「沖縄経済振興21世紀プラン」最終報告

「沖縄経済振興21世紀プラン」

最終報告

平成12年8月


「沖縄経済振興21世紀プラン」最終報告
- 目 次 -

はじめに

第一部 沖縄経済の現状と課題

1.厳しい沖縄経済の現状
(1)雇用情勢
(2)産業構造
2.依存型経済の現状
(1)基地経済依存の状況
(2)財政依存の状況
3.沖縄経済の自立化に向けての展望と課題

第二部 政策の理念と基本方向

1.政策の基本的理念
(1)自立型経済の構築に向けて
(2)我が国経済社会に貢献する地域としての沖縄
(3)アジア・太平洋地域の交流拠点としての発展
(4)経済振興と基地問題とのバランスある解決
2.政策の展開に当たっての基本的考え方
(1)政策目的と政策手法
(2)「優位性」の重視と「不利性」の克服
(3)産業分野別の評価
(4)県土の均衡ある発展
(5)政策評価の重要性

第三部 政策の具体化の方向と今後の取組

1.主要分野における産業振興
(1)加工交易型産業の振興
(2)観光・リゾート産業の新たな展開
(3)国際的なネットワークを目指す情報通信産業の育成
(4)農林水産業の新たな展開
2.産業振興のための横断的な取組
(1)新規事業の創出支援体制の充実
(2)研究開発と国際交流の促進
(3)人材の育成と雇用の確保
(4)環境共生型地域の形成
(5)産業活動を支えるインフラ等の整備
3.今後の取組
(1)米軍施設・区域の返還に伴う対応
(2)ポスト三次振計への反映

別紙1 沖縄国際情報特区構想の推進方策等に関する調査(結果概要)

別紙2 新規事業創出支援体制の総合的検討調査[沖縄県](結果概要)

別紙3 ゼロエミッション・アイランド沖縄構想推進調査[沖縄県](結果概要)

おわりに

−資料編−


はじめに

 冷戦構造の崩壊後、中国や旧東側諸国の市場経済化への動きが顕著になるとともに、アジア諸国の世界貿易への参入が本格化する中で、今日、我々は、資本主義が世界の総人口をカバーするという歴史はじまって以来の、いわば「60億人の資本主義」の時代を迎えているといっても過言ではない。
 目を国内に向けると、こうしたいわゆるメガ・コンペティションの時代にあって、国内生産活動の海外への移動が地域経済にも影響を与えるとともに、地域人口の高齢化、財政依存型地域経済からの脱却の必要性など、複合的な問題が生じてきている。こうした状況の下で、全国のあらゆる地域において、それぞれの地域の経済の活性化に向けた積極的な取組が行われている。
 沖縄もまたその例外ではない。例外ではないが、極めて高い失業率に示されるとおり、遠隔の離島県ゆえの不利性などの特別の事情の下で、沖縄がこうした一般的事情以上に厳しい状況にあることも事実である。こうした沖縄にあって、自立型経済への移行が叫ばれている。沖縄にあっては、財政依存の問題とともに、米軍施設・区域の整理・統合・縮小の課題があり、いわば二重の課題の中で、これに対応する民間主導型経済への移行に向けた長期的戦略が求められている。
 本土復帰後、米国の施政権下にあった期間と同じ27年を既に経て、21世紀を臨む今、沖縄は重要な節目の時期を迎えている。活力のある民間経済の構築を通じて、新世紀の沖縄の持続的な発展の基礎を築くべき、重要な転換期を迎えているといえる。自立的な発展を本格化するためには、地元沖縄での産業界や県民を中心とした前向きの取組が何にも増して重要であり、政府には、県と連携・協力しつつ、そのための環境形成に向けた積極的な取組が求められている。
 本プランは、沖縄経済の現状と課題を踏まえつつ、自立型経済に向けての政策の基本的考え方及び政策の具体化の方向を、可能な限り示そうとするものである。

第一部 沖縄経済の現状と課題

1.厳しい沖縄経済の現状
 復帰後沖縄経済は、県民の努力により、また種々の支援策もあって、着実に発展し、その所得水準は、復帰前においては全国比5割を割り込む状況であったものが、今日7割程度にまで上昇している。また、道路、港湾などの基礎的なインフラ整備が相当程度進展し、県民の生活が改善され、一定の豊かさとゆとりを享受しているといえる。しかし近年、若年層を中心に完全失業率が相当深刻な水準に高まるなど、沖縄経済は難しい局面に置かれているといわざるを得ない。また、基地経済への依存は復帰後低下の傾向をたどってきたものの、財政依存については、むしろ相当程度依存度を強めて今日を迎えている。

(1) 雇用情勢

  1. 雇用情勢全般の状況
    昭和47年の本土復帰後、沖縄県における就業者数は着実に増加しており、昭和47年と比較した場合、平成11年の就業者数は全国の25%の増加に対して、沖縄県は55%の増加を示した。関係者の努力により他県を大幅に上回る就業機会の拡大が図られてきたといえる。他方、労働力人口の伸び率が大きく、昭和47年と平成11年とを比較して、全国29%増に対し、沖縄県は 64%増となっている。就業機会の拡大が相当図られてきたものの、労働力人口の伸びに十分に対応できない状況がみられる。そうした中で、高水準の完全失業率が大幅に改善されない状況が続いている。
     完全失業率の推移をみると、昭和47年の完全失業率は、全国(1.4%)の2倍以上に当たる3.0%であった。その後、海洋博後の不況等の影響もあって、昭和50年代には、全国の3倍近い数字を記録する時期があった。昭和60年代から平成5年頃までの間は、全国が2%台半ばで安定する中、沖縄県にあってはその約2倍に当たる4%台半ばから5%程度の水準で推移した。しかし、バブル後の不況下にあって全国の完全失業率が3%台から4%台を示すようになると、沖縄県の完全失業率も急激な上昇カーブを描き、平成10年8月には、9.2%という高い数字を記録するなど、極めて厳しい局面に立ち至った。その後一定の改善はみられるものの、平成11年の完全失業率は8.3%と年間を通じても高水準となり、やはり全国平均(4.7%)の2倍近くになっている。
     有効求人倍率についてみると、復帰直後の昭和47年には全国1.16倍に対して、沖縄県は0.19倍となっていたものの、全国の倍率が低下する中でも、沖縄県は少しずつではあるが上昇し、平成元年には0.53倍となった。しかし、完全失業率と同様にバブル後の不況局面の下で、大きな変化が生じている。全国倍率の悪化と平行して沖縄県の倍率も悪化し、平成11年には全国0.48倍を大きく下回る0.22倍と、昭和47年の水準にまで再び低下してきており、雇用機会の不足は深刻である。
     理論的にいえば、労働力の地域間流動性が完全に確保されれば、本来完全失業率や有効求人倍率の地域間格差の問題は生じないはずである。しかし、現実には、生まれ育った土地で生活したいという人々の「ふるさと志向」という要素が加わる中で完全失業率の地域間格差が生じ、これをどのように受け止め、対応していくかという課題が生じている。
     沖縄県のふるさと志向の高さは、次のような指標からも推察できる。5年に一度行われる国勢調査において、昭和60年調査時点(時点1)での15〜19歳人口が、平成2年調査時点(時点2)(20〜24歳人口)で各都道府県にどのように分布し、さらに平成7年調査時点(時点3)(25〜29歳人口)ではどう推移しているかを集計する。こうした調査分析を通じて、通常の地方の県の平均的ケースとして、時点1では県内に住んでいた若者の14%程度が、県外の大学への進学等を機に、時点2では県外に流出する。就職段階を迎える時点3でみると、これらの県外流出者の25%程度が県内にUターンするものの、75%が県外に出たままになるという平均的な姿が明らかになっている。沖縄県についてみると、この時点1から時点2にかけて減少(県外に流出)した人口に対する、時点2から時点3の間にかけて増加(県外から流入)した人口の割合、すなわち、正確には、UJIターン率が全国平均の25.3%を大きく上回って41.6%となっている。
     こうした傾向は大学生意識調査等にも表れており、全国に比べて、沖縄の場合、新規学卒者の県内就職志向が高い数値を示している。沖縄にあっては、県内大学生はもちろん、県外の大学へ進学した者についても、県内就職を希望する者の割合が高い(県内大学生94.6%、県外大学生92.3%)。また、県外へ就職した者についても、「Uターン予定なし」8.6%に対し「Uターン予定あり」50.5%と、県内へUターンを希望する者の割合が非常に高くなっている。
     首都圏、中部圏等の都市部を除いて、多くの県では若者の県外流出が著しく、地方の活力低下が危惧されている。しかし、沖縄にあっては、若者が生まれ育った土地に強い愛着を持ち、県内にとどまるか、あるいは一度就学・就業等で地域を離れても再び戻ってくる者がたくさんいるという状況にある。こうした若者のふるさと志向は、地域振興の観点からみると、困難も多いが、肯定的に受け止めるべき要素ともいえる。

  2. 個別指標からみた動向
     平成11年の失業統計をみると、年齢階層別完全失業率では、15〜19歳が27.3%(全国12.5%)、20〜24歳が18.8%(全国8.4%)と若年層の完全失業率が際立って高くなっている。
     また、世帯主との続き柄別完全失業率をみると、「その他の家族」が全国(7.7%)と比較して相当高い(17.6%)ことから、親と同居する若年失業者が多いことが推測される。しかしその一方、「世帯主」の完全失業率も4.3%と全国 (3.3%)と比較して決して低い水準とはいえない。
     平成12年3月卒の新規学卒者の就職決定率は、高校(56.6%)、短大 (60.0%)、大学(48.1%)のいずれについても相当低く、高校においては全国で最低となるなど、全国の数値(高校92.1%、短大84.0%、大学91.1%)を大きく割り込んでおり、若年失業者を増加させている大きな要因となっている。
     職業別の求人倍率(新規)をみると、全体的に低調な中、専門的職業の求人倍率(0.88倍)は相当高く、専門的技術者及び技術的職業に従事する労働者が不足傾向にあることが窺われ、沖縄県の雇用問題は需給のミスマッチングから生じている面もあることに留意する必要があると思われる。

(2) 産業構造
 沖縄県の産業構造は、第3次産業の比重が突出して高く、建設業も相対的に高くなっている反面、製造業の比重が極めて低い構造となっている。
 これまでの産業構造の動向をみると、第1次産業の構成比は、昭和58年度に5%を割り、その後も低下し続け、平成9年度には2.4%となった。5年前の平成4年度に比べ0.2ポイント、10年前から1.3ポイント低下している。第2次産業の構成比は、昭和60年度の22.8%から小幅ながら低下し続けており、平成3年度に21.2%と22%を下回り、平成9年度は18.2%と20%を下回った。逆に、第3次産業の構成比は上昇し続けており、平成6年度には80.1%と初めて80%台となり、平成9年度は83.0%となっている。5年前の平成4年度に比べ4.0ポイント、10年前の昭和62年度に比べると6.4ポイント上昇している。
 このように、沖縄県の産業構造は、第1次産業の構成比が低下傾向、第2次産業も緩やかな低下傾向、第3次産業は上昇傾向で推移している。全国の状況をみた場合も、第1次産業の構成比は低下傾向、第2次産業も低下傾向、第3次産業は上昇傾向となっており、沖縄県の産業構造は、変化の方向としては全国と同様な動きを示しているといえる。
 しかし、構造的にはかなりの差異があり、平成9年度で全国と比較すると、第1次産業では沖縄県が0.7ポイント高く、第2次産業は逆に16.2ポイント低く、第3次産業は15.1ポイント高くなっている。沖縄県の産業構造は、全国的にみると第2次産業の比重が小さく、第3次産業の比率が相当高い状況にある。
 第2次産業を個別産業まで掘り下げてみると、平成9年度の製造業は沖縄県の5.5%に対し、全国は24.4%と沖縄県の構成比が18.9ポイント小さい一方で、建設業は沖縄県の12.3%に対し、全国9.8%と逆に沖縄県が2.5ポイント大きくなっている。また、第3次産業をみると、特に目立つのは、公務、公立の学校や病院等のサービス業及び公的企業で構成される政府サービス生産者で、その構成比は全国8.0%に対し、沖縄県16.8%と2倍以上高くなっている。その他、観光・リゾート産業を含むサービス業の構成比は平成4年度からの5年間で3.5ポイント高まっており、全国19.9%に対し、沖縄県26.9%と7.0ポイント上回っている。逆に、金融保険業、不動産業は相対的に第3次産業の構成比が高い中にあって全国を下回っている。
 このように、沖縄県と全国の産業構造は相当異なっており、特に、製造業、建設業、サービス業及び政府サービス生産者の差が目立っている状況にある。
 第1次産業についてみると、その県内総生産は、昭和47年度の335億円から順調に増加し、昭和60年代から平成のはじめにかけて900億円前後で推移した後伸び悩み、平成6年度以降は800億円を下回り、平成9年度は792億円となった。その内訳は、農業632億円、水産業157億円、林業3億円となっている。沖縄県の農業は、我が国唯一の亜熱帯地域という本土との気候風土の違いを活かして熱帯果実や花き、冬春期野菜、肉用牛等の生産が増加している一方、さとうきびやパインは、生産者の高齢化による影響などで生産量が減少傾向にある。水産業は、国際的な規制強化等により、漁業生産に占める遠洋・沖合漁業の割合は大きく減少しているものの、モズク、クルマエビ等の海面養殖業の生産が増加している。
 製造業についてみると、産業別県内総生産額に占める製造業の割合は平成9年度において5.5%と小さく(全国平均24.4%)、復帰時に比較しても、当時の10.9%から相対的な比重が低下してきている。しかしながら、こうした比率の低下は、製造業全体の絶対的な規模の縮小を意味するものではなく、復帰後沖縄の製造業は平成9年度までに出荷規模で約4.5倍の拡大を示しており、就業者数も若干とはいえ増加してきた。製造業が沖縄経済に重要な役割を期待されている業種であることには変わりがない。
 主要な分野は、食料品、石油製品、窯業・土石製品、出版・印刷、金属製品などである。石油製品と砂糖を除くと、県内消費が中心で、県外への移輸出は乏しい状況である。沖縄の製造業のさらなる発展のためには、困難は多いものの積極的な対外的販路開拓路線への転換が課題といえる。
 観光・リゾート産業についてみると、復帰後の昭和47年に約44万人であった入域観光客数が平成11年には約456万人となっており、海洋博後の一時期を除いて右肩上がりの増加傾向が続いている。特に最近は、平成9年7月から実施された本土・那覇間の航空運賃の低減等の効果もあり、平成9年は前年比11.8%増、平成10年は同6.7%増、平成11年は同10.5%増という大幅な伸びを示してきた。観光収入は、県民所得勘定においては「商品以外の移輸出」に分類されている。移輸出の主なものとしては、観光収入、石油製品、砂糖・パイン等の農産物、米軍人・軍属の消費支出等があり、これらが移輸出総額に占める割合は、平成9年度で観光収入49.1%、石油製品16.7%、米軍人・軍属の消費支出6.4%等となっており、観光収入のウエイトの高さが際立っている。今後とも観光・リゾート産業には、他業種の成長を牽引するリーディング産業としての一層の飛躍が期待されるところである。
 また、県の戦略的産業として位置づけられ、近年積極的な振興が図られているのが情報通信産業である。情報通信技術の進歩や情報インフラの整備は、沖縄県のように本土から遠隔の地においても距離の不利性を克服するチャンスを増大させている。沖縄における情報通信産業の振興は、地域における情報化の推進に寄与するとともに、地域振興と雇用創出の新しい担い手として期待されている。情報サービス業の推移をみると、売上高は飛躍的に上昇しており、その伸びは全国よりも大きくなっている。しかし、沖縄県の県民総生産は全国比1%未満の規模であり、したがって大規模なユーザー企業も限られており、狭い県内市場でのシェアを取り合っていては今後の発展は望めない。
 沖縄県の産業全体の効率性を一人当たり県民所得を指標としてみる場合、沖縄県と人口が同規模の他県との県内総生産の比較が参考となるが、沖縄県の人口(127万人)と同程度の秋田県(121万人)、滋賀県(129万人)、大分県(123万人)と比較してみると、平成9年度において、県内総生産では秋田県は沖縄県の1.2倍、大分県は同じく1.3倍、滋賀県は同じく1.7倍の格差となっている。他の3県に比べて沖縄県の就業者数が少ない(沖縄県約54万人、他3県60〜65万人)ことも考慮しなければならないが、それを割り引いてもなお格差が残る計算になっており、沖縄県において産業の振興と労働生産性の向上は表裏一体の課題であることを示している。

2.依存型経済の現状

(1) 基地経済依存の状況
 沖縄県には、在日米軍専用施設の75%が集中し、県土面積の10.3%(沖縄本島の18.1%)を米軍施設が占めており、これらの米軍施設には、軍人、軍属及びその家族約5万人が居住し、8千人余りの駐留軍従業員が雇用されている。こうした中で、米軍施設の存在は沖縄県経済に少なからぬ影響を与えている。
 県民所得統計をみると、「軍関係受取」という項目を設けて基地関連の収入を整理しており、「軍人軍属等消費支出」、「軍雇用者所得」、「軍用地料」からなっている。平成9年度の軍関係受取は、1,827億円であり、県民総支出に占める割合は5.2%となっている。うち、軍人軍属等消費支出は556億円、軍雇用者所得は529億円、軍用地料743億円で、それぞれ1.6%、1.5%、 2.1%の割合となっている。
 軍関係受取のこれまでの推移をみると、復帰時の昭和47年度には、780億円と県民総支出の15.6%を占めていたが、その後その割合は徐々に低下し、先にみたとおり現在では5.2%となっている。軍関係受取の規模を復帰直後と平成9年度で比較すると約2.3倍の増加となっているが、その間、観光収入は10.4倍、公的投資は11.1倍と拡大し、県民総支出が全体として約7.1倍にも拡大する中で、軍関係受取の県経済に占める比重が相対的に低下してきた。
 軍関係受取の推移を内訳ごとにみると、軍人軍属等消費支出は、昭和 47年度には、軍関係受取の過半を占め、県民総支出に占める割合も8.3%と高かったが、その後一貫して低下傾向にある。平成9年度には1.6%となっている。軍雇用者所得の割合については、昭和47年度において4.8%であったが、その後駐留軍従業員数の大幅な減少もあって低下し、昭和58年度以降、概ね1.5〜1.6%の水準で推移している。他方、軍用地料の支出に占める割合は、昭和47年度においては2.5%と軍関係受取の中では最も低かったが、その後の単価の改善を背景に軍関係受取の中では最も高い伸びをみせ、県民総支出に占める相対的な割合も大きく変化せず推移してきている。平成9年度においては、先にみたとおり2.1%を占めている。
 以上のように、沖縄経済の特色の一つとされてきた基地経済は、復帰後、その比重を徐々に低下させ今日に至っている。しかしながら、統計上の軍関係受取には、基地関連政府支出のうち、軍雇用者所得や軍用地料については含まれるものの、基地周辺整備事業費や市町村等への交付金等は含まれていないことに留意する必要があり、そうした基地関連経費のうち主なものを加えて試算すると、最近では約7%と推計される。これは沖縄における民間住宅投資に匹敵するウエイトを持つもので、沖縄経済の中にあって小さな比率とはいえない。

(2) 財政依存の状況
 県民所得統計(名目)によると、平成9年度の移輸出額は8,627億円、移輸入が1兆2,233億円となっており、この移輸入の超過分を国庫からの財政移転によってカバーする形で推移している。
 公的支出の県経済に占める割合をみると、平成9年度の県民総支出は3兆5,473億円で、それに占める財政移転の割合は、政府最終消費支出と政府固定資本形成合わせ31.7%を占め、全国平均(17.6%)の2倍近い財政依存度を示している。本土復帰後公共投資の積極的な推進が図られてきたが、他方で、民間消費支出が増大し、昭和60年代には財政依存の低下がみられた。しかし、バブル崩壊後は民需が冷え込み、再び公的需要への依存が高まっている。公的支出の構成比の推移をみると、沖縄県が昭和47年度に23.5%であったものが、復帰後29〜39%の範囲で推移しているのに対して、全国平均は15〜20%の範囲で推移しており、沖縄県が概ね2倍近く高くなっている。このことは、復帰後、社会資本や住民福祉の充実が積極的に図られてきたことの反映であり、積極的に評価されるべきことであるが、いずれにせよ財政主導型の経済構造となっている。
 このように、沖縄県経済は、そのかなりの部分を公的支出が占め、県外収支においても、移輸出入の大幅な入超を財政移転により補っており、財政に大きく依存した構造が続いている。こうした背景に、@離島県であるため、財政支出を相対的に多く必要としていること、A歴史的経緯等から生じた本土との格差の是正の必要性、B不況下にあっての景気対策の必要性等の事情がある。しかし、今後の沖縄の発展を考えるとき、財政依存の方向のみに展望を求めることができないことも事実である。
 また、先にも述べたとおり、復帰後基地経済への依存度等は低下してきているものの、財政依存度はむしろ高まっており、その両者を合計した全体的な依存度は昭和47年度の約39%に比して、平成9年度では約37%と大きな変化を示すことなく、一貫して高い水準で推移していることに留意する必要がある。

3.沖縄経済の自立化に向けての展望と課題
 以上のように、沖縄経済においては、極めて高い完全失業率の下で、経済構造として依存型経済が継続している現状にある。したがって、問題はこうした状況からの改善に向けた変化を今後見通すことができるかという点である。
 産業連関表を使ったシミュレーション分析がある。これまでのトレンドで県経済が推移した場合、2020年までの長期的展望において、沖縄県経済はどのような姿が予測されるかが、今後の政策努力の方向を考えるとき重要な判断材料となる。シミュレーション分析は、特別調整費の一部を活用して平成10年3月にとりまとめられた。(沖縄政策協議会第5PT関連「沖縄産業振興基本構想調査」)
 これまでのトレンドで沖縄経済が推移する場合の見通しは「現状推移ケース」としてとりまとめられた。これまでのトレンドとは、現状の数値を固定するという意味でなく、全体として一言でいえば常識的な努力の継続を前提として予測値を求めたものである。
 こうした前提の下で分析された「現状推移ケース」は、それゆえに現実的な見通しであり、予測値の信頼性は高いものと判断されるが、その見通しによれば、沖縄県経済の成長率は2020年には1.5%の水準にまで低下すると見込まれる。その際の完全失業率も6%と高止まりの状況となり、財政依存度は自立化への期待に反して35%と現状よりむしろ悪化することが見込まれている。
 この調査分析は信頼のおけるシミュレーション分析として十分に参考とすることができるものと考える。現状推移シナリオの分析は、沖縄経済が真に自立化に向かうためには、そしてその効果として完全失業率の相当の低下を実現するためには、相当の努力が強く求められていることを明らかに示唆するものである。
 そうした中で、この調査分析が併せて行った「戦略産業振興ケース」の分析結果をみると、関係者の自立化に向けた相当の努力の積み重ねによって2020年に至る過程の成長率の上乗せは可能とし、2020年の成長率は2.2%、その際の完全失業率は3%台、財政依存度は若干ではあるが31%に低下するという分析結果となっている。戦略産業振興の内容及びその効果分析についての個別の評価よりも、一定の成長率の上乗せが行われるなら、完全失業率の相当程度の低下と財政依存の低下が可能という相互の関係が重要な示唆となる。

第二部 政策の理念と基本方向

1.政策の基本的理念

(1) 自立型経済の構築に向けて
 沖縄は今、本土復帰後、戦後の米国統治下と同じ27年を経て、21世紀を臨む節目の時期を迎えている。復帰後、公的支援の強化が図られ、そして何よりもまず、県民のたゆまぬ努力の継続の中で、相当の成果を収めてきた。
 生活や産業活動の基礎となるインフラ整備が進展する一方で、民間の設備投資やソフトな面での活動強化が図られ、例えば、観光・リゾート分野では、観光客は復帰時(昭和47年)の44万人から456万人(平成11年)へと10倍を超える飛躍的な増加がみられ、県経済の発展に貢献してきた。
 こうした中で、県全体の経済の伸びを県内総生産(名目)でみると、復帰時の昭和47年度の4,592億円から平成9年度には3兆3,650億円へと7.3倍の拡大を示した。これは同期間の我が国全体のGDPの伸び率5.2倍を大幅に上回るものである。
 また、先にもみたとおり、就業者数は、労働力人口の増加には追い付かなかったものの、平成11年には復帰時(昭和47年)の1.55倍となっており、全国平均(1.25倍)を大きく上回る伸びを実現した。しかしながら、それでもなお、第一部でみたとおり、若年層を中心とする極めて高い失業率や民間活力の不足など、課題はいまだ山積している。
 このような状況の中で、21世紀を目前に控え、沖縄経済にとって、その自立化をいかに図るかが大きな課題となってきている。ここでいう「自立化」とは、閉鎖的な孤島経済を意味するものではない。むしろ、メガ・コンペティションの時代にあって、国際的にも相互依存経済がますます深化していく中で、開放的な体制の下で、なおかつ持続的成長を可能にするような、成長の原動力をいかにして地域経済自らが持ち得るか、という課題にほかならない。これは、とりもなおさず、沖縄という地域にあって、活力ある民間主導型経済をいかに構築するか、という点に集約される課題である。

(2) 我が国経済社会に貢献する地域としての沖縄
 平成8年9月に閣議決定された「沖縄問題についての内閣総理大臣談話」は、政府としての沖縄振興への取組の基本姿勢として「沖縄県が地域経済として自立し、雇用が確保され、沖縄県民の生活の向上に資する」ことと併せて「我が国経済社会の発展に寄与する地域として整備される」ことを掲げた。
 我が国経済社会の中での積極的な貢献地域としての沖縄の位置づけは、NIRA研究会報告(沖縄政策協議会の要請によりとりまとめられたNIRA(総合研究開発機構)研究会(香西泰委員長)最終報告(平成10年3月))における「グローバル・スタンダード(国際標準)」を確保できる地域の形成という視点とともに、これまで以上に積極的な沖縄の位置づけを意味する。それは、より高い目標が設定されたことを意味しているが、これまでの歴史的経緯や地理的不利性といった沖縄の「特殊事情」への的確な認識とともに、今後の沖縄振興策の推進に当たって併せて求められる政策理念を示すものである。

(3) アジア・太平洋地域の交流拠点としての発展
 平成10年3月、政府は新しい全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン」を策定した。その中で沖縄の振興を特定課題として掲げ、「アジア・太平洋地域における人、物、情報の結節点となる広域国際交流圏の形成を図る」こととし、沖縄を「太平洋・平和の交流拠点(パシフィック・クロスロード)」として位置づけた。
 こうした沖縄の国際交流拠点としての位置づけは、学術・文化面での交流とともに、経済活動の面において強く期待されるところである。経済面では沖縄の地理的特性や通信インフラの諸計画を踏まえると、沖縄が国際情報通信ハブとして発展する可能性は十分あるものと思われる。こうした優位性を単に情報通信分野にとどめず、経済活動全般にリンケージさせ、活用する試みが求められている。
 また、観光・リゾート分野においても、こうした国際交流拠点としての位置づけのもと、2000年の九州・沖縄サミットを契機として、有数の国際コンベンション都市としての発展が強く期待される。

(4) 経済振興と基地問題とのバランスある解決
 先にもみたとおり、沖縄経済に占める基地経済のウエイトは、復帰後低下してきたとはいえ、現状においても、なお小さな比重とはいえない。今後の米軍施設・区域の整理・統合・縮小の進展を考えると、これに置き換わるだけの活発な経済活動の拡大が必要である。
 地域経済全体の視点からも、また、基地従業員の雇用の視点、高齢化する地主の生活上の視点からも、経済振興と基地問題の両者を見据えた総合的な視野の下に、米軍施設・区域の整理・統合・縮小に向けた着実な取組とともに、両者のバランスある解決を図ることが重要である。この点は、県の「沖縄経済振興21世紀プランに関する基本的な考え方」の中でも指摘されたとおりである。

2.政策の展開に当たっての基本的考え方

(1) 政策目的と政策手法
 自立型経済とは、活力のある民間経済を主体とする経済にほかならない。そうした点から、まず第一に、自立型経済への取組の主役は、産業界や県民であり、その自主性が尊重されるべきである。
 第二に、政策の役割についてみると、「沖縄経済振興21世紀プランに関する基本的な考え方」の中で「産業・経済活動は民間主導で展開されるものであり、これらの施策も民間活力を引き出すための条件整備に重点を置いたものとなろう」との考え方が県側からも示された。政府にあっては、県との緊密な連携・協力の下、民間活動を効果的にエンカレッジできるような良好な環境(グッド・クライメイト)の形成を図ることが、政策の役割として期待されている。
 第三に、以上のような点からみた場合、政策手法としては、民間では整備し得ない産業インフラの整備が効果的、効率的に引き続き進められなければならないことは当然として、「創業」の支援や「人材」、「技術」の重視が基本的に重要な視点となる。

(2) 「優位性」の重視と「不利性」の克服
 経済自立化への効果的な戦略的アプローチとしては、基本的に「沖縄の持つ優位性をいかに徹底的に活かしていくか」という視点がますます重要になってきている。沖縄の抱える不利性の克服は引き続き重要な課題であるが、不利性の克服という視点中心のアプローチだけでは、もはや限界があるものと思われる。一定の格差是正が図られる中でさらに残された格差を是正しようとした場合、あるいは格差是正というレベル以上の発展を目指そうとした場合、この点は特に重要な視点となる。
 他方、優位性のみに目を向けた場合、効果的な対応がとれないことも事実である。したがって、前向きの戦略的な取組においては、「優位性」の重視と「不利性」の克服は、車の両輪の課題となる。

(3) 産業分野別の評価
 さらなる発展を図るために克服すべき課題は多いとはいえ、観光・リゾート産業が沖縄経済の中で比較優位の産業であることは、容易にコンセンサスが得られる点である。NIRA研究会報告においても、「沖縄の観光産業はすでに一定の競争力・自立力を保有しており、地域の基幹産業としての地位を築いている。」と評価している。昭和50年代末以降沖縄県経済の中で、基幹産業としての地位を確立した観光・リゾート産業は、今後、それ自身のためだけではなく、製造業や農林水産業を含めた他の地域産業の発展の牽引役として、文字どおりリーディング・インダストリーとしてさらなる発展が期待される。また、同報告が併せて指摘するように、沖縄の観光・リゾート産業がさらに発展するためには、同報告のいうところの「文化交流型産業」といったより広い視野からのフィロソフィーで産業を再定義し、そこに今後の新たな発展の契機を見出すような努力も求められるところである。
 国際情報通信ハブとしての沖縄の潜在的可能性を考えたとき、情報通信産業については、今後の沖縄の新しいリーディング・インダストリーとしての発展を強く期待したい。そして、観光・リゾート産業と同様に、当該産業そのもののためだけではなく、沖縄のあらゆる産業の新しい発展に向けての戦略的リンケージが期待される。例えば、物流関連産業の沖縄での立地についても、物流産業において情報処理・伝達がますます重要性を持つことに立脚したリンケージ戦略が求められる。
 沖縄にあっては、復帰後、製造業の比重が低下してきたことに示されるように、製造業が全体として比較優位にあるとは言い難い面がある。しかしながら、そのことは、製造業の発展性や重要性を全体として否定するものではない。そうした中にあって、いかなる製造分野であれば優位性を今後発揮できるかという点こそが重要となる。新事業創出促進法に基づいて県が本年3月に策定した「沖縄県基本構想」は、製造関連では健康・医薬関連産業、食品産業、それらの発展形態としてのバイオ関連産業、さらには環境関連産業などを今後発展する産業として掲げているが、妥当な判断と考えられる。農林水産業においても同様であり、全体としての優位性よりも、どのような特定分野が今後さらに発展し得るかという視点が重要である。

(4) 県土の均衡ある発展
 県内のそれぞれの地域が、県全体の発展に貢献し、さらには我が国の発展に貢献するような、県域全体の均衡ある発展が期待されるところである。こうした県土の均衡のとれた発展の観点は、政府の施策の展開においても、十分留意する必要がある。
 米軍基地所在市町村については、米軍施設・区域を抱える負担感の中で、その負担感が少しでも軽減され、地域の活性化が図られるよう、政府において沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業(以下、「沖縄懇談会事業」とする。)を推進してきたところであり、同事業の取組は地元においても高く評価されているところである。しかしながら、沖縄の市町村にあっては、米軍施設・区域を長期にわたって抱え続ける市町村、SACO合意に基づいて返還が予定されており、その返還後の対応が課題となっている市町村、施設・区域が存在しない市町村等、その置かれた状況は画一的ではない。また、どのような産業が優位性を持つかといった点においてもそれぞれの地域で状況は異なっている。
 こうした中で、今後、政府としては、沖縄振興に向けた政策全般、すなわち、本プラン第三部において示される政策全般の具体的推進の中で、地域の特性を十分踏まえるとともに、なお地域間のバランスや公平性を踏まえた展開を図るべきものと考える。
 なお、沖縄懇談会事業の推進を契機として進められてきた「チーム未来」活動は、地域おこしの草の根的運動として、今後の地域振興に大きな示唆を与えるものである。米軍施設・区域の有無を問わず、沖縄全域でこうした取組が活発に行われ、そのエネルギーが地域の産業おこしに結びつくことを期待したい。

(5) 政策評価の重要性
 経済自立化に向けた政策をいかに効果的に進めることができるかが問われている中で、いかなる政策手法が経済波及効果において最も効果的か、いかなる政策が費用対効果において最良であるかといった「政策評価」の観点が、今後ますます重要となるものと思われる。

第三部 政策の具体化の方向と今後の取組

1.主要分野における産業振興

(1) 加工交易型産業の振興
 新しい全国総合開発計画は、「特定課題とその対応」の中で沖縄を取り上げ、「沖縄の振興開発に当たっては、沖縄の有する地理的・自然的特性と独自の伝統文化及び国際性豊かな県民性を活かしながら、一地域の自立という視点を超えて、我が国ひいてはアジア・太平洋地域の経済社会及び文化の発展に寄与する特色ある地域の形成を目指すという視点が重要である。」と述べている。
 そこには、琉球王国時代に発揮された対外交流における積極性が再びよみがえることが期待されている。沖縄を中心とした同心円が示すアジア・太平洋地域の中での沖縄の地理的優位性は、沖縄が主体となってその優位性を積極的に利用する場合においてこそ活かされる。沖縄の製造業が今後さらに発展していくためには、県内の需要のみにとらわれない積極的な対外的販路開拓の取組が不可欠である。製造業及び関連産業を「加工交易型産業」として再定義する背景にも、こうした対外的積極性の発揮への期待が込められている。
 政府においても、沖縄の特殊性にかんがみ、加工交易型産業の振興を図るため、沖縄振興開発特別措置法を改正し(平成10年4月施行)、特別自由貿易地域制度の創設、現行自由貿易地域制度及び工業等開発地区制度の拡充・強化を行ったところである。具体的には、相当程度の雇用が行われる企業の集積を促進する地域を「特別自由貿易地域」として指定することとし、当該地域において活動する製造業等について法人所得の35%に相当する金額を10年間控除できることとしたほか、関税に関する選択課税制度の適用を認めるなど、他に前例のない税制改正を実現した。この「特別自由貿易地域」として、平成11年3月には中城湾港新港地区を指定した。
 また、自由貿易地域及び工業等開発地区についても、当該地域への投資に関して15%の投資税額控除制度を創設するなど、これまでの諸税制に加えて、さらなる立地インセンティブ対策を講じたところである。
 一方、県サイドにおいても、相当思い切った対策が講ぜられようとしているところであり、県における積極的な企業誘致努力とあいまって、相乗効果が発揮されるような形で、これらの政府の対策が活用され、企業立地に効果を発揮することが強く期待される。
 しかしながら、NIRA研究会報告も指摘するとおり、沖縄の製造業立地については、遠隔の離島であることなど、本土との関係においてハンディキャップを背負っていることも事実であり、企業立地の条件整備についてはさらに努力が求められる。以上のような諸点を踏まえ、政府としては、今後、以下の諸施策に取り組むこととする。

  1. 特別自由貿易地域への立地促進のための受皿施設の整備
     特別自由貿易地域に指定された中城湾港新港地区への効果的な内外企業の進出を図り、新たな事業の創出を加速するため、賃貸型工場を整備し、初期投資及びリスクの低減を図るとともに、企業の立地の選択肢を広げることにより、同地域における効果的な企業誘致の促進を図る。

  2. 特別自由貿易地域管理運営主体の在り方等に関する検討
     特別自由貿易地域の管理運営主体について、県での検討と連携をとりつつ、設置形態や機能など管理運営主体の在り方等について検討する。

  3. 自由貿易地域那覇地区の規模拡大に向けた県の取組への支援
     自由貿易地域那覇地区については、施設が狭隘であること等の問題があり、従来から当該地区の活性化に取り組んできたところであるが、平成10年10月に、自由貿易地域として約1.4haの拡張用地が米軍との共同使用という形で確保されることとなった。今後、当該地区の規模拡大に向けた県の取組を支援し、適切な整備・活性化に努める。

  4. 特別自由貿易地域中城湾港新港地区及び自由貿易地域那覇地区への企業誘致の促進
     平成10年4月に施行された改正沖縄振興開発特別措置法により創設された特別自由貿易地域制度等については、企業誘致が重要な課題であることから、政府においては、本制度が実際に有効に活用されるよう、法改正の内容の周知、広報や経済団体への訪問等を行ってきたところであり、今後とも、関係省庁及び県が一体となって特別自由貿易地域等への企業誘致の促進に積極的に取り組む。

  5. 沖縄貿易等振興事業の推進
     積極的な海外への情報発信、海外へのミッション派遣、在日外資系企業への沖縄投資誘致セミナーの開催、海外の対日ビジネス関心企業との商談会等を実施することにより、投資誘致促進及び産業交流の機会の創出を図る。

  6. 特別自由貿易地域等に立地する企業の活動を支援するためのインフラ整備
     特別自由貿易地域である中城湾港新港地区における企業立地環境を整備するため、港湾や下水道等の整備を推進する。また、同地域と沖縄自動車道とを直結する道路等を整備することで、地域間物流の効率化を図るとともに、都市圏の既存幹線道路の機能強化や渋滞対策を講じて都市内物流の効率化を図る。

  7. 沖縄振興開発金融公庫の自由貿易地域等特定地域振興資金等の活用
     平成10年4月に施行された改正沖縄振興開発特別措置法により創設された特別自由貿易地域制度、情報通信産業振興地域制度及び観光振興地域制度に対しては、沖縄振興開発金融公庫において、自由貿易地域等特定地域振興資金等の融資制度を設けているところであるが、それぞれの地域に進出する企業を金融面から支援するため、これらの融資制度の積極的活用を図る。

(2) 観光・リゾート産業の新たな展開
 沖縄県は、豊かな自然環境や独自の伝統文化等魅力ある観光資源に恵まれ、国内有数の観光地として発展してきた。入域観光客数は、沖縄海洋博を前後して変動があったものの、基本的には順調な伸びを続けてきた。復帰時の昭和47年の44万人から、こうした経緯を経る中で平成10年には400万人を突破し、翌11年には456万人に達した。観光・リゾート客の増加の中で、沖縄の観光・リゾート産業は昭和50年代末以降には沖縄における基幹産業としての地位を確立し、その後もさらに県経済に占める比重を高めてきている。
 このように発展を遂げてきたとはいえ、極めて高い失業率に示される沖縄県経済全体の厳しい状況にかんがみた場合、観光・リゾート産業がさらにダイナミックに発展し、県経済全体を牽引していくことが強く求められるところである。
 一般的にみても、稼働率の向上は、産業のコスト競争力を高める上で重要な課題であり、そうした視点から、通年型観光・リゾート地へのさらなるシフトが求められる。夏場のピーク時に対するボトム時の比率は平成9年において沖縄にあっては61.4%であり、グアム74.9%(日本人観光客を対象)、ハワイ75.4%(同)に比べてもさらに改善の余地がある。このためには、海洋リゾートのイメージに加えて、暖かい冬の沖縄のイメージ、伝統芸能や文化遺産、やんばるの自然等を積極的に活用し、沖縄の観光イメージをよりふくらみのあるものにしていく必要がある。
 沖縄の観光・リゾート産業のさらなる発展を図るための課題についてみると、通年型観光・リゾート地へのシフトという総合的な課題とともに、以下の諸点を指摘することができる。

 ア.観光・リゾート地としてのアクセスの改善にさらに努める必要がある。航空運賃の引下げは観光客の増大に大きな効果を発揮してきたが、その他のアクセスの改善についてもさらなる取組が求められる。
 イ. 沖縄を国際コンベンション都市として位置づけ、これまでもAPECエネルギー大臣会合をはじめ各種の国際会議の誘致を図ってきたところであるが、2000年サミットの沖縄開催を大きな契機として活かすことにより、アジア・太平洋地域における有数のコンベンション都市として沖縄が成長していくことが期待される。
 ウ.奥行きの深い観光・リゾート地の形成を図るためには、沖縄の持つ文化遺産、豊かな自然、地域の営み等を観光資源として再評価し、観光を単に経済的視点だけでとらえるのでなく、広い意味での文化交流に役立てる発想が併せて求められる。
 エ. 亜熱帯性の植生やサンゴ礁の海辺等、沖縄の美しい自然は、トロピカル・リゾートとして沖縄の魅力の中心となっているが、沖縄の観光・リゾートのさらなる発展を目指す上で、こうした自然環境に加えて、新たな観光・リゾート拠点の創出を通じた魅力ある観光資源の蓄積が求められている。これらの取組により、アジア諸国に近いという地理的特性を活かし、持続的発展に配慮した国際競争力のあるリゾートを目指すことが重要である。
 オ.観光・リゾート地としてさらに発展する上で、トータルアメニティの向上に向け、さらに積極的な取組が求められる。沖縄の観光地は、ビーチリゾートに代表されるように一点完結型で孤立点在している状況にあることから、観光資源を有効に活用するため、トータルアメニティの向上に向け、快適性や利便性のより一層の向上が重要となる。そのためには、観光振興地域制度等を活用すること等により、観光拠点を重点的に整備するとともに、観光拠点と周辺地域間及び各観光拠点間をネットワーク化し、相互に連携させ、アピール度を総合的に高める工夫が求められる。これは、観光・リゾート地の魅力を一層高める上でも、また観光・リゾート産業の経済波及効果を高めるためにも重要な課題である。

 政府としては、既に沖縄振興開発特別措置法の改正による観光振興地域制度及び沖縄型特定免税店制度の創設、航空運賃の引下げなどの特色のある対策を強力に推進してきたところであるが、以上のような諸点を踏まえ、今後とも沖縄の観光・リゾート産業のさらなる振興を図るために、これらの制度の運用を適切に行うとともに、今後、以下の諸施策に取り組むこととする。

<アクセスの改善>

  1. 航空運賃の引下げに係る措置
     本土からの入域条件の改善のため、平成9年7月以降、平成14年3月までの間の措置として、本土・那覇間の路線について航空運賃の引下げを実施しているところであるが、平成11年7月から同路線における航空機燃料税の税率の再引下げに伴い、追加措置としてさらなる引下げ(例えば、東京・那覇路線の片道・普通運賃について1,000円)を実施した。今後、航空運賃の引下げに係る措置の延長の実現に向けて取組む。

  2. 沖縄自動車道の通行料金の割引
     県内の観光地のネットワーク化や北部地域におけるアクセス条件改善等各地域間の交流を促進するため、沖縄自動車道の通行料金について、平成11年7月以降、平成14年3月までの間の措置として、3割程度の割引(例えば、那覇・許田間の普通車料金1,550円を1,000円に割引)を実施している。今後、通行料金の割引に係る措置の延長の実現に向けて取組む。

  3. 査証手続等の緩和措置
     近隣諸国・地域からの沖縄訪問客の増加を図るため、沖縄を訪問する観光客に対する査証手続等の緩和措置の実現を図る。

  4. 寄港地上陸の許可に係る行動範囲の拡大
     本邦を経由して本邦外の地域に赴こうとする外国人の利便性を高めるため、寄港地上陸許可を受けた者の行動範囲を、県内全体に拡大する。

  5. 観光情報提供体制等の整備
     観光・リゾート情報を国内外に魅力的かつ効果的に提供するために、インターネット等を活用した観光情報を提供する体制の在り方について検討を行う。また、通年型観光・リゾート地へのシフトに向けてのキャンペーンの強化や広報体制の強化について、政府及び県等の連携の下で推進を図る。
<国際コンベンション都市の形成>
  1. 国際会議の誘致等
     2000年サミットの沖縄開催を通じて、コンベンション都市としての沖縄の評価を確実にするとともに、サミット開催地としての貴重な経験をその後に活かすことが求められる。2000年サミット開催が、アジア・太平洋地域の有数の国際コンベンション都市としての沖縄の今後の発展につながるよう、政府と地元の連携協力が求められる。政府としては、「国際会議等各種会議の沖縄開催の推進について(平成12年6月20日閣議了解)」を踏まえ、国際会議等各種会議がサミットを契機に沖縄で開催されるよう、各省庁連絡会議を活用するなかで、所要の支援を行うこととする。
<文化交流型観光への取組>
  1. 国営沖縄記念公園首里城地区の整備推進
     国営沖縄記念公園首里城地区については、これまでの整備事業に引き続いて、史跡の保存と活用の観点から「万国津梁の鐘」等の復元整備を図るほか、今後とも沖縄県の歴史・文化を活かした中心的拠点として特色ある施設整備の推進を図る。

  2. 琉球歴史回廊の形成等
     国営沖縄記念公園の整備・充実、世界文化遺産への登録を目指している遺産群の歴史的景観の保全と調和した周辺整備等を推進するとともに、これらを含む琉球歴史回廊のルート化を図るほか、国立組踊劇場(仮称)の設立や同劇場を中心とした地域づくりを推進し、沖縄の歴史・文化への理解を図る。

  3. 地域観光資源を活用した滞在型・参加型観光の促進
     地域外の住民が滞在しながら沖縄の観光資源である恵まれた自然環境と伝統文化等を体験し、地域の住民と交流を図ることができるような滞在型・参加型観光を促進する環境整備を行うため、市町村等が各地域の特性を活かし住民の創意を発揮して作成した計画に基づき主体的に行うハード・ソフトの事業の推進を図る。

  4. エコツーリズムの推進
     自然環境の維持を前提としたエコツーリズム(自然体験旅行)を地域振興に役立てる観点から、取組を積極的に推進する。西表野生生物保護センター、やんばる野生生物保護センター及び国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター(平成12年5月完成)においては、貴重な生物資源の研究・保護活動と併せてエコツーリズムの拠点としての積極活用を図る。
     また、これらの拠点施設や沖縄懇談会事業として再整備されるネオパーク国際種保存研究センター等の各種拠点のルート化を促進する。

  5. グリーン・ツーリズム、ブルー・ツーリズムの推進
     観光農園や森林レクリエーション施設等の農林漁業体験観光施設及び漁港におけるフィッシャリーナ等の整備により、亜熱帯地域の豊かな自然環境、景観、伝統文化等を活かしたグリーン・ツーリズム(農業体験観光)、ブルー・ツーリズム(漁業体験観光)を積極的に推進する。
<新たな観光・リゾート拠点等の創出とアメニティの向上>
  1. 観光振興地域制度を活用した観光拠点の重点的整備の促進
     観光振興地域については、平成10年4月の沖縄振興開発特別措置法の改正により創設されたものであるが、観光拠点の重点的整備に資するものとして運用されることが必要であり、今後とも、地域指定とその積極的な活用を通じて、民間の観光拠点形成を支援する。

  2. 国際ショッピングモール構想の推進
     観光・リゾート地としての沖縄の新しい魅力を創出するため、国際ショッピングモール構想の推進を図る。

  3. 国際交流拠点等の整備の推進
     「外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律」に基づく外客来訪促進地域において、自然・文化・歴史等の案内施設、体験施設等の整備を推進し、沖縄を訪問する外国人観光に対するアメニティの向上を図る。

  4. 国営沖縄記念公園海洋博覧会地区の整備推進
     北部地域観光の中心拠点としてさらなる発展を図るため、沖縄の海の魅力に触れることのできる新水族館の整備を推進するとともに、新たな観光形態の創出を目指し海洋レクリエーションの展開を図る。

  5. 沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業の活用
     米軍基地所在市町村が、地域に根ざした芸能や地域特産品、自然環境等の観光資源を活用し、地域活性化のために行う拠点づくりについて、同事業の活用を図る。

  6. 観光地のアメニティを高めるための公共インフラの重点的整備
     沖縄独自の歴史性や観光・リゾート地域にふさわしい景観形成や自然とのふれあいに配慮した道路、港湾、海岸、都市公園等の整備、クルージング拠点や離島航路における旅客施設の整備等、観光地の魅力度を高めるための公共インフラの重点的整備を推進する。

  7. 観光地のネットワーク化を促進する観光基盤施設の整備推進
     個別の観光資源をネットワーク化するため、観光地間等を連絡する道路の整備、道路標識、道路情報提供装置、案内板等の施設整備の充実を図る。
     また、沖縄訪問客の移動の快適性向上を図るため、「道の駅」等の休憩施設の整備等を促進する。

(3) 国際的なネットワークを目指す情報通信産業の育成
 沖縄県においては、高度情報通信社会の到来を控え、平成10年9月に「沖縄県マルチメディア・アイランド構想」を策定し、同構想に基づく各種施策の推進を図るなど、情報通信産業育成のため、積極的な取組を行っている。情報通信産業は他の産業に比べ、立地場所を選ばず、少ない資本で事業化できる等の特質があるため、高失業率に悩む沖縄県にとって、重点的な振興により集積を図るべき産業と位置づけられる。同構想は、沖縄の優位性等を踏まえて、情報通信産業の中でも、コンテンツ制作、ソフトウエア開発及び情報サービスを重点分野に位置づけ、その振興・集積による自立的な経済発展のため、県内情報通信産業の雇用規模を2010年には現在の約4倍の2万5千人程度に増やすことを目標とするなど、意欲的なものとなっている。
 政府としても、県の取組を支援するため、沖縄振興開発特別措置法の改正による情報通信産業振興地域制度の創設、沖縄情報通信研究開発支援センターの整備、沖縄コンテンツ制作支援事業の実施、沖縄県マルチメディアセンターの整備、マルチメディア・パイロットタウン構想の推進等に取り組んできたところである。
 これらの成果として、近年、本土の企業によるコールセンターなどの情報通信関連分野への進出が相次いでいる。平成9年に那覇市においてNTT 104番号案内センターが開設され、これにより500人規模の雇用が創出されたことは、コールセンターなどの情報サービス関連企業誘致の効果を強く印象づけ、その後の誘致活動に弾みをつけることとなった。当初は那覇市を拠点とする企業がほとんどであったが、最近では、名護、沖縄両市及び嘉手納町等におけるインキュベート施設の整備計画の進展等に伴い本島中北部への立地決定が目立っている。これらの企業によって表明されている雇用人員は、予定も含めると既に数千人規模に達しており、県の構想で掲げられた雇用創出目標は決して過大なものではないと思われる。
 情報通信関連企業進出の動きは、政府及び県による振興のための支援策とともに、沖縄の豊富な若年労働力や固定的経費の少なさ等の相乗効果によるものと推測される。平成11年度から沖縄県が取り組んでいる新規立地企業への通信費の補助や政府の緊急対策の一環である通信コスト低減化等の対策により通信コストの面でのインセンティブが図られていけば、今後、さらなる情報通信関連産業の集積に結びつくものと期待されるところである。
 なお、今後はコールセンター等の情報提供サービスの集積のみにとらわれるのではなく、「沖縄県マルチメディア・アイランド構想」で謳われたとおり、沖縄の優れたリゾート環境等を活かして、コンテンツ制作やソフトウエア開発等の集積を促進するような施策にも同時に取り組むことにより、バランスのとれた情報通信産業の集積が図られ、沖縄が我が国における情報通信分野の牽引車としての役割を担うことも可能となろう。
 また、現在のコールセンターを中心とする情報通信関連企業進出の動きを本格的な流れとして定着させるためには、進出企業が満足できるだけの優秀な人材を提供し続けることが必須条件である。そのためには、今後とも、政府や県が人材育成に有効な施策を展開していくことが求められる。
 以上のような諸点に加え、沖縄国際情報特区構想の検討結果を踏まえ、政府としては、国際的なネットワーク展開の中での沖縄における情報通信産業の発展を目指し、今後、以下の諸施策に取り組むこととする。

  1. 情報通信関連産業の支援策としての通信コストの低減化
     情報通信関連産業の県内への立地を促進するための支援策として、伝送効率の向上等通信コスト低減化に資する研究開発を推進するために、研究開発用ギガビットネットワークを活用するとともに、必要な施設を、沖縄情報通信研究開発支援センター等に整備する。
     また、通信コストが企業進出の大きな障害ではなくなるまでは、沖縄に進出する情報通信関連企業等を対象とした沖縄〜本土間の高速デジタル回線等の利用に係る費用軽減等の通信コスト低減化のための実効ある対策を継続的に実施する。

  2. 「沖縄国際情報特区」構想の推進
     沖縄は、その地理的条件、通信インフラ整備の諸計画等からみて、世界の情報通信ハブ基地として発展する可能性を秘めているものと考えられる。アジア・太平洋の増大する通信需要を踏まえると、将来的には世界に向けた情報ゲートウエイとしての沖縄の役割が期待される。こうした沖縄の情報結節点としての潜在性に着目して、海外の情報通信関連企業等の誘致による沖縄経済の活性化のための環境づくりをねらいとして、「沖縄国際情報特区」構想の検討を進めた結果、別紙1の概要が示すとおり、(1)アジア・太平洋地域の情報通信拠点形成に向けたグローバルなIXの形成、(2)地域情報通信ネットワークの高度化、(3)国内外の情報通信関連企業、研究機関等の誘致促進・集積・育成、(4)国内外のコンテンツ、アプリケーションの集積、(5)情報通信技術等に明るい人材の早期・大量育成という5つの構想実現のための方向性が示された。今後は、これらの方向性等を踏まえた諸施策を重層的に展開し、同構想の推進を図る。

  3. 情報通信関連産業のさらなる誘致のためのインキュベート施設の整備
     情報通信関連企業の誘致や就業機会の拡大に資するため、情報通信産業振興地域制度の活用を図るとともに、那覇市、名護市、沖縄市、嘉手納町等への共同利用型研究開発施設やテレワークセンター等のインキュベート施設の整備を引き続き推進する。

  4. マルチメディアコンテンツ開発及び流通ネットワーク整備の促進

  5. 先進的アプリケーションの開発による集積の促進
     地域の活性化や地域の課題解決に資する先進的かつ複合的アプリケーションの開発を支援し、もってアプリケーションの集積促進を図る。

  6. デジタル映像ライブラリー及びデジタル映像制作・編集センターの整備
     観光用の地域映像等をデジタル化により収集・保存し、県民等の視聴や実証実験に供する映像ライブラリーを整備するとともに、県外からマルチメディアコンテンツ制作者を招くため、放送コンテンツに係る高度コンテンツ創造システム開発事業の推進など、最先端の映像制作・編集機能を備えた施設の整備を推進する。

  7. 地上デジタル放送研究開発用共同利用施設の整備
     地方公共団体、地元の放送・教育・福祉等幅広い分野の関係者の利用による地上デジタル放送の特性を活かした様々な新サービスの実現、ローカル放送局の事業性の向上及びニュービジネスの創出に資するための地域の研究開発拠点として実用規模の地上デジタル放送研究開発共同利用施設を整備し、その活用を推進する。

  8. 情報関連人材の育成

  9. 沖縄総合行政情報通信ネットワークの構築とワンストップ行政サービス実験の実施
     マルチメディアコンテンツ流通ネットワークにより、マルチメディアを活用した行政情報システム、遠隔医療システム等の公共アプリケーションの集中的な展開を図り、沖縄総合行政情報通信ネットワークを構築する。また、同ネットワークと連携し、様々な公的サービスの申込みを郵便局で行えるようにするためワンストップ行政サービスの広域化実験を実施する。

  10. 学校における高速アクセス網を活用したインターネットに関する研究開発(先進的教育用ネットワークモデル地域事業等)の実施
     学校におけるインターネット利用を促進するため、インターネットの教育利用の先導的研究や、光ファイバー、衛星通信等の様々な高速アクセス回線を活用する技術の研究開発を実施する。

  11. 北部地域における難視聴解消事業の実施
     県土の均衡ある発展のため、本島北部の中波ラジオ及び地上系テレビ放送が良好に視聴取できない地域において中継施設及び共同受信施設を設置し、難視聴の解消を図る。

  12. 地域イントラネットの構築
     住民生活の向上を図るため、行政機関、図書館等の教育機関、医療機関、研究機関、観光施設等の地域の公共機関を結ぶ単独市町村又は離島を含む広域のネットワークを構築し、住民生活の利便に資する広域的なアプリケーションの形成を図る。

  13. 地域インターネットの導入促進
     地域住民にインターネットを活用した双方向の行政サービスを提供するため、公共機関にインターネットを導入する市町村を支援することにより、行政サービスの充実、住民の情報リテラシーの向上を図る。また、地域イントラネットと連携することにより、一層の地域情報化を促進する。

  14. GIS研究開発用共同利用施設の整備
     地方公共団体及び民間による地理情報システム(GIS)のアプリケーション開発を促進することを目的として、大容量データの蓄積、各蓄積データの効率的な相互流通を実現するための研究開発に必要となる施設を整備し、GISに関する研究開発、実証実験を促進する。

  15. 国際性を有する情報通信技術関連R&D拠点の形成
     沖縄リサーチセンターにおける情報通信技術の研究開発の推進や先進的な情報通信分野の共同利用型研究開発施設等の整備により、民間企業等の研究開発を支援するとともに、研究機関等を誘致することにより、沖縄に国際性を有する情報通信技術関連R&D拠点の形成を図る。

  16. インターネット博覧会への沖縄県の参加支援
     特色ある伝統文化や豊かな自然環境等沖縄県の魅力を同県の情報通信関連産業を活用して全世界へ発信することを通じ、沖縄県における情報通信関連分野の人材育成、コンテンツ集積などの環境整備に資するべく、本年12月31日から1年間開催されるインターネット博覧会(インパク)への沖縄県の参加を積極的に支援する。

(4) 農林水産業の新たな展開
 沖縄経済の自立化を可能とする経済振興を図る上で、沖縄の優位性を活かした特色ある産業振興を図ることが重要であり、農林水産業についても、このような視点から振興策を進めていく必要がある。
 沖縄の農林水産業は、台風や干ばつ等の厳しい自然条件、島嶼性や市場遠隔性などの制約条件や生産基盤の整備の遅れ等本土との格差が存在する中で、本土復帰以来、これらの格差を是正し、自立的発展の基礎条件を整備することが重要な課題となっていた。このため、これまで他の地域では類例をみない地下ダムをはじめとするかんがい排水施設の整備による農業用水の確保、農用地の開発、漁港・漁場の整備等農林水産生産基盤・施設の整備、農産物の県外移出を阻んできたミバエ類の根絶の達成や草地畜産の発展を阻害してきた牧野ダニの駆除等、発展のための各種条件整備が進められてきた。この結果、花き、熱帯果樹、肉用牛、クルマエビ、モズク等の生産が増加し、今日において、我が国唯一の亜熱帯気候特性や海域特性等を活かした農林水産物の供給産地として一定の評価を得つつある。
 こうした中、沖縄の農林水産業は、今後、他の都道府県にない優位性を活かして戦略的な取組を行い、市場競争力を持った特色ある農林水産物の供給産地としての重要な役割を担っていくことが期待されている。
 また、このように我が国唯一の亜熱帯性気候地域に位置するという特性を十分に活かすことができ、離島地域ややんばる地域の基幹産業となっている農林水産業を21世紀における沖縄経済振興の中で積極的に位置づけることは、地域資源の有効活用、県土の均衡ある発展、自然環境や国土の保全等の視点からも極めて重要である。
 しかしながら、近年、沖縄の農林水産業をとりまく状況は厳しいものがある。農林水産業就業者数は、復帰直後の昭和50年の6万1千人から平成10年の4万3千人へと約3分の2に減少する中で、農林水産業従事者の高齢化が進んでいる。農業就業人口に占める65歳以上の割合(平成11年)は、全国(51.3%)に比べれば低いものの45.1%と高くなっている。また、新規就農者数も、昭和55年には232人であったが、年々減少し、最近では70人前後で推移しており、後継者の確保が重要な課題となっている。
 耕地面積は、復帰前後に大きく減少したものの、その後、農地造成等の進展により増加に転じ、平成4年には4万7千ha余りとなったが、近年、都市化の進展、耕作放棄地の増大等により再び減少に転じ、平成11年には4万2千haとなっており、優良農地の確保が課題になっている。
 また、国際化の進展に伴う海外農林水産物との競合の激化、国際的な漁業規制の強化等農林水産業をめぐる外部的な環境も厳しさを増している。このような中で、例えば、これまで堅調に成長を続けていた花きも景気の落ち込みや輸入花きの急増等により最近では伸び悩んでいる。
 これらの結果、復帰後順調に増加してきた農林水産業の県内総生産額は昭和60年代から平成のはじめにかけて900億円前後で推移した後伸び悩み、最近では減少傾向にある。
 沖縄の農林水産業をとりまく環境の変化に対応するためには、各種生産基盤・施設の整備とともに、重点的に振興を図るべき品目を中心に、付加価値を高めるための革新的な技術開発や市場競争力の強化等を推進し、地域の諸条件を踏まえた拠点産地の形成を進める必要がある。県においても、平成11年2月に、今後一層進むと予想される国際化の進展に対応した、足腰の強い活力ある農林水産業の確立を目指して、「農林水産業振興ビジョン・アクションプログラム」を策定した。その中で、農産物ではゴーヤー、マンゴー、キク、ウコン等21品目を、水産物ではクルマエビ、モズクなど7品目を「戦略品目」とするとともに、さとうきび、パイン、畜産等を「安定品目」とし、これらを「重点品目」として位置づけた上で、拠点産地の形成の推進、産地体制の強化を図ることとするなど、重点的に推進すべき施策の基本方向が示されたところである。
 今後、沖縄の農林水産業の振興に当たっては、その優位性の発揮及び生産性の向上等により発展が期待し得る分野に重点的に着目し、戦略的な構造改革を行うことが急務となっているといえる。
 以上のような諸点を踏まえ、政府としては、沖縄における農林水産業の新たな展開を支援するため、今後、以下の諸施策に取り組むこととする。

  1. 亜熱帯性気候を活かした特色ある農産物供給基地の形成の推進
     我が国唯一の亜熱帯性気候地域に位置するという立地条件を活かし、基幹作物であるさとうきびの生産振興と併せ、野菜、花き、果樹等の特色ある農産物供給基地の形成を推進する。このため、担い手を核とした効率的な生産組織の育成、農地の流動化や農作業受委託の推進、地域の特性を活かした栽培・流通体系の導入を図るとともに、生産・流通施設の整備等必要な条件整備を推進する。

  2. 高品質で安全な畜産物供給の推進

  3. 農業生産基盤の整備の推進等

  4. 地理的・自然的特性を活かした漁業生産基盤の整備等

  5. 森林の公益的機能の強化と県土の緑化の推進
  6. 農林水産業と観光・リゾート産業との連携

  7. 食品産業と農林水産業との連携強化による新製品開発・販路拡大等の推進

  8. 地域農林水産物の高付加価値化

  9. 農林水産業を担う後継者等の養成の推進
     経営感覚に優れた担い手の育成確保と生産組織の育成・法人化を図るとともに、新規学卒者、Uターン者、中高齢の新規就農者等多様なルートを通じて、幅広い人材の確保を推進する。また、子供たちに対する農業体験学習の実施等により、農林水産業・農山漁村への理解を醸成し、将来の地域農林水産業を担う人材を育成する。

2.産業振興のための横断的な取組

(1) 新規事業の創出支援体制の充実
 米国においては、レーガン政権時代の大規模なリストラの中で生まれた小企業群がその後十数年を経て中堅企業に成長し、現在の米国の好景気をリードしているといわれる。また、今日においても、廃業率を上回る高い開業率が維持されている。他方、我が国においては、開業率の低下傾向が続いており、産業の活力低下が懸念されている。
 沖縄においては、復帰後、新規開業が相次ぎ、多産多死ではあるが開業が廃業をある程度は上回るというダイナミズムを示していた。しかしながら、昭和50年代も半ばに入ると、開業率は10%を下回る水準にまで落ち込みを示し、廃業率との差も次第に狭まる傾向となってきている。最近においては、水準において本土を上回るものの、開廃業率の差はほとんどない状況にある。
 今後、沖縄経済が21世紀に向けて中長期的に自立的発展を遂げていくためには、産業の活性化とともに、良質の雇用機会が若年層にも開かれるような、新規産業及び新規企業の成長が必須の課題であり、新規事業創出を積極的に推進する必要がある。
 沖縄のベンチャー企業の実態をみると、業種的には、「情報通信関連分野」が最も多く、次いで「環境関連分野」、「住宅関連分野」、「ビジネス支援分野」となっている。情報通信関連分野では、コンテンツ制作やシステム開発が中心で、環境関連分野では、廃棄物処理プラントの関連が多くを占めている。こうした傾向にかんがみた場合、本プランにおいても目指しているように、観光・リゾート産業や製造業一般といった基盤的産業とともに、情報通信や環境関連の分野等の発展可能性を重視した産業振興のアプローチは概ね妥当なものと思われる。
 しかしながら、ベンチャー企業にあっては、立ち上がり資金の供給、コンサルティング、人材育成・活用支援等多様な支援ニーズを強く持っていることも事実である。
 これまで、政府及び県においては、こうした業種横断的な支援の取組として、創業活動への融資等による資金面でのバックアップ、技術開発促進及び技術指導、ベンチャープラザ等を通じた相互情報交流、ビジネスプラン作成指導等きめこまかな対策を講じてきたところであるが、沖縄経済にとっての新規事業創出の重要性にかんがみ、以上の諸点に加え、新規事業創出支援体制の総合的検討の結果を踏まえ、政府、県及び市町村が連携して、今後、以下の諸施策を中心に取り組むこととする。

  1. ソフトな機能を持つ産業振興のための拠点整備
     沖縄県の今後の自立的な経済発展を図るには、既存産業の活性化と新規創業の促進を進めることが必要であるため総合的な産業支援体制である、いわゆる「地域プラットフォーム」の構築が求められる。沖縄県では、既に、新事業創出促進法に基づき「中核的支援機関」を要とした体制づくりが進められているが、このような取組を一層加速するために、産業振興の機能を総合的に実施するためのソフト機能を備えた拠点施設として、「産業振興・創業支援センター(仮称)」を整備することとする。整備に当たっては、@県内の創業や新分野に進出する中小企業を支援するための地域プラットフォームの整備、A企業の立ち上がりを支援するインキュベート機能の確保、Bデザイン力の向上、デザイナーの資質向上及びデザイン開発型企業の育成を目的としたデザイン機能の確保といった3つのソフト機能を有し、ハード・ソフトが一体となった総合的な支援機能を提供することにより、沖縄県内における既存産業の高度化と新規創業を強力に推進する。

  2. 沖縄振興開発金融公庫の創業支援体制の整備
     沖縄振興開発金融公庫では、新規事業への相談、アドバイザー機能を強化するため、平成8年度に、新規事業支援室を設置するとともに、各支店に新規事業支援プロジェクトチーム連絡員を配置する等創業支援体制の整備に努め、県内各地において融資相談会、融資制度説明会、新規事業に関する講演会等を開催してきたところであるが、今後ともこうした公庫の情報発信機能を強化し、沖縄における創業者支援に努めるとともに、沖縄創業者等支援資金の積極的な活用を通じて、新たな企業の創出を図る。

  3. 沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業等を通じたインキュベート事業の促進
     那覇市においては、沖縄情報通信研究開発支援センターに加えて上述の産業振興・創業支援センター(仮称)においてインキュベート施設を整備する。名護市については、マルチメディア館、嘉手納町については、嘉手納町コールセンターを整備し、すでに情報通信関連企業が操業を開始したところであるが、今後も情報通信産業等の集積を図るために、積極的にインキュベート施設の整備を図ることとする。

  4. ロールモデルの積極活用
     米国のシリコンバレーや国内では「やらまいか精神」で特色のある浜松地域の例にみられるように、起業家が数多く輩出する上で、ロールモデル(身近な手本となる起業家)の影響力が重要な要素となるが、沖縄にあってはロールモデルそのものが「極めて乏しい」とされてきた。
     しかしながら、会社設立から20数年で県内屈指の大手優良企業に成長したスーパーチェーンの例や、最近のコンピュータグラフィックスや健康医薬品分野での成功事例を持ち出すまでもなく、低下傾向にあるとはいえこれまで本土を上回る開業率を沖縄が示してきたという事実は、そうした一般的認識を改めるべきことを示唆している。
     これまで必ずしも一般的に認識されていなかった起業家の地元での事例の発掘や、県外ではあるが沖縄にとって身近な参考となる事例の活用を含めて考えれば、ロールモデルの積極的な活用による啓発活動は沖縄においても可能であり、今後こうした活動を積極化させることとする。

  5. ベンチャー企業へのインターン派遣の促進
     学生が在学中に企業等において、自らの専攻、将来のキャリアに関連した実習や研修的就業体験を行うインターンシップは、自主性や創造性のある人材を育成し、高い職業観を養成する観点から有意義であり、また、ベンチャー企業へのインターン派遣は、若い世代の起業家精神の発揚とともに、ベンチャー企業への支援にもつながるものであり、その促進を図ることとする。

  6. 地域プラットフォーム(新事業創出促進のための総合的支援体制)の拡充
     利用者の利便性向上を図るため、沖縄県地域プラットフォームの中核的支援機関である(財)沖縄県産業振興公社が中心となり、新規事業創出に向けた企業化段階別の支援に係る各種産業支援機関の役割分担、相互補完等に係る連絡・調整機能の拡充を積極的に進める。

  7. ソフトな支援サービスの強化
     中小企業・ベンチャー企業に対する経営相談、公的支援制度の紹介、人材紹介、支援サービスの強化の方策を検討する。

  8. 新規事業創出促進助成事業の強化
     オキナワ型産業の新規事業創出のために、新商品又は新技術の開発、需要及び販路の開拓、教育・研修などの事業を促進するため、各種助成制度の強化を図る。

  9. 琉球TLO(仮称)による技術移転活動の円滑化
     新規事業、新製品の開発を支援するため、大学における研究成果の民間
     企業への移転を行う琉球TLOを設立することは、オキナワ型産業の振興にとって有効である。従って、琉球大学を中心に琉球TLOの具体化に取り組むこととし、大学等技術移転促進法に基づく各種の支援措置の活用を図る。

  10. 新規事業創出支援体制の総合的推進
     新規事業創出のための支援策については、これまでも逐次検討が行われてきたところであるが、今般、県において既往の施策の利活用の状況を含めて再点検を行うとともに、沖縄における新規事業の創出にとって真に効果的な支援体制の在り方について検討を行った結果、別紙2の概要が示すとおり、支援体制の整備の方向性として、「起業家意識の高揚」、「新規事業に関する支援コンサルティング」、「資金調達の支援」、「分かりやすい支援体制」等の方向性が示されたところである。今後は政府、地方公共団体及び関係機関が連携してこれらの方向性も踏まえつつ、諸施策の総合的推進に向けた検討を行うこととする。

(2) 研究開発と国際交流の促進
 研究開発及び国際交流に関しては、亜熱帯の特性に配慮した研究交流やそれに伴う関連産業の振興をどう図るかが検討課題とされてきた。これまでの検討を通じて、沖縄の持つ亜熱帯特性と島嶼特性の視点から、沖縄へのフィールド依存性の高い研究開発分野の整理が行われるなど、一定の進展をみてきたところである。
 また、具体的な取組においても、沖縄の特性を活かした研究施設として、現在、国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター及び海洋深層水総合利用研究施設を整備し、これら施設の活用を図っているところである。また、県の中核的試験研究施設である県工業技術センターについては、地域総合整備事業債等を活用して整備が進められ、平成10年5月に中城地区に開所した。同センターにおいては、人員の強化も併せて図られ、地域技術振興の核としての使命の発揮が期待されている。
 自立型経済の構築に向けて、また、メガ・コンペティションの時代の中で、技術革新の果たす役割が一層高まっており、そうした中で、研究開発活動については、前向きで、なおかつ地域の特性を活かした着実な取組が期待されている。
 国際交流については、新しい全国総合開発計画においても、沖縄がアジア・太平洋地域の交流拠点として位置づけられているところであり、科学技術分野のみならず、学術文化、スポーツ、医療等を含めて、幅広い交流が期待される。
 以上のような諸点を踏まえ、政府としては、今後、以下の諸施策に取り組むこととする。

<亜熱帯特性等に注目した研究開発活動の総合的推進>

  1. 亜熱帯研究の総合的推進
     亜熱帯特性を活用した科学技術研究の総合的推進を図るため、沖縄における亜熱帯特性を活用した基礎的研究等への取組の促進を図る。
     また、亜熱帯特性に対応した新技術の開発のため農業生産技術、下水処理技術等の各分野について研究開発の推進を図るとともに、地球環境計測技術に係る研究機関の施設の拡充を図る。

  2. 産学官共同研究活動の促進
     生物資源の産業への活用技術、希少亜熱帯生物の養殖技術等、沖縄の亜熱帯特性を踏まえるとともに、新産業・新事業の創出に向けた研究開発が産学官の共同で促進されるよう、産学官共同研究活動の促進を図る。

  3. サンゴ礁海域生態系の観測研究の推進
     石垣島周辺等のサンゴ礁海域を地球環境モニタリングエリアとして、基礎的調査研究とともに、気候変動がサンゴ礁の生態系に与える影響の解明等に取り組む。

  4. 海洋深層水研究の推進
     海洋深層水総合利用研究施設(平成12年6月開所)において、深層水を活用した農水産技術の研究、食品関連研究、その他の分野への活用を図るなど、沖縄の特性を生かした海洋深層水の有効利用の展開を図る。

  5. 工業技術院ネットワークの活用
     沖縄県工業技術センター等に対して工業技術院が有する高速ネットワークや研究資源等の提供を行うため、接続を受け入れる工業技術院側のネットワーク環境整備を推進する。

  6. 研究開発用ギガビットネットワークを利用した研究開発の推進
     研究開発用ギガビットネットワークを利用して、次世代超高速ネットワーク技術を確立する上で必要となる研究開発を促進するとともに、ギガビット級の高速ネットワークを有効利用するための高度アプリケーションの開発を促進する。

<アジア・太平洋の交流拠点としての発展>

  1. 沖縄・ハワイ協力の推進
     沖縄県とハワイ州の間の意見交換を行う場である「沖縄・ハワイ会合」及び「沖縄ハワイ連携委員会(アロハ委員会)」における協議を通じて、地理的、自然的特性が同じ地域の抱える課題において、多くの共通点を持つ沖縄・ハワイ間の知的交流、学術・研究協力、開発協力等の国際交流の促進を図る。

  2. 国際セミナー等の知的交流事業の推進
     沖縄における国際交流拠点の形成に資するため、国際機関が開催するセミナー・シンポジウム等の沖縄への誘致や、国内外の研究者の交流等の国際的な知的交流事業の推進を図る。

  3. 国立組踊劇場(仮称)の設立
     国の重要無形文化財「組踊」を中心とする沖縄伝統芸能の公開、伝承者養成、調査研究等を行い、その保存振興を図るとともに、沖縄の地理的・歴史的な特性を活かし、伝統文化を通じたアジア・太平洋地域の交流の拠点となる劇場の設立を行う。

  4. 琉球王国のグスク及び関連遺産群の世界遺産への登録
     沖縄の文化の象徴である琉球王国のグスク及び関連遺産群が世界遺産条約に基づく世界遺産一覧表に記載されるよう取り組み、沖縄固有の文化の発信と文化交流の推進を図る。

  5. スポーツ交流の促進
     本土や海外を含めて、スポーツ面での対外交流を推進するため、沖縄懇談会事業等により関連施設の整備を図る。

  6. 国際医療協力の推進
     アジア・太平洋諸国の保健医療関係者の技術のレベルアップを図るため、これらの国から医療関係者を招き、救急医療、離島医療等について、研修事業を行うことにより、沖縄における国際交流拠点の形成に資する。

(3) 人材の育成と雇用の確保
 人を育てることは、百年の大計といわれる。本土との所得格差があるとはいえ、国際的には高い賃金水準の下で、なお競争力のある産業の振興を図るためには、産業の高付加価値化以外に道はなく、そのためにも優秀な人材の確保は大きな課題である。
 現在の労働力需給、産業の現状、今後の産業発展の課題等の観点から、沖縄における人材育成の課題を整理すると、次のとおりである。

ア.求人倍率が極めて低水準で推移する中で、専門的・技術的職業の求人倍率が予想以上に高い水準にあり、専門的職業及び技術的職業に従事する労働者の不足傾向が続いていること。
 イ.新産業の創出が課題となる中で、優れた経営能力と起業家精神に富む人材の輩出が期待されること。また、既存産業にあっても、技術革新の動向等に鋭い関心を持ち、創造性豊かな発想で新しい事業に取り組むような人材が求められること。
 ウ.新しいリーディング・インダストリーとして観光・リゾート産業、情報通信産業の発展が期待され、その産業形態のレベルアップが求められる中で、それに即応した人材育成が課題となっていること。
 エ.国際コンベンション都市や、国際情報ハブとしての発展、加工交易型産業の育成が課題となる中で、国際性を持った人材が一層求められていること。

 なお、第一部で述べたとおり、現在の沖縄は若年層を中心に厳しい雇用情勢にあり、長期的な観点からの人材の育成施策の視点と併せ、差し迫った課題として、雇用の確保に資する施策を強力に推進することが求められていることに留意する必要がある。
 以上のような諸点を踏まえて、「第三部 1.主要分野における産業振興」において、以下の1)・2)の施策に取り組むこととしたところである。
 1)情報関連人材の育成
 2)農林水産業を担う後継者等の養成の推進
 これに加え、政府としては、産業振興のための横断的な取組として、今後、以下の諸施策に取り組むこととする。
 なお、沖縄における労働力需給のありようについては上述のとおりであるが、今後の情勢変化によっては、中長期的には人材の需給面におけるミスマッチングが生じる可能性も否定し得ない。こうした変化に対応するためにも、施策の成果について定期的にフォローアップとレビューを行うことを提案する。
  1. 国立高等専門学校の創設
     平成11年度までに行った基礎的な創設準備調査及び産業界のニーズ等を詳細に把握するための調査等に引き続き、本年度から国立高等専門学校(沖縄)の創設準備を行っており、今後、創設準備の状況等を踏まえつつ、国立高等専門学校の設置について、その確実な実現を図ることとする。

  2. 大学機能の充実強化
     国立琉球大学においては、理工学研究科海洋環境学専攻(博士課程)の新設や、総合情報処理センターの新設等の充実・強化を、また、名桜大学の教育施設について、沖縄懇談会事業を通じての強化を図ってきたところであるが、今後とも沖縄の人材育成の重要性にかんがみ、沖縄における大学教育・研究の充実に努めることとする。

  3. 職業能力開発の推進
     平成11年度において「沖縄職業能力開発短期大学校」を「沖縄職業能力開発大学校」に転換し、従来の高度職業訓練に加え、応用課程及び応用短期課程を設けたほか、専門課程についてもホテルビジネス科、電気技術科を設置した。こうした体制の中で、今後も引き続き、専門的技術人材の育成を推進していくこととする。

  4. 沖縄特別雇用開発推進事業の推進
     (財)雇用開発推進機構を中心とし、沖縄における人材育成支援事業、総合的雇用開発等支援事業等を実施する沖縄特別雇用開発推進事業については、沖縄特別振興対策調整費を活用した基金造成により創設されたところであるが、今後とも同機構の積極的活用により人材育成及び雇用開発の推進を図る。

  5. 高等教育機関間の情報通信ネットワークの推進
     県内の高等教育機関間における衛星通信等のネットワークの整備を推進し、これを活用した県内及び他都道府県との遠隔授業や共同研究を推進し、沖縄県における高等教育の充実を図る。

  6. 中小企業大学校「沖縄振興コース」の拡充
     中小企業者の人材育成のため、中小企業総合事業団中小企業大学校が沖縄県の中小企業者を対象として実施している経営研修事業「沖縄振興コース」の拡充を県との連携の中で図ることとする。

  7. 人材の育成に向けたインターンシップの総合的促進
     産業振興に資する人材を育成し、また、県内の学生の職業意識の啓発等を図る観点から、教育機関と企業等が連携して行うインターンシップについて、所要の支援を行う。

  8. 国際化等に対応した人材の育成
     国際化時代に有為な人材を育成すべく、海外の大学院への留学生派遣事業である沖縄県人材育成海外派遣事業、一定の語学力を有する者を国内外の語学学校に派遣する沖縄県同時通訳者養成事業、高校生を米国へホームステイ留学させる沖縄県高校生米国派遣事業を引き続き推進する。
     また、国際化や情報化の進展に対応した人材育成の強化の視点から、県立高校における学科・学校の見直し・再編を進めるとともに、これに併せ必要な公立学校施設の整備を行う。

  9. 地域に密着した「人づくり」の推進
     子供たちの「科学する心」を養う「こども未来館」の整備等、地域活性化に向けた「人づくり」の拠点施設の整備や子供たちの文化活動の機会の提供について、沖縄懇談会事業等の活用により、その推進を図る。

  10. 駐留軍従業員の雇用対策の充実
     駐留軍従業員の雇用対策については、駐留軍関係離職者等臨時措置法に基づき離職前職業訓練等を実施しているところであるが、沖縄の厳しい雇用情勢にかんがみ、今後とも従業員に対する職業訓練等の施策の充実に努めることとする。

  11. 離島などにおける人材活用の推進
     企業・自営業者等と住民双方の臨時的就業、業務請負等に関するマッチング、情報提供や相談を行う体制を整備し、就業機会の少ない離島などにおける人材活用の推進を図る。

(4) 環境共生型地域の形成
 「持続可能な開発」の考え方、そのための「環境との共生」のコンセプトは、地球環境問題を考えるとき、極めて重要な視点となる。環境基本法に基づく環境基本計画においても「循環」と「共生」の考え方が示されている。今後の地域振興計画においても、これらの理念との整合性の確保が求められているといえる。
 沖縄が環境共生型地域としてモデル的な発展を追求することは、次の視点から価値のある挑戦といえる。

ア.優れた環境が沖縄観光の最も重要な資源であること。
イ.多くの制約を抱えているとはいえ、環境との共生を目指す環境関連ビジネスの発展追求は、沖縄の厳しい雇用状況等の改善を図る意味においても有意義であること。
ウ.生活環境そのものの改善の視点からも意義深いこと。

 さらには、亜熱帯生態系に位置する沖縄でのモデル地域としての取組は、サンゴ礁やマングローブ林の保全における技術協力の例が示すとおり、熱帯及び亜熱帯地域の発展途上国の持続可能な開発のためのモデルとなり得るものであり、アジア・太平洋地域の交流拠点としての沖縄の対外的発展の視点からも有意義な試みであるといえる。
 以上のような諸点に加え、「ゼロエミッション・アイランド沖縄」構想の検討結果を踏まえ、政府としては、今後、以下の諸施策に取り組むこととする。
  1. 国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターの設置とその活動の推進
     国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター(平成12年5月完成)を中心とした調査研究、普及啓発等の活動の推進を図る。

  2. やんばる野生生物保護センター等の活動の推進
     やんばる野生生物保護センターについては、平成11年4月に開館したところであるが、既設の西表野生生物保護センターとともに、今後、野生生物や生態系について調査研究、保護増殖、普及啓発等の活動の推進を図る。
     また、平成11年5月、ラムサール条約に基づく湿地として新たに登録された漫湖についても、住民の自然とのふれあいの場、あるいは、新しい地域資源として、保全、管理、活用を推進するため、保全管理及び普及啓発等の活動の拠点となる施設の整備について検討を進める。

  3. 地域振興に配慮したやんばる地域の国立公園化の検討
     自然環境の保全と活用による地域振興の推進を図るべく、優れた自然が残されているやんばる地域における国立公園の指定について、ビジターセンター等の配置、観光利用と環境保全のバランス等の検討を進める。

  4. 観光・リゾート地としての魅力を高める環境保全・環境創造型事業の推進
     観光・リゾート地として重要な景観や環境の保全・創出のため、耕土流出を防止する水質保全対策事業等の赤土流出防止対策の推進や、環境の保全・復元等に配慮した海岸・河川・港湾等の整備、道路緑化の推進、環境美化・廃棄物処理対策の推進等、環境保全・環境創造型の事業の推進を図る。

  5. 自然エネルギーの導入等環境負荷の小さい地域を実現する技術導入の促進
     沖縄県の豊かな自然環境との共生を積極的に図るため、風力発電等の自然エネルギーシステム、たい肥等有機性資源の循環的活用による環境保全型農業、下水処理水の再利用等による水循環系の再生等について、地域の特性に応じた導入を推進することにより、環境負荷の小さい地域の実現に向けた取組を促進する。

<「ゼロエミッション・アイランド沖縄」構想の推進>
 「沖縄経済振興21世紀プラン」中間報告(平成11年6月沖縄政策協議会了解)において、リサイクルの視点よりさらに広いコンセプトに基づき、環境負荷の小さい、よりクリーンな沖縄を目指す具体的な取組として、「ゼロエミッション・アイランド沖縄」構想が提案された。その後、同提案を受け、「ゼロエミッション・アイランド沖縄」構想検討委員会により検討を進めた結果、別紙3の概要が示すとおり、その方向性が示されたところである。今後は、政府と県が連携して、同構想の推進を図ることとする。特に、以下に掲げる諸施策については、その意義にかんがみ、優先して具体化に向け検討を進めることとする。

  1. ゼロエミッション地域形成モデル計画の策定

  2. 処理困難物の適正処理の推進

  3. 有機系廃棄物のバイオガス・コンポスト化の推進(燃料電池も含む)

  4. 自然エネルギー100%供給モデル地域形成の推進

  5. バイオマテリアル製造事業の推進

(5) 産業活動を支えるインフラ等の整備
 自立化を目指した特色ある産業の振興を図る上で、基盤となる社会資本の整備が重要なことは改めて指摘するまでもない。
 沖縄における社会資本の整備については、第3次沖縄振興開発計画(平成4年度〜13年度)においても、「県民生活の安定・向上と産業経済の発展を図るため、社会資本の整備が一層重要」と位置づけているところであり、復帰以来累計6兆円を超える国費(昭和47年度から平成12年度予算までの沖縄振興開発事業費の累計)を投入して、本土との格差是正や自立的発展の基礎条件の整備を図る観点から各般のインフラ整備を積極的に進めてきた。
 その結果、復帰後28年間で社会資本の整備は着実に進み、施設整備面での本土との格差は次第に縮小されつつあるが、水の確保、交通・通信基盤施設をはじめとして、産業基盤の面でなお整備を要するものも多くみられる。このような社会資本整備に対する基本的ニーズを踏まえつつ、今後とも、産業を支えるインフラ等の効果的・効率的な整備に引き続き努めていく必要がある。
 まず、今後、沖縄におけるインフラ等の整備においては、産業全体の活性化につながる人・物の輸送の効率化の観点から、空港・港湾等の整備が不可欠である。また、これらと併せ、県民や観光客の利便の向上等の観点から質の高い公共交通サービスの実現や沖縄の各地域間を結ぶ道路網の整備等総合的な交通体系全体の改善・整備が必要となる。
 また、産業振興をより効果的に図るためには、インフラ整備に当たっても、これまで以上に、目的志向型の戦略的・重点的な整備という観点が重要になる。具体的には、特別自由貿易地域(中城湾港新港地区)の整備や観光振興地域の指定等、他の振興策との連携による投資の重点化を図るとともに、民間投資誘発に与える効果や利用者サービスの向上等、当該インフラがどのように活用されるかというソフト施策に配慮して整備を行っていくことがますます重要となろう。
 このほか、北部地域や離島をも含めた県土全体の均衡のとれた発展という観点からは、社会資本整備の推進においても地域バランスにも十分に配慮していくことが求められる。
 また、インフラの整備に当たって、PFIの導入を検討することも有意義である。
 以上のような諸点を踏まえて、「第三部 1.主要分野における産業振興」において、以下の1)〜4)の施策に取り組むこととしたところである。
 1)特別自由貿易地域等における関連インフラの整備
 2)観光地のアメニティ向上とネットワーク化に資するインフラ等の整備
 3)情報通信分野の振興を図るためのインフラ整備
 4)亜熱帯農林水産業を推進するための基盤整備
 これに加え、これらの分野を含めた産業活動を支援するインフラ等の整備の推進のため、政府として、今後、以下の諸施策に取り組むこととする。

  1. 那覇空港の整備
     空路における沖縄の玄関口である那覇空港については、平成11年5月に新しい国内線ターミナルビルが供用開始されるなど、増大する需要に対応するための整備が進められている。また、台風時避難用エプロンの整備を進めるとともに、今後、旧国内線ターミナル地域の跡地利用や貨物ターミナル地区の計画の策定等の短期的課題の検討及び、長期的な航空需要等を踏まえた将来展望についての検討を行い、必要な整備を行う。

  2. 那覇港の整備
     国際海上コンテナ貨物の効率的な輸送の見地から、那覇港において国際海上コンテナターミナルの整備を推進するとともに、幹線道路や那覇空港との連絡の円滑化を図る臨港道路空港線の整備などを推進する。また、国からの補助を受けて沖縄県が実施した那覇港国際流通港湾計画調査を踏まえ、今後とも計画的な那覇港の整備を推進する。

  3. 総合交通体系の整備の推進
     空港や港湾等の拠点へのアクセス道路や拠点間の連絡を強化するため、那覇空港自動車道、名護東道路及び沖縄西海岸道路等の幹線道路を整備するとともに、都市内交通として沖縄都市モノレールの建設を進める。また、離島における産業振興にも資する空港、港湾及び道路等の整備を促進する。
     また、バスとモノレール等の交通機関相互の適切な連携、情報化の推進等によるバスサービスの高度化等を図ることにより、都市交通の総合的な改善を進め、公共交通機関の利便性の向上を図るとともに、バイパスの整備、交通結節点の整備、交通需要マネジメント施策等、都市圏交通円滑化総合対策事業や、情報通信技術を活用したITS(高度道路交通システム)の導入を推進する。

  4. 水資源開発の推進
     各種産業の振興や観光・リゾート産業を支える基盤として、各種用水等の安定的供給を図るため、気候・河川特性等の点から渇水の発生しやすい状況にある沖縄において、慢性的な渇水被害を解消すべく、多目的ダム等の水資源開発施設の建設を推進する。
     なお、以上のような社会資本整備の在り方については、経済振興の観点に加えて県民の生活環境等を含めた総合的な地域振興の視点から判断されるべきものであり、今後、次期の沖縄振興開発計画の全体的検討の中でさらに検討を加えることとする。

3.今後の取組

(1)米軍施設・区域の返還に伴う対応

  1. 閣議決定における地域振興等に関する方針
     政府は、平成11年12月28日の閣議決定「普天間飛行場の移設に係る 政府方針」(以下「閣議決定」という。)において、普天間飛行場の移設につい ての基本方針を定め、その中で関係する地域の振興等に関し、 ア. 代替施設の受入れにより平和と安全への大きな貢献をすることとなる普天間飛行場移設先及び周辺地域の振興については「普天間飛行場移設先及び周辺地域の振興に関する方針」
    イ. 県全体の均衡ある発展を図る観点から極めて重要な課題である北部地域の振興については「沖縄県北部地域の振興に関する方針」
    ウ. 米軍施設・区域の整理・統合・縮小を着実に推進するなかで、沖縄の将来発展の視点と共に、駐留軍用地の地主をはじめとする住民生活安定の視点からも重要な課題である返還跡地の利用の促進及び円滑化等については「駐留軍用地跡地利用の促進及び円滑化等に関する方針」

     をそれぞれ定め、その確実な実施を図ることとした。

  2. 具体的な取組 ア.北部地域等の振興
     "1."ア.及びイ.の方針の確実な実施を図るため、北部地域全体の振興については内閣官房長官・沖縄開発庁長官、沖縄県知事及び名護市長はじめ北部12市町村長で構成される「北部振興協議会」を、また、移設先及び周辺地域の振興については内閣官房長官・沖縄開発庁長官、沖縄県知事、名護市長、東村長、宜野座村長で構成する「移設先及び周辺地域振興協議会」を設置した(平成12年2月10日)。
     また、この両協議会を支援するため、官房副長官(事務)の主宰のもと関係16省庁の局長クラス及び沖縄県、地元関係市町村の代表で構成する「北部振興協議会に係る連絡会議」及び「移設先及び周辺地域振興協議会に係る連絡会議」を設置するとともに、さらに両連絡会議をサポートするため、関係16省庁の課長クラス等で構成する「北部振興プロジェクトチーム」を設け、政府・県・地元が連携・協力して取り組む体制を整えたところである。
     こうした体制のもとで、振興事業の推進に当たっての基本的な方向性を示す基本方針の策定について、地元における地域振興に係る基本的な考え方の取りまとめや、政府・県・地元の三者間における累次の意見交換などを経て、平成12年8月24日に上記両協議会において、「北部振興並びに移設先及び周辺地域振興に関する基本方針」を決定したところである。
     今後は、この基本方針を踏まえ、政府、県、地元一体となり、雇用機会の創出や定住条件の整備など、北部地域並びに移設先及び周辺地域の発展に資する実効性の高い振興事業を着実に推進していくこととする。

    イ.返還跡地の利用の促進及び円滑化等
     "1."ウ.の方針の確実な実施を図るため、内閣官房長官・沖縄開発庁長官、沖縄県知事及び宜野湾市長で構成する「跡地対策準備協議会」を設置(平成12年5月31日)するとともに、この準備協議会を支援するため、官房副長官(事務)の主宰のもと関係15省庁の局長クラス及び沖縄県・宜野湾市の代表で構成する「跡地対策準備協議会に係る連絡会議」、さらには関係15省庁の課長クラス等で構成する「跡地対策プロジェクトチーム」を設置し、政府、県、地元が連携・協力して取り組む体制を整えたところである。
     こうした体制のもとで、跡地対策準備協議会においては、これまで普天間飛行場の返還跡地利用の諸課題について、取り組むべき11の分野の明確化を図った上で、平成12年8月24日の準備協議会において、「取組分野ごとの課題についての中間的な整理」をとりまとめたところである。
     今後は、同中間整理を踏まえ、返還跡地の利用の促進及び円滑化等に向けた総合的な検討・取組を鋭意進めることとする。

(2)ポスト三次振計への反映
 昨年12月28日の「普天間飛行場の移設に係る政府方針」において閣議決定されたとおり、政府としては、新たな時代に向けた沖縄振興新法の実現を目指すこととし、その具体的検討をポスト三次振計の検討の中で行うこととしている。
 この際、経済の自立的発展に向けての民間経済を主体とする産業経済の振興の重要性にかんがみ、新法に基づき策定される新たな沖縄振興計画のもとで、新たな産業振興に係る計画を策定することも含めて、本プランの内容が反映されるよう前向きに検討することとする。

別紙1

沖縄国際情報特区構想の推進方策等に関する調査(結果概要)

1 沖縄の現状とこれまでの取組み

 沖縄の潜在的優位性を踏まえ、国・県・市町村等は、情報通信産業による沖縄振興に取組み、コールセンター集積などに一定の成果。

2 沖縄国際情報特区構想の意義

 (1)本構想は、「距離」と「時間」の制約をなくす情報通信技術の利用により、沖縄の弱点を長所に変え、全県全域に豊かな生活を実現。
 (2)沖縄が直面してきた遠隔性、島嶼性の不利を克服し、自立型経済を確立。
 (3)アジア・太平洋地域という視野の中で、新しい国際関係を展開。

3 推進方策

 沖縄経済の現状と潜在的優位性、沖縄の情報通信産業の現状、本構想の意義等を踏まえ、以下の5つの方策に即して施策を展開することが必要。

(1)アジア・太平洋地域の情報通信拠点形成に向けたグローバルなインターネットエクスチェンジ(IX)の形成
 アジア太平洋地域における地理的なポジショニングと海底光ケーブルの陸揚げ地という特徴を活かして、グローバルなIX形成を図る諸施策を展開。

(2) 地域情報通信ネットワークの高度化
 行政による地域情報通信ネットワークを構築し、沖縄振興を促す手段として活用。
 地域内における公共機関を地域情報通信ネットワークで結び、様々なサービスをお年寄りや子どもたちも便利に利用できるような環境作りを推進。
 沖縄県内に整備されつつある最新の情報通信設備を備えた特色ある諸施設を相乗的・補完的に活用できるよう連携。

  1. 高速有機結合型ネットワークの整備
  2. 地域イントラネットの構築
  3. 地域インターネットの導入促進

(3)国内外の情報通信関連企業、研究機関等の誘致促進・集積・育成
 コールセンター進出の流れを定着させるとともに、その他の分野の企業誘致も促進していくため、沖縄に立地する企業の自立的、継続的活動を支援。
 産学官の研究機関等の誘致により、周辺ビジネスを発生させ情報通信関連のCOE(Center of Excellence:卓越した人材が集うセンター)を形成。

  1. 通信コスト低減化支援事業
  2. 情報通信産業振興地域制度の活用等
  3. 国際テレビジネスセンターの形成
  4. 情報通信技術関連の国際的R&D拠点の創造

(4)国内外のコンテンツ、アプリケーションの集積
 インターネットの普及、拡大に応じた最先端のアプリケーション等の実証を、そのフィールドとなる情報通信ネットワークの構築とあわせて、積極的に推進。
 付加価値の高い情報の生産・蓄積、ソフト関連産業・コンテンツ産業の集積、各種メディアの集積を図る。

  1. 大容量ネットワークを利用したコンテンツ共同制作の展開
  2. 歴史・文化・芸能デジタルアーカイブズの構築
  3. 地球環境デジタルアーカイブズの構築
  4. 共同利用型データセンターの設置
  5. 標準時報局及び時刻証明システムの構築

(5)情報通信技術等に明るい人材の早期・大量育成
 コールセンターが必要とする人材の大量・早期の育成へのニーズへの対応。
 情報通信技術やデジタル映像技術、沖縄独自の文化芸術に明るい人材や、アジア・太平洋地域の情報通信拠点に相応しいマルチリンガルな人材へのニーズに応え得る体系的な人材育成システムの構築。
 情報通信産業の担い手となる若い人たちのインターネットリテラシー向上。

  1. コールセンター人材育成支援システムの開発
  2. 小中高等学校における情報通信技術教育の充実
  3. 情報通信技術、デジタル映像等の成長が期待される分野での人材育成を加速
  4. マルチメディア大学院大学等の高等教育機関の整備促進



別紙2

新規事業創出支援体制の総合的検討調査[沖縄県](結果概要)

1 地域産業振興と新規事業創出

(1)産業構造変化と新規事業創出
(2)地域産業振興施策の潮流
(3)沖縄県における新規事業創出の動向

2 沖縄県及び全国における新規事業創出の実態

(1)新規事業創出に関わる起業家の課題
(2)他地域における新規事業創出の実態
(3)21世紀における地域産業振興の方向

3 県内外の成功企業における事業展開事例と公的支援活用

(1)県内企業と県外企業の展開事例からみた特徴の比較
(2)新事業創出(新分野進出)のロールモデルの例

4 沖縄における新規事業創出の問題・課題

(1)新規事業創出に関わる問題点の分析整理
(2)既存支援体制の実態と問題点

5 沖縄における新規事業創出支援のあり方

(1)新事業創出支援の基本的な考え方
(2)新たな新規事業創出支援策

なお、沖縄県プラットフォームでは、各機能ごとに支援機関が位置付けられ、一体となって新規事業創出に当たることになっているが、今後は、新規事業創出支援の基本的な考え方や新たな新規事業創出支援策について、既存の施策実施と併せて効率的な施策推進を図る必要がある。このため、国、県、(財)沖縄県産業振興公社などの関係者で構成する連絡会議を設置するなどして、各施策の進捗状況や情報交換などを行う協力体制を確立する必要がある。


別紙3

ゼロエミッション・アイランド沖縄構想推進調査[沖縄県](結果概要)

1 構想の基本的理念と目標
 本構想は、沖縄の特性・優位性に着目して、環境と産業が両立する取組を体系化し、具体的施策の展開により環境共生モデル地域の形成を目指す。

2 沖縄県における環境問題等の現状と課題
(1)環境問題の現状と課題
(2)自然エネルギー等の導入の現状と課題
(3)環境分野における企業等の先進的取り組みと技術開発の動向

3 構想推進の基本的考え方
(1)構想推進の基本方針
  1. 環境負荷の少ない循環型社会システムの構築
  2. 持続可能な経済発展に向けた資源の選択及び効率的な運用
  3. 産業振興、雇用促進につながるような環境保全事業、環境関連ビジネスの事業化推進
  4. 美しい自然と豊かな暮らしを守るためのライフスタイルづくり
  5. 沖縄からアジア、世界への情報発信
(2)構想推進のための方策
  1. 社会システムの整備
  2. 環境保全技術の開発・活用

4 施策の基本方向
(1)自然環境に配慮した県土の保全・整備 (ア)沿岸域(海岸、湖岸、河岸)の環境保全と利用促進
  1. 沿岸域や湿地等における環境の保護・再生
  2. 環境保全・自然調和型事業の推進
(イ)森林環境の保全と利用促進及び野生生物等の保護
  1. 森林環境の保全と利用促進
  2. 森林に生息する野生生物の保護
(ウ)沖縄の風土環境に適したまちづくり・村づくりの推進
  1. 公共空間の緑化と自然生物生息空間の保全・再生
  2. 沖縄らしい文化景観の再生及び建築様式の開発・普及
  3. 環境に優しいまちづくりの推進
(エ)環境保全型農林水産業への転換推進
  1. 農林水産業における環境汚染防止対策と自然保護・再生の推進
  2. 低環境負荷型農業の推進
(オ)循環型県土形成の推進
  1. 環境創造型事業の推進方策の検討
  2. 循環型県土形成への各主体の参加促進と建設業の環境管理・創造産業への転換促進
(2)自然環境を活かした観光産業の高度な展開 (ア)環境共生・体験型観光の促進
  1. エコツーリズム、グリーンツーリズム、ブルーツーリズムの促進
  2. 自然環境の健全な利用のための基盤整備
(イ)温暖な気候と地域資源を活用した長期滞在型観光の促進
  1. 地域間交流事業の促進
  2. 長期滞在を可能とする基盤整備
(3)自然エネルギー等の導入の促進 (ア)風力・太陽光発電等の導入の促進
  1. 離島等における自然エネルギー等の導入の促進
  2. 自然エネルギー等の導入推進体制の構築
(イ)燃料電池等新エネルギー導入の促進
  1. 新エネルギーを活用した環境負荷の低い地域づくりの促進
  2. 新エネルギーの計画的導入・普及の促進
(4)環境関連ビジネスの企業化の促進と資源の地域内循環の推進 (ア)環境産業クラスター形成の促進
  1. 環境関連ビジネスの企業化の促進(バイオマテリアル事業等)
  2. リサイクルや廃棄物処理を行う施設の整備
(イ)資源循環型農業等の推進
  1. 「さとうきび」ハイテク産業化事業
  2. 泡盛廃もろみの有効利用の促進
  3. 有機系廃棄物のバイオガス・コンポスト化の推進
(ウ)建設廃材のリサイクル及び廃棄物の建設資材化の推進
  1. 建設廃材のリサイクルの推進
  2. 廃棄物の建設資材化の推進
(エ)島しょ型資源循環システムの構築
  1. ゼロエミッション地域形成モデル計画の策定
  2. 地域間の連携の促進
  3. 生ごみの循環システムの整備
  4. 容器包装物や処理困難物におけるデポジット制度の導入
  5. モデル地区での資源ごみの集団回収の実施や分別収集の高度化
  6. 処理困難物の適正処理の推進
(オ)複合・集中的なリサイクル・廃棄物処理施設の整備
  1. 複合・集中的なリサイクル・廃棄物処理施設の整備
  2. 廃棄物処理施設や焼却・溶融施設等の適正配置等の検討
(5)社会システムの整備と環境保全技術の開発・活用 (ア)社会システムの整備
  1. 普及啓発の推進
  2. 法制度の整備
  3. 経済的手法の活用
  4. 環境関連情報の整備
(イ)環境保全技術の開発・活用
  1. 産・学・官等の関係者による情報交流の促進
  2. 共同研究のパートナーとなりうる中堅企業の育成
  3. 人材、情報、研究機関及び関連施設の集積

5 構想の実現に向けた具体的取り組み
(1)目標及び推進スケジュールの設定と進捗状況の点検
 具体的対策について、個別分野ごとにスケジュールを作成し、計画的な施策推進を図る必要がある。
(2)関係者の役割分担の明確化と協力体制の確立
 事業者、県民、行政、各種教育・研究機関の役割分担を明確化するとともに、その相互チェック等を行いうる協力体制を地域レベルで確立する必要がある。
(3)具体的な施策展開

おわりに

 沖縄経済の自立化に向けた県民あげての取組が期待されており、政府においては、そうした取組に対する積極的な支援が求められるところである。本プランは、こうした要請に応えて、その環境整備に向けての経済振興策の在り方を示したものである。
 本プランの示す政策の具体的効果については、政府としての取組の積極姿勢とともに、国、県、市町村及び民間の各主体が、それぞれの役割の認識の下でいかに相互に連携・協力を図りながら取り組むかにもかかっていることを併せて指摘しておきたい。
 なお、本プランは、経済振興の視点を中心としてとりまとめたものであり、社会開発的な視点は基本的に織り込んでいない。他方、沖縄に関する社会開発を含む総合的な計画としては、これまで沖縄振興開発特別措置法に基づく振興開発計画があり、現在の第三次振興開発計画は、平成13年度末をもって終了する。本プランについては、こうした中で、先に「今後の取組」に示したとおり、今後の社会開発的な視点を含む沖縄振興策全体の論議の場となる、いわゆる「ポスト三次振計」の検討の場において、経済振興面に関して十分活かしていくこととしたい。