官報資料版 平成13年10月31日




                  ▽警察白書のあらまし…………………………………………………警 察 庁

                  ▽毎月勤労統計調査(八月)…………………………………………厚生労働省

                  ▽月例経済報告(十月)………………………………………………内 閣 府

                  ▽家計総世帯集計・単身世帯収支調査結果(四〜六月期)………総 務 省

                  ▽個人債務者の再生手続について……………………………………最高裁判所











警察白書のあらまし


―二十一世紀を担う少年のために―


警 察 庁


第一章 非行のない社会を築くために

 少年非行は、戦後から現在に至るまで、その時々の社会経済情勢、国民の意識や生活様式の変化に応じて、増減を繰り返してきた。また警察は、時代の変遷の中で少年非行と向き合い、その原因・態様に対応した様々な取組みを行ってきた。
 近年、少年非行の情勢は、凶悪犯及び粗暴犯の増加が著しく、非行の凶悪・粗暴化の状況がうかがわれる。特に平成十二年には、社会を震撼させる特異・重大事件が発生するなど極めて憂慮すべき状況にある。
 他方、児童虐待が深刻な社会問題となるとともに、犯罪やいじめによる被害少年が増加している。このような状況の下、国民は、将来を担う少年にかかわる問題に大きな不安を感じ、危機感を抱いている。
 第二次ベビーブーム以降、社会全体の少子化によって、総人口に占める二十歳未満の少年の割合は昭和二十五年には四五・七%であったものの、平成十二年には二〇・六%にまで減少している。しかし、刑法犯少年の検挙人員が、刑法犯総検挙人員に占める割合は、昭和二十五年には、二三・六%であったのが、平成十二年には四二・七%を占めるまでに至っており、少年犯罪が我が国の犯罪情勢に及ぼす影響は次第に大きくなっている。
 このような状況は、人口比(同年齢層の人口千人当たりの検挙人員をいう)によって、成人と少年とを比較した場合、より一層明らかである。すなわち、成人の刑法犯の人口比は、成人人口の増加及び成人検挙人員の減少により戦後一貫して下降したが、少年の刑法犯の検挙人員及び人口比は高い水準のまま推移してきている。平成十二年においては、二十歳以上の成人の推計人口は一億八十万八千人で、成人の刑法犯の人口比が一・八であるのに対して、十四歳から二十歳未満の少年の推計人口は八百八十六万二千人で、少年の刑法犯の人口比は一四・九であり、実に、成人の八・三倍にも達している。
 少年犯罪の態様についてみると、凶悪犯、とりわけ強盗の検挙人員が急増しており、加えて、それまで非行を行ったことのない少年がいきなり重大な非行を引き起こす事例が少なくない。また、路上強盗、恐喝、ひったくり等の「手っ取り早く」金銭を得る目的の路上での犯罪が多発している。多くの国民が少年犯罪の不安を身近なものとして感じている背景には、このような状況があると考えられる。
 警察は、国民の不安を軽減させ、安心して暮らせるようにするため、国民の期待に応えて真摯に対応する必要があり、その際、少年非行の情勢の分析が必要である。検挙人員の推移等の量的な分析にとどまらず、現在の少年非行の実態及び特徴を的確にとらえ、その背景・原因まで分析することにより、適切な対応が可能となる。
 警察庁では、少年による重大事件の実態等を探るため、各都道府県警察に対して、平成十二年中に人を死に至らしめる犯罪で検挙された少年二百一人についての特別調査を行った。
 その結果、被疑少年の約四割に、何らかの前兆的行動が認められた。また、平成十三年二月から三月にかけて、強盗、恐喝及びひったくり事件で検挙された少年のうち三百七十一人について特別調査を行った結果、被疑少年の間に、これらの犯罪行為は金銭を得るための安易な手段であるという認識があることがうかがわれた。
 さらに、少年非行一般の背景としては、少年の規範意識の希薄化、家庭や学校の在り方、地域社会の少年問題への無関心、少年を取り巻く環境の悪化等の要因が複雑に絡み合っているものと考えられる。
 警察としては、少年の非行を防止し、少年を犯罪から守るため、平成九年に「少年非行総合対策推進要綱」を定めて諸対策に取り組んでいる。
 さらに、最近の諸情勢を踏まえて少年事件捜査力の充実強化を図り、少年サポートセンターを中心とした非行防止活動を行うとともに、被害少年対策や児童虐待対策、児童買春・児童ポルノ事犯対策等の少年保護対策についても積極的に推進している。
 少年を取り巻く問題への対応には、次代の我が国を担う少年の健全育成、ひいては将来の我が国社会の在り方がかかっていると言っても過言ではない。新しい世紀を迎えた今、警察においても、関係機関・団体と連携して、社会と一体となった取組みをこれまで以上に強力に推進しなければならない。

第一節 少年警察の取組み

 少年非行をはじめとする少年を取り巻く問題に対応し、少年の健全な育成を図るため、少年の特性に配慮した対応の仕組みが用意されている。
 少年法は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うことなどを目的としており、非行のある少年に対する家庭裁判所の審判の手続等を定めている。
 また、少年の非行を防止し、少年を保護するための体制として、警察をはじめとする関係機関・団体が、それぞれの立場から取り組んでいる。特に、警察においては、少年の非行の防止を図り、その健全な育成に資するとともに、少年の福祉を図ることを目的とする警察の活動を「少年警察活動」と呼んで、重点的に取り組んでいる。

一 少年警察の対象

 少年法では、二十歳に満たない者が少年とされており、「非行少年」に対する審判手続等の処遇を定めている。「非行少年」とは、「犯罪少年」、「触法少年」及び「ぐ犯少年」をいい、それぞれ異なる手続が用意されている(第1図参照)。
 警察では、非行少年を適切に処遇しているほか、警察庁において策定した「少年警察活動要綱」に基づき、「不良行為少年」の補導や、「要保護少年」及び「被害少年」の保護を行い、少年の健全育成に努めている。

(一) 非行少年
 「犯罪少年」とは、十四歳以上の犯罪行為をした少年であり(少年法第三条第一項第一号)、警察では、平成十二年中に十四万八十三人を検挙した。
 「触法少年」とは、十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年である(少年法第三条第一項第二号)。触法少年の行為は、犯罪とはならない。警察では、平成十二年中に二万七百六十二人を補導し、このうち五千百八人を児童相談所等へ通告した。
 「ぐ犯少年」とは、刑罰法令に該当しない「ぐ犯事由」(注)があって、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年である(少年法第三条第一項第三号)。警察では、平成十二年中に一千八百八十七人を家庭裁判所へ送致し、又は児童相談所等へ通告した。
 (注) ぐ犯事由とは、次に掲げる事由である。
   @ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
   A 正当の理由がなく家庭に寄りつかないこと
   B 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入りすること(例えば、暴力団員との交際やストリップ劇場への出入り)
   C 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること(例えば、繁華街をはいかいしながら、少女等を誘って不純異性交遊を繰り返すこと)

(二) 非行少年の処遇
<非行少年の取扱いの流れ>
 警察において犯罪少年を検挙した場合、事件が罰金以下の刑に当たる犯罪であるときは事件を直接家庭裁判所に送致し、それ以外であるときは検察官に送致する。
 事件の送致を受けた検察官は、捜査を遂げた上、犯罪の嫌疑があると認めるときは、それを家庭裁判所に送致する。
 家庭裁判所では、送致を受けた事件について、犯罪事実の存否はもとより、少年や保護者の環境等についても心理学等の専門的知識を活用して調査する。調査の結果により、審判開始、審判不開始、検察官送致等の決定がなされ、審判が開始された場合は、保護観察、少年院送致等の保護処分や不処分等が決定される。
 検察官送致とは、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、家庭裁判所が刑事処分相当と判断した場合の措置で、送致を受けた検察官により刑事裁判手続に移行される。検察官から家庭裁判所に送致する場合と対比して、これを一般に「逆送」という。
 なお、警察において捜査した少年事件について、事実が極めて軽微で再犯のおそれがなく、刑事処分又は保護処分を必要としないと明らかに認められ、かつ、検察官又は家庭裁判所からあらかじめ指定されたものについては、簡易な送致手続が認められている。家庭裁判所では、このような事件については、書類審査の上、原則として審判不開始決定を行っている。
 十四歳未満の少年については、児童福祉法による措置が少年法による措置に優先して行われることとされており、警察において触法少年を補導した場合に、その少年に保護者がいないときや、保護者に監護させることが不適当であると認められるときは、福祉事務所又は児童相談所に通告しなければならない。また、通告の必要がない場合には、警察において少年及びその保護者に指導や注意、助言を与えるなどの措置をとっている。家庭裁判所は、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、事件について調査し、審判開始等の決定をする。
 警察において十四歳未満のぐ犯少年を補導した場合には、触法少年と同様の措置をとることとなる。十四歳以上十八歳未満のぐ犯少年を補導した場合、児童福祉法による保護手続にゆだねるのが適当であると認められるときは、福祉事務所又は児童相談所に通告し、少年法による保護手続により取り扱うことが適当であると認められるときは家庭裁判所に送致する。十八歳以上のぐ犯少年を補導した場合には、家庭裁判所に送致する。
<非行少年の終局決定別人員>
 平成十二年中の非行少年の終局決定別人員は、次のとおりである(第1表参照)。
 家庭裁判所の終局決定総人員(簡易送致人員は含まない)は七万六千七百三十七人で、そのうちの三万七千七十一人(四八・三%)が審判不開始、一万四千五百五十九人(一九・〇%)が不処分となっており、合わせて五万一千六百三十人と終局決定総人員の七割近くを占めている。
 審判不開始及び不処分の理由には、調査又は審判の過程における指導、訓戒により少年の要保護性が解消した場合の「保護的措置」、既に別件で何らかの保護処分等が講じられており、これにゆだねるのが相当な場合の「別件保護中」、非行事実が極めて軽微で、特別な措置を行う必要のない場合の「事案軽微」、非行事実の存在について合理的疑いを超える心証が得られない場合の「非行なし」などがある(注)。
 保護処分となった少年のうち、在宅による指導措置である保護観察に付された少年は一万八千二百八十人(二三・八%)、強制的に収容して矯正教育を行う措置である少年院送致となった少年は五千五百四十一人(七・二%)である。その一方で、刑事処分相当とされた逆送に係る人員は三百二十二人(〇・四%)である。
 (注) 「保護的措置」は四万六千七百二十一人、「別件保護中」は三千七百九十九人、「事案軽微」は六百五十七人、「非行なし」は百三人となっている。

(三) 不良行為少年
 「不良行為少年」とは、非行少年には該当しないが、飲酒、喫煙、深夜はいかい等、自己又は他人の徳性を害する行為をしている少年である。
 警察では、関係機関・団体、ボランティア等との連携による積極的な街頭補導等を通じて、不良行為少年やその家庭への指導、助言に努めている。平成十二年中には、飲酒、喫煙等の不良行為事由のある少年、八十八万五千七百七十五人を補導した。

(四) 要保護少年
 「要保護少年」とは、保護者等から虐待され、酷使され、又は放任されている少年、その他児童福祉法による福祉のための措置等が必要と認められる少年である。
 警察では、要保護少年を発見した場合には、福祉事務所又は児童相談所に通告するなど、少年の福祉のために必要な措置をとっている。

(五) 被害少年
 「被害少年」とは、犯罪その他少年の健全な育成を阻害する行為により被害を受けた少年である。
 警察では、被害少年にカウンセリングを実施するなど、その支援に努めている。

二 少年警察の体制及び関係機関

(一) 少年警察の体制
 平成十三年四月現在、全国で約八千六百人の警察官(このうち約三千八百人が少年警察活動に専従している)が、少年の非行防止、少年事件捜査、少年の福祉を害する犯罪の取締り、被害少年の保護等の職務に従事している。このうち、都道府県警察本部には約一千三百人、警察署には約七千三百人の警察官が勤務している。また、十三年四月現在、全国で約九百九十人の警察官以外の警察職員が、少年補導職員として、少年警察活動のうち、少年相談、被害少年の保護、街頭補導、有害環境の浄化等の活動に従事している。
 それ以外に、平成十三年四月現在、全国で約百人の、心理学、教育学、社会学その他の少年相談に関する専門的知識を有する警察官以外の警察職員が、少年相談専門職員として、複雑な少年相談事案の処理、少年相談を担当する職員に対する指導等の活動に従事している。
 このほか、警察では、少年の非行を防止し、その健全育成を図るため、平成十三年四月現在、約五万七百人の少年補導員、約一千百人の少年警察協助員、約五千九百人の少年指導委員をボランティアとして委嘱している。

(二) 関係機関
 児童福祉法に基づいて設置される機関のうち、少年警察と大きなかかわりを持つものは、児童相談所、児童自立支援施設、児童養護施設の三つである。
 児童相談所は、児童に関する各般の問題について家庭その他からの相談に応じるとともに、児童及びその家庭について必要な調査、児童の一時保護等の業務を行っている。
 児童自立支援施設は、不良行為をする児童、家庭環境等の事情により生活指導等を必要とする児童等を、入所させ又は保護者の下から通わせて、個々の児童に応じた指導を行い、自立を支援することを目的とする施設である。
 児童養護施設は、保護者のいない児童、虐待されている児童等の環境上養護を必要とする児童(一歳未満の乳児を除く)を入所させて養護し、あわせて自立を支援することを目的とする施設である。
 児童福祉法に基づいて設置される機関以外のものとしては、少年法で定める少年の保護事件の審判を行う家庭裁判所、少年法の規定により送致された少年を収容するとともに、その資質の鑑別等を行う少年鑑別所、家庭裁判所から送致された少年等を収容し矯正教育等を行う少年院、いわゆる逆送による刑事裁判において懲役又は禁錮の刑の言渡しを受けた少年を収容して刑を執行する施設である少年刑務所がある。

第二節 少年非行や犯罪被害等の状況

一 少年非行等の状況

(一) 少年非行の推移
 少年法が施行された昭和二十四年以降の刑法犯少年の検挙人員・人口比は、その時々の社会情勢等を反映して増減を繰り返してきた(第2図参照)。
 終戦直後は、経済的窮乏、極度にひっ迫した食料事情及び社会的混乱によって少年非行は激増した。この時期の少年による刑法犯は、十八歳及び十九歳の年長少年、とりわけ、有職少年、無職少年による窃盗、強盗、詐欺等の財産犯が中心で、刑法犯少年の検挙人員は、昭和二十六年には十二万六千五百十九人に達した。
 昭和三十年代は、急速な経済成長に伴う都市化の進展、都市への人口集中、享楽的風潮の高まり等、少年非行を誘発しやすい社会構造への変化を背景として非行が急増した。この時期の少年による刑法犯は、十四歳及び十五歳の年少少年による凶悪犯・粗暴犯が目立ち、刑法犯少年の検挙人員は、昭和三十九年には十五万一千三百四十六人に達した。
 昭和五十年代は、高度経済成長により欧米と並ぶ経済的豊かさを達成した。しかしその中で、社会の連帯意識の希薄化、核家族化、価値観の多様化が進み、また、少年の間にせつな的な風潮や、克己心の欠如という現象が広まったほか、少年を取り巻く有害環境が拡大したことを背景として、少年非行が激増した。
 昭和五十八年には刑法犯少年の検挙人員が十九万六千七百八十三人とピークを迎えた。この時期における少年非行の特徴は低年齢化と一般化であり、また、初発型非行(万引き、オートバイ盗、自転車盗及び占有離脱物横領)に加えて、校内暴力、暴走族等の粗暴性の強い非行が著しく増加した。
 現在は、平成八年ころから始まる少年非行の多発期にあり、平成十二年の刑法犯少年の検挙人員は十三万二千三百三十六人に上る。

(二) 最近の少年非行等の状況
 最近の少年犯罪は、社会を震撼させた特異・重大事件に象徴される凶悪・粗暴な非行の深刻化、安易に金銭をねらう犯罪の多発等、厳しい状況にある。
 平成十二年中の刑法犯少年の検挙人員は十三万二千三百三十六人(前年比九千三百八十五人(六・六%)減)となっており、二年連続して減少した。また、成人を含む刑法犯総検挙人員に占める少年の割合は四二・七%(前年比二・二ポイント減)、刑法犯少年の人口比は一四・九(前年比〇・七ポイント減)である。
 また、平成十二年中の特別法犯少年の検挙人員は七千七百四十七人(前年比一千六十四人(一二・一%)減)となっており、法令別では、毒物及び劇物取締法違反が四千二百八十九人、覚せい剤取締法違反が一千百三十六人、軽犯罪法違反が五百九十六人等となっている。
 成人を含む特別法犯総検挙人員に占める少年の割合は一一・八%(前年比〇・五ポイント減)、特別法犯少年の人口比は〇・八七(前年比〇・一ポイント減)である。
<凶悪・粗暴な非行の深刻化>
 平成十二年は、少年による特異・重大事件が相次いで発生し社会を震撼させた。
 近年、多くの国民が少年非行に不安感を持つ要因として、特段の問題が見当たらないと平素から思われていた少年がいきなり人を殺傷し、しかもその動機が常識からは理解しがたいといった事件が発生している点があるとみられる。
 警察庁は、平成十年一月から平成十二年五月までに発生した事件のうち、少年による特異・凶悪な二十二事件(犯罪少年二十五人)について、その前兆等を調査し、平成十二年十二月にその結果を公表した。
 それによると、周囲からは特段の問題が見当たらないと平素から思われていた少年の多くに、背景として、犯罪やいじめの被害、学校における孤立、不登校、怠学、引きこもり等の経験がみられ、また、犯行の一年くらい前から、暴力行為、粗暴行為、刃物の携帯や収集等の問題行動、周囲の人への犯行のほのめかし、悩みの相談等の前兆とみられる言動があったことが明らかになった。
 警察庁では、殺人(未遂を含む)、強盗殺人(未遂及び強盗致死を含む)及び傷害致死の三つの罪種を「人を死に至らしめる犯罪」としている。また検挙人員は、統計上確認できる昭和四十一年(四百四十六人)から減少傾向にあったが、昭和五十五年(七十二人)を底に、年ごとの増減は大きいもののおおむね増加傾向となり、平成十年は二百八十四人(人口比〇・〇三一)、平成十二年には二百一人となっている。
 人を死に至らしめる犯罪は、元来、成人の方が少年より人口比が高い類型の犯罪であったが、平成五年以降は一貫して少年の人口比が成人を上回っている。警察庁は、平成十二年中に人を死に至らしめる犯罪により検挙された少年二百一人(殺人百五人、傷害致死七十八人、強盗殺人十八人)について、少年の背景、前兆的行動等の実態に関する調査を平成十三年二月から三月にかけて行った。この調査は、調査担当者が当該事件を担当した捜査官から調査項目について聞き取りを行うなどして行ったものである。
 ・少年自身について
   警察によって調査の対象となった犯行以前に検挙又は補導されたことがある少年は百二十八人、一度も検挙、補導されたことがない少年は七十三人であった。
 ・少年を取り巻く環境・背景
   暴走族等の不良グループとのかかわりあいについては、不良グループとの関係がないと認められる少年は五十六人に過ぎなかった。
   犯罪やいじめ等の何らかの被害経験の有無については、いじめの被害に遭ったことがあると認められる少年は十九人、犯罪の被害に遭ったと認められる少年は十人、家族からの暴力・虐待を受けたことがあると認められる少年は二十二人であった。
   他人とうまく付き合うことのできない対人不適応の状況については、不登校や怠学の経験があると認められる少年は百二人、孤立経験があると認められる少年は二十五人、引きこもりの経験があると認められる少年は八人であった。また、自殺企図の経験があると認められる少年は四人であった。
 ・犯行の動機等
   犯行の動機についての担当捜査官の判断は、「被害者への激高」が八十七人と最も多く、次いで「強さの誇示」が二十七人、「金品目的」が二十一人、「被害者への復讐」が二十人の順であった。
 ・犯行の前兆的行動
   犯行前に何らかの前兆的行動があったと認められる少年は七十六人に上る。
   そのうち、犯行類似行動が認められた少年は三十五人、犯行準備行動が認められた少年は十五人、犯行のほのめかしや不審・特異な言動を家族等に漏らしていたと認められる少年は二十八人、自分の持つ不安や悩み、苦しみを言動等に表していたと認められる少年は二十四人であり、また、調査の対象となった事件以前に、刃物を携帯・収集・使用していたと認められる少年は二十六人であった。
<多発する金銭目的の暴力的な犯罪>
 最近、少年による強盗、恐喝及びひったくりが増加傾向にある。
 平成十二年中に強盗で検挙した少年は一千六百三十八人(前年比二十七人(一・七%)増)となっており、二年連続して増加した。凶悪犯少年の検挙人員のうち、強盗犯の検挙が最も多く、凶悪犯少年の総検挙人員に占める割合も七割を超えている。
 平成十二年中に恐喝で検挙した少年は六千七百十二人(前年比一千二人(一七・五%)増)となっている。
 ひったくりの認知件数は近年急激に増加しており、平成十二年には四万六千六十四件となっている。
 少年の検挙人員も急激に増加しており、平成三年には六百八十二人であったものが、平成十二年には二千七百十九人と約三・二倍になっており、二年連続で二千人を超える高い水準にある。また、十二年の成人を含めた総検挙人員三千七十二人のうち少年の占める割合が約七割となっている。
 ひったくりは、強盗等の凶悪犯に発展するおそれのあるものや組織的に敢行されるものが多く、平成十二年八月、警察庁では、少年等によるひったくりを、組織的に敢行される自動車盗等とともに特定重要窃盗犯に指定し、対策を強化することとした。
 警察庁は、平成十三年二月二十六日から三月二十七日までの間に全国で強盗、恐喝及びひったくりにより検挙された少年六百八十四人(強盗百二十人、恐喝四百二十六人、ひったくり百三十八人)について、少年に対する聞き取り等により、動機・背景等に関する調査を平成十三年二月から三月にかけて行った。
 このうち、犯行を否認するなど調査に対して真実を話すことを期待できない少年を除いて、三百七十一人(強盗七十人、恐喝二百二十六人、ひったくり七十五人)から回答を得た。
 ・少年自身について
   警察によって調査の対象となった犯行以前に検挙又は補導されたことがある少年は二百六十三人、一度も検挙、補導されたことがない少年は百八人であった。
 ・少年を取り巻く環境
   暴走族等の不良グループとのかかわりあいについては、関係がないと回答した少年は八十七人にとどまっている。
   犯行に影響を与えた環境についての回答(複数回答)は、「暴走族・不良グループ等の影響」が百五十人と最も多く、次いで「メディアの影響」が四十人であった。
 ・犯行の動機等
   犯行の動機についての回答(複数回答)は、強盗、恐喝、ひったくりとも「金品目的」が最も多く、強盗で五十九人、恐喝で百九十七人、ひったくりで七十二人であった。このほか、「被害者への激高・憎悪・復讐等」が強盗で十二人、恐喝で三十二人、ひったくりで〇人、「強さの誇示・快感・ストレス発散・いじめ目的等」が強盗で六人、恐喝で三十人、ひったくりで二人であった。
   最近数か月のお金の主な使途についての回答(複数回答)は、「飲食」が二百三十五人と最も多く、次いで「ゲームセンター」が百六十一人、「携帯電話」が八十三人、「カラオケ」が八十一人の順となっており、遊興目的の使途が多い。また、十四人が「先輩・不良グループ・暴走族等に上納・会費」と回答した。
   さらに、犯行に対する意識・考えについては、「悪いことをしたという意識があり、反省している」と回答した少年が二百二十九人である一方、「悪いことをしたという意識はあったが、反省していない」が九十八人、「悪いことをしたという意識がほとんどない」が四十三人となっており、罪を犯しながら罪悪感を持たず、あるいは反省していない少年が約四割に及んだ。

二 犯罪等による少年の被害の状況

(一) 少年を被害者とする刑法犯、少年の福祉を害する犯罪
 少年が被害者となった刑法犯の認知件数は、昭和五十九年に二十万一千六百五十一件であったのが、七年連続して増加し、平成三年には三十七万九千九百三十九件に達した。その後、平成十一年まで減少傾向で推移したが、平成十二年には三十五万二千七百五十三件(前年比一二・三%増)と、急激な増加をみせた。
 このうち凶悪犯についてみると、平成三年は一千二百六十件で、以後緩やかに減少したが、平成八年以降増加に転じ、平成十二年には一千九百十六件(前年比一九・八%増)となっている。
 福祉犯とは、少年を虐待し、酷使し、その他少年の福祉を害し、又は少年に有害な影響を与える犯罪である。
 福祉犯の被害少年数の推移は、昭和五十四年以降、六年連続して増加し、昭和六十年には二万一千五百九十二人に達したが、その後は減少傾向にあり、平成十二年には八千二百九十一人となっている。

(二) 児童買春・児童ポルノ事犯
 児童買春や児童ポルノは、児童の権利を著しく侵害し、児童の心身に有害な影響を及ぼすものであり、警察は、平成十一年十一月に施行された児童買春・児童ポルノ法に基づく取締りを積極的に推進している。
 児童買春・児童ポルノ法施行以降、平成十一年中の児童買春事犯の検挙件数は二十件、検挙人員は二十人であった。
 その中には、女子児童が小遣い銭ほしさにグループを作り、テレホンクラブを利用して、いわゆる援助交際を繰り返すような事案もみられた。また、インターネット上におけるいわゆる出会い系サイトの掲示板等を利用して女子児童と接触を持って買春する者もおり、今後、このような児童買春事犯の増加が懸念される。
 児童買春・児童ポルノ法施行以降、平成十一年中の児童ポルノ事犯の検挙件数は十八件、検挙人員は二十二人であった。

(三) 児童虐待
 近年、児童虐待が深刻な社会問題となっており、平成十二年十一月には児童虐待の防止等に関する法律(以下「児童虐待防止法」という)が施行された。また、児童虐待に関する相談の受理件数、事件の検挙件数も増加している。
 平成十二年中の警察の少年相談窓口における児童虐待に関する相談の受理件数は一千三百四十二件で、前年に比べて四百十八件増加した。これは、統計を取り始めた平成六年の約十一倍となっている。
 十二年中の児童虐待事件の検挙件数は百八十六件、検挙人員は二百八人で、前年に比べて六十六件、七十八人それぞれ増加した。これらの事件による被害児童は百九十人で、前年に比べて六十六人増加しており、そのうち四十四人(前年比一人減)が死亡した。
 平成十二年の態様別検挙状況をみると、身体的虐待が百二十四件と最も多く、次いで性的虐待が四十四件、保護の怠慢・拒否が十八件の順となっている。

第三節 少年の健全育成を妨げる背景と課題

一 少年を取り巻く社会環境

 近年における生活様式の変化、情報化の進展、性の商品化の風潮の高まり等により、少年を取り巻く社会環境は大きく変化している。
 今日、成年、未成年を問わず、深夜型の生活様式が一般化していると言われる。
 塾通い等の増加により、夜間に少年が外出していることが一見して不自然とはいえない状況もみられ、社会的に深夜はいかいへの抵抗感が薄れていると考えられる。
 また、急激な情報化の進展として、携帯電話及びPHSは、少年の間に相当程度普及している。さらに、インターネットの普及は、生活に多大な便益を提供する反面、適正に利用されなかった場合の悪影響も懸念される。最近は、インターネット上で異性間の出会いの場を提供する電子掲示板、チャット等のいわゆる出会い系サイトが多数あり、好奇心からこれらを利用した女子少年が児童買春の被害に遭った事件もみられる。このほか、少年による性の逸脱行為の背景には、自己の性欲のために少年を食い物にし、児童買春等を行う大人の存在がある。
 最近の検挙事例では、児童買春の相手となった少女をビデオ撮影し、インターネットを通じて販売していた事案もみられる。また、いわゆるテレホンクラブや性風俗特殊営業等の性を売り物にする営業の氾濫は、女子少年の性の逸脱行為や福祉犯被害のきっかけになるおそれが高いものである。

二 少年の規範意識の希薄化等

 科学警察研究所が平成十一年にまとめた「少年の規範意識に関する研究」によると、社会的逸脱行動に対する許容性に関して、万引き、喫煙等の事項別に「絶対にしてはいけない」と回答した少年の割合を、平成元年と平成十一年とで比較すると、一般群・非行群ともに、全項目で平成十一年の方が許容的になっている。特に、不良行為については犯罪に比べて許容性の高さが顕著であり、平成十一年の方が大幅に許容的となる傾向にある。
 また、少年の規範意識の希薄化以外にも、家庭や学校の在り方、地域社会の少年問題への無関心が問題となっている。

第四節 少年の健全育成を図るための総合的な取組み

一 「強くやさしい」少年警察の運営

 平成九年八月、警察庁は、今後の少年警察の運営の指針として「少年非行総合対策推進要綱」を制定した。
 同要綱では、「強くやさしい」少年警察運営を基本方針として、少年事件等に係る捜査力を強化し、悪質な非行や少年の福祉を害する犯罪には厳正に対処するとともに、少年を非行から守り、これを保護するため、被害少年対策等の諸対策を積極的に推進していくこととしている。

二 少年事件捜査力の充実強化

 凶悪・粗暴化し、かつ複雑・困難化する少年事件に対し、各都道府県警察本部では、少年事件担当課に少年事件捜査指導官を設置して、少年の特性及び少年審判の特質を踏まえ、非行事実の厳密な立証の徹底等の指導に当たらせている。
 また、平成十三年六月までに、全国の都道府県警察本部に少年事件特別捜査隊等を設置し、警察署捜査員と連携した捜査活動を行い、捜査力の集中投入による迅速・的確な捜査に努めている。

三 少年サポートセンターを中心とした非行防止対策等の活動

 少年の非行を防止し、その健全育成を図るためには、非行の入口となり得る不良行為を早期に認知すること、非行少年、不良行為少年及びその家族に対して早期の指導・助言を行うこと、少年の規範意識の形成を促すこと、少年非行等に対する社会全体の問題意識を醸成することが重要である。また、少年が犯罪等による被害を受けた場合には、被害少年及びその家族に対し、早期の支援を行うことが重要である。
 こうした活動は、専門的知識を有する者が継続的に行うことが必要であるため、警察は、平成十年から、少年補導職員や少年相談専門職員を中核とする少年問題に関する専門組織である「少年サポートセンター」の設置を進め、平成十二年までに、全都道府県警察に設置した。
 少年サポートセンターは、警察本部所在地及び主要な都市を中心に設置され、学校関係者等との共同での補導活動の強化、関係機関・団体等とのネットワークの構築、少年やその家族等に対する支援活動の充実強化、広報啓発のための情報発信活動の充実強化等に取り組んでいる。
 また、少年サポートセンターを設けるに当たっては、少年や保護者等の心情に配慮して、警察施設以外の場所への設置を進めており、警察施設に設置する場合でも専用の出入口や相談室を設ける等の配慮を行っている。
 このほか、警察では、少年の地域社会の活動への参加の促進、少年警察ボランティアと連携して地域に密着したきめ細かな街頭補導活動の展開等を行うとともに、被害少年支援活動も効果的な連携体制に基づいて継続的に行っている。

四 少年の保護対策の推進

 人格形成期にある少年が、犯罪、いじめ、児童虐待等による被害を受けた場合、その心身に受ける傷が大きく、その後の非行や問題行動の原因となるケースもある。そのため、警察では、少年の保護対策を重要な任務と位置付け、被害少年の支援体制の整備・充実、カウンセリング等の継続的支援の実施、関係機関との連携の強化、警察職員に対する指導、教養等を行っている。
 また、児童虐待問題を少年保護対策の重要課題の一つとして位置付け、児童虐待防止法の趣旨を踏まえ、児童虐待の早期発見と事件化に努めるとともに、児童虐待防止法による警察官の援助の要請を受けた場合には、事案に即した適切な援助を行うよう努めている。
 児童買春・児童ポルノ事犯に対しては、警察は、徹底した取締りに加え、国際協力及び被害児童の保護を推進している。

五 有害環境浄化対策

 少年を取り巻く環境は大きく変化しており、テレホンクラブ等の性を売り物とする営業の増加、カラオケボックス等の深夜営業する娯楽施設の増加、インターネットをはじめとする各種メディアによる性や暴力に関する有害情報の氾濫等は、最近の少年非行の深刻化と少年犯罪被害の増加の背景の一つとなっている。
 警察では、関係機関・団体や地域住民と連携して、これらの有害環境の実態を把握し、性を売り物とする営業に対する指導取締り、有害図書販売の取締り等による少年に対する有害情報の氾濫の抑止、深夜の遊興や不良行為を助長する環境の浄化、少年に対する暴力団等の影響の排除等の対策を推進している。

六 少年の薬物乱用防止対策

 少年による薬物乱用は、依然として高い水準にある。警察では、覚せい剤等の供給源に対する取締りの強化、薬物乱用少年の発見・補導等の強化、教育委員会や学校等との連携の強化、家庭や地域に対する広報啓発活動の強化を四本柱として、少年の薬物乱用防止のための総合的な対策を推進している。

第二章 生活安全の確保と警察活動

 平成十二年には、市民生活の安全と平穏を脅かす様々な問題が発生した。
 例として、ストーカー事案の増加、道路、公園、駐車場・駐輪場、共同住宅等における犯罪の増加、少年非行の深刻化、一般市民が被害者となる発砲事件、大量の覚せい剤密輸事件、景気が低迷する中での多重債務者の弱みにつけ込む金融事犯、悪質な産業廃棄物事犯等が挙げられる。
 警察では、これらの状況に的確に対応するため、地域の「生活安全センター」としての交番の基盤整備、相談体制の一層の整備・充実、地域住民・企業・地方公共団体・NPO等との協働による地域安全活動の強化、犯罪防止に配慮した環境設計活動の推進等に努め、地域住民に身近な犯罪、事故の予防活動、犯罪の検挙活動を行うとともに、ストーカー行為による被害防止、少年の非行防止、けん銃等の摘発及び供給の遮断、薬物乱用の防止、良好な風俗環境の保持、正常な経済活動の確保のための諸対策等を強力に推進している。

第三章 犯罪情勢と捜査活動

 平成七年以降、刑法犯認知件数は増加を続けており、平成十二年には二百四十四万三千四百七十件と、前年に比べ二十七万七千八百四十四件(一二・八%)増加し、戦後最高を記録している。特に、強盗、ピッキング用具を使用した侵入盗、傷害、暴行等の増加が目立っており、犯罪情勢は深刻化している。
 このような情勢に的確に対応するため、警察では、捜査体制の充実、捜査官の育成、科学捜査力の強化等の諸施策を講じ、国民の期待にこたえる捜査を遂行していくこととしている。

第四章 暴力団総合対策の推進

 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」という)の施行を契機とした暴力団排除気運の高まりと取締りの一層の強化により、暴力団は、社会から孤立しつつある。
 しかしながら、民事介入暴力、金融・不良債権関連事犯を多数引き起こすなど、その資金獲得活動は、社会経済情勢の変化に対応して一層多様化・巧妙化しつつある。また、暴力団は、けん銃を使用した凶悪な犯罪や薬物犯罪を多数引き起こすなど、市民社会にとって大きな脅威となっており、対立抗争事件も、依然として多数発生している。
 さらに、暴力団排除活動等の成果により企業対象暴力の件数は減少傾向にあるものの、大手企業役員らが商法違反事件で検挙されるなど、一部企業と総会屋との関係は依然として続いている。
 このような情勢の下、警察は、暴力団を解散、壊滅に追い込むため、総力を挙げて、暴力団犯罪の取締りの徹底、暴力団対策法の効果的な運用及び暴力団排除活動の推進を三本の柱とした、暴力団総合対策を推進している。

第五章 安全かつ快適な交通の確保

 自動車は、現代社会に欠かすことのできない移動・輸送手段であり、そのもたらす恩恵は計り知れない。しかしその一方、交通事故によって毎年多くの尊い人命が失われ、負傷者も増加の一途をたどっている。また、交通事故に伴う経済的損失もばく大なものとなっている。平成十二年は、交通事故死者数が五年ぶりに増加に転じ、九千六十六人を数え、負傷者数は百十五万五千六百九十七人と過去最悪を記録した前年を上回るなど、依然として厳しい情勢にある。
 警察は、交通の安全と円滑を確保するため、交通安全教育、免許行政、交通指導取締り、交通安全施設の整備等、様々な施策を推進している。

第六章 公安の維持

 近年、世界各地で急進的な宗教思想や過激な民族独立運動を背景としたテロが頻発している。
 我が国では、平成十二年十一月、日本国内に潜伏していた日本赤軍最高幹部重信房子を「ハーグ事件」における逮捕監禁容疑等で逮捕した。その後の捜査で、日本赤軍は、世界革命、日本革命を目指して、日本赤軍を引き継ぐ非公然組織である、人民革命党を設立していたことが判明した。
 一方、国内に目を向けると、革マル派は、これまで党派色を隠してJR等基幹産業の労働組合をはじめ各界各層への浸透を図ってきたが、平成十二年には、JR総連内における革マル派組織の存在を明らかにし、党派色を鮮明にしてJR労組問題に積極的に介入した。
 オウム真理教は、教団最高幹部の出所後、名称を「アレフ」と変更するなど、表面的には、これまでの教団と異なる存在であることを強調しているが、教団の運営は依然として麻原彰晃こと松本智津夫の確立した教義に基づいて行われている。
 日本共産党は、第二十二回党大会で規約を大幅に改定したが、党の基本的性格に変化はなかった。
 右翼による違法行為は、増加傾向にあり、地域住民の生活の平穏を害する街頭宣伝活動が執拗に行われている。
 平成十二年七月には、九州・沖縄サミットが開催され、沖縄県に警察史上最大の部隊を特別派遣するなど、全国警察が一体となって警備に取り組んだ。
 警察では、このような情勢に的確に対処するため、各種テロ対策を最重点とした諸対策を推進し、公安の維持に努めている。

第七章 災害、事故と警察活動

 平成十二年は、各地で火山噴火、地震等による自然災害が頻発した。警察では、これらの災害の発生に際して、直ちに体制を確立して、被害情報の収集、被災者の避難誘導や救出救助、交通規制に当たるとともに、被災地の警戒パトロールによる被害の未然防止に努めた。

第八章 国際化社会と警察活動

 社会・経済のグローバリゼーションの進展に伴って、犯罪活動も容易に国境を越えることが可能になり、犯罪のグローバリゼーションともいうべき問題を生じさせている。なかでも国際組織犯罪の深刻化が進んでいる。
 さらに、近年における我が国の厳しい経済情勢にもかかわらず、我が国と近隣諸国との賃金格差を背景として多数の不法就労を目的とした外国人が我が国に流入し、定着化する問題が生じている。これらの者の中には、不法就労よりも効率的に利益を得る手段として犯罪に手を染め、地縁、血縁等によって我が国国内で犯罪グループを形成し、あるいは我が国の暴力団や外国に本拠を置く国際犯罪組織と連携をとるものがある。
 このような国際犯罪対策の問題は、平成十二年七月に開催された九州・沖縄サミットにおいて首脳会議の議題として取り上げられるなど、国際協議の場でも国際犯罪対策が重要なテーマとなっており、警察では、取締りはもとより、より根本的な解決を目指した総合的な対策に取り組んでいる。

第九章 公安委員会と警察活動のささえ

第一節 公安委員会制度

 公安委員会制度は、警察の民主的管理と政治的中立性の確保を図るために設けられたものであり、国には国家公安委員会が、都道府県には都道府県公安委員会(道にあっては、方面公安委員会を含む)が、それぞれ設置されている。
 公安委員会制度は、強い執行力を持つ警察行政について、その政治的中立性を確保し、かつ、運営の独善化を防ぐためには、国民の良識を代表する者が警察の管理を行うことが適切と考えられたことから設けられたものである。

第二節 適正な警察活動の確保

 警察では、適正な警察活動を確保するため、監察の適切な実施、情報公開の推進等に努めている。また、平成十二年十一月の警察法改正により、国家公安委員会及び都道府県公安委員会の管理機能の強化に関する規定や、警察署協議会の制度に関する規定の整備等が行われ、警察活動の一層の適正化が図られている。

第三節 警察活動のささえ

 警察が、その責務を全うしていくためには、現在警察で勤務している職員の高い士気を維持するとともに、今後の警察を担っていく優秀な人材を確保する必要がある。そのため、職員の待遇改善、勤務環境の整備等に努めているところであり、現在の職員だけでなく、将来警察で勤務する者にとっても、魅力ある職場づくりを積極的に推進している。
 そのほか、警察活動をささえる基盤として、組織、予算、装備、警察情報通信、シンクタンク等がある。

第四節 被害者対策の推進

 犯罪の被害者(遺族を含む。以下同じ)は、犯罪によって直接、身体的、精神的、経済的な被害を受けるだけでなく、その後の刑事手続の過程や周囲からの不利益・不快な取扱い等により様々な二次的被害を受ける場合があり、近年、このような被害者の置かれた悲惨な状況が社会に広く認識されるようになった。
 警察は、被害の届出を受理し、犯罪の捜査を行うという面で被害者と密接な関係を有しており、被害の回復・軽減、再発防止等について被害者から大きな期待を寄せられていることから、被害者の視点に立った被害者のための各種施策の推進に努めている。


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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十三年八月分結果速報


厚生労働省


 「毎月勤労統計調査」平成十三年八月分結果の主な特徴点は次のとおりである。

◇賃金の動き

 八月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は三十万五千七百三十三円、前年同月比三・二%減であった。
 現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万一千二十一円、前年同月比〇・八%減であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万三千九百三十四円、前年同月比〇・四%減、所定外給与は一万七千八十七円、前年同月比は六・三%減であった。
 また、特別に支払われた給与は二万四千七百十二円、前年同月比は二四・七%減であった。
 実質賃金は、二・六%減であった。
 きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に金融・保険業二・八%増、電気・ガス・熱供給・水道業一・六%増、製造業〇・一%減、卸売・小売業,飲食店〇・三%減、サービス業〇・九%減、建設業二・二%減、不動産業二・三%減、運輸・通信業二・四%減、鉱業二・七%減であった。

◇労働時間の動き

 八月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百四十八・九時間、前年同月比は〇・五%減であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は百四十・〇時間、前年同月比〇・三%減、所定外労働時間は八・九時間、前年同月比五・三%減、所定外労働時間の季節調整値は前月比〇・二%増であった。
 製造業の所定外労働時間は十一・六時間、前年同月比一二・一%減、季節調整値の前月比は一・九%減であった。

◇雇用の動き

 八月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・一%減、常用労働者のうち一般労働者では〇・六%減、パートタイム労働者では一・九%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものはサービス業二・二%増、不動産業〇・七%増、鉱業〇・二%増、建設業〇・一%増であった。前年同月を下回ったものは運輸・通信業〇・四%減、卸売・小売業,飲食店〇・四%減、製造業二・二%減、金融・保険業四・〇%減、電気・ガス・熱供給・水道業四・五%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者一・七%減、パートタイム労働者五・七%減、卸売・小売業,飲食店では一般労働者二・二%減、パートタイム労働者二・四%増、サービス業では一般労働者一・九%増、パートタイム労働者四・一%増であった。









歳時記


冬支度

 南北に長く、複雑な地形の日本では、冬の訪れにも時間差があります。北海道や東北地方では、十月の中ごろになると初霜や初氷が観測され、そろそろ冬が近いことがうかがわれます。
 十一月に入ると、西高東低のいわゆる冬型気圧配置が現れるようになり、比較的温暖な地方からも木枯らしの便りが届き始めます。
 暖房器具が欲しくなるのは、一般的に朝の最低気温が八℃に下がるころからといわれます。東京を例にとると、最低気温の平均が八℃ぐらいになるのは十一月二十日過ぎ。昭和の中ごろは十一月三、四日には八℃になっていたといいますから、やはり温暖化は進んでいるようです。
 十一月も下旬になると、ストーブやこたつの準備をしたり、暖かいコートやマフラーなどの防寒具を取り出したりと、冬支度も本格的に。雪の多い地方では、草木などをわらやむしろで覆う雪囲いや、木の枝をつり上げる雪吊りの用意をして雪害に備えます。
 自動車のタイヤをスタッドレスタイヤにはきかえるのも、雪国ならではの冬支度です。
 冬に備えての漬物づくりも盛んに行われます。東北地方では農山村地域を中心に、今でも自家製の漬物を作る家庭が多く、春まで食べるのに十分なだけの漬物の仕込みをするこの時期は大忙しです。信州では、野沢菜漬けにする菜を洗う光景があちこちで見られます。冬の訪れを実感させる風物詩です。


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月例経済報告(十月)


―景気は、引き続き悪化している―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)
 景気は、引き続き悪化している。
・個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、このところ弱い動きがみられる。失業率は、これまでの最高水準で推移している。
・輸出、生産が大幅に減少し、企業収益、設備投資も減少している。
・業況判断は、製造業を中心に大幅に悪化している。
 先行きについては、米国における同時多発テロ事件の世界経済への影響など、懸念が強まっている。

(政策の基本的態度)
 政府は、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」に基づき、構造改革の道筋を示す「改革工程表」をとりまとめた。さらに、構造改革を強力かつ迅速に遂行するため、先行して決定・実施すべき施策を「改革先行プログラム」として十月中にとりまとめるとともに、平成十三年度補正予算を編成する。
 なお、日本銀行においては、九月十八日に、金融市場の安定を確保し、金融緩和の効果浸透を図る観点から、日本銀行当座預金残高が六兆円を上回ることを目標にするとともに、公定歩合を〇・一五%引き下げ〇・一〇%とすること等を決定した。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

◇個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、このところ弱い動きがみられる。
 消費総合指数をみると、このところ弱い動きが続いている。また、需要側統計である家計調査でみると、実質消費支出は、平成十三年八月は前月を下回り、このところ弱い動きが続いている。
 販売側統計をみると、小売業販売額や百貨店販売額、チェーンストア販売額は、依然として弱い動きが続いている。
 耐久消費財についてみると、新車販売台数は、これまで好調に推移していた新型車の受注減により前年を下回り、弱い動きとなっている。家電販売金額は、パソコンが引き続き前年を大きく下回っていることなどから、弱い動きが続いている。
 旅行は、国内旅行、海外旅行とも前年を上回っており、好調な動きとなっている。なお、米国における同時多発テロ事件の影響により、九月以降の海外旅行の大幅な減少が懸念される。
 こうした需要側と販売側の動向を総合してみると、個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、 このところ弱い動きがみられる。
 個人消費の動向を左右する家計収入の動きをみると、定期給与は引き続き前年を下回っており、弱い動きが続いている。また、現金給与総額も前年を大きく下回っている。

◇設備投資は、減少している。
 設備投資は、平成十二年中は増加基調が続き、景気を支える要素であったが、生産の減少、企業収益の鈍化等を背景に平成十三年に入り頭打ちに転じ、このところ減少している。「法人企業統計季報」でみると、四〜六月期の設備投資は、減少している。また、機械設備投資の参考指標である資本財出荷は、 年明け以降減少を続けている。
 設備投資の今後の動向については、日銀短観の平成十三年度設備投資計画において非製造業を中心に減少が見込まれていること、機械設備投資の先行指標である機械受注が一〜三月期以降減少基調で推移し七〜九月期も減少の見通しとなっていることなどからみて、減少が続くものとみられる。

◇住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 住宅建設は、平成十一年以降おおむね年率百二十万戸前後で推移していたが、昨年堅調であったマンションの着工が落ち着いてきたことに加え、公庫持家の着工が大きく水準を下げて推移したことを主因として、年明け以降弱含み、平成十三年四〜六月期は百十五万戸程度となり、前期比で2四半期連続の減少となった。
 この背景としては、雇用・所得環境が厳しさを増していること、不動産価格の長期的下落傾向により買い替えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下していることがあると考えられる。七、八月はいずれも年率百二十万戸を上回ったが、これは、マンションの着工が再び増加していることのほか、貸家の着工が増加したことによる。
 先行きについてみると、住宅金融公庫融資の申し込み戸数が減少していることなど、住宅着工を減少させる要因が引き続きみられる。

◇公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共投資は、総じて低調に推移している。工事の前払金保証契約実績に基づく公共工事請負金額は、昨年六月以降三月まで継続して前年を下回り、年度末にかけて発注が集中する一〜三月期の受注においても、前年を大きく下回る指標がみられた。
 平成十三年度当初における公共事業関連予算をみると、国の公共事業関係費は前年度に近い予算現額を確保しているものの、地方の投資的経費は、厳しい財政状況を反映して引き続き前年度を下回っている。
 このような状況を反映して、四〜六月期の受注額、請負金額は引き続き前年を下回った。ただし、このところの動きをみると、前年の同時期が低調に推移したこともあり、七月の請負額や八月の大手五十社受注額が前年を上回るなど、マイナス幅は縮小している。
 七〜九月期の公共投資については、予算状況や執行方針などを踏まえると、引き続き前年を下回る可能性がある。

◇輸出は、大幅に減少している。輸入は、減少している。貿易・サービス収支の黒字は、減少している。
 輸出は、世界経済の減速を背景として、電気機器や一般機械などが減少していることから、大幅に減少している。地域別にみると、アジア、アメリカ、EUのいずれの地域向けも減少している。米国における同時多発テロ事件の影響などにより世界経済の減速が長期化した場合、今後は、これが我が国輸出の下押し要因として作用するものとみられる。
 輸入は、内需の弱さを反映して減少している。品目別では、半導体等電子部品の大幅な減少などによって、機械機器の減少が続いている。地域別にみても、機械機器の減少を主因にアメリカ・EUからの輸入は減少している。アジアからの輸入も、これまで堅調であった中国からの輸入が頭打ちになるなど、減少傾向にある。
 国際収支をみると、輸出・輸入数量ともに減少しているが、輸出数量が輸入数量の減少を上回って減少していることを要因として、貿易・サービス収支の黒字は、減少している。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は大幅に減少し、在庫率は高水準にある。
 鉱工業生産は、今年に入ってから大幅に減少している。輸出の減少等により、IT関連品目の生産を減少させていることが主因である。
 生産の先行きについては、九月は減少、十月は増加が見込まれている。また、IT関連を中心に在庫が減少しているものの、在庫率が依然として高い水準にあることは、生産の先行きに関して懸念すべき点である。
 一方、第三次産業活動の動向をみると、おおむね横ばいで推移している。
 また、農業生産の動向をみると、米の作況は「やや良」となっている。

◇企業収益は、減少している。また、企業の業況判断は、製造業を中心に大幅に悪化しており、一層厳しさが増している。倒産件数は、やや高い水準となっている。
 企業収益は平成十一年以降改善が続いていたが、「法人企業統計季報」によると、人件費が増加してきたこと、売上高の増収幅が縮小してきたこと等により、全体としては頭打ちとなっており、平成十三年四〜六月期には電気機械を中心に製造業では減益に転じた。
 また日銀短観によると、平成十三年度上期は製造業、非製造業とも減益見込みとなっている。さらに、増益見通しとなっていた下期も全産業では減益見通しに転じ、年度を通しても減益の計画となった。
 企業の業況判断について日銀短観をみると、大企業・製造業では電気機械などの加工業種だけではなく、鉄鋼、化学など素材業種も急速に悪化するなど、一層厳しさが増している。
 また、八月の倒産件数は、東京商工リサーチ調べで一千五百四十四件となるなど、やや高い水準となっている。

◇雇用情勢は、依然として厳しい。完全失業率がこれまでの最高水準で推移し、求人や残業時間も弱含んでいる。
 完全失業率は、八月は前月比同水準の五・〇%と過去最高水準で推移した。また、他にも雇用情勢の厳しさを示す動きが引き続きみられる。
 新規求人数は、前年同月比でみると、製造業の減少幅が拡大したことを背景に、全体で減少に転じ(八月前年同月比三・九%減)、前月比でも減少となった(八月前月比三・八%減)。製造業の残業時間についても、十か月連続で前月比減となっている。雇用者数は、全体ではおおむね横ばいで推移しているものの、製造業において弱い動きがみられる。企業の雇用過剰感は、製造業を中心に引き続き強まっており、大、中堅製造業で悪化幅が大きくなっている。

三 物価と金融情勢

◇国内卸売物価、消費者物価は、ともに弱含んでいる。
 輸入物価は、このところ、契約通貨ベース、円ベースともに下落している。国内卸売物価は、平成十三年入り後弱含んでいる。
 最近の動きをみると、石油・石炭製品などは値上がりしているものの、電気機器や非鉄金属などが値下がりしていることから、下落している。また、企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、平成十二年秋以降弱含んでいる。最近の動きをみると、個人サービスの下落幅縮小などにより一般サービスは前年と比べやや上昇しているものの、耐久消費財の下落などにより一般商品は下落していることから、全体としては下落している。
 こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。

◇金融情勢については、株式相場は、七月以降、一段と下落している。
 短期金利についてみると、九月十一日の米国における同時多発テロ事件の発生を受けた日本銀行の潤沢な流動性供給等により、おおむね安定的に推移した。オーバーナイトレートは、九月は、コール市場の金利刻み幅変更等を受けて低下し、おおむね〇・〇〇二〜〇・〇〇三%で推移した。二、三か月物は、四月以降、低位での推移が続いており、九月は、ほぼ横ばいで推移した。長期金利は、昨年秋より低下基調で推移してきたが、国債の需給悪化を懸念する市場の見方等もあって、七月から八月上旬にかけて上昇した後、横ばいで推移した。
 株式相場は、昨年春より下落基調で推移している。三月中旬から五月上旬にかけて一旦上昇したものの、七月以降、企業業績の悪化を懸念する市場の見方に加えて、米国における同時多発テロ事件の影響等もあり、一段と下落している。
 対米ドル円相場は、八月は円高基調で推移したが、九月は、月初の百十八円台から一時百二十一円台まで下落した後上昇し、下旬は百十七円台から百十九円台で推移した。対ユーロ円相場は、六月から七月にかけて百九円台に下落した後横ばいで推移し、九月は、百六円台から百九円台で推移した。
 M+CD(月中平均残高)は、昨年後半以降、おおむね前年同月比二・〇%増程度で推移してきたが、年明け以降、郵便貯金からの資金シフト等を受けて、やや伸び率を高めている(八月速報:前年同月比三・四%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、九六年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷等を背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、金融緩和等を背景に、年明け以降低下傾向にある。

四 海外経済

◇世界経済の先行きは不透明になっている。
 世界経済をみると、成長に減速がみられるなか、米国同時多発テロ事件により先行きは不透明になっている。
 アメリカの景気は弱い状態となっており、先行きは不透明である。個人消費は、所得税減税による可処分所得の伸びにくらべ低い伸びにとどまっており、消費者の信頼感は大幅に低下している。一方、住宅投資は頭打ちとなっており、企業収益の悪化により設備投資が大幅に減少していることから、内需の伸びは鈍化している。在庫調整が進むなかで、生産活動が停滞し、稼働率が低下している。雇用は減少しており、失業率は上昇している。
 ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は減速している。フランスおよびイギリスでは、景気の拡大テンポは鈍化している。
 アジアをみると、中国では、個人消費や固定資産投資が堅調に推移しているが、このところ輸出の伸びが鈍化していることから、景気の拡大テンポはやや鈍化している。韓国では、生産や輸出が減少するなど、景気は減速している。
 金融情勢をみると、ドルは、米国同時多発テロ事件をきっかけに大きく下落したが、ややもち直している。株価は、テロ事件後に一時大幅に下落したが、ややもち直している。アメリカ、ユーロ圏などの主要中央銀行は、テロ事件を受け、相次いで利下げを実施した。
 国際商品市況をみると、原油価格は、テロ事件発生により一時急騰したものの、その後世界的な需要減退の懸念が高まったことなどから急落した。


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家計総世帯集計・単身世帯収支調査結果


―平成十三年四〜六月期平均速報―


総 務 省


一 全世帯の家計

 家計総世帯の全世帯の消費支出は、一人当たり九万九千七百八十一円となり、前年同期に比べ、名目三・五%の減少、実質二・九%の減少となった。

二 勤労者世帯の家計

 家計総世帯の勤労者世帯の実収入は、実質減少となった。
 平均消費性向は、前年同期を下回った。
 消費支出は、実質減少となった。

三 勤労者以外の世帯の家計

 家計総世帯の勤労者以外の世帯の消費支出は、一人当たり九万八千三百十八円となり、前年同期に比べ、名目一・九%の減少、実質一・三%の減少となった。

四 財・サービス区分別の支出

 耐久財、半耐久財及び非耐久財が実質減少したため、財(商品)全体では、実質三・一%の減少となった。
 サービスは、実質一・〇%の減少となった。











政府刊行物普及月間


『広げます あなたの未来』〜政府刊行物〜

 毎年十一月は「政府刊行物普及月間」です。
 現在、財務省印刷局では、インターネットを通じて、過去一週間に発行された『官報』(国が発行する唯一の法令公布の機関紙)を、無料で閲覧できるサービスを行っています。これに加えて、過去に発行された官報についても、新たに日付などによる検索・閲覧・印刷が行える有料サービスを九月一日より開始しました。
 国の広報紙でもあり、国民の公告紙でもある重要な紙面である官報を、この月間を通してぜひ一度目を通してみてはいかがでしょうか。
◇新サービスの内容
・テキストデータ、イメージデータが閲覧、印刷できます。
・各種検索機能が利用可能です。
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個人債務者の再生手続について


最高裁判所


◇個人債務者の民事再生手続(個人再生手続)について

 昨年四月に民事再生法が施行されました。これにより、倒産することなく、会社の再建を図る民事再生手続の利用ができるようになりましたが、更に、今回、この民事再生法が一部改正され、個人を対象とした民事再生手続(個人再生手続)の制度が新たに設けられ、本年四月から実施されるようになりました。
 これは、多額の借金を抱えた個人で将来継続的に収入が入る見込みのある人が、将来の収入から、借金のうちの一部の額を支払うことによって、残りの支払の免除を受けるという手続です。

Q 特定調停手続や破産免責手続とはどのような違いがあるのですか。
 借金を抱えた人(債務者)と返してもらう人(債権者)の関係が違います。特定調停手続は、調停委員会の仲介によって債権者と債務者が話し合い、その合意に基づいて返済方法等を定める手続です。債権者との間で合意ができなければ、支払の一部の免除を受けたり、返済期限を延長してもらったりすることはできません。
 また、破産免責手続は、全財産を処分しても借金を全額返済できなくなった場合に、裁判所で、その時点の債務者の財産を強制的に処分して、それを債権者全員に公平に分配した上で、残りの支払を免除するのが相当かについて、事情を調査し、債権者の意見を聴いて、残りの支払を免除するかどうかを決める手続です。
 これに対して、個人再生手続は、債務者が作成した再生計画に基づき、将来の収入から債権者に一部の返済をした上で、残りの支払を免除してもらう手続です。将来の継続的な収入が見込まれる、負債総額が三千万円以下(抵当権等で担保される負債等を除いた額)の人を対象としている点が特定調停手続や破産免責手続と異なります。
 また、成立した再生計画には、それに反対の債権者も拘束される点は特定調停手続と異なりますし、破産免責手続のように残りの支払を免除するのが相当かどうかについての審査をすることもありません。

Q どのような場合に個人再生手続が利用できるのですか。
 個人再生手続は、多額の借金があって返済できずに困っている人が、破産してしまうのではなく、将来の収入を使って、返すべき金の一部を支払うことによって、迅速かつ合理的なかたちで、経済的に立ち直ってもらうための制度です。
 主として商店主や農家などの個人で事業を行っている人に利用されることを考えた「小規模個人再生」と、小規模個人再生の対象者のうち、サラリーマンなど将来の収入を確実に把握することが容易な人に利用されることを考えている「給与所得者等再生」の二種類の手続があります。

Q 個人再生手続は、どのように進められるのですか。
 通常は、この手続を利用して経済的に立ち直ろうとする人(債務者)が手続の開始を申し立て、法律で定めた事由を満たすと手続が開始されます。
 手続が始まると、返済の対象となる借金の額等を確定するために調査し、その後、債務者が再生計画案を作成して裁判所に提出します。裁判所は、その再生計画案について債権者の意見を聴いたりした上で、再生計画を認めるかどうかを決めます。再生計画が認められれば、その計画に従って返済を行っていくことになります。
 債権者の理解と協力を得て、個人再生手続を円滑に進めるためには、債務者が自ら借金の額や収入及び財産の状況などを明らかにするなどして、積極的に手続を進めていくことが必要になります。

Q 再生計画では、どのような返済計画を作れば、再生計画として認められるのですか。
 再生計画が認められるためには、(1)債務者が三年間、長くても五年間にわたり、分割して返済を継続するという内容であること、(2)支払う額が借金の総額の五分の一(最低でも百万円)以上であること、(3)債務者がその時の自分の財産を処分して返済する場合の額(清算価値)以上の返済を行うことという三つの条件を満たす必要があります。
 また、「給与所得者等再生」では、その三つに加えて、債務者の年収額から生活に必要な費用(政令で定められています)を控除した額(可処分所得額)の二年分以上の額を返済する必要もあります。

Q 個人再生手続では、債務者はどのような役割を求められるのでしょうか。
 この手続は、債務者の将来の収入をもとにして、再生計画に基づいて一定の金額の返済を行い、残りの債務の支払の免除を受けるというものです。そのため、債務者は自主的かつ主体的に手続に関与し、手続を円滑に進行させるよう努力しなければなりません。
 ただし、債務者が再生計画案を作成するに当たって、何らかの助言を必要とする場合などには、裁判所が個人再生委員を選任して、債務者に助言等をしてもらうこともあります。

Q 不意の事故や病気等により、再生計画どおり支払うことが困難となった場合、どうなるのでしょうか。
 再生計画で決めた支払をしなかった場合、債権者の申立てによって、裁判所がその再生計画を取り消すことがあります。再生計画が取り消された場合、それによって変更された借金の額は元に戻ることになってしまい、債務者は、元の契約に従った返済等を行うことになります。
 しかし、多数の利害関係人がかかわってできた再生計画ですから、その計画どおりに支払うことも大切です。そこで、再生計画が認められた後、勤務先が倒産してしまった等、やむを得ない理由で再生計画どおりの支払をすることが困難となってしまったような場合には、必要な手続を経た上で、再生計画で定めた支払期限を二年を超えない期間内で延長することができます。
 また、病気等で、再生計画どおりの支払をすることが非常に困難となってしまった場合には、法律で定める割合以上の返済が終わっていることなどの条件を満たしていれば、裁判所に申立てをして、残りの支払全部について責任を免れることもできます。

Q 個人再生手続を利用した場合には、担保に入れている住宅を手放すことにはならないのですか。
 住宅の購入やリフォーム等のために住宅ローンを借りた場合には、その住宅に抵当権が設定されるのが通常です。
 再生手続(個人再生手続に限られません)では、住宅ローンについては、再生計画に特別条項を設けて、返済期限の延長など債務者負担が小さくなるような変更をすることができます。このような再生計画が認められたときは、再生計画に基づく返済を続けていく限り、抵当権が実行されてその住宅を手放すことになるような事態は避けられることになります。
 ただし、住宅ローンについて特別条項を設ける場合には、元の住宅ローン契約の内容自体が複雑であることなどから、適正で実行可能な内容とするためには、銀行等の住宅ローン債権者の助言を得なければならないことも多いと思われます。このような場合には、再生手続を利用するに際して、銀行等と協議しなければならなくなります。
 このような特徴を持つ個人再生手続をより多くの方に知っていただくために、最寄りの地方裁判所の窓口に「再生手続開始の申立てをされる方のために(個人債務者用)」というリーフレットを備え付けています。また、この手続について不明の点や申立ての際に必要な書類などについても、お気軽にお問い合わせください。


秋季全国火災予防運動


 『約六万件の火災。およそ二千人の命。』

消 防 庁

 全国では毎年、この件数の火災が発生し、これだけたくさんの命が失われています。特に秋から冬にかけては、暖房機器やたき火などいろいろな所で火気を使う機会が多くなり、空気も乾燥するなど、火災が発生しやすい季節となります。
 消防庁では、このような時期を迎えるに当たって、一人ひとりが火災予防の知識を持ちそれを実践することにより、火災の発生を防止し、死傷事故や財産の損失を防ぐことを目的として、十一月九日(金)から十五日(木)までの七日間、全国火災予防運動を行っています。期間中には、住宅防火診断、防火講習会、防火指導など様々な行事を各地で予定しています。積極的に参加して防火知識・技能の修得に努めましょう。
 本年は『たしかめて。火を消してから 次のこと』を全国統一標語とし、重点目標及び推進項目を次のとおり掲げています。
 住宅火災による高齢者等の死者を大幅に減少させることを目指す「住宅防火対策」や、増加傾向にある放火火災を減少させるための「放火火災予防対策」、そして老朽化した消火器の破裂による人身事故防止のための「消火器事故防止対策」への積極的な取組みを始めとした火災予防対策を推進します。

一 重点目標

(1) 住宅防火対策の推進

(2) 放火火災予防対策の推進

(3) 消火器事故防止対策の推進

二 推進項目

(1) 住宅防火対策の推進

 ア 高齢者等の災害弱者の把握とその安全対策に重点を置いた死者発生防止対策の推進
 イ 地域の実情に即した広報の推進と、具体的な対策事例等の情報提供
 ウ 広範な機会を捉えた住宅防火診断、座談会等の実施
 エ 地域の実情を踏まえた住宅防火対策推進組織の整備・充実とモデル事業等の推進
 オ 住宅用火災警報器など住宅用防災機器等の普及促進

(2) 放火火災予防対策の推進

 ア 放火されない環境づくりの推進
 イ 放火火災による被害の軽減対策の実施

(3) 消火器事故防止対策の推進

 ア 老朽化消火器等の一斉回収
 イ 住宅に適した消火器等の普及
 また、火災予防運動の実施に当たっては、住宅火災による死者の発生防止対策の要点をまとめた、「住宅防火 いのちを守る 七つのポイント」を重点に、一般的な出火防止のための「火の用心 七つのポイント」を使って、積極的に広報を行っていきます。

住宅防火 いのちを守る七つのポイント
 ―三つの習慣・四つの対策―

●火の用心七つのポイント
 @ 家のまわりに燃えやすいものを置かない。
 A 寝たばこやたばこの投げ捨てをしない。
 B 天ぷらを揚げるときは、その場を離れない。
 C 風の強いときは、たき火をしない。
 D 子供には、マッチやライターで遊ばせない。
 E 電気器具は正しく使い、たこ足配線はしない。
 F ストーブには、燃えやすいものを近づけない。

●三つの習慣
 @ 寝たばこは、絶対やめる。
 A ストーブは、燃えやすいものから離れた位置で使用する。
 B ガスこんろなどのそばを離れるときは、必ず火を消す。

●四つの対策
 @ 逃げ遅れを防ぐために、住宅用火災警報器を設置する。
 A 寝具や衣類からの火災を防ぐために、防炎製品を使用する。
 B 火災を小さいうちに消すために、住宅用消火器を備える。
 C お年寄りや身体の不自由な人を守るために、隣近所の協力体制をつくる。



 十一月の気象


◇木枯らし
 晩秋から初冬にかけて吹く北よりの冷たい風は、木の葉を吹き枯れさせてしまうことから「木枯らし」と呼ばれています。気象学的には、冬型の気圧配置が強まっていく冷たい北西の季節風がその正体です。その冬の最初に吹く木枯らしは「木枯らし一号」と呼ばれています。東京と大阪では二十四節気の立冬のころ(十一月七日ごろ)に吹くことが多く、冬の到来を感じさせる現象です。

◇小春日和
 冬の訪れとともに、冷たい北西の季節風が吹き込むようになります。真冬には一週間以上も冬型の気圧配置が続くことがありますが、この時期に大陸からの移動性高気圧がやってきて、冬型の気圧配置が緩むことがあります。十一月から十二月初旬にかけて、このような移動性高気圧に覆われると穏やかな晴天となることがあり、「小春日和」と呼ばれます。

◇初霜、初雪
 秋になって初めて降りる霜を、初霜といいます。平年の初霜日に比べ、季節はずれに早く降りる霜を早霜といいます。小春日和の夜などは冷え込みが厳しくなることがあり、農作物の収穫が終わっていない地域では早霜の注意が必要です。



    <11月7日号の主な予定>

 ▽厚生労働白書のあらまし………厚生労働省 

 ▽法人企業統計調査………………財 務 省 

  (四〜六月期) 




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