防災白書のあらまし
平成10年版防災白書(「防災に関してとった措置の概況」及び「平成10年度において実施すべ
き防災に関する計画」)が、5月19日に閣議決定され、同日付けで国会に報告された。
<第1章> 我が国の災害の状況
我が国は、その気象、地形・地質的特性から、地震、火山、台風、豪雨などの自然災害に対し脆弱であり、毎年のように大きな被害が発生している(第1図参照)。
近年の主な自然災害の状況、災害別の死者・行方不明者の推移や施設被害等からも、我が国における防災対策の充実・強化は、緊急かつ重要な課題であり、今後とも一層の推進が必要となっている。
<第2章> 我が国の災害対策の現況と課題
<阪神・淡路大震災後の防災施策の新たな展開>
我が国では、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護するため、災害対策基本法により、防災に関する体制及び必要な災害対策の基本が定められており、国、地方公共団体等は、総合的かつ計画的な防災行政の推進に取り組んでいる。
特に、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、防災施策の新たな展開を図ってきている。具体的な体制整備の内容はおおむね次のとおりであり、こうした施策の推進により、災害対策に万全を期せられる体制の整備に努めてきている。
○防災基本計画の改訂
震災対策、風水害対策等、自然災害対策に関する防災基本計画の抜本的改訂に加え、平成九年六月に、新たに海上災害対策など八つの事故災害対策を防災基本計画に追加した。
○災害対策基本法の改正
二度にわたる法改正により、緊急災害対策本部の設置要件の緩和及び組織の強化等を実施した。
○首都直下型等大規模地震発生時の内閣の初動体制の整備
内閣総理大臣の職務代行、参集場所等について閣僚懇談会で申し合わせを行った。
○情報収集体制の整備
中央防災無線網の拡充、首都直下型地震対応衛星地球局の整備、ヘリTV画像情報伝達体制の整備、地震防災情報システム(DIS)の整備など、災害発生時の情報収集体制を整備した。
<防災関係予算>
平成八年度における防災に関する科学技術の研究、災害予防、国土保全、災害復旧等の施策の実施に要した国の予算(国費、補正後)は、総計約四兆二千六十九億円となっている。その内訳は、科学技術の研究に合計約五百二十四億円、災害予防に合計約一兆二百九十七億円、国土保全に合計約二兆一千五百六十七億円、災害復旧等に合計約九千六百八十二億円である。
なお、平成九年度当初予算における防災に関して実施すべき計画における予算は、〔第1表〕のとおりである。
<震災対策の推進>
○地震防災対策特別措置法に基づく取り組み
・地震調査研究推進本部を設置し、政府の関係機関が密接な連携協力を行いながら地震に関する調査研究を推進。
・都道府県は地震防災緊急事業五箇年計画を作成、同計画に基づく事業を推進。
○地震防災情報システム等の整備
国土庁において地震防災情報システム(DIS)の整備を行っているのをはじめ(地震被害早期評価システムが既に稼働、応急対策支援システムを開発中)、即時情報を活用するためのシステム等を各機関で整備している。
○都市防災化の推進
・耐震性の向上
耐震基準の見直しや耐震性が十分でない既存施設の耐震改修の推進を通じ、構造物・施設等の耐震性を向上させた。また、現行耐震基準に適合しない一般の建築物の耐震改修を促進している。
・都市の不燃化等の推進
平成九年十一月に「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」を施行し、防災上危険な状況にある密集市街地の整備を総合的に推進している。
・防災拠点の整備、避難地・避難路の整備。
○大都市震災対策の見直しに向けた取り組み
大都市特有の課題に対応する震災対策のあり方を調査するため、平成十年一月から、中央防災会議に大都市震災対策専門委員会を新たに設置し検討を開始した。その成果を踏まえ、今後、南関東地域をはじめ、大都市の地震対策の見直しを実施する予定である。
<風水害対策等の推進>
○風水害対策では、被害を未然に防止し又は軽減する観点から、@気象観測の充実と迅速な予報・警報等の発表、A治山・治水対策の推進、B土砂災害対策の推進等が重要な課題であり、これらについての施策を計画的に推進。
○火山災害対策では、@火山観測研究体制の整備、A活動火山対策特別措置法等に基づく対策等を推進。
○雪害対策では、@豪雪地帯対策基本計画に基づく雪害の防除対策、A豪雪災害対策に関する様々な取り組みを実施。
<事故災害対策の推進>
防災基本計画に新たに八つの事故災害対策を追加し、海上災害対策、航空災害対策、鉄道災害対策、道路災害対策、原子力災害対策、危険物等災害対策、大規模な火事災害対策、林野火災対策を推進している。
なお、海上災害対策については、ナホトカ号海難・流出油災害の教訓を踏まえ、平成九年十二月に「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を閣議決定により改定し、油汚染事件への準備や対応体制を充実・強化した。
<第3章> 平成九年度に発生した主要な災害とその対策
平成九年度に発生した主要な災害は以下のとおりであり、これに対し激甚災害の指定等、政府として必要な対策を実施した。
<地 震>
○鹿児島県薩摩地方を震源とする地震(平成九年四月、五月)
四月三日、四時三十三分、鹿児島県薩摩地方を震源とするマグニチュード5・6の地震が発生した。この地震により九州のほぼ全域と中国地方及び四国地方の一部で有感となり、鹿児島県川内市中郷で震度5強を観測した。その後、四月九日までに震度4以上の地震を三回観測した。これらの地震により、重傷者一人、軽傷者四人、住家のほか道路等に被害が発生した。
さらに、五月十三日、十四時三十八分、マグニチュード6・3の地震が発生した。この地震により九州の全域と中国地方及び四国地方の一部で有感となり、平成八年十月に十階級の新震度階級を採用して以来、全国で初めての震度6弱を鹿児島県川内市中郷で観測した。その後、五月十四日、八時三十二分、マグニチュード4・7の地震が発生し、川内市中郷及び宮之城町屋地で震度4を観測した。これらの地震により、重傷者一人、軽傷者四十二人、住家の全・半壊及び一部破損四千九百八十三棟のほか、道路等に被害が発生した。
これに対し、政府は、災害対策関係省庁連絡会議の開催、地震調査研究推進本部地震調査委員会の開催、激甚災害の指定などの取り組みを実施した。
○山口県北部を震源とする地震(平成九年六月)
六月二十五日、十八時五十分、山口県北部を震源とするマグニチュード6・3の地震が発生した。この地震で島根県益田市岩倉町で震度5強、山口県萩市堀内、山口市周布、下関市竹崎などで震度4を観測するなど、九州地方から近畿地方にかけての広い範囲で有感となった。
この地震において、軽傷者二人、住家の全壊一棟、半壊二棟、一部破損七十五棟、道路被害八か所、がけ崩れ一か所、鉄道の不通一か所及び水道の断水九十戸等の被害が発生した。
<台風、豪雨など>
○秋田県鹿角市地すべり及び土石流災害(平成九年五月)
五月十日未明に、秋田県鹿角市八幡平澄川で幅七百メートル、長さ五百メートル、面積約三十五ヘクタールの地すべりが発生した。翌十一日八時頃、この土砂約二百五十万立方メートルが一挙に崩壊し、うち五十万立方メートルが土石流となって澄川、赤川に流れ、住家全壊二棟、非住家全壊十四棟の計十六棟の被害が発生した。数日前から前兆現象として小規模の土砂崩落等が発生していたため、事前に温泉経営者が関係各機関に連絡し、鹿角市長から地すべり発生場所の下流二キロの範囲内に居住する者等に対し、避難勧告がなされ、避難していたため人的被害は発生しなかった。また、赤川に整備されていた赤川一号砂防ダム等の砂防ダム群が土石流を捕捉し、熊沢川本川への被害拡大をくい止めた。
○平成九年七月梅雨前線豪雨災害(平成九年七月)
七月一日から二日にかけて前線を伴う低気圧が通過し、続く三日から十七日にかけて前線が日本付近に連続して停滞したため、これらの期間、九州地方から東北地方にかけて各地で大雨となった。特に前線の活動が活発となった七月七日から十三日にかけては、西日本や中部地方で顕著な大雨となった。
この梅雨前線豪雨災害により、死者二十六人、負傷者十七人、住家の全・半壊及び一部破損百五十棟、床上浸水三百八十八棟、床下浸水八千七百八十六棟の被害が発生した。
このうち、特に七月十日深夜に鹿児島県出水市針原地区の針原川で発生した土石流災害では、二十一人が亡くなった。また、七月十三日朝、兵庫県宝塚市花屋敷つつじが丘では、がけ崩れによって住家が全壊し、一家四人が亡くなる等の災害が発生した。
これに対し、政府は、災害対策関係省庁連絡会議の開催、激甚災害の指定などの取り組みを実施した。
○台風第19号(平成九年九月)
九月十三日から十七日にかけて、台風第19号とこれから変わった温帯低気圧の接近・通過により、全国各地で大雨となった。特に動きの遅い台風の影響を長時間にわたり直接受けた九州地方南部の一部では、総降水量が九百ミリを超えるなど大雨となった。
この台風第19号及びこれから変わった温帯低気圧により、死者十人、重傷者八人、軽傷者十八人、住家の全壊・半壊及び一部破損一千二百六十八棟、床上・床下浸水一万七千五百四十五棟の被害が発生した。特に、台風第19号が枕崎市に上陸した九月十六日には、鹿児島県肝属郡田代町川原鶴見地区でがけ崩れが発生し、三人が亡くなった。
これに対し、政府は、災害対策関係省庁連絡会議の開催、激甚災害の指定などの取り組みを実施した。
<ダイヤモンドグレース号油流出事故>
七月二日、ペルシャ湾から川崎港に向けて航行中のパナマ船籍タンカー「ダイヤモンドグレース号」が、横浜市本牧沖約六キロにおいて底触し、貨物タンクに破口を生じ、積荷の原油が海上に流出した。
政府は、事故当日の七月二日、海上保安庁に、海上保安庁長官を本部長とし、関係省庁の局長及び課長級職員からなる「警戒本部」を設置するとともに、第三管区海上保安本部に「連絡調整本部」を設置、さらに、同日、災害対策基本法に基づいて、運輸大臣を本部長とし、関係省庁の局長級職員からなる「平成九年(一九九七年)ダイヤモンドグレース号油流出事故非常災害対策本部」を設置した。以降、同本部体制の下、油の回収作業等を実施し、四日夜までに浮流油の濃い部分の回収はほぼ終了し、六日早朝以降、浮流油は認められなくなった。このようにして、沿岸への大規模な漂着は阻止することができ、漂着油に対しても迅速な防除・回収が実施された。
<第4章> 阪神・淡路大震災の災害復興対策
<住宅対策>
○公営住宅の確保等
被災者の生活再建の前提となる住宅確保対策について、災害復興公営住宅等の全供給計画戸数である三万八千六百戸の整備等を推進した(第2表参照)。
○公営住宅家賃負担の軽減
低所得被災者に対して、国の支援により、公営住宅の家賃を引き下げた(神戸市の四十平方メートルの公営住宅の場合、所得百万円以下の夫婦世帯で家賃六千円程度)。
<生活支援対策>
○「生活再建支援給付金」の支給等
・住家全壊等の高齢・要援護の非課税世帯で、恒久住宅に移転した世帯に対し、月額一万五千円から二万五千円を五年間支給。平成九年八月から支給開始。
・このほか、被災者の生活再建支援に資する施策として、阪神・淡路大震災復興基金において、「被災中高年恒久住宅自立支援金」が平成九年十月に創設。同年十二月から受付開始。
○「生活復興資金貸付金」の充実
・兵庫県が実施している生活復興のために必要な資金の貸付制度について、その貸付限度額を百万円から三百万円に引き上げ。平成八年十二月から受付開始。
<産業復興対策>
○産業復興支援充実策
被災中小企業に対する融資制度の特例等の延長・拡充、地場産業等復興の遅れている事業者に対するきめ細かな活性化対策、新産業の形成等のための施策を主な柱に、県・市が支援策をとりまとめた。
○新産業構造形成プロジェクト
次の時代の被災地を支える新しい産業の育成を図るため、ワールドパールセンター事業等を復興特定事業に選定し、政府としても必要な支援を実施している。
<予算措置>
平成六年度から平成九年度までに、阪神・淡路大震災関係経費として、総額約四兆三千六百億円を国費で予算措置した。
政府としては、復興に向けた取り組みに対し、地元地方公共団体等と緊密な連携を図りながら、全力を挙げて支援していくこととしている。
<第5章> 「防災に関する世論調査」(平成九年九月:総理府調査)と今後の防災対策の課題
阪神・淡路大震災以後、国民の防災意識は、どのように変化してきているのか、平成九年九月に総理府が実施した「防災に関する世論調査」を中心に、過去の世論調査結果との比較を含めて分析し、今後の防災対策の課題の整理を行った。
○阪神・淡路大震災以降、薄れつつある大地震への危機意識
・阪神・淡路大震災に対して非常に関心のある人の割合が減少している(平成七年:五九・六%→平成九年:五二・二%)。
・大地震に対する危機意識が低下しており、大地震が起こると思う人は減少し(平成七年:三八・一%→平成九年:三六・一%)、逆に、大地震が起こらないと思う人は増えている(平成七年:四三・九%→平成九年:四七・七%)(第2図参照)。
・大地震に備えて何らかの対策をとっている人の割合も、この二年間ほとんど増えていない(平成三年:六〇・二%→平成七年:七三・七%→平成九年:七四・八%)(第3図参照)。
○地域による災害への認識の相違
危険と感じている災害として、地震を挙げた人の割合は、関東、近畿で高く、台風を挙げた人の割合は、九州、四国で高く、豪雨を挙げた人の割合は、九州で高い。
○世代による防災意識の違い
二十歳代の若者は他の世代に比べて防災意識が低く、高齢者の防災意識も内容的には十分とはいえない(第4図参照)。これらの世代に対する重点的な普及啓発活動が必要である。
○災害時のボランティア活動などに対する意識の変化
阪神・淡路大震災やナホトカ号海難・油流出事故におけるボランティアの活躍などを契機として、ボランティア活動への参加意識が一層高まってきている(第5図参照)。
<第6章> 国民の防災活動
阪神・淡路大震災やナホトカ号海難・流出油事故における活躍からも明らかなとおり、発災時に応急対策を迅速かつ的確に実施する上で、行政機関による活動のみならず、消防団・水防団、自主防災組織、ボランティア、さらには企業など、国民一人ひとりを主体とする防災活動が、重要な役割を担っている。
<消防団・水防団>
○消防の常備化が進展している今日においても、消防団が地域の消防防災に果たす役割は依然として極めて重要。また、迅速かつ的確な行動が最大限求められる水防活動において、水防団は消防機関とともに水防管理者の所轄の下に水防活動を実施。消防団、水防団ともに、今後ともその充実・強化が必要。
<自主防災活動>
○阪神・淡路大震災においては、地域における自主防災活動の重要性を改めて認識。このような自主的な防災活動が組織的に行われるためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、防災に対する備えを充実することが必要。
○地域住民の自主防災活動への積極的な参加の促進、自主防災活動の環境整備を図り、自主防災活動の充実・強化を推進していくことが必要。
<防災とボランティア>
○災害時においては、柔軟かつ機動的なボランティアの役割が不可欠であり、実際、阪神・淡路大震災、ナホトカ号海難・油流出事故においても、ボランティアが活躍。
○今後とも、ボランティアの活動環境の整備、「防災とボランティア週間」をはじめとする普及啓発活動の推進等が必要。
<企業防災>
○企業は、災害時に企業が果たす役割を十分認識し、@顧客、従業員の安全確保、A経済活動の維持、B地域住民の防災活動への貢献に努めることが必要。
○国、地方公共団体等においても、企業防災マニュアルの作成、企業の防災意識の高揚等の企業防災の促進に向けた取り組みが必要。
<第7章> 世界の自然災害と国際防災協力
○「国際防災の十年」において我が国も積極的に国際防災協力を推進。
○アジア地域における多国間防災協力を推進するための拠点となる「アジア防災センター」については、平成九年六月のアジア防災協力推進会合を受けて、平成十年度予算に関連経費として一億三千万円を計上し、平成十年夏頃を目途に兵庫県神戸市に設けるべく準備中。
○日米の地震防災協力の推進を図るため、二回にわたる「日米地震シンポジウム」の成果を踏まえ、今後は、ハイレベル・フォーラム等を通じて、世界の地震防災対策の最先端にある日米両国の間で、地震被害の軽減について相互に協力活動を積極的に推進。
<第2部> 平成八年度において防災に関してとった措置の概況
1 法令の整備等
「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」を制定し、この法律に基づいて、阪神・淡路大震災を特定非常災害に指定する等の政令が施行されたほか、「災害ボランティア口座」を創設する郵便振替の預り金の民間災害救援事業に対する寄附の委託に関する法律の制定等を行った。
2 科学技術の研究
各研究機関においては、国費約五百二十四億円をもって、震災に関する研究(地震に関する調査研究、震災対策一般の研究)、風水害に関する研究(土砂災害に関する研究、大型降雨実験等)、火山災害に関する研究(火山噴火予知等に関する研究等)、雪害に関する研究(降積雪対策技術、雪崩等に関する研究)、火災及び危険物災害等に関する研究(建築物の防火対策、液化石油ガスの爆発防止等に関する研究)等の各般にわたる科学技術の研究・開発に努めた。
3 災害予防
地震観測、気象観測、消防、水防等について防災施設等の整備を図るとともに、大都市震災に対処するため防災拠点等の整備等を推進した。また、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、引き続き、初動体制の充実・強化、中央防災無線網の拡充整備、地震防災情報システム(DIS)の整備、立川災害対策本部予備施設の整備等を推進したほか、各種施設・設備の耐震補強等を行った。その他、災害対策の評価の樹立に資するための各種調査等を行ったほか、防災週間を中心に防災フェア等の開催、総合防災訓練等を実施した。
これらの対策に要した国費は約一兆二百九十七億円、融資実行額は約二千二十七億円であった。
4 国土保全
防災上緊急を要する地域に重点を置き、河川事業、ダム事業、砂防事業、急傾斜地崩壊対策事業、治山事業、海岸保全事業、農地防災事業、災害関連事業、地盤沈下対策事業、下水道事業等を国費約二兆一千五百六十七億円をもって実施した。
5 災害復旧等
(1) 災害応急対策
阪神・淡路大震災に対しては、引き続き、各種税制・融資施策、地方公共団体に対する特別の財政措置等により、被災者の救済、被災地の再建を推進した。
また、その他の平成八年度に発生した災害に対して、警察、自衛隊、海上保安庁、消防等による被害情報の収集や危険地の警戒、被災者の避難誘導・救護等の活動の実施、災害救助法の適用、災害弔慰金の支給、激甚災害の指定等各種援助措置を講じた。
(2) 災害復旧事業
公共土木施設災害復旧事業は、直轄事業については二か年、補助事業については三か年で復旧するという基本方針に基づき、平成七年災害の直轄事業及び平成六年災害の補助事業を完了した。
農林水産業施設災害復旧事業は、直轄事業については二か年、補助事業については三か年で復旧するという基本方針に基づき、平成七年災害の直轄事業及び平成六年災害の補助事業を完了した。
その他の災害復旧についても、それぞれ所要の復旧を行った。
なお、阪神・淡路大震災により大きな被害を受けた道路・港湾施設、ライフラインなど主要なインフラ施設については、ほぼ復旧を完了した。
(3) 財政金融措置
災害復旧に必要な資金の円滑化を図るため、国民金融公庫、住宅金融公庫等からの融資、災害保険金の支払い並びに地方交付税及び地方債による措置など財政金融上の措置を講じた。
(4) 災害復興対策
阪神・淡路大震災の被災地の一日も早い復興に向けて、引き続き、生活の再建、経済の復興、安全な地域づくり等を基本理念とする各般の施策を推進した。このほか、雲仙岳噴火災害及び北海道南西沖地震災害に対する措置も講じた。
これらの災害復旧等に要した国費は約九千六百八十二億円、融資実行額は約四千六百二十六億円であった。
6 平成八年度における防災関係予算額等
平成八年度における防災関係予算額等は〔第3表〕のとおりである。
<第3部> 平成十年度において実施すべき防災に関する計画
1 防災に関する科学技術の研究の推進
科学技術の研究については、震災、風水害、火山災害、雪害、火災、危険物災害等、各種災害に対処するため、地震に関する調査研究、火山噴火の予知に関する研究、各種災害の発生機構・防止対策等に関する研究、構造物の安全性に関する研究等を推進する。
2 災害予防の強化
災害予防については、教育訓練、指導啓発等に努めるとともに、地震観測施設、気象業務施設、火山観測施設、消防施設、通信施設、その他の防災施設設備、防災資機材の充実等を図り、併せて、石油コンビナート災害等その他の危険物災害対策及び原子力防災対策の強化、豪雪地帯対策の推進、災害危険地住宅の移転、防災拠点施設の整備等の災害予防事業を推進する。
3 国土保全の推進
国土保全については、基幹大河川、浸水被害が頻発している中小河川、緊急度の高い危険地等に重点を置いて治山治水事業の一層の推進を図るほか、急傾斜地崩壊対策事業、海岸保全事業、農地防災事業、地盤沈下対策事業等、各般の施策を推進する。
4 災害応急対策及び災害復旧・復興の迅速適切化
災害応急対策については、災害時に迅速かつ適切な救助活動、被災者への支援対策等が実施できる防災体制等の確立に努めるとともに、災害が発生した場合には、災害の態様等に応じて非常災害対策本部等を設置して必要な応急対策を講ずる。
災害復旧事業は、直轄事業については原則として二か年で復旧を完了させる方針に基づき、平成九年災害の復旧事業はこれを完了させ、補助事業については原則として三か年で復旧を完了させる方針に基づき、平成八年災害の復旧事業はこれを完了させ、平成九年災害の復旧事業費を計上して、復旧事業の迅速かつ効果的な施行を図るほか、災害融資等に必要な金融措置を講じ、復旧資金等の調達の円滑化を図る。
さらに、阪神・淡路大震災については、引き続き、生活の再建、経済の復興、安全な地域づくり等の諸課題に関する取り組みの推進を図る。
5 平成十年度における防災関係予算額等
平成十年度における防災関係予算額等は、〔第4表〕のとおりである。
大蔵省では、企業経営の現状と見通しを調査し、景気の動向を的確に把握することを目的として、金融・保険業を除く資本金一千万円以上(電気業、ガス・水道業は資本金十億円以上)の営利法人約百十一万社のうち約一万一千社を対象として、四半期ごとに大蔵省景気予測調査を実施している。
以下は、平成十年二月に実施した第六十回調査結果の概要である。今回の調査では一万九百三十五社を対象とし、八千八百九十五社(回収率八一%)から回答を得ている。
なお、本調査における大企業とは資本金十億円以上の企業を、中堅企業とは資本金一億円以上十億円未満の企業を、中小企業とは資本金一千万円以上一億円未満の企業をいう。
十年一〜三月期の景況判断BSI(前期比「上昇」−「下降」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも引き続き「下降」超となっている。
先行きを全産業でみると、いずれの規模においても「下降」超の見通しとなっている。
十年一〜三月期の景況判断「下降」の要因(一社二項目以内回答)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「国内景気の下降」が最も多く、次いで、「市況の下落、低迷」の順となっている。
先行きの景況判断「下降」の要因についてみると、いずれの規模においても「国内景気の下降」が最も多く、次いで「市況の下落、低迷」をあげる企業が多い。
売上高(第2表参照)
九年度下期の売上高は、全産業合計で前年比四・三%の減収見込みとなっている。
これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも減収見込みとなっている。
業種別に前年比でみると、製造業では、電気機械器具などが増収となるものの、金属製品、輸送用機械器具などが減収となり、全体では二・三%の減収見込みとなっている。
非製造業では、その他のサービスが増収となるものの、卸売・小売、建設などが減収となり、全体では五・一%の減収見込みとなっている。
九年度通期の売上高は、全産業合計で前年比二・三%の減収見込みとなっている。
これを規模別に前年比でみると、大企業は増収見込み、中堅企業、中小企業は減収見込みとなっている。
十年度上期の売上高は、全産業合計で前年比一・一%の減収の見通しとなっている。
これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業は増収の見通し、中小企業は減収の見通しとなっている。
業種別に前年比でみると、製造業では、食料品などが増収となるものの、電気機械器具、輸送用機械器具などが減収となり、全体では一・〇%の減収の見通しとなっている。
非製造業では、卸売・小売などが増収となるものの、建設、不動産などが減収となり、全体では一・一%の減収の見通しとなっている。
十年度下期の売上高は、全産業合計で前年比一・五%の増収の見通しとなっている。
これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増収の見通しとなっている。
十年度通期の売上高は、全産業合計で前年比〇・二%の増収の見通しとなっている。
これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業は増収の見通し、中小企業は減収の見通しとなっている。
九年度下期の経常損益は、全産業合計で前年比一七・七%の減益見込みとなっている。
これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも減益見込みとなっている。
業種別に前年比でみると、製造業では、鉄鋼などが増益となるものの、その他製造、金属製品などが減益となり、全体では一七・七%の減益見込みとなっている。
九年度通期の経常損益は、全産業合計で前年比一一・八%の減益見込みとなっている。
これを規模別に前年比でみると、いずれの規模においても減益見込みとなっている。
十年度上期の経常損益は、全産業合計で前年比五・七%の増益の見通しとなっている。
これを規模別に前年比でみると、いずれの規模においても増益の見通しとなっている。
業種別に前年比でみると、製造業では、食料品などが増益となるものの、その他製造、化学工業などが減益となり、全体では五・九%の減益の見通しとなっている。
非製造業では、その他のサービスが減益となるものの、卸売・小売、建設など多くの業種が増益となり、全体では一五・五%の増益の見通しとなっている。
十年度下期の経常損益は、全産業合計で前年比六・七%の増益の見通しとなっている。
これを規模別に前年比でみると、いずれの規模においても増益の見通しとなっている。
十年度通期の経常損益は、全産業合計で前年比六・二%の増益の見通しとなっている。
これを規模別に前年比でみると、いずれの規模においても増益の見通しとなっている。
九年度下期の経常損益見込みを八年度下期と比べると、改善、悪化企業割合では、製造業、非製造業ともに悪化企業割合が高い。
次に、改善要因としては、製造業、非製造業ともに、「売上数量増」をあげる企業が最も多く、次いで、「人件費減」の順となっている。一方、悪化要因としては、製造業、非製造業ともに、「売上数量減」をあげる企業が最も多く、次いで、「製品・サービス価格低下」の順となっている。
十年度上期の経常損益の見通しを九年度上期と比べると、改善、悪化企業割合では、製造業、非製造業ともに悪化企業割合が高い。
次に、改善要因としては、製造業、非製造業ともに、「売上数量増」をあげる企業が最も多く、次いで、「人件費減」の順となっている。一方、悪化要因としては、製造業、非製造業ともに、「売上数量減」をあげる企業が最も多く、次いで、「製品・サービス価格低下」の順となっている。
中小企業の設備投資(第5表参照)
設備投資については中小企業のみを調査対象としている。今回の調査における九年度の全産業の設備投資額を前年度比でみると、土地購入費を含む場合(以下「含む」という)で八・二%増、除く場合(以下「除く」という)で一三・〇%増の見込みとなっている。なお、前回調査時に比べ、「含む」で六・九%ポイント、「除く」で二・二%ポイントの上方修正となっている。
次に、十年度の全産業の設備投資計画額を前年比でみると、「含む」で三六・〇%減、「除く」で三三・六%減の見通しとなっている。なお、前回調査時に比べ、「含む」で六・五%ポイント、「除く」で四・九%ポイントの下方修正となっている。
十年三月末時点の設備判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、全産業は引き続き「不足」超となっている。業種別では、製造業、非製造業ともに引き続き「不足」超となっている。
先行きについては、全産業は引き続き「不足」超の見通しとなっている。業種別では製造業は「過大」超に転じる見通しとなっており、非製造業は引き続き「不足」超の見通しとなっている。
中小企業の販売製(商)品在庫
十年三月末時点の在庫判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっている。
先行きについては、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっているものの、「過大」超幅が縮小する見通しとなっている。
中小企業の仕入価格
十年一〜三月期の仕入価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、小売業は「上昇」超幅が縮小し、卸売業は「低下」超に転じている。
先行きについては、製造業は「上昇」超幅が縮小する見通しとなっている。卸売業は「低下」超で推移する見通しとなっており、小売業は四〜六月期に「低下」超に転じる見通しとなっている。
中小企業の販売価格
十年一〜三月期の販売価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超となっている。
先行きについては、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超で推移する見通しとなっている。
雇 用(第6表参照)
十年三月末時点の従業員数判断BSI(期末判断「不足気味」−「過剰気味」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業は製造業、非製造業ともに「過剰気味」超となっており、中堅企業は製造業を中心に「過剰気味」超となっている。一方、中小企業は製造業、非製造業ともに「不足気味」超となっている。
先行きについては、大企業は「過剰気味」超で推移、中堅企業は九月末に「不足気味」超に転じる見通しとなっている。また、中小企業は「不足気味」超で推移する見通しとなっている。
十年一〜三月期の臨時・パート数判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「増加」超となっている。
先行きについては、大企業は「増加」超で推移する見通しとなっている。一方、中堅企業、中小企業は「減少」超に転じる見通しとなっている。
十年一〜三月期の所定外労働時間判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、いずれの規模においても「減少」超となっている。
先行きについては、いずれの規模においても「減少」超の見通しとなっている。
企業金融(第7表参照)
十年一〜三月期の金融機関の融資態度判断BSI(前期比「ゆるやか」−「きびしい」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「きびしい」超となっている。
先行きについては、いずれの規模においても「きびしい」超で推移する見通しとなっている。
十年一〜三月期の資金繰り判断BSI(前期比「改善」−「悪化」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、いずれの規模においても引き続き「悪化」超となっている。
先行きについては、いずれの規模においても「悪化」超で推移する見通しとなっている。
十年三月末時点の金融機関からの設備資金借入判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、いずれの規模においても「減少」超となっている。
先行きについては、いずれの規模においても、「減少」超で推移する見通しとなっている。
中期的な経営課題(第2図参照)
中期的な経営課題(一社二項目以内回答)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が最も多く、次いで、大企業、中堅企業では「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」、中小企業では「後継者、人材の確保、育成」の順となっている。
業種別にみると、製造業では、いずれの規模においても「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」が最も多く、次いで、大企業、中小企業では「国内販売体制、営業力の強化」、中堅企業では「国内工場・営業所の再編、生産・流通工程の見直し等によるコストの低減」の順となっている。非製造業では、大企業、中堅企業は「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が多く、中小企業は「後継者、人材の確保、育成」をあげる企業が多い。
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消費者物価指数の動向
一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・六となり、前月比は〇・四%の上昇。前年同月比は二月二・〇%の上昇、三月二・二%の上昇、四月〇・七%の上昇と推移した後、五月は〇・八%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・一となり、前月比は〇・一%の上昇。前年同月比は二月一・七%の上昇、三月一・七%の上昇、四月〇・五%の上昇と推移した後、五月は〇・三%の上昇となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇三・九となり、前月に比べ一・〇%の上昇。
生鮮魚介は三・一%の上昇。
<値上がり>かつお、さけなど
<値下がり>えび、まぐろなど
生鮮野菜は七・二%の上昇。
<値上がり>キャベツ、にんじんなど
<値下がり>トマト、きゅうりなど
生鮮果物は九・二%の上昇。
<値上がり>バナナ、りんご(ふじ)など
<値下がり>メロン(プリンスメロン)、なつみかんなど
(2) 家具・家事用品は九四・三となり、前月に比べ〇・五%の上昇。
家事雑貨は〇・七%の上昇。
<値上がり>コーヒーわん皿(輸入品)など
(3) 被服及び履物は一〇七・二となり、前月に比べ一・八%の上昇。
衣料は二・七%の上昇。
<値上がり>スーツ(夏物)など
(4) 交通・通信は九九・九となり、前月に比べ〇・二%の下落。
自動車等関係費は〇・五%の下落。
<値下がり>自動車保険料(任意)など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
生鮮野菜(二七・一%上昇)、保健医療サービス(二二・九%上昇)、衣料(五・五%上昇)、授業料等(二・二%上昇)
○下落した主な項目
電気代(四・四%下落)、穀類(三・七%下落)、自動車等関係費(二・三%下落)、家庭用耐久財(五・五%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・一となり、前月と変わらなかった。
また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・八となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。
◇四月の全国消費者物価指数の動向
一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・六となり、前月比は〇・二%の上昇。前年同月比は一月一・八%の上昇、二月一・九%の上昇、三月二・二%の上昇と推移した後、四月は〇・四%の上昇となり、上昇幅は前月に比べ一・八ポイント縮小。これは、消費税率引上げの影響が一巡したことなどによる。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・四となり、前月比は〇・三%の上昇。前年同月比は一月二・〇%の上昇、二月一・八%の上昇、三月一・八%の上昇と推移した後、四月は〇・二%の上昇となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇二・九となり、前月に比べ〇・一%の下落。
生鮮魚介は〇・七%の下落。
<値上がり>いか、えびなど
<値下がり>かつお、かれいなど
生鮮野菜は一・七%の上昇。
<値上がり>キャベツ、にんじんなど
<値下がり>きゅうり、レタスなど
生鮮果物は七・一%の下落。
<値上がり>りんご(ふじ)、バナナなど
<値下がり>いちご、なつみかんなど
(2) 被服及び履物は一〇六・〇となり、前月に比べ三・六%の上昇。
シャツ・セーター・下着類は六・九%の上昇。
<値上がり>婦人セーター(半袖)など
(3) 保健医療は一一二・八となり、前月に比べ〇・三%の下落。
保健医療サービスは〇・二%の下落。
<値下がり>診察料
(4) 教育は一〇七・〇となり、前月に比べ一・六%の上昇。
授業料等は二・〇%の上昇。
<値上がり>私立大学授業料など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
保健医療サービス(二三・三%上昇)、生鮮野菜(一六・〇%上昇)、家賃(〇・八%上昇)、衣料(二・二%上昇)
○下落した主な項目
自動車等関係費(三・九%下落)、電気代(三・八%下落)、穀類(三・七%下落)、生鮮果物(七・八%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・四となり、前月に比べ〇・三%の下落となった。
また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・二となり、前月に比べ〇・二%の下落となった。
◇ ◇ ◇
1 全世帯の家計
(1) 平成九年の全国・全世帯の消費支出は、一世帯当たり一か月平均三十三万三千三百十三円で、前年に比べ名目一・四%の増加と四年ぶりに増加となったものの、四月に消費税率が三%から五%に引き上げられたことなどから消費者物価が一・六%の上昇となったため、実質では〇・二%の減少となった(第1図参照)。
全世帯の消費支出が五年連続して実質減少となったのは、現行の調査開始(昭和三十八年)以来初めてである。
(2) 平成九年の消費支出の費目別構成比をみると、食料の占める割合(エンゲル係数)は、前年に比べ〇・一ポイント上昇して二三・五%となった。また、教養娯楽(九・九%)、光熱・水道(六・三%)、保健医療(三・二%)、教育(四・六%)は前年に比べ上昇となったが、交通・通信(一〇・四%)、住居(六・七%)、家具・家事用品(三・六%)、被服及び履物(五・八%)、交際費などの「その他の消費支出」(二六・〇%)は低下した。
2 勤労者世帯の家計
(1) 勤労者世帯の実収入は、一世帯当たり一か月平均五十九万五千二百十四円で、前年に比べ名目二・七%、実質一・一%の増加となった。
内訳をみると、世帯主収入のうち定期収入(一・一%増)、臨時収入・賞与(一・〇%増)が実質増加となったほか、「世帯主の配偶者の収入」の中の「うち女」(〇・四%増)、「他の世帯員収入」(三・六%増)も実質増加となった。
(2) 非消費支出は九万八千百七十九円で、名目八・〇%の大幅な増加となった。
内訳をみると、特別減税の廃止に伴って勤労所得税(一二・六%増)、個人住民税(一一・三%増)が大幅な増加となったほか、平成八年十月に厚生年金などの保険料率が引き上げられたことなどから、社会保険料(六・二%増)が大幅な増加となった。
実収入に対する非消費支出の割合は、平成六年から八年まで継続して実施されていた特別減税の廃止による影響のほか、公的年金の保険料率が引き上げられたこともあって、前年に比べ〇・八ポイント上昇し一六・五%と現行の調査開始(昭和三十八年)以来最も高い水準となった。
(3) 可処分所得は四十九万七千三十六円で、名目一・七%、実質〇・一%の増加となり、特別減税廃止の影響により非消費支出が大幅に増加したことから、三年連続して実収入の伸びを下回った。
(4) 消費支出は三十五万七千六百三十六円で、名目一・七%、実質〇・一%の増加となり、名目、実質とも二年連続の増加となった。
(5) 平均消費性向(可処分所得に対する消費支出の割合)は七二・〇%と前年と同水準となり、二年連続して現行の調査開始(昭和三十八年)以来最低の水準となった。
(6) 黒字率(可処分所得に対する黒字の割合)は二八・〇%と前年と同水準となり、二年連続して現行の調査開始(昭和三十八年)以来最高の水準となった。
金融資産純増率(可処分所得に対する金融資産純増の割合)は二〇・〇%と前年を一・六ポイント上回り、現行の調査開始(昭和三十八年)以来初めて二〇%台となった。
土地家屋借金純減(土地や住宅などの購入に係る借入金返済額から借入額を差し引いた額)の割合は前年を二・一ポイント上回る五・一%と現行の調査開始(昭和三十八年)以来最高の水準となった。
3 勤労者以外の世帯の家計
勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり一か月平均二十九万三千三百七十円で、前年に比べ名目では〇・八%の増加、実質では〇・八%の減少となった。
勤労者以外の世帯の消費支出が五年連続して実質減少となったのは、現行の調査開始(昭和三十八年)以来初めてである。
4 財・サービス区分でみた消費支出の特徴
(1) 全世帯の消費支出(こづかい、贈与金、他の交際費及び仕送り金を除く。)を財(商品)への支出とサービスへの支出に区分してみると、財への支出は、前年に比べ名目では〇・三%の増加、実質では一・一%の減少となった。
内訳をみると、自動車等購入などの耐久財は実質減少、被服及び履物などの半耐久財は実質減少、食料などの非耐久財は実質減少となった。
なお、半耐久財は、平成四年以降六年連続の実質減少となった。
一方、サービスへの支出は、電話通信料が大幅な実質増加となったことなどから、名目二・五%、実質〇・四%の増加となった。
(2) 消費支出に占めるサービスへの支出割合は、平成元年を除き拡大を続け、九年は四〇・六%と前年に比べ〇・五ポイント拡大した。
U 平成九年の家計収支の特徴
1 消費税率引上げ前後の消費の動き
(1) 平成九年の家計消費は、三月は消費税率引上げを控えた駆け込み需要もあって大幅な実質増加となり、四月は前月の反動による需要の低下がみられたこともあって実質減少となった(第2図参照)。
(2) 世帯主の年齢階級別に、消費税率引上げ前後の四半期(平成九年一〜三月期及び四〜六月期)における消費支出の対前年同期実質増加率をみると、六十歳以上の世帯では、他の年齢階級ほど駆け込み需要はみられず、反動減もみられない。駆け込み需要の反動の減少幅は、三十歳未満の世帯で最も大きくなっている。
(3) 財・サービス区分別に消費支出(季節調整済み)の実質金額指数を四半期別の前期比でみると、一〜三月期は特に半耐久財に、四〜六月期は特に耐久財に駆け込み需要とその反動減の影響がみられる。
2 医療保険制度改正前後の医療費
(1) 平成九年九月の医療保険制度改正による保健医療への支出の変化を、医科診療代と医薬品の対前年同月実質増加率でみると、医科診療代は、医療保険制度改正後の九月以降四か月連続して大幅な実質減少となっている。
一方、医薬品は、医療保険制度改正後の九月以降四か月連続の実質増加となっており、医科診療代とは逆の傾向を示している。
(2) 世帯主の年齢階級別に医療保険制度改正後の医科診療代(平成九年九〜十二月期)の対前年同期名目増加率をみると、四十〜四十九歳の世帯、五十〜五十九歳の世帯、六十歳以上の世帯で大幅な増加となっている(第3図参照)。
一方、医薬品の対前年同期名目増加率をみると、すべての年齢階級で大幅な増加となっている。
3 酒税法改正と酒類の購入動向
(1) 焼ちゅうとウイスキーについて各月の購入数量の対前年同月増加率をみると、焼ちゅうは、三月に消費税率引上げを控えた駆け込み需要、四月にその反動がみられたほか、九月には値上がり前の駆け込み需要がみられ大幅な増加となった。一方、ウイスキーは減少傾向が続いており、十月には値下がりの影響もあって増加となったが、十一月以降は再び減少となった。
(2) 酒類の一世帯当たり年間購入数量を十五年前(昭和五十七年)と比べると、ぶどう酒が二・七二倍と大幅に増加し、次いで焼ちゅうの二・三二倍、ビールの一・二四倍となっている。
一方、清酒とウイスキーはそれぞれ〇・七二倍、〇・三三倍となっており、特にウイスキーは顕著な減少となっている。
(3) 世帯主の年齢階級別に酒類の年間購入数量をみると、ぶどう酒を除き、いずれも年齢階級が高くなるにつれて購入数量が多くなる傾向がみられる。
これを十年前(昭和六十二年)と比較すると、ぶどう酒はどの年齢階級においても大幅に増加しており、焼ちゅうとビールは特に中高年層で大幅に増加している。一方、ウイスキーと清酒はすべての年齢階級において大幅に減少している。
4 中食化の進展
(1) 近年、弁当や惣菜などの調理食品の利用が拡大し、この食形態は外食でもなく、家庭で素材を調理する内食でもない「中食」と呼ばれている。
そこで、食料を、穀類、魚介類、肉類、野菜・海藻などの「内食」、弁当、冷凍調理食品、サラダ、惣菜などの「中食」、飲食店、食堂などを利用する「外食」と「その他」に分けてみると、食料に占める内食の割合は、昭和五十年に比べると一〇・六ポイント低下している。一方、中食、外食の割合は昭和五十年に比べ、それぞれ五・一ポイント、六・六ポイント上昇している。
(2) 食料に占める割合を世帯主の年齢階級別にみると、外食の割合は、一貫して若年層ほど高いものの、いずれの年齢階級においても上昇傾向にある。
5 通信費の動向
(1) 一世帯当たり年間の通信費のうち、郵便料、電話通信料及び運送料の実質金額指数(昭和六十二年=一〇〇)の動きをみると、郵便料はおおむね横ばいであるのに対し、電話通信料はほぼ一貫して増加しており、昭和六十二年から平成九年の十年間で約一・五倍となっている。運送料は平成七年以降は伸びが鈍化している。
(2) 世帯主の年齢階級別にみると、近年の携帯電話やPHSの急速な普及拡大を背景として、九年には、三十歳未満の世帯が五十〜五十九歳、四十〜四十九歳の世帯に次ぐ支出額となった。一方、六十歳も少ない支出額となっている。
V 世帯属性別の家計収支
1 世帯主の年齢階級別
全世帯の消費支出の対前年実質増加率を世帯主の年齢階級別にみると、四十〜四十九歳の世帯(〇・二%増)、六十歳以上の世帯(〇・四%増)は増加となったが、三十歳未満の世帯(三・五%減)、三十〜三十九歳の世帯(〇・九%減)、五十〜五十九歳の世帯(〇・二%減)は減少となった。
消費支出が実質減少した年齢階級では、住居、自動車等関係費などの交通・通信が大幅な実質減少となっている。
2 年間収入五分位階級別
(1) 勤労者世帯の実収入の対前年実質増加率を年間収入五分位階級別にみると、第T階級(一・〇%減)は減少となったが、第U階級(〇・七%増)、第V階級(一・七%増)、第W階級(一・一%増)、第X階級(一・八%増)は増加となった。
(2) 実収入に対する非消費支出の割合は、第T階級から順に一一・六%、一三・九%、一五・三%、一七・〇%、一九・八%となり、特別減税の廃止による影響もあってすべての年収階級で上昇した。
(3) 可処分所得の対前年実質増加率をみると、第T階級(一・二%減)、第U階級(〇・二%減)は減少となったが、第V階級(〇・六%増)、第W階級(〇・一%増)、第X階級(〇・六%増)は増加となった。
(4) 消費支出の対前年実質増加率をみると、第T階級(一・七%減)、第U階級(〇・七%減)は減少となったが、第V階級(一・三%増)、第X階級(〇・六%増)は増加となった。また、第W階級は前年と同水準となった。
(5) 平均消費性向の各年収階級の前年とのポイント差をみると、第T階級及び第U階級は低下、第V階級は上昇、第W階級及び第X階級は前年と同水準となった。
3 高齢無職世帯
(1) 高齢無職世帯(世帯主が六十歳以上の無職世帯)の実収入は、一世帯当たり一か月平均二十五万七千六百一円で、前年に比べ実質〇・八%の減少となった。また、可処分所得は二十三万二千百八十五円で実質〇・九%の減少となった。
(2) 消費支出は二十五万五千二百十七円で、実質一・七%の減少となった(第4図参照)。
内訳をみると、自動車等関係費などの交通・通信、住居が大幅な実質減少となったほか、被服及び履物、家具・家事用品、光熱・水道、食料も実質減少となった。
一方、保健医療、教養娯楽は実質増加となった。
消費支出の費目別構成比をみると、食料、保健医療、教養娯楽などの割合が拡大した。エンゲル係数をみると、前年に比べ〇・四ポイント上昇と、前年に比べ上昇したのは三年ぶりである。
また、保健医療の消費支出に占める割合は、前年を〇・四ポイント上回った。
(3) 平均消費性向は一〇九・九%と、前年(一一〇・八%)の水準を〇・九ポイント下回り、三年連続して低下した。
また、消費支出に対する可処分所得の不足分(二万三千三十二円)は、前年(二万四千八百七十六円)に比べ縮小した。
4 核家族共働き世帯
(1) 夫婦が共に勤労者の核家族共働き世帯における実収入は、一世帯当たり一か月平均六十七万二千五百九十二円で、前年に比べ実質一・五%の増加となった。
内訳をみると、世帯主(夫)の勤め先収入は臨時収入・賞与が増加したことなどから実質二・一%の増加となった。また、世帯主の配偶者(妻)の勤め先収入は実質一・六%の増加となった。
なお、世帯主の配偶者(妻)の勤め先収入は、一か月平均十六万六千五百五十円(年間約二百万円)で、実収入に占める割合は二四・八%となり、前年(二四・七%)に比べ〇・一ポイント上昇した。
(2) 消費支出は三十七万九千五百八十円で、実質〇・四%の増加となった。
内訳をみると、保健医療、教育が大幅な実質増加となったほか、教養娯楽、食料も実質増加となった。
(3) 黒字は名目二・三%の増加となった。また、黒字率は三二・六%となり、前年と同水準となった。
5 住宅ローン返済
(1) 勤労者世帯のうち住宅ローン返済世帯の実収入は、一世帯当たり一か月平均七十万四千三百五十四円で、前年に比べ実質一・六%の減少となった。また、可処分所得(五十七万九千三百三十四円)は実質二・二%の減少となった。
(2) 住宅ローン返済額は、九万六千六百七十円(年間約百十六万円)で、可処分所得に占める割合は一六・七%となった。
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