▽ 犯罪白書のあらまし…………………………………………法 務 省
▽ 毎月勤労統計調査(七月分結果速報)……………………労 働 省
▽ 七月分家計収支………………………………………………総 務 庁
犯罪白書のあらまし
<はじめに>
本白書は、平成九年を中心とした最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を概観するとともに、特集として「少年非行の動向と非行少年の処遇」を取り上げている。
我が国における戦後の少年非行の動向を、少年刑法犯検挙人員を基に振り返ってみると、昭和二十六年、三十九年及び五十八年をそれぞれピークとする三つの波が認められる。
第一の波は、終戦直後の社会的・経済的混乱等を背景としたものであり、第二の波は、十歳代後半の少年人口の増加と、我が国経済の高度成長過程における工業化、都市化等の急激な社会変動を背景としたものであった。また、第三の波は、経済的に豊かな社会における価値観の多様化、家庭や地域社会が果たすべき保護的・教育的機能の低下等を背景としたもので、非行の低年齢化を特徴とするものであった。
ところで、少年刑法犯検挙人員は、昭和五十九年以降、十歳代の少年人口が六十一年をピークに減少傾向にあることなどを反映して減少傾向を示していたが、平成七年を底に増加傾向に転じ、交通関係業過を除く刑法犯検挙人員に占める少年の比率も、九年には五割を超えている。これに伴い、八年以降、検察庁における少年の新規受理人員、少年保護事件の家庭裁判所受理人員、少年鑑別所新収容人員、少年院新収容者数及び保護観察処分少年の新規受理人員は、いずれも増加している。
また、近時、社会の耳目をしょう動させた少年による殺傷事件等の凶悪事犯が発生しているほか、少年の強盗事犯や中学生・高校生による覚せい剤事犯の増加、過去に処分歴のない少年による非行の増加等もあって、少年非行問題については、かつてないほど高い関心が寄せられているように思われる。
一方、近年、少年審判における事実認定が問題となった事件が生じたことを契機として、現行少年審判制度における事実認定手続の在り方が各方面から問われるようになり、少年法改正をめぐる議論も活発化している。
そこで、本白書は、特集として「少年非行の動向と非行少年の処遇」を取り上げ、最近における少年非行の動向や非行少年の処遇の実情、諸外国における少年非行の動向や少年司法制度の運用状況等を概観し、必要な分析を加えることにより、最近の少年非行や非行少年の特質等を明らかにし、より効果的な少年非行対策を講ずる上で役に立つ資料を提供しようとするものである。
本白書の構成は三編から成り、第一編では、最近の犯罪動向及び各種の犯罪と犯罪者の実情等を概観し、第二編では、検察、裁判、矯正及び保護の各段階における成人犯罪者の処遇及び刑事司法における国際協力の実情について紹介し、第三編では、少年非行の動向と非行少年の処遇について記述している(なお、本稿の構成は、要約の便宜上、本白書の構成と一部異なるところがある。)。
<第一編> 犯罪の動向
一 平成九年の犯罪の概観
1 刑法犯の概況(第1表、第1図参照)
(一) 認知件数・検挙人員
平成九年における警察による刑法犯の認知件数は、過去最高の件数を記録し、二百五十一万八千七十四件(前年より五万二千五百七十一件増)となっている。交通関係業過を除く刑法犯認知件数についても、九年は、過去の最高数値である百八十九万九千五百六十四件(同八万七千四百四十五件増)を示している。
平成九年の刑法犯認知件数を罪名別に見ると、窃盗が最も多く、次いで交通関係業過となっており、両者で全体の約九〇%を占めているが、この傾向は過去十年間に大きな変化はない。
平成九年における警察による刑法犯の検挙人員は、九十五万七千四百六十人となっており、これを罪名別に見ると、交通関係業過が最も多く、次いで窃盗となっており、両者で全体の八〇%以上を占めている。
また、交通関係業過を除く刑法犯の検挙人員のうち女子は七万三百八十一人で、女子の占める比率(女子比)は過去最高の二二・四%となっている。
(二) 発生率・検挙率
平成九年における刑法犯の発生率(認知件数の人口十万人当たりの比率)は、一、九九六(前年より三七上昇)と、戦後二番目に高い数値を示し、交通関係業過を除く刑法犯の発生率は、昭和三十一年以来約四十年ぶりに一、五〇〇を超えて一、五〇六(同六六上昇)となっている。
平成九年における交通関係業過を除く刑法犯の検挙率は、四〇・〇%(前年比〇・六ポイント低下)となっている。
検挙率を罪名別に見ると、殺人、強盗及び窃盗は、前年と比べて、それぞれ二・七ポイント、〇・六ポイント及び〇・四ポイント低下しているが、殺人は過去十年間九五%を超え、強盗は平成五年以降八〇%前後であり、窃盗は二年以降三〇%台で推移している。
(三) 主要刑法犯の動向
凶悪犯では、殺人及び強盗共に、平成九年は、前年と比べ、認知件数、検挙件数及び検挙人員が、それぞれ増加した。
粗暴犯では、傷害、暴行、脅迫及び恐喝のいずれについても、前年と比べ、認知件数、検挙件数及び検挙人員が、それぞれ増加した。
財産犯では、前年と比べ、認知件数が横領(遺失物等横領を除く。)以外で、検挙件数が窃盗及び遺失物等横領で、さらに、検挙人員は、窃盗、詐欺、横領(遺失物等横領を除く。)及び遺失物等横領共に、それぞれ増加した。
2 特別法犯の概況
平成九年における特別法犯の検察庁新規受理人員総数は、前年より三万四千百二十二人(三・〇%)増加して、百十六万八千四百七十二人となっており、これを罪名別に見ると、道路交通法違反が百三万六千七百二十四人(八八・七%)と最も多く、次いで、自動車の保管場所の確保等に関する法律違反四万三千十三人(三・七%)となっていて、両者で特別法犯の九〇%以上を占めている。
また、交通関係法令違反を除いた特別法違反の構成比を見ると、覚せい剤取締法違反、毒劇法違反等の薬物関係犯罪が四二・一%と最も高く、以下、入管法違反等の外事関係犯罪が一二・九%、銃刀法違反等の保安関係犯罪が一一・二%となっている。
3 諸外国の犯罪動向との対比(第2表参照)
我が国とアメリカ、イギリス(イングランド及びウェールズをいう。以下同じ。)、ドイツ及びフランスの四か国について、一九九四年から一九九六年までの三年間における殺人の発生率及び検挙率を比較すると、我が国の発生率は、五か国の中では最も低い。また、検挙率については、我が国は九〇%台後半の高い水準で推移しており、他の四か国よりも高くなっている。
4 日本人の国外における犯罪と被害
(一) 日本人の国外における犯罪
平成九年の日本人の国外における犯罪加害状況は、件数では三百十四件(前年三百四十二件)、人員では四百三人(同三百九十三人)となっている。
加害事件の犯罪類型別構成比を見ると、「旅券・査証」関係の事件が二二・〇%、「強盗・窃盗」が一三・四%などとなっている。
(二) 日本人の国外における被害
平成九年の日本人の国外における犯罪被害状況は、件数では六千四百六十六件(前年六千六百九十四件)、人員では七千四百五十八人(同八千五十六人)となっている。そのうち、犯罪被害による死亡者数は二十九人(同二十三人)である。
被害件数の大半は窃盗及び詐欺であり、平成九年はこれらの犯罪被害で総件数の八四・二%(五千四百四十四件)を占めている。
二 各種の犯罪と犯罪者
1 薬物犯罪
覚せい剤事犯の検挙人員は、昭和四十年代半ば以降急激に増加し、五十年代後半から六十三年にかけては二万人を超える水準で推移した。その後は減少傾向を示していたものの、平成七年以降再び増加に転じ、九年は一万九千九百三十七人(前年比一・四%増)となっている。
2 暴力団犯罪
平成九年における交通関係業過及び道交違反(道路交通法違反及び自動車の保管場所の確保等に関する法律違反)等交通関係法令違反を除く暴力団勢力(暴力団の構成員及び準構成員)の検挙人員は三万二千百九人(前年比三・五%減)となっている。
平成九年十二月三十一日現在、五代目山口組、稲川会及び住吉会を含む二十三団体が「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(いわゆる暴力団対策法。平成四年三月施行)による指定暴力団として指定されている。
3 外国人犯罪
外国人による交通関係業過を除く刑法犯検挙人員を、来日外国人とその他の外国人別に見ると、来日外国人では、昭和五十五年には七百八十二人であったが、平成九年にはその七倍の五千四百三十五人(前年比九・八%減)となっている。
道交違反等交通関係を除く特別法犯の送致人員について、来日外国人とその他の外国人別に見ると、来日外国人では、昭和五十五年には二千二百八十人であったが、平成九年にはその三・七倍の八千四百四十八人(同四二・六%増)となっている。この間の三年から六年にかけての増加が著しい。
4 女性の犯罪
平成九年における交通関係業過を除く女子刑法犯検挙人員は七万三百八十一人(前年比一六・〇%増)である。検挙人員総数に占める女子の比率(女子比)は、昭和四十一年には一〇・七%であったが、その後は上昇傾向を示し、平成元年以降はおおむね二〇%前後で推移し、九年は過去最高の二二・四%となっている。
一方、平成九年における交通関係法令違反を除く女子特別法犯の送致人員は、一万一千百九十人(前年より九人減)となっているが、罪名別構成比では、覚せい剤取締法違反が三四・三%と最も多くを占めている。
5 公務員犯罪
平成九年における公務員犯罪の検察庁新規受理人員総数は二万七百四十八人(前年比五・六%減)となっており、これを罪名別に見ると、自動車による業過が総数の八五・二%と圧倒的に多く、以下、職権濫用、偽造の順となっている。
平成九年における公務員犯罪の起訴人員総数は三千八十一人(同二・六%減)であり、起訴率は一四・九%(同〇・三ポイント増)となっている。これを罪名別に見ると、収賄が八七・六%と最も高く、以下、詐欺、窃盗の順となっている。
平成四年から八年までの五年間における収賄事件の第一審裁判所の科刑状況を見ると、九〇%近くは執行猶予に付されている。
6 精神障害者の犯罪
(一) 刑法犯検挙人員中の精神障害者
平成九年における交通関係業過を除く刑法犯検挙人員三十一万三千五百七十三人のうち、精神障害者は六百四十七人、精神障害の疑いのある者は一千二百八十三人で、両者の刑法犯検挙人員に占める比率は〇・六%となっている。また、罪名別検挙人員総数中に占める比率を見ると、放火が一四・四%、殺人が九・〇%と、特に高くなっている。
(二) 心神喪失・心神耗弱者の刑事処分
平成五年から九年までの五年間に、検察庁で不起訴処分に付された被疑者のうち、精神障害のため、心神喪失と認められた者及び心神耗弱と認められ起訴猶予処分に付された者並びに第一審裁判所で心神喪失を理由として無罪となった者及び心神耗弱を理由として刑を減軽された者は、合計四千二十八人である。罪名別では、殺人(七百六十四人、総数の一九・〇%)が最も多く、精神障害名別では、精神分裂病(二千三百八十九人、同五九・三%)が最も多くなっている。
7 財政経済犯罪
(一) 脱税事犯
平成九年における、所得税法違反、相続税法違反及び法人税法違反の検察庁新規受理人員は、それぞれ二百三十人(前年比三二・二%増)、二十七人(同五五・〇%減)及び百八十三人(同二二・八%減)である。
平成九年度(会計年度)の告発件数、告発件数一件当たりの平均脱税額(加算税額を含む。)は、所得税法違反及び相続税法違反が八十四件、約一億七千七百万円(前年比九・九%増)、法人税法違反が八十一件、約二億一千八百万円(同六・〇%増)である。
(二) 経済事犯
平成九年における、商法違反、証券取引法違反及び独占禁止法違反の検察庁新規受理人員は、それぞれ百三十三人(前年の二・〇倍)、八十九人(同一一・一倍)及び五十九人(前年〇人)であり、いずれも前年と比べて大幅に増加している。
8 銃器犯罪
平成九年における銃器発砲事件による死者数は二十二人(前年十七人)で、そのうち暴力団勢力以外の一般人の被害者は九人(同六人)である。
銃器使用犯罪の検挙件数のうち、暴力団勢力以外のものによる検挙件数の比率は、近年上昇し、平成八年には検挙件数の三三・九%に達し、九年も二九・七%と高い水準にある。
けん銃に係る銃刀法違反の送致人員は、平成九年は七百四十五人(前年比一八・三%減)で、これを態様別に見ると、加重所持三百七十四人、所持三百人、発射二十六人となっている。また、押収けん銃数は、八年、九年と減少を続けている。
三 犯罪被害の実情
最近十年間における交通関係業過を除く犯罪被害者数(生命・身体を被害内容とするもの)を見ると、死亡者はおおむね減少傾向にあったが、平成九年は前年と比べて三・八%増加した。また、重傷者及び軽傷者は、三年以降、おおむね横ばいの状態にあったが、九年には前年と比べ、重傷者は一〇・八%、軽傷者は七・五%それぞれ増加した。
平成九年における交通関係業過を除く犯罪被害による死亡者は、総数で一千二百九十六人であり、そのうち殺人によるものが五四・八%(七百十人)を占めている。また、負傷者は、総数で二万五千六百八十九人であり、そのうち傷害によるものが八五・〇%(二万一千八百二十六人)を占めている。
<第二編> 犯罪者の処遇
一 検 察
1 罪名・処理区分別の検察庁終局処理人員(第3表参照)
平成九年における検察庁の終局処理人員総数は二百十万六人(前年比一・一%増)で、その処理別内訳は、公判請求が四・八%、略式命令請求が五〇・一%、起訴猶予が二九・三%などとなっており、起訴率は六四・〇%、起訴猶予率は三四・八%となっている。
さらに、交通関係業過を除く刑法犯の起訴率は五六・八%(同一・〇ポイント増)、起訴猶予率は三六・五%(同一・〇ポイント減)で、交通関係業過の起訴率は一四・六%(同〇・二ポイント増)、起訴猶予率は八五・一%(同増減なし)となっている。また、道交違反を除く特別法犯の起訴率は七五・三%(同一・一ポイント増)、起訴猶予率は二一・八%(同一・一ポイント減)で、道交違反の起訴率は九四・〇%(同〇・一ポイント増)、起訴猶予率は五・六%(同〇・一ポイント減)となっている。
また、平成九年の終局処理人員の罪名別構成比では、道交違反が五二・一%と最も高く、交通関係業過の三〇・七%がこれに続いているが、両者を除いた構成比では、窃盗三九・七%、横領一〇・二%、覚せい剤取締法違反七・五%、傷害七・四%となっている。
2 検察庁既済事件の逮捕・勾留状況
平成九年における交通関係業過及び道交違反を除く検察庁既済事件(三十五万八千五百八十三人)のうち、被疑者が逮捕された事件(身柄事件)の占める比率(身柄率)は、二九・七%(十万六千四百二十二人)であり、これを罪名別に見ると、強姦(八〇・一%)が最も高く、以下、強盗(七四・一%)、殺人(六八・九%)、覚せい剤取締法違反(六七・一%)、銃刀法違反(四六・九%)、恐喝(四六・三%)の順となっている。
また、身柄事件のうち、検察官によって勾留請求された事件の占める比率(勾留請求率)は、九一・五%となっており、勾留請求された事件のうち、裁判官によって勾留が認容された事件の比率(認容率)は九九・九%である。
二 裁 判
1 第一審裁判所の通常手続による終局処理人員(第4表参照)
平成八年における地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所の第一審裁判所としての通常の公判手続による終局処理人員総数は六万三千七百一人(前年比五・二%増)であり、そのうち死刑は一人、無期懲役は三十四人、無罪は五十四人(総数の〇・一%)となっている。
このうち、地方裁判所及び家庭裁判所による第一審における終局処理人員五万四千五百九十二人について罪名別に見ると、最も多いのは覚せい剤取締法違反の一万四千二百十九人(総数の二六・〇%)で、以下、道交違反七千三百四人(同一三・四%)、窃盗五千五百二十四人(同一〇・一%)、業過四千七百五十八人(同八・七%)、入管法違反三千八百七十二人(同七・一%)、詐欺三千百七十八人(同五・八%)の順となっている。
一方、簡易裁判所における通常手続による終局処理人員九千百九人については、懲役言渡し人員八千二百八十八人の九五・八%(七千九百四十二人)が窃盗、罰金言渡し人員六百九人の四八・一%(三百十人)が業過及び道交違反によるものである。また、略式手続によって罰金又は科料に処された者百二万二千六百三十八人を罪名別に見ると、道交違反の八十九万五千九十八人(略式手続総数の八七・五%)が最も多く、業過の八万六千八百六十三人(同八・五%)がこれに次いでいる。
なお、裁判確定人員についての懲役刑の執行猶予率を見ると、昭和三十年代後半以降、おおむね五〇%台で推移したが、平成に入ってからは上昇傾向が見られ、六年以降は六〇%台を示し、九年は六二・五%である。
2 第一審の量刑
平成八年における地方裁判所及び簡易裁判所の第一審裁判所としての有期の懲役及び禁錮の科刑状況を見ると、刑期が一年以上二年未満の者が全体の五〇・四%と最も多く、次いで、二年以上三年未満が一六・八%、六月以上一年未満が一四・四%となっている。また、無期を含めて刑期が十年を超える者は総数で百五十七人で、これを罪名別に見ると、殺人(九十一人)が最も多く、以下、強盗(四十五人)、放火(十人)、強姦及び銃刀法違反(各三人)、覚せい剤取締法違反(二人)の順となっている。
なお、平成九年の通常第一審における死刑言渡し人員は三人で、殺人が一人、強盗致死が二人となっている。また、無期懲役言渡し人員は三十三人で、殺人が五人、強盗致死が二十五人等となっている。
三 成人矯正
1 行刑施設一日平均収容人員
平成九年における行刑施設の一日平均収容人員は五万九十一人(前年比三・五%増)であり、そのうち受刑者は四万九百七十七人(同三・七%増)、未決拘禁者は八千八百五十九人(同二・六%増)である。
なお、行刑施設の一日平均収容人員は、昭和六十一年に五万五千三百四十八人のピークがあり、六十二年以降は減少して平成四年には四万四千八百七十六人となったものの、五年から増加に転じている。
2 新受刑者の特徴
平成九年における新受刑者は二万二千六百六十七人(前年比一・〇%増)である。
平成九年における新受刑者の罪名のうち構成比の高いものを見ると、覚せい剤取締法違反(二九・七%)、窃盗(二七・五%)、詐欺(六・八%)、道路交通法違反(五・九%)、傷害(五・二%)の順となっている。
なお、覚せい剤取締法違反の構成比は、昭和五十五年に二〇%台に達し、六十年以降の多くの年次において、窃盗を超えて第一位を占めている。
3 平成四年出所受刑者の再入率
平成四年における出所者について、五年を経過した九年末までの再入状況を出所事由別に見ると、満期釈放による者の約五〇%、仮釈放による者の約三〇%は、いずれも四年以内に再入しており、前者は後者に比べると再入率が高い。
なお、昭和六十三年から平成四年までの出所者について、出所年を含む五年間に再入した者の累積の比率の推移を見ると、三年に出所した者まではおおむね横ばい傾向にあったが、四年に出所した者については若干上昇している。
四 更生保護
1 仮出獄の申請及び許可人員
平成九年の仮出獄申請受理人員は一万三千七百四十五人(前年比四・六%増)、仮出獄許可人員は一万二千九百七十三人(同五・二%増)、仮出獄率は五八・三%(同〇・七ポイント増)となっている。
なお、仮出獄許可人員は、昭和五十九年に一万八千八百九十七人のピークがあったが、その後平成八年までは減少傾向を示し、また、仮出獄率は、元年から八年までは五六%台ないし五七%台で推移していた。
2 保護観察事件の受理状況
平成九年の保護観察新規受理人員(保護観察処分少年及び少年院仮退院者を含む。)は、七万六千七十八人(前年比五・四%増)で、これを保護観察の種類別に見ると、仮出獄者は一万二千八百二十九人(同四・二%増)、保護観察付き執行猶予者は五千三十六人(同二・二%増)となっている。
なお、仮出獄者は、昭和五十九年のピークには一万八千七百十八人であったが、平成四年以降は一万二千人台で推移している。保護観察付き執行猶予者は、昭和五十年代には七千人台から八千人台であったが、平成元年以降は、四千人台から五千人台で推移している。
3 保護観察期間中の再犯の状況
保護観察期間中に、再度罪を犯し、かつ、新たな処分を受けた者の比率(再犯率)は、近年、仮出獄者についてはおおむね一%前後で、また、保護観察付き執行猶予者についてはおおむね三〇%台で、それぞれ推移している。
五 刑事司法における国際協力
1 犯罪者の国外逃亡
日本国内で犯罪を犯して国外に逃亡した被疑者の数について近年の推移を見ると、平成八年にはそれまでの増加傾向に歯止めがかかり二百九十三人(前年比一六・〇%減、うち、日本人が七十二人)となったが、九年は三百四十一人(同一六・四%増、同八十八人)となっている。
これを推定逃亡先別に見ると、中国(四十二人)が最も多く、以下、フィリピン(三十二人)、韓国・朝鮮(十八人)、アメリカ(十六人)、台湾(十三人)、香港(十二人)等となっている。
2 逃亡犯罪人の引渡し
昭和六十三年以降の十年間に、我が国が外国から引渡しを受けた逃亡犯罪人は合計で六件六人であり、我が国が外国に引き渡した逃亡犯罪人は合計で十五件十六人である。
3 捜査共助等
昭和六十三年以降の十年間に、検察庁の依頼により我が国から外国に対して、外交ルートによって要請した捜査共助の嘱託件数は合計百九件であり、相手国は二十か国である。また、外交ルートにより外国から我が国に対し要請のあった捜査共助の受託件数は合計で二百五件、要請国は二十九か国となっている。
この十年間、嘱託・受託共にアメリカを相手国とするものが最も多い(嘱託四十四件、受託九十八件)が、近年、アジア諸国等を相手国とするものも増加している。
<第三編> 少年非行の動向と非行少年の処遇
一 少年非行の動向
1 少年刑法犯検挙人員(第2図参照)
少年刑法犯検挙人員の推移には、昭和二十六年の十六万六千四百三十三人、三十九年の二十三万八千八百三十人及び五十八年の三十一万七千四百三十八人をピークとする三つの大きな波が見られる。
昭和五十九年以降は減少傾向を示していたが、平成七年を境に増加に転じ、九年には二十一万五千六百二十九人(前年比九・八%増)となっている。また、人口比(十歳以上二十歳未満の少年人口千人当たりの検挙人員)も、七年の一二・〇を底にして上昇し、九年には一四・二となっている。
さらに、平成五年以降は五〇%を下回っていた刑法犯検挙人員(交通関係業過を除く。)における少年比も、九年には五年ぶりに五〇%を超えて五二・七%となっている。
2 年齢層別の少年刑法犯検挙人員
年齢層別の刑法犯(交通関係業過を除く。)検挙人員及び人口比は、いずれの年齢層においても、平成八年、九年と二年連続して増加・上昇しているが、特に年少少年及び中間少年においてその程度が著しい。
なお、人口比は、昭和四十六年以降、年少少年が一貫して最も高く、以下、おおむね中間少年、年長少年の順となっているが、過去数年、中間少年が年少少年に近づいてきている。
また、中学生・高校生別の少年刑法犯(交通関係業過を除く。)検挙人員の在学生千人当たりの比率を見ると、中学生は、昭和五十八年の第三のピーク時には高校生(全日制)の比率を上回り二三・一を示していたが、平成九年には一四・二に低下した。一方、高校生(全日制)は、昭和五十八年には一三・四であったが、平成七年からは中学生の比率を上回り、九年には一六・一に達している。
3 罪名別に見た少年の検挙人員・送致人員
(一) 財産犯
少年刑法犯検挙人員を罪名別に見ると、昭和五十一年以降、毎年、窃盗及び横領(遺失物等横領を含む。)の二罪名で検挙人員総数(交通関係業過を除く。)の八〇%以上を占めており、平成九年も窃盗が十一万八千五百八十一人(前年比一四・六%増)、横領が三万二千八百六十九人(同一〇・八%増)で、この両罪で八四・六%を占めている。
(二) 凶悪犯(第3図参照)
凶悪犯である強盗の検挙人員は、昭和三十五年に二千七百六十二人のピークを示した後減少し、六十三年には五百六十九人であったが、平成に入って増加に転じ、八年には二十六年ぶりに一千人を超えて一千八十二人(前年比二三・九%増)となった上、九年には一千七百一人(同五七・二%増)と急激な増加を見せている。
殺人の検挙人員は、昭和四十年代後半から減少傾向を示し、五十年代に入ると百人を割り、その後はおおむね七十人台から九十人台で推移し、平成九年には七十五人(前年比二二・七%減)となっている。
なお、強姦については、平成九年は四百九人(同八〇・二%増)となっている。
(三) 粗暴犯
粗暴犯である傷害、暴行及び恐喝の検挙人員についても、最近は増加の兆しがうかがわれ、平成九年は前年と比べて、それぞれ、一五・八%、一九・三%及び一三・五%増加している。
(四) 薬物事犯(第4図参照)
薬物事犯中の覚せい剤取締法違反による検挙人員は、昭和五十七年に二千七百六十九人のピークを示した後減少し、平成六年には八百三十二人であったが、七年以降増加に転じ、九年には一千六百一人(前年比一一・〇%増)と急増し、この間、少年比も上昇している。
なお、昭和五十三年から平成三年までの間、二万人台の高い水準で推移した毒劇法違反による送致人員は、同年以降減少が続き、九年には五千五十七人(同一一・六%減)と、ピークとなった昭和五十七年の約六分の一となっている。
二 非行少年の処遇
1 少年事件の検察及び裁判
(一) 家庭裁判所における終局処理人員及び処分別構成比
平成八年における交通関係業過、道交違反及び虞犯を除く少年保護事件の家庭裁判所終局処理人員は十二万七千百三十一人(前年比二・八%増)で、この非行名別構成比を見ると、窃盗(五九・六%)が最も高く、以下、遺失物等横領を含む横領(二〇・三%)、傷害(五・二%)、恐喝(三・八%)、毒劇法違反(三・〇%)の順となっている。
処理人員総数に占める処分別人員の比率は、刑法犯では審判不開始(六一・三%)が、特別法犯では不処分(三七・五%)が、それぞれ最も高い。また、非行名別処理人員総数に占める検察官送致(刑事処分相当)の比率は、殺人(三五・六%)、道交違反(一一・四%)等で高く、少年院送致の比率は、強姦(五七・五%)及び殺人(四八・九%)で高くなっている。保護観察の比率の最も高いものは、覚せい剤取締法違反(五〇・四%)である。
(二) 家庭裁判所における処分の動向と特色
家庭裁判所における少年保護事件の終局処分の動向と特色を見ると、以下の各点を指摘することができる。
@ 一般保護事件の終局処分の構成比では、長期的には、審判不開始が上昇傾向を示しているのに対し、検察官送致、少年院送致、保護観察及び不処分は、いずれもおおむね低下傾向を示している。
A 非行名別の処分状況を見ると、近年は、ほとんどの年次において、殺人では少年院送致、強盗及び覚せい剤取締法違反では保護観察の比率が最も高くなっており、一方、検察官送致の比率は、殺人、強盗及び覚せい剤取締法違反のいずれにおいても長期的に低下傾向を示している。
B 一般保護事件において相当数を占めている不処分及び審判不開始の理由を見ると、不処分では保護的措置が、審判不開始では保護的措置及び事案軽微が、その大半を占めている。
(三) 少年保護事件の審理状況
家庭裁判所における少年保護事件の審理状況を見ると、以下の各点を指摘することができる。
@ 審理期間が昭和五十年代初頭以降、短くなる傾向が認められるが、特に殺人、強盗等の凶悪事犯については、窃盗及び虞犯と比べて一月以内に審理を終える人員の占める比率が高くなっている。
A 付添人選任人員及び同選任率の増加・上昇傾向が、近年顕著であり、特に、弁護士が付添人として選任される割合が高くなっている。また、殺人、強盗、強盗致傷及び覚せい剤取締法違反における付添人選任率は、昭和六十年前後から上昇し、一般保護事件全体の付添人選任率より高くなっている。
B 抗告事件既済人員は、近年おおむね増加傾向を示しており、その保護処分決定人員総数に対する比率も上昇している。
また、家庭裁判所における処分結果を見ると、非行無しを理由とする不処分又は審判不開始は、近年減少傾向にあるが、昭和四十四年以降の二十八年間に、殺人では三十八人、強盗では四十三人、強盗致傷では十三人、覚せい剤取締法違反では百五十一人が、それぞれ非行無しとして不処分又は審判不開始とされている。
(四) 逆送事件の処理状況
家庭裁判所が検察官に送致したいわゆる逆送事件について、平成九年における検察庁処理状況を見ると、起訴人員総数(九千七百八十一人)のうち、九七・七%が交通関係業過及び道交違反である。起訴された少年のうち公判請求された者(三百三十二人)は三・四%にとどまり、その他は略式手続により処理されている。公判請求された人員は、交通関係業過百十五人、道交違反四十一人、窃盗三十七人、強盗二十八人、傷害二十六人、覚せい剤取締法違反二十五人、強姦・強制わいせつ二十二人等となっている。
2 少年鑑別所
(一) 新収容人員
少年鑑別所新収容人員は、ピーク時の昭和五十九年に二万二千五百九十三人を記録した後、平成七年までは減少傾向を示していたが、八年から増加に転じ、九年には一万七千八百三十七人(前年比一四・六%増)となっている。
(二) 退所事由別人員
平成九年における少年鑑別所退所事由別人員は、保護観察(四一・九%)が最も多く、以下、少年院送致(二八・一%)、試験観察(一三・六%)、観護措置の取消し(七・六%)の順となっている。
3 少年院
(一) 新収容者数
少年院新収容者は、ピーク時の昭和五十九年に六千六十二人を記録して以降、漸減傾向が続いていたが、平成八年から増加に転じ、九年は四千九百八十九人(前年比一八・六%増)となっている。このうち男子は四千四百七十五人、女子は五百十四人である。
なお、初めて少年院に入院した者の比率は、過去二十年間はおおむね八〇%台で推移し、近年、その比率はわずかではあるが上昇している。
(二) 新収容者の非行名別構成比
少年院新収容者の非行名別構成比を見ると、窃盗の比率が一貫して最も高いものの、近年は低下傾向にある。また、近年は、強盗、傷害・暴行及び覚せい剤取締法違反の比率が上昇傾向を示している。
平成九年について男女別に見ると、男子は窃盗(三二・五%)、傷害(一三・三%)、強盗(一二・一%)の順である。また、女子は、覚せい剤取締法違反(四三・八%)、窃盗(一七・五%)、虞犯(一二・三%)の順である。
4 少年受刑者
少年新受刑者(裁判の確定により新たに入所した裁判時二十歳未満の少年受刑者をいい、入所時二十歳以上の者を含む。)数は、長期的に減少傾向にあり、昭和四十四年には五百人を、六十三年には百人を下回り、平成九年は四十二人(前年四十一人)で、うち女子は一人(同一人)である。
平成九年の少年新受刑者は、全員が不定期刑受刑者であり、刑期別構成比では「長期三年を超え五年以下」の者が三三・三%(十四人)と最も高い。
5 少年の更生保護
(一) 保護観察処分少年の動向
保護観察処分少年の新規受理人員は、昭和五十二年から交通短期保護観察が実施されたことに伴って急増し、五十八年以降七万人前後で推移していたが、平成三年以降減少した。その後、六年九月に短期保護観察が導入されたことなどにより、八年以降再び増加に転じ、九年には五万四千八人(前年比五・五%増)となっている。
(二) 少年院仮退院者の動向
少年院仮退院者の新規受理人員は、昭和五十二年に少年院に短期処遇が導入されたことなどに伴って増加し、六十年には五千五百八十五人となったが、その後は減少傾向にあった。しかし、平成九年は、前年より増加して四千二百五人(前年比一一・八%増)となっている。
(三) 少年の再犯率
保護観察に付された少年及び少年院を仮退院した少年の「再犯率」(保護観察期間中の再処分率)を見ると、保護観察処分少年、少年院仮退院者共に、昭和六十三年以降は低下傾向にあったが、平成九年は、前年より若干上昇し、保護観察処分少年は一五・五%、少年院仮退院者は二二・四%となっており、受理時の非行が、窃盗、毒劇法違反、虞犯、恐喝等である少年の再犯率が高い。
さらに、この十年間を累計して保護観察処分少年の再犯状況を見ると、全体では、再処分を受けた者の三四・〇%が交通事犯、二八・九%が財産犯によるものであり、薬物事犯では、再処分を受けた者の三八・八%が同種事犯となっている。また、受理時の非行が殺人である者の再非行は交通事犯のみである。少年院仮退院者の再犯状況についてもほぼ同様の状況が認められ、凶悪犯では、同種事犯を行う者はわずかであるが、薬物事犯では、同種事犯が約半数を占めている。
三 少年非行の特質
1 非行の動機(第5図、第6図参照)
犯罪少年の実態調査結果(以下「犯罪少年調査結果」という。)によると、恐喝、窃盗及び横領においては「利欲」を動機とするものが一貫して五〇%を超え、いまや「困窮・生活苦」を動機とする少年非行はほとんど見られない。一方、「遊び」を動機とするものは、窃盗及び横領においては、おおむね二〇%台から三〇%台で推移しており、しかもその比率は、近年、上昇傾向を示している。傷害及び恐喝においても、近年、その比率が上昇傾向を見せている。
また、犯罪少年調査結果によると、傷害において、近年、「激情」を動機とするものが、「怨恨・報復」を動機とするものよりもはるかに高くなっており、少年鑑別所収容少年の特質についての調査結果(以下「鑑別所少年調査結果」という。)によれば、殺人事犯少年の非行動機は「かっとなって」が最も高くなっている。さらに、強盗事犯少年は「お金や物が欲しくて」に次いで、「誘われて、その気になって」を動機とするものの比率が高くなっている。
2 非行の場所
傷害及び恐喝は、犯罪少年調査結果によると、路上を犯行場所とするものの比率が高く、近年は、いずれも構成比の上で一位を占めている。
学校等を犯行場所とするものの比率は、傷害では昭和五十年代後半に急上昇し、恐喝でも五十年代後半から六十年代初めにかけてピークがあるが、その後は下降している。なお、校内暴力事件の検挙件数は五十八年に二千百二十五件のピークを記録し、その後は減少していたものの、平成九年には五百七十一件(前年比二七・五%増)となっている。
窃盗では、犯行場所をデパート等とするものの比率が最も高い年次が多く、また、建物等周辺とするものが、昭和五十年代以降、長期的に上昇傾向を示している。なお、少年による窃盗事犯少年の手口別構成比の推移を見ると、近年、万引き、乗物盗等の非侵入盗が増加し、空き巣ねらい・忍び込み等の侵入盗は減少傾向にある。
3 共犯者の有無(第7図参照)
鑑別所少年調査結果によると、十年前と比較して共犯者のいる者の比率が上昇している。特に、この十年間の累計では、殺人事犯少年では単独が六五・一%であるのに対し、強盗事犯少年では単独がわずか一三・〇%で、共犯者数五人以上の比率が二八・三%と最も高く、しかもその比率はこの十年間でおおむね上昇している。
なお、犯罪少年調査結果によると、恐喝において共犯率が極めて高く、昭和五十五年以降は、おおむね七〇%台で推移しており、また、傷害、窃盗及び横領の共犯率は、近年は下降傾向を示してはいるものの、傷害は平成六年以降五〇%台後半で推移し、窃盗は八年は約四三%であって、なお高い水準にある。
4 被害者との関係
犯罪少年調査結果によると、被害者と知人・友人・顔見知りの関係にあるものの比率が、長期的には、傷害で上昇し、恐喝では下降している。
鑑別所少年調査結果によると、殺人事犯少年について、被害者と面識があるのは七〇・四%、そのうち、よく知っている者の比率は五五・六%、面識がないのは二五・四%を、それぞれ占めている。
5 非行の態様及び凶器の準備状況
鑑別所少年調査結果によって殺人事犯少年の凶器の準備状況等を見ると、たまたま携行していた物が凶器として使用されたものが三五・九%、犯行のために凶器が特に準備されていたものが二七・五%、現場調達が一九・七%などとなっている。
また、同じく殺人事犯少年の主たる犯行の方法を見ると、犯行に際して刃物が使用された比率が五五・六%と最も高くなっている。
四 非行少年の特質
1 非行歴等(第8図参照)
鑑別所少年調査結果によると、少年鑑別所入所回数は、鑑別所収容少年総数、凶悪事犯少年及び薬物事犯少年のいずれにおいても、この十年間、初回の者の比率が上昇しており、また、保護施設歴及び在宅保護歴のない者の比率が全体的に上昇している。
少年院に入院した者についても、近年、過去二回以上少年院に入院した者(三入以上の者)の比率が低下傾向にあるほか、初入者の比率がわずかではあるが上昇しており、保護観察処分少年及び少年院仮退院者共に、処分歴のない者の比率が上昇している。
なお、鑑別所少年調査結果によると、覚せい剤少年では、近年、毒劇物使用経験なしに覚せい剤を使用する者が増加傾向にある。
2 職業等
少年の職業等については、鑑別所少年調査結果によると、男子は有職、女子は無職が最も多いが、凶悪事犯少年では、学生・生徒の比率が、総数と比べて高くなっている。
教育程度については、この十年間を累計すると、男女共に中学卒業の占める比率が最も高いが、この十年間の推移を見ると、高校中退の比率が上昇しており、特に、凶悪事犯少年では、高校在学、高校卒業以上の者の比率が総数と比べて高くなっている。
3 家庭環境等
鑑別所少年調査結果によると、保護者が実父母である比率は、十年前と比較すると、男女共に上昇し、また、保護者の生活程度も中以上の比率が上昇している。
親の養育態度は、この十年間を累計すると、両親共に放任が最も多いが、この十年間では、放任の比率の低下と普通の比率の上昇が見られ、強盗事犯少年では母の養育態度は普通が最も多くなっている。
現在の家族の問題については、問題のない者の比率はこの十年間上昇しているが、問題を抱えている者の中では、指導力欠如、交流不足の比率が上昇している。また、問題を抱えている者は女子の方が多い。なお、殺人事犯少年には、かなり深刻な家族の問題を抱えた者と問題のない者との双方がいる。
なお、保護者が実父母である者の比率は、平成九年においては、少年鑑別所収容少年では五七・六%、少年院新収容者では五二・九%である。
4 不良集団関係
鑑別所少年調査結果によると、不良集団に所属したことのない者は、総数では男子が四割、女子が五割をそれぞれ超えているが、凶悪事犯では、殺人事犯少年で六割、強盗事犯少年で五割を超え、覚せい剤少年では男子が五割、女子が七割である。他方、不良集団に所属したことのある者についてその不良集団を見ると、殺人事犯少年は暴走族が多いが、そのほかはいずれも、地域不良集団が最も多くなっている。
最近の非行少年の特質を明らかにするため、鑑別所在所少年の生活意識や価値観に関する特別調査結果を、平成二年に実施した同種の調査と比較すると、以下の各点が指摘できる。
@ 「自分だけが悪く思われている」、「世の中から取り残されている」などと感じることがあるとした者の比率が、男女ともかなり低下する一方、今の自分の生き方に「不満」及び「やや不満」とした者の比率が上昇するなど、男女とも否定的な自己意識はやや軽減されてきたものの、現実の自分の在り方に対する満足度は低下している。
A 家庭生活に対して「満足」あるいは「やや満足」とした者の比率、並びに「家族と話をする」及び「自分の将来について話しかける」ことが「よくある」又は「ときどきある」とした者の比率が共に上昇し、また、「気楽に話ができる人」及び「注意されたら言うことを聞く人」として、家族、友人、先輩等の中で、特に、父親、母親、兄弟姉妹を挙げる者の比率が上昇するなど、家族についての受け止め方が前回調査と比べて好転している。
B 身近な人間関係の中で、友人等が依然として大きな意味をもっていることは前回調査と変わらないが、交友関係における情緒的親密感が前回調査と比べて薄まっていることがうかがえる。
C 前回調査で非行少年の特質の一つとして指摘された、気軽さを好み、あえて自己主張せず、努力より目先の楽しみを追う傾向は薄らいできており、伝統的価値観に対する賛成率も下がっている。
また、非行性の深度による現在の非行少年の特質を明らかにするため、少年院在院少年と、非行がそれほど進んでおらず、短期間の保護観察によって改善更生が期待できる者が対象とされている短期保護観察少年について比較すると、以下の各点が指摘できる。
@ 非行性の進んでいる者の方が、家庭、交友、今の自分の生き方について満足とする者の比率が低く、自分に対する否定的意識が強い。
A 非行性の進んでいる者の方が、家族との交流が希薄になり、自分の親の養育態度に問題を感じる者の比率が高くなっている。
B 同世代の者に対する見方については、非行性の進んでいる者の方が、同世代の少年の中に、付和雷同的で群れたがる傾向、せつな的で情緒的にも不安定な傾向等をかなり強く感じている。
C 非行性の進んでいる者、いない者のいずれも、非行の抑止要因として家族を挙げる者の比率が高いが、その他の抑止要因として、家族以外の身近な人物や自分自身を挙げる者の比率が、非行性の進んでいない者において高くなっている。
我が国とアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス及び韓国の六か国における刑法犯等主要な犯罪及び強盗について、一九八七年から一九九六年までの十年間における少年(十八歳未満の者をいう。ただし、イギリスは、一九九二年以前は、十七歳未満の者をいい、アメリカ及びイギリスについては、十歳未満の者を除く。)の人口比(十歳以上十八歳未満(ただし、イギリスは、一九九二年以前は、十七歳未満)の人口十万人当たりの検挙人員の比率)の推移は次のとおりである(これら各国においては、各罪種の犯罪構成要件や少年年齢を異にし、また、統計の取り方も同一でないため、単純に各罪種の数値の多少を比較して、各国の少年非行の動向を論じることは必ずしも適当とはいえないので、各国における人口比の推移を見ることにより、その動向を比較検討する。)。
刑法犯等主要な犯罪については、我が国においては、低下傾向にあったが、一九九三年からおおむね上昇する傾向にあり、ドイツは一九九二年から、フランスは一九九四年から、韓国は一九九三年から、それぞれ上昇している。これに対し、アメリカ及びイギリスは、一九九五年から低下している。
また、強盗については、最近十年間、我が国とイギリス、ドイツ及びフランスにおいては、おおむね上昇する傾向にある。これに対し、アメリカは、上昇傾向にあったが、一九九五年から低下している。また、韓国は、最近十年間上昇低下を繰り返している。
<おわりに>
最近の少年非行の特質を見ると、凶悪・粗暴事犯及び覚せい剤事犯の増加や、集団による非行、処分歴のない少年による非行、保護者の経済状態や家庭環境にもさほどの問題の認められない少年による非行等の増加傾向が認められ、また、最近の非行少年の特質についても、家庭生活に対する満足度の上昇や否定的な自己意識の軽減が認められる一方で、自分の在り方に対する満足度の低下や対人関係の希薄化、抑制力の不足と短絡的な行動傾向等が指摘できる。
少年非行には、家庭・学校・社会環境等、多くの要因があり、これが相互に関連して複雑に絡み合っているため、少年非行を防止するためには、家庭、教育、文化、社会福祉その他各般にわたる総合的な施策と国民全体の幅広い不断の努力が必要であるが、刑事司法関連諸機関においても、関係機関の連携の下に、少年非行防止対策の一環として、引き続き、少年事件の捜査・審判における適正な処理、少年の福祉を害する事犯に対する厳正な処分、鑑別機能の充実、社会内・施設内処遇の充実強化等に努める必要があると思われる。
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賃金、労働時間、雇用の動き
◇賃金の動き
七月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は四十五万六千四百五十三円、前年同月比は二・五%減であった。
現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万七千二百八十六円、前年同月比〇・九%減であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万九千七百三円、前年同月比〇・三%減で、所定外給与は一万七千五百八十三円、前年同月比八・九%減となっている。
また、特別に支払われた給与は十六万九千百六十七円、前年同月比五・一%減となっている。
実質賃金は、前年同月比二・二%減であった。
産業別にきまって支給する給与の動きを前年同月比によってみると、伸びの高い順に鉱業二・九%増、運輸・通信業〇・二%増、卸売・小売業、飲食店〇・七%減、サービス業〇・七%減、製造業一・〇%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・二%減、建設業一・六%減、不動産業一・七%減、金融・保険業二・〇%減であった。
◇労働時間の動き
七月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一六一・四時間、前年同月比一・〇%減であった。
総実労働時間のうち、所定内労働時間は一五二・〇時間、前年同月比〇・四%減、所定外労働時間は九・四時間、前年同月比八・八%減、季節調整値は前月比二・九%増であった。
製造業の所定外労働時間は一一・七時間で、前年同月比は一八・二%減、季節調整値は前月比〇・〇%と前月と同水準であった。
◇雇用の動き
七月の規模五人以上事業所の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・一%減、常用労働者のうち一般労働者では〇・六%減、パートタイム労働者では二・九%増であった。常用労働者全体の季節調整値は前月比〇・二%減であった。
常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、サービス業二・〇%増、建設業〇・七%増と、これらの産業は前年を上回っているが、運輸・通信業〇・一%減、卸売・小売業、飲食店〇・六%減、不動産業一・〇%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・一%減、製造業一・五%減、金融・保険業二・八%減、鉱業三・三%減と前年同月を下回った。
主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者一・七%減、パートタイム労働者〇・二%減、卸売・小売業、飲食店では一般労働者一・九%減、パートタイム労働者二・四%増、サービス業では一般労働者〇・九%増、パートタイム労働者七・七%増となっている。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
全世帯の消費支出は、平成九年九月、十月は実質増加となったが、十一月以降九か月連続の実質減少となった。
◇勤労者世帯の家計
勤労者世帯の実収入は、平成九年十一月以降六か月連続の実質減少となった後、十年五月は実質増加となったが、六月、七月は実質減少となった。
消費支出は、平成九年十月以降七か月連続の実質減少となった後、十年五月、六月は実質増加となったが、七月は実質減少となった。
◇勤労者以外の世帯の家計
勤労者以外の世帯の消費支出は二十八万五千七百十円で、名目一・六%、実質一・三%の減少
◇財・サービス区分別の消費支出
財(商品)は、実質一・〇%の減少
<耐久財> 実質一・六%の増加
<半耐久財> 実質七・二%の減少
<非耐久財> 実質〇・三%の増加
サービスは、実質五・七%の減少
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