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犯罪白書のあらまし
<はじめに>
本白書は、平成十二年を中心とした最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を概観するとともに、特集として「増加する犯罪と犯罪者」を取り上げている。
我が国は、諸外国の犯罪統計と比較しても、これまで治安の面で比較的良好な社会生活を享受してきた。そのため、諸外国から、しばしば、「日本人は、水と安全はただだと思っている」などと言われてきた。しかし、近年に至り、犯罪の認知件数が激増し、治安の悪化が憂慮される事態となってきた。
治安の良し悪しは、国民の受け取り方もさることながら、その前提として、犯罪情勢を数量、罪質の両面から客観的に分析し、判断することが肝要である。
本白書では、平成十二年を中心とした最近の犯罪動向及び犯罪者処遇の実情を概観しながら、特集として「増加する犯罪と犯罪者」を取り上げ、その特徴を分析・検討した。
その結果、@ 戦後最高を更新した刑法犯の認知件数は平成七年から急激に増加していること、A 顕著に増加が認められるのは窃盗罪と交通犯罪であること、B 少年非行の検挙人員はやや減少したが依然高水準を維持していること、C 窃盗ではひったくり等の暴力的手段を用いた事犯、職業犯的な空き巣ねらい等の侵入盗及び共犯事犯の増加が目立つこと、D 窃盗を除く一般刑法犯でも、暴力的色彩の強い強盗、傷害、強制わいせつ、器物損壊等の増加が顕著であること、E 薬物犯罪の大型化・組織化が進んでいるとうかがわれること、F 外国人犯罪は総数では減少したが、強盗や薬物犯罪などの悪質事犯は減少せず、外国人新受刑者は四年連続で増加していること、G 検挙件数は増加するも、検挙率は、全体で四二・七%と戦後最低を更新し、窃盗の検挙率に至っては二〇%を切る事態であること、H 矯正施設は受刑者の収容率が一〇〇%を超え過剰収容となっていること等が判明した。
これらの分析・検討が、犯罪の防止及び犯罪者処遇に関する刑事政策的施策を有効適切に講ずる上で参考となれば幸いである。
本白書の構成は四編から成り、第一編では、最近の犯罪動向等を、第二編では、検察、裁判、矯正及び保護の各段階における成人犯罪者の処遇及び犯罪被害者の救済等について、第三編では、少年非行の動向と少年法改正を踏まえての非行少年の処遇の在り方等を、第四編では、特集である「増加する犯罪と犯罪者」について、それぞれ記述している。
第一編 犯罪の動向
1 認知件数・検挙人員
平成十二年における警察による刑法犯の認知件数は、戦後最高の三百二十五万六千百九件(前年より三十五万二千五十八件増)となっている。
交通関係業過(道路上の交通事故に係る業務上過失致死傷及び重過失致死傷をいう。)を除く刑法犯認知件数についても、十二年は、二百四十四万三千四百七十件(同二十七万七千八百四十四件増)と、戦後最高の数値を示している。
平成十二年の刑法犯認知件数を罪名別にみると、窃盗が最も多く、次いで交通関係業過となっており、両者で全体の約九〇%を占めているが、この傾向は過去十年間に大きな変化はない。
平成十二年における警察による刑法犯の検挙人員は、百十六万百四十二人となっており、これを罪名別にみると、交通関係業過が最も多く、次いで窃盗となっている。両者合わせて全体の八五%以上を占めている。
2 発生率・検挙率
平成十二年における刑法犯の発生率(認知件数の人口十万人当たりの比率)は、二、五六五(前年より二七三上昇)と、戦後の最高数値を示している。交通関係業過を除く刑法犯の発生率も一、九二五(同二一六上昇)と上昇している。
平成十二年における交通関係業過を除く刑法犯の検挙率は、四二・七%(前年比七・九ポイント低下)と、戦後最も低くなっている。
検挙率を罪名別にみると、殺人は過去十年間九五%を超え、平成十二年は九五%(前年比一・三ポイント低下)、強盗は八年以降低下を続けており、十二年は五六・九%(同九・五ポイント低下)となっている。また、窃盗は、二年以降三〇%台で推移していたが、十二年は一九・一%(同一〇・三ポイント低下)となっている。
3 主要刑法犯の動向
平成十二年において、凶悪犯(殺人・強盗)の認知件数、検挙件数及び検挙人員は、前年と比べ、いずれも増加している。
粗暴犯では、前年と比べ、傷害、暴行、脅迫及び恐喝のいずれについても、認知件数がここ十年間では突出して増加し、これに伴い検挙件数及び検挙人員も増加した。
財産犯では、前年と比べ、詐欺については、認知件数と検挙人員は増加したが検挙件数は減少し、横領(遺失物等横領を除く。)については、認知件数、検挙件数及び検挙人員のいずれも増加し、逆に、遺失物等横領については、認知件数、検挙件数及び検挙人員のいずれも減少した。また、盗品譲受け等については、認知件数、検挙件数及び検挙人員のいずれも増加した。
性犯罪では、前年と比べ、強姦、強制わいせつ及び公然わいせつの認知件数、検挙件数、検挙人員がいずれも増加したが、わいせつ物頒布等は、逆にいずれも減少した。
その他の犯罪では、器物損壊等と住居侵入の認知件数が著しく増加した。
なお、窃盗を除く一般刑法犯の認知件数を分析・検討すると、最近五年間では、次のような特徴が認められた。
(1) 暴力的色彩の強い犯罪類型の顕著な増加
凶悪犯では、強盗(最近五年間で一一〇・〇%増)、粗暴犯では強盗と境を接する恐喝(同五四・八%増)の増加が顕著である。性犯罪においては、強姦(同五二・四%増)や強制わいせつ(同八四・一%増)のような、暴力的事案が急増している。財産の取得を目的としない粗暴犯では、傷害(同六八・九%)と暴行(同一〇四・四%)が急増し、その他の刑法犯では、暴力的事案である器物損壊等(同一四一・六%増)が著しく増加している。
これら暴力的色彩の強い犯罪類型のうち強盗、傷害、強制わいせつ、器物損壊等の四罪種だけで、最近五年間における窃盗を除く一般刑法犯の増加数の七八・七%を占めている。
(2) 窃盗と関連あるいは近接する犯罪の増加
住居侵入や盗品譲受け等は、窃盗の手段や盗品の処分に必然的な犯罪ではないが、実際には窃盗の手段や盗品の処分に伴って行われることが多い。住居侵入の認知件数は、平成八年までは横ばいであったが、九年以降明確な増加を示し、盗品譲受け等も、八年まで減少傾向にあったものの、九年以降増加に転じた。
二 特別法犯の概況
平成十二年における特別法犯の検察庁新規受理人員総数は、前年より十一万八千九百三十一人(一〇・四%)減少して、百二万八千四百六十四人となっている。罪名別にみると、道路交通法違反が九十万七千八百二十二人(八八・三%)と最も多く、次いで、自動車の保管場所の確保等に関する法律違反が二万九千七百三十八人(二・九%)となっており、両者合わせて特別法犯の九〇%以上を占めている。
交通関係法令違反以外の特別法違反の構成比をみると、覚せい剤取締法違反等の薬物関係犯罪が最も高く、以下、銃刀法違反等の保安関係犯罪、入管法違反等の外事関係犯罪の順となっている。
三 各種犯罪の概況
1 財政経済犯罪
財政経済犯罪のうち、税法違反では、平成十二年度(会計年度)の検察庁新規受理人員は、前年度に比べ、所得税法が、二十件減の四十一件(一件当たりの脱税額一億六千百十万円)、相続税法が一件減の五件(同四億百四十万円)、法人税法が十八件増の九十九件(同一億四千八百七十一万円)、消費税法が一件増の一件(同一億二千四百万円)である。
2 コンピュータ関連犯罪
コンピュータ関連犯罪(ハイテク犯罪)は、ここ十年で検挙件数が急増している。ちなみに、平成六年が六十三件、八年が百七十六件、十年が四百十五件、十二年が五百五十九件である。
3 銃器犯罪
平成十二年における銃器犯罪は、前年と比べ銃器発砲事件数が二十八件減の百三十四件、死亡者数が五人減の二十三人とそれぞれ減少している。
四 各種犯罪者による犯罪の動向
1 暴力団犯罪
平成五年以降減少傾向にあった暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員をいう。)は、八年以降漸増し、十二年十二月三十一日現在では、約八万三千六百人(前年比約五百人増)であるが、暴力団構成員は約四万三千四百人と前年より五百人減となっている。十二年の暴力団相互の対立抗争事件の発生件数は十八回(同二十八回減)、銃器使用率は八八・九%(同二・四ポイント減)である。
平成十二年における交通関係業過及び道交違反等交通関係法令違反を除く暴力団構成員等の検挙人員は、三万一千五十四人(前年比一千四百五十七人減)となっている。
2 公務員犯罪
平成十二年の検察庁受理人員は、前年比二千七百三十五人(一二・四%)増の二万四千八百六十五人で、罪名別では、交通関係業過が八五・一%を占めている。その起訴人員は、前年比二百七十七人(九・九%)増の三千六十八人であり、起訴率は、前年比〇・三ポイント低下の一二・四%である。
3 精神障害者の犯罪
平成十二年における交通関係業過を除く刑法犯検挙人員のうち精神障害者は七百十一人、精神障害の疑いのある者は一千三百六十一人であり、精神障害者等の刑法犯検挙人員に占める比率は〇・六七%である。罪名別の検挙人員では、窃盗、詐欺、横領(遺失物等横領を含む。)が、総数の五三・五%を占める。罪名別検挙人員総数に占める精神障害者等の比率をみると、放火の一五・六%と殺人の九・三%が特に高くなっている。
平成八年から十二年までの五年間に、検察庁で不起訴処分に付された被疑者のうち、精神障害のため、心神喪失と認められた者及び心神耗弱と認められ起訴猶予処分に付された者並びに第一審裁判所で心神喪失を理由として無罪となった者及び心神耗弱を理由として刑を減軽された者は、合計三千五百四十人である。罪名別では、殺人が七百二人、(総数の一九・八%)と最も多く、精神障害名別では、精神分裂病の二千百十四人(同五九・七%)が最も多くなっている。
前記七百二人の殺人事件の被疑者のうち、犯行前に入院歴を有する者は三百四十二人であり、そのうち措置入院歴を有する者は五十四人である。犯行時に治療を受けていた者は、三百十四人、治療中でなかった者は三百二十五人である。刑事処分で、実刑・身柄拘束となった者は八十九人、不起訴、執行猶予又は無罪となった者のうち、措置入院となった者は五百一人、その他の入院となった者は六十一人、通院治療を受けた者は九人である。
第二編 犯罪者の処遇と犯罪被害者の救済
一 検察
1 罪名・処理区分別の検察庁終局処理人員(第2表参照)
平成十二年における検察庁の終局処理人員総数は二百十八万一千四百七十三人(前年比〇・八%減)で、その処理別内訳は、公判請求が五・六%、略式命令請求が四一・八%、起訴猶予が三八・六%などとなっており、起訴率は五三・九%、起訴猶予率は四四・九%となっている。
さらに、交通関係業過を除く刑法犯の起訴率は五七・六%(同一・八ポイント減)、起訴猶予率は三三・九%(同〇・五ポイント増)で、道交違反(道路交通法違反及び自動車の保管場所の確保等に関する法律違反をいう。)を除く特別法犯の起訴率は七三・七%(同〇・七ポイント増)、起訴猶予率は二三・〇%(同一・〇ポイント減)となっている。
また、平成十二年の終局処理人員の罪名別構成比では、道交違反が四三・五%と最も高く、交通関係業過の三九・一%がこれに続いているが、両者を除いた構成比では、窃盗三六・七%、傷害及び横領が共に九・一%、覚せい剤取締法違反が七・四%となっている。
2 検察庁既済事件の逮捕・勾留状況
平成十二年における交通関係業過及び道交違反を除く検察庁既済事件のうち、被疑者が逮捕された事件(身柄事件)の占める比率(身柄率)は、前年比一・四ポイント増の三三・一%(十二万五千四百十四人)であり、これを罪名別にみると、強姦(七七・七%)が最も高く、以下、強盗(七六・九%)、覚せい剤取締法違反(六八・五%)、殺人(六六・三%)、恐喝(五三・六%)、銃刀法違反(四八・二%)の順となっている。
また、身柄事件のうち、検察官によって勾留請求された事件の占める比率(勾留請求率)は、九二・二%となっており、勾留請求された事件のうち、裁判官によって勾留が却下された事件の比率(却下率)は〇・二%である。
二 裁判
1 第一審裁判所の通常手続による終局処理人員(第3表参照)
平成十二年における地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所の第一審裁判所としての通常の公判手続による終局処理人員総数は七万八千四百五十人(前年比八・三%増)であり、そのうち死刑は十四人、無期懲役は六十九人、無罪は三十一人(総数の〇・一%未満)となっている。
このうち、地方裁判所及び家庭裁判所による第一審における終局処理人員六万七千三百八十八人について罪名別にみると、最も多いのは覚せい剤取締法違反の一万四千九百五十人(総数の二二・二%)で、以下、道交違反一万二百二十一人(同一五・二%)、窃盗七千九百九十五人(同一一・九%)、過失傷害六千四十六人(同九・〇%)、傷害四千六百三十四人(同六・九%)、詐欺四千百二十一人(同六・一%)の順となっている。
なお、裁判確定人員についての懲役刑の執行猶予率をみると、昭和三十年代後半以降、おおむね五〇%台で推移してきたが、平成に入ってからは上昇傾向がみられ、六年以降は六〇%台を示し、十二年は六一・四%である。
2 第一審の量刑
平成十二年の地方裁判所における第一審裁判所としての有期の懲役及び禁錮の科刑状況をみると、刑期が一年以上二年未満の者が全体の四二・八%と最も多く、次いで、二年以上三年以下が二五・〇%、六月未満が一三・九%となっている。また、無期を含めて刑期が十年を超える者は総数で三百三十八人で、これを罪名別にみると、殺人(百六十九人)が最も多く、以下、強盗致死傷(百十四人)、覚せい剤取締法違反(十九人)、強盗(十人)、強姦(八人)の順となっている。
なお、平成十二年の通常第一審における死刑言渡し人員は十四人で、強盗致死傷が八人、殺人が六人となっている。また、無期懲役言渡し人員は六十九人で、その内訳は、強盗致死傷が四十七人、殺人が二十人等となっている。
三 成人矯正
1 行刑施設の一日平均収容人員の推移
平成十二年における行刑施設の一日平均収容人員は五万八千七百四十七人(前年比八・九%増)であり、そのうち受刑者は四万七千六百八十三人(同八・一%増)、未決拘禁者は一万六百三十七人(同一二・三%増)である。また、行刑施設の一日平均収容人員は、昭和六十一年に五万五千三百四十八人のピークの後、漸減して平成四年には四万四千八百七十六人まで減少したが、五年以降増加に転じていた。
平成十二年十二月三十一日現在の収容率は、全体で九五・四%、受刑者では一〇三・六%となっており、行刑施設の約三割が定員を超える収容となっている。
2 新受刑者数の推移
新受刑者数は、平成五年以降、漸増傾向にあり、十二年は、前年より三千二人(一二・三%)増加して、二万七千四百九十八人となっている。
平成十二年における新受刑者の罪名のうち構成比の高いものをみると、覚せい剤取締法違反(二六・八%)、窃盗(二六・六%)、詐欺(六・八%)、道路交通法違反(六・三%)、傷害(五・六%)の順となっている。また、新受刑者中に占める六十歳以上の受刑者は、二千百三十人で、新受刑者全体の七・七%(前年七・六%)となっている。
3 平成七年出所受刑者の再入率
平成七年における出所者について、五年を経過した十二年末までの再入状況を出所事由別にみると、満期釈放による者の約五〇%、仮釈放による者の約三〇%は、いずれも四年以内に再入している。
四 更生保護
1 仮出獄の許可人員及び仮出獄率
仮出獄許可人員は、昭和五十九年の一万八千八百九十七人をピークに、その後平成八年までは減少傾向を示していたが、九年以降増加し、十二年は、一万三千五百九十九人(前年比一・四%増)となっている。仮出獄率は、元年以降五六%を超えて推移していたが、十二年は前年を一・四ポイント下回り、五五・九%となっている。
2 保護観察事件の受理状況
平成十二年の保護観察新規受理人員(保護観察処分少年及び少年院仮退院者を含む。)は、七万五千九百九十五人(前年比二・〇%減)で、これを保護観察の種類別にみると、仮出獄者は一万三千二百五十四人(同〇・一%未満減)、保護観察付き執行猶予者は五千六百八十三人(同八・五%増)となっている。
なお、仮出獄者は、平成四年以降は一万二千人台で推移していたが、徐々に増加し、十一年には、一万三千人を突破した。
3 保護観察期間中の再犯の状況
保護観察期間中に、再度罪を犯し、かつ、新たな処分を受けた者の比率(再犯率)は、近年、仮出獄者についてはおおむね一%前後で、また、保護観察付き執行猶予者についてはおおむね三〇%台で、それぞれ推移している。
五 犯罪被害実態の国際比較
法務総合研究所では、罪種別の犯罪被害の有無、警察への申告の有無、犯罪に対する不安等を把握するとともに、犯罪被害実態に関する国際比較を行うための二〇〇〇年国際犯罪被害実態調査(国連犯罪司法研究所を中心に実施)に参加する形で、平成十二年二月四日から同月二十九日にかけて、無作為に選ばれた全国の十六歳以上の男女三千人を対象として、質問紙に基づく面談での聞き取り方式による調査を実施した。
その結果を、同調査に参加した十一か国の調査結果と比較したところ、我が国の被害率は、自転車盗で比較対象国中最も高くなっている反面、自動車盗、車上盗、強盗、窃盗及び暴行・脅迫で最も低くなっている。
第三編 少年非行の動向と非行少年の処遇
一 少年非行の動向と特質(第2図参照)
1 少年刑法犯の検挙人員
少年刑法犯の検挙人員は、平成八年以降増加していたが、十一年から減少に転じ、十二年は前年比四・二%減の十九万三千二百六十人となっている。また、刑法犯検挙人員(交通関係業過を除く。)における少年比は、平成元年には五七・四%であったが、十年から低下傾向を示し、十二年は、前年比二・三ポイント減の四六・三%となっている。
2 少年凶悪犯の検挙人員
殺人の検挙人員は、近年は七十人台から九十人台で推移していたが、平成十年に百人を上回り、十二年は、前年より六人減少したものの、百五人と、百人台を維持した。
強盗の検挙人員は、平成元年以降、増加傾向にあり、八年には一千人を越え、十二年は前年比一・五%増の一千六百六十八人となっている。
二 非行少年の処遇
1 少年事件の検察及び裁判
平成十二年における交通関係業過、道交違反及び虞犯を除く少年保護事件の家庭裁判所終局処理人員は、十三万八百八十五人(前年比七・一%減)である。
処理内容別構成比をみると、審判不開始が九万二千二十人(七〇・三%)と最も高く、以下、保護観察一万七千九百四十八人(一三・七%)、不処分一万四千五百四人(一一・一%)、少年院送致五千三百三十七人(四・一%)の順となっており、刑事処分相当として検察官に送致(逆送)された者は三百二十三人(〇・二%)である。
2 少年鑑別所における鑑別
少年鑑別所新収容人員は、ピーク時の昭和五十九年に二万二千五百九十三人を記録した後、平成七年までは減少傾向を示していたが、八年から増加に転じ、十二年には前年より二千百四十三人(一〇・五%)増加して二万二千五百二十五人となっている。
平成十二年の少年鑑別所退所事由別人員は、保護観察(四五・一%)、少年院送致(二六・九%)、試験観察(一一・六%)、観護措置の取消し(八・一%)の順となっている。
3 少年院における処遇
少年院新収容者は、昭和五十九年に六千六十二人のピークに達して以降、漸減傾向が続いていたが、平成八年から増加に転じ、十二年は六千五十二人(前年比九・三%増。うち女子は六百四人)となっている。
昭和五十五年以降、少年院新収容者の非行名別構成比の推移をみると、窃盗の比率が低下傾向にある一方、傷害・暴行、強盗及び恐喝の比率が高くなっている。平成十二年の構成比は、窃盗(二九・八%)、傷害・暴行(一四・六%)、恐喝(一〇・九%)の順である。
4 少年受刑者
少年新受刑者(裁判の確定により新たに入所した少年受刑者をいい、入所時二十歳以上の者を含む。)の数は、昭和二十七年以降、おおむね減少傾向にあり、平成十二年は五十人(前年三十九人)で、うち女子は二人である。
5 少年の更生保護
保護観察処分少年の新規受理人員は、平成八年以降増加していたが、十一年から減少に転じ、十二年は五万一千七百一人(前年比四・〇%減)となっている。
少年院仮退院者は、昭和六十年代初めから減少傾向にあったが、平成九年以降増加に転じ、十二年は五千三百五十七人(前年比三・三%増)となっている。
保護観察処分少年及び少年院仮退院者の「再犯率」(保護観察期間中の再処分率)をみると、保護観察処分少年は平成九年以降上昇しており、十二年の保護観察処分少年の再犯率は一七・三%となっているが、少年院仮退院者は上昇・低下を繰り返しており、十二年は前年より一・一ポイント高い二三・六%となっている。
第四編 増加する犯罪と犯罪者
一 一般刑法犯の増加〜窃盗を中心として(第4表参照)
1 刑法犯の認知件数の増加と窃盗
刑法犯の認知件数は、昭和五十年以降、ほぼ一貫して増加を続け、平成七年以降は、五年連続して戦後最高の件数を更新し、前年と比べた増加率も一・二%、二・一%、六・八%、七・九%、一二・一%と急激に上昇している。平成十二年の刑法犯の認知件数は、昭和四十九年と比べて、百五十八万四千百四十四件増加しているが、そのうち百十一万八千十一件(七〇・六%)は窃盗の認知件数の増加によるもので、この間の増加率は一一〇・三%である。
2 認知件数から見た窃盗の主要手口
認知件数の推移を主要手口(最近の十年間で認知件数が連続して一万件を超えているもの)別にみると、侵入盗では、空き巣ねらい、事務所荒らしが、乗物盗では、自転車盗、オートバイ盗が、非侵入盗では、車上ねらい、自販機荒らし、部品盗、ひったくりの増加が著しい。
また、最近の特徴として、職業犯として敢行されることが多い、空き巣ねらいと事務所荒らしの反転増加である。
空き巣ねらいは、平成九年を底として増加に転じ、以後の三年間の増加率は四七・六%となった。事務所荒らしは、平成期に入ると増加傾向を示し、平成九年以降の三年間で五一・七%の増加をみせている。なお、ここ数年、空き巣ねらいや事務所荒らしでは、通称ピッキングと呼ばれている特殊な解錠道具を使用した犯行の件数が急増している。
そのほか職業犯的色彩の強い金庫破り(平成期で三五三・九%増)及びすり(ここ二年間で一六・七%増)、習慣化傾向の強い万引き(平成四年以降で六八・四%増)が、それぞれ増加している。
3 検挙件数・検挙人員からみた窃盗の犯行態様
検挙された被疑者を対象に、近年の窃盗の犯行態様を分析・検討すると、近年ひったくりや車上ねらいの共犯化が進む傾向がみられる。
空き巣ねらい、事務所荒らし、金庫破り、すり及び万引きの共犯態様をみると、万引きの共犯事案の構成比は減少しているが、空き巣ねらい、金庫破りの共犯事案の構成比は全体として高くなってきており、すりでは、五人以上の共犯事案すなわち集団すりの構成比が高くなっている。
また、検挙された窃盗犯の属性をみると、年齢層別構成比では二十歳代から四十歳代が減少又は横ばいであるのに対し、五十歳代以上の構成比の増加が顕著である。年齢層別検挙人員の増減を人口比(人口十万人当たりの比率)でみても、五十歳代は、平成四年の六二・九から十二年の八五・九へ、六十歳以上は、二年の三八・二から十二年の六六・四へといずれも一貫して増加している。
さらに、最近の十年間では窃盗前科者(窃盗により有罪判決を受けたことがある者)が増加し、十二年には九・五%に、また、再犯者(何らかの前科・前歴を有する者)が、平成期に入って増加傾向を示し、十二年には三〇%を超えた。
4 窃盗の検挙率・検挙件数
刑法犯の認知件数が戦後最高を更新し続ける一方、その検挙率は、平成十二年において、刑法犯全体で四二・七%、一般刑法犯で二三・六%、窃盗を除く一般刑法犯で五四・三%、窃盗で一九・一%といずれも戦後最低を更新した。
検挙件数でみると、窃盗を除く一般刑法犯の検挙件数に大きな推移はないが、窃盗の検挙件数は、平成四年以降、一時増加に転じたものの、十一年、十二年に急速に減少し、十二年には戦後最低を記録した。
検挙件数の増減を重要窃盗犯(警察庁が指定した治安情勢を観察する指標となる窃盗の手口)でみると、ひったくり、金庫破り等は、昭和六十三年を一〇〇とする検挙指数がおおむね増加傾向にあるのに対し、車上ねらい、自転車盗、オートバイ盗、空き巣ねらい及び万引きの五手口は検挙指数が昭和六十三年を大きく下回っている。これら五手口は、平成期における窃盗の検挙件数減少分三十八万五千五百六件の七三・九%(二十八万四千九百六十八件)を占めており、それがそのまま五手口の手口別検挙率に反映している。
検挙件数が増加しているひったくり等の手口についても、平成十年以降、検挙件数の減少が始まり、検挙率も急激に低下している。
5 検察庁及び裁判所における窃盗の処理状況
検察庁における窃盗の起訴人員は、昭和五十年から平成三年までは減少を続けたが、九年以降は一貫して増加を続けている。
また、窃盗により通常第一審で有罪判決を受けた者の刑期をみると、全体として一年未満と六月未満の構成比が大きく低下し、昭和五十年の三一・六%から平成十二年の一五・八%とほぼ半減した。その分、二年未満から十年以下までの各種構成比が上昇している。
その中では、実刑の言渡しを受けた者では、二年未満の刑期が半数近くを占め、執行猶予の言渡しを受けた者では、三年以下と二年未満の各構成比の上昇が顕著である。
その他の一般刑法犯についてもここで併せてみておくと、増加の顕著な強盗、傷害、強制わいせつ、器物損壊等の四罪種については、昭和五十年以降刑の長期化が認められる。また、これら四罪種のうち、強盗の実刑率は上昇しているが、その他の三罪種は、減少ないし横ばい傾向にある。
6 諸外国の犯罪動向との比較
一九九九年のアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス及び韓国の主要な犯罪動向と我が国のそれを比較・検討すると、認知件数や発生率はアメリカ等五か国の中で最も低いが、犯罪の検挙率では、ドイツに次いで二番目である。
窃盗についても、我が国は、アメリカ等五か国中、認知件数が最も低いものの、他の四か国の認知件数が減少傾向にある中で、我が国だけが増加傾向にあるため、次第に、フランスの認知件数に近づきつつある。これまで、トップであった検挙率も、ドイツに抜かれたことは、前記のとおりである。
二 交通犯罪
1 増加する交通事故
交通事故の発生件数及び負傷者数は、戦後激増し、昭和四十五、四十六年以降いったん減少傾向を示したが、昭和五十三年以降増加に転じ、平成十二年には、発生件数が、前年と比べ八万一千五百七十一件増(九・六%増)の九十三万一千九百三十四件、負傷者数が、十万五千三百人増(同六・〇%増)の百十五万五千六百九十七人と、いずれも前年に引き続き、戦後最高を更新した。
一方、交通事故による死亡者数は、平成五年以降減少傾向にあり、十二年は、前年より六十人増加して九千六十六人となっている。
2 交通犯罪の動向と処理状況
交通事故発生件数の急激な増加に伴い、交通関係業過の検挙人員は、ここ二年間で急増し、平成十二年では八十五万四百九十三人(前年比一一・二%増)と八十万人台を突破した。これに伴い、ひき逃げ事件の検挙件数も一万四千五十件となった。
交通関係業過の起訴人員は、平成十二年では、公判請求六千五百三十七人、略式命令請求八万六千六百四十三人となり、起訴人員総数に占める公判請求の割合も、七・〇%(前年比一・七ポイント上昇)となった。
また、通常第一審における業過の判決について、その言渡し刑期をみると、懲役・禁錮二年以上の刑期が占める比率が年々上昇している上、同二年を超える刑期の実刑率をみると、平成十年三七・八%、十一年四二・九%、十二年四五・三%へと年々上昇している。
3 諸外国の交通犯罪の動向
@ アメリカ
アメリカにおいては、交通事故の発生件数、死傷者数、いずれの項目においても、その数値が我が国と比較して格段に高い。
我が国とアメリカの人口十万人当たりの事故後三十日以内の死亡者数を、我が国で統計を取り始めた一九九三年以降について比べてみると、我が国では、一九九三年には約十一人であったが、以後ほぼ一貫して低下し、二〇〇〇年は約八人であるのに対し、アメリカは約十五人から十六人で推移している。また、人口十万人当たりの負傷者数は、アメリカは、一九八八年には、一千三百九十七人と我が国の約二倍であったが、以後ほぼ一貫して低下し、一九九九年には、一千百八十七人と我が国の約一・四倍にまで低下している。
A イギリス
イギリスにおいては、死亡者数及び人口十万人当たりの死亡者数が、一九九〇年代前半において急速に減少し、その後も減少傾向を示している。
一九九九年では、我が国の人口十万人当たりの事故後三十日以内死亡者数が八・二人であるのに対し、イギリスのそれは五・九人となっている。また、人口十万人当たりの負傷者数には顕著な減少傾向は認められないものの、一九八〇年代後半から我が国より低い値を示している。
B ドイツ
旧ドイツ民主共和国分を含む形となった一九九一年以降、事故発生件数及び負傷者数はほぼ横ばい、死亡者数は漸減となっている。
我が国で事故後三十日以内死亡者数の統計を取り始めた一九九三年から一九九九年までの人口十万人当たりの死亡者及び負傷者数をドイツのそれと比較すると、死亡者数はドイツが高くなっている反面、負傷者数は低くなっている。
C フランス
一九九〇年から一九九九年までの間のフランスにおける交通事故の発生件数及び負傷者数は、我が国の三〜四割と少ないが、死亡者数(事故後六日以内に死亡した人員)は約一万人と我が国との差は少ない。
D 韓国
一九九〇年以降、事故発生件数、死亡者数、負傷者数のいずれもほぼ横ばいを続けているが、一九九九年には、事故発生件数が一五・一%、負傷者数が一八・三%の増加を示している。人口十万人当たりの死傷者の比率をみると、負傷者については、我が国とほぼ同じであるのに対し、死亡者(事故後三日以内に死亡した人員)については、我が国の人口十万人当たりの二十四時間以内死亡者の約三倍となっている。
三 薬物犯罪
1 薬物犯罪の動向
覚せい剤事犯の送致人員は、平成七年以降増加傾向を示し、十二年には、前年比三・六%増の一万九千百五十六人となっている。年齢層別人口比でみると、二十歳代と三十歳代が高い。
また、大麻取締法違反や麻薬取締法違反の送致人員は、前年比で横ばいないし微減である。
2 大型・組織的事犯の動向
覚せい剤の押収量は、昭和六十三年から平成五年まで、おおむね減少傾向にあったが、六年から増加傾向に転じた上、一年当たりの押収量も数十キログラムから数百キログラムだったものが、十一年には約二千キログラム、十二年には約一千キログラムが押収されている。
また、麻薬特例法が適用される業として行う不法輸入等は、平成八年に二十五件と急増した後、二十件台で推移し、十二年には、過去最高の三十六件が検挙された。
3 薬物犯罪者の処遇
平成十二年では、薬物犯罪の起訴率が軒並み上昇し、覚せい剤取締法違反が九〇%の大台を超えて九〇・二%となり、大麻取締法違反が過去二十年間で最高の六八・二%となったほか、麻薬取締法違反が四年連続の上昇で七七・七%となった。
また、薬物犯罪のうち、覚せい剤取締法違反の送致人員中に占める再犯者の比率は極めて高く、平成十二年は四九・八%である。
1 来日外国人による犯罪の動向
外国人による交通関係業過を除く刑法犯検挙件数・検挙人員をみると、定着居住者(永住権を有する者等)等では、長期減少傾向にある。
しかし、来日外国人(我が国にいる外国人のうち、定着居住者、在日米軍関係者及び在留資格不明の者以外の者)についてみると、昭和五十五年には八百六十七件、七百八十二人であったものが、平成十二年には、検挙件数では約二十六倍の二万二千九百四十七件(前年比八・七%減)、検挙人員では約八倍の六千三百二十九人(同六・一%増)と大幅に増加している。
来日外国人の道交違反等交通関係を除く特別法犯の送致人員についてみると、昭和五十五年には、二千二百八十人であったが、平成十二年にはその約三倍の六千三百八十二人と増加している。
また、来日外国人の主要罪名別動向をみると、窃盗は、平成五年に急増した後、おおむね増加傾向を示しているが、十二年は前年より一〇・九%減少して一万九千九百五十二件となっている。国籍等別状況では、半数以上を中国人が占めている。
入管法違反は、平成十年をピークに以後減少が続き、十二年は五千八百六十二件で、内訳は、不法残留三千百十一件、旅券不携帯等一千七百二十五件の順に多い。なお、集団密航事件は、九年に一千三百六十人の検挙人員を数えたが、その後、激減し、十二年は百三人である。
薬物関係法令違反は、平成四年に急増した後、一千件台から一千二百件台で推移しており、十二年は一千五十一件である。国籍等別状況では、イランが約四分の一を占め、次いで、フィリピン、ブラジルの順に多い。
2 外国人犯罪者の処遇
平成十二年の検察庁における交通関係業過と道交違反を除く外国人犯罪者新規受理人員は、前年比一・二%減の二万一千三百十八人である。
このうち来日外国人の罪名別新規受理人員は、入管法違反(四四・三%)、窃盗(二二・一%)、覚せい剤取締法違反(四・六%)、傷害(四・四%)の順に多く、最近三年間では窃盗と傷害の比率が上昇している。国籍等別では、中国四二・一%、韓国・朝鮮一五・八%、フィリピン六・一%、ブラジル五・五%の順に多い。
平成十二年の交通関係業過と道交違反を除く来日外国人の検察庁終局処理人員は、一万六千二十二人であり、外国人全体の終局処理人員のうち、総数の七五・四%を占め、罪名別人員では、入管法違反七千八十二人、窃盗三千五百七十四人、傷害七百三十八人、覚せい剤取締法違反七百三十五人の順に多いが、外国人事件に来日外国人が占める比率では、入管法違反(九六・四%)、大麻取締法違反(九〇・三%)、売春防止法違反(七八・九%)、強盗(七八・七%)、文書偽造(七八・三%)の順に高い。
外国人事件の通常第一審有罪人員は、平成三年以降増加を続け、九年をピークに減少に転じたが、十二年では、七千七百四十人と三年の二・七倍の水準であり、外国人事件比は、九・九%である。
また、成人矯正では、F級新受刑者(日本人と異なる処遇を要する外国人で新たに受刑者となった者)が、過去三年間連続して急増し、平成十二年には一千八十二人と一千人の大台を超えた。F級新受刑者の罪名別では、窃盗(三四・二%)、入管法違反(一三・二%)、覚せい剤取締法違反(一二・二%)、強盗(一一・九%)の順に比率が高い。
◇冬至
暦の冬は立冬から翌年の立春前日までをいいますが、そのちょうど真ん中にあたる日(十二月二十一日ごろ)を冬至といいます。北半球では正午に太陽の高度が一年中で一番低く、昼の長さが最も短くなるときです。
気象的には冬はこのころからが本番です。北日本や山間内陸部は別ですが、関東以南で霜が降りたり氷が張ったりする気温になるのは、冬至が過ぎたあたりから。ことわざに言う「冬至冬なか冬はじめ」は、暦の上の冬と気象上の冬の関係をずばり表現していると言えるでしょう。
太陽が最南に位置する冬至は、古代中国の天体思想では太陽運行の出発点とされていました。冬至を太陽の誕生日とする考え方は西洋にもあり、イエスの生誕を祝うクリスマスも冬至に合わせて定められたと言われています。クリスマスの日付が二十五日なのは、天文学の知識不足のために日がずれたというのが定説です。
古代からの冬至の風習は、さまざまな形で今日に伝えられています。
小豆がゆ、カボチャ、コンニャクなど特定の食物を食べるのもその一つ。これはこの時期には珍しくなる野菜類を冬の祭りに供えた風習が受け継がれたものとされています。また、地方によっては冬至にレンコンやミカン、ダイコンなど「ン」のつく食物を七種類食べると運を呼ぶ、ゆず湯に入るとかぜをひかないなどの俗信があり、今に受け継がれています。
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税金365日 夫婦と税 ―パートと税―
一 パート収入があるとき
1 所得税
(1) パート収入に対する税
パート収入は、通常、給与所得となります。課税される所得は、パートの年収から、給与所得控除額(最低六十五万円)と基礎控除(三十八万円)等の所得控除を差し引いた残額です。
例えば、パート収入が百二十万円で所得控除が基礎控除だけの場合、課税される所得は十七万円となり、所得税は一万七千円(平成十三年分については定率減税が実施されているため一万三千六百円)となります。
(2) 配偶者にパート収入がある場合
【配偶者控除と配偶者特別控除】
夫に所得があり、妻がパートで働く場合を例に考えてみますと、夫が受けられる配偶者控除と配偶者特別控除は以下のとおりです。
妻のパート収入が百三万円までであれば、配偶者控除(三十八万円)が受けられます。
配偶者特別控除は、妻の所得によって調整されますが、最高額は三十八万円です。この控除はパート収入が百三万円を超えても百四十一万円未満であれば受けることができます。
ただし、夫の合計所得が一千万円(給与収入で約一千二百三十一万円)を超える年には受けることができません。
【パート収入と世帯の収入】
配偶者特別控除が設けられていますので、妻がパートで働いて百三万円を超える給与収入を得る場合でも、収入が増えるにしたがって夫の配偶者特別控除の額はなだらかに減少することとなります。
したがって、妻がパートで働いて一定額以上の収入を得ると、かえって世帯全体の手取りが減少するという「手取りの逆転現象」は、税の面では解消されています。
2 住民税
パートの年収が百万円以下ですと給与所得の金額が住民税(所得割)の非課税限度額(三十五万円)以下になりますので、住民税(所得割)はかかりません。
くわしくは市区町村の窓口におたずねください。
3 平成十一年以後の各年分の所得税の定率減税
パート収入は、通常、給与所得になりますので、定率減税の取扱いは一般の給与所得者と同じです。
二 内職などの収入があるとき
内職などの収入は、収入から必要経費を差し引いた残りが事業所得または雑所得となります。ただし、パート収入とのバランスを図るため、次のいずれにもあてはまる方については、必要経費が六十五万円に満たない場合は六十五万円(収入金額が限度)を必要経費として差し引くことができます。
@ 家内労働者、外交員、集金人、電力量計の検針人または特定の方に対して継続して労務の提供をする方
A 事業所得及び雑所得の必要経費と給与所得の収入金額の合計が六十五万円に満たない方
したがって、収入が内職だけの場合、年収が百三万円以下であればパート収入と同様に所得税はかかりません。
また配偶者控除や配偶者特別控除の適用についても、パート収入と同じ取扱いになりますので、百三万円を超えて働いても「手取りの逆転現象」は税の面では解消されています。
三 配偶者が財産をもらったとき
夫婦の間で居住用不動産または居住用不動産の購入資金の贈与があったときには、贈与税の申告をすれば基礎控除の百十万円のほかに最高二千万円までの配偶者控除が受けられます。
なお、この配偶者控除の適用を受けるためには、贈与税の申告書に配偶者控除の適用を受ける旨を記載するとともに、一定の書類を添付しなければなりません。
(注) この配偶者控除は、同じ配偶者間において一生に一度しか受けられません。
●要件
@ その夫婦の婚姻関係が二十年以上であること
A 贈与財産が国内にある居住用の土地や家屋であること(居住用の土地及び家屋の取得資金の贈与を含む)。
B 贈与を受けた年の翌年三月十五日までに贈与を受けた土地や家屋に実際に居住し、その後も引き続いて居住する見込みであること
●必要な添付書類
@ 財産の贈与を受けた日から十日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本または抄本及び戸籍の附票の写し
A 居住用不動産の登記簿の謄本または抄本(登記事項証明書)
B 居住用不動産を居住の用に供した日以後に作成された住民票の写し
(注) @に掲げる戸籍の附票の写しに記載されている住所が居住用不動産の所在場所である場合には、Bの住民票の写しの添付は必要ありません。
四 配偶者が財産を相続したとき
相続税は、遺産総額から亡くなった人(被相続人)の借金や未納の税金、葬式の費用などを差し引いた正味の遺産額から、さらに基礎控除額を差し引いた残りの額にかかります。
【配偶者の税額軽減(配偶者控除)】
配偶者に対する相続税については、財産の維持形成に対する内助の功や今後の生活の保障などを考慮して、軽減措置がとられています。
つまり、亡くなった人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、一億六千万円までか一億六千万円を超えていても、正味の遺産額(配偶者が取得する正味の遺産額のうち、隠ぺいまたは仮装に係る部分は除く)の法定相続分に相当する金額までであれば、配偶者に相続税はかかりません。
なお、この配偶者控除の適用を受けるためには、相続税の申告書に配偶者控除の適用を受ける旨を記載するとともに、次の書類を添付しなければなりません。
●必要な添付書類
@ 戸籍の謄本(相続の開始の日から十日を経過した日以後に作成されたものに限る)
A 遺言の写し、遺産分割協議書の写し、その他の財産の取得の状況を証する書類(生命保険金や退職金の支払通知書など)
(注) 「遺産分割協議書」には、定められた様式はありません。だれがどの遺産をどれだけ相続するかを書き出し、相続人全員が合意した旨の実印を押して作成します(印鑑証明書の添付が必要)。
◇寒波到来
十二月下旬には、冬型の気圧配置が強まり、強い季節風が吹き、日本海側を中心に、“クリスマス寒波”や“年末寒波”と呼ばれる大荒れの天気になることがあります。帰省などで交通機関を利用する人も増え、年末年始休暇を利用した冬山登山も多くなるこの時期には、各地の気象台が発表する注意報・警報、気象情報に十分注意してください。
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