行が認められるのではないかと思われるものもある。
また、基地の存在ゆえに児童が通学に大幅な迂回を強いられている北中城村のような場合、一定時間を指定して学童のみの通行を認めることを工夫するなど、住民の立場に立った検討を依頼したい。
(3) 制限水域
面積が狭小な上に多くの米軍基地が存在する沖縄にあっては、海上の埋め立て等による利用が市町村の発展のために有効なケ−スがあるが、例えば泡瀬通信所の保安水域のように米軍の制限水域によりそれも制約を受けている事例がある。政府に対しては、特定の水域についても陸上の施設と同様にできる限り市町村の計画が実施できるよう、制限水域の解除等を米側と協議することを求めたい。
(4) 基地内水源の利用
北中城村によるキャンプ瑞慶覧内の水源の利用など、米軍基地内の水源利用要請については、基地機能に特段の支障を与えるものでない限り、これを実現する方向で検討するべきと考える。
(5) 地元との良好な関係維持
米軍の構成員を地元の客として遇したいとの市町村もある。米軍がこうした地元の意向に応え、地域との良好な関係を目指すことは日米双方にとって望ましい。そのためにも米軍にあって地元との関係を一元的に処理する幹部職員の任命を得ることが必要である。自動車の接触事故等比較的軽微ではあるが地域住民の悪感情を増加させている問題の処理ぶりも、こうした担当者が追跡することが出来よう。
さらに、市町村と米軍の相互利用が可能な施設を開放することが望ましい。例えば監視員の派遣とゴミ処理についての協力を前提に金武ブルービーチの週末の町民への開放など、地元住民との関係改善について政府が米側に申し入れることを要請したい。
第6 重要関連事項
基地所在市町村の負担を軽減し、閉塞感を緩和するためには、以下の諸点も重要である。
1. 既存交付金制度の活用
(1) 自治省所管の基地交付金は基本的には国有施設の固定資産税の代替として、また調整交付金は米軍資産の固定資産税見合い及び米軍に対する非課税措置の見合いとして、使途の制限のない財源として市町村に交付されている。市町村にとっては極めて有用な制度であるが、その基本的性格から、配分は軍人住宅地の方が演習の着弾地より評価額が高いなど、必ずしも市町村が基地から受ける影響の実態を反映していない。基地交付金の決定に際しては、こうした点に十分配慮すべきと考える。
(2) 防衛施設庁が生活環境整備法の下で交付する調整交付金(いわゆる9条交付金)は、市町村の需要に見合うものとしてこれまで高く評価されており、制度の更に有効な活用を図ることが望ましい。
2. いわゆるつぶれ地問題
那覇市をはじめとするいわゆるつぶれ地問題に関する要望は、本来、本土復帰時に解決されているべきものであるが、今日まで残されているのは問題の複雑さゆえであり、直ちに解決策を見いだすのは困難と思われる。
他方、本件が放置しつづけられない問題であることも事実である。関係行政機関において鋭意検討の上、結論を出すべきであろう。
3. 黙認耕作地の問題
黙認耕作地は、米軍の管理権のもとで使用が黙認されている耕作地で、国が土地の使用権限を付与したものでなく、また黙認耕作者と土地所有者が常に一致しているわけではないなど権利関係も複雑である。また、返還後の跡地利用の障害となることもある。この問題は、あくまでも個別ケ繝Xに応じて跡地の利用者と土地所有者等の間の協議によって処理していくべきであろう。
ただし、読谷飛行場の黙認耕作地については、その規模や経緯からいって「読谷飛行場跡地利用連絡協議会」での合意形成のため国としても協力すべきである。
4. 基地返還に伴う問題点
(1) 米軍基地の返還はこれまで主として米軍側の要、不要の観点からその可否が判断されてきた。このため、地元の優先順位にそぐわない形での返還が行われたり、一部を細切れ的に返還した結果、地元がその処理に困るといったケ繝Xも散見された。今後は地元側の返還希望順位が十分考慮されるべきである。
(2) 市町村からは、駐留軍用地返還特措法による補償期間の延長についても要請があった。本件は様々な側面を有する困難な問題であるが、基本的には土地所有者が跡地利用について早期に準備を開始できるようにすることが重要であり、国としては返還見通しが立った場合には、こうした土地所有者等の事情に十分配慮してできるだけ速やかに通報するべきである。
(3) 普天間飛行場をはじめとする大規模返還地の利用の方途は、沖縄県にとって重要な課題であり、国としても跡地利用を図る地元の努力に対し、情報提供をはじめ計画策定の段階から積極的な支援を講ずるべきと考える。
第7 提言の実施
本懇談会の提言の実施状況については、有識者で構成する協議の場を設置し、第2-3.の連絡調整の場からの報告を受けつつその進展振りについて何らかの形で確認していくことが望ましい。
む す び
沖縄の基地所在市町村は十分な対策が講じられないまま、あまりにも長い間、基地の重圧の下に置かれてきた。ここに暮らす人々にも健康で文化的な生活を営む権利が当然にある。青少年には希望の持てる環境が必要である。
本懇談会は、集中的な作業を通じて、基地所在市町村の人々の思いを分かち合うに至った。この提言が政府の施策となって実現されることを強く希望する。
別表