▽新年一般参賀について………………宮 内 庁
警察白書のあらまし
第1章 国境を越える犯罪との闘い
第1節 国境を越える犯罪の現状
1 グローバリゼーションの治安への影響
(1) グローバリゼーションの諸要素と治安との関係
ア ヒトの移動
近年、我が国の国境を越えた日本人及び外国人の数は、格段に増加している。
このようなヒトの国境移動は、合法的なものに限らず、不法なものも同様に増加している。退去を強制された不法入国者の数は、十年には七千四百七十二人であり、昭和五十五年の約十二・五倍、平成元年の約三・二倍と急増している。また、近年は集団密航事件が多発していることから、潜在している不法入国者数は相当数に上るとみられる。
国境は、一般的に各国の捜査機関の捜査権限の及ぶ範囲を画するものであるばかりでなく、従来は、犯罪者にとっても、その活動範囲を物理的にも心理的にも事実上制限する機能を有していたが、ヒトの国境移動の増大に伴って、国境の有していた犯罪者の活動範囲を制限する機能も低下してきている。
イ モノの移動
戦後日本経済の成長とともに、対外貿易は大幅に拡大を続けた。貿易の自由化、税関手続の簡素化に伴い、海外の産品を容易に入手し、消費することができるようになった。
しかし、同時に、銃器や薬物といった輸入禁制品の国内への流入も続いている。国内において不法に所持されている銃器・薬物のほとんどは密輸入されたものとみられるが、国内で押収されたけん銃の数は、過去十年間、毎年ほぼ一千丁台に達しており、薬物についても、大量薬物密輸入事件が相次ぎ、「第三次覚せい剤乱用期」という深刻な状況にある。
ウ カネの移動
我が国は、貿易や投資を通じて対外的な資本取引を拡大してきた。また、金融ネットワークの発達と規制緩和により、企業や個人が銀行等を通じて海外へ資金を容易に移動させることができるようになった。さらに、個人レベルでの国際的な支払いについても、国際的に利用可能なクレジットカードによる決済が一般的になるとともに、電子マネーのような新たな決済システムの導入も試みられている。
国際的な金融決済における利便性の向上は、犯罪者に対しても大きな「恩恵」を与えている。第一に、犯罪のための資金や犯罪によって得た収益を、国境を越えて瞬時に移動することが可能となり、捜査当局がこうした資金の国境移動を捕捉することは非常に困難となっている。第二に、犯罪収益が、銀行における顧客秘密の保護が厳格な国や地域に送られた場合、捜査当局がその海外送金先を追跡し、没収することは極めて困難となっている。第三に、電子データの偽変造、データの盗用等の金融システムを悪用した犯罪を、世界中のあらゆる地域から迅速かつ容易に行うことができるようになっている。
エ 情報の移動
情報は、最も迅速に国境間を移動することが可能である。近年における情報通信技術の発達と、インターネットをはじめとする国際的なコンピュータ・ネットワークの展開により、世界中から必要な情報を容易に収集したり、世界中に自ら情報を発信することが可能なサイバー・スペースが現実のものとなっている。これは、同時に、ネットワークを使ったハイテク犯罪、サイバーテロ等の脅威に世界中がさらされていることを意味している。
(2) 治安への影響
グローバリゼーションの諸要素は、独立して治安事象に作用しているのではなく、国際犯罪組織や単独で犯行に及ぶ者が、国際犯罪を引き起こすための各種の手段として、相互に密接な関係を持って作用している。グローバリゼーションの「恩恵」を受けて、国際犯罪組織等は、犯罪にとって最も有利な場所を選択して移動することができ、“相対的”に取締りの弱い国を「抜け穴(ループホール)」として活動することができることとなる。
また、国際犯罪組織等は、全世界を結ぶ基礎的産業基盤(インフラストラクチャー)となっている情報通信ネットワーク、金融・商取引システム等の全世界的システムに対し、そのセキュリティの最も弱い場所を攻撃することによって、社会・経済に大きな損害を与えることが可能となる。
国際犯罪を看過し、国際犯罪組織等の暗躍を放置しておけば、やがては合法的な国際取引や移動に対しても悪影響を与え、グローバリゼーションそのもののメリットを減殺してしまうおそれがある。
こうした犯罪に立ち向かうため、国内において国際犯罪捜査体制の確立、関係法制の整備等を検討するとともに、諸外国と協力して二十一世紀にふさわしい新たな国際捜査協力等の枠組みの構築を図っていくことが急務となっている。
2 警察事象の国際化の概況
(1) 来日外国人による刑法犯
ア 刑法犯の推移
警察庁が来日外国人犯罪について統計を取り始めた昭和五十五年以降、刑法犯の検挙件数、人員は徐々に増加する傾向にあったが、平成二年ごろから増加率が一挙に高まり、十年中の検挙件数、人員は昭和五十五年に比べ件数で約二十五倍、人員で約七倍、平成元年と比べても件数で約六倍、人員で約二倍になっている(第1図参照)。
イ 平成十年の刑法犯の特徴
十年における来日外国人による刑法犯の検挙件数は二万一千六百八十九件、検挙人員は五千三百八十二人である。また、来日外国人による重要犯罪・重要窃盗犯の検挙状況をみると、重要犯罪については、検挙件数は三百十五件、検挙人員は三百十人、重要窃盗犯については、検挙件数は五千四百四十四件、検挙人員は六百五十五人となっている。
(ア) 凶悪犯
罪名別でみると、殺人は、過去最高であった九年と比べると若干減少してはいるものの、過去十年間で検挙件数は二・六倍、検挙人員で約二・三倍となっている。強盗の検挙件数及び検挙人員は、統計を取り始めた昭和五十五年以降で最高を記録している。また、強姦の検挙件数も五十五年以降で最高の四十三件となっている。
平成十年中の来日外国人による刑法犯の検挙人員五千三百八十二人のうち、不法滞在者一千三百二人が占める割合は二四・二%であるのに対し、来日外国人による凶悪犯の検挙人員二百五十一人に占める不法滞在者百三十七人の割合は五四・六%と高く、不法滞在者の存在が治安への脅威になっているといえる。
(イ) 窃盗犯
十人以上の共犯者のいる窃盗犯の検挙は、十年中は二千四百八十五件となり、十年中の来日外国人による共犯者のいる窃盗犯の二七・九%を占めている。これは、我が国の共犯者のいる窃盗犯の検挙全体をみたとき、そのうち十人以上の共犯者によるものの割合が三・一%であることと比べると、非常に高いものとなっている。
また、我が国全体の窃盗犯の被疑者一人当たりの平均検挙件数は、元年以降三・〇件前後で推移しているが、このうち来日外国人による窃盗犯の被疑者一人当たりの平均検挙件数は六・二件で、元年中の一・三件に比べると急増している。これらのことから、近年、来日外国人による組織的に反復して行われる窃盗事件の増加がうかがわれる。
(ウ) 知能犯
十年中の知能犯の多くは、偽造クレジットカードを使用した詐欺事件や、身分を証明するための旅券、外国人登録証明書等の公文書を偽造・行使した事件となっている。
ウ 来日外国人犯罪の国籍別検挙状況
十年の検挙状況は、アジア地域が全体の七五・一%と高い割合を占めており、その中で中国は四四・六%を占めている。次いで中南米地域が一六・八%、ブラジルが一〇・〇%を占めている。
近年は、中国人同士の身の代金目的誘拐事件や強盗事件等が多発している。
エ 大都市圏以外の地域への拡散
来日外国人による刑法犯の地域別検挙状況は、十年には関東から近畿地方にかけて増加するとともに、来日外国人犯罪の問題が全国的な問題となっている。
(2) 来日外国人による特別法犯
来日外国人による特別法犯の送致状況は、平成二年ころから急激に増加し、十年中の送致件数、人員は、元年に比べ件数で約四・六倍、人員で約四・九倍となっている。
(3) 薬物問題
ア 来日外国人による薬物事犯
薬物事犯の検挙状況は、平成四年ころから急増し始め、十年中の検挙件数、人員は、統計を取り始めた昭和六十年に比べ件数で約五倍、人員で約四倍となっている。国籍別にみると、イラン人の検挙人員が依然として目立っている。
イ 薬物の密輸入事犯の推移
我が国で乱用されている薬物のほとんどは、国際的な薬物犯罪組織の関与の下に、海外から密輸入されている。
我が国で最も多く乱用されている覚せい剤は、ほとんどが中国で密造されているとみられる。最近、ミャンマー、タイ、ラオスにまたがる「黄金の三角地帯」及びその周辺地域においても、覚せい剤の密造が急増しており、これらの地域から我が国への覚せい剤の密輸入事犯の増大が懸念される。
ウ 平成十年の薬物の密輸入
密輸入の手口としては、船舶での洋上取引、航空貨物、コンテナ貨物等への偽装隠匿、スーツケースの二重底等、手荷物への隠匿、体内への嚥(えん)下等が目立っている。
(4) 外国人犯罪グループによる「地下銀行」及びマネー・ローンダリング
依頼者の金をその本人に代わって国外に不正に送金する業務を行う「地下銀行」が摘発されており、我が国に不法滞在する外国人が、旅券等による本人確認を求められる正規の海外送金システムを避け、犯罪や不法就労で得た収益等を本国へ送金していた。
薬物犯罪に係るマネー・ローンダリングは、麻薬特例法に規定する不法収益等隠匿罪(第九条)または不法収益等収受罪(第十条)として処罰されるとともに、不法収益等が没収されることとなっている。十年には、薬物不法収益の海外送金を初めて第九条違反で検挙した。
(5) 不法入国・不法滞在者問題
依然として就労を目的として来日する外国人は後を絶たず、観光等の在留資格で入国したにもかかわらず就労をし、また、在留期間の経過後に、不法残留をしながら就労するなどの不法就労者もいる。これらは、主として、いわゆる単純労働に従事している。
不法就労者の大半は不法滞在者であるとみられ、潜在的な不法滞在者は相当な数に上るとみられている。就労目的で来日した不法滞在者の中には、不法就労よりも効率的に利益を得る手段として、犯罪に手を染める者も多く、大量の不法滞在者の存在は、来日外国人による犯罪の温床となっている。
ア 国籍、地域別の不法残留者及び不法入国者の状況
法務省の推計による不法残留者数は、国籍、地域別にみると、韓国が六万二千五百七十七人と最も多く、次いでフィリピン、中国、タイとなっている。
また、十年中、警察及び海上保安庁が検挙した不法入国者は一千四百八十三人であり、国籍、地域別にみると、中国が一千百三十六人と最も多く、次いでバングラデシュ、フィリピンとなっている。
イ 集団密航事件の多発と悪質化
十年中に警察及び海上保安庁が検挙した集団密航事件は六十四件、一千二十三人で、依然として多発傾向が続いている(第1表参照)。また、国籍別では、中国が全検挙人員の約八割を占めた。
この背景には、国際的な密航請負組織の関与があり、特に中国からの密航にかかわるものとして「蛇頭」と呼ばれる国際犯罪組織がある。
警察は、集団密航事件、とりわけ密航請負組織の摘発に努めており、これらの請負行為に適用するため、九年に入管法に新設されたいわゆる集団密航に係る罪等で、十年中に百五十三人を検挙した。
ウ 不法滞在を助長する文書偽造事件等の多発
十年中も合法的な入国・在留を装うための文書偽造事件が多発し、偽造旅券を使用した不法入国事件の検挙件数は、国籍別では中国、フィリピン、タイの順であった。また、日本人の配偶者として在留資格を不正に取得する偽装結婚事件も検挙している。ほかにも、正規在留者を装うための在留資格認定証明書の交付申請書類偽造事件等も摘発されている。
エ 雇用関係事犯
就労を目的として入国する外国人の数は、依然として高水準にある。原因の一つとして、外国人労働者を雇用しようとする者や、就労あっせんブローカーの存在が挙げられ、一部暴力団の関与するケースもみられる。雇用主の中には、彼らを低賃金で雇用する者がみられ、ブローカーは、外国人労働者と雇用主との間に介在して不当な利益を得るなどしている。
また、外国人労働者に係る雇用関係事犯のうち、外国人ブローカーが日本人ブローカーと結び付いて、外国人労働者をあっせんするケースもみられる。
(6) 女性・児童の性的搾取問題
短期滞在、興行等の在留資格で入国し、風俗関係事犯に関与する外国人女性は依然として多いが、これらの外国人女性は、深夜飲食店等における接待行為、さらに、売春、わいせつ事犯等にまで関与しており、地域的にも大都市圏以外の地域にまで広がりをみせている。
風俗営業等に従事する外国人女性の中には、現地及び国内のブローカーにだまされて我が国に連れてこられ、売春を強要されるなどの被害に遭う事案が目立っている。
また、日本人による海外での児童買春行為や、我が国から発信される児童ポルノのインターネット上での氾濫が、国際会議や海外のマスコミ等で取り上げられるなど、児童買春・児童ポルノ問題は国際的に関心を集めている。
(7) 銃器の流入
ア 銃器の密輸入事犯の推移
これまでのけん銃密輸入事犯の摘発事例をみると、航空貨物や国際郵便を利用するものが多くみられるが、大量に密輸入される場合には、貨物船や漁船が利用されている。その手口については、最近では、密輸を小口化するなど巧妙化している。仕出国についても、従来の米国、フィリピン、タイに、ロシア、中国等が加わるなど多様化しており、密輸情報の収集や国内外の関係機関との連携強化による水際監視の徹底等が一層重要となっている。
イ 平成十年の銃器の密輸入
十年中に押収された真正けん銃の製造国は米国が最も多く、次いで中国、フィリピンの順となっており、相当数は犯罪組織により密輸入されたものと考えられる。
十年中のけん銃密輸入事犯で押収したけん銃の仕出国は、フィリピン、タイのほか、ロシア、韓国となっている。
(8) 被疑者の国外逃亡事案等
犯罪を引き起こした後、国外へ逃亡する者の数は、十年末現在では三百八十一人と、過去十年間で最も多い。そのうち九十三人が日本人であり、フィリピン、米国に多く逃亡しているとみられる。外国人の国外逃亡被疑者を国籍、地域別でみると、中国が最も多く、次に韓国となっている。
十年末現在の日本人を含む国外逃亡被疑者のうち、出国年月日の判明している百十人について、出国までの期間をみると、犯行から十日以内の短期間のうちに四十四人が出国している。
警察では、被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合は、出国前の検挙に努め、出国した場合でも、関係国の捜査機関等の協力を得ながら、被疑者の所在を確認し、また、国際刑事警察機構に対し、国際手配書の発行を請求するなど、被疑者の発見及び検挙に努めている。
日本人の逃亡被疑者が発見されたときは、逃亡犯罪人引渡しに関する条約又は相手国の国内法、国外退去処分等により、その者の身柄の引取りを行っている。
3 我が国における国際犯罪組織の活動状況
(1) 外国に本拠を置く国際犯罪組織
近年、外国に本拠を置く国際犯罪組織の活動が全国的にみられるようになった。
ア 蛇頭
平成十年中の集団密航事件に係る全検挙人員の約八割を中国人が占めるが、中国人による集団密航事件の多くには、「蛇頭」と呼ばれる国際的な密航請負組織の介在がみられる。
一般に、集団密航事件の背後には蛇頭の関与がみられ、集団密航事件の多発の大きな原因となっている。最近では、暴力団員とも連携して我が国に進出し、請負料の取立てをめぐる監禁、誘拐、殺人等の凶悪事件を引き起こす例もみられる。
イ 香港三合会
香港の犯罪組織の総称であり、我が国では、貴金属店における強盗・窃盗事件や広域にわたる偽造クレジットカード使用詐欺事件等の犯罪を引き起こしている。
ウ 韓国人すりグループ
韓国人によるすりは、四、五人がグループを組み、短期滞在の在留資格等により短期間滞在して、広域にわたりすりを行うものであり、犯行が発覚すると、刃物や催涙スプレー等を用いて警察官や被害者に抵抗し、逮捕を免れようとするところに特徴がある。
(2) 国内に居住する外国人犯罪者のグループ化
我が国において不法滞在者等が、より効率的な利益の獲得を目的として、国籍、出身地等の別によりグループ化し、悪質かつ組織的な犯罪を引き起こしている。最近では、国籍や出身地の枠を越えて連携する事件もみられる。
ア 中国人犯罪グループ
中国人犯罪グループ間の利権争いを原因とする殺人事件等の凶悪事件のほか、貴金属店、衣料品店等を対象とする広域窃盗事件、変造通貨を利用した自動販売機荒らし事件等が検挙されている。最近では、大規模な薬物の密輸入に、受け手として介在するものもみられる。
イ ベトナム人犯罪グループ
一般住宅の駐車場や家の倉庫に駐車中のオートバイ等や、店内に陳列してある電気製品、日本製の化粧品等を大量に盗み、組織的に海外へ輸出する事案等が検挙されている。
ウ ブラジル人犯罪グループ
日系ブラジル人グループによる広域にわたる自動車盗、侵入盗等の窃盗事件等が検挙されている。また、ブラジル人少年が関与する犯罪に増加がみられる。
エ イラン人薬物密売組織
来日イラン人による薬物事犯は、十年も引き続き高水準で推移しており、その多くは不法滞在者によって敢行されている。また、十年中のイラン人による覚せい剤事犯の検挙人員のうち営利犯が占める割合は三〇・〇%で、来日外国人による覚せい剤事犯の検挙人員全体のうち営利犯の占める割合が一三・三%であることと比較すると、イラン人による薬物事犯は、単純な自己使用等の目的ではなく密売目的で敢行される傾向が強い。
イラン人密売組織は、複数の薬物を街頭で無差別に売りさばくという密売形態を通じて、「第三次覚せい剤乱用期」における薬物乱用拡大の要因となっている。最近では、携帯電話等を利用して巧妙に密売を行う事例が急増しており、潜在化・巧妙化の傾向を強めている。
(3) 我が国暴力団とのかかわり
「蛇頭」と暴力団員が連携した中国人の集団密航事件や、中国人女性の不法入国を目的とする偽装結婚事件等が相次いで検挙され、国際犯罪組織と暴力団員が手を組んで、不法入国に係る犯罪を敢行している状況が見受けられた。また、暴力団員らが、来日外国人の組織窃盗事件に関与したり、中国人グループを使った強盗等の凶悪事件を引き起こしたりしている。
第2節 国境を越える犯罪への対応
近年では、警察事象の本格的な国際化に対応するため、警察の総力を挙げた体制を構築する時代に入ったということができる。とりわけ、国の警察機関である警察庁の外国治安担当機関のカウンターパートとしての役割が、近年、高まりつつある。
1 我が国警察の国際犯罪対策
近年急増している来日外国人犯罪の捜査については、次のような特徴が認められる。
第一に、来日外国人犯罪は、広域にわたり敢行されているのみならず、同一人が多種多様な犯罪に関与している。
第二に、言葉の壁がある。来日外国人犯罪捜査に際しては、来日外国人被疑者の取調べ及び参考人の事情聴取はもとより、聞き込み捜査や証拠資料の分析においても外国語の能力が必要である。
第三に、被疑者の身元確認及び所在確認の困難性がある。
警察では、以上のような点を考慮し、具体的に以下のような対策に取り組んでいる。
(1) 取締り体制の確立と法制の整備
ア 国際捜査体制の整備
警察庁の体制としては、出入国管理令に規定する犯罪の捜査等を所掌する警備第二課が設置され、昭和三十六年に外事課と改称されて現在に至っている。
平成六年には、国際刑事課が所掌していた事務を含めた国際協力業務、外国の警察行政機関等との連絡及び来日外国人問題への対応を統一的かつ効果的に推進する体制を整備することを目的として、国際部が設置された。
都道府県警察では、外事部門を担当する課が設置されており、また、その他の各事件主管課がそれぞれ来日外国人犯罪に対処している。主なものとして国際犯罪捜査を担当する国際捜査課が、昭和六十三年に全国で初めて警視庁に設置され、また、十年には警視庁に外事特別捜査隊及び国際組織犯罪特別捜査隊が設置されるなど、専任捜査体制を拡充している。
また、警察庁に「来日外国人犯罪対策室」を設置し、各都道府県警察にも同様の組織を置いていたが、十一年五月、これを発展的に改組して「国際化対策委員会」を設置し、犯罪対策のほか、来日外国人に係る防犯・保護等の諸対策及び国際情勢に的確に対応する諸対策を、総合的に推進することとした。
イ 国際捜査力の強化
(ア) 国際捜査官の育成
国際犯罪の捜査に従事する警察官には、外国語はもとより、国際捜査共助、刑事手続等に関する条約その他内外の法制等、極めて幅広い分野に関する特別の知識、手法が要求される(第2図参照)。
昭和六十年には、警察大学校の附置機関として国際捜査研修所を設立し、国際捜査に関する実務研修、アジア諸国の言語を中心とした語学教育、海外研修等を実施している。
都道府県警察においても、国際捜査に従事する捜査員に対する教育や、通訳担当者も参加する実務的な語学研修等を実施するとともに、平成六年度からは、特に高い語学能力を備えた者を国際犯罪捜査官として特別に採用し、国際捜査力の確保に努めている。
(イ) 通訳体制の整備
来日外国人被疑者の人権に十分に配慮した適正な捜査を推進するために、都道府県警察においては、高い語学能力を備えた者を警察職員として採用し、取調べにおける通訳等に当たらせている。
また、アジア系言語等の通訳者の需要が急増し、警察部内でそのすべてに対応することは極めて困難なため、取調べにおける通訳の一部を部外の通訳者に依頼して対応している。
通訳者の運用に当たっては、突発事件に迅速に対応するなどの必要があるため、都道府県警察及び管区警察局に通訳センターを設置するなどして、体制の整備に努めている。
なお、被疑者に対しては、刑事手続の流れ等について各国語の対訳を作成し、適宜被疑者に提示しながら通訳を介して説明するなど、被疑者の権利内容等についての理解の徹底を図っている。
ウ 法制の整備
(ア) 不法入国・不法滞在者問題対策
十一年八月、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律が成立した。改正後の入管法には、いわゆる不法在留罪の新設及び退去強制された者に係る上陸拒否期間を一年から五年へ延長する旨の規定が盛り込まれている。また、平成十二年策定をめどに作業が行われている国際組織犯罪対策条約の移民の密輸(密入国の助長)に関する議定書(注)においても、他国への不法入国の助長等の行為を犯罪化すべき旨の規定が盛り込まれる見通しである。
(注) 現在策定作業中であり、条約、議定書名については、仮称である。以下、その他の策定作業中の条約名についても同様とする。
(イ) 女性・児童の性的搾取問題対策
平成十年四月、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律が改正され、風俗営業者等が接客業務に従事する者に対し、不相当に高額な債務を負担させた上、旅券等を保管する拘束的行為を行うことを禁止する規定等が整備された。
また、十一年五月に成立した児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律には、外国における日本国民の児童買春等を処罰する内容が盛り込まれている。
(ウ) 薬物・銃器の密輸入対策
昭和六十三年に国連麻薬新条約が採択されたことを受け、平成三年十月、国際的な協力の下に、規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るため、麻薬特例法が制定された。
また、七年五月に銃刀法の一部が改正され、けん銃実包の輸入罪等を新設したほか、クリーン・コントロールド・デリバリーを行うための根拠規定等が整備されている。
(エ) マネー・ローンダリング対策
麻薬特例法において、薬物犯罪に係るマネー・ローンダリングの処罰等が規定されている。しかし、薬物犯罪以外の組織犯罪や国際犯罪はマネー・ローンダリング対策の対象となる犯罪(前提犯罪)とされていないことから、我が国は、FATFにおける対日審査等、国際社会の協議の場において批判を受けている。
こうした状況を背景に、十一年八月、通貨偽造、強盗等の一定の犯罪に係るマネー・ローンダリング対策等の規定が盛り込まれた組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律が、成立した。
(2) 関係行政機関及び地域住民との連携
来日外国人問題は、総合的な観点からの対策を必要とする問題であり、各関係行政機関や地域住民との連携が不可欠である。
警察では、関係機関・団体との情報交換を積極的に行い、行政全体として総合的な対策が講じられるように、さまざまな形で働き掛けを行い、都道府県警察では、漁協関係者等と海上合同パトロールを実施するなど、各種協議会等を通じた地域住民との協力活動を推進している。
(3) 国際刑事警察機構(ICPO―Interpol)への貢献
昭和三十一年に国際刑事警察委員会(ICPC)がICPOに改組され、各国の警察機関等が構成員となったことに伴い、我が国からは警察庁がその構成員となった(第3図参照)。以後、ICPOの日本国国家中央事務局(NCB)として積極的に捜査協力を行うとともに、ICPOの機能強化のため、以下に掲げる貢献を行っている。
ア 財政的貢献
ICPOに対して加盟各国が拠出する分担金の中で、我が国は、平成十年度予算で一億九千七百八十万円を拠出しており、その負担率は米国に次いで高く、全体の五・八%を占める。
イ 情報通信に関する支援
東南アジア地域通信局として、同地域内の各国間及びICPO事務総局との間の通信の中継を担当し、また、域内各国に対し、情報通信技術に関する指導、支援を行っている。
ウ 人的貢献
ICPO事務総局警察局長に警察庁職員が就任したほか、多くの警察庁職員がICPO事務総局に派遣され、組織の運営に携わってきた。
また、平成八年には警察庁国際部長が第十五代総裁に選出されており、ICPOの代表として運営をリードしているほか、警察庁職員は、ICPOの活動方針の決定や事務総局の監督等を行う執行委員会の構成メンバーである副総裁や執行委員に度々選出されてきた。
(4) 外国捜査機関との協力
国際犯罪の増加に伴い、外国捜査機関に対する各種照会や証拠資料の収集の依頼等を行うことが一層重要になっており、警察庁では、ICPOルートや外交ルート等により、外国捜査機関と情報交換等を行っている。また、国際捜査共助法に基づいて外国からの要請に応じて捜査共助を実施した件数の大半は、ICPOルートによるものである。
さらに、警察では、国際犯罪を効果的に捜査するため、外国捜査機関との協力関係の強化に努め、具体的な事件について情報交換や共同捜査を推進している。
(5) アジア諸国との地域的連携の強化
中国との間においては、十年には、国家公安委員会委員長の訪中による中国公安部長との初の閣僚級会合を開催し、国際組織犯罪対策について、実務レベルでの協議を更に一層進めていくことで合意した。同年の江沢民・中国国家主席の来日時における小渕首相との首脳会談の際には、各種の国際犯罪対策の面で協力を強化すること、薬物犯罪の取締りについて引き続き協力していくことなどが合意された。
また、近年、覚せい剤の密造は、「黄金の三角地帯」及びその周辺の国々に拡大しているため、国連薬物統制計画(UNDCP)と協力して、外務省と共催で「一九九九アジア薬物対策東京会議(ADLEC Tokyo)」を開催した。
(6) 外国警察に対する技術協力
我が国警察は,発展途上国の警察機関への技術協力等を行うなど、国際貢献を継続して行っている。
ア 技術協力の推移
警察庁と国際協力事業団(JICA)との共催により、外国の警察幹部を対象とした国際研修を開催している。また相手国の担当者を我が国に招いて指導を行うだけでなく、JICAの依頼により、鑑識技術等の専門家を各国に派遣し、積極的な技術移転を進めている。
イ 平成十年における警察活動に関するセミナー等の実施
十年中に実施したセミナーでは、特に、「パキスタン女性警察官セミナー」の中で、「女性警察官の現状と課題」と題するパネルディスカッションを開催した。
ウ 十年における専門家の派遣
十年には、JICAからの依頼により鑑識専門家をフィリピン、モンゴル、南アフリカ等に派遣し、指紋鑑識等の技術指導を実施したほか、交番制度等の技術協力を推進した。
(7) 来日外国人の生活の安全を確保するための活動
外国人は、生活習慣の相違等から、地域の安全に関する情報を入手し難い立場に置かれている。警察では、各種の保護活動を展開している。
(8) 海外における邦人の安全対策
近年、国際社会における我が国のプレゼンスが顕著になり、国際テロや、無差別テロが発生する中、我が国の企業の海外拠点、駐在員、観光客等がテロ行為の被害に遭う可能性が高まっている。
警察庁は、恒常的に世界各国のテロ情勢等、治安に関する情報の入手に努め、その分析結果を随時外務省に提供して邦人の海外における安全対策に貢献している。
2 国際社会における国際犯罪対策への取組
(1) サミットにおける取組
ア これまでの取組
サミットでは、早くから薬物やハイジャック、国際テロの問題が取り上げられてきた。薬物問題について初めて取り上げられたのは、昭和六十年のボン・サミットであり、国連麻薬新条約の採択(昭和六十三年)やFATFの創設(平成元年)に至っている。
平成六年のナポリ・サミットでは、国際犯罪問題が薬物等のような個別問題としてではなく、包括した形で取り上げられた。平成七年のハリファクス・サミットでは、今日のG8の国際犯罪対策協議の中核である国際組織犯罪対策上級専門家会合(リヨン・グループ)の設置が決定され、以後、国際犯罪対策は、毎年取り上げられる課題となっている。
なお、リヨン・グループでは、警察庁国際部長が我が国代表団団長を務めているほか、同グループ内に設置された銃器サブグループでは、我が国(警察庁)が議長国となっている。
平成九年のデンヴァー・サミットでは、「コミュニケ」において「国際組織犯罪への取組強化」がうたわれた。同年十二月には米国で、国際組織犯罪関連では初めてのG8司法・内務閣僚級会合が開催され、我が国からは警察庁長官、法務事務次官が出席した。同会合では、特にハイテク犯罪対策について議論され、「ハイテク犯罪と闘うための原則と行動計画」が策定された。
平成十年五月のバーミンガム・サミットでは、主要議題の一つとして、初めて国際犯罪が取り上げられた。
同サミットの「コミュニケ」で、まず、国際犯罪についての基本的な認識が示された。具体的には、グローバリゼーションの進展が同時に国際犯罪の劇的な増加をもたらすことになったこと、これらの犯罪は世界的な脅威となっていること、この脅威と闘うためには国際的な協力が不可欠であることが示された。続いて、リヨン・グループのこれまでの作業を評価し、G8各国における更なる取組の強化を要請するとともに、薬物と国際犯罪に対する諸対策が示された。これらの諸対策は、国連における国際組織犯罪対策条約の平成十二年までの策定、ハイテク犯罪対策、マネー・ローンダリング対策、人の密輸対策、犯罪収益を用いた贈収賄対策等における国際協力を主な内容とするものであった。
また、同年十二月には、初めて同時テレビ会議方式により、G8司法・内務閣僚会議が開催され、我が国からは、国家公安委員会委員長及び法務大臣が参加し、各国の閣僚等が、国際組織犯罪対策やテロリストの資金調達問題について率直な意見交換を行った。
イ ケルン・サミット
平成十一年六月、ドイツにおいてケルン・サミットが開催された。八か国共同による「コミュニケ」で、国際組織犯罪が世界中の政治、金融及び社会の安定に与える脅威について言及され、これと闘うため引き続き国際的な努力をしていくことが示された。この関連で、リヨン・グループ等の国際組織犯罪及びテロリズムに関するそれぞれの上級専門家グループが行っている現在の取組を賞賛し、国連における国際組織犯罪対策条約及び議定書についての交渉の早期終結に向けた作業を引き続き行うとともに、テロリズムに対する資金供与に関する国連条約の交渉を迅速に進めるよう要請した。こうした取組については、平成十二年に我が国が議長国となるサミットにおいて、改めて各上級専門家グループが各国首脳に報告することとされた。このほか、薬物については、平成十年の国連総会麻薬特別会期における採択文書が積極的に実施されるよう再確認された。また、汚職問題については、国連の国際組織犯罪対策条約において、公務員の関与する汚職行為を犯罪化するよう求めている。
サミットにおけるG7首脳声明では、マネー・ローンダリングを含む金融犯罪について「金融犯罪との闘いは、各国の政策及び国際的政策における優先課題の一つであり続けなければならない。」との認識が示された。また、金融犯罪との闘いにおいて、規制が不十分で非協力的な国・地域がもたらす問題について懸念が表明され、この問題に対し、現在FATFが進めている取組を支持するとともに、各国の大蔵大臣に対して、法務・内務大臣等と協力し、諸対策を実施するよう要請した。
(2) 国際連合における国際組織犯罪対策条約策定への取組
平成六年に国際組織犯罪世界閣僚会議で採択された「ナポリ政治宣言及び世界行動計画」において、各国の法制度の相違等による困難を克服しつつ、国際組織犯罪に対し効果的に対処できるよう、締約国間の協力を促進することを目的とした、国際組織犯罪対策条約の検討が提唱された。これを契機に、平成十年十二月、国連総会において、本条約の策定の討議と女性・児童の不正取引、銃器の密造及び不正取引、移民の密輸(密入国の助長)の三つの分野に関する議定書の策定の討議を目的とした政府間特別委員会の設立が決議された。
本条約においては、共同謀議・犯罪組織加入の処罰化、マネー・ローンダリングに係る措置、公務員の汚職、裁判管轄、犯罪人引渡し、捜査・司法共助、国際資産没収、被害者・証人の保護等に係る条項で構成される見込みとなっている。
また、各議定書に関しては、不正取引された人の保護、銃器の製造・取引記録の保存、海上における密航船に対する措置、旅券等の偽造防止等を含むさまざまな事項が検討の対象とされている。
我が国は、同委員会の副議長国(九か国)のうちの一つに選出されており、これらの条約が実効あるものとなるよう、積極的にその審議に参加している。警察庁職員も我が国代表団に参加し、銃器の密造及び不正取引に関する議定書についての議論をリードするなどしている。
(3) 金融活動作業部会(FATF)等における国際的マネー・ローンダリング対策
マネー・ローンダリングを防止するとともに、緊密な国際捜査協力を行っていくため、複数の国際フォーラムが形成されている。
特に、国際社会における議論では、マネー・ローンダリング対策の対象となる前提犯罪を、薬物犯罪以外にも拡大すべきことが取り上げられている。
ア FATFにおける活動
FATFは、平成元年のアルシュ・サミットで設置が決定されたマネー・ローンダリング対策に関する国際協力を推進するための国際フォーラムである。
平成二年には、包括的な諸対策を示した「四十の勧告」を策定し、平成八年には、前提犯罪の拡大、疑わしい取引の届出の義務化等を内容とする大幅な改訂を行った。
FATFでは、「四十の勧告」の適正な実施を図るため、参加国が互いに勧告遵守状況を監視しあう相互審査を実施しており、我が国に対しては、二回審査が行われた。
第二回目の対日審査では、疑わしい取引の届出件数が他国に比べて少ないことなどを挙げて、我が国のマネー・ローンダリング対策が効果的でないと厳しく指摘がなされる一方で、当時立案中であった組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律にみられるような、我が国の取組を歓迎する旨の報告書がまとめられた。
現在、FATFは、マネー・ローンダリング対策を世界的規模に拡大し、規制の「抜け穴」を塞ぐことに主眼を置き、FATFのメンバー国を拡大し、関係する地域・機関との連携を強化していくことが計画されている。
イ エグモント・グループの活動
犯罪収益は、異なる幾つかの金融機関に預けられたりすることもあることから、マネー・ローンダリングを探知するためには、金融機関が認知した疑わしい取引の情報を効果的に収集するとともに、国際的な情報交換を行うネットワークを構築することが重要である。疑わしい取引情報を一元的に収集、分析して捜査機関に提供するFIUと呼ばれる政府機関が、各国において相次いで設立されている。
平成七年、ベルギーのエグモント宮殿でFIU機能を持った各国機関が非公式に会合を開催した。この会合はその後毎年開催されており、エグモント・グループと呼ばれている。我が国においては、一九九五年の第一回会合以降、警察庁が連絡窓口になって会議に出席してきた。平成十一年八月、我が国のFIU機能を金融監督庁に付与するための組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律が成立した。
ウ アジア・太平洋マネー・ローンダリング対策グループ(APG)の活動
マネー・ローンダリングと闘うための国際的な取組強化の動きは、カリブ地域、欧州地域、アジア・太平洋地域といった各地域においても進展している。FATFは、マネー・ローンダリング対策を全世界的に拡大するとしており、アジア・太平洋地域における取組の強化にも注目してきた。平成九年タイで開催されたFATF第四回アジア・太平洋マネー・ローンダリングシンポジウムにおいて、APGの設置が決定され、我が国もその参加国の一つとなった。第一回APG年次総会は、平成十年三月に東京で開催された。
(4) ICPOの活動
ICPOは、国際犯罪捜査に関する情報交換、犯人逮捕と引渡しに関する円滑な協力の確保等の国際的な捜査協力を迅速、的確に行うための、各国の警察機関を構成員とする国際的な機関である。現在の本部は、国際犯罪に関する情報の収集や交換のほか、逃亡犯罪人の所在確認や身柄の確保を求める国際手配書の発行、各種国際会議の開催等、多岐にわたる活動を行っている。
(5) その他の取組
犯罪の国際化に伴い、その防止及び捜査のために、国際的な対策の実施、関係国間の情報・資料の交換等が必要不可欠となっている。
このため、サミット、国連、ICPOのほかにも数多くの多国間または二国間の国際会議が設定され、犯罪問題について議論がなされるようになっている。
3 今後の課題
(1) 国内における総合的取組体制の確立
警察における国際犯罪対策は、国際組織犯罪の実態解明と検挙の推進を中心とするが、このためには、捜査能力と語学能力の双方を兼ね備えた捜査員、優秀な通訳専門職員等が不可欠である。特に外国捜査機関との共同行動を展開していくためには、アジアの言語を中心とした高度の語学能力を有するとともに、国際犯罪捜査のノウハウに精通した捜査員をより多く確保、育成していかなければならない。また、警察全体としても、国際組織犯罪に対応した新たな捜査手法を開発していく必要がある。
さらに、国際犯罪は、社会・経済のグローバリゼーションに由来するものであることから、その根本的な解決のためには、諸外国との協力はもとより、関係行政機関や産業界が連携して総合的に取り組んでいかなければならない。関係行政機関と産業界との連携については、国際的にも求められている。これは例えば、国際会議の場においてマネー・ローンダリング対策やハイテク犯罪対策の分野で、プライバシーの保護や産業界のコストといった課題と、どう調整しながら枠組みを構築していくかが議論されていることに表れている。我が国としても、こうした国際的な動きに対応していくことが必要である。
(2) 捜査・司法共助の分野での条約締結の動き
現行の国際捜査共助法においては、外国からの共助の要請は、緊急その他特別の事情がある場合を除いて、当該外国による相互主義の保証その他の要件が充足されている場合に、外務大臣及び法務大臣を経て警察に伝えられ、その結果収集された証拠は、その逆に法務大臣及び外務大臣を経て外国に提供されることとされている。諸外国においても、おおむね同様の手順を経て共助が実施されている。
共助の要請は、口上書その他の外交文書により、個別の相互主義の保証の下で行われることが通例であるが、要請を受けた国が実際に共助を行うか否かは、国家間で一般的に行われている便宜、好意等に関する慣習である国際礼譲に期待するほかなく、国際的な義務とはなっていない。そのため、捜査に必要な証拠が入手できるか否かは不確実で、国際的な犯罪捜査を円滑に行う上で支障となる場合もある。
このことから、国際社会では、円滑な捜査・司法共助の実施を通じて国際組織犯罪を効果的に阻止するなどのため、捜査・司法共助の分野での条約締結の動きもみられる。捜査・司法共助に関する条約の締結は、一定の共助の実施を両国間で義務とし、個別の相互主義保証を不要とするほか、相手国の刑事事件の捜査に必要な証拠の提供、その他の援助の円滑な実施の確保にその目的がある。また、このほか、国連において国際組織犯罪対策条約及び三つの議定書の策定に向けた審議が進められており、我が国も積極的に審議に参加するなど、国際社会における捜査・司法共助の分野の新たな動きに対応している。
(3) 国際社会の取組への積極的な協力
これまでみたように、国際社会における国際犯罪問題への取組は近年急速に広がりをみせている。こうした取組は、しばしば新たな犯罪に対抗するための刑事司法や法執行の枠組みを再構築することを求めている。我が国としても、犯罪の「抜け穴」を作らないよう、こうした取組に協力し、二十一世紀に向けて新たな国際犯罪対策のスタンダード作りに積極的に参加していくことが極めて重要である。
ア 次期サミット及びリヨン・グループ作業への貢献
ケルン・サミットでは、国際犯罪対策等について、平成十二年の我が国でのサミットにおいても、各国首脳への報告が求められることとなったことから、国際犯罪対策については引き続きリヨン・グループを中心として作業を進めていくこととなる。特に、平成十二年は、我が国がリヨン・グループの議長を務めることから、国際犯罪対策の推進のために国際社会において果たすべき責務はますます大きくなると考えられる。
また、国連国際組織犯罪対策条約については、三つの議定書とともに、我が国が議長国である平成十二年中に締結することとなっており、我が国が果たすべき役割は非常に大きい。
一方、金融犯罪、マネー・ローンダリングに対する取組においても、経済的に重要な地位を占める我が国が積極的に参加していくことが求められる。
イ アジアにおける国際犯罪対策の推進
主要国間の取組に加え、アジア地域においても国際犯罪対策の推進に我が国がリーダーシップをとっていくことが求められる。アジア地域とは、薬物の供給と需要、あるいは不法入国と来日外国人犯罪、「地下銀行」による海外送金といった形で、犯罪の面でも深いつながりを持っており、アジア地域の犯罪対策は我が国の治安にとっても重要な問題である。こうした観点から、これまでも国際犯罪対策の分野において、技術協力のほか種々の協力を行っている。
法を執行する立場にある警察は、今後、一層アジア地域の各国と連携して、国境を越える犯罪対策の強化を図っていかなければならない。
第2章 生活安全の確保と警察活動
平成十年には、少年非行の凶悪・粗暴化、一般市民が被害者となる発砲事件、大量の覚せい剤密輸入事件、景気低迷下での多重債務者の弱みに付け込む金融事犯、悪質な産業廃棄物事犯をはじめ、市民生活の安全と平穏を脅かすさまざまな問題が発生した。
警察では、これらの状況に的確に対応するため、地域住民、企業、自治体等との協働による地域安全活動の強化、地域の「生活安全センター」としての交番の基盤整備等に努め、地域住民に身近な犯罪、事故の予防活動、犯罪の検挙活動等を行うとともに、少年の非行防止、けん銃等の摘発及び供給の遮断、薬物乱用の防止、良好な風俗環境の保持、正常な経済活動の確保のための諸対策等を強力に推進することとしている。
第3章 犯罪情勢と捜査活動等
平成十年の刑法犯認知件数は二百万件を超え、戦後最高を記録した。このような情勢で特に際立ったのは、「和歌山市園部における毒物混入事件」をはじめとする、毒物等混入事件の相次ぐ発生であった。そのほか、強盗事件や金融・不良債権関連事犯等の増加も目立っている。
このような情勢に的確に対応するため、警察では、広域捜査力、専門捜査力、科学捜査力、国際捜査力の強化や、国民協力の確保等の諸施策を講じ、捜査力の充実強化を推進している。
また、ハイテク犯罪の平成十年中の検挙件数は四百十五件と急増している。警察庁では、体制及び法制の整備等を内容とする「ハイテク犯罪対策重点推進プログラム」を公表し、これに基づいて、警察法の一部改正等による技術対策課の設置や、不正アクセス対策法制の整備を行うなど、施策を積極的に推進している。
第4章 暴力団総合対策の推進
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」という。)の施行を契機とした暴力団排除気運の高まりと取締りの一層の強化により、暴力団は、社会から孤立しつつある。しかしながら、その資金獲得活動は、社会経済情勢の変化に対応して一層多様化、巧妙化しつつあり、けん銃を使用しての凶悪犯罪等は、依然として市民社会にとって大きな脅威となっている。また、総会屋の活動についても、引き続き徹底した警戒が必要である。
このような情勢の下、警察は、暴力団犯罪の取締りの徹底、暴力団対策法の効果的な運用及び暴力団排除活動の推進を三本の柱とした、暴力団総合対策を強力に推進している。
第5章 安全かつ快適な交通の確保
自動車は、現代社会に欠かすことのできない移動・輸送手段であり、そのもたらす恩恵は計り知れない。しかしその一方、交通事故によって毎年多くの尊い人命が失われ、負傷者も増加の一途をたどり、また、交通事故に伴う経済的損失もばく大なものとなっている。平成十年も、交通事故死者数は六年連続して減少したとはいえ、九千二百十一人を数え、負傷者数は九十九万六百七十五人と、昭和四十五年の記録を更新し、過去最悪となるなど、依然として厳しい情勢にある。
警察は、交通の安全と円滑を確保するため、交通安全教育、免許行政、交通指導取締り、交通安全施設の整備等、さまざまな施策を推進している。
第6章 公安の維持
平成十年は、国外では、イラクの国連査察拒否をめぐって米国等が武力行使に及ぶ事態に至り、また、北朝鮮のミサイル発射等により、極東における緊張が高まるなどした。国内では、革マル派が長期間にわたり組織的に非合法手段による調査活動等を行っていたことが捜査により判明し、中核派等が成田空港問題をめぐって凶悪なテロ、ゲリラ事件を引き起こした。また、オウム真理教が再び活動を活発化させ、教団関連企業の業務拡大等により、組織の再建を図った。右翼は、時局問題等をとらえ、政府等に対する批判活動を活発に展開した。日本共産党は、柔軟路線をアピールして参議院議員通常選挙等で勢力を伸ばした。
こうした情勢の中、長野オリンピック冬季競技大会をはじめ、ロシア、韓国、米国及び中国の首脳が来日するなど、大規模警備が相次いだ。
警察では、各種テロ対策を最重点に諸対策を推進し、公安の維持に努めている。
第7章 災害、事故と警察活動
平成十年は、台風、大雨等の自然災害が多発した。警察では、これらの災害の発生に際して、直ちに体制を確立し、被災者の避難誘導や救助活動に当たるとともに、被害の未然防止と拡大防止に努めた。
また、雑踏事故、水難、山岳遭難、レジャースポーツに伴う事故等に対しても、それぞれ関係機関・団体と連携して必要な諸対策を推進した。
第8章 公安委員会と警察活動のささえ
公安委員会制度は、警察の民主的管理と政治的中立性の確保を図るために設けられている。
公安委員会は、事件、事故及び災害の発生状況と、これらに対する警察の取組等について所要の報告を徴するとともに、委員会としての意思を決定する。これらは、警察の事務運営に反映されている。
警察では、警察職員の待遇の改善、警察装備の開発、情報通信システムの開発・導入、警察官の職務に協力援助した者等に対する救済、各シンクタンクにおける調査研究活動等に取り組み、警察活動のささえとなる諸活動の充実強化に努めている。
警察は、被害者と密接な関係を有しており、これを保護する役割を担う機関として、被害者への情報提供、相談・カウンセリング体制の整備、捜査過程における被害者の負担の軽減、被害者の安全確保等、被害者の視点に立った、被害者のための各種施策の推進に努めている。
血液のがんと呼ばれ、治療の難しかった白血病や重症再生不良性貧血などの血液難病。現在は、「骨髄移植」という治療法によって健康を取り戻すことができるようになっています。
骨髄移植は、健康なドナーから骨髄液を提供してもらい、患者の病気に冒された骨髄細胞と入れ替えることによって、正常な造血機能を回復させる治療法です。
骨髄移植を成功させるためには、患者とドナーの白血球の型(HLA型)が一致していることが不可欠ですが、HLA型は数万通りもあるため、HLA型が一致するドナーを見つけることが非常に難しいのが実情です。HLA型が適合する確率は兄弟姉妹間で四分の一。親子で適合することはごくまれで、非血縁者間では、数百〜数万分の一という低い適合率です。
●すべての患者さんにドナーを見つけるために
骨髄バンクは、一人でも多くの患者さんがドナーを見つけ、骨髄移植を受けることができるよう、全国的に骨髄提供者を募り、その登録を行うデータバンクです。
一九九一年に骨髄バンクが発足して以来、ドナー登録者数は十二万人を超え、骨髄移植によって何人もの命が救われています。しかし、依然として約二五%の患者さんはHLA型が適合するドナーが一人も見つかっていません。
骨髄移植を必要とする患者さんすべてが、骨髄移植のチャンスを得るためには、さらに多くの方々に、ドナー登録に協力していただく必要があります。
ドナー登録は、お近くの骨髄データセンターまたは保健所で、約一〇tの採血をするという簡単な手続きですみます。
詳しくは、(財)骨髄移植推進財団のフリーダイヤル、お近くの骨髄データセンター、または保健所にお問い合わせください。
●お問い合わせ、ご質問は
(財)骨髄移植推進財団
フリーダイヤル
〇一二〇―四四五―四四五
ホームページ
http://www.jmdp.or.jp/
【ドナー登録の方法】
●ドナー登録できる人
・年齢が二十歳〜五十歳までの健康な方
・骨髄提供の内容を十分に理解している方
・ドナー登録について家族の同意を得ている方
●ドナー登録の手順
@骨髄移植推進財団のフリーダイヤルに電話し、骨髄バンクのパンフレット『チャンス!』を手に入れる。
↓
A『チャンス!』の内容を理解したら、最寄りの登録窓口(データセンターまたは保健所)に電話し、登録の予約をする。
↓
B当日は登録窓口で次のような手続きを行う。所要時間は約一時間。
・『チャンス!』の巻末にあるドナー登録用紙に必要事項を記入し、登録窓口に持参。
・骨髄移植に関する約十五分のビデオを観る。
・腕の静脈から約一〇tを採血。白血球の型を調べる。
↓
C後日、ドナー登録確認書が登録データセンターから送られる。
*白血球の型は、本人にも知らされません。
*ドナー登録された方の白血球の型は定期的に、患者さんと照合検索されます。ドナー候補となった場合は骨髄移植推進財団からお知らせします。
(厚生省)
◇賃金の動き
八月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は三十一万七百二十二円、前年同月比は一・一%減であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万三百二十円、前年同月比〇・三%増であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万三千百六円、前年同月比〇・二%増、所定外給与は一万七千二百十四円、前年同月比は二・三%増であった。
また、特別に支払われた給与は三万四百二円、前年同月比は一二・六%減であった。
実質賃金は、一・五%減であった。
きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に電気・ガス・熱供給・水道業二・九%増、金融・保険業一・六%増、運輸・通信業〇・九%増、サービス業〇・六%増、製造業〇・三%増、卸売・小売業、飲食店は前年同月と同水準、鉱業〇・一%減、建設業〇・九%減、不動産業七・〇%減であった。
◇労働時間の動き
八月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百四十九・九時間、前年同月比一・〇%増であった。
総実労働時間のうち、所定内労働時間は百四十・九時間、前年同月比一・一%増、所定外労働時間は九・〇時間、前年同月比一・一%減、所定外労働時間の季節調整値は前月比一・〇%増であった。
製造業の所定外労働時間は十一・七時間、前年同月比四・五%増、季節調整値の前月比は二・四%増であった。
◇雇用の動き
八月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・二%減、常用労働者のうち一般労働者では〇・七%減、パートタイム労働者では二・四%増であった。
常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものはサービス業二・一%増、建設業一・六%増、電気・ガス・熱供給・水道業一・三%増、不動産業〇・四%増であった。前年同月を下回ったものは、運輸・通信業〇・二%減、卸売・小売業、飲食店一・二%減、製造業二・二%減、金融・保険業二・四%減、鉱業三・五%減であった。
主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・四%減、パートタイム労働者は〇・一%増、卸売・小売業、飲食店では一般労働者三・三%減、パートタイム労働者二・六%増、サービス業では一般労働者一・九%増、パートタイム労働者二・八%増であった。
◇就業状態別の動向
平成十一年九月末の十五歳以上人口は一億七百九十七万人で、前年同月に比べ五十二万人(〇・五%)の増加となっている。これを就業状態別にみると、就業者は六千五百十四万人、完全失業者は三百十七万人、非労働力人口は三千九百五十二万人で、前年同月に比べそれぞれ十二万人(〇・二%)減、二十二万人(七・五%)増、三十七万人(〇・九%)増となっている。
また、十五〜六十四歳人口は八千六百七十八万人で、前年同月に比べ十六万人(〇・二%)の減少となっている。これを就業状態別にみると、就業者は六千十五万人、完全失業者は三百六万人、非労働力人口は二千三百四十五万人で、前年同月に比べそれぞれ三十万人(〇・五%)減、十九万人(六・六%)増、八万人(〇・三%)減となっている。
◇労働力人口(労働力人口比率)
労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は六千八百三十一万人で、前年同月に比べ十万人(〇・一%)の増加となっている。男女別にみると、男性は四千四十二万人、女性は二千七百八十九万人で、前年同月に比べると、男性は十一万人(〇・三%)の増加、女性は同数(増減なし)となっている。
また、労働力人口比率(十五歳以上人口に占める労働力人口の割合)は六三・三%で、前年同月に比べ〇・二ポイントの低下と、二十か月連続の低下となっている。
◇就業者
(1) 就業者
就業者数は六千五百十四万人で、前年同月に比べ十二万人(〇・二%)減と、二十か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千八百五十六万人、女性は二千六百五十八万人で、前年同月に比べると、男性は二万人(〇・一%)増と、二十一か月ぶりの増加、女性は十四万人(〇・五%)減と、十六か月連続で減少となっている。
(2) 従業上の地位
就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百五十五万人、自営業主・家族従業者は一千百三十八万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は八万人(〇・一%)増と、二十か月ぶりの増加、自営業主・家族従業者は二十一万人(一・八%)減と、二十か月連続の減少となっている。
雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百二十一万人で、七万人(〇・一%)増、二十か月ぶりの増加
○常 雇…四千六百八十五万人で、十一万人(〇・二%)減、二十一か月連続の減少
○臨時雇…五百十二万人で、二十一万人(四・三%)増、平成八年九月以降、増加が継続
○日 雇…百二十三万人で、四万人(三・一%)減、三か月連続で減少
(3) 産 業
主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…三百三十三万人で、二万人(〇・六%)増、八か月ぶりの増加
○建設業…六百六十六万人で、十四万人(二・一%)増、二か月連続で増加、増加幅は前月(二万人増)に比べ拡大
○製造業…一千三百三十八万人で、二十九万人(二・一%)減、二十八か月連続で減少、減少幅は前月(十九万人減)に比べ拡大
○運輸・通信業…四百五万人で、二万人(〇・五%)増、二か月連続で増加
○卸売・小売業、飲食店…一千五百五万人で、五万人(〇・三%)増、三か月ぶりの増加
○サービス業…一千六百八十一万人で、九万人(〇・五%)減、四か月連続で減少、減少幅は前月(十五万人減)に比べ縮小
また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百四十八万人で、十二万人(二・二%)増、五か月ぶりの増加
○製造業…一千二百十六万人で、二十三万人(一・九%)減、二十八か月連続で減少、減少幅は前月(十七万人減)に比べ拡大
○運輸・通信業…三百八十二万人で、一万人(〇・三%)増、二か月連続の増加
○卸売・小売業、飲食店…一千二百十七万人で、二十万人(一・七%)増
○サービス業…一千四百三十四万人で、同数(増減なし)
(4) 従業者階級
企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百六十一万人で、二十万人(一・一%)増加
○三十〜四百九十九人規模…一千七百二十二万人で、二十一万人(一・二%)減少
○五百人以上規模…一千二百五十四万人で、一万人(〇・一%)減少
(5) 就業時間
九月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千四百五十二万人で、五十二万人(三・七%)増加
○三十五時間以上…四千九百五十四万人で、五十九万人(一・二%)減少
また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四二・七時間で、前年同月に比べ〇・二時間の減少となっている。
(6) 転職希望者
就業者(六千五百十四万人)のうち、転職を希望している者(転職希望者)は六百二十七万人で、このうち実際に求職活動を行っている者は二百四十四万人となっており、前年同月に比べそれぞれ十三万人(二・一%)増、八万人(三・四%)増となっている。
また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)は九・六%で、前年同月に比べ〇・二ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は九・五%で、前年同月に比べ〇・三ポイントの上昇、女性は九・八%で、前年同月に比べ〇・一ポイントの上昇となっている。
◇完全失業者
(1) 完全失業者数
完全失業者数は三百十七万人で、前年同月に比べ二十二万人(七・五%)の増加となっている。男女別にみると、男性は百八十六万人、女性は百三十一万人となっている。前年同月に比べると、男性は八万人(四・五%)の増加、女性は十四万人(一二・〇%)の増加となっている。
また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非自発的な離職による者…九十八万人で、十一万人増加
○自発的な離職による者…百十八万人で、七万人増加
○学卒未就職者…十五万人で、一万人減少
○その他の者…七十三万人で、三万人増加
(2) 完全失業率(原数値)
完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は、四・六%で、前年同月に比べ〇・三ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は四・六%で、〇・二ポイントの上昇、女性は四・七%で、〇・五ポイントの上昇となっている。
(3) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)
年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
[男]
○十五〜二十四歳…四十三万人(五万人増)、一〇・七%(一・九ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十万人(一万人減)、四・四%(〇・二ポイント低下)
○三十五〜四十四歳…二十三万人(二万人減)、二・九%(〇・三ポイント低下)
○四十五〜五十四歳…二十八万人(三万人増)、三・〇%(〇・四ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…四十三万人(同数)、六・二%(〇・二ポイント低下)
・五十五〜五十九歳…十九万人(三万人増)、四・六%(〇・五ポイント上昇)
・六十〜六十四歳…二十四万人(三万人減)、八・七%(一・〇ポイント低下)
○六十五歳以上…九万人(二万人増)、二・八%(〇・五ポイント上昇)
[女]
○十五〜二十四歳…三十二万人(四万人増)、八・六%(一・四ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十四万人(四万人増)、七・四%(〇・四ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…十九万人(二万人増)、三・七%(〇・四ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…二十万人(三万人増)、二・九%(〇・四ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十五万人(三万人増)、三・四%(〇・六ポイント上昇)
○六十五歳以上…一万人(同数)、〇・五%(同率)
(4) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)
世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…八十二万人(一万人増)、三・〇%(同率)
○世帯主の配偶者…四十三万人(三万人増)、三・〇%(〇・二ポイント上昇)
○その他の家族…百四十六万人(十七万人増)、七・九%(〇・九ポイント上昇)
○単身世帯…四十六万人(二万人増)、五・八%(〇・四ポイント上昇)
(5) 完全失業率(季節調整値)
季節調整値でみた完全失業率は四・六%で、前月に比べ〇・一ポイントの低下となっている。
男女別でみると、男性は四・六%で、前月に比べ〇・一ポイントの低下となっている。女性は四・七%で、前月に比べ〇・一ポイントの上昇となっている。
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