▽平成十四年版人権教育・啓発白書のあらまし……………法 務 省・文部科学省
▽平成十四年十月一日現在 我が国の人口(推計)………総 務 省
平成十四年版
はじめに
平成十二年十一月、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」(平成十二年法律第一四七号)が制定された。
人権教育及び人権啓発の推進に関する法律は、国及び地方公共団体が行う人権教育・啓発の基本理念を掲げ(第三条)、国は、その基本理念にのっとり、人権教育・啓発に関する施策を策定し、実施する責務を有するものとした(第四条)上、人権教育・啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、人権教育・啓発に関する基本的な計画を策定しなければならないこととし(第七条)、政府は、毎年、国会に、政府が講じた人権教育・啓発に関する施策についての報告を提出しなければならないこととしている(第八条)。
本報告は、同法第八条に基づく初めての報告書である。
第1章 人権教育及び人権啓発をめぐる状況
1 概説
我が国においては、基本的人権の尊重を基本原理の一つとする日本国憲法の下で、国政の全般にわたり、人権に関する諸制度の整備や諸施策の推進が図られてきた。それは、我が国憲法のみならず、我が国が締結している人権諸条約などの国際準則にものっとって行われている。他方、これらの諸制度や諸施策の在り方に対する人権の視点からの意見があるほか、社会生活において様々な人権問題が存在する旨の指摘がある。
すべての人々の人権が尊重され、相互に共存し得る平和で豊かな社会を実現するために、国民一人一人の人権尊重の精神の涵養を図ることが不可欠であり、そのために行われる人権教育・啓発は重要である。
人権教育・啓発に関しては、このような人権を取り巻く諸情勢を踏まえ、より積極的な取組が必要となっている。
2 国連十年国内行動計画
政府は、平成九年七月四日に「国連十年国内行動計画」を策定し、あらゆる場を通じた人権教育の推進、重要課題への対応、国際協力の推進などを主要テーマとして様々な取組を行っている。
3 人権擁護推進審議会の答申
人権擁護推進審議会は、平成十一年七月二十九日、人権教育・啓発に関する答申を行った。
4 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律の制定
平成十二年十一月、人権教育・啓発に関する理念や国、地方公共団体、国民の責務を明らかにするとともに、基本計画の策定や年次報告等を定めた人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(以下「人権教育・啓発推進法」という)が制定された。
5 人権教育・啓発に関する基本計画の策定
政府は、人権教育・啓発推進法第七条に基づき、「人権教育・啓発に関する基本計画」を平成十四年三月十五日の閣議決定により策定した。
本基本計画は、人権教育・啓発を総合的かつ計画的に推進するための方策について提示している。
6 人権擁護法案の国会への提出
政府は、人権擁護推進審議会の答申を受けて、「人権擁護法案」を立案し、平成十四年三月に国会に提出した。
本法案は、現行の人権擁護制度を抜本的に改革して、独立性の高い人権委員会の下で、人権侵害の実効的な救済と人権啓発の推進を図ろうとするものである。
第2章 平成十三年度に講じた人権教育・啓発に関する施策
第1節 人権一般の普遍的な視点からの取組
1 人権教育
人権教育とは、「人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動」であり、生涯学習の視点に立って、幼児期からの発達段階を踏まえ、地域の実情等に応じて、学校教育と社会教育とが相互に連携を図りつつ、実施していくこととなる。
(1) 学校教育
文部科学省では、新しい学習指導要領を実施していく上で、「心の教育の充実」と「確かな学力」の向上とを二つの大きな柱として施策を推進してきている。
また、平成十三年七月にはボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動、その他の体験活動の充実についての規定を盛り込み、また、小・中学校の出席停止制度の改善を図るための学校教育法の改正が行われた。
(2) 社会教育
文部科学省では、社会教育において、生涯に渡る学習活動を通じて、人権尊重の精神を基本においた様々な事業が展開されている。
すべての教育の出発点である家庭教育の支援や社会教育施設を中心とした学級・講座の開設など、人権に関する多様な学習機会が提供されている。
また、平成十三年七月には、社会教育法が改正され、青少年にボランティア活動など社会奉仕体験活動や自然体験活動等の機会を提供する事業の実施及びその奨励が教育委員会の事務と明記された。
2 人権啓発
人権啓発とは、国民の間に人権尊重の理念を普及させ、及びそれに対する国民の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く)を意味し、国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができるようにすることを旨としている。
(1) 人権啓発の実施主体
人権擁護事務として人権啓発を担当する国の機関としては、法務省の人権擁護機関があり、また、法務省以外の関係各府省庁においても、その所掌事務との関連で、人権にかかわる各種の啓発活動を行っているほか、地方公共団体や公益法人、民間団体、企業等においても、人権にかかわる様々な活動が展開されている。
(2) 法務省の人権擁護機関が行う啓発活動
○重点目標を掲げた啓発活動
その時々の社会情勢や人権侵犯事件の動向を勘案して、年度を通じて特に重点的に啓発するテーマを定め、共通の目標の下に組織を挙げて啓発活動を展開している。
平成十三年度の啓発活動重点目標は、国民一人一人に人権意識を育てることが極めて重要であるとの視点から、「育てよう 一人一人の 人権意識 −思いやる心が築く新世紀−」と定め、国民一人一人が主体的に豊かな人権意識を育てていくような啓発活動を展開した。
○人権週間
毎年十二月四日から十二月十日までを「人権週間」と定め、関係諸機関及び諸団体の協力の下に、広く国民に人権尊重思想の普及高揚を呼び掛ける大規模な啓発活動を展開している。
平成十三年度の第五十三回人権週間においては、関係機関の協力の下、啓発活動重点目標や「女性の地位を高めよう」、「子どもの人権を守ろう」などの強調事項を掲げ、全国各地において、講演会、シンポジウム、座談会等の開催、特設人権相談所の開設などを行ったほか、テレビ・ラジオなどのマスメディアを活用した集中的な啓発活動を行った。
○全国中学生人権作文コンテスト
次代を担う中学生に、人権問題についての作文を書いてもらうことにより、豊かな人権感覚を身に付けてもらうことを目的に、「全国中学生人権作文コンテスト」を実施し、平成十三年度で二十一回目を迎えている。
平成十三年度は、五千六百十七校から、日常の家庭生活、学校生活等の中で得た体験をもとに、基本的人権を守ることの重要性についての考えをまとめた七十五万一千三十四編という多数の作文の応募があった。多くの中学生に、人権について理解を深め、豊かな人権感覚を身に付けてもらうよい機会となっている。
○人権の花運動
「人権の花運動」は、配布された花の種子、球根などを、児童が協力し合って育てることを通して、協力、感謝することの大切さを生きた教育として学び、生命の尊さを実感する中で、人権尊重思想をはぐくみ情操をより豊かなものにすることを目的とした活動であり、主に小学生を中心とした啓発活動として実施している。
平成十三年度は、小学校二千五百五十六校のほか、百五十五の中学校・幼稚園・保育所等が対象となって広範囲に行われた。
○人権啓発フェスティバル
「人権啓発フェスティバル」は、シンポジウム、啓発資料展、啓発映画上映、コンサートなどの各種イベントを同じ時間、空間を活用して一体的、総合的に行うことにより、より多くの人々が参加できる総合的な啓発事業として実施している。
平成十三年度は、フェスティバルの統一テーマを「育てよう 一人一人の 人権意識 −思いやる心が築く新世紀−」と定め、兵庫県、滋賀県、神奈川県で開催し、三会場合わせて十一万人を超える多数の参加者があった。
○人権イメージキャラクター
国民に人権擁護活動についての親近感を深めさせ、啓発広報活動をより効果的にすることを目的として、平成十三年度に「人権イメージキャラクター人KENまもる君」、「人権イメージキャラクター人KENあゆみちゃん」を制定し、啓発広報活動に広く使用することとなった。
(3) 公益法人、地方公共団体へ委託して行う啓発活動
ア (財)人権教育啓発推進センターが行う啓発活動(人権啓発活動中央委託事業)
○(財)人権教育啓発推進センター
(財)人権教育啓発推進センター(以下「人権センター」という)は、人権に関する総合的な教育・啓発及び広報を行うとともに、人権教育・啓発についての調査、研究等を行っている。
○平成十三年度に人権センターへ委託した啓発活動
・ 人権啓発教材の作成、人権啓発映画等の制作
・ 人権啓発フェスティバルの実施
・ 人権文化フォーラムの実施
・ 人権啓発指導者養成研修会の実施
・ 新聞による広報
・ データベースの運営・活用
・ 人権擁護に関する調査・研究
イ 地方公共団体が行う啓発活動(人権啓発活動地方委託事業)
○人権啓発活動地方委託事業
都道府県及び政令指定都市を委託先とし、あらゆる人権問題を視野に入れた幅広い啓発活動の実施を委託する事業である。
○平成十三年度に行った委託事業
講演会・研修会、啓発資料作成、放送番組、新聞広告、地域人権啓発活動活性化事業の実施等
(4) 国と地方公共団体等が連携・協力して行う啓発活動(人権啓発活動ネットワーク)
法務省では、人権啓発活動ネットワークを全国的に組織するため、平成十年度を初年度とする三か年計画により「人権啓発活動都道府県ネットワーク協議会」を設置し、さらに、市町村レベルにも拡大するため、「人権啓発活動地域ネットワーク協議会」を設置することとし、平成十二年度及び平成十三年度の二か年計画により、本局直轄区域及び課制支局の管轄区域の地域ネットワーク協議会を設置した。
ネットワーク協議会が設置された都道府県や市町村においては、法務省から委託を受けた人権啓発活動地方委託事業について、地方公共団体とネットワーク協議会が連携・協力することにより、住民に親しみやすくかつ参加しやすい要素を取り入れつつ、地方に密着した多様な人権啓発活動を実施している。
第2節 各人権課題に対する取組
1 女性
【平成十三年度に講じた施策】
○政策・方針決定過程への女性の参加促進など、女性参画への政府の率先的取組
女性国家公務員の採用・登用等の促進については、平成十三年五月に人事院が「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」を策定した。この指針は、各府省庁が「積極的改善措置」により女性国家公務員の採用・登用の拡大を図り、男女間の格差を計画的に解消していくことを目指すものである。
男女共同参画推進本部は、同年六月、この指針を踏まえ、各府省庁において、女性の採用・登用等の促進に向けた計画を策定するなど、総合的かつ計画的に取組を推進することを決定した。
また、男女共同参画会議では、平成十三年度において重点的に監視を行う男女共同参画社会の形成の促進に関する施策として、「国の審議会等委員への女性の参画の促進」及び「女性国家公務員の採用・登用等の促進」を定め、同会議の下に設置された「苦情処理・監視専門調査会」で、関係各府省庁から説明を聴取するなど、施策の実施状況を監視している。
○男女共同参画の視点に立った様々な社会制度の見直し、広報・啓発活動の推進、法令・条約等の周知
・ 男女共同参画会議では、「影響調査専門調査会」を設置し、政府の施策をはじめとしてあらゆる社会システムへ男女共同参画の視点を反映させる観点から、女性のライフスタイル等の選択に影響が大きい税制、社会保障制度、雇用システムについて、調査検討を行っている。
また、同じく設置された「苦情処理・監視専門調査会」では、男女共同参画社会の形成を阻害する要因によって人権が侵害された場合における被害者の救済に関するシステムの在り方について調査検討を進めている。
・ 男女共同参画推進本部では、平成十三年度から毎年六月二十三日から二十九日までの一週間を「男女共同参画週間」とし、「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」や「男女共同参画社会づくり功労者表彰」など、男女共同参画社会の形成の促進を図る各種行事等を全国的に実施している。
さらに、地方公共団体やNGOとの連携のため、男女共同参画推進連携会議(えがりてネットワーク)において情報及び意見の交換を行っているほか、地方公共団体に対する「男女共同参画宣言都市奨励事業」、地域における連携の場として「男女共同参画フォーラム」等を実施している。
・ 厚生労働省では、「男女雇用機会均等月間」等の機会をとらえ、労働における女性の地位向上のための啓発活動を実施した。
・ 内閣府では、男女共同参画に関連の深い各種の条約や、国際会議における議論等、女性の地位向上のための国際的規範や基準、取組の指針を積極的に国内に取り入れるとともに、報告会、刊行物やホームページなどを通じ、情報の広報に努めている。
○男女平等教育の推進、女性の生涯学習機会の充実
文部科学省では、学校教育において、児童生徒の発達段階に応じて、男女の平等や男女の相互の理解と協力の重要性について指導を行っており、新しい学習指導要領においては、男女相互の理解を深め互いに協力し合う態度の育成に資する活動を行うなどの充実を図るなどしている。
また、社会教育において、女性団体・グループが男性とのパートナーシップを図りつつ、男女共同参画の視点から地域社会づくりなどに参画する事業を推進することにより、女性が社会のあらゆる分野に参画する力をつけるための学習事業として「女性のエンパワーメントのための男女共同参画学習促進事業」を実施した。
○雇用における男女の均等な機会と待遇の確保等のための啓発等
厚生労働省では、男女雇用機会均等法に基づく行政指導を実施するとともに、男女労働者の間に事実上生じている格差を解消するための企業の積極的取組(ポジティブ・アクション)を促進した。
また、職場におけるセクシュアル・ハラスメント防止対策を講じるよう企業に徹底を図るとともに、女性労働者からの相談に対しては、セクシュアル・ハラスメントカウンセラーを活用し、適切に対応している。
さらに、「女性と仕事の未来館」において、働く女性のネットワークづくりのための交流等各種支援事業を実施した。
○農山漁村の女性の地位向上・方針決定への参画促進のための啓発等
水産基本計画(平成十四年三月二十六日閣議決定)において、組合活動への女性の参画目標の策定及びその達成に向けた普及啓発等の推進を決定した。
○女性に対する暴力等に対する適切な対応、女性の人権問題に関する取組
・ 検察当局その他の関係機関において、刑法、配偶者暴力防止法、ストーカー規制法等の処罰規定の的確な運用に努めている。
・ 警察では、女性警察職員が相談や被害の届出を受理する相談窓口として、女性相談交番や鉄道警察隊における女性被害相談所の整備を図ったほか、女性に対する暴力事案に従事する女性警察官等の配置の拡大を図った。
また、関係行政機関、法曹界、医療関係者、報道機関、経済界等関係機関等により設立された各都道府県の「被害者支援連絡協議会」の下に「女性被害者対策分科会」を設けることなどにより、被害者に対する支援や援助等に関し相互に連携を図った。
・ 警察では、配偶者暴力防止法に基づき裁判所が保護命令を発したときは、保護命令に係る情報を関係する警察職員に周知させ、被害者に防犯上の留意事項を教示するなど、事案に応じて必要な措置を講じている。
・ 警察では、各都道府県警察本部に「性犯罪捜査指導官」及び「性犯罪捜査指導係」を設置したほか、性犯罪が発生した場合に捜査に当たる性犯罪捜査員として女性警察官の指定を進めている。
また、性犯罪に係る被害や捜査に関する相談を受け付ける「性犯罪被害一一〇番」等の相談専用電話や相談室を設置し、女性の警察官が相談に応じている。
・ 男女共同参画会議では、「『配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律』の円滑な施行について」を決定し、関係各大臣に対して意見を述べている。
・ 内閣府では、平成十四年二月十七日から十九日の三日間にかけて、全国の婦人相談所や女性センターの職員等約百七十人を集め、研修を実施した。
・ 男女共同参画推進本部は、平成十三年六月五日、毎年十一月十二日から二十五日までの二週間を「女性に対する暴力をなくす運動」期間と定め、社会の意識啓発など女性に対する暴力の問題に関する取組を一層強化するとともに、女性の人権尊重のための意識啓発や教育の充実を図ることとした。
○女性の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、専用相談電話「女性の人権ホットライン」を全国の法務局・地方法務局の本局に設置して相談体制の一層の強化を図った。
○女性の人権擁護に関わる国際協力
平成八年に我が国のイニシアチブにより、国連婦人開発基金(UNIFEM)の中に設置された「女性に対する暴力撤廃のための信託基金」に対し、平成十三年度においては四千二百八十万円を拠出した。
2 子ども
【平成十三年度に講じた施策】
○学校教育及び社会教育における人権教育の推進
文部科学省では、学校教育において、@地域において教育上の総合的な取組を推進する「教育総合推進地域事業」、A学校における人権教育についての実践的な研究を行う「人権教育研究指定校事業」、B都道府県に委嘱し、当該都道府県及び域内の市町村で作成された人権教育に関する学習教材等を収集・分析・評価する「人権教育に関する学習教材等の状況調査事業」などを実施し、人権教育の推進に努めている。
また、社会教育において、@人権に関する学習活動を総合的に推進する「人権教育総合推進事業」、A日常生活の中で人権尊重を基本においた行動が無意識のうちにその態度や行動に現れるような人権感覚を育成する、先導的な人権学習モデルプログラムを開発する「人権感覚育成事業」を実施し、人権に関する学習活動の推進に努めている。
○道徳教育の推進
文部科学省では、道徳教育の一層の充実を図るため、子どもたちが身に付ける道徳の内容を分かりやすく表し、道徳的価値について、自ら考えるきっかけとし、理解を深めていくことができる教材として「心のノート」を作成し、平成十四年度からすべての小・中学生に配布する。
また、平成十四年度から、学校外の優れた人材を道徳の特別非常勤講師として配置し、子どもたちの心に響く道徳の授業を推進することとしている。
○いじめ・暴力行為・不登校等の問題への対応
文部科学省では、教育相談体制の充実という観点から、平成十三年度から、「スクールカウンセラー活用事業補助事業」を創設し(平成十三年度三千七百五十校)、また、公立中学校に教職経験者や青少年団体指導者など地域からの人材を「心の教室相談員」として配置している(平成十三年度六千二百五十校)。
また、平成十三年四月には、少年の問題行動等に関する調査研究協力者会議により報告がまとめられ、学校と関係機関との「行動連携」のためのネットワーク形成と「サポートチーム」の組織化が提言された。さらに、平成十三年七月には、出席停止制度の改善を内容とする学校教育法の改正を行った。
○家庭教育に対する支援の充実
文部科学省では、平成十三年度から、新たに就学時健診等の機会等を活用した子育て講座の全国的な実施や思春期の子どもを持つ親のための緊急子育て講座のモデル的な実施に対して補助を行った。
また、子どもや親の悩み、不安等に関する相談に、電話等により二十四時間いつでも対応できる相談体制の各都道府県への計画的な整備、子育てやしつけに関する悩みや不安を持つ親に対して、気軽に相談にのったり、きめ細かなアドバイス等を行う子育て経験者等の「子育てサポーター」の配置など地域における子育て支援ネットワークの充実を図る事業に補助した。
○児童虐待等児童の健全育成上重大な問題に対する取組
・ 検察当局その他の関係機関では、刑法等の処罰規定の的確な運用に努めている。
・ 厚生労働省では、児童虐待や非行等の問題に関して児童相談所に対する専門的助言、情報提供及び職員研修などの支援を行うことを目的とする虐待・思春期問題情報研修センター(子どもの虹情報研修センター)を設置し、深刻化する児童虐待問題や思春期問題(非行・家庭内暴力等)への対応を充実強化した。
また、児童福祉施設に入所した児童の支援については、第三者が客観的かつ専門的な立場から、児童養護施設等に入所している児童の処遇について評価するとともに、児童の不満や苦情にも適切に対応することにより、その権利が擁護され、自立支援が図られるよう試行的に実施するとともに、心的外傷を持つ被虐待児童等に対して、心の傷を癒すための心理療法を実施する職員を配置した。
さらに、児童虐待の早期発見・早期対応を図るため、児童相談所に児童虐待対応協力員(児童福祉司等OB)を配置したほか、主任児童委員等による地域連絡網を整備するとともに、地域住民の啓発を実施した。
・ 関係する府省庁及び関係団体(保健、医療、福祉の行政機関、教育委員会、警察、弁護士、ボランティア団体等)から構成する児童虐待対策協議会を設置し、総合的な子どもの心の健康づくり対策を推進した。
○少年に対する犯罪の取締、犯罪被害児童への適切な対応
・ 検察当局その他の関係機関では、児童買春・児童ポルノ禁止法とともに刑法、児童福祉法、児童虐待防止法等を的確に運用している。
・ 警察では、被害児童の保護対策については、少年サポートセンターが中心となって、少年補導職員や少年相談専門職員等によるカウンセリングや継続的なケア等のきめ細かな継続的支援を行っている。
○児童の権利に関する条約の広報等を通じての児童虐待等に対する理解の促進
外務省では、平成十三年十二月に横浜において、「第二回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」を開催した。また、同世界会議に先立つ平成十三年六月には、国連子ども特別総会第三回準備会合において、児童の商業的性的搾取に関するパネルディスカッションを開催した。このような施策を通じて、児童買春・児童ポルノ等の問題への理解と取組の促進を図った。
○子どもの人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、専用相談電話「子どもの人権一一〇番」を設置し、子どもが容易に相談しやすい体制をとっている。また、人権擁護委員の中から、子どもの人権にかかわる問題を専門に扱う「子どもの人権専門委員」を選任し、人権相談に応じたり、法務局と連携して人権侵犯事件の調査・処理を行うなど積極的な取組をしている。
○教職員の資質向上等
文部科学省では、個に応じた教育を一層推進する観点から、教科に応じた少人数指導や習熟度別指導が可能となる教員定数の加配を中心とする第七次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画及び第六次公立高等学校教職員定数改善計画を平成十三年度からスタートさせた。
平成十三年度においては、義務教育諸学校で五千三百八十人、高等学校で一千四百二人の改善を図った。
3 高齢者
【平成十三年度に講じた施策】
○高齢者福祉に関する普及・啓発
厚生労働省では、平成十三年九月十五日(敬老の日)から二十一日までの七日間を「敬老の日・老人保健福祉週間」と定め、国民一人一人が高齢者問題を身近なこととして理解するよう運動を行った。
○学校教育における高齢者・福祉に関する教育の推進、高齢者の学習機会の促進
文部科学省では、学校教育全体を通じて、高齢者に対する尊敬や感謝の気持ちを育てるとともに、高齢社会への理解を深めさせる指導を行っている。また、社会教育においても、高齢社会についての理解を促進するための学習機会や高齢者を対象とする学級・講座等が開設されている。
○世代間交流の機会の充実
内閣府では、高齢者の社会参加活動や世代間交流を促進するため、全国三か所(岩手、大阪、鳥取)において「心豊かな長寿社会を考える国民の集い」を開催するなどの事業を実施した。
○ボランティア活動など、高齢者の社会参加の促進
内閣府では、「心豊かな長寿社会を考える国民の集い」等を通じて、広く国民に紹介する事業を実施し、また、平成十四年一月には、高齢社会の構成員それぞれが果たすべき役割等の追求を目的として高齢社会セミナーを開催した。さらに、広く国民が高齢社会の問題を国際的視野からとらえ、考える機会として国際シンポジウムを平成十三年十月に開催した
また、文部科学省では、高齢者の社会参加活動を促進する上での様々な課題について研究協議を行う全国高齢者社会参加フォーラムを実施している(平成十三年度:山形県で実施)。
○高齢者の雇用・多様な就業機会確保のための啓発活動
平成十三年十月から事業主に対し、募集・採用時の年齢制限緩和の努力規定が課せられているところであり、厚生労働省では、官民の職業紹介機関の窓口の活用、地域の経済団体やマスメディアへの働きかけ等により、その積極的な周知・広報を図った。
4 障害者
【平成十三年度に講じた施策】
○「ノーマライゼーション」の理念を実現するための啓発・広報活動
内閣府では、「心の輪を広げる障害者理解促進事業」として、「心の輪を広げる体験作文」、「障害者の日ポスター」の募集を行い、「障害者の日・記念の集い」において作文・ポスターの表彰式を行うとともに、障害者週間に応募作品等の展示を行い、啓発を図った。
○盲・聾(ろう)・養護学校等における教育の充実及び障害者に対する理解を深める教育の推進
文部科学省では、新しい学習指導要領において、障害の重度・重複化、社会の変化等を踏まえ、障害の状態を改善・克服するための指導領域である「養護・訓練」を「自立活動」に改め内容の改善を図るなど、一人一人の障害の状態等に応じたきめ細かな指導の一層の充実を図っている。また、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応して必要な教育支援を行うため、平成十三年秋に「特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」を設置し検討を行っているところである。
さらに、障害のある人に対する理解を深める教育に関連して、小・中・高等学校を通じ、各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間といった学校教育諸活動全体を通じて、福祉の重要性について理解させ、思いやりの心や奉仕の精神を育てることとしている。加えて、小・中学校等や地域における交流教育、小中学校の教職員等のための指導資料の作成・配布、学校教育関係者及び保護者等に対する啓発活動を実施している。このほか、社会教育施設においては、障害のある人と障害のない人の交流事業や障害のある人を対象とする学級・講座も開設されている。
○障害者雇用の促進、障害者職業能力の向上等
厚生労働省では、障害者雇用促進月間を設定し、期間中、全国障害者雇用促進大会の開催、ポスターや新聞等による啓発活動、優良事業所の表彰を行うことにより、国民とりわけ事業主に対して障害者雇用に関する理解を促した。
また、障害者の職業能力の開発等を促し、技能労働者として社会に参加する自信と誇りを与えるとともに、広く障害者に対する社会の理解を深め、その雇用の促進を図ることを目的に平成十三年十一月十日から三日間、千葉市の障害者職業総合センターほかで、「第二十五回全国障害者技能競技大会」(通称、アビリンピック)を開催した。
○精神障害者に対する偏見・差別の是正のための啓発活動
平成十三年十一月五日から十一日までの間、「自分の気持ちを伝えよう、地域に、社会に」をメインテーマに、地域社会における精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的として、第四十九回精神保健福祉普及運動を実施した。
厚生労働省では、期間中の十一月九日に、第四十九回精神保健福祉全国大会を開催した。
5 同和問題
【平成十三年度に講じた施策】
○学校教育・社会教育を通じた同和問題の解決に向けた取組
文部科学省では、「教育総合推進地域」、「人権教育研究指定校」、「人権教育に関する学習教材等の状況調査」などの学校教育における人権教育関係事業を実施しているが、この中では、各学校・地域における人権課題の一つとして同和問題を取り上げ、研究を行っている。
そのほか、社会教育関係では、同和問題を含む様々な人権課題に対応して、公民館等の社会教育施設における人権に関する学習機会の提供や社会教育指導者に対する研修の実施などに助成する「人権教育総合推進事業」及び様々な人権課題や地域の特性等に応じた人権学習のモデル事業を展開しながら、日常生活において態度や行動に現れるような人権感覚を身に付けるための先導的な人権学習プログラムを開発する「人権感覚育成事業」を実施している。
平成十三年度においては、人権教育促進事業を活用し、同和問題に関して七百六十件の事業が実施された。
○公正な採用選考システムの確立
厚生労働省の職業安定機関では、企業の採用選考に当たって、人権に配慮し、応募者の適性・能力のみによって採否を決める公正な採用選考システムの確立が図られるよう、雇用主に対して啓発に取り組んだ。
○隣保館における活動の推進
隣保館においては、地域住民に対する人権・同和問題に関する理解を深めるための総合的な活動を行っており、国は、設置主体である市町村に対し、その運営費を補助した。
○えせ同和行為の排除に向けた取組
全省庁の参加する「えせ同和行為対策中央連絡協議会」を設置し、政府一体となってえせ同和行為の排除の取組を行っている。
○同和問題をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、同和問題をめぐる人権侵害事案に対し、人権侵犯事件の調査・処理を通じ、その被害救済を図っており、特に、結婚差別、差別発言などの差別事件を人権擁護上看過できない事象としてとらえ、行為者等に対して人権尊重の意識を啓発することによって、自発的・自主的に人権侵害の事態を改善させ、あるいは、将来再びそのような事態が発生しないよう注意を喚起している。
6 アイヌの人々
【平成十三年度に講じた施策】
○アイヌ文化の振興、アイヌの伝統及び文化に関する普及啓発
アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律に基づき、(財)アイヌ文化振興・研究推進機構が行う事業に対して助成等を行った。
○各高等教育機関等におけるアイヌ語等に関する取組への配慮
北海道の大学を中心に、アイヌに関する授業科目が開設されるなど、アイヌに関する教育・研究が行われている。
○生活館における活動の推進
生活館においては、地域住民に対し、生活上の各種相談事業を始め、アイヌの人々に対する理解を深めるための啓発・広報活動など社会福祉等に関する事業を総合的に行っており、国は設置主体である市町村に対し、その運営費を補助した。
7 外国人
【平成十三年度に講じた施策】
○学校教育における国際理解教育等の推進
文部科学省では、国際理解教育及び外国語教育の充実を図っており、国際理解教育に関するソフトウェアを平成十三年度に各都道府県教育委員会に配布するとともに、語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)を引き続き実施し、また、小学校英会話学習の推進のために、教員に対する研修を新たに平成十三年度から実施した。
また、外国人児童生徒に対する教育について、日本語指導のための教員定数の加配を行うとともに、平成十三年度から、新たに、日本語の初期指導から教科学習へつながる段階の日本語カリキュラムの開発等を行っている。
○外国人の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、英語や中国語等の通訳を配置した「外国人のための人権相談所」を東京、大阪等の法務局に開設している。
8 HIV感染者・ハンセン病患者等
(1) HIV感染者等
【平成十三年度に講じた施策】
○エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別をなくし、理解を深めるための啓発活動
厚生労働省では、HIV感染症に関するパンフレットの作成や配布、青少年を対象とした日HIV普及啓発イベント、車体広告バスによる世界エイズデーについての広報の実施、エイズに関する電話相談事業の実施等、エイズに対する正しい知識の普及啓発活動に努めている。
○学校教育におけるエイズ教育等の推進
文部科学省では、学校教育において、エイズ教育の推進を通じて、発達段階に応じて正しい知識を身に付けることにより、エイズ患者やHIV感染者に対する偏見や差別をなくすとともに、そのための教材作成や教職員の研修を推進した。
○職場におけるエイズに関する正しい知識の普及
厚生労働省では、事業場における産業医等産業保健関係者及び人事労務担当者を対象としてエイズ教育指導者講習会を開催した(全国五か所、計三百二人)。
(2) ハンセン病患者・元患者等
【平成十三年度に講じた施策】
○ハンセン病患者等に対する偏見・差別をなくし、理解を深めるための啓発活動
厚生労働省では、毎年六月下旬に「ハンセン病を正しく理解する週間」を、都道府県・(財)藤楓協会と実施している。平成十三年度は六月二十四日から三十日を当該週間としてハンセン病の正しい理解を促進し、偏見・差別の除去に努めたところである。
また、ハンセン病を正しく理解させるため、新聞広告、政府広報の実施、高松宮記念ハンセン病資料館での展示など、様々な広報媒体を用いて、普及啓発活動を行った。
特に、平成十三年五月二十五日のハンセン病問題の早期かつ全面的解決に向けての内閣総理大臣談話を受けて、六月三十日の全国紙、地方紙にハンセン病に関する啓発広告を掲載した。また、平成十四年三月二十三日の全国紙、地方紙に「ハンセン病問題の解決に向けて」と題する啓発広告を掲載した。
○ハンセン病患者等の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省では、平成十三年五月二十五日の内閣総理大臣談話を受けて、人権擁護局長から法務局・地方法務局に対し、ハンセン病患者等に関する人権相談に積極的に取り組むほか、差別や嫌がらせなど人権侵犯事件への対応強化を内容とする通達を発出した。
9 刑を終えて出所した人
【平成十三年度に講じた施策】
法務省では、第五十一回「社会を明るくする運動」を実施する中で、刑を終えて出所した人に対する偏見・差別を除去し、これらの者の社会復帰に資するための啓発活動を実施した。
10 犯罪被害者等
【平成十三年度に講じた施策】
○犯罪被害者の権利保護に関する取組
・ 検察では、現行法によって与えられた権限を適切に行使して事案の真相を解明する中で、犯罪被害者やその親族等の苦痛、悲嘆や怒りに十分耳を傾けて適正な事件処理を行うとともに、公判においても、被害者感情を含む事案の全ぼうについて効果的な立証活動を行うことに努めてきた。
また、全国の検察庁では、犯罪被害者等に事件の処理結果等に関する情報を提供する被害者等通知制度を実施しているほか、被害者支援員の配置、被害者ホットラインの設定などを行っている。
これに加え、平成十三年三月一日から、犯罪被害者やその親族に受刑者の出所情報を通知する制度を、また、同年十月からは、犯罪被害者が同じ犯人から再び被害を受けることを防止し、その保護を図るため、受刑者の釈放予定に関する情報の通知制度をそれぞれ導入している。
・ 警察では、平成十三年八月に、継続的な再被害防止措置を講じる必要がある犯罪被害者等の「再被害防止対象者」への指定、法務関係機関との連携強化を盛り込んだ「再被害防止要綱」を制定した。
○犯罪被害者等の人権に関する広報・啓発
・ 法務省では、「検察庁における被害者支援のための制度について」と題するパンフレットを作成し、全国検察庁及び各都道府県警察等に置いて、被害者等に配布している。また、刑事手続の流れや被害者等通知制度等を紹介する広報ビデオ「被害者とともに」を全国の検察庁に配布し、国民に対する説明に利用している。
・ 警察庁では、パンフレット「警察による犯罪被害者支援」「犯罪被害給付制度のご案内」、啓発ビデオ「あなたの勇気を支援します−犯罪被害者支援のために−」等を作成し、様々な機会に活用するとともに、警察庁月別広報重点(平成十四年七月)として「被害者相談窓口の積極的な利用促進と犯罪被害給付制度の周知徹底」を設定するなど、広報・啓発に積極的に取り組んでいる。
○犯罪被害者等給付金支給法の改正
平成十三年に犯罪被害者等給付金支給法が改正され、犯罪被害者等の人権に関する広報・啓発についても所要の措置がとられた。
警察は、本改正に基づき、平成十四年国家公安委員会告示第五号で「警察本部長等による犯罪の被害者等に対する援助の実施に関する指針」を定め、国民に対し警察の行う犯罪被害者援助に関する施策の周知徹底を図ることとした。
11 インターネットによる人権侵害
【平成十三年度に講じた施策】
○情報教育の推進
文部科学省では、学校教育において、高度情報通信ネットワーク社会に生きる児童生徒に必要な資質を養うなど、情報教育の推進を図っている。平成十三年度においては、情報モラルの必要性や情報に対する責任などについての指導内容・指導方法について解説した指導資料をすべての小・中・高等学校等に配布した。
第3節 人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等
1 研修
○検察職員
基本的人権を尊重した検察活動を徹底するため、検察官及び検察事務官に対し各種研修において人権教育の実施をしているほか、日常業務においても、上司による指導を通じ、人権尊重に関する理解の増進に努めている。
○矯正施設、更生保護関係職員等
・ 矯正施設の職員については、矯正研修所及び同支所において、新採用職員、幹部職員等に対し、被収容者の権利保障・国際準則等に係る研修、人権啓発に係る研修等を実施している。
・ 更生保護関係職員に対しては、新任保護観察官を対象とした保護観察官中等科研修において人権に関する講義を継続して実施している。
○入国管理関係職員
入国審査官、入国警備官等に対して、法務総合研究所が実施する入国管理局関係職員研修において人権に関する教育を実施している。
○教員・社会教育関係職員
独立行政法人教員研修センターにおいて、校長、教頭、中堅教員等に対する教職員等中央研修講座や「人権教育セミナー」を開催し、人権尊重の教育についての研修を実施している。
また、社会教育主事講習において、課程の一部で人権問題を取り上げている。
○医療関係者
厚生労働省では、医療関係者を養成する学校や養成所に対して、人の尊厳を幅広く理解するための授業を教育内容に含めることを求めるなど、患者の人権を十分に尊重するという意識・態度の育成を図った。
○福祉関係職員
厚生労働省では、「全国民生委員指導者研修会」等において、民生委員・児童委員の人権の尊重等についての理解を深めている。
また、「全国主任児童委員研修会」において、主任児童委員の活動レポート、児童福祉問題と主任児童委員活動に関するシンポジウム等により主任児童委員としての役割や活動の充実強化を図っている。
さらに、こどもの人権を尊重した処遇を行うための教育を実施するために、国立武蔵野学院附属児童自立支援専門員養成所において研修を行った。
厚生労働省委託の社会福祉研修では、社会福祉研修実施機関で実施される研修において、人権教育及び人権啓発に関するプログラムを組んで実施している。
○海上保安官
海上保安庁では、海上保安大学校等における講義や階層別の再研修における講義において、特に憲法、行政法等の科目を中心にして、人権尊重の理念及び人権を尊重した行政手続・司法手続に重点をおいた教育を実施している。
○労働行政関係職員
厚生労働省では、職員の職位に応じて行われる中央研修において、同和問題等を中心とする人権の講義を実施している。
○消防職員
消防庁消防大学校では、消防事務に従事する職員、消防職員・消防団員に対し、人権の概念・定義をもとに、憲法と人権、人権擁護をめぐる国内的・国際的問題等、人権教育を実施している。
○警察職員
警察庁では、職務倫理に関する教育を警察教養の最重点項目に掲げ、各級警察学校、警察署等の各職場において、人権の尊重を大きな柱とする「職務倫理の基本」に重点をおいた教育を行ったほか、基本的人権を尊重した職務執行ができるよう、必要な知識・技能を習得させるための各種教育を行った。
○自衛官
防衛大学校や防衛医科大学校等では、民主主義、基本的人権の尊重等の憲法の理念等について教育を実施した。
また、自衛隊の各種学校等では、自衛隊法に規定する「服務の本旨」にのっとり、人格の尊重等を基本とする精神教育を実施した。
○公務員
・ 法務省では、中央省庁等の職員を対象とする人権に関する国家公務員等研修会を開催している。
また、都道府県及び市区町村の人権啓発行政に携わる職員を対象にして、その指導者として必要な知識を習得させることを目的とした人権啓発指導者養成研修会を実施している。
・ 人事院では、全府省庁の職員を対象に実施している職位階層別研修において、女性、高齢者、同和問題等の人権問題を幅広くカリキュラムに取り入れるとともに、特定のテーマについて実施する研修として障害者などの人権課題を取り上げた研修も行った。
○マスメディア関係者
平成十三年四月五日、放送による権利侵害等についての苦情を扱う自主的な第三者機関であるBRO(放送と人権等権利に関する委員会機構:平成九年五月、日本放送協会及び(社)日本民間放送連盟が共同で設立)は、言論・表現の自由と人権尊重をどう調整すべきか等を考えるためのシンポジウムを開催した。
2 国の他の機関との協力
裁判官の研修機関である司法研修所では、裁判官が経験年数に応じて義務的に受講する研修等の際に人権問題に関する各種講義を設定している。
なお、前記研修を実施するに当たり、法務省、外務省などから講師を派遣するなどの協力を行った。
第4節 総合的かつ効果的な推進体制等
1 実施主体の強化及び周知度の向上
政府は、人権擁護推進審議会の人権救済制度の在り方に関する答申及び人権擁護委員制度の改革についての答申を踏まえ、人権委員会の設置等、人権啓発の総合的かつ効果的な推進が可能となるような新たな制度の構築に向けた検討を進め、平成十四年三月に「人権擁護法案」を国会に提出した。
2 実施主体間の連携
○人権教育・啓発に関する中央省庁連絡協議会
平成十二年九月二十五日、関係省庁事務次官等申合せにより、各府省庁等の教育・啓発活動について情報を交換し、連絡するための場として、人権教育・啓発中央省庁連絡協議会を設置し、今後、関係府省庁等の教育・啓発活動について、情報交換・意見交換等を行っていくとともに、相互の連携・協力の方法等について検討していくこととしている。
平成十三年度は、幹事会を開催し、共同実施の可能な啓発活動、共同利用の可能な啓発物品等についての情報交換を行った。
○人権啓発活動ネットワーク協議会
法務省では、人権啓発活動ネットワークを都道府県レベルに設置するとともに、平成十二年度及び平成十三年度の二か年計画により、本局直轄区域及び課制支局の管轄区域の地域ネットワーク協議会を設置した。
3 担当者の育成
○人権啓発指導者養成研修会
法務省では、地方公共団体等の人権啓発行政に携わる職員を対象にして、その指導者として必要な知識を習得させることを目的として、人権啓発指導者養成研修会を実施した。
○人権擁護事務担当職員、人権擁護委員に対する研修
法務省では、法務局・地方法務局の人権擁護課長、支局長などを対象に専門科研修などを実施し、人権擁護行政に携わる職員を養成している。
人権擁護委員に対しては、新任委員研修をはじめとする各種研修を通じて、人権擁護委員として職務遂行に必要な知識及び技能の習得を図っている。また、同和問題講習会、男女共同参画問題研修も実施している。
○公正採用選考人権啓発推進員に対する研修
厚生労働省では、「公正採用選考人権啓発推進員」に対し、研修会を開催し(全国で七百二十一回)、また、従業員の選考採用に影響力のある企業トップクラスに対し、「事業所における公正な採用選考システム確立」について研修会を開催した(全国で五百二十回)。
4 文献・資料等の整備・充実
人権センターでは、地方公共団体、各種研究団体等で制作した書籍・図書・ビデオ等を収集・購入し、同センター内に設置した「人権ライブラリー」において、これら書籍・図画・ビデオ等を広く一般の人々に提供している。
5 人権センターの充実
人権センターは、民間団体としての特質を生かした人権教育・啓発活動を総合的に行うナショナルセンターとしての役割を果たすため、法務省からの委託事業のほか、情報誌「アイユ」の発行、人権啓発ポスターの作成等センター独自の事業を行っている。
6 マスメディアの活用等
○テレビ、ラジオの活用
・ 政府広報番組を活用した啓発活動
・ テレビ特別番組「あなたを守りたい〜DVと児童虐待〜」の放映
・ テレビドラマ「日本で一番優しい会社」の放映
○新聞、雑誌の活用
・ 「高齢者雇用の促進」に関する啓発広告
・ 「公正な採用選考システムの確立」に関する啓発広告
・ ハンセン病に関する啓発広告
・ 「全国中学生人権作文コンテスト」に関する啓発広告
・ 人権週間に関する啓発広告
7 インターネット等IT関連技術の活用
法務省では、法務省のホームページ(http://www.moj.go.jp/)において、各種人権関係情報を掲載するとともに、広く国民に対して、多種多様の人権関係情報を提供した。
また、人権啓発活動ネットワーク協議会が構築されている都道府県においては、人権教育・啓発に関する情報に対して、多くの人々が容易に接し、活用することができるよう、ネットワーク協議会のホームページ(http://www.jinken.go.jp/)を開設している。
「人権教育・啓発に関する基本計画」については、法務省及び文部科学省(http://www.mext.go.jp/)のホームページに全文を掲載し、内容の周知を図っている。
厚生労働省では、厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)において、それぞれの施策についての情報及び資料を掲載して、それぞれの施策の普及を図り、国民的理解を深めるよう努めている。
外務省では、外務省のホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/)において、世界人権宣言、人権関係条約等に関する情報を提供している。
味噌をつける
「味噌(みそ)をつける」と言えば、しくじったり、面目を失ったりするような場合を指します。これは、味噌が器物にくっついていると見苦しいということからきた表現です。
「味噌を塗る」も「泥を塗る」と同じく、体面をけがす意味に用いられました。
味噌は中央アジアに始まり、中国や朝鮮を経て六世紀ごろ、わが国に伝来した調味料。朝鮮語のミソ(蜜祖)からきた外来語とされています。
日本人には古くから親しまれてきたので、味噌に関する語句やことわざは少なくありません。
昔の農家では、自家製の「手前味噌」を作りました。冬に大豆を軟らかく煮てつぶし、くずれたのをまるめた「味噌玉」(俳句では春の季語)を、軒下につるして乾燥させます。秋に麹(こうじ)(蒸した米・麦・豆に麹菌を繁殖させたもの)と塩をまぜて、独自の味に仕込みました。
「手前味噌を並べる」は、自分のものを自分でほめること。工夫や趣向をこらした点を指して「そこがミソ」というようにもなりました。
T 全国人口
一 総人口
◇総人口は平成十四年十月一日現在で一億二千七百四十三万五千人、この一年間に十四万五千人の増加
平成十四年十月一日現在における我が国の総人口は一億二千七百四十三万五千人で、十三年十月から十四年九月までの一年間に十四万五千人(〇・一一%)増加した。人口増加数は、昭和五十四年に百万人を、平成元年に五十万人を下回ってからも減少傾向で推移し、十四年は戦後最低の増加数となった。総人口を男女別にみると、男性が六千二百二十五万二千人(総人口の四八・九%)、女性が六千五百十八万三千人(同五一・一%)で、女性が男性より二百九十三万人多く、人口性比は九五・五となっている。この一年間に男性が九千人(〇・〇一%)の増加、女性が十三万六千人(〇・二一%)の増加となっている(第1図、第1表、第2表参照)。
総人口の増加率は、第二次ベビーブーム期(昭和四十六〜四十九年)には一・四%前後と高い水準(最高は昭和四十七年の一・四二%)であったが、その後、出生児数の減少により昭和五十二年に一%を、六十二年に〇・五%を下回るなど低下傾向で推移し、平成六年以降は〇・二%台となり、十一年は〇・一五%となった。平成十二年、十三年はやや上昇したものの、十四年は〇・一一%と戦後最低の増加率となった(第1図、第1表参照)。
自然動態(出生・死亡)をみると、出生児数は、第二次ベビーブーム期(最高は昭和四十八年の二百十万七千人)以降は減少傾向が続いており、平成十四年は百十七万六千人で前年より九千人減少した。一方、死亡者数は九十八万人で、前年に比べて一万五千人増加した。この結果、出生児数と死亡者数の差である自然増減数は十九万五千人増で、前年(二十一万九千人)に比べ二万四千人の減少となり、戦後最低の低い水準となっている(第1表参照)。
また、社会動態(出入国)をみると、平成十四年の入国者数は一千六百三十二万一千人で前年(一千九百二十六万六千人)に比べ二百九十四万五千人の減少、出国者数は一千六百三十七万二千人で、前年(一千九百十二万人)に比べ二百七十四万九千人の減少となっている。入国者数と出国者数の差である社会増減数は五万一千人減となっており、平成十三年(十四万六千人増加)に比べ、大きく減少している。平成十四年の社会増減数が大きく減少したのは、平成十三年がアメリカで起きた同時多発テロの影響により社会増加数が大きくなった反動とみられる(第1表、第3表参照)。
二 年齢別人口
(1) 人口ピラミッドはひょうたん型に近い
我が国の人口ピラミッドは、近年、出生児数が第二次ベビーブーム期をピークとして減少傾向が続いていたことを反映し、二つのベビーブーム期の人口が膨らんだ「ひょうたん型」に近い形となっている(第2図参照)。
平成十四年十月一日現在における、明治と大正生まれの人口は九百二十三万四千人(総人口に占める割合は七・二%)、昭和生まれの人口は一億百七十五万八千人(同七九・九%)、平成生まれの人口は一千六百四十四万三千人(同一二・九%)となった。
(2) 老年人口の割合は過去最高の一八・五%
平成十四年十月一日現在の総人口を年齢三区分別にみると、年少人口(〇〜十四歳)は一千八百十万二千人で前年より十八万二千人減少、生産年齢人口(十五〜六十四歳)は八千五百七十万六千人で四十三万三千人減少しているのに対し、老年人口(六十五歳以上)は二千三百六十二万八千人で七十五万九千人の増加となった(第3図参照)。
年齢三区分別人口の割合は、年少人口が一四・二%、生産年齢人口が六七・三%、老年人口が一八・五%で、前年に比べ、年少人口、生産年齢人口がそれぞれ〇・二ポイント、〇・四ポイント低下し、老年人口が〇・六ポイント上昇している。
年齢三区分別人口の割合の推移をみると、年少人口の割合は昭和五十年(二四・三%)から低下を続け、平成十一年には一五%を下回った。生産年齢人口の割合は、昭和五十七年(六七・五%)から上昇を続けていたが、平成四年(六九・八%)をピークに低下している。一方、老年人口の割合は昭和二十五年(四・九%)以降上昇が続いており、平成十四年(一八・五%)は過去最高となっている(第4図、第4表参照)。
将来推計(*1)では、老年人口は平成十八年には二〇・五%、二十六年には二五・三%になると予測されている。
*1 「日本の将来推計人口−平成十四年一月推計−」(国立社会保障・人口問題研究所)中位推計による。
(3) 老年化指数は一三〇・五
年齢構造指数についてみると、生産年齢人口に対する年少人口の比率(年少人口指数)は二一・一、老年人口の比率(老年人口指数)は二七・六となっている。
年少人口指数は昭和五十二年以降低下を続けているのに対し、老年人口指数は三十八年以降上昇を続けており、平成十四年は、前年と比べ、年少人口指数が〇・一ポイントの低下、老年人口指数が一・〇ポイント上昇した。その結果、この両者の和(従属人口指数)は〇・九ポイント上昇して四八・七となった。
年少人口に対する老年人口の比率(老年化指数)は一三〇・五となっている。この老年化指数は、平成元年に六一・七と六〇を超えた後、毎年ほぼ五ポイントの上昇を続け、九年には一〇二・〇と一〇〇を超え、十四年は前年より更に五・五ポイント上昇している(第4表参照)。
(4) 年齢構造はイタリアとほぼ同じ
我が国の人口の年齢構造を各国と比べてみると、調査年次に相違はあるものの、年少人口は低い水準、老年人口は高い水準となっている。
年齢三区分別人口の割合全体を通じてみると、老年人口が年少人口より多いなど、我が国の年齢構造はイタリアとほぼ同じになっている(第5表参照)。
U 都道府県別人口
一 人口
(1) 人口七百万以上の上位五都府県で全国人口の三分の一
平成十四年十月一日現在における都道府県別の人口は、東京都の一千二百二十一万九千人を最高に、大阪府(八百八十一万五千人)、神奈川県(八百六十二万五千人)、愛知県(七百十二万三千人)、埼玉県(七百万一千人)と続いている。以下、人口五百万台が四道県、三百万台が一県、二百万台が十府県、百万台が二十県、百万未満が七県となっている。上位五都府県の順位は、昭和五十八年以降、変わっていない。
なお、東京都、大阪府、神奈川県、愛知県及び埼玉県の上位五都府県の人口で全国人口の三四・四%を占め、三分の一を超えている(第6表参照)。
(2) 人口増加県は十二都県
平成十四年に人口が増加したのは、沖縄県、東京都、神奈川県など十二都県にとどまり、その数は戦後最低となった。
一方、人口が減少したのは、秋田県、島根県、和歌山県など三十五道府県となっている(第5図、第7表参照)。
(3) 人口増加率は沖縄県の〇・七六%が最高
都道府県別の人口増加率をみると、沖縄県が〇・七六%で最も高く、以下、東京都が〇・六六%、神奈川県が〇・六五%、愛知県が〇・五一%となっている。
人口が増加している十二都県のうち七都県は自然増加かつ社会増加となっている。
一方、人口が減少している三十五道府県のうち十五県で自然減少かつ社会減少となっている(第6図、第7表、第8表参照)。
二 年齢別人口
(1) 年少人口が老年人口を上回っているのは二県のみ
平成十四年十月一日現在の年少人口(〇〜十四歳)の割合を都道府県別にみると、沖縄県が一九・三%で最も高く、次いで滋賀県の一五・九%、佐賀県の一五・八%となっている。一方、最も低いのは東京都の一二・〇%となっており、次いで秋田県、高知県など十道府県が一三%台となっている。この年少人口の割合は、近年、出生児数の減少により各都道府県とも低下傾向にあるが、平成十四年は東京都が前年に引き続きわずかに上昇、神奈川県、京都府及び大阪府は前年と同率、その他の道県ではすべて低下している。
また、老年人口(六十五歳以上)の割合をみると、島根県が二六・〇%で最も高く、次いで、秋田県、高知県、山形県、鹿児島県となっており、二十六県で二〇%以上となっている。一方、最も低いのは埼玉県の一四・二%で、次いで沖縄県、神奈川県、千葉県、愛知県が一五%台となっている。この老年人口の割合は、引き続きすべての都道府県で上昇している。
この結果、年少人口が老年人口を上回っているのは、沖縄県及び埼玉県の二県のみとなった。老年人口と年少人口の割合の差をみると、島根県、秋田県及び高知県で老年人口が十ポイント以上上回っている。一方、沖縄県では年少人口の割合が四ポイント以上上回っている(第9表参照)。
(2) 生産年齢人口の割合はすべての都道府県で低下
生産年齢人口(十五〜六十四歳)の割合を都道府県別にみると、埼玉県が七一・三%と最も高く、東京都及び神奈川県が七一・〇%、千葉県が七〇・六%となっており、この四都県が七〇%を超えている。一方、最も低いのは島根県の六〇・一%で、次いで鹿児島県、山形県、秋田県となっている。
生産年齢人口の割合は、前年と比べ、すべての都道府県で低下している。そのうち、大阪府、東京都、神奈川県、京都府の四都府県では〇・六ポイント以上の低下となっている(第9表参照)。
(3) 老年人口の対前年増加率は埼玉県の五・三%が最高
老年人口の対前年増加率を都道府県別にみると、全国平均(三・三%)を上回っているのは十一都道府県で、このうち、埼玉県が五・三%と最も高く、以下、千葉県(五・二%)、神奈川県(四・九%)と、老年人口割合の低い県で増加率が高くなっている(第10表参照)。
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