官報資料版 平成1022





犯罪白書のあらまし


―日本国憲法施行50年の刑事政策―


法 務 省


 平成九年版の犯罪白書は、去る十月十四日の閣議に報告され、同日公表された。白書のあらましは、次のとおりである。

<はじめに>

 本年は、日本国憲法が施行された昭和二十二年から数えて五十年目に当たる。そこで、本白書においては、この機会に、犯罪と犯罪者処遇の現状を理解し、将来における適切な刑事政策に資するため、全編を「日本国憲法施行五十年の刑事政策」の特集とし、この五十年間にわたる、我が国における犯罪状況の推移と犯罪者処遇の変遷のあとを回顧し、その概要をとりまとめることとした。
 この五十年間の刑事司法の軌跡を振り返ると、日本国憲法の施行によって法律制度に大きな変革がもたらされ、刑事司法諸機関は、新しい理念の下で変容し、その後、ときどきの犯罪情勢に対応しながら、より効果的な犯罪防止及び犯罪者処遇に向けてのたゆまない努力を続けてきた。
 この五十年間の犯罪動向に目を転じると、昭和二十年代には、終戦直後の経済的困窮と社会的混乱という異常事態の下、我が国の歴史上かつて経験したことのないほどに凶悪犯罪や財産犯罪などが激増したものの、やがて社会の安定とともに、刑法犯は減少し、昭和の終わりころには、「世界で最も安全な国の一つ」といわれるほどに犯罪情勢の安定と良好な社会を実現し得たといわれた。
 この間、法務省法務総合研究所が「犯罪白書」を世に送り出したのは昭和三十五年のことであり、既に三十七冊を数える過去の「犯罪白書」をひもとくと、少年非行問題はいくたびか課題とされている上、社会情勢の変動に伴って、新たなタイプの犯罪の出現が明らかにされてきた。
 平成に入ってからも、緊要な課題として、「高齢化社会と犯罪」、「女子と犯罪」、「交通犯罪の現状と対策」、「犯罪と犯罪者の国際化」、「薬物犯罪の現状と対策」及び「凶悪犯罪の現状と対策」が特集として取り上げられている。
 いうまでもなく犯罪現象は、時代の変遷とともに、その時代の背景をなす社会的、経済的、文化的諸情勢と複雑に関連しながら変動するものである。こうした観点をも踏まえつつ、本白書では、過去半世紀における我が国の犯罪動向及び犯罪者の処遇状況について、単に数値の変動を記述するにとどまることなく、そのときどきの社会情勢等の時代背景を可能な限り明らかにし、これらと関連させつつ考察するとともに、この間の刑罰法規及び処遇関係法令の変遷についても触れている。
 本白書の構成は三編から成り、第一編では、五十年間における刑罰法規の変遷と犯罪動向等を概観し、第二編では、五十年間における犯罪者・非行少年の処遇を規律する法規の変遷、検察・裁判・矯正及び保護の各段階における成人犯罪者及び非行少年の処遇の変遷並びに刑事司法における国際協力の実情について紹介し、第三編ではこれらのまとめを行っている(なお、本稿の構成は、要約の便宜上、本白書の構成とは一部異なるところがある。)。

<第一編> 憲法施行五十年の犯罪動向


一 平成八年の犯罪の概観

 (1) 刑法犯の概況第1表参照
 平成八年における警察による刑法犯の認知件数は、前年より二万九千五百二十件増加して、二百四十六万五千五百三件となっており、このうち交通関係業過(業務上過失致死傷等のうち、道路上の交通事故に係るもの)を除く刑法犯の認知件数が、前年より二万九千百七十五件増加して、百八十一万二千百十九件となっている。
 刑法犯認知件数を罪名別にみると、窃盗(六四・四%)が最も多く、次いで、交通関係業過(二六・五%)、横領(二・四%)、詐欺(一・九%)、器物損壊等(一・五%)等の順となっている。
 平成八年における警察による刑法犯の検挙人員は、前年より九千九十六人増加して、九十七万九千二百七十五人となっており、このうち交通関係業過を除く刑法犯の検挙人員は、前年より二千三百三十二人増加して、二十九万五千五百八十四人となっている。
 刑法犯検挙人員を罪名別にみると、交通関係業過(六九・八%)が最も多く、次いで、窃盗(一六・六%)、横領(六・三%)、傷害(二・二%)、恐喝(〇・九%)等の順となっている。
 平成八年における刑法犯の発生率(認知件数の人口十万人当たりの比率をいう。以下同じ。)は、前年より一九上昇して一、九五九となっており、交通関係業過を除く刑法犯の発生率は、前年より二〇上昇して一、四四〇となっている。
 平成八年における刑法犯の検挙率は、前年より一・四ポイント低下して五六・三%となっている。また、交通関係業過を除く刑法犯の検挙率も一・六ポイント低下して、四〇・六%となっている。
 (2) 特別法犯の概況
 平成八年における特別法犯の検察庁新規受理人員総数は、前年より四万二千百六十六人増加して、百十三万四千三百五十人となっている。新規受理人員を罪名別に上位からみると、道路交通法違反が九十九万八千四百五十九人(総数の八八・〇%)で最も多く、以下、自動車の保管場所の確保等に関する法律違反四万五千二百五十七人(同四・〇%)、覚せい剤取締法違反二万七千六百七人(同二・四%)、入管法違反八千九人(同〇・七%)、毒劇法違反七千七百六十八人(同〇・七%)等となっている。
 また、交通関係法令違反を除いた特別法違反の構成比をみると、覚せい剤取締法違反、毒劇法違反等の薬物関係犯罪が四三・六%と最も高く、以下、銃刀法違反等の保安関係犯罪が一一・六%、入管法違反等の外事関係犯罪が九・六%、売春防止法違反等の風俗関係犯罪が六・二%となっている。

二 第二次世界大戦終結後の犯罪動向

 (1) 刑法犯の動向
 ア 概 説(第1図参照
 昭和二十一年以降における刑法犯の認知件数は、二十三年及び二十四年に百六十万件台に達し、いったん減少したものの、四十五年に百九十三万二千四百一件とピークに達したが、これは、主として交通関係業過の増加によるものである。平成五年以降は二百四十万件台で推移し、八年には最高値を更新した。
 交通関係業過を除く刑法犯の認知件数は、昭和二十三年にほぼ百六十万件であったが、その後減少し、四十八年には百二十万件を割った。四十九年から増加に転じ、平成八年には最高値に達した。
 刑法犯の検挙人員は、昭和二十一年以降おおむね増加し、四十五年に百七万三千四百七十人と最高に達した後、減少した。五十五年以降はおおむね緩やかな増加傾向にある。
 交通関係業過を除く刑法犯の検挙人員は、昭和二十五年の六十万七千七百六十九人を最高に、その後ほぼ減少傾向を示し、平成になってからおおむね三十万人前後で推移している。
 交通関係業過を除く刑法犯認知件数の罪名別構成比を昭和二十一年以降についてみると、窃盗が一貫して一位を占め、比率は七〇%台から八〇%台となっている。このほか詐欺、横領、傷害、暴行、恐喝が上位を占めているが、戦後一時期には、賭博・富くじ及び盗品譲受け等が四位、五位を占めたこともある。
 イ 刑法犯の少年・女子・高齢者の構成比
 昭和四十一年以降の交通関係業過を除く刑法犯検挙人員に占める少年、女子、六十歳以上の高齢者のそれぞれの比率をみると、少年比は、五十二年まで三〇%台で推移し、その後上昇して平成元年に五七・四%と最高に達し、以後起伏を示しつつ、八年には四九・二%となっている。
 女子比は、昭和四十一年の一〇・七%からおおむね上昇し、平成元年に二一・二%に達し、その後起伏はあるが、八年には二〇・五%となっている。
 高齢者比は、昭和四十一年の一・九%から六十一年の四・七%まで毎年上昇し、その後一時低下したものの再び上昇に転じ、平成八年には七・三%と最高値に達している。
 ウ 凶悪犯
 @ 殺 人
 認知件数は、昭和二十年代前半に急増し、二十九年に三千八十一件のピークとなったが、その後は長期的に減少傾向にあり、平成八年は一千二百十八件である。
 検挙率は、昭和二十年代前半に九〇%台前半で推移した後は、おおむね九六%台から九八%台であり、発生率は、二十年代後半に三・三から三・五で推移した後低下し、平成八年は一・〇である。
 A 強 盗
 認知件数は、昭和二十三年の一万八百五十四件をピークに減少し、平成元年には一千五百八十六件となったが、二年以降増加傾向にあり、八年は二千四百六十三件である。
 検挙率は、昭和五十年代に入るまでほぼ八〇%台前半で推移し、その後低下したが、平成五年以降八〇%前後に回復した。発生率は、昭和二十年代前半に一〇から一四で推移した後、おおむね低下傾向を示し、平成元年に一・三となったが、その後上昇し、八年は二・〇となっている。
 エ 財産犯
 @ 窃 盗
 認知件数は、終戦直後の混乱の中で、昭和二十三年に百二十四万六千四百四十五件のピークに達した後、急減した。四十九年からは増加し、平成八年には百五十八万八千六百九十八件となっているが、この増加は、オートバイ盗、自転車盗、車上ねらい等の増加によるところが大きく、侵入盗はむしろ減少傾向にある。
 A 詐 欺
 認知件数は、昭和二十五年に十八万七千五百二十八件のピークに達した後、急減したが、五十年代には、クレジット・カードによる事犯が急増したことが一因となって増加に転じ、平成に入ってからは四万件台から五万件台の間で横ばい傾向を示している。
 B 横 領
 認知件数は、昭和二十五年に六万五千六百十六件のピークに達した後、急減したが、四十年代後半からは急増し、平成八年は六万二百十三件である。近年の増加は、遺失物等横領の増加によるところが大きく、八年にはこれが五万八千五百九十二件を占めている。
 オ 交通関係業過事犯
 交通事故の発生件数は昭和四十四年に七十二万八百八十件の、また、同事故による死亡者数及び負傷者数は四十五年に一万六千七百六十五人及び九十八万一千九十六人のそれぞれピークを示した後、急速に減少した。しかし、五十年代にはいずれも増加傾向をみせ始め、平成八年には、発生件数は戦後最高の七十七万一千八十四件を、また、負傷者数も過去のピーク時に次ぐ九十四万二千二百三人の高い数値を示している。
 死亡者数は昭和六十三年には再び一万人を超えたが、平成五年以降は減少傾向にあり、八年は九年ぶりに一万人を下回って九千九百四十二人となっている。
 交通事故による死亡者の年齢層別の割合は、二十歳代の若年層と六十歳以上の高齢者で高くなっている。特に高齢者の割合は近年増加が著しく、昭和四十一年には約一八%であったものが、平成八年には約三九%となっている。
 交通関係業過の検挙人員は、平成八年には六十八万三千六百九十一人であるが、これを罪名別に昭和四十六年と比較すると、業務上過失致死が一万五千二百六十五人から八千二百二十一人へと大幅に減少している。
 カ 放 火
 放火の認知件数は、昭和五十七年に二千二百九十一件と最高値に達した後、減少し、平成三年には一千三百四十八件となったが、四年以降は増加傾向にあり、八年は一千八百四十六件となっている。検挙率は、昭和二十三年以降ほとんど八〇%台であり、平成五年以降は九〇%を超えている。
 (2) 特別法犯の動向
 ア 概 説(第2図参照
 道交違反を除く特別法犯の検察庁新規受理人員(以下「受理人員」という。)は、昭和二十四年に八十六万百六十人と最高値を示したものの、三十一年まで急減し、同年以降は、十万人台から二十万人台の間で推移した。平成四年以降は、八万人台から九万人台となっている。
 昭和二十年代の特別法犯では、戦後の混乱期における食糧管理法等の経済統制令違反が多く、これらは経済復興に伴い急激に減少している。
 イ 道交違反
 道交違反の受理人員は昭和四十年に約四百九十六万人のピークとなり、交通反則通告制度が導入された四十三年及び四十四年に激減し、百四十万人台となった。五十年代には百九十万人台から二百四十万人台の間で推移したが、交通反則通告制度の適用範囲の拡大がなされた六十二年には再び約百五十万人に急減した。その後もおおむね減少傾向を続け、平成八年には百四万三千七百十六人となっている。
 ウ 保安関係犯罪
 @ 保安関係特別法犯の動向
 銃刀法違反の受理人員は、昭和四十年の二万一千六百二十二人をピークにおおむね減少傾向にあったが、平成三年の三千四百二十人を底に微増の傾向を示し、七年及び八年には四千人台に達している。
 軽犯罪法違反の受理人員は、二千人台から七千人台の間で増減を繰り返して推移し、平成七年及び八年には五千人台に達している。
 火薬類取締法違反の受理人員は昭和四十年代から、また、酩酊防止法違反の受理人員は五十年代から、それぞれ減少傾向を示しており、最近十年間はいずれも七百人未満である。
 A 銃器犯罪
 銃器使用犯罪検挙件数は、昭和六十年から六十二年にかけては、おおむね二百五十件を記録していたが、平成に入ってからはおおむね減少傾向を示し、八年には百二十四件である。
 近年は、昭和四十年代から五十年代のころと比べ、けん銃が使用される比率が高まる一方で、暴力団勢力による事件の比率は低下を続けている。
 エ 外事関係犯罪
 @ 入管法違反
 入管法違反の受理人員は、昭和三十年代後半から減少傾向を続け、四十一年から六十年までの間は、多い年でも六百人台であったが、平成に入ると急激な増加を示し、外国人入国者総数が三百五十万人を超えた二年には一千人を超え、八年には約八千人に達している。
 A 外登法違反
 外登法違反の受理人員は、昭和二十七年以降三十二年までは、二十八年、三十年及び三十二年と二年ごとに二万人を超える、三十二年以降は三年ごとに一万五千人を超える山を示して増減を繰り返しながら経過したが、四十七年の約一万八千三百人を最後のピークに、以後減少傾向に転じ、特に平成に入ってからは著しく少なくなっており、三年以降は多い年でも三百人台である。
 オ 風俗関係犯罪
 @ 売春防止法違反
 売春防止法違反の受理人員は、同法が施行された翌年の昭和三十四年に一万八千六百二十九人と最高を記録し、以後おおむね減少傾向にあり、平成五年以降は一千人台で推移している。
 A 風営適正化法違反
 風営適正化法違反の受理人員は、昭和四十年代前半及び五十年代半ばに一万八千人台及び一万三千人台に達した二つのピークが認められるが、六十年代以降は減少傾向を示し、平成四年以降は二千人前後で推移している。
 カ 環境関係犯罪
 昭和三十年代から公害が全国的な問題となり、四十二年に公害対策基本法が制定された。水質汚濁防止法違反の受理人員は、四十七年以降増加し、四十九年から六十年までは五百人前後で推移したが、六十一年以降減少傾向にあり、平成四年以降は百人未満で推移している。
 海洋汚染防止法違反の受理人員は、平成五年までおおむね一千人台で推移したが、その後減少し、八年は五百五十五人である。
 廃棄物処理法違反の受理人員は、昭和五十四年に四千五百十九人のピークに達し、その後起伏はあるが減少傾向にあり、平成八年は二千二十四人である。
 キ 選挙関係犯罪
 公職選挙法違反の受理人員は、おおむね統一地方選挙が行われる年次(昭和二十二年以降四年ごと)に高い数値を記録しているところ、昭和三十年代の同年次においては、八万人台又は十一万人台であったが、平成に入ってからの同年次では一万人台である。
 ク 財政経済関係犯罪
 @ 租税法違反
 租税法違反の受理人員については、所得税法違反は昭和三十年代後半から、また、法人税法違反は三十年代前半からそれぞれ増加傾向にある。六十年代には、いわゆる脱税請負人による架空保証債務事件の影響により、所得税法違反及び相続税法違反が高い数値を記録した年次もある。その後、バブル経済の影響により、平成五年には法人税法違反が三百五十人と、高い数値を記録している。
 A 独占禁止法違反
 独占禁止法違反事件については、平成二年に公正取引委員会が刑事罰の積極的活用の方針を示した。七年には二百九十一人の受理人員をみている。
 B 知的所有権関係法令違反
 商標法違反の受理人員は、昭和四十年代までは減少傾向にあり、五十年には十九人となったが、その後、五十年代に偽ブランド商品が社会問題となり、受理人員が急増し、六十一年には五百九十二人と最高を記録した。平成八年は三百十六人である。
 (3) 犯罪被害の実情
 犯罪被害の実情は、地下鉄サリン事件の被害者が計上された平成七年を例外として、死傷者数はおおむね減少傾向にあり、昭和六十二年に死亡者が一千六百五人、重軽傷者が二万七千七百九人であったものが、平成八年には死亡者一千二百四十九人、重軽傷者二万三千八百三十人となっている。
 (4) 諸外国の犯罪動向との対比第2表参照
 我が国とアメリカ、イギリス(イングランド及びウェールズをいう。)、ドイツ及びフランスの四か国について、一九八六年から一九九五年までの十年間における主要な犯罪の認知件数を比較すると、我が国が最も少ない。
 発生率については、我が国が一、二〇〇台から一、四〇〇台で推移しているのに対し、四か国中では比較的低いアメリカにおいても五、二〇〇台から五、八〇〇台で推移している。

<第二編> 憲法施行五十年の犯罪者処遇


一 検 察

 (1) 検察庁終局処理人員の推移第3図参照
 検察庁の終局処理人員は、昭和二十八年以降、増加傾向をみせ、四十年に約六百九万人の過去最高を記録した。これは、業過及び道交違反に対する略式命令の増加によるところが大きい。その後、四十三年の交通反則通告制度の導入による道交違反の受理人員の減少等により、四十四年には約二百七十八万人にまで急減し、その後は起伏を示しながら推移した。交通反則通告制度の適用範囲が拡大された六十二年に再び激減し、その後はおおむね減少傾向を続け、平成八年は約二百八万人である。
 この間、公判請求の件数は、昭和二十三年に約二十一万六千人の最高数値を記録し、二十六年以降平成元年までの間は、十万人台から十四万人台で起伏を示しながら推移し、平成二年以降は、おおむね九万人台である。
 平成八年における検察庁の終局処理人員総数は二百七万六千七百三十人で、その処理区分別構成比は、公判請求が四・七%、略式命令請求が四九・三%、起訴猶予が三〇・九%などとなっており、起訴率は六二・四%、起訴猶予率は三六・四%となっている。
 (2) 検察庁既済事件の逮捕・勾留状況
 昭和三十六年以降の三十五年間について、業過(昭和五十年以降は交通関係業過)及び道交違反を除く検察庁既済事件のうち、被疑者が逮捕された事件(身柄事件)の占める比率(身柄率)をみると、例年、おおむね二〇%台にとどまり、七〇%以上の事件がいわゆる在宅事件として処理されている。また、同じ期間、身柄事件中で勾留請求された事件の比率(勾留請求率)は、昭和四十年代前半には六〇%台であったものの、その後は上昇し、平成五年以降は九〇%を超えている。
 なお、勾留請求された事件のうち、裁判官によって勾留が認容された事件の比率(認容率)は、この三十五年間、九六%以上を維持しており、平成三年以降は、いずれの年次においても九九・九%という高い比率を示している。
 (3) 検察庁既済事件の起訴・不起訴の状況
 昭和二十一年以降の検察庁終局処理人員によって、起訴及び起訴猶予の状況をみると、全事件についての起訴率は、二十年代末から上昇し、三十年から六十二年までの間は、おおむね八〇%台の高い数値を維持し続けたものの、その後は低下傾向をみせ、平成三年以降は六〇%台となっている。
 一方、起訴猶予率は、昭和二十年代後半から長期的には低下傾向を示し、五十六年から六十年までの間は一〇%未満を記録していたが、平成四年以降は三〇%台となっている。この起訴率・起訴猶予率の変動は、業過(昭和五十年以降は交通関係業過)及び道交違反についての起訴及び起訴猶予の動向に影響されるところが大きい。
 なお、交通関係業過を除く刑法犯の起訴率は、近年、五〇%台で推移している。
 (4) 国際捜査共助
 昭和六十二年から平成八年までの最近十年間に、検察庁の依頼により、我が国から外国に対して、外交ルートによって要請した捜査共助についてみると、嘱託件数は合計で九十三件、相手国(地域を含む。)は十七か国となっており、嘱託件数、相手国数共に、長期的にみると増加傾向にある。
 一方、外交ルートによる外国からの我が国に対する捜査共助要請についてみると、この間の受託件数は百八十九件、要請国は二十七か国となっている。
 相手国は嘱託・受託共にアメリカが最も多く、いずれも半数近くを占めているが、近年、アジア・太平洋諸国及びヨーロッパ諸国からの要請が増加している。

二 裁 判

 (1) 裁判確定人員の推移第3表参照
 昭和三十二年以降の四十年間の全事件裁判確定人員をみると、三十年代前半には百七十万人前後であったが、三十年代後半に急増し、四十年には約四百六十二万人のピークに達した。その後は、長期的にみると減少傾向を示し、最近十年間は百万人台で推移し、平成八年は約百七万人となっている。この間の増減は、いずれの年次においても確定人員の九三%以上を占めている財産刑(罰金及び科料)の増減と連動している。
 また第一審終局処理人員中に通常手続の占める比率は、昭和五十年代から六十一年までは三%台で、六十二年以降は四%台から五%台で、それぞれ推移しており、例年、圧倒的多数の事件が略式手続によっている。
 死刑、懲役刑及び禁錮刑を受けた確定人員は、昭和三十二年にはこの合計が十万人を超えていたが、その後は減少し、三十八年以降、平成元年までの間は六万人台から七万人台で推移している。二年以降は五万人台で推移していたが、八年には七年ぶりに六万人を超えている。
 無罪の確定人員は、昭和三十二年から四十九年までの間は、おおむね四百人台から五百人台の年次が続き、その間の四十五年には六百二十三人の最高値を記録した。しかし、その後は減少傾向を示し、平成六年以降は最低値を更新し続け、八年は四十五人である。有罪人員と無罪人員の合計に占める無罪人員の比率は、最も高かった昭和四十五年においても〇・〇四%である。
 (2) 執行猶予の状況
 昭和三十五年以降の確定人員についての懲役刑の執行猶予率は、おおむね五〇%台で推移したが、平成に入ってからは、ほぼ一貫した上昇傾向がみられ、六年以降は六〇%台を示しており、八年については六一・九%である。

三 成人矯正

 (1) 行刑施設における収容状況の推移第4図参照
 新受刑者数は、昭和二十三年に戦後で最も多い七万七百二十七人となったが、以後、おおむね減少傾向を示している。この間、五十九年には三万二千六十人の小さなピークがあり、平成四年には二万八百六十四人と戦後最低を記録した。五年以降は漸増傾向にあり、八年には二万二千四百三十三人となっている。
 懲役刑新受刑者は、昭和二十三年に六万九千七百三十五人のピークを迎えた後、長期的に減少傾向を示し、平成四年には戦後最低の二万六百六十四人を記録したが、五年以降漸増傾向をみせ、八年には二万二千二百二十八人となった。
 禁錮刑新受刑者は、交通関係業過を主として昭和三十年以降増加に転じ、四十六年には二千九百八十二人と最高を記録したが、その後ほぼ一貫して減少傾向を示しており、平成四年以降は百人台で推移している。
 なお、新受刑者中の女子比は、昭和四十九年に一・八%と最低を記録した後、六十年まで上昇の一途をたどり、同年以降一貫して四%台で推移している。
 (2) 懲役刑期別構成比
 懲役刑新受刑者の刑期別構成比の推移をみると、昭和六十年まで四〇%台から五〇%台を占めていた刑期「一年以下」及び「六月以下」の受刑者の占める比率が、近年は低下し、平成五年以降は二〇%台で推移している。八年においては、「三年以下」が六一・〇%、「一年以下」が一七・八%、「五年以下」が九・九%となっている。
 (3) 年齢層別構成比
 受刑者中に占める二十歳未満の者の比率は、昭和二十五年までは一〇%を超えていたが、少年法適用年齢が十八歳未満から二十歳未満に引き上げられた二十六年には五・八%、翌二十七年には二・七%と、急激に低下し、平成元年以降は、いずれの年も〇・二%となっている。
 他方、四十歳以上の年齢層は、昭和四十年代半ば以降顕著な増加を示しており、特に、五十八年までは二・〇%未満であった六十歳代以上の者が、平成五年には五%台に達し、八年には六・二%になるなど、最近における新受刑者の高齢化傾向が明確に現れている。
 (4) 入所度数別構成比
 昭和三十五年以降平成八年までの新受刑者の入所度数別構成比をみると、初度の者(初めて受刑した者)は、おおむね四〇%前後で推移しており、平成八年には四一・六%となっている。
 一方、六度以上の者は、昭和三十年代半ば以降、おおむね緩やかな上昇傾向にあり、平成四年以降は一九%台で推移したが、八年は一八・五%となっている。
 (5) 執行猶予歴の構成比
 昭和四十一年以降平成八年までの初入新受刑者(刑確定により初めて行刑施設に入所した受刑者)の執行猶予歴の推移をみると、保護観察の付されていない単純執行猶予歴のある者の比率が、八年には二十年前の約一・五倍に増加し、逆に執行猶予歴のない者の比率は減少傾向にある。

四 更生保護

 (1) 仮釈放の申請及び許否の状況
 仮出獄申請受理人員は、昭和二十五年の六万百五十八人を最高に、二十六年、二十七年と五万人台で推移した後、三十三年以降おおむね減少傾向を続け、五十年代に一時増加傾向を示したものの、六十年を境に再び減少に転じ、平成四年以降は一万三千人台で推移している。
 仮釈放率は、昭和二十四年には七九・七%という極めて高い率を示し、二十五年、二十六年と七〇%を超え、その後も六〇%台で推移していたが、三十年代後半以降は、若干の高低を示しながら長期的に低下を続け、五十七年には五〇・八%と、現行制度発足以来最低の率となった後、近年は五五%を超えて推移している。
 なお、平成八年における仮出獄申請受理人員は一万三千百四十五人、許可人員は一万二千三百二十七人、棄却人員は二百九十八人である。
 (2) 保護観察事件の受理状況第5図参照
 仮出獄者は、昭和二十五年から二十七年には四万人を超えていたが、その後長期的に減少を続け、五十年代前半には一万四千人台にまで減少し、五十九年以降一時期増加した後、最近は一万二千人台で推移している。
 保護観察付き執行猶予者は、昭和二十九年以降逐年増加し、三十三年以降はほぼ七千人台ないし八千人台で推移した後、五十年代の終わりからは減少傾向を示し、平成に入った後は四千人台ないし五千人台で推移している。
 平成八年における新規受理人員は、仮出獄者が一万二千三百十六人、また、保護観察付き執行猶予者は四千九百二十六人である。
 (3) 更生保護施設の収容保護の状況
 更生保護施設への委託保護人員(実人員)は、昭和四十一年には総数で一万三千人を超えていたが、以後減少し、四十年代終わりには一万人を割って、五十年代から六十年代初頭にかけては一万人台を回復し、その後再び減少して、近年は八千人台ないし九千人台で推移している。
 事件種類別では、昭和四十一年には、刑の執行終了者の比率が仮出獄者の比率を上回っていたものが、四十九年に両者の比率は逆転し、近年は、仮出獄者は五〇%台、刑の執行終了者は二〇%台で推移している。

<第三編> 少年非行、薬物犯罪、暴力団犯罪、外国人犯罪


一 少年非行

 (1) 少年非行の動向
 ア 少年刑法犯検挙人員等の推移(第6図参照
 少年刑法犯検挙人員の推移をみると、昭和二十六年の約十七万人をピークとする第一の波、三十九年の約二十四万人をピークとする第二の波、五十八年の約三十二万人をピークとする第三の波という三つの大きな波がみられる。五十九年以降は減少傾向を示していたが、平成八年には検挙人員、人口比(十歳以上二十歳未満の少年人口一千人当たりの少年刑法犯検挙人員の比率)とも前年を上回り、前者は十九万六千四百四十八人、後者は一二・六となっている。
 交通関係業過を除く少年刑法犯検挙人員は、昭和四十一年から四十七年にかけて徐々に減少した後、増加に転じ、五十八年には二十六万人を超えてピークに達し、その後減少傾向を示していたが、平成八年には前年を上回る十五万六千八百二十三人となっている。少年比は、昭和五十六年から平成四年までは、昭和五十九年を除いて五〇%を超える状態が続き、その後、平成六年には四六・七%まで低下し、八年には四九・二%となっている。
 なお、平成八年の交通関係業過を除く少年刑法犯検挙人員総数に占める罪名別構成比は、窃盗が六六・〇%、横領が一八・九%であり、この二つの罪名で八割以上を占めている。
 イ 年齢層別検挙人員人口比
 交通関係業過を除く少年刑法犯については、昭和四十六年以降、一貫して年少少年の人口比が最も高いが、五十八年に最高の二九・五(検挙人員十一万四百三十三人)を記録した後、下降傾向を示しており、平成八年は一八・一で、中間少年の人口比(一六・九)に近づいてきている。年長少年及び触法少年の人口比は、長期的にみると、横ばいないし漸減傾向を示している。
 ウ 女子少年の非行
 男女別少年刑法犯検挙人員を昭和二十五年を一〇〇とする指数でみると、男子が七〇台から一五〇台の間で増減を繰り返しているのに対し、女子は四十年代後半から急激に上昇し、ピーク時の六十三年には四二二に達したが、その後、平成五年の二四八まで低下し、八年は二八五となっている。
 女子比は、昭和四十六年に一〇%を超え、五十一年以降は、起伏を示しながらも二〇%前後で推移している。
 (2) 少年事件の検察及び裁判
 昭和二十四年以降における少年保護事件の家庭裁判所受理人員総数は、二十六年以降増加し、四十一年に百九万四千三百三十九人と最高値に達した。その後四十九年までは減少し、五十年から再び増加に転じ、五十八年に六十八万四千八百三十人とピークに達したものの、五十九年以降平成七年までは減少した。
 平成八年における受理人員総数は二十九万八千七百七十五人(前年より五千七十二人、一・七%増)であり、うち一般事件が十九万六百二十人(同三千七百九十七人、二・〇%増)、道交違反事件が十万八千百五十五人(同一千二百七十五人、一・二%増)と、いずれも前年より増加した。
 平成七年における一般保護事件の終局処理人員総数は十二万三千七百十二人(前年より八千七十四人、六・一%減)であり、審判不開始が七三・一%、不処分が一三・七%、保護観察が九・七%、少年院送致が二・七%、検察官送致(刑事処分相当及び年齢超過)がそれぞれ〇・三%、養護施設・教護院送致が〇・二%、知事・児童相談所長送致が〇・一%となっている。
 (3) 少年鑑別所新収容人員第7図参照
 新収容人員は、昭和二十四年には一万六千九十四人であったものが、少年法の適用年齢が二十歳未満に引き上げられた二十六年には四万八百二十人と最高に達した。その後いったんは減少したものの、三十五年に三万八千六百六十一人と第二のピークを迎え、四十一年まで三万五千人前後で推移した。その後は急減し、四十九年には最低の一万四百十人を記録したが、五十九年には二万二千五百九十三人と第三のピークとなった。六十年以降平成七年までは減少傾向を示していたが、八年における新収容人員は一万五千五百六十九人(男子一万三千六百五十七人、女子一千九百十二人)と、前年より一千三百四人(九・一%)増加している。
 また、平成八年の一日平均収容人員は九百九十三人であり、前年より七十八人(八・五%)増加している。
 (4) 少年院新収容者第8図参照
 昭和二十四年以降の少年院新収容者は、二十六年に一万一千三百三十三人と最高値を記録し、以後減少しつつも、三十四年及び三十九年から四十一年にかけてピークを示した。四十二年以降は急減し、四十九年に一千九百六十九人と最低になった後増加して、五十九年に六千六十二人のピークに達し、六十年以降平成七年まで漸減傾向にあった。
 平成八年における新収容者は四千二百八人(前年より三百八十人、九・九%増)、一日平均収容人員は二千九百四十五人(同九十八人、三・四%増)である。
 (5) 少年の更生保護第9図参照
 保護観察処分少年の新規受理人員は、昭和二十六年に約二万三千人に達した後、一時減少に転じたが、三十年代に入って再び増加に転じ、四十一年に三万人を超えて第二のピークを迎えた。その後は再び減少傾向にあったものの、五十二年以降急激に増加し、五十八年以降七万人前後で推移していたが、平成三年以降は減少傾向にあり、八年には五万一千百七十三人となっている。
 昭和五十二年以降の急激な増加は、この年に導入された交通短期保護観察の人員の増加によるところが大きい。

二 薬物犯罪

 (1) 薬物犯罪の動向
 ア 覚せい剤事犯(第10図参照
 覚せい剤取締法違反の検挙人員は、昭和二十九年に五万五千六百六十四人のピークに達し、罰則の強化等の各種施策の実施により一時沈静化したが、四十年代半ば以降再び増加に転じ、五十年代後半から六十三年にかけては二万人を超える高い水準で推移した。その後は減少傾向を示していたが、平成七年以降二年連続で増加しており、八年には一万九千六百六十六人となっている。
 来日外国人による覚せい剤事犯検挙人員は、平成に入って大幅に増加しており、八年には五百五十八人で、前年と比べ七十三人(一五・一%)の増加となっている。
 また、昭和五十年代前半から半ばにかけて五〇%を超えていた覚せい剤事犯検挙人員に占める暴力団勢力の比率は、平成八年においても四〇・七%と、依然として高い水準にある。
 イ 麻薬等事犯
 麻薬取締法違反の検挙人員は、昭和三十八年のピーク時には二千五百七十一人を数え、罰則の強化等の各種施策の実施により急速に沈静化して、昭和五十年代から六十年代前半にかけては百人前後まで減少したが、平成に入ってからは二百人台ないし三百人台で推移しており、八年は二百七十五人となっている。
 あへん法違反の検挙人員は、昭和四十三年の一千百四十八人をピークに急速に減少し、以後多少の起伏はあるものの目立った増減はみられず、平成八年は百四十一人となっている。
 大麻取締法違反の検挙人員は、昭和三十年代終わりころから増加傾向を続け、平成六年には二千百三人に達したが、七年以降二年連続で減少し、八年には一千三百六人となっている。
 ウ 毒劇法違反
 毒劇法違反の送致人員は、昭和四十七年以降急激に増加し、五十七年に三万六千七百九十六人とピークに達した後、六十年までは三万人台で推移していたが、その後は減少傾向にあり、平成八年には一万人を割って、八千六百九十七人となっている。
 (2) 薬物事犯の検察庁処理状況
 昭和五十二年以降の二十年間についての起訴率をみると、麻薬取締法違反は、おおむね六〇%台から八〇%台の間で若干の起伏を示しつつ推移している。覚せい剤取締法違反は、一貫して八〇%台以上を示している。
 (3) 薬物事犯と成人矯正
 覚せい剤事犯新受刑者は、昭和三十年に六・四%を占め、その後顕著に低下したものの、四十年代半ばから上昇に転じ、五十五年以降は、多少の起伏をみせながらも、おおむね二〇%台で推移し、平成八年には二九・四%(六千五百八十五人)となっている。
 一方、平成八年十二月三十一日現在の覚せい剤事犯受刑者は、受刑者総数の二八・六%(一万一千五百七十一人)を占め、特に女子においては女子受刑者総数の四八・一%(八百七十人)となっている。
 (4) 少年鑑別所収容少年の薬物使用経験
 昭和六十二年以降の最近十年間、少年鑑別所における収容鑑別対象少年について、入所前の覚せい剤及び有機溶剤使用経験者の比率を男女別にみると、どちらの薬物経験者も、女子の方が男子よりも比率が高い。
 覚せい剤では、男子がおおむね三%から七%で、女子がおおむね一六%から四〇%でそれぞれ推移している。覚せい剤使用経験者の比率は、男女共に平成七年、八年と上昇している。
 一方、有機溶剤使用経験者の比率は、男子がおおむね六二%から三七%で、女子がおおむね七八%から五七%でそれぞれ推移している。男子は平成四年以降、女子は二年以降いずれも低下している。

三 暴力団犯罪

 (1) 刑法犯検挙人員及び送致人員第11図参照
 昭和四十年代末以降、暴力団勢力の刑法犯検挙人員が減少しているのに対し、特別法犯送致人員は一時増加傾向がみられ、中でも覚せい剤取締法違反、競馬法違反等が多数を占めていた。
 平成三年の暴力団対策法制定後、対立抗争事件の発生回数は急減し、刑法犯検挙人員は横ばいから減少傾向をみせているのに対し、特別法犯送致人員は漸増を続けている。
 (2) 暴力団関係者の検察庁終局処理状況
 平成八年における暴力団関係者による事犯については、起訴率は七六・二%、起訴猶予率は一七・一%となっているが、同年の検察庁全終局処理人員(交通関係業過及び道交違反を除く。)についての起訴率は六三・四%、起訴猶予率は三一・二%である。
 (3) 暴力団関係受刑者の処遇
 暴力団関係受刑者数は、昭和六十二年に一万三千九百七十八人で最高となり、以降減少傾向にあったが、平成八年には一万五十四人となっている。一方、受刑者総数に占める構成比は、元年の三一・七%をピークに、以降低下傾向を示し、八年には二四・九%となっている。

四 外国人犯罪

 (1) 外国人による犯罪の動向第12図参照
 外国人による犯罪は、刑法犯・特別法犯のいずれにおいても、戦後、増減を示しながら長期的には減少傾向にあったが、平成三年以降増加傾向に転じている。近年における外国人犯罪の増加については、来日外国人の犯罪の増加によるところが大きい。
 来日外国人の刑法犯検挙件数・検挙人員については、昭和五十五年には、検挙件数は八百六十七件、検挙人員は七百八十二人であったものが、同年以降いずれも増加し、特に検挙件数は平成五年に一万件を超えた後も激増を続け、八年は昭和五十五年の約二十三倍の一万九千五百十三件にまで達している。一方、検挙人員は、平成五年に最高値の七千二百七十六人を記録した後、わずかながら減少に転じたものの、なおも六千人台という高水準で推移している。
 外国人による特別法犯の検挙件数・検挙人員も、おおむね刑法犯と同様の経緯にあり、平成二年以降増加に転じている。
 交通関係業過を除く刑法犯に占める外国人の比率は、検挙件数については昭和三十五年の四・二%を、検挙人員については三十一年の五・〇%を各最高値に、いずれも長期的には低下傾向にあったが、六十年前後から上昇に転じ、検挙件数については増加傾向を続けており、検挙人員についても平成三年の四・一%をピークに依然四%近い高水準で推移している。
 (2) 外国人事件の裁判
 地方裁判所・簡易裁判所による通常第一審における外国人事件及び通訳・翻訳人の付いた外国人事件の有罪人員は、いずれも増加傾向にあり、特に後者は、平成元年以降、急増し、この十年間で十七倍となっている。
 平成八年の通訳・翻訳人の付いた外国人事件の有罪人員は、有罪人員総数の一〇・一%、外国人事件の有罪人員の八二・九%を占めている。
 平成八年の地方裁判所・簡易裁判所による通常第一審における通訳・翻訳人の付いた外国人事件の科刑状況は、無期懲役一人、有期懲役六千三百四十七人、有期禁錮十一人、罰金十二人となっている。
 (3) 外国人(F級)新受刑者数の推移
 最近十年間のF級(「日本人と異なる処遇を必要とする外国人」と判定された者)新受刑者数の推移をみると、平成七年まではおおむね増加傾向にあったが、八年には減少しており、外国人新受刑者一千七十九人のうち、F級新受刑者は、二百七十九人(男子二百五十七人、女子二十二人)となっている。
 平成八年のF級新受刑者の主要罪名別人員は、窃盗が五十六人(二〇・一%)で最も多く、次いで、覚せい剤取締法違反が四十二人(一五・一%)、麻薬取締法違反が二十八人(一〇・〇%)、強盗が二十三人(八・二%)、入管法違反が二十人(七・二%)、殺人が十九人(六・八%)の順となっている。

<おわりに>

 おわりに、我が国における近年の犯罪情勢は、どのように総括されるのか、また、今後の刑事政策上の対応を迫られている課題として、どのようなことが指摘されるべきかについて触れることとする。
 近年の犯罪動向をみると、刑法犯(交通関係業過を含む。)の認知件数は、昭和五十年以降、ほぼ一貫して増加傾向を示し、平成八年には戦後の最高数値を更新し、前年比で一・二%増加の約二百四十六万六千件となっているものの、その内訳は、窃盗が六四・四%、交通関係業過が二六・五%を占めており、この比率は過去十年の間に大きな変動は認められない。また、特別法犯(道交違反を含む。)の検察庁新規受理人員をみても、八年は前年比で三・九%増加の約百十三万四千人となったが、道交違反を除けば前年比で四・一%減少の約九万一千人となっている上、過去十年間、特別法犯の受理人員中の九〇%以上は道交違反が占めている。このように、近年の犯罪情勢全般については、統計数値の上からみる限り、全体として顕著な変動はなく、おおむね平穏に推移しているといえよう。しかしながら、内容的には予断を許さないいくつかの犯罪動向も見受けられないではない。
 凶悪犯罪に関しては、近年、強盗の増加傾向がうかがえる上、無差別大量殺人事件、銃器を使用した一般市民に対する強盗殺人事件等、従来の我が国においてはみられなかったような異質な凶悪犯罪が日常身辺に発生する状況に至っている。また、銃器を使用した殺人事件、金融機関等を対象とした強盗事件も多発し、けん銃が、暴力団勢力以外の一般社会に拡散しつつある傾向がうかがえる。凶悪犯罪に対しては、いうまでもなく、検挙の徹底と厳正な処分、発生要因の分析、再発の防止に向けた関係諸機関の努力が求められるところである。特にけん銃に係る事犯に関しては、けん銃対策を目的とした銃刀法の改正も重ねられてきているが、さらに、けん銃の密輸入の防止という観点からの一層の国際協力も期待されており、暴力団勢力は、けん銃の押収先の中で大きな割合を占め、供給元としてかかわることもあり、暴力団対策は、依然として、けん銃取締りに重要な手段となるものと思われる。
 次に、覚せい剤事犯が近時急増するなど、薬物濫用が引き続き大きな社会問題となっている。特に、近年、来日外国人による薬物事犯の増加や覚せい剤事犯の少年を含む社会各層への広がりが目立っているほか、相変わらず暴力団の深い関与も認められる状況にある。さらに、薬物濫用の影響による副次的な犯罪や事故も後を絶たないように思われる。こうした事態に対処するため、麻薬特例法の制定等、立法面での措置をはじめ、さまざまな対策が採られてきているが、今後も、濫用薬物の多様化、事犯の悪質巧妙化・潜在化・国際化が一層進むことが懸念される中、総合的な薬物濫用対策の一層の充実に加えて、刑事司法諸機関においては、薬物犯罪に的確な対応が求められていくものと思われる。
 暴力団に目を向けると、暴力団対策法の制定後、対立抗争事件の発生回数の急減、暴力団組織及び暴力団員の減少等の効果が認められる。しかし、一方で、大規模団体による寡占化が進み、覚せい剤事犯、恐喝、ノミ行為等の伝統的な資金獲得活動と併せ、暴力団がその威力を背景にした企業経営を行ったり、関与するなどして、資金獲得活動の巧妙化が認められる。こうした情勢の下、平成九年六月には、準暴力的要求行為を定めた暴力団対策法の改正が行われたが、この効果が期待されている。
 さらに、我が国社会の国際化の進展に伴い、近隣諸国の外国人による集団密航等の不法入国事犯、不法就労等を目的として来日した外国人の不法残留事犯、来日外国人による刑法犯や薬物事犯の増加等は、今日、大きな社会問題となり、国民の間に危機感を抱かせるに至っている。このような犯罪者の面での国際化現象に加えて、犯罪地が外国であったり、複数国にまたがったりするなど、犯罪そのものの国際化現象も見受けられる。刑事司法諸機関においては、関係機関と緊密な連携を保ちながら的確な対応を行う必要があるとともに、捜査共助・犯罪人引渡し等についての国際協力、国際組織犯罪の問題(薬物、マネー・ローンダリング等)についての国際連合、サミット等での取組、その他の犯罪防止のための国際的な諸活動等の分野においても、我が国の果たすべき役割の重要性は更に増すものと予想される。
 少年非行については、昭和五十年代後半には三十万人を超えていた刑法犯検挙人員が、近年は二十万人前後で推移しているものの、殺人・強盗等の凶悪事犯が近時増加の傾向にあり、悪質な事案が後を絶たない。少年非行は、社会全体が大きく変化する中で、そのありようも大きく変化してきており、これに対する取組は、刑事司法諸機関とこれに関係する民間の協力団体だけでは十分に行えるものではなく、教育・福祉機関、更には一般市民を含めた幅広い議論の積み重ねの中で、関係機関等の連携に基づいた、より適切な、時代の要請に即応した具体的な方策を検討していくことが求められているように思われる。
 これらに加えて、現在の我が国が抱えている政治、経済、教育その他各方面にわたる困難な問題や不安定な事態などは、一般的に犯罪抑止要因のぜい弱化をもたらしかねないともいえるし、各種犯罪は、複雑・高度化しつつある社会の諸情勢の変動に伴ってますます複雑・巧妙化、多様化の様相を強め、科学技術の進歩に伴う新しい形態の犯罪が出現することも十分に予想されるところである。今後の犯罪情勢には警戒を要すべき点も多い状況下にあって、刑事司法諸機関には、変動する社会情勢の推移と犯罪情勢の変化を十分に把握し、良好な治安を維持するための工夫と不断の努力が求められている。

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普通世帯の消費動向調査


―平成九年六月実施調査結果―


経 済 企 画 庁


 消費動向調査は、家計消費の動向を迅速に把握し、景気動向判断の基礎資料とするために、全国の普通世帯(単身世帯及び外国人世帯を除いた約三千万世帯)を対象に、約五千世帯を抽出して、消費者の意識、主要耐久消費財等の購入状況、旅行の実績・予定、サービス等の支出予定について、四半期ごとに調査している。また、年度末に当たる三月調査時には、主要耐久消費財等の保有状況、住宅の総床面積についても併せて調査している。
 今回の報告は、平成九年六月に実施した調査結果の概要である。

1 調査世帯の特性

 平成九年六月の調査世帯の特性は、第1表に示したとおりで、世帯主の平均年齢は五一・五歳(全世帯、以下同じ)、平均世帯人員は三・五人、うち就業者数は一・七人、平均持家率は七一・三%となっている。また、有効回答率は九九・九%(有効回答世帯数は五千三十七世帯)となっている(第1表参照)。

2 消費者の意識

 (1) 消費者態度指数(季節調整値)の調査結果

 消費者意識指標七項目中五項目を総合した消費者態度指数は、「耐久消費財の買い時判断」、「物価の上がり方」に関する意識が改善したほか、「暮らし向き」、「収入の増え方」及び「雇用環境」に関する意識のすべての項目で改善したため四〇・〇(前期差四・四ポイント上昇)となり、四期ぶりに上昇した(第1図参照)。

 (2) 各調査項目ごとの消費者意識指標(季節調整値)の調査結果

 各消費者意識指標について九年六月の動向を前期差でみると、「耐久消費財の買い時判断」に関する意識(一〇・四ポイント上昇)、「物価の上がり方」に関する意識(八・九ポイント上昇)が改善したほか、「暮らし向き」に関する意識(二・二ポイント上昇)、「収入の増え方」に関する意識(〇・二ポイント上昇)及び「雇用環境」に関する意識(〇・二ポイント上昇)と、いずれも改善を示した(第2表参照)。

3 主要耐久消費財等の購入状況

 (1) 主要耐久消費財等の購入状況(三十三品目平均、季節調整値)

 主要耐久消費財等の購入状況を三十三品目平均の購入世帯割合でみると、九年四〜六月期実績は「家具」などの分類で増加したのに対し、「乗物」などで減少したため、前期と横ばいの一・九%となった。
 九年七〜九月期の購入計画は「情報関連機器」、「乗物」などで増加が見込まれることにより、前期差で〇・一ポイント増加し、〇・九%となっている。

 (2) 主要分類別購入世帯割合の動き(平均、季節調整値)

 @ 「家具」は、九年四〜六月期実績は、じゅうたんの増加により、前期差で〇・二ポイント増加し、一・七%となった。九年七〜九月期計画は九年四〜六月期計画(以下「前期計画」)差で横ばいの一・〇%となっている。
 A 「家事用品」は、前期差で〇・一ポイント増加の一・九%となった。七〜九月期計画は前期計画差で〇・一ポイント減少し、〇・八%となっている。
 B 「冷暖房器具」は、ルームエアコンなどの減少により、前期差で〇・二ポイント減少し、二・六%となった。七〜九月期計画は前期計画差で横ばいの一・二%となっている。
 C 「映像・音響機器」は、カラーテレビなどの減少により、前期差で〇・二ポイント減少し、二・三%となった。七〜九月期計画は前期計画差で〇・一ポイント増加し、一・〇%となっている。
 D 「情報関連機器」は、前期差で〇・一ポイント増加し、一・七%となった。七〜九月期計画はパソコン、プッシュホンなどの増加により、前期計画差で〇・三ポイント増加し、一・一%となっている。
 E 「乗物」は、乗用車などの減少により、前期差で〇・三ポイント減少し、三・〇%となった。七〜九月期計画は、乗用車などの増加により、前期計画差で〇・三ポイント増加し、一・三%となっている(第2図参照)。

<参 考> 新規調査項目


1 消費者意識指標

 九年六月の「レジャー時間」に関する意識は、増える方向に回答した世帯割合が一六・〇%(前年同期は一八・九%、以下同じ)と、減る方向に回答した世帯割合二四・三%(一九・七%)を大きく下回った。また、「資産価値」に関する意識は、変わらないが約八割を占めている中で、増える方向に回答した世帯割合が三・八%(五・二%)と、減る方向に回答した世帯割合二〇・五%(一四・五%)を大きく下回った。

2 旅行の実績・予定

 (1) 国内旅行
 九年四〜六月期に国内旅行(日帰り旅行を含む)をした世帯割合は三二・五%で、前年同期の実績(三三・四%)を下回った。旅行をした世帯当たりの平均人数は二・八人であり、前年(二・八人)と同水準となった。
 九年七〜九月期に国内旅行をする予定の世帯割合は三九・二%で(前年同期の計画は三九・一%)、その平均人数は三・三人(三・二人)となっている。
 (2) 海外旅行
 九年四〜六月期に海外旅行をした世帯割合は四・七%で、前年同期の実績(五・四%)を下回った。その平均人数は一・六人であり、前年(一・六人)と同水準となった。
 九年七〜九月期に海外旅行をする予定の世帯割合は五・四%(前年同期の計画は六・〇%)、その平均人数は一・九人(一・八人)となっている。

3 サービス等の支出予定

 九年七〜九月期のサービス等の支出予定八項目の動きは、以下のとおりである。
 (1) 高額ファッション関連支出は、増やす方向に回答した世帯割合が七・三%(前年同期は九・五%、以下同じ)と、減らす方向に回答した世帯割合一二・二%(一〇・一%)を下回っている。
 (2) 学習塾等補習教育費は、増やす方向に回答した世帯割合が一〇・〇%(九・二%)と、減らす方向に回答した世帯割合一・〇%(一・一%)を大きく上回っている。家族構成などにより、支出予定はないと回答した世帯割合が六割強ある。
 (3) けいこ事等の月謝類は、増やす方向に回答した世帯割合が五・九%(六・二%)と、減らす方向に回答した世帯割合二・四%(二・〇%)を大きく上回っている。
 (4) スポーツ活動費は、増やす方向に回答した世帯割合が八・九%(九・三%)と、減らす方向に回答した世帯割合五・四%(四・二%)を上回っている。
 (5) コンサート等の入場料は、増やす方向に回答した世帯割合が一三・四%(一四・四%)と、減らす方向に回答した世帯割合七・〇%(四・五%)を上回っている。
 (6) 遊園地等娯楽費は、増やす方向に回答した世帯割合が九・六%(一一・九%)と、減らす方向に回答した世帯割合一四・七%(一二・二%)を下回っている。
 (7) レストラン等外食費は、増やす方向に回答した世帯割合が一一・七%(一二・八%)と、減らす方向に回答した世帯割合二二・二%(一七・六%)を下回っている。支出予定はないと回答した世帯割合は一割強である。
 (8) 家事代行サービスは、増やす方向に回答した世帯割合が一・三%(一・五%)と、減らす方向に回答した世帯割合二・九%(二・五%)を大きく下回っている。五世帯中四世帯が支出予定はないと回答しており、他の項目に比べ支出予定比率が低い。

4 主要耐久消費財の買替え状況

 九年四〜六月期に買替えをした世帯について、買替え前に使用していたものの平均使用年数をみると、普及率の高い電気洗たく機、電気冷蔵庫などは八〜十一年となっており、その理由については故障が多い。技術進歩の著しいワープロは、平均使用年数が約六年となっており、買替え理由は他の品目に比べ上位品目への移行が多い。また、「住居の変更」による買替えが多いものとしては、ルームエアコン、電気冷蔵庫があげられる。


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七月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成九年七月分結果の概要―


総 務 庁


◇就業状態別の動向

 平成九年七月の十五歳以上人口は、一億六百五十七万人(男子:五千百八十万人、女子:五千四百七十七万人)となっている。
 これを就業状態別にみると、労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は六千八百七十三万人、非労働力人口は三千七百七十三万人で、前年同月に比べそれぞれ六十三万人(〇・九%)増、二十四万人(〇・六%)増となっている。
 また、労働力人口のうち、就業者は六千六百四十九万人、完全失業者は二百二十四万人で、前年同月に比べそれぞれ六十万人(〇・九%)増、三万人(一・四%)増となっている。

◇就業者

 (一) 就業者
 就業者数は六千六百四十九万人で、前年同月に比べ六十万人(〇・九%)増と、前月に引き続き増加し、増加幅は前月(八十九万人増)に比べ縮小している。男女別にみると、男子は三千九百二十五万人、女子は二千七百二十四万人で、前年同月と比べると、男子は二十六万人(〇・七%)の増加、女子は三十四万人(一・三%)の増加となっている。



 (二) 従業上の地位
 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千四百二十六万人、自営業主は八百六万人、家族従業者は四百万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は七十一万人(一・三%)増と、前月に引き続き増加し、増加幅は前月(六十八万人増)に比べ拡大している。また、自営業主は四万人(〇・五%)の減少、家族従業者は六万人(一・五%)の減少となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 ○非農林業雇用者…五千三百九十三万人で、七十四万人(一・四%)増加
 ○常 雇…四千七百九十五万人で、三十五万人(〇・七%)増加
 ○臨時雇…四百七十四万人で、三十万人(六・八%)増加
 ○日 雇…百二十五万人で、十万人(八・七%)増加
 (三) 産 業
 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 ○農林業…三百七十万人で、十一万人(二・九%)減少
 ○建設業…六百九十八万人で、二十八万人(四・二%)増加
 ○製造業…一千四百三十四万人で、二十万人(一・四%)減少
 ○運輸・通信業…四百十七万人で、七万人(一・七%)減少
 ○卸売・小売業、飲食店…一千四百八十九万人で、八万人(〇・五%)減少
 ○サービス業…一千六百七十万人で、七十三万人(四・六%)増加
 対前年同月増減をみると、サービス業は前月(五十五万人増)に比べ増加幅が拡大している。建設業は前月(三十五万人増)に比べ増加幅が縮小している。一方、製造業は前月(二十六万人減)に比べ減少幅が縮小している。運輸・通信業は前月(七万人減)と同じ減少幅となっている。また、「卸売・小売業、飲食店」は平成八年五月以来、一年二か月ぶりの減少となっている。
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 ○建設業…五百七十九万人で、二十五万人(四・五%)増加
 ○製造業…一千三百五万人で、十二万人(〇・九%)減少
 ○運輸・通信業…三百九十六万人で、八万人(二・〇%)減少
 ○卸売・小売業、飲食店…一千百七十六万人で、九万人(〇・八%)減少
 ○サービス業…一千四百二十二万人で、七十三万人(五・四%)増加
 対前年同月増減をみると、サービス業は前月(四十七万人増)に比べ増加幅が拡大している。建設業は前月(二十八万人増)に比べ増加幅が縮小している。一方、製造業及び運輸・通信業は前月(それぞれ十二万人減、八万人減)と同じ減少幅となっている。また、「卸売・小売業、飲食店」は一年二か月ぶりの減少となっている。


 (四) 従業者階級
 企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 ○一〜二十九人規模…一千七百七十五万人で、二十一万人(一・二%)増加
 ○三十〜四百九十九人規模…一千七百八十六万人で、三十三万人(一・九%)増加
 ○五百人以上規模…一千二百六十一万人で、十八万人(一・四%)減少
 (五) 就業時間
 非農林業の従業者(就業者から休業者を除いた者)一人当たりの平均週間就業時間は四二・七時間で、前年同月に比べ〇・六時間の減少となっている。
 このうち、非農林業雇用者についてみると、男子は四六・五時間、女子は三六・六時間で、前年同月に比べ男子は〇・七時間の減少、女子は〇・六時間の減少となっている。
 また、非農林業の従業者の総投下労働量は、延べ週間就業時間(平均週間就業時間×従業者総数)で二六・二六億時間となっており、前年同月に比べ〇・一二億時間(〇・五%)の減少となっている。
 (六) 転職希望者
 就業者(六千六百四十九万人)のうち、転職を希望している者(転職希望者)は五百六十二万人で、このうち実際に求職活動を行っている者は二百十六万人となっており、前年同月に比べそれぞれ三十三万人(六・二%)増、二十万人(一〇・二%)増となっている。
 また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)をみると、男子は八・五%、女子は八・四%で、前年同月に比べ男子は〇・五ポイントの上昇、女子は〇・三ポイントの上昇となっている。

◇完全失業者

 (一) 完全失業者数
 完全失業者数は二百二十四万人で、前年同月に比べ三万人(一・四%)の増加となっている。男女別にみると、男子は百三十三万人、女子は九十一万人で、前年同月に比べ男子は四万人(三・一%)の増加、女子は一万人(一・一%)の減少となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 ○非自発的な離職による者…四十九万人で、三万人減少
 ○自発的な離職による者…九十二万人で、六万人増加
 ○学卒未就職者…九万人で、五万人減少
 ○その他の者…六十三万人で、五万人増加
 (二) 完全失業率(原数値)
 完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は三・三%で、前年同月に比べ〇・一ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男子は三・三%、女子は三・二%で、前年同月に比べ男子は〇・一ポイントの上昇、女子は〇・一ポイントの低下となっている。
 また、年齢階級別完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 〔男女計〕
 ○十五〜二十四歳……六・二%で、〇・二ポイント低下
 ○二十五〜三十四歳…四・一%で、〇・三ポイント上昇
 ○三十五〜四十四歳…二・三%で、〇・一ポイント上昇
 ○四十五〜五十四歳…一・九%で、〇・二ポイント低下
 ○五十五〜六十四歳…三・九%で、〇・一ポイント低下
 ○六十五歳以上………一・四%で、〇・二ポイント上昇
 〔男 子〕
 ○十五〜二十四歳……六・三%で、〇・一ポイント低下
 ○二十五〜三十四歳…三・三%で、〇・五ポイント上昇
 ○三十五〜四十四歳…二・三%で、〇・三ポイント上昇
 ○四十五〜五十四歳…二・〇%で、〇・二ポイント低下
 ○五十五〜六十四歳…四・八%で、〇・一ポイント低下
 ○六十五歳以上………一・九%で、〇・一ポイント低下
 〔女 子〕
 ○十五〜二十四歳……六・一%で、〇・二ポイント低下
 ○二十五〜三十四歳…五・三%で、前年同月と同率
 ○三十五〜四十四歳…二・五%で、〇・一ポイント上昇
 ○四十五〜五十四歳…一・七%で、〇・二ポイント低下
 ○五十五〜六十四歳…二・四%で、〇・一ポイント低下
 ○六十五歳以上………〇・五%で、〇・五ポイント上昇


 (三) 完全失業率(季節調整値)
 季節調整値でみた完全失業率は三・四%で、前月に比べ〇・一ポイントの低下となっている。男女別にみると、男女共に三・四%で、前月に比べ男子は同率、女子は〇・二ポイントの低下となっている。

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芸術文化振興基金について

 芸術文化振興基金は、芸術家および芸術に関する団体が行う活動に対する援助を目的として、平成二年(一九九〇年)に創設されました。
 基金は、政府からの出資金五百億円と民間からの寄付金百億円の合計六百億円で成り立っています。
 助成金の交付の対象となる主な活動は、次のとおりです。
 @ 現代舞台芸術の公演、伝統芸能の公開
 A 美術作品の展示、映像芸術の創造
 B 文化会館、美術館などの地域の文化施設において行う公演、展示
 C アマチュア、青少年、婦人などの団体が行う公演、展示
 D 文化財である工芸技術または文化財の保存技術の復活や伝承 など
 助成活動の募集は、原則として、毎年度一回、公募により行います。
 具体的な募集の時期・方法、助成の対象となる者・活動などについては、「募集案内」でお知らせします。
 お問い合わせ先は、次のとおりです。
▽日本芸術文化振興会基金部
 пZ三―三二六五―七四一一(代表)
 〒102 東京都千代田区隼町四―一(文化庁) 


 
    <10月29日号の主な予定>
 
 ▽平成八年度法人企業統計年報……大 蔵 省 

 ▽月例経済報告………………………経済企画庁 
 



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