▽平成十年住宅・土地統計調査速報集計結果………総 務 庁
海上保安白書のあらまし
海上保安庁は、平成11年版「海上保安の現況」(海上保安白書)を作成し、9月14日の閣議の後、公表した。
第1 海外から押し寄せる海上警備事案への対応
近年の海上保安業務の大きな特徴として、不審船や外国海洋調査船に対する警備、尖閣諸島における警備、不法入国や薬物・銃器密輸の水際阻止、新しい日韓の漁業協定下での外国漁船の監視取締りなど、国際的な海上警備事案への対応が増加している。
1 重要性を増す領海警備等
海上保安庁は、海上の秩序及び安全を確保するため、領海内における不法行為、又は無害でない通航を防止、排除するなどの領海警備を、創設以来、業務遂行に係るノウハウを蓄積しながら、最も重要な業務の一つとして体制を整え、一元的に実施している。十年には、我が国領海内で操業等の不法行為を行い、または徘徊等の不審な行動をとった外国船舶一千九百九十二隻(うち漁船一千九百七十四隻)を確認している(第1図参照)。このうち、不法行為を行った船舶一千五百六十八隻に対しては、一千五百四十五隻を警告の上、直ちに退去させ、悪質な二十三隻については検挙し、また、不審な行動をとった船舶四百二十四隻に対しては、当該行動の中止を要求し、あるいは警告の上、退去させるなど必要な措置を講じた。
(1) 不審船事案の発生と対策の強化
イ 能登半島沖不審船事案への対応
十一年三月二十三日午前十一時ごろ及び午後一時ごろ、海上自衛隊から能登半島沖の不審な漁船に関する情報を入手した。海上保安庁において確認したところ、漁船二隻は不審船であると判断した。これらの確認作業と並行して、巡視船艇・航空機を発動し、現場海域に巡視船艇十五隻、航空機十二機を動員した。
現場に到着した航空機は、両船に対し停船命令を発したが、両船はこれを無視し、北に向け約十ノットで逃走したため、巡視船艇・航空機により追跡を開始するとともに、停船命令を繰り返し発したが、両船は、なおもこれを無視して、速力を上げて逃走を続けたため、巡視船艇により威嚇射撃を実施した(第2図参照)。
しかし、両船はこの威嚇射撃をも無視して、高速で逃走を続けたため、巡視艇については、航続距離の問題から追跡を断念し、巡視船については、速力の問題から次第に不審船から引き離された。
これらの状況を内閣、防衛庁等の関係省庁に逐次連絡し、これを受けて政府としての対策が検討された結果、同月二十四日午前零時五十分、自衛隊法第八十二条に基づく海上警備行動が発令された。
ロ 能登半島沖不審船事案を踏まえた検討
今後とも政府が一丸となって対処することが重要であるという認識の下、今後の我が国の安全の確保及び危機管理に万全を期すため、内閣官房を中心に関係省庁において検討がなされ、六月四日の関係閣僚会議において、「能登半島沖不審船事案における教訓・反省事項について」が了承された(第1表参照)。
これに基づき、海上保安庁では、情報の収集及び共有化、監視体制の強化、巡視船艇の能力の強化、防衛庁との連携の強化等を逐次実施している。
(2) 近年多発している尖閣領有権主張の抗議活動
尖閣諸島は、沖縄群島西南西方の東シナ海に位置する我が国固有の領土である。しかし、八年八月以降、台湾小型船舶が抗議や報道目的で、同諸島領海内に侵入する事案が多発し、九月には香港から出港した抗議船が領海に侵入し、活動家数名が海に飛び込み、うち一名が溺死するという事故が発生した。以来これまでに五回にわたり抗議活動が行われている。このため、海上保安庁では、同諸島周辺海域に常時巡視船を配備し、また、定期的に航空機をしょう戒させ、関係省庁と連絡を密にして、領海侵犯・不法上陸の排除等の警備に当たっている。
(3) 過去最高を記録する中国海洋調査船
我が国周辺海域では、海洋開発に対する関心の高まりや、海底資源開発技術の進歩等を背景として、外国船による海洋調査活動が確認されている。
海上保安庁では、我が国が主権的権利及び管轄権を有する大陸棚等に係る海域において、外国海洋調査船等に対し、巡視船艇・航空機により厳重な追尾監視を行い、我が国の同意が無いものに対しては、現場海域において中止要求を行うとともに、外務省等関係機関に速報する等により、対処している。
最近の五か年について、外国海洋調査船等の確認状況をみると、六年の二十四隻、八年の二十二隻、十年の十九隻が目立っており、十一年は六月末現在で二十六隻を確認している(第3図参照)。
十年は、十六隻の中国海洋調査船を確認し、うち十四隻に特異な行動を認めており、十一年は六月末現在で、過去最高となる二十四隻の中国海洋調査船を確認し、うち二十二隻に特異な行動を認めている。
(4) 我が国漁船の保護
イ 竹島周辺海域
海上保安庁は、我が国漁業者の安全を確保するという見地から、竹島周辺に常時、巡視船を配備して監視するとともに、被だ捕等の防止指導を行っている。
ロ 北海道周辺海域におけるだ捕事件
十年のロシアによる日本漁船のだ捕件数は五隻(二十七名)で、いずれも北方四島周辺海域においてだ捕されたものである。十一年は六月末現在、カムチャツカ海域において一隻(十七名)のだ捕が確認されている。
海上保安庁では、だ捕等の発生が予想される北海道東方海域のロシア主張領海線付近等に、常時巡視船艇を配備し、漁船等の監視警戒に努めている。
ハ その他の海域におけるだ捕事件
十年には、その他の海域におけるだ捕事件は確認されていない。
2 巧妙化する密航・密輸
(1) 悪質・巧妙化する不法入国事犯
イ 不法入国事犯の現状
我が国と周辺諸国との所得格差を背景に、高収入を得る目的をもって、我が国で不法就労するための不法入国が跡を絶たない。
海上保安庁では、十年に不法入国者三百三十一名、助長者等(手引者、密航船乗組員等)百三十八名を、十一年は六月末までに不法入国者三百七十四名、助長者等六十九名を検挙しており、本年検挙した不法入国者は、既に昨年一年間の検挙者数を上回っている。不法入国者のうち、中国人は十年が九二%(三百四名)、十一年は六月末までに八六%(三百二十二名)を占めている(第4、5図参照)。
十年からは、従来の中国漁船等を仕立てて密航してくる事犯等が減少し、貨物船の船内に隠し部屋を設けて、潜伏してくる事犯等が増加している。
不法入国事犯においては、「蛇頭」と呼ばれる国際的な密航ブローカーが、我が国暴力団や韓国の密航組織と手を組み、不法滞在者や漁業関係者等を抱き込んで、密航者の募集・運搬、我が国での住居手配及び就職斡旋に関与している。
ロ 不法入国対策の推進
海上保安庁では、従来、関係機関と緊密な連携を保ちながら、不法入国事犯が発生するおそれの高い海域における監視警戒を強化するとともに、徹底した立入検査を実施すること等により、密航者の発見・摘発に努めている。
また、国外関係機関とも情報交換を行うなど、連携強化に努めている。
(2) 巧妙かつ組織的になる薬物・銃器密輸
イ 薬物対策の状況
近年、青少年がファッション感覚で安易に覚せい剤に手を出す風潮が見られるなど、深刻な情勢が続いており、非常に憂慮すべき状況となっている。
このため、政府を挙げて薬物対策に取り組むとともに、国連薬物統制計画(UNDCP)を中心に、海上における取締り技術の向上を図る必要があるとの認識の下、海上における不正取引の防止に関する具体的方策等の検討を進めている。
ロ 銃器対策の状況
近年、暴力団による発砲事件が多発しているほか、けん銃を使用した殺人、強盗等の凶悪事件も跡を絶たず、一般市民の被害が相次ぐ一方、けん銃の一般社会への拡散傾向もみられ、憂慮すべき状況にある。
このような状況にかんがみ、関係行政機関相互間の緊密な連携を確保し、銃器に対する強力な取締りを推進する等、政府を挙げて対策を講じている。
ハ 海上保安庁における薬物・銃器事犯への対応
薬物・銃器対策として、これらの流入を水際で阻止することは、極めて重要な課題である。このため、海上保安庁では、徹底した立入検査の実施、巡視船艇・航空機による監視警戒の強化、情報収集活動の推進、国内関係取締機関との密接な連携による取締りの実施、海外関係機関との情報交換の促進、海事・漁業関係者及び一般市民に対する広報啓発活動の推進等を図り、薬物・銃器の水際阻止に全力を挙げている。
十年、十一年(六月末まで)は、それぞれ覚せい剤二○二・六キログラム、二二一・○キログラム、銃砲十一丁、一丁等を押収している。
3 国際的な漁業秩序の維持の一翼を担って
(1) 海洋秩序の変化と対応
八年七月二十日、国連海洋法条約が我が国について発効し、それに伴う国内法の整備により、直線基線の採用、接続水域の設定、排他的経済水域の設定等が行われた。直線基線を採用したことにより、我が国の領水が拡大し、この拡大した領水においても、必然的に外国人の漁業が禁止されることとなった。また、排他的経済水域において、沿岸国として水産資源を適正に管理するため、漁業水域暫定措置法を廃止し、「排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律」(以下「EZ漁業法」という。)を制定、これにより新たに東経百三十五度以西の海域をも含めた、我が国周辺海域のおおむね二百海里までの海域に、漁業、水産動植物の採捕及び探査に関する我が国の主権的権利が全面的に及ぶことになった。
(2) 新しい日韓・日中漁業協定
イ 新日韓漁業協定
(イ) 新日韓漁業協定の締結
十年十一月二十八日に「漁業に関する日本国と大韓民国との間の協定」(以下「新協定」という。)の署名が行われ、十一年一月二十二日、新協定及び関連する国内法が発効した。
新協定では、暫定水域等を除く日韓両国の排他的経済水域においては、沿岸国が相手国に対する漁獲割当量その他の操業条件を決定し、相手国の漁船に対する操業許可及び取締りを行うこと、日本海中部、九州西方沖に設けられた暫定水域においては、日韓両国は相手国の漁船に対して漁業に関する自国の法令を適用しないこととするとともに、新協定によって設置される日韓漁業共同委員会における協議の結果に基づき、各々の国が自国の漁船に対して水産資源の管理に必要な措置をとることとしている(第6図参照)。
(ロ) 新協定発効に伴う海上保安庁の対応
海上保安庁においては、韓国漁船が多数操業することが予想される日本海、九州周辺、東シナ海等の主要な漁場に重点を置いて、監視取締りを行うこととし、新協定及び関連する国内法令等について、巡視船艇の乗組員等に対し研修を行う等により、新日韓漁業協定の発効に備えた。また、協定発効前に、巡視船艇から韓国漁船に対しリーフレットを配布する等により、「新協定発効後、日本の排他的経済水域において操業を行うためには、日本国の許可が必要となること」を事前に周知した。
これらの措置の結果、新協定発効日の一月二十二日午後八時頃までに、我が国排他的経済水域内で韓国漁船はほとんど確認されなくなったが、翌二十三日には、夜陰に乗じて、我が国排他的経済水域に侵入し、無許可で操業を行っていた韓国漁船四隻を、EZ漁業法違反等で検挙した。
新協定発効から六月末までにEZ漁業法等違反で検挙した韓国漁船は、九隻であった。
ロ 新日中漁業協定
(イ) 現行の日中漁業協定
日中間においては、昭和四十七年の日中国交回復に伴い、それまでの民間漁業協定に代わる協定を両国政府で締結することとなり、現行の日中漁業協定(以下、「現協定」という。)が、昭和五十年十二月に発効した。
現協定は、黄海及び東シナ海の一部が対象海域で、漁業資源を保存し及び合理的に利用するための必要な措置として、休漁区・保護区を定めるとともに、出漁漁船数、漁具等の条件を定めている。
(ロ) 新協定締結交渉
新たな「漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定」(以下、「新日中協定」という。)が、九年十一月に署名され、十年四月に国会で承認された。
新日中協定は、暫定措置水域等を除く日中両国の排他的経済水域においては、沿岸国が相手国に対する漁獲割当量その他の操業条件を決定し、相手国の漁船に対する操業許可及び取締りを行うことにしている。また、東シナ海に設けられる暫定措置水域では、新日中協定によって設置される日中漁業共同委員会を通じた共同管理を行い、北緯二十七度以南の水域においては、現状を維持することとなっている。
新日中協定は、現在、日中間で発効に向けて協議が重ねられている。
(3) 外国漁船の監視取締りの概況
海上保安庁では、国連海洋法条約の締結、EZ漁業法等、国内法の整備に伴い、外国漁船の監視取締り業務が大幅に増大することから、速力、夜間監視能力の向上等、高性能化を図りながら巡視船艇・航空機の整備を進めている。
十年に我が国の領水及び排他的経済水域において、不法操業等により検挙した外国漁船は、十七隻であった(第2表参照)。
(韓国漁船)
若狭湾沖から九州西岸沖にいたる日本海側で不法操業が見られ、中でも対馬周辺海域において多く発生している。十一年は六月末までに、「外国人漁業の規制に関する法律」(以下「外規法」という。)違反等で十二隻を検挙している。
(中国漁船)
ほぼ全国の海域において操業しており、十一年は六月末までに、外規法違反で二隻を検挙している。
(台湾漁船)
沖縄や奄美大島周辺海域、九州西岸沖等における操業が確認されており、十一年は六月末までに、外規法違反で二隻を検挙している。
(ロシア漁船)
近年は、操業規模が縮小し、数隻が確認されたのみである。
4 新たな事案への対応
(1) インドネシア危機邦人救出への対応
十年五月、インドネシア国内において、学生、市民等による略奪・暴行等が行われ、これを鎮圧するために投入された治安部隊との間で衝突が起きる等、その状況は予断を許さないものとなった。海上保安庁では、外務大臣から邦人等の輸送に係る協力要請を受けて、ヘリコプター搭載型巡視船二隻を同国方面へ派遣した。
両船は、シンガポール港で待機していたところ、現地情勢が安定を取り戻したことから、外務大臣からの撤収要請を受けて本邦に帰還した。
(2) 北朝鮮の弾道ミサイル発射等への対応
イ 北朝鮮の弾道ミサイル発射への対応
十年八月三十一日、北朝鮮が何ら通告・警報なしに日本の上空を飛び越える形で弾道ミサイルの発射を行った。ミサイルの一部は、主要な貿易ルートであり、かつ、主要な漁場である日本海の中部及び三陸沖の太平洋に落下したものと推定された。
海上保安庁では、ミサイル発射の情報を受け、直ちに巡視船・航空機を落下予想海域に向かわせるとともに、航行船舶の被害の確認等、関連情報の収集に当たった。
その後、十年九月、国際海事機関(IMO)及び国際水路機関(IHO)に、北朝鮮に対しIMO総会決議(航行警報業務に関する勧告)の遵守について、適切な指導を行うよう、書簡により要請を行い、同月、両機関から総会決議の遵守を促す書簡が発出された。
ロ 北朝鮮半潜水艇撃沈事件等への対応
韓国領海内に侵入した北朝鮮半潜水艇を追跡していた韓国海軍が、十年十二月十八日、長崎県対馬南西の公海上において、同半潜水艇を撃沈する事件が発生した。
海上保安庁では、直ちに航行警報を発出するとともに、付近海域で電波標識の定点測定を行っていた航路標識測定船「つしま」と巡視船艇・航空機により、現状を確認し、地元漁協、船会社等関係者に対して、幅広く注意喚起及び安全指導を実施した。
第2 航行安全のための新しいシステムの整備
海上保安庁では、船舶がより一層安全かつ効率的に航行できるよう、航海用電子海図、航行援助システム等、新しいシステムの整備に取り組んでいる。
1 世界に先駆けて電子水路通報を発行
航海の安全確保のため海洋調査を実施し、その成果をとりまとめて、航海用電子海図等の水路図誌を刊行するとともに、船舶交通安全情報等として提供している。
十年九月には、世界に先駆けて電子水路通報を発行した。電子水路通報は、航海用電子海図の内容を電子海図表示システム上で更新するための情報をCD―ROMに収録したもので、これにより、従来、手作業で更新していた表示内容を自動的に更新することが可能となった。
2 ディファレンシャルGPSシステムの全国運用開始
船舶が安全かつ効率的に航行するには、常に自船の位置を確認し、危険な障害物を避け、安全な針路を把握する必要がある。このため、通航船舶が昼夜を問わず、誤差十メートル以内の精度で位置測定が可能となるディファレンシャルGPSシステムの整備を、七年度から進めており、十一年四月からは、一部の遠方離島海域を除く我が国の沿岸全域で利用が可能となった(第7図参照)。今後、電子海図表示システム等と組み合わせて使用する際の位置情報としても幅広い活用が期待されている。
3 整流用灯浮標の設置による安全性の確保
九年七月に、東京湾中ノ瀬西側海域で発生した「ダイヤモンドグレース号」の底触・油流出事故を契機として、十一年二月に、より一層の船舶交通の安全を図るため、中ノ瀬西側海域に整流を目的とした灯浮標三基を設置するとともに、巡視船艇による集中指導を実施し、新しい航行経路等の周知徹底を図った。
第3 迅速・的確な海難の救助
海上保安庁では、不測の海難などに備え、二十四時間の当直体制をとり、巡視船艇や航空機による迅速・的確な捜索救助を行っている。また、近隣諸国などと捜索救助に関する国際的な協力体制の充実強化に努めている。
1 増加を続けるプレジャーボート海難、高い割合の外国船事故
要救助船舶隻数は年間一千七百隻前後で推移している。また、海洋レジャーの普及に伴い、プレジャーボート等の要救助隻数は漸増傾向にあり、九年度から漁船を抜いてワーストワンとなっている(第8図参照)。これらの事故の発生原因は、基本的知識・技術の不足や気象・海象に対する注意不足など、人為的な原因が大半を占めている。
さらに、本邦に入港する外国船舶の中には、我が国周辺海域の気象・海象等に不案内な船員を配置したものも見られ、十年の千総トン以上の貨物船及びタンカーの全要救助船舶八十五隻のうち、八十一隻は外国船舶となっている。
海難防止講習会の開催等により、海難防止思想の普及の徹底を図るとともに、航法や海事関係法令の遵守・見張りの励行等の指導、外国船舶に対する立入検査を行い、海難の防止に努めている。
2 海難への即応体制の構築
(1) 遭難情報の迅速な入手のためのGMDSS体制への完全移行
衛星通信やデジタル通信を用いて、遭難情報の迅速な入手と海上安全情報の提供を行うGMDSS(海上における遭難及び安全に関する世界的な制度)の導入が、四年二月から進められてきた。
十一年二月一日からは同体制に完全移行され、これに対応した遭難周波数を二十四時間体制で聴守し、遭難警報に即応する体制を整えている。
(2) 漁船「新生丸」衝突・転覆海難事故を受けて
GMDSS体制への完全移行を目前に控えた一月二十日に、漁船「新生丸」衝突・転覆海難が発生したが、遭難信号は誤発射であるとの民間からの情報を受け発動を一旦解除したため、結果的に対応が遅れた。このため、信号発射船舶の直接確認の徹底、情報の集中と伝達の迅速性の確保等を図り、GMDSS体制下における海難救助体制をさらに強化した。
第4 海上防災と海洋環境の保全のための体制強化
海上保安庁では、九年一月の「ナホトカ号」、同年七月の「ダイヤモンドグレース号」等の大規模油流出事故を受け、流出油防除のための回収装置やデータベースの整備を進めた。
また、我が国周辺海域における海洋汚染の監視取締りや、海洋環境の保全指導を行い、海洋環境の保全に努めている。
1 大型油回収装置等の整備及び訓練の実施
外洋においても対応可能な大型油回収装置の整備や、高粘度の油にも対応できる油回収装置等の防除資機材の整備を進めるとともに、運用訓練を実施した。
2 沿岸海域環境保全情報データベースの運用開始
油流出事故などの海難・事故災害発生時に必要となる情報を、迅速かつ的確に提供するため、九年度から、油防除資機材の配備状況等の防災情報や海流等の自然情報などを、データベース化する沿岸海域環境保全情報の整備を行っている。
十一年四月からは、沿岸海域環境保全情報のデータを、油の拡散状況・漂流予測結果とともに電子画面上に表示できるシステムの運用を開始した。
今後、国及び地方公共団体等が、油防除措置等を行う場合に活用されることが期待できる。
(参考) 海上保安の動向(第2部の要約)
<第1章> 海上治安の維持
T 海上における法秩序の維持
十年は七千九百八十二件の海上犯罪を送致し、違反の態様が軽微で是正の容易な三千六十九件の行政関係法令違反について、警告措置を講じた(第9図参照)。
1 海事関係法令違反
十年の海事関係法令違反の送致件数は四千五十三件で、このうちプレジャーボート等の小型船舶に係るものが二千七百五十五件と、最も多くなっている。
2 漁業関係法令違反
十年の日本人の漁業関係法令違反の送致件数は一千百六十三件で、そのほとんどが無許可操業や区域外・期間外操業等のいわゆる密漁であった。
3 刑法犯
十年の海上における刑法犯の送致件数は一千百九十四件、このうち一千二十六件が業務上過失往来妨害事犯であった。
十年には当て逃げ事件が四十件発生、このうち六三%を検挙した。
十年の海上における人身犯は、殺人〇件、殺人未遂四件、傷害二十件、暴行三件であった。
U 海上紛争等の警備と警衛・警護
1 海上紛争等の警備
十年は、八月に米空母キティホークの横須賀配備に伴う警備等、六百五十三件の海上紛争等の警備を実施した。
2 警衛・警護
十年は、天皇陛下及び皇族方に対する警衛四十五件、国内外要人に対する警護五十一件を実施した。
3 特殊警備事案への対応
シージャック、有毒ガス使用事案等、特殊な海上警備事案に対処するため、大阪特殊警備基地を設置し、二十四時間体制で同事案の発生に備えている。
<第2章> 海上交通の安全確保
T ふくそう海域における安全対策
1 海上交通安全法及び港則法の運用
(1) 海上交通安全法
東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海の三海域においては、基本ルールとしての海上衝突予防法のほか、海上交通安全法により、船舶交通の安全を図っている。
(2) 港則法
入出港船舶の多い全国五百一(十一年七月末現在)の港を港則法適用港として、特別の交通ルールを定める等により、港内の安全を図っている。
2 海上交通情報機構等の運用
船舶交通のふくそうする東京湾、瀬戸内海等において、船舶の安全かつ能率的運航を確保するため、海上交通に関する情報提供と航行管制を一元的に行うシステムとして、海上交通情報機構等を整備・運用している。
3 大規模プロジェクトの安全対策
関西国際空港二期事業、中部国際空港建設工事等の大規模プロジェクトは、海上交通等に大きな影響を与えるおそれがあるため、所要の航行安全対策を実施している。
U 海上交通の安全確保のための指導
1 海難防止活動の推進
要救助海難の発生原因は、見張り不十分等の人為的要因によるものが七四%を占めている。このため、海難防止講習会等を通じて海難防止思想の普及を図っている。
2 海難防止団体等の指導・育成等
海難防止を目的とする各種民間団体の育成・強化及び各種船舶の特性に応じた安全対策に努めている。
<第3章> 海洋レジャーの安全確保と健全な発展のための対策の推進
T 海洋レジャーの現状と今後の動向
海洋レジャーの普及、定着、プレジャーボートの増加等に伴い、海洋レジャーに伴う事故は跡を絶たず、漸増傾向にあり、今後も事故の増加が懸念される。
U 海洋レジャー事故の発生状況と、その原因及び救助状況
1 プレジャーボート等の海難発生状況と原因及び救助状況
十年のプレジャーボート等の海難隻数は七百三十六隻で、二千百三十三人が海難に遭遇した。これらの海難の発生原因は、見張り不十分や操船不適切等の人為的な原因が大半を占めている。
十年は、要救助船舶となったプレジャーボート等六百六十五隻(自力入港を除く)のうち五百九十六隻が救助され、救助率は九〇%であった。
2 海洋レジャーに伴う海浜事故等の発生状況と、原因及び救助状況
十年の事故者六百五十七人(自力救助を除く)のうち三百三十四人が救助され、救助率は五一%であった。
V 海洋レジャーの事故防止及び健全な発展に資する対策の推進
1 海洋レジャー関係者に対する安全指導等
マリーナ等への訪問による安全指導に加え、海難防止強調運動を展開し、愛好者を対象に海難防止指導の普及・高揚を図っている。
2 「ボート天国」の実施及び海上行事への協力
十年は、「ボート天国」を全国二十六か所で延べ三十八日開催し、約四十九万人、約一千七百隻が参加した。
3 関係団体の充実強化
小型船安全協会、(財)日本海洋レジャー安全・振興協会等の活動を積極的に支援している。
W 海洋レジャーに係る救助体制の充実強化
1 巡視船艇・航空機による救助体制の強化
海洋レジャーに係る事故の迅速な救助活動等を行うため、効果的に巡視船艇を配備、ヘリコプターの捜索能力等を活用した救助体制の強化を図っている。
2 海難情報の入手体制の整備
船舶電話に緊急通報用特番を設置するとともに、海上保安部署の加入電話番号を順次「局番―四九九九」に統一している。
3 民間救助体制の整備
(社)日本水難救済会等に対して必要な指導を行うなど、民間救助体制の整備に取り組んでいる。
X 海洋レジャーの安全に資する情報の提供
船舶気象通報のほか、「海の相談室」で海洋レジャーの安全に役に立つ海流、潮流等の情報を提供している。
<第4章> 海難の救助
T 海難の発生状況と救助状況
1 海難の発生状況
十年の要救助船舶は、一千七百二十六隻、百五万三千五百三十四総トンであった。これに伴う遭難者は七千八百四十人で、このうち死亡・行方不明者数は百五十七人であった(第10図参照)。
2 海難の救助状況
十年は、要救助船舶一千五百十八隻(自力入港を除く)のうち一千二百七十一隻が救助され、救助率は八四%であった。
十年は要救助船舶の乗船者五千五百九十八人(自力救助の乗船者を除く)のうち五千四百四十一人が救助され、救助率は九七%であった。
3 人身事故の発生状況
4 人身事故の救助状況
(1) 船舶海難によらない乗船者の人身事故の発生状況
十年の船舶海難によらない乗船者の事故者数は七百六十六人で、このうち三百十一人が死亡・行方不明となっている。自力救助を除いた五百五十七人のうち二百四十六人が救助され、救助率は四四%であった。
(2) 海浜事故等の発生状況
十年の海浜事故等の事故者数は一千七百三十二人で、このうち一千百三十人が死亡・行方不明になっている。自力救助を除いた一千六百人のうち四百七十人が救助され、救助率は二九%であった。
5 ヘリコプターによるつり上げ救助状況
十年のヘリコプターによるつり上げ救助者数は百二十二人であった。
6 救急患者の輸送状況
十年は、救急患者百八十二人、医師五十五人の緊急輸送を行った。
U 海難救助体制
1 情報収集体制
十年は、海上保安庁の陸上通信所及び巡視船艇において、船舶等が発信した海難に関する通信三千二百五十六件を取り扱った。また、船舶電話等により救助要請をしてきた船舶は二百六十九隻であった。
2 船位通報制度の充実
十年に我が国の船位通報制度(JASREP)に参加した船舶は延べ二万七千二百五十五隻、通報件数は十一万八千九百十八件であった。
3 海難への即応体制
海上保安部署等における二十四時間体制の当直、巡視船艇の前進配備等により、海難への即応体制に万全を期している。
JASREPを活用しての協力要請やヘリコプターの救助能力等を活用している。
4 特殊救難体制
羽田特殊救難基地、潜水指定船、救難強化巡視船により、特殊海難に対応している。
5 洋上救急体制
(社)日本水難救済会が事業主体となり、関係行政機関、関係団体の協力の下、官民一体となった洋上救急体制が整備されている。
6 救急救命体制の充実強化
救急救命士の養成を続けており、七年度までに羽田特殊救難基地への配置を完了し、八年度からはヘリコプター搭載型巡視船への配置を開始した。
7 関係機関との協力等
十年には、ロシア七件、韓国四十件、米国一件の船舶海難等について、相互に情報連絡等を行った。
<第5章> 海洋環境の保全と海上防災
T 海洋汚染の現状と防止対策
1 海洋汚染の発生確認の状況等
十年の海洋汚染の発生件数は六百九十七件であった。このうち油による汚染は三百八十八件で全体の約五六%を占めている。
2 海洋環境の保全指導と監視取締り
十年の海上環境関係法令違反の送致件数は八百十四件で、海洋汚染防止法違反が五百件と大部分を占めている。
十年の海上環境関係法令違反による外国船舶検挙件数は四十四件であり、これらに担保金制度を適用した。
3 廃棄物問題への対応等
十年の海上環境関係法令違反のうち、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反は百八十八件で、前年より大幅に増加している。このため、地方公共団体等との連携強化に努めている。
4 海上環境保全に係る調査
海水、海底堆積物、廃油ボールの漂流・漂着状況、海上漂流物調査等、海洋汚染に係るバックグラウンドデータの収集を行っている。
U 海上災害の現状と防災対策
1 海上災害の発生状況
十年の防除措置を講じた油排出事故は二百四十五件であった。
十年の船舶火災は百七件であった。
2 排出油の防除対策
排出油防除体制の整備、排出油防除資機材等の整備、沿岸海域環境保全情報の整備、関係機関相互の協力体制の強化を進めている。
3 その他
有害液体物質等の防除対策、海上消防対策、大型タンカーバースの防災対策、国家石油備蓄基地の防災対策及び海上災害防止センターの指導・監督を行った。
<第6章> 自然災害への対応
1 自然災害対策
災害に備えた応急体制の整備、防災拠点の整備、沿岸防災情報図の整備、実働の防災訓練を行っている。
2 防災のための調査
地震に関する調査研究のほか、火山噴火予知計画に参加している。
<第7章> 海洋調査と海洋情報の提供
T 管轄海域の確定
1 管轄海域の確定のための海洋調査
直線基線等を海図上に記載・公表するための作業を順次進めており、十年度は小縮尺の海図を中心に十九版を刊行した。
2 大陸棚の限界設定等に係る海洋調査
十年度は、南鳥島北方周辺海域等の調査を実施、十一年度は同島南方周辺海域の調査を実施する予定である。
3 海洋測地の推進
海図を世界測地系に対応させるための観測等を実施している。
U 航海の安全確保のための海洋調査及び情報提供
航海の安全確保のため港湾測量、港湾調査、潮汐観測、潮流観測、星食観測、海氷観測等の海洋調査を実施し、水路図誌を刊行するとともに、水路通報等の船舶交通安全通報及び海流通報を提供している。
V 海洋情報の管理・提供
日本海洋データセンターにおいて、海流、潮汐、水深等の海洋データ・情報を収集、管理、提供している。また、提供窓口として「海の相談室」を設けている。
<第8章> 航路標識業務への取組
T 航路標識の現状と整備
十年度末現在、光波標識五千三百四十八基、電波標識百三十基、音波標識二十基、その他の標識三十一基、合計五千五百二十九基を設置・管理している。
U 航路標識の保守・運用
航路標識の機能を維持するため、船舶、車両またはヘリコプターで定期的に巡回し保守するほか、灯台が消灯する等の事故が発生した場合は、緊急出動し、速やかに復旧している。
V 船舶気象通報
全国各地の主要な岬の灯台等五十八か所における局地的な気象・海象を、無線電話またはテレホンサービス若しくはFAXにより提供している。
十年のテレホンサービス利用件数は、全国三十三か所で約五百三万件であった。
W 自然エネルギーの利用及び歴史的・文化財的施設の保全
航路標識の電源として、風力、太陽光、波力といった自然エネルギーの利用拡大を図っている。
明治時代に建設され、歴史的・文化財的価値を有する灯台等については、その価値の保全を図りつつ現役のまま運用することとしており、十年度においては、美保関灯台(島根県)の保全工事を実施したほか、二基の灯台について保全方法の検討を行った。
<第9章> 海上保安に関する国際活動
T 国際機関等における活動
国際海事機関(IMO)、国際水路機関(IHO)、国際航路標識協会(IALA)等の国際機関の活動に参画した。
U 関係諸国との協力・連帯の推進
1 警備救難業務関係
十一年四月、日韓海上保安当局間長官級協議を初めて開催し、各種分野において相互協力を行っていくことで意見の一致をみた。
海洋環境の保全に関する地域協力、アジア地域等における海上交通の安全の確保、アジア太平洋地域における捜索救助体制の確立などを進めている。
2 水路業務関係
海洋環境状況を把握するための国際的な連携、東アジア水路委員会における相互協力等を進めている。
3 航路標識業務関係
八年一月一日から、中国、韓国とともにロランC国際協力チェーンの運用を開始し、相互に精度向上のための協力を行っている。
V 国際協力・国際貢献の推進
開発途上国の経済・社会開発に携わる人材の育成を目的とする技術協力を、国際協力事業団を通じて実施している。
<第10章> 海上保安体制の現状
T 組織・定員
十一年六月末現在、管区本部の事務所として、海上保安(監)部六十六か所、海上警備救難部一か所、海上保安署五十一か所、海上交通センター六か所、航空基地十四か所、特殊警備基地一か所、特殊救難基地一か所、機動防除基地一か所、統制通信事務所十一か所、水路観測所四か所、ロランセンター一か所及び航路標識事務所七十九か所を置いている。
十一年度の主な組織改正は、本庁警備救難部管理課に航空業務管理室を設置、第三管区海上保安本部に静岡航路標識事務所を設置したことである。
十年度末の定員は、一万二千二百二十四人である。
U 装備
十年度末現在、警備救難、水路及び灯台の各業務用の船艇五百十四隻、職員の教育訓練用艇三隻、飛行機二十七機、ヘリコプター四十三機を保有している。
一般船舶間、部内相互間等における通信を実施しており、通信施設等の建設・保守を行っている。
十年三月、インターネット・ホームページを開設した。
海洋情報システムによる業務の効率化、留置施設の改善、庁舎等の整備を図っている。
V 教育訓練体制
海上保安大学校及び海上保安学校を設置して、新規採用職員に対して全寮制の下に必要な教育訓練を実施している。
W 研究開発
海上保安業務の業務能率及び精度を向上させるため、海上保安試験研究センター等において研究開発を行っている。
十年度は、
▼ 高速巡視船艇の操船環境に関する調査研究
▼ データアシミレーションによる海況把握手法の研究
▼ シミュレーションを利用した航路標識整備の最適配置等に関する調査
などを行った。
T 住宅・世帯の概況
1 総住宅数と総世帯数
総住宅数は総世帯数を五百八十九万上回る
平成十年十月一日現在における我が国の総住宅数は五千二十二万戸、総世帯数は四千四百三十三万世帯となっている。前回調査の平成五年からの増加数をみると、それぞれ四百三十四万戸、三百十七万世帯、増加率は九・五%、七・七%となっている(第1図参照)。
また、京浜葉、中京、京阪神の三大都市圏についてみると、三大都市圏の総住宅数は京浜葉一千四百三十九万戸、中京三百三十七万戸、京阪神七百九十九万戸となり、それぞれ全国の二八・七%、六・七%、一五・九%を占めている。これらを合計した三大都市圏の総住宅数は二千五百七十五万戸で、全国の五一・三%となっている。
2 居住世帯の有無
総住宅数の一割を超えた空き家
総住宅数が総世帯数を上回る状況の中で、平成十年における居住世帯の有無別の状況をみると、居住世帯のある住宅は四千三百八十九万戸で、総住宅数の八七・四%を占め、空き家、建築中の住宅などの居住世帯のない住宅は六百三十二万戸で、一二・六%となっている。
居住世帯のない住宅の大半を占める空き家について、その推移をみると、昭和三十八年には五十二万戸に過ぎなかったが、その後一貫して増加を続け、平成十年には五百七十六万戸となった。また、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は、平成十年には初めて一割を超え、一一・五%となった(第2図参照)。
U 住宅の状況
1 建て方、構造
共同住宅の割合は引き続き拡大
平成十年における居住世帯のある住宅(四千三百八十九万戸)の状況を住宅の建て方別にみると、一戸建が二千五百二十八万戸で、住宅全体の五七・六%を占め、長屋建が百九十五万戸、四・四%、共同住宅が一千六百四十六万戸、三七・五%、その他が二十一万戸、〇・五%となっている。
前回調査の平成五年と比べると、一戸建は百十四万戸、四・七%増と、この間の住宅全体の伸び(七・六%)を下回った。一方、共同住宅は二百十九万戸、一五・四%増と大幅に増加している。一戸建の増加率は、昭和五十八年調査以降、住宅全体の増加率を下回っているのに対し、共同住宅の増加率は住宅全体を上回って増加している。
建て方別の割合の推移をみると、一戸建が縮小傾向を続けているのに対し、共同住宅は、一貫して上昇している(第3図参照)。
進む共同住宅の中高層化
共同住宅について階数別にみると、一〜二階建が五百十八万戸で、共同住宅全体の三一・五%を占め、三〜五階建は七百二十五万戸、四四・一%、六階建以上は四百三万戸、二四・五%と、三階建以上の共同住宅が七割近くを占めている。
平成五年〜十年の増加率をみると、一〜二階建は四・二%増、三〜五階建は一三・八%増、六階建以上は三七・八%増と、六階建以上の共同住宅の増加率は、共同住宅全体の増加率(一五・四%増)を大きく上回っており、共同住宅の中高層化が進行していることを示している。
京浜葉大都市圏では五割以上が共同住宅
三大都市圏全体における共同住宅は一千八十七万戸で、全国の共同住宅の六六・〇%を占めている。
各大都市圏の住宅全体に占める共同住宅の割合をみると、京浜葉大都市圏が五三・〇%、中京大都市圏が三七・四%、京阪神大都市圏が四五・二%、三大都市圏全体では四八・五%となっており、京浜葉大都市圏及び京阪神大都市圏では、全国平均の三七・五%を大きく上回っている。
不燃化が進む住宅の構造
昭和四十八年以降における住宅全体の構造別割合の推移をみると、防火木造を除く木造の割合は六六・五%から一貫して低下し、平成十年には三一・一%となっている。
一方、防火木造の割合は一九・七%から三三・三%へ、非木造の割合は一三・八%から三五・六%へと、ともに一貫して上昇しており、住宅の不燃化が着実に進んでいる。
2 所有の関係
持ち家住宅率は六〇・三%に上昇
住宅を所有の関係別にみると、持ち家が二千六百四十八万戸で、住宅全体に占める割合(持ち家住宅率)は六〇・三%、借家が一千六百六十九万戸、三八・〇%となっている。平成五年では持ち家が二千四百三十八万戸で、持ち家住宅率は五九・八%、借家が一千五百六十九万戸、三八・五%となっており、昭和六十三年調査以降低下していた持ち家住宅率は、今回〇・五ポイント上昇した。
三大都市圏で低い持ち家住宅率
三大都市圏について、住宅の所有の関係をみると、持ち家住宅率は、京浜葉大都市圏が五二・五%、中京大都市圏が六一・〇%、京阪神大都市圏が五六・二%となっており、三大都市圏全体では五四・七%となっている。これを三大都市圏以外の地域の六六・二%と比べると一一・五ポイント低くなっている。
3 住宅の規模
拡大が続く住宅の規模
平成十年における専用住宅の一住宅当たり居住室数、居住室の畳数及び延べ面積(居住室のほか玄関、便所、台所などを含めた住宅の床面積の合計)をみると、一住宅当たり居住室数は四・七五室、居住室の畳数は三一・四二畳、延べ面積は九〇・六一平方メートルとなっている。平成五年の専用住宅の一住宅当たり居住室数が四・七九室、居住室の畳数は三〇・九六畳、延べ面積は八八・三八平方メートルであったから、この五年間に居住室数はわずかに減少したが、居住室の畳数は〇・四六畳の増加、延べ面積は二・二三平方メートルの増加となっている。
また、専用住宅の規模を住宅の所有の関係からみると、持ち家では一住宅当たり居住室数が六・〇〇室、居住室の畳数が四〇・八三畳、延べ面積が一二一・〇八平方メートルとなっているのに対し、借家ではそれぞれ二・八四室、一七・一五畳、四四・四〇平方メートルと、いずれも持ち家の半分以下となっている。この持ち家・借家間の規模の格差は以前からみられるものである。
規模が小さい京浜葉大都市圏の住宅
三大都市圏について専用住宅の規模をみると、京浜葉大都市圏では、一住宅当たり居住室数が三・九九室、居住室の畳数が二六・二五畳、延べ面積が七二・六五平方メートル、中京大都市圏ではそれぞれ五・一七室、三五・一五畳、九五・七五平方メートル、京阪神大都市圏ではそれぞれ四・五二室、二八・五六畳、八〇・八六平方メートルとなっている。
これを三大都市圏以外の地域の五・二二室、三四・九〇畳、一〇三・七〇平方メートルと比較すると、三大都市圏、特に、京浜葉大都市圏の住宅規模が小さいことが分かる。
4 設 備
手すりがある住宅は約四分の一
高齢者や身体障害者などに配慮した住宅設備についてみると、「手すりがある」住宅は一千百四十八万戸で、住宅全体の二六・一%を占めている。手すりの設置場所をみると、「階段」が八百二十万戸で、住宅全体の一八・七%と最も多く、以下、「浴室」が三百八十二万戸、八・七%、「便所」が三百五十四万戸、八・一%、「玄関」が百九万戸、二・五%と続いている。また、「またぎやすい高さの浴槽」がある住宅は八百五万戸、一八・三%、「廊下などが車椅子で通行可能」な住宅は四百四十七万戸、一〇・二%、「段差のない屋内」となっている住宅は四百二十八万戸、九・七%、「道路から玄関まで車椅子で通行可能」な住宅は四百四十四万戸、一〇・一%となっている。
高齢者等のための設備がある住宅の割合を建築の時期別にみると、平成二年以前に建築された住宅では「手すりがある」が二四・三%、「またぎやすい高さの浴槽」が一六・四%、「廊下などが車椅子で通行可能」が八・一%、「段差のない屋内」が六・〇%、「道路から玄関まで車椅子で通行可能」が九・五%となっている。これに対し、平成三年〜七年に建築された住宅ではそれぞれ三〇・二%、二二・五%、一四・六%、一六・一%、一〇・九%、平成八年以降に建築された住宅ではそれぞれ四四・二%、三五・一%、二五・六%、三七・九%、一七・三%と、最近建築された住宅でその割合は高くなっている(第4図参照)。
V 世帯の居住状況
世帯の持ち家率
ほとんどの年齢階級で持ち家世帯率が低下
平成十年の持ち家世帯率は六〇・〇%で、前回の五九・六%に比べてわずかに上昇した。
これを家計を主に支える者の年齢階級別にみると、「二十五〜二十九歳」では一二・七%と低いが、「三十〜三十四歳」で二九・〇%、「三十五〜三十九歳」で四八・六%と大きく上昇し、「四十〜四十四歳」の年齢階級で六二・四%となり、「六十歳以上」の年齢階級で約八割に達する。
年齢階級別の持ち家世帯率の推移をみると、年齢階級が高くなるにつれて持ち家世帯率も高くなるという傾向は変わらないものの、近年、ほとんどの年齢階級で持ち家世帯率が低下している。しかし、前回調査で大きく低下した二十五〜三十九歳の比較的若い年齢階級の低下幅は今回小さくなっている。
W 居住水準の状況(第5図参照)
1 最低居住水準
九割以上の世帯が最低居住水準を確保
最低居住水準は、全国のすべての世帯が確保すべき水準として、第三期の住宅建設五箇年計画(昭和五十一年策定)から設定されている。平成十年における最低居住水準以上の世帯の割合は、九二・三%となって、平成五年の九二・〇%から〇・三ポイント上昇した。最低居住水準の設定以降、水準以上の世帯の割合は着実に上昇してきたが、九割の世帯が確保されるようになった近年、その上昇幅は小さくなっている。
住宅を所有の関係別にみると、借家における最低居住水準以上の世帯の割合は八七・六%で、持ち家の九七・八%と比較して、一〇・二ポイントの差がある。
京浜葉大都市圏で低い最低居住水準の確保世帯
三大都市圏における最低居住水準の状況をみると、水準以上の世帯の割合は八九・六%と、全国平均(九二・三%)及び三大都市圏以外の地域(九五・二%)と比較してそれぞれ二・七ポイント、五・六ポイント低くなっている。
また、各大都市圏別にみると、京浜葉大都市圏の最低居住水準以上の世帯の割合が八八・三%、中京大都市圏が九三・八%、京阪神大都市圏が九〇・一%と、京浜葉大都市圏における最低居住水準の確保世帯の割合は低くなっている。
2 誘導居住水準
誘導居住水準以上の世帯は五割に近づく
最低居住水準を九割以上の世帯が確保するようになった現在、更に高水準の指標である誘導居住水準が注目されており、平成十二年度(西暦二〇〇〇年度)に全国の半数の世帯が、さらに、その後できるだけ早期にすべての都市圏で半数の世帯が誘導居住水準を確保できるようにすることが目標とされている。
誘導居住水準は、第五期の五箇年計画(昭和六十一年策定)において、従来の平均居住水準に代わる指標として設けられ、都市中心及びその周辺における共同住宅居住を想定した「都市居住型」と、郊外及び地方における戸建住宅居住を想定した「一般型」の二つの水準が設定されている。
この調査では、都市居住型誘導居住水準を満たす共同住宅に住む世帯と、一般型誘導居住水準を満たす共同住宅以外の住宅に住む世帯の合計をもって、誘導居住水準を満たす世帯としている。平成十年調査における全国の誘導居住水準以上の世帯の割合は四六・四%となっており、平成五年の四一・一%から五・三ポイント上昇して五割に近づいた。
誘導居住水準を満たす世帯の割合を持ち家・借家の別にみると、誘導居住水準以上の世帯は持ち家が五八・一%、借家が二九・八%で、持ち家と借家との差は二八・三ポイントとなっている。
また、住宅の建て方別にみると、一戸建が五四・八%、長屋建が一八・四%、共同住宅が三六・八%となっており、さらに、世帯人員別にみると、三人世帯が四六・三%、四人世帯が二八・一%、五人世帯が二六・三%となっている。
三大都市圏の誘導居住水準以上の世帯は約四割
誘導居住水準を満たす世帯の割合について、三大都市圏と三大都市圏以外の地域を比較すると、三大都市圏以外の地域における誘導居住水準以上の世帯の割合は五二・三%であるのに対し、三大都市圏では四〇・七%となっており、一一・六ポイントの差が生じている。三大都市圏の借家世帯についてみると、誘導居住水準以上の世帯の割合は二六・六%と低くなっており、三大都市圏以外の地域と比べて七・六ポイントの差となっている。また、借家の内訳をみても、三大都市圏では公営の借家以外において三大都市圏以外の地域より低くなっている。
都市型居住のモデルとされる共同住宅についてみると、三大都市圏で誘導居住水準を満たしている世帯の割合は三四・五%で、三大都市圏の住宅全体の四〇・七%と比べ六・二ポイント下回っており、共同住宅の居住水準の低さを示している。また、三大都市圏以外の地域における共同住宅の四一・二%と比べても、六・七ポイント下回っている。
共同住宅について各大都市圏別に誘導居住水準以上の世帯の割合をみると、京浜葉大都市圏が三三・一%、中京大都市圏が四二・三%、京阪神大都市圏が三四・八%となっており、中京大都市圏においては、比較的高くなっている。
X 高齢者のいる世帯
ここでは、六十五歳以上の世帯員がいる主世帯を「高齢者のいる主世帯」とし、その世帯を次の三つの型に区分している。
@高齢単身主世帯…六十五歳以上の単身者のみの主世帯
A高齢夫婦主世帯…夫婦とも若しくはいずれか一方が六十五歳以上の夫婦一組のみの主世帯
Bその他の高齢者主世帯…高齢者のいる主世帯から前記の二つを除いたもの
1 世帯数の推移
高齢者のいる世帯は約三分の一
高齢者のいる主世帯の推移をみると、昭和五十八年には八百六十六万世帯で、主世帯全体の二五・〇%、四分の一だったが、平成五年には実数で初めて一千万世帯を超え、さらに、平成十年には一千三百八十七万世帯となって主世帯全体の三一・六%と、三分の一近くを占めるに至っている。
また、七十五歳以上の世帯員がいる主世帯は六百三十一万世帯で、平成五年と比べて一九・九%増加し、主世帯全体の一四・四%にまで上昇しており、急速に高齢化が進んでいることを示している。
2 住宅の所有の関係
高齢者のいる主世帯は八割以上が持ち家に居住
高齢者のいる主世帯について、住宅を所有の関係別割合からみると、持ち家が八五・二%、借家が一四・八%となっており、主世帯全体(それぞれ六〇・三%、三八・〇%)に比べ、持ち家の割合が高くなっている。特に、その他の高齢者主世帯では九一・四%が持ち家に居住しており、ほとんどが持ち家となっている。
しかし、高齢単身主世帯では、持ち家の割合が六五・三%と、主世帯全体に比べてわずか五・〇ポイント高くなっているに過ぎない(第6図参照)。
政府刊行物普及月間 十一月一〜三十日
政府刊行物という言葉の定義が、法令で明文化されている例は見受けられません。現在のところ、昭和三十一年十一月の閣議了解「政府刊行物の普及・強化について」のなかに、政府刊行物は「政府機関が編集する印刷物で販売又は頒布するもの」と定義されています。しかし、この閣議了解も政府刊行物の定義をはっきりさせることが本来の趣旨ではなかったこともあって、狭い解釈とされていて、広い意味では「編集、著作、監修、発行のいずれかが政府関係機関である印刷物」と解釈されています。
政府刊行物は情報の宝庫
皆さんは、「政府刊行物は難しくて何だか堅苦しいものばかり」という印象をおもちではありませんか? しかし、政府刊行物は「情報の宝庫」といわれ、多くの人に利用されています。
白書をはじめとする政府刊行物は、各省庁が集めた豊富なデータをフルに活用して編集されていますので、各種調査研究や国民生活に欠かせない確かな資料ということになります。
また、最近ではカラー写真やイラスト入りのカラフルなものも多く、面白く、読みやすくするための工夫がされていますので、知りたい情報や確かなデータを、手軽に得ることができます。
政府刊行物には次のようなものがあります。
●政治・経済の実態や政府の施策の現状を広く国民に知らせることを目的としたもの
経済白書・環境白書・通商白書・防衛白書などの白書類
●各種の統計調査等
日本の統計・世界の統計・出入国管理統計年報・商業統計表・国民経済計算年報など
●各種審議会での答申
税制改正に関する答申・税制改革についての答申など
●国の財政・経済・産業等の実態を明らかにしたもの
予算書・決算書・日本経済の現況・主要産業の設備投資計画・我が国企業の経営分析・有価証券報告書総覧など
●学校教育に役立つもの
学校指導要領・環境教育指導資料・生徒指導資料・ことばシリーズ・マンガで見る環境白書など
●一般教養書
言葉に関する問答集(総集編)・木の国日本の世界遺産・賢く向きあう栄養講座・マンガ民法入門など
●雑誌類
時の動き・時の法令・月刊世論調査・経済月報・月刊海外経済データ・恩給・立法と調査など
●法令の公布紙、国の広報紙
法令はもとより、各種国家試験の施行・合格者の発表、国民所得統計・貿易統計等の資料、政府調達、会社の決算公告などを広く掲載した国唯一の機関紙である官報
なお、政府刊行物は次の所で購入できます。
●政府刊行物サービスセンター
全国に十か所あり、年間約百六十万人の利用者があります。
●サービスステーション
全国に六十二か所あります。
●常備寄託書店
全国に四百店あります。
政府刊行物についてのお問い合わせや、販売店の所在地などについては、大蔵省印刷局業務部普及管理官室 рO3―3587―4283までお願いします。
(大蔵省)
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