官報資料版 平成11年3月10日




                  ▽平成九年度決算検査報告の概要…………会計検査院

                  ▽労働力調査(十二月結果の概要)………総 務 庁











平成九年度


決算検査報告の概要


会計検査院


はじめに

 会計検査院は、日本国憲法第九十条の規定により、国の収入支出の決算を検査し、会計検査院法第二十九条の規定に基づいて平成九年度決算検査報告を作成し、平成十年十二月十一日、これを内閣に送付した。
 この検査報告には、歳入歳出の決算に関する事項、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項、意見を表示し又は処置を要求した事項、会計事務職員に対する検定等について記載した。また、国有財産、物品等国の財産等に関する検査事項及び会計検査院法その他の法律の規定により検査をしている政府関係機関等の会計に関する事項についても記載した。
 なお、会計検査院は、平成十年十月二日、内閣から平成九年度歳入歳出決算の送付を受け、その検査を終えて平成十年十二月十一日内閣に回付した。
 会計検査院が検査を終えた国の平成九年度の歳入歳出決算額は、次のとおりである。
 〔一般会計決算額
 歳 入 八十兆一千七百四億七千三百七万余円
 歳 出 七十八兆四千七百三億一千十八万余円
 〔各特別会計決算額の合計額
 歳 入 二百八十三兆四千九百九十三億一千五十五万余円
 歳 出 二百四十七兆三百五十九億七千六百七十二万余円

◇検査結果の概要

<第1節> 検査の概況

1 検査の対象

 会計検査院は、国の一般会計及び特別会計の収入支出をはじめ、国の所有する現金、物品、国有財産、国の債権、債務等すべての分野の国の会計を検査の対象としている。
 さらに、会計検査院は、次の会計を検査の対象としている。
@ 国が資本金の二分の一以上を出資している法人の会計
A 法律により特に会計検査院の検査に付するものと定められた会計
 平成十年次の検査(検査実施期間 平成九年十一月〜十年十月)において検査の対象としたものは、@として、政府関係機関十一、公団十三、事業団十七、その他の法人五十四(清算中のもの四を含む。)の会計、Aとして日本放送協会の会計である。
 このほか、会計検査院は、次の会計についても必要に応じて検査することができることになっている。
@ 国が資本金の一部を出資しているものの会計
A 国が資本金を出資したものが更に出資しているものの会計
B 国が補助金その他の財政援助を与えた都道府県、市町村、各種組合、学校法人等の会計
 平成十年次の検査において検査の対象としたものは、@として二法人の会計、Aとして十九法人の会計、Bとして六千四百九十六の団体等の会計である(以上の検査の対象については、第1図参照)。

2 検査の観点

 検査の観点には、次のような多角的な側面がある。
@ 決算の表示が予算執行の状況を正確に表現しているかという正確性の側面
A 会計経理が予算や法律、政令などに従って適正に処理されているかという合規性の側面
B 事業が経済的、効率的に実施されているか、つまり、より少ない費用で実施できないか、同じ費用でより大きな成果が得られないかという経済性・効率性の側面
C 事業が所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかという有効性の側面
 平成十年次の検査においても、これらの観点から検査を実施した。

3 検査の計画

 検査に当たっては、会計検査院が全体として取り組むべき共通的な検査の基本方針を定めた上、これに基づき検査実施部局ごとの検査計画を策定して、検査を実施している。
 検査の基本方針は、検査の観点、検査対象の各種事務・事業等について、基本的な検査の取組方を示すものである。また、検査計画は、検査の基本方針の下、検査実施部局ごとに、社会経済情勢の動向、予算額の推移等に対応して重点を絞った検査上の重要項目を設定するとともに、それに対する検査の着眼点や方法、検査勢力の配分等を決めるものである。
 平成十年次の検査においても、前記により検査の基本方針及び検査計画を策定して検査を実施した。

4 検査の方法及び実績

 検査対象機関に対する検査の主な方法は、書面検査及び実地検査である。
 書面検査は、検査対象となる会計を取り扱う機関から、会計検査院の定める計算証明規則により、当該機関で行った会計経理の実績を計数的に表示した計算書、及びその裏付けとなる各種の契約書、請求書、領収書等の証拠書類等を提出させ、これらの書類について在庁して行う検査である。
 また、実地検査は、検査対象機関である省庁等の官署、事務所等に職員を派遣して、実地に、関係帳簿や事務・事業の実態を調査したり、関係者から説明を聴取したりなどして行う検査である。
 これらの方法により、会計検査院が平成十年次に実施した検査の実績は、次のとおりである。
 @ 書面検査については、平成九年度分の計算書二十三万一千余冊及びその証拠書類七千六百七十六万一千余枚を対象に実施した。
 A 実地検査については、検査対象機関である省庁等の官署、事務所等三万八千四百余箇所のうち、三千三百余箇所について実施したほか、国が補助金その他の財政援助を与えた前記六千四百九十六の団体等について実施した。これらの実地検査に要した人日数は、四万五千百余人日となっている(第1表参照)。
 なお、検査の進行に伴い、検査上疑義のある事態について、疑問点を質したり、見解を求めたりなどするために、関係者に対して書面をもって質問を発しているが、平成十年次の検査において発した質問は九百余事項となっている。

<第2節> 検査結果の大要

第1 事項等別の検査結果

T 事項等別の概要

 検査の結果、決算検査報告に掲記した事項等(第2図参照)の総件数は三百五十件であり、その内訳は次のとおりである。
 ア 「個別の検査結果」に掲記した事項              三百四十一件
 ・「不当事項」                           三百四件
 ・「意見を表示し又は処置を要求した事項」                六件
 ・「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」      三十件
 ・「特に掲記を要すると認めた事項」                   一件
 イ 「国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況」     九件
 ・「国会からの検査要請事項に関する検査状況」              一件
 ・「特定検査対象に関する検査状況」                   八件
 前記アの事項に係る指摘金額及び背景金額は次のとおりである。
 なお、イの「国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況」については、これらの金額に該当するものはない。
@ 徴収不足額、過大な支出額等の指摘金額             三百三十四件
                       二百四十三億五千九百六十一万余円
 ・「不当事項」                           三百四件
                        百三十三億八千二百七十九万余円(注)
 ・「意見を表示し又は処置を要求した事項」
      [会計検査院法第三十四条関係]                四件
                            七十七億三千六百十万円
 ・「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」     二十六件
                          三十二億四千九百八十四万円
A 問題があるとして取り上げた事態の背景金額               八件
 ▽「意見を表示し又は処置を要求した事項」
      [会計検査院法第三十六条関係]
 ・科学研究費補助事業の実施について(文部省)
                           二十二億七千三百六十万円
   (研究成果報告書等が提出されていない研究課題に係る国庫補助金交付額)
 ・農業者年金事業の実施について(農業者年金基金)
                          二十九億六千三百三十七万円
   (年金に加入していないことにより徴収できない保険料相当額、時効により徴収できなくなっていた保険料など)
 ▽「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」
 ・航空タービン燃料JP―4の調達について(総理府(防衛庁))
                          四百八十五億六百九十八万円
   (平成七年度から九年度までの調達契約金額)
 ・未利用国有地の利活用について(厚生省)
                           三十二億一千二百十二万円
   (未利用国有地の国有財産台帳価格)
 ・農業改良資金の青年農業者等育成確保資金に係る貸付事業について(農林水産省)
                          三十九億五千七百三十四万円
   (貸付けの効果が十分発現していない国の貸付金等相当額)
 ・国営かんがい排水事業の施行について(農林水産省)
                              六千九百六十七億円
   (国営事業に係る平成九年度末までの支出済額)
 ・中小企業設備貸与事業の財源調達について(通商産業省)
                                 百八十四億円
   (府県の特別会計において有効利用を図ることが見込める造成資金額三十三億円)
   (貸与機関において削減が見込める中小企業金融公庫等からの借入金額百五十一億円)
 ▽「特に掲記を要すると認めた事項」
 ・アメリカ合衆国政府の有償援助による装備品等の調達について
                              一千四百五十四億円
   (平成九年度末現在の前払金の精算が完了していないもののうち出荷予定時期を過ぎたものの金額)
 (注) 「不当事項」と「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」の両方で取り上げているものがあり、その金額の重複を控除しているので、各事項の金額を集計しても指摘金額とは一致しない。

U 「個別の検査結果」の概要

 「個別の検査結果」を省庁等別にみると、第2表のとおりである。

【不当事項】

 検査の結果、「不当事項」として計三百四件(指摘金額 百三十三億八千二百七十九万余円)掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。

@ 収入に関するもの                        計二十三件
                         六十三億四千四百五十九万余円
 この内訳を態様別にみると、第3表のとおりである。
 ア 租 税                               一件
                           十三億七千百七十八万余円
 <租税の徴収が適正でなかったもの>
 ◇大蔵省
 ・租税の徴収に当たり、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、これを見過ごしたりなどしていたため、納税者四百四十九人からの徴収額に過不足があったもの
 イ 保険料                               二件
                           四十八億一千三十七万余円
 <保険料の徴収が適正でなかったもの>
 ◇厚生省
 ・健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、派遣労働者を使用している派遣元の事業主等が、常用的に使用している派遣労働者等について、被保険者資格取得届の提出を怠るなどしていたのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、一千八百七十九事業主からの徴収額が不足していたもの
                    (一件 四十四億八千四百九十一万余円)
 ◇労働省
 ・労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの申告書における賃金総額の記載が事実と相違するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、五百六十八事業主からの徴収額に過不足があったもの
                      (一件 三億二千五百四十六万余円)
 ウ 医療費                              十九件
                           一億五千二百七十五万余円
 <診療報酬の請求が適切でなかったもの>
 ◇文部省
 ・大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術において使用した特定保険医療材料の費用を算定していなかったり、基本的検体検査実施料等の費用を算定していなかったり、麻酔料に加算を行っていなかったりなどしたため、十七大学の二十三大学病院で請求額に過不足があったもの
                     (十七件 一億三千七百三十一万余円)
 ◇労働福祉事業団
 ・労災病院における診療報酬の請求に当たり、麻酔料に係る加算を行っていなかったり、入院時医学管理料を低い診療点数により算定していたり、手術後医学管理料を算定していなかったりなどしたため、二労災病院で請求額が不足していたもの
                        (二件 一千五百四十四万余円)
 エ その他                               一件
                               九百六十七万余円
 <授業料の徴収が不足していたもの>
 ◇文部省
 ・お茶の水女子大学において、授業料の免除に当たり、学生本人が受けている奨学金を給与所得として取り扱って世帯の総所得金額から必要経費を控除していたため、半額しか免除できないのに全額免除したり、全く免除できないのに半額又は全額免除したりしていたもの

A 支出に関するもの                      計二百五十二件
                         六十六億五千八百二十八万余円
 この内訳を態様別にみると、第4表のとおりである。
 ア 予算経理                            二十二件
                            二億九千九百六十万余円
 <架空の名目により謝金等を支出させ別途に経理していたもの>
 ◇文部省
 ・文部省が都道府県の教育委員会等に委嘱又は委託して実施している教育関係事業等において、教育委員会等が、架空の名目により諸謝金支給調書、旅行命令書等の関係書類を作成するなどして、謝金、旅費等を出納部局に不正に支出させ、これを別途に経理し、同事業等の実施とは直接関係のない用途に使用するなどしていて、経理が著しく適正を欠いているもの
 イ 保険給付                              四件
                            十七億一千四百二万余円
 <保険の給付が適正でなかったもの>
 ◇厚生省
 ・厚生年金保険の老齢厚生年金等及び国民年金の老齢基礎年金の支給に当たり、受給権者が事業所に常用的に使用されていて、年金の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに、被保険者資格取得届が提出されず、これに対する都道府県(社会保険事務所)の調査確認及び指導が十分でなかったため、一千七百六十八人に対して支給停止の手続が執られず不適正に支給されていたもの
                      (一件 十五億四千百二十四万余円)
 ◇労働省
 ・雇用保険の失業等給付金の支給決定に当たり、受給者が、再就職していながらその事実を申告書に記載していなかったり、事実と相違する再就職年月日を記載したりしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、三百五十二人に対する支給が適正に行われていなかったもの
                        (一件 七千五百五十四万余円)
 ・雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主が申請書において既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、その記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、五十二事業主に対する支給が適正に行われていなかったもの
                        (一件 六千九百六十六万余円)
 ・雇用保険の地域雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主が申請書において、既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、その記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、四事業主に対する支給が適正に行われていなかったもの
                        (一件 二千七百五十六万余円)
 ウ 医療費                               二件
                          十七億九千六百四十七万余円
 <医療費の支払が適切でなかったもの>
 ◇厚生省
 ・特定入院料、入院時医学管理料、初診料・再診料等の診療報酬の支払に当たり、医療機関から不適正な診療報酬の請求があったのに、これに対する審査点検が十分でなかったなどのため、二百二十二医療機関に対する医療費の支払が適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるもの
                     (一件 十七億四千九百五十三万余円)
 ◇労働省
 ・労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関が入院料、手術料、処置料等を誤って算定し請求していたのに、これに対する審査が十分でなかったため、二百二十六医療機関に対する支払が適正に行われていなかったもの
                        (一件 四千六百九十四万余円)
 エ 補助金                              二百件
                           二十一億一千三百一万余円
 <補助事業の実施及び経理が不当なもの>
 ◇文部省
 ・義務教育費国庫負担金等の算定において、国庫負担の対象にならない教員に係る給与費等を国庫負担対象額に含めたり、教職員定数の算定を誤ったりなどしていたため、負担金が過大に交付されていたもの
                     (十五件 一億六千六百八十八万余円)
 ◇厚生省
 ・社会福祉施設等施設整備費補助金等の交付に当たり、社会福祉法人等が、補助の対象とならない法人本部の施設工事費を補助対象事業費に含めたり、本体施設の建築工事を実績報告書記載の総事業費より低額で実施したりしていたため、補助金が過大に交付されるなどしていたもの
                         (四件 二千六百三十一万円)
 ・生活保護費負担金の算定において、保護を受ける世帯における就労収入等の額を過小に認定したり、保護を受ける世帯に係る診療報酬の負担額を過大に認定したりなどして保護費の額を決定していたため、負担金が過大に交付されていたもの
                        (七件 五千三百七十五万余円)
 ・老人福祉施設保護費負担金の算定において、老人の収入を誤認するなどして対象収入を過小に算定したり、主たる扶養義務者の認定を誤っていたりなどして、徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの
                       (三十二件 三千九百八十万余円)
 ・児童保護費等負担金の算定に当たり、児童の扶養義務者の所得税額等を誤認するなどして徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの
                        (十六件 二千二百四十万余円)
 ・児童育成事業費補助金の算定に当たり、延長保育を利用した児童数が六人を超える場合に加算される額の算定の基礎となる平均利用児童数について、延長保育を実際に利用した児童数を用いずに、延長保育の希望を受けて登録した児童数を基にして計算していたため、補助金が過大に交付されていたもの
                      (十五件 一億三千七百二十万余円)
 ・国民健康保険の財政調整交付金の交付に当たり、市町村において、交付額算定の基礎となる調整対象収入額を過小に算定したり、保険料収納割合を事実と相違した高い割合としたりなどして交付申請を行っていたため、交付金が過大に交付されていたもの
                     (五十七件 九億八千九百二十万余円)
 ・廃棄物処理施設整備事業における廃棄物再生利用施設の建設工事請負契約に当たり、高率な最低制限価格を設定し、これを下回る価格で入札した業者を排除していたため、割高な契約を締結することとなっていたもの
                         (一件 一億七千三百万余円)
 ◇農林水産省
 ・家畜導入事業資金供給事業の実施に当たり、架空の牛や肥育目的で導入した牛を事業の対象とするなどしていて補助の対象とならなかったり、導入牛が貸付期間中に売却されるなどしていて補助の目的を達していなかったりしているもの
                        (一件 四千三百二十六万余円)
 ・松くい虫防除事業の実施に当たり、被害木を伐倒し、切断・集積の上、希釈薬剤を散布する際、薬剤を希釈するための灯油の購入量が不足していたため、この不足量に相当する分の希釈薬剤の散布が行われていなかったもの
                         (一件 一千三百八十万余円)
 ・山村振興等農林漁業特別対策事業の実施に当たり、木造平屋建ての建物の屋根部分の陸梁は平角材の一本物を使用して施工することになっているのに、平角材三本を継ぎ合わせていて、施工が設計と著しく相違していたため、積雪により建物の屋根部分が崩壊していて、工事の目的を達していないもの
                          (一件 一千二百五十万円)
 ・林道開設事業の実施に当たり、橋りょう支承部の設計図面を作成する際、誤って、固定支承部と可動支承部を逆に設置することとしていて、設計が適切でなかったため、橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
                             (一件 六百万余円)
 ・農業用施設災害復旧事業の実施に当たり、ため池堤体のグラウト工の注入費を積算する際、誤って、セメント袋数を過大に算出するなどしたため、工事費が割高となっているもの
                          (一件 三百四十七万余円)
 ・草地畜産基盤整備事業の実施に当たり、法面のすべりを防止するためのロックボルトの応力計算をする際、ロックボルトに作用する引抜力を誤って算定したり、ロックボルトの引張り耐力を必要な計算をすることなく決定したりしていて、設計が適切でなかったため、法面の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
                          (一件 七百九十八万余円)
 ・農業集落排水事業の実施に当たり、道路の舗装面積の設計数量を算出する際、工事の進ちょくに伴い増加が見込まれるとして、設計図面に基づかない面積を計上するなどしたため、工事費が割高となっているもの
                          (一件 三百八十三万余円)
 ・地域農業生産再編特別対策事業の実施に当たり、自動制御製茶機械の設置工事について、請負業者から工事費の値引きを受けて国庫補助対象事業費より低額で実施していたため、国庫補助対象事業費が過大に精算されていたもの
                         (一件 一千百八十七万余円)
 ・県営農地保全整備事業の実施に当たり、ボックスカルバートの上の盛土重量を過小に計算していて、設計が適切でなかったため、ボックスカルバートの所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
                          (一件 五百六十一万余円)
 ・いもでん粉工場再編整備対策事業の実施に当たり、いもでん粉の製造業者が製造設備等の廃棄・撤去の工事費を過大に計上していたため、国庫補助金を原資とする助成金が過大に交付されていて、補助の目的に沿わない結果になっていたもの
                        (二件 二千二百三十四万余円)
 ・国庫補助金を原資とする林業改善資金の貸付けにおいて、借受者が、機械を貸付対象事業費より低額で購入したり、貸付けの対象とならない事業について貸付けを受けていたりなどしていて、補助の目的に沿わない結果になっていたもの
                       (十六件 二千九百八十一万余円)
 ◇通商産業省
 ・国庫補助金を原資とする中小企業設備近代化資金の貸付けにおいて、借主が、設備の設置に必要な長期資金を金融機関から借り入れた後に重複して貸付けを受けたり、設備を貸付対象事業費より低額で設置したり、自らの事業の用に供していなかったりなどしていて、補助の目的に沿わない結果になっていたもの
                        (九件 二千五百三十一万余円)
 ◇建設省
 ・総合治水対策特定河川事業の実施に当たり、樋門の底版の上面側配筋図を作成する際に、誤って、主鉄筋を応力計算上安全とされている間隔の二倍の間隔で配置することとしていて、設計が適切でなかったため、樋門等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
                          (一件 八百六十三万余円)
 ・市街地再開発事業の実施に当たり、補助対象事業費を算定する際に、共同建築物等の建設工事契約の実支出額を基にして共同施設の整備等に要した費用を算定すべきところ、誤って、契約額より高額な設計金額を基にして算定したため、補助金が過大に交付されていたもの
                        (一件 二千二百三十七万余円)
 ・都市モノレール事業の実施に当たり、PC軌道桁の伸縮継手の材料費を積算する際に、伸縮継手の所要数は、一方の桁に取り付ける伸縮継手とこれを受ける側の桁に取り付ける伸縮継手を合わせて一組であるとしていたのに、誤って、それぞれを一組であるとしていたため、その所要数が二倍に算出されていて、工事費が割高となっているもの
                        (一件 七千二百四十七万余円)
 ・道路災害防除事業の実施に当たり、吹付法枠工と一体となって道路法面の崩壊を防止することとしたロックボルト工を施工する際、所定の深度まで削孔作業を行っていなかったり、注入材の注入を十分に行っていなかったりなどしていて、施工が著しく粗雑であったため、ロックボルト工及び吹付法枠工が工事の目的を達していないもの
                        (一件 四千九百九十四万余円)
 ・道路改良事業の実施に当たり、コンクリート擁壁の地震時における安定計算の際に、擁壁背面に作用する土圧について、誤って、常時における値を用いるなどしていて、設計が適切でなかったため、擁壁の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
                           (一件 六千六十万余円)
 ・河川改修事業の実施に当たり、橋りょうの橋台と上部工の接点である支承部を施工する際、誤って、固定支承部と可動支承部を設計図面とは逆に施工していたため、橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
                        (一件 一千三百九十七万余円)
 ・道路改良事業の実施に当たり、ブロック積擁壁工費を積算する際に、裏型枠の設置に係る工費はブロック積工費及び裏込めコンクリート工費の中に含まれているのに、誤って、別途に裏型枠工費を計上したため、工事費が割高となっているもの
                          (一件 二百八十六万余円)
 ・街路事業の実施に当たり、トンネル内に設置する道路照明設備を設計する際、路面の舗装がアスファルト舗装であるのに、誤って、路面反射率の高いコンクリート舗装として路面輝度を算出したため、照明基準に定める路面輝度を満足していないもの
                          (一件 四百八十六万余円)
 ・公営住宅家賃収入補助金の交付に当たり、県において、明渡しを請求して入居許可を取り消した住居を空家戸数に含めるべきであるのに、その取扱いを誤って補助対象率を算出したため、補助金が過大になっていたもの
                        (一件 一千九百四十七万余円)
 ◇自治省
 ・消防防災施設整備事業の実施に当たり、耐震性貯水槽の設計の際に応力計算を行っておらず、設計が適切でなかったなどしたため、耐震性貯水槽の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
                          (一件 八百三十九万余円)
 ◇日本私立学校振興・共済事業団
 ・私立大学等経常費補助金の交付に当たり、学校法人から提出された資料に、補助金の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額に含めないこととされている建物の工事費等の支出額が計上されるなどしているのに、この資料に基づいて補助金の額を算定したため、交付額が過大になっていたもの
                           (七件 五千五百万余円)
 オ 貸付金                             二十三件
                            七億二千六百七十万余円
 <貸付金の経理が不当なもの>
 ◇農林水産省
 ・国の貸付金等を原資とする農業改良資金の貸付けにおいて、借受者が、貸付けの対象とならない事業について貸付けを受けたり、機械等を貸付対象事業費より低額で購入したり、機械を県に無断で処分したりなどしていて、これに係る国の貸付金等相当額が貸付け等の目的に沿わない結果になっていたもの
                        (九件 二千七百四十二万余円)
 ◇農林漁業金融公庫
 ・農業経営基盤強化資金等の貸付けにおいて、借入者が、機械の設置等に必要な長期資金を金融機関から重複して借り入れていたり、貸付対象事業のほとんどを実施していなかったりなどしていたため、貸付金が過大に貸し付けられていたもの
                        (四件 六千七百八十四万余円)
 ◇環境事業団
 ・産業廃棄物処理施設の設置に要する資金の貸付けにおいて、借入者が施設を貸付対象事業費より低額で設置していたため、貸付金が過大に貸し付けられていたもの
                        (一件 一億三千百四十万余円)
 ◇社会福祉・医療事業団
 ・福祉貸付資金等の貸付けにおいて、借入者が、施設の建築等を貸付対象事業費より低額で実施したり、事業実施のために交付された補助金等を貸付対象事業費の財源に算入していなかったりしていたため、貸付金が過大に貸し付けられるなどしていたもの
                            (九件 五億二万余円)
 カ 不正行為                              一件
                               八百四十五万余円
 <現金が領得されたもの>
 ◇厚生省
 ・社会保険事務所の職員が、政府管掌健康保険の高額療養費の支給決定事務に従事中、虚偽の支給申請書を作成して自ら支給決定を行い、知人に受領させるなどして高額療養費を領得したもの

B 収入支出以外のもの                       計二十九件
                           三億七千九百九十二万余円
 不正行為                              二十九件
                           三億七千九百九十二万余円
 <現金が領得されたもの>
 ◇文部省
 ・国立大学の職員が、委任経理金(奨学寄附金)の払出事務等に従事中、無断で預金口座から払出しを受けて委任経理金を領得したもの
                            (一件 百九十一万円)
 ◇郵政省
 ・郵便局の出納員等二十八名が、預金者から預け替えを依頼された通常郵便貯金預入金、保管に係る資金、契約者から受領した保険料等を領得したもの
                      (二十八件 三億七千八百一万余円)

【意見を表示し又は処置を要求した事項】

 「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計六件(指摘金額 七十七億三千六百十万円)掲記した。

@ 会計検査院法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求した事項    四件

 ◇厚生省
 ・在宅福祉事業費補助金(老人デイサービス運営事業分)の算定について
  在宅福祉事業費補助金の算定に当たり、サービスに伴う食材費、光熱水費等の原材料費等は補助対象経費の実支出額に含めない取扱いとしているのにこれを除外していなかったり、利用者から徴収した利用料収入については総事業費から控除する取扱いとしているのにこれを控除していなかったりしていた。このため、二十一都道府県の市区町村において、国庫補助金が過大に算定されている事態が多数見受けられた。
  したがって、厚生省において、原材料費等の範囲を具体的に示すとともに、適正な補助金の算定方法を交付要綱において明確にするなどの処置を講ずる要がある。
                     (指摘金額 二億一千二百六十七万円)
 ・政府管掌健康保険生活習慣病予防健診事業の実施について
  社会保険庁では、政府管掌健康保険生活習慣病予防健診事業を行うに際し、その事務の一部を、都道府県に委任するとともに社会保険健康事業財団に委託している。そして、都道府県は、健康保険病院などの実施機関に健診を委託している。
  この事業の実施に当たり、二十九都道府県において、国の負担する健診の委託費を会計法令に違背して異なる年度の予算で支払っていたり、国の負担は同一年度において受診者一人につき一回に限るのに、二回以上健診の委託費を支払っていたりする事態が見受けられた。
  また、このうち四府県において、実施機関からの受診者数を水増しした虚偽の健診実施状況報告書等による不適正な請求に対して健診の委託費を支払っている事態が見受けられた。
  したがって、同庁において、都道府県に対し予算執行残額を確認した上で健診の勧奨等を行うなどさせ、会計法令に従った適切な事務処理が行われるよう指導したり、財団との委託契約書に、実施機関の作成した健診結果通知票と請求書の人数を対比することなどについて明記し、実施機関から不適正な請求がなされないようにしたりするなどの処置を講ずる要がある。
                   (指摘金額 二十一億七千七百三十七万円)
 ◇農林水産省
 ・先進的農業生産総合推進対策事業等による農産物処理加工施設等の設置及び運営について
  補助事業により整備した農産物の処理加工施設等の運営において、施設の運営を中止していたり、利用率が著しく低くなっていたり、運営収支が赤字となっていたりしていて、設置した施設が農業生産性の向上等に寄与しておらず、事業の効果が十分発現していない事態が、二十二道県の五十五施設において見受けられた。
  したがって、農林水産省において、事業主体の実施計画の策定に当たり施設の規模等について十分に検討をさせたり、実施後において改善計画を確実に作成させるような体制を整備したりなどして、事業の効果を発現させる要がある。
                    (指摘金額 二十億一千七百九十五万円)
 ・林業構造改善事業等による施設の設置及び運営について
  補助事業により整備した収入で支出を賄うことを原則とする製材加工施設等の運営において、損失額が多額に上っていることにより、遊休したままとなっていたり、健全な経営の継続が困難な状況となっていたりしていて、事業の効果が十分発現していない事態が、十一道県の二十七施設において見受けられた。
  したがって、林野庁において、事業主体等に、施設の規模、事業主体の技術力等について専門家による経営診断等を受けさせ、その結果を事業計画に反映させたり、実施後の収支等の実績を把握できるような体制を整備したりなどして、事業の効果を発現させる要がある。
                    (指摘金額 三十三億二千八百十一万円)

A 会計検査院法第三十六条の規定により改善の処置を要求した事項      二件

 ◇文部省
 ・科学研究費補助事業の実施について
  大学の研究者等が実施する基礎的研究について費用を助成する科学研究費補助事業の実施に当たり、研究期間終了後は研究成果を社会へ還元させるとともに、科学研究費補助金による研究の評価の充実に資するため研究成果報告書等の提出が義務付けられているのに、提出期日までに提出されておらず研究成果の社会への還元がされていないものが、二十大学等において二百五件見受けられた。
  したがって、文部省において、科学研究費補助金の目的、研究成果報告書等の提出の重要性等について研究者等への啓蒙を徹底するなどして、研究成果報告書等の提出の徹底を図る要がある。
                    [背景金額 二十二億七千三百六十万円]
  (研究成果報告書等が提出されていない研究課題に係る国庫補助金交付額)
 ◇農業者年金基金
 ・農業者年金事業の実施について
  農業者年金事業の実施に当たり、年金の未加入者が多数いたり、時効により徴収できなくなった保険料が多額に上っていたり、受給権者の現況の確認等が適切に行われていなかったため経営移譲年金が適切に支給されていなかったり、加算付経営移譲年金の受給権者の後継者が、経営移譲を受けた後、農業者年金の被保険者資格を喪失するなどしていて、加算付経営移譲年金の効果が確保されているとは認められなかったりしている事態が見受けられた。
  したがって、農業者年金基金は、未加入者名簿の的確な整備を図り、効果的な加入促進を行ったり、経営移譲年金の支給の際、諸名義の変更を確実に行うことなどについて経営移譲者に対し周知徹底を図ったりするなど、農業者年金事業のより適切な事業の実施を図る要がある。
                   [背景金額 二十九億六千三百三十七万円]
  (年金に加入していないことにより徴収できない保険料相当額、時効により徴収できなくなっていた保険料など)

【本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項】

 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計三十件(指摘金額 三十二億四千九百八十四万円)掲記した。
 ◇総理府(防衛庁)
 ・航空タービン燃料JP―4の調達について
  航空タービン燃料JP―4の調達に当たり、調達実施本部では、当初の指名競争入札が不調となり、その後予定価格より高い価格を基にすべての会社が同じ価格となるよう商議をした後、この価格を基にして会社が見積もった最終の商議価格と同額を再予定価格として再度の指名競争入札を実施し、その結果、最終商議を行った者が一回で落札するという一連の調達手続が慣例化していた。
  このことにより、再度の指名競争入札で指名を受けたすべての会社が再予定価格を推定し得るという結果を招いていた。このため、指名競争入札における会社間の競争が阻害され、十分な競争が行われていなかった。
                   [背景金額 四百八十五億六百九十八万円]
  (平成七年度から九年度までの調達契約金額)
 ・建物等移転補償におけるコンクリート解体費の積算について
  建物等移転補償におけるコンクリート解体費の積算に当たり、施工の実態に適合した単価の適用等について指示していなかったため、コンクリート数量が多く施工現場が広い場合においても、数量が少なく施工現場が狭い場合などに適用する単価を採用していて、解体費の積算額が過大になっていた。
                          (指摘金額 二千三百万円)
 ◇総理府(科学技術庁)
 ・電気需給契約における夏季割引制度の導入について
  特別高圧電力の電気需給契約において、年度開始前に策定した運転計画や従来の使用電力の実績等からみて、設備の定期保守点検作業を行う夏季の使用電力は契約電力の三〇%以上低減することが十分予測できたのに、放射線医学総合研究所において、このような場合に適用される夏季割引制度を導入するための協議を電力会社と行っていなかったため、電気料金が不経済となっていた。
                        (指摘金額 一千六百七十万円)
 ◇大蔵省
 ・工場等での請負契約における社会保険料等の積算について
  工場等での業務請負契約における社会保険料等の事業主負担額の積算に当たり、保険料等の徴収の対象外となっている高年齢者等が多数雇用されていたのに、その実態を反映させていなかったため、印刷局において、社会保険料等の積算額が過大になっていた。
                        (指摘金額 四千六百九十万円)
 ◇厚生省
 ・特別養護老人ホーム等の入所者に対する診療報酬の請求の取扱いについて
  特別養護老人ホーム等の施設の入所者に対する診療報酬の請求に当たり、厚生省においてその取扱いを明確にしていなかったなどのため、施設の入所者を配置医師の所属する医療機関へ通院させて行った診療について診療報酬を請求していたり、施設に配置されている看護婦等が入所者に対して行った行為について診療報酬を請求していたりなどしていて、七十二医療機関において、医療費が不適切に支払われていた。
                     (指摘金額 二億四千五百二十八万円)
 ・未利用国有地の有効利活用について
  厚生保険特別会計等に属する国有地において、現況等の把握、利用方針の策定、処理計画の決定等が適切に行われていなかったため、社会保険庁及び二十五都道府県において百二十二口座、五万八千百五十一平方メートルの土地が未利用となっており、有効に利活用されていなかった。
                    [背景金額 三十二億一千二百十二万円]
  (未利用国有地の国有財産台帳価格)
 ◇農林水産省
 ・漁港整備事業等における消波工の設計について
  補助事業に係る漁港整備事業等における消波工の設計に当たり、消波ブロックの施工技術が向上してきたため、乱積工法による消波工の天端幅について、メーカーが示した数値を用いても、設計の基準で定めている幅を確保できるのに、水産庁においてメーカーの数値より高い数値を使用するよう指導していたため、二百六十四工事において、消波ブロックの製作、据付費等が不経済となっていた。
                        (指摘金額 八億三百七十万円)
 ・政府米の運送業務におけるトラック運賃の算定について
  政府米の運送業務委託契約において、実際の使用車両のトン数にかかわりなく全国一律で十トン車を基準車両としたトラック運賃に基づいて契約単価を算定していたため、一部の地区において、契約単価が運送の実態を反映したものとなっておらず、トラック運賃の支払額が過大になっていた。
                        (指摘金額 二億二千五十万円)
 ・農業改良資金の青年農業者等育成確保資金に係る貸付事業について
  農業改良資金の青年農業者等育成確保資金の貸付けに当たり、十九道県において、借受者が他に転職するなどし、貸付対象である農業経営を中止していて、貸付目的が達成されていなかった。また二十八道県において、貸付対象である農業経営の収支が計画目標額等を大幅に下回っているなどしていて、貸付けの効果が十分発現していなかった。
                      (指摘金額 一億八千九百十九万円)
                   [背景金額 三十九億五千七百三十四万円]
  (貸付けの効果が十分発現していない国の貸付金等相当額)
 ・国営かんがい排水事業の施行について
  国営かんがい排水事業の施行に当たり、国営事業と都道府県や市町村等が実施する附帯事業とが連携して施行されることにより事業全体の効果が発現されるのに、国営事業の着手時までに附帯事業の予定実施時期が定められておらず、着手後も附帯事業の事業管理が行われていなかった。そして、国営事業の経済効果の評価の指標となる投資効率が一律の係数により算定されていたため、事業全体の実施時期が経済効果の評価に的確に反映されないまま事業が着手されていた。
  このため、二十地区において、国営事業が完了又はほぼ完了しているのに、附帯事業の整備面積の一部が整備されておらず、かんがい排水事業全体の事業効果が発現していなかった。
                       [背景金額 六千九百六十七億円]
  (国営事業に係る九年度末までの支出済額)
 ◇通商産業省
 ・中小企業設備貸与事業の財源調達について
  中小企業設備貸与事業の財源調達に当たり、@都道府県の特別会計において、中小企業者に貸し付ける直貸資金に多額の資金余剰を生じている一方、設備貸与事業を行う貸与機関に貸し付ける貸与資金に資金不足を生じているものがあるのに、資金を相互に融通するなどしておらず、国からの補助金等により資金を追加造成していた。A貸与機関において、多額の内部資金を保有しているのに、貸与財源に充当できる自己資金の範囲が内部資金の一部に限定されていることから、貸与財源の大半を中小企業金融公庫等からの借入金で調達しており、内部資金は当面使用する見込みのない資金余剰となっている状況であった。
  このため、二十四府県において、特別会計の資金の有効活用が図られておらず、また、二十四貸与機関において、同公庫等からの有利子の借入金の削減が図られていなかった。
                          [背景金額 百八十四億円]
  (府県の特別会計において有効利用を図ることが見込める造成資金額 三十三億円  貸与機関において削減が見込める中小企業金融公庫等からの借入金額 百五十一億円)
 ◇運輸省
 ・補助事業に係る岸壁等の築造工事における吸出防止材の選定について
  補助事業に係る岸壁等の築造工事に使用する吸出防止材の選定に当たり、国の直轄事業で築造する岸壁等に使用されている吸出防止材と比較して、必要以上に高規格で、価格も高価なものを選定していたため、三十九工事において吸出防止材の材料費が不経済となっていた。
                        (指摘金額 三千六百九十万円)
 ・電気需給契約における季節別時間帯別電力の適用について
  業務用電力等の電気需給契約において、夜間時間等に使用する電力量の割合が相当大きかったのに、夜間時間等の料金が大幅に安価となる季節別時間帯別電力の適用を受けていなかったため、海上保安庁の七官暑及び気象庁の二官署において、電気料金が不経済となっていた。
                        (指摘金額 二千五百六十万円)
 ・高速専用回線の契約における長期継続利用割引制度の活用について
  気象観測データ等の伝送に利用する高速専用回線の契約に当たり、個々の回線の利用開始時点において、回線ごとの整備計画の有無やその実施年度等を検討すれば、所定の期間は回線の利用形態に変更がないことを予測できたのに、回線を所定の期間継続して利用する者に適用される長期継続利用割引を受けていなかったため、百九回線の使用料が不経済となっていた。
                         (指摘金額 一千四百十万円)
 ◇建設省
 ・下水道事業の実施における汚水管の管径の設計について
  補助事業に係る下水道事業における汚水管の設計に当たり、設計指針において、流量計算により汚水管の管径が二百ミリメートル未満となる場合は、汚水管の維持管理等に支障を生じないよう最小管径を二百ミリメートルとすることとなっているのに、五十三事業主体において、具体的な根拠もなく最小管径を一律に二百五十ミリメートルとしていたため、汚水管の材料費が不経済となっていた。
                         (指摘金額 四千五百十万円)
 ・国道のバイパス供用開始に伴う旧道の地方公共団体への引渡しについて
  国道のバイパス供用開始に伴う旧道の地方公共団体への引渡しに当たり、旧道の処理に係る地方公共団体との協議が供用開始までに完了していなかったり、旧道の修繕工事等の着手に相当期間を要したりなどして、七区間において引渡しが遅延していたため、旧道の引渡しまでの間の管理費用が不経済となっていた。
                        (指摘金額 二千九百二十万円)
 ・河川改修事業等の護岸の根入れ部に使用する材料の選定について
  河川改修事業等の護岸の根入れ部の設計に当たり、施工箇所の河床が安定していて流水等による洗掘のおそれが少ない場合については、護岸の根入れ部に使用する材料は、自然石に比べて入手が容易で工事費も低廉な普通ブロックとしても景観上の問題は生じないのに、自然石を使用することとしていたため、七十九工事において、工事費が不経済となっていた。
                        (指摘金額 五千八百六十万円)
 ◇日本道路公団
 ・橋りょう工事における下部工検査路の設計について
  橋りょうに設置する定期点検等のための下部工検査路の設計に当たり、支持部材の設置間隔と所定の荷重に耐えられる主桁の部材の規格との組合せについては最も経済的なものを選定する要があったのに、上部工検査路の設計をそのまま準用するなどしていたため、百七十七工事において、工事費が不経済となっていた。
                          (指摘金額 八千八百万円)
 ◇首都高速道路公団
 ・料金収受業務委託契約における厚生年金保険料等の積算について
  料金収受業務委託契約における厚生年金保険料等の事業主負担額の積算に当たり、保険料等の徴収の対象外となっている高年齢者が多数雇用されていたのに、その実態を反映させていなかったため、十九契約において、厚生年金保険料等の積算額が過大になっていた。
                      (指摘金額 二億一千四百五十万円)
 ◇阪神高速道路公団
 ・料金収受業務委託契約における厚生年金保険料等の積算について
  料金収受業務委託契約における厚生年金保険料等の事業主負担額の積算に当たり、保険料等の徴収の対象外となっている高年齢者が多数雇用されていたのに、その実態を反映させていなかったため、十五契約において、厚生年金保険料等の積算額が過大になっていた。
                        (指摘金額 一億七千五十万円)
 ◇住宅・都市整備公団
 ・受託業務に係る外注費及び間接経費を委託者へ負担させることについて
  道路、公園等の公共公益施設の整備を地方公共団体から受託するに当たり、設計、工事監督等を外注する場合の外注費及び受託業務の実施に伴う人件費、物品費等の間接経費は、受託業務の実施のために必要な経費であることから、委託者である地方公共団体に負担させるべきであるのに、外注費の一部や間接経費を負担させていなかったため、四支社において、委託者から収受する受託費が低額となっていた。
                        (指摘金額 二億七千十七万円)
 ・賃貸住宅の修繕工事における外部足場費の積算について
  賃貸住宅の修繕工事における外部足場費の積算に当たり、修繕日数について標準的な施工日数を設定することが可能であるのに、標準的な施工日数を設定していなかったり、外部足場の架設・撤去日数について、実際の作業では資材を順次搬入、搬出しているのに、一括して搬入、搬出することとして損料を算定したりしたため、三十六工事において、外部足場費の積算額が過大になっていた。
                           (指摘金額 六千百万円)
 ◇日本国有鉄道清算事業団
 ・固定資産税及び都市計画税の納付について
  固定資産税等の納付に当たり、JR東日本等が旧国鉄等から承継した土地で事業団名義となっているものや事業団の非課税の土地などに対して課税されていたのに、土地についての状況を十分把握していなかったなどのため、八支社において、負担する必要がなかった固定資産税等を納付していた。
                       (指摘金額 一億四千七百十万円)
 ◇日本たばこ産業株式会社
 ・たばこの保管・仕分設備の使用料の算定について
  輸入たばこの保管・仕分設備の貸付けにおいて、取扱業者から収受する設備使用料の算定に当たり、貸付設備の投資回収期間を法定耐用年数の十二年とすべきなのに、二十年としていたため、設備使用料の効率的な回収が図られていなかった。
                        (指摘金額 一億七百二十万円)
 ◇日本電信電話株式会社
 ・電話回線等の伝送装置に搭載する蓄電池の設計について
  停電時の予備電源として電話回線等の伝送装置に搭載する蓄電池の設計に当たり、停電に対する保守体制が夜間無派遣から常時対応へと移行してきたことなどから、蓄電池の保持時間を短く設定したり、小容量の蓄電池を選定したりすることができたのに、十支社において、保守体制を夜間無派遣と想定して保持時間及び容量を算出したため、蓄電池の購入費が不経済となっていた。
                        (指摘金額 五千九百二十万円)
 ・公衆電話機用収納設備の借料の算定について
  公衆電話機用収納設備の調達、保守管理等の業務委託契約において、受託会社に購入させて使用する収納設備の借料を、耐用年数を超え、調達に要した額が回収されているものについても支払っていたため、十支店において、委託費が不経済となっていた。
                        (指摘金額 一億八千七十万円)
 ◇四国旅客鉄道株式会社
 ・光ファイバケーブル新設工事における敷設費及び接続費の積算について
  光ファイバケーブル新設工事における敷設費及び接続費の積算に当たり、単心形の光ファイバケーブルに代わり四本の光ファイバを束ねた構造のものが広く使用されるようになっており、光ファイバケーブルの敷設及び接続作業が能率的になっているのに、積算の基準が施工の実態を反映していなかったため、七工事において、敷設費及び接続費の積算額が過大になっていた。
                        (指摘金額 七千三百九十万円)
 ◇九州旅客鉄道株式会社
 ・光ファイバケーブル新設工事における敷設費の積算について
  光ファイバケーブル新設工事における敷設費の積算に当たり、単心形の光ファイバケーブルに代わり四本の光ファイバを束ねた構造のものが広く使用されるようになっており、光ファイバケーブルの敷設作業が能率的になっているのに、積算の基準が施工の実態を反映していなかったため、六工事において、敷設費の積算額が過大になっていた。
                        (指摘金額 五千八百八十万円)
 ◇エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社
 ・無線装置の増設に係る専用回線の使用契約について
  無線装置と交換機の間の専用回線に係る使用契約に当たり、無線装置を増設して交換機との専用回線を新設した場合は、増設した設備の信頼性を確認した後に、NTTに対して不要となった既存の専用回線を利用休止する請求ができたのに、これを行っていなかったため、十七回線に係る使用料金が不経済となっていた。
                          (指摘金額 六千四百万円)

【特に掲記を要すると認めた事項】

 「特に掲記を要すると認めた事項」として一件掲記した。
 ・アメリカ合衆国政府の有償援助による装備品等の調達について
  防衛庁では、昭和三十一年度以降アメリカ合衆国政府の有償援助(FMS)により装備品等の調達を実施している。FMS調達は有償援助であることから合衆国政府から種々の取引条件が示されており、そのうちの一つに代金の前払が定められている。平成九年度末現在において、前払金のうち未精算となっている額は三千三百四十五億円の多額に上っている。検査したところ、出荷予定時期を過ぎているのに調達品等の納入が大幅に遅延していて、装備品等が本来の機能を十分発揮していない事態、納入後一年以上経過しているのに精算が完了していない事態、合衆国政府の見積価格が高めに設定される傾向にあるため前払金が過大となっている事態が見受けられた。
  防衛庁では、これらの事態について適切を欠く事態と認識し、これまで合衆国政府と出荷及び精算の促進について討議するなどの対策を執ってきているが、依然、事態の抜本的な改善が見られていない。これらの事態が解決されないまま推移すると、資金が利息も発生しないままアメリカ合衆国に滞留することとなり、国庫金の有効活用が図られないこと、防衛力の整備に支障を来す懸念があることなどが継続すると認められる。
  これらの事態が生じているのは、基本的には合衆国政府の事情によるものであるが、防衛庁においても、限られた予算を効率的に使用して我が国の安全を確保するため更に関係機関と調整を図りながら問題解決に向けた新たな方策を導入するよう努力するなどして可能な限り事態の改善を図り、国費の使用について国民の理解が得られるよう努めることが望まれる。
                       [背景金額 一千四百五十四億円]
  (平成九年度末現在の前払金の精算が完了していないもののうち出荷予定時期を過ぎたものの金額)

V 国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況の概要

 「国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況」として計九件掲記した。

1 国会からの検査要請事項に関する検査状況                一件

 ・公的宿泊施設の運営に関する会計検査の結果について
  本院は、衆議院議長から会計検査院長に対してなされた検査の要請を受け、厚生省(社会保険庁)、郵政省、雇用促進事業団、簡易保険福祉事業団及び年金福祉事業団の公的宿泊施設三百七十施設の設置・運営状況等について検査を実施した。
  公的宿泊施設については、民間同種施設の充実などを背景として、臨時行政調査会の答申や閣議決定において新設の抑制方針が示され、以降の新設施設は、従来の宿泊保養といった単機能型から健康増進機能等を併せ備えた多機能型へと変化してきた。
  一方、各種社会保険の給付と負担をめぐっては、制度のあり方を含めて様々な議論がなされており、資金運用面では、簡易生命保険を含めて、金利の低下や収益率の低迷など厳しい環境下にある。
  このような状況の下で、被保険者の支払保険料などの限られた財源を用いて施設の設置目的を有効かつ効率的に達成するためには、設置者において施設の稼働率や収支の状況を十分把握・検討すること、被保険者等は施設の本来的な利用者であり、費用の最終的な負担者であることを念頭に置いて施設の運営を行うこと、設置者において業績評価制度を確立するなどして事業の評価を適切に行うことなどが、今後の公的宿泊施設の設置・運営の課題として考えられる。
  いずれの公的宿泊施設においても、施設の設置・運営に関わる者、施設利用者及び財源の最終負担者だけでなく、地方公共団体、地域住民、さらには民間の同種事業者など多くの人々も様々な利害関係を持ち、相互に影響を及ぼしていること、公的宿泊施設の中には、宿泊機能のみならずその他の機能を併せ持つものが少なくないことから、公的宿泊施設のあり方について幅広く議論がなされることが肝要である。

2 特定検査対象に関する検査状況                     八件

@ 国庫補助事業に係る旅費等の執行について
 本院では、昨年に引き続き、国庫補助事業に係る旅費等の執行に関し、その経理処理が適正に行われているか、四十七都道府県における内部調査の取組状況などについて報告を求め、その内容を調査検討した。
 これらの報告によれば、平成十年十月末までの累計で、二十三道府県において総額四百三十一億余円の旅費等の執行に関して不適正な経理処理が行われていた。そして、会計実地検査の際、前記の一部を抽出して国庫補助金の返還額等の確認を行ったところ、特に指摘する事態は見受けられなかった。
 本院では、国庫補助事業に係る旅費等の執行については厳正な経理処理が求められているので、今後とも十分留意して検査に努めることとする。
A 公共工事に関する入札・契約制度の運用について
 国及び公団等並びに地方公共団体は、毎年、多数の公共工事を請負契約により施行しており、これまでは事務手続の効率性、工事の信頼性等を理由にほとんどの公共工事は指名競争入札により発注されてきた。しかし、公共工事の入札及び執行をめぐる内外の動向を踏まえ、平成六年一月、政府は「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」を策定し、透明性、客観性、競争性を確保した入札方式を採用することとした。現在、各発注機関では、新入札制度として、制限付き一般競争、公募型指名競争、工事希望型指名競争を実施するための規程等を整備している。
 本院では、前記行動計画の策定から五年が経過しようとしていることから、新入札制度が着実に導入され、運用実績も伴ったものとなっているかについて検査し、併せて最低制限価格制度及び低入札価格調査制度の実施状況についても検査した。その結果、件数でみると従来型の入札が大部分を占めているが、金額比ではおおむね五割を新入札制度が占めていた。
 しかし、@市町村については、行動計画に触れられていないこともあり、新入札制度の実績は少なく、その導入・実施についての環境を整備する要がある。A競争性については、従来型の入札と新入札制度との間に落札比率の顕著な差異は見られなかった。B低入札価格調査制度は、最低制限価格制度に比べて個別原価を審査できる点で望ましい制度であり、また、今回の検査においても、この制度を適用した場合の排除者は極めて少なく、調査基準価格以下の価格で契約をほとんど履行できている状況であるので、導入コストを勘案しつつ、この制度が広く採用されることが望まれる。
 本院としては、公共工事の品質の確保及び中小建設業者への影響も考慮しながら、効率性、経済性の観点から、入札・契約制度の運用について引き続き注視していくこととする。
B 防衛庁における装備品等の調達に係る会計検査について
 平成九年十一月以降、防衛庁調達実施本部と装備品等の製造請負契約等を締結している四社に係る過大請求事案について国会において審議が行われ、また、十年九月及び十月に、このうち二社に係る事案に関して、東京地方検察庁は関係者について公判請求を行った。
 本院は、装備品等の調達に係る検査について、従来から、重要な検査対象として鋭意検査を行ってきた。調達実施本部では装備品等の多くを原価計算方式により予定価格を決定しているが、本院において調達実施本部等における検査では原価に係る確認が十分できないと判断したときは、製造請負会社に赴いて調達実施本部職員の立会いの下に会社の協力を得ながら確認を行う、いわゆる肩越し検査を実施している。
 前記二社の事案についても、過大請求が明らかになった時点で、本院は適正な返還金額等を検証すべく努めてきたところであるが、個別契約ごとに適正な支払額との差額の算定に必要となる基礎的資料が入手できなかったなどのため、調達実施本部の執った処置を不適正なものと断定するまでに至らなかった。
 本院は、このような状況にかんがみ、会社の検査について事態の解明に必要と認められる場合には、会計検査院法に基づき会社を検査指定して直接に検査を行ったり、原価検査を担当する専門組織を設置したりすることなど装備品の調達等に係る検査体制の一層の充実・強化を図るための方策を検討している。
C 政府開発援助について
 我が国は、開発途上国の健全な経済発展を実現することを目的として、その自助努力を支援するため、政府開発援助を実施している。その額は無償資金協力やプロジェクト方式技術協力、直接借款などいずれも毎年多額に上っている。
 この政府開発援助については、外務省等の援助実施機関に対して検査を行うとともに、平成十年中に、七箇国の九十六事業について現地調査を実施した。これらの援助に対する検査は、相手国に対して本院の検査権限が及ばないことや事業現場が海外にあることなどの制約の下で実施した。その結果、相手国の事業環境の変化、予算の不足などのため、無償資金協力により建設された施設などが計画どおり利活用されておらず、援助の効果が十分発現していない事態が五事業において見受けられた。
 このような事態が生じているのは、主として相手国の事情によるものであるが、我が国としては、今後も相手国の自助努力を絶えず促すとともに、相手国が実施する事業に対する支援のための措置をより一層充実させることが重要である。
D 金融システムの安定化等のための緊急対策について
 金融機関の破綻が相次ぐなどの金融環境の変化に対応し、平成十年二月、預金等の全額保護の徹底を期するため「預金保険法の一部を改正する法律」が、また、金融機関等の自己資本の充実を図り金融システムの安定化を図るため「金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律」が成立し施行された。そして、これらの法律に基づき、預金保険機構が特別資金援助等の特例業務や優先株式等の引受け等の金融危機管理業務を円滑に行えるよう、国は、預金保険機構に対し国債を交付するとともに、債務保証を行うことができることとなった。
 さらに、十年十月には、金融機能の再生、早期健全化等を図るため「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」、「金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律」等が成立し施行された。そして、預金保険機構は、破綻し又は破綻するおそれのある金融機関の管理等を行うなどの業務を拡大することとなり、これに対しても国は債務保証を行うことができることとなった。
 前記の緊急対策の枠組みについては、公的資金を民間企業の資本に用いるという特別な措置を含むことから、国民の関心も高い。
 本院では、十年次の検査においては、以上の法律に基づく緊急対策のうち、十年二月施行の改正預金保険法及び金融機能安定化緊急措置法の枠組みに基づく九年度の預金保険機構の業務、国債の交付、政府保証等について、その実施状況を検査した。
 検査した結果、これらの措置は法令及び予算に従い適正に実施されていた。しかし、今後、破綻した多くの金融機関について処理が行われることが見込まれ、また、十年度の新たな枠組みにより、預金保険機構は金融機関の管理等の業務も行うこととなった。
 このように事態が流動的であり、将来的に国債の償還や債務の保証がどの程度必要になるか見通し難い要素があることから、現時点で金融システムの安定が図られたか否かなどについて判断するには至らなかった。本院としては、今後とも緊急対策の実施状況について、その推移を注視することとする。
E 郵便物の新型区分機等の調達について
 郵便物の区分機の調達等については、従来から会計検査を実施してきたが、新郵便番号制の導入に伴い、平成九年度以降に新型区分機等が多数導入されることなどから、十年次の検査においても重点的に検査することとした。
 検査したところ、新型区分機等の九年度の調達においては、ほとんどの契約で特定の製造会社二社のうちのいずれか一社のみが入札及び落札しており、区分機の調達が特定の製造会社に固定化されている状況が見受けられた。そして、落札比率の平均が九八%から九九%となっているなど、一般競争契約による競争の利益が十分に実現されているとはいえない状況にあると思料される。
 一方、十年度の調達においては、新たに一社が入札に参加したこと、落札比率が低下したことなどからみて、九年度の調達と比べれば競争性が増していると考えられる。しかし、一社しか入札していない契約がなお四割程度あることなどから、競争性を更に高めることを検討する余地があると思料される。
 したがって、郵政省においては、関係職員に対して一般競争契約の趣旨を十分理解させるとともに、会社間のより有効な競争によって経済性を確保するために、仕様書等の入札条件を緩和するなどして、更に競争の余地が広がるような条件を整えることについて検討することが肝要である。
F 北海道東北開発公庫が出資・融資した土地開発事業について
 北海道東北開発公庫は、昭和四十四年に策定された新全国総合開発計画に示された基本構想等に基づき開発が進められている苫小牧東部開発地域及びむつ小川原開発地域の開発主体である苫小牧東部開発株式会社及びむつ小川原開発株式会社に対し、これまで民間金融機関等と協調して多額の出資・融資を行っている。
 両会社は、それぞれ第三セクターとして設立され、用地の取得、造成及び分譲などを行い、また、関係各省庁、地方公共団体等が港湾、道路等の基盤整備を実施するなど、両地域の開発は国家的事業として総合的に推進されてきた。
 しかし、二度の石油危機等による原油価格の高騰、プラザ合意以降の急激な円高に伴う企業の海外進出等の要因から、当初想定した石油精製等の基幹工業が進出しなかったことなどのため、両会社における平成九事業年度末現在の工業用地の分譲率は、それぞれ一四・九%、三八・三%と低いものとなっている。工業用地の分譲が計画どおり進ちょくせず、分譲収入がごくわずかとなっていることから、苫小牧東部開発株式会社については九年十一月以降元利金の支払が延滞となっており、むつ小川原開発株式会社についても債務が累増し資金収支は極めて厳しい状況となっている。
 両地域の開発については、九年九月に政府において決定された「特殊法人等の整理合理化について」に基づき、関係省庁、公庫、地方公共団体及び民間団体等の関係者間で協議が進められているところであるが、前記の事態にかんがみ、早急に結論が得られるよう、協議の促進を図る要があると認められる。
G 石油等の探鉱投融資事業について
 石油公団の探鉱投融資事業においては、生産中の開発会社の経営状況が公団の財務状況に及ぼす影響は大きく、昭和六十一年以降、開発会社の経営悪化に伴い受取配当金や貸付金利息が減少している公団の財務状況等に対して社会的関心が高まっている。本院は、このような状況を踏まえ、探鉱投融資事業が適切に運営されているかに着眼して検査を実施した。
 開発会社に対する投融資額は大幅に増加しており、元加利息もこれに伴って多額となってきている。また、生産段階に達しているものの経営が悪化している会社も生じており、これに伴って多額の長期未収金も発生している。
 このような探鉱投融資事業の状況の下で、通商産業省及び公団においては、事業の採択等に当たって十分慎重な検討を加える必要があることはもちろんであるが、事業実施後、開発会社、特に生産中の開発会社について、油価や為替相場の動向を勘案し、その経営状況を十分見極めて資金回収の可能性を検討し、その結果によって適切な額の投融資損失引当金を計上したり、開発会社の整理等を考慮したりするなど、的確な措置を講ずる要がある。
 また、石油公団再建検討委員会では、公団において、資金収支を分析した結果、開発会社を整理すること、適切な引当金の計上方法を採用すること、損失引当金に多額の積増しが必要になることなどを内容とする報告書を公表している。
 本院としては、通商産業省及び公団において、前記の報告書に沿って進められる探鉱投融資事業の改善策について、引き続き注視していくこととする。

第2 観点別の検査結果

 会計検査院は、第1節の(2 検査の観点)で述べたとおり、正確性の側面、合規性の側面、経済性・効率性の側面、有効性の側面という多角的な観点から検査を実施した。その結果は「第1 事項等別の検査結果」で述べたとおりであるが、このうち、検査の観点に即して事例を掲げると次のとおりである。

1 主に業務が予算、法令等に従って適正に実施されているかに着眼したもの

 検査対象機関は、予算、法令等に従って適正に業務を実施しなければならない。この業務の執行に際し、予算、法令等が守られているか、さらには予算、法令等の趣旨に適合した制度の運用が行われているかに着眼した検査として、次のようなものがある。
 @ 租税及び保険料は法令等に従って適正に徴収すべきものであるので、個々の徴収額に過不足がないかを検査した。その結果、「租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」、「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」及び「労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」を不当事項として掲記した。
 A 府県の教育委員会等において実施された文部省委嘱等事業について、事業の実施及び事業経費の経理処理が適正かを検査した。その結果、「架空の名目により謝金、旅費等を支出させ、これを別途に経理して目的外の用途に使用するなどしていたもの」を不当事項として掲記した。
 B 特別支給の老齢厚生年金の裁定を受けその全額を支給されている受給権者等について、その支給の適否を検査した。その結果、「厚生年金保険の老齢厚生年金等及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの」を不当事項として掲記した。
 C 医療機関からの診療報酬や労災診療費の請求に対する支払が適正か、大学病院等における診療報酬の請求が適正かを検査した。その結果、「医療費に係る国の負担が不当と認められるもの」、「労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの」、「大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術料等の請求額に過不足があったもの」及び「労災病院における診療報酬の請求に当たり、麻酔料等の請求額が不足していたもの」を不当事項として掲記した。また、「特別養護老人ホーム等の入所者に対する診療報酬の請求の取扱いを明確にすることにより、その請求が適切に行われるよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。
 D 老人福祉施設等整備事業や老人デイサービス運営事業に係る補助金又は貸付金は、適正に交付され又は貸し付けられているかを検査した。その結果、「社会福祉施設等施設整備費補助金等の経理が不当と認められるもの」及び「福祉貸付資金等の貸付けが不当と認められるもの」を不当事項として掲記した。また、「在宅福祉事業費補助金(老人デイサービス運営事業分)の算定について」として是正改善の処置を要求した。
 E 政府管掌健康保険の予防健診事業について、事業の経理処理は適正に行われているか、また、医療機関等に対する委託費は適切に支払われているかなどに着眼して検査した。その結果、「政府管掌健康保険生活習慣病予防健診事業の実施について」として是正改善の処置を要求した。
 F 固定資産税等の納付に係る事務が適切に実施され、固定資産税等の負担が適正なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「固定資産税等の納付に係る事務処理体制を整備することにより、その納付を適切なものにするよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。

2 主に業務が経済的・効率的に実施されているかに着眼したもの

 検査対象機関の業務は、その事業目的を達成する上で、経済的・効率的に実施されなければならない。すなわち、経費は節減できないか、同じ費用でより大きな成果が得られないかという観点であるが、この点に着眼した検査として次のようなものがある。
 @ 航空機用燃料の予定価格の算定事務及び入札等の契約事務の執行は適切に行われているかなどに着眼して検査した。その結果、「航空タービン燃料JP―4の調達に係る事務を適切に行うよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。
 A 電力会社が電気の効率的な使用や電力需給の調整のため各種の契約種別や割引制度を設けていることを踏まえ、電力を多量に使用する部局について、電気需給契約が経済的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「電気需給契約において、夏季割引制度を導入することにより電気料金の節減を図るよう改善させたもの」及び「電気需給契約において、季節別時間帯別電力の適用を受けられるよう契約変更を行い、電気料金の節減を図るよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。
 B 高年齢者等は社会保険料等の徴収の対象外などとなっていることから、それらの者が多数従事している業務の請負又は委託契約に当たり、社会保険料等の積算が適切なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「工場等での業務の請負契約における社会保険料等の事業主負担額の積算について、雇用の実態を反映させるよう改善させたもの」及び「料金収受業務委託契約における厚生年金保険料等の事業主負担額の積算について、雇用の実態を反映させるよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。
 C 政府米の運送契約において、料金決定の基準とする車両トン数が各地域の運送数量や道路事情等の実態に適合したものとなっているかなどに着眼して検査した。その結果、「政府米の運送業務におけるトラック運賃の算定方法を運送の実態に適合するよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。
 D 国及び都道府県の負担で資金造成した特別会計の運営、及び同特別会計等から資金を借り入れて事業を実施する機関における財源の調達が経済的・効率的に行われているかなどに着眼して検査した。その結果、「中小企業設備貸与事業の財源調達を経済的に行うことができるよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。
 E 近年、景観等への配慮から、護岸にはコンクリートブロックに代えて工事費が割高となる自然石を使用する例が増えていることから、適切に設計されているかに着眼して検査した。その結果、「河川改修事業等の護岸の根入れ部に使用する材料の選定を適切に行い、経済的な設計を行うよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。
 F 受託業務に要する費用の算定に当たり、実際に支出した費用や間接経費を委託者に適切に負担させているかなどに着眼して検査した。その結果、「受託業務に係る外注費及び間接経費を委託者に適切に負担させるよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。
 G 各種施設や設備の賃貸借に当たり、その貸付料あるいは借料が設置後の耐用年数等に応じた適切なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「たばこの保管・仕分設備等の貸付けに当たり、設備使用料の算定を適切なものとするよう改善させたもの」及び「公衆電話機用キャビネット型及びスタンド型の収納設備の調達に関する業務を委託するに当たり、その借料を適切に算定することにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。

3 主に事業が所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどに着眼したもの

 検査対象機関の事業の中には、一定の目的の下に、社会資本を整備したり、物品を取得又は財産を保有したり、各種の財政援助、助成措置を講じたりなどしているものがあるが、これらが所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどに着眼した検査として次のようなものがある。
 @ 国の科学研究費補助金を使用して行った学術研究について、研究成果を社会に還元するという目的が十分達成されているか、また、研究の事後評価が十分行えるようになっているかに着眼して検査した。その結果、「科学研究費補助事業の実施について」として改善の処置を要求した。
 A 国有地は適切に管理されているか、また、当初の目的の用途に使用されなくなった土地について、その後の利用の検討が速やかになされ、有効な利活用が図られているかなどに着眼して検査した。その結果、「未利用国有地について、利用方針を策定させるなどして有効な利活用を図るよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。
 B 農業の生産性の向上、農業経営の安定等に資するなどのため設置した施設や、林業者等の就業・所得機会の増大等を図り、林業・山村地域の活性化等に資するため設置した施設が、適切に運営され利用実績が上がっているか、運営収支が均衡のとれた健全なものとなっているかなどに着眼して検査した。その結果、「先進的農業生産総合推進対策事業等による農産物処理加工施設、農産物集出荷施設の設置及び運営について」及び「林業構造改善事業等による施設の設置及び運営について」として是正改善の処置を要求した。
 C 国営かんがい排水事業と関連する都道府県営、市町村営等の土地改良事業とが連携して施行されるよう計画されていたか、これら事業の実施時期が投資効率の算定に的確に反映されていたかなどに着眼して検査した。その結果、「国営かんがい排水事業の施行について、附帯する事業の予定実施時期を的確に把握し、それを事業の評価に反映させて、かんがい排水事業全体の効果的な実施を図るよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。
 D 農業の担い手の育成と確保等に資するための農業改良資金の貸付けにおいて、貸付対象である農業経営は貸付けの趣旨に沿って適切かつ効果的に運営されているかなどに着眼して検査した。その結果、「農業改良資金の青年農業者等育成確保資金に係る貸付事業が貸付けの趣旨に沿って適切かつ効果的に実施されるよう改善させたもの」を本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として掲記した。
 E 農業者年金事業において、未加入者の加入促進活動、未納保険料の収納対策、年金支給時の経営移譲の確認等が適切かつ効果的に行われ、事業が適切に実施されているかに着眼して検査した。その結果、「農業者年金事業の実施について」として改善の処置を要求した。
 F 多額の前金払による防衛庁の装備品等の調達において、予算が効率的に執行されているか、調達が所期の目的を達成しているかなどに着眼して検査した。その結果、「アメリカ合衆国政府の有償援助による装備品等の調達について」を特に掲記を要すると認めた事項として掲記した。


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十二月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十年十二月結果の概要―


総 務 庁


◇就業状態別の動向

 平成十年十二月末の十五歳以上人口は、一億七百四十七万人で、前年同月に比べ六十七万人(〇・六%)の増加となっている。
 これを就業状態別にみると、就業者は六千四百四十三万人、完全失業者は二百七十三万人、非労働力人口は四千十九万人で、前年同月に比べそれぞれ六十五万人(一・〇%)減、五十五万人(二五・二%)増、七十五万人(一・九%)増となっている。
 また、十五〜六十四歳人口は八千六百八十万人で、前年同月に比べ七万人(〇・一%)の減少となっている。これを就業状態別にみると、就業者は五千九百八十七万人、完全失業者は二百六十四万人、非労働力人口は二千四百十八万人で、前年同月に比べそれぞれ六十四万人(一・一%)減、五十四万人(二五・七%)増、二万人(〇・一%)増となっている。

◇労働力人口(労働力人口比率)

 労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は六千七百十七万人で、前年同月に比べ九万人(〇・一%)の減少となっている。男女別にみると、男性は四千十五万人、女性は二千七百一万人で、前年同月と比べると、男性は七万人(〇・二%)の増加、女性は十七万人(〇・六%)の減少となっている。
 また、労働力人口比率(十五歳以上人口に占める労働力人口の割合)は六二・五%で、前年同月に比べ〇・五ポイントの低下と、十一か月連続の低下となっている。

◇就業者

(一) 就業者

 就業者数は六千四百四十三万人で、前年同月に比べ六十五万人(一・〇%)減と、十一か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千八百四十三万人、女性は二千六百一万人で、前年同月と比べると、男性は三十二万人(〇・八%)減と、十二か月連続で減少、女性は三十三万人(一・三%)減と、七か月連続で減少となっている。

(二) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百七十四万人、自営業主・家族従業者は一千四十五万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は四十六万人(〇・八%)減と、十一か月連続で減少、自営業主・家族従業者は二十五万人(二・三%)減と、十一か月連続の減少となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 ○非農林業雇用者…五千三百三十九万人で、四十八万人(〇・九%)減、十一か月連続の減少
 ○常 雇…四千六百八十九万人で、六十七万人(一・四%)減、十二か月連続の減少
 ○臨時雇…五百二十三万人で、二十万人(四・〇%)増、平成八年九月以降増加が継続
 ○日 雇…百二十七万人で、一万人(〇・八%)減、平成十年七月以来五か月ぶりの減少

(三) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 ○農林業…二百六十一万人で、七万人(二・六%)減、七か月連続で減少、減少幅は前月(十一万人減)に比べ縮小
 ○建設業…六百六十八万人で、二万人(〇・三%)減、平成九年十一月以降十四か月連続で減少、減少幅は五月(四万人減)以来七か月ぶりの一桁台
 ○製造業…一千三百八十四万人で、四十四万人(三・一%)減、平成九年六月以降十九か月連続で減少、減少幅は前月(五十五万人減)に比べ縮小
 ○運輸・通信業…四百二十五万人で、七万人(一・六%)減、七か月連続で減少、減少幅は前月(八万人減)に比べ縮小
 ○卸売・小売業、飲食店…一千四百七十九万人で、九万人(〇・六%)減、三か月連続で減少、減少幅は前月(七万人減)に比べ拡大
 ○サービス業…一千六百四十万人で、二十万人(一・二%)減、平成八年九月以来の減少
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 ○建設業…五百五十八万人で、二万人(〇・四%)減、七か月連続で減少、減少幅は前月(十万人減)に比べ縮小
 ○製造業…一千二百六十六万人で、三十四万人(二・六%)減、平成九年六月以降十九か月連続で減少、減少幅は前月(四十七万人減)に比べ縮小
 ○運輸・通信業…四百六万人で、五万人(一・二%)減、六か月連続で減少、減少幅は前月(六万人減)に比べ縮小
 ○卸売・小売業、飲食店…一千百九十五万人で、十三万人(一・一%)増、六か月連続で増加、増加幅は前月と同数
 ○サービス業…一千三百九十二万人で、二十九万人(二・〇%)減、昭和六十年七月以来の減少

(四) 従業者階級

 企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 ○一〜二十九人規模…一千七百七十七万人で、十二万人(〇・七%)増加
 ○三十〜四百九十九人規模…一千七百三十八万人で、二十九万人(一・六%)減少
 ○五百人以上規模…一千二百五十九万人で、十七万人(一・三%)減少

(五) 就業時間(注)

 十二月二十日から二十六日の一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 ○一〜三十五時間未満…二千十九万人で、八十二万人(三・九%)減少
 ○三十五時間以上…四千二百八十一万人で、十二万人(〇・三%)増加
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四〇・九時間で、前年同月に比べ〇・二時間の増加となっている。
 (注) 前年同月増減をみる場合、前年の十二月二十日から二十六日の一週間は、三連休が取りやすいなどの曜日構成の影響があり、注意を要する。

(六) 転職希望者

 就業者(六千四百四十三万人)のうち、転職を希望している者(転職希望者)は六百八万人で、このうち実際に求職活動を行っている者は二百三十一万人となっており、前年同月に比べそれぞれ十七万人(二・九%)増、四万人(一・八%)増となっている。
 また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)は九・四%で、前年同月に比べ〇・三ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は九・三%、女性は九・六%で、前年同月に比べ男性は〇・四ポイントの上昇、女性は〇・三ポイントの上昇となっている。

◇完全失業者

(一) 完全失業者数

 完全失業者数は二百七十三万人で、前年同月に比べ五十五万人(二五・二%)の増加となっている。男女別にみると、男性は百七十三万人、女性は百一万人で、前年同月に比べ男性は三十九万人(二九・一%)の増加、女性は十七万人(二〇・二%)の増加となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 ○非自発的な離職による者…八十九万人で、二十六万人増加
 ○自発的な離職による者…九十六万人で、十二万人増加
 ○学卒未就職者…十一万人で、四万人増加
 ○その他の者…六十二万人で、八万人増加

(二) 完全失業率(原数値)

 完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は四・一%で、前年同月に比べ〇・九ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は四・三%、女性は三・七%で、前年同月に比べ男性は一・〇ポイントの上昇、女性は〇・六ポイントの上昇となっている。

(三) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
〔男〕
 ○十五〜二十四歳…三十二万人(五万人増)、七・七%(一・四ポイント上昇)
 ○二十五〜三十四歳…三十八万人(十一万人増)、四・二%(一・一ポイント上昇)
 ○三十五〜四十四歳…二十三万人(六万人増)、二・九%(〇・七ポイント上昇)
 ○四十五〜五十四歳…二十七万人(七万人増)、二・九%(〇・八ポイント上昇)
 ○五十五〜六十四歳…四十四万人(八万人増)、六・五%(一・一ポイント上昇)
 ・五十五〜五十九歳…十五万人(四万人増)、三・七%(〇・九ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…二十九万人(四万人増)、一〇・四%(一・五ポイント上昇)
 ○六十五歳以上…八万人(二万人増)、二・七%(〇・七ポイント上昇)
〔女〕
 ○十五〜二十四歳…二十六万人(五万人増)、六・七%(一・四ポイント上昇)
 ○二十五〜三十四歳…三十三万人(三万人増)、五・九%(〇・四ポイント上昇)
 ○三十五〜四十四歳…十四万人(二万人増)、二・七%(〇・四ポイント上昇)
 ○四十五〜五十四歳…十六万人(四万人増)、二・四%(〇・六ポイント上昇)
 ○五十五〜六十四歳…十一万人(三万人増)、二・七%(〇・七ポイント上昇)
 ○六十五歳以上…一万人(同数)、〇・六%(同率)

(四) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 ○世帯主…八十二万人(十八万人増)、三・〇%(〇・六ポイント上昇)
 ○世帯主の配偶者…三十三万人(四万人増)、二・三%(〇・三ポイント上昇)
 ○その他の家族…百十四万人(二十二万人増)、六・四%(一・三ポイント上昇)
 ○単身世帯…四十四万人(十一万人増)、五・七%(一・四ポイント上昇)

(五) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率は四・三%で、前月に比べ〇・一ポイントの低下となっている。男女別にみると、男性は四・四%で、前月に比べ〇・一ポイントの低下、女性は四・二%で、前月に比べ〇・二ポイントの低下となっている。









    <3月17日号の主な予定>

 ▽平成十年平均全国消費者物価指数の動向………総 務 庁 

 ▽毎月勤労統計調査…………………………………労 働 省 




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