▽月例経済報告(九月)………………………内 閣 府
観光白書のあらまし
【平成十二年度観光の状況に関する年次報告】
T 観光の現状はどのようになっているのか
1 旅行関連支出
(1) 抑制続く旅行支出
平成十二年の我が国経済は、前年に引き続き緩やかに改善し、実質国内総生産は、前年比で一・七%増加した。一方、消費者物価は前年を下回る水準で推移し、対前年上昇率は〇・七%の下落となった。
家計消費については、全国全世帯の消費支出は対前年比〇・九%減となった。また、旅行関連支出(宿泊費、交通費、旅行かばん)をみると、十二年は対前年三・三%減の十四万六千二百十六円となった(第1図参照)。
(2) 労働時間の増加
近年は、総実労働時間は減少傾向で推移してきていたが、十二年は一千八百五十九時間と前年より十七時間増加した。
2 伸び悩む国内観光
(1) 十二年の国内観光レクリエーションは厳しい状況
十二年の国内観光は、個人消費が足踏み状態となっている中で、宿泊観光・レクリエーション旅行の旅行回数、宿泊数、消費額ともに減少するなど、伸び悩んだ(第2図、第3図参照)。
(2) 最近の国内観光の動向
@ 個人・グループ旅行が好調
個人消費の足踏み状態が続く中で、個人・グループ旅行は、ツアー価格の低下や航空運賃の割引効果を背景に、取扱額、取扱人数ともに好調を維持している。中でも特に、家族旅行の需要が高い。
A 「安・近・短」旅行と「安・遠・短」旅行の傾向が続く
国民の宿泊旅行については、「安」(旅行商品の低廉化)、「近」(近距離)、「短」(短い日数)のいわゆる「安・近・短」旅行の傾向が指摘されているが、遠距離方面への旅行も引き続き人気を呼んでいる(第4図参照)。
B 旅行ニーズの多様化(「お決まり型」から「体験型」へ)
観光地での行動は、都市の散策、伝統文化との触れ合い、買い物、飲食、テーマパーク、遊園地など、体験型レクリエーションが人気を呼んでいる。このような傾向は、文化遺産の見学が中核となっていた修学旅行においても表れてきており、体験学習の比重が高まってきている。
3 海外旅行と訪日旅行の不均衡が続く国際観光
(1) 最近の日本人の海外旅行の動向
@ 十二年の海外旅行は一千七百八十二万人と過去最高
十二年の我が国の国際観光の状況は、日本人海外旅行者数については、対前年比で八・九%増の一千七百八十二万人となった(十年世界第十位)(第5図参照)。
一方、十二年の訪日外国人旅行者数については、前年比で七・二%増の四百七十六万人となった(十一年世界第三十六位)(第6図参照)。
A 最近の海外旅行の動向
ア アジア地域への旅行者の増加
海外旅行についても「安・近・短」旅行が人気を呼んでおり、対前年比で中国約二〇%増、韓国約一三%増、タイ約八%増と、アジア地域への旅行者が増加した。中でも、韓国への旅行者は、平成九年以降、増加し続けている。
イ 高年世代の旅行者は、六年で一・六倍
平成六年から十二年までの間の高年世代(六十歳代以上)の海外旅行者数の推移をみると、旅行者数全体では約三一%伸びているが、このうち、高年世代では約六二%と、平均を上回る高い伸びを示している(第7図参照)。
ウ 家族旅行・熟年層が好調、二十歳代が伸び悩み
十二年の海外旅行の性別・年齢別の対前年比の伸び率の推移をみると、十歳未満、十歳代、三十歳代、五十歳代以上の世代で高い伸び率となったが、二十歳代は他の世代と比べ伸び率が低くなった。
このような傾向が生じている背景としては、団塊の世代が熟年を迎え、金銭的にも時間的にも余裕が出てきて、気軽に海外旅行を楽しむようになってきていることや、三十歳代の夫婦が子供連れで海外での家族旅行を楽しむようになってきていることのほか、女性の晩婚化という世相を反映して、六十歳以上の母親と三十歳代の娘という母娘旅行が増加していることなどが指摘されている(第8図参照)。
(2) 外国人旅行者の訪日
最近の外国人旅行者の訪日の動向
ア 訪日外国人旅行者数は四百七十六万人と過去最高を記録
十二年の訪日外国人旅行者数は、為替レートの安定、アジア地域における日本への関心の高まりなどを背景に、前年比で七・二%増の四百七十六万人と過去最高を記録した。
イ 受入数は依然として国際的にみて低水準
訪日外国人旅行者数は十一年には四百四十四万人に達したものの、世界各国と比較すると、日本は世界第三十六位であり、日本人海外旅行者数と比較しても約四分の一と、不均衡な状態が続いている。このため、外国人旅行者の訪日の促進と地方圏への誘致のための施策を引き続き推進していくことが必要となっている。
ウ アジア地域からの訪日外国人旅行者数の増加
近年、アジア地域からの訪日外国人旅行者数の増加が顕著であり、国・地域別にみると、中国約二一%増、韓国約一三%増となっており、特に中国からの伸びが大きくなっている(第9図参照)。
U 観光振興をめぐる新たな動き
1 新たな観光振興政策への高まる期待
―五年ぶりの審議会答申―
(1) 背景・経緯(経済・社会環境の変化を背景に)
近年、「まち」の停滞、少子・高齢化の進展、自然環境や地域の文化・伝統等の社会的環境を重視した地域振興の必要性の増大、情報化の急速な進展等、経済社会情勢が変化していることから、これらに対応するため、二十一世紀初頭における観光振興方策を確立することが求められていた。
このため、観光政策審議会は約一年半にわたり審議を行い、十二年十二月、答申「二十一世紀初頭における観光振興方策―観光振興を国づくりの柱に―」をとりまとめた。
(2) 答申の概要
@ 観光をめぐる現状・課題等
近年、観光をめぐっては、@「まち」の再活性化ニーズの増大(均一化した「まち」の表情への反省)、A観光分野におけるIT化ニーズの増大、B高齢者などが「気軽」に旅行できる環境整備ニーズの高まり、C環境保全・向上の必要性の増大、D訪日外国人旅行者数の伸び悩み、E観光のもつ魅力の相対的低下、F国民生活の変化に対応した観光産業の変革の遅れ、G長期滞在型旅行の伸び悩み、H国民の日常的、基本的マナーやホスピタリティ意識の不十分さ、というような点が課題となっている。
A 二十一世紀初頭の観光振興を考える基本的視点
観光は、人々の生活の向上や地域の発展、ひいては国際相互理解の増進など、様々な分野で大きな意義を有している。
二十一世紀初頭に日本社会を真に活力ある社会として構築するためには、@誰もが「気軽」に楽しめる観光の振興、A住民と旅人とが互いに交流しあう観光の振興、B自然・社会環境と共生する観光の振興というような視点から、国づくりの大きな柱として観光を考える必要がある。
B 二十一世紀初頭において早急に検討・実現すべき具体的施策の方向
ア 観光まちづくりの推進(個性ある「まち」の表情へ)
そぞろ歩きのできる個性的な「観光まちづくり」の推進や効果的な「観光まちづくり」のための市町村広域連携などの推進を図る。
イ 観光分野でのITの積極的活用
観光分野でのIT活用のための環境整備(インフラ整備、利用者保護)を図る。
ウ 高齢者などが旅行しやすい環境づくり
誰もが移動しやすい観光まちづくりを推進するため、観光バリアフリー化の推進等を図る。
エ 外国人観光客の来訪促進のための戦略的取組み
外国人観光客の来訪促進を図るため、外客受入体制の整備を図る必要がある。
オ 観光産業の高度化・多様化
国民のニーズに適合した観光産業の「企業改革」、優秀な人材の確保・育成のための総合的取組み及び新しいツーリズムへの対応に取り組む。
カ 連続休暇の拡大・普及促進と長期滞在型旅行の普及
連続休暇の拡大・普及促進と長期滞在型旅行の普及を図る。
キ 国民の意識喚起
日常的、基本的マナーのあり様などについて、国民全体、観光客、住民それぞれの意識喚起に取り組む。
(3) 今後の取組み
答申を受けて、国土交通省は、各省庁連携による効率的な施策を実施するための調整機能を発揮しながら、地方自治体や経済界と一体となって、国づくりの柱としての観光振興政策の積極的展開を行う。
2 広がる政策の裾野
(1) 政府の取組み
@ 日本新生のための新発展政策に基づく高齢者等に係る観光振興策の推進
十二年十一月、政府は、経済を新生させるため新発展政策を決定したが、観光分野については、観光地バリアフリー化整備事業を行うとともに、韓国及び中国などを中心にテレビやインターネットを用いた海外宣伝事業を行った。
A 改正祝日法の施行による旅行環境の改善
十二年一月から「成人の日」及び「体育の日」を月曜日に指定する改正祝日法が施行された。これに伴い、昨年の土曜日と合わせて実現する三連休に関し、旅行需要に与える影響を調査したところ、国内旅行、海外旅行ともおおむね対前年同期比で約一〇〜八五%増加した(第10図参照)。
今後、「観光産業振興フォーラム」とも連携し、旅行等の余暇活動の拡大を通じ、ゆとりある生活の実現を図る。
B 観光分野における情報インフラの整備
十一年度からインターネットなどを通じ、国内の観光関係情報を外国語及び日本語で国内外に提供する、次世代観光情報基盤の整備に着手した。
(2) 観光関係事業者等における取組み
十一年十二月、観光関連の産業界の組織として「観光産業振興フォーラム」が発足したが、これまで、祝日三連休化の倍増などのアピール、「訪日外国人倍増に向けた取組みに関する緊急提言」(新ウェルカムプラン21)などを行っている。
また、各地域の観光振興の高まりを受け、各地において「観光を考える百人委員会」が設立された。
V 国際観光振興のための多様な施策の展開
―重要性の増す国際観光交流―
1 大交流時代を控えて重要性の増す国際観光
国際観光は、各国の相互理解を進める上で大きな意義を有するが、我が国への訪日外国人旅行者数は、依然として低水準となっていることから、その増大に取り組む必要がある。
2 新ウェルカムプラン21による総合施策の展開
外国人旅行者の訪日促進と地方圏への誘致を図るため、「新ウェルカムプラン21」及び「外客誘致法」に基づいて以下の施策を推進している。
(1) 国際観光テーマ地区の整備と重点的海外宣伝の実施
外客誘致法に基づいて、観光ルートを整備する「外客来訪促進計画」が、十三年二月までに合計十一地域について国土交通大臣の同意がなされた。この計画に基づいて、国際観光振興会による重点的海外宣伝など、関係者一体となった取組みが行われている。
(2) 国際交流拠点・快適観光空間の整備
「外客来訪促進計画」に基づいて、地域の歴史、文化、自然などの紹介機能や体験機能を備えた「国際交流拠点」の整備、魅力ある観光地づくりを目的とした「快適観光空間」の整備が行われている。
(3) 外国人旅行者の国内旅行費用の低廉化と接遇の向上
博物館、宿泊施設、飲食店、レジャー施設、交通機関などの割引措置などを受けられる「ウェルカムカード」が、各地で導入されている。
また、国内の航空会社、鉄道会社における外国人向けの割引運賃の設定、共通乗車船券の導入などが各方面で行われている。
(4) 次世代IT観光情報基盤の整備
日本の各種観光情報を外国語及び日本語により電子データ化し、インターネットを通じて提供するとともに、一部宿泊施設については、ホームページ上で予約ができる機能も付加した次世代観光情報基盤の整備を進めた。
これにより、十二年三月には、国際観光振興会のホームページが全面再構築された(http://www.jnto.go.jp/)。
(5) 海外観光宣伝キャンペーンの実施
国際観光振興会は、韓国、中国、香港、北米、英国において、広告宣伝、広報PR事業を実施した。
また、補正予算事業として、国際観光振興会は、韓国、中国及び香港のテレビに日本の観光PRのスポット広告を放映した。
(6) ワールドカップを活用した広報宣伝・受入体制の整備
二〇〇二年ワールドカップサッカー大会開催を契機として、国際観光振興、地域振興を図るため、競技開催地を含めた日本の観光紹介の海外広報宣伝などを行った。
(7) アジアの近隣諸国との観光交流の促進
@ 日中両国の観光交流の促進
中国との観光交流を促進するため、十二年九月に中国国民の団体観光旅行が開始された。
また、国際観光振興会北京事務所は、北京においてジャパン・デーを開催するなど、中国人の訪日旅行の促進を図った。
A 日韓両国の観光交流の促進
十二年十一月、日韓両国観光当局において、日韓両国民の相互交流と他地域からの来訪者数の倍増をめざす「東アジア広域観光交流圏構想(EASTプラン)」について基本的に合意し、今後必要な施策を検討し、具体的に推進していく。
3 日本のPR活動・国際交流事業の積極的展開
外国人旅行者の訪日促進のため、国際観光振興会は、海外での広報・宣伝活動として、観光促進展などの開催、各国の有力紙、テレビなどを通じた広報活動、外国の旅行業者・報道関係者などに対する宣伝活動、インターネットなど多様な媒体による海外への情報提供などを実施した。
また、在外公館による日本紹介や訪日促進活動、国際交流基金の広報活動、国際博覧会への参加、日本放送協会の国際放送などにより対日理解の増進を図った。
4 国内各地での国際交流施策の展開
国際観光振興会は、ツーリストインフォメーションセンター(東京、京都)の運営、全国各地の「i」案内所の整備・充実(十二年十二月現在、百二か所)、低廉宿泊施設「ウェルカム・イン」などの宿泊情報の提供、国際観光テーマ地区外客誘致推進事業(JAPAN QUEST)などを進めるとともに、外国人旅行者に対する善意通訳(グッドウィル・ガイド)の普及等を推進した。
5 旅行関連手続の円滑化施策の展開
旅行関連手続に関しては、適正な出入国管理を行うために査証審査を厳格に行いながら、人的交流を促進する観点から、査証発給手続の簡素化・迅速化を推進するなど、出入国管理、査証発給手続、検疫、通関などの各種手続などの円滑化を図った。
6 日本人海外旅行者の安全確保施策の展開
海外旅行者の増加に伴い、海外旅行中に病気、交通事故及び犯罪などに遭遇する日本人が増加しているため、外務省海外安全相談センター、国際観光振興会などが、パンフレット、ビデオなどを作成・配付し、広報・啓発に努めるとともに、外務省ホームページにおいて、インターネットを通じて五段階の「海外危険情報」を提供した。
7 世界の国々との観光交流強化施策の展開
観光の分野における二国間の観光協議の開催、関係国際機関などへの協力、開発途上国に対する専門家の派遣、研修員の受入れなどの支援、協力を行った。
W 国内観光振興のための幅広い施策の展開
―地域と旅行者との触れ合いの進展―
1 国・地方公共団体などの連携施策の展開
(1) 広域連携観光振興会議(WAC21)の開催
地方ブロック単位で「広域連携観光振興会議(WAC21)」を開催し、より広域での観光振興をめざしている。十三年二月には、三回目の広域連携観光振興会議が南九州ブロック(熊本、宮崎及び鹿児島の三県)において開催された。
(2) 地域伝統芸能などを活用した観光の振興
十二年八月には、北海道旭川市において「第八回地域伝統芸能全国フェスティバル」が開催されたほか、海外においても地域伝統芸能などを披露し、観光客の誘致に努めている。
(3) 北海道の観光振興策の推進
北海道への来道者数はここ数年増加傾向にあったが、十二年度は前年比三・九%減と、三月の有珠山噴火の影響により減少した。
政府においては、観光基盤の整備、観光資源情報ネットワークの充実、アウトドア活動に資する施設整備などを通じ、北海道の特色を生かした観光振興を積極的に支援している。
(4) 沖縄の観光振興策の推進
観光産業は、沖縄県の基幹産業の一つであり、沖縄観光の魅力をより高めることが必要であることから、沖縄振興開発特別措置法等の改正により、観光振興地域制度及び沖縄型特定免税制度を創設したほか、本土・沖縄路線に係る航空機燃料税の特例措置の拡充により、より一層の観光振興を図ってきた。
十二年度においても、沖縄観光振興に資するため、観光拠点や関連インフラの整備を引き続き着実に推進し、積極的に支援している。
2 旅行に係る消費者保護・サービス向上施策の展開
(1) 旅行業等に係る施策
インターネット取引の適正化を図るため、十二年六月に旅行業協会は旅行業者などが遵守すべきガイドラインを定め、これを遵守しているホームページに対して、適正マーク(e−TBTマーク)を交付している。
またインターネットによる旅行取引の拡大に対応し、旅行契約の締結に際し義務付けている書面の交付について、電磁的方法によってもできるようにするため、旅行業法の改正を行った。
(2) 価格・サービスの多様化等
@ 宿泊旅行
近年の国民の旅行ニーズの多様化などに対応するため、体験型旅行商品の提供、旅館における泊食分離制度の導入など、新しい形態のサービスが提供されている。
A 鉄道
鉄道運賃制度については、十二年三月から施行された改正鉄道事業法において、認可を受けた上限運賃の範囲内であれば、自由に設定変更できることとされた。鉄道事業者は、沿線観光施設の割引を受けられるカードの発売など、積極的に旅客の誘致を図っている。
B 航空
国内航空運賃については、十二年二月から施行された改正航空法において、事前届出制へ移行したことにより、航空会社の経営判断による自由な運賃・料金の設定・変更が可能となった。これを受け、運賃・料金の更なる多様化・低廉化の動きが進んでいる。
(3) 観光情報提供体制の整備
観光情報、海洋情報・林野森林情報など、観光地の最新情報の正確かつ迅速な提供体制の充実を通じて、新たな観光需要の喚起を図る観点から観光情報システムの整備を図っている。
(4) 高齢者・障害者などの円滑な移動の確保
交通バリアフリー法が十二年五月公布され、同年十一月に施行された。
公共交通機関、歩行空間、道路交通、観光地、宿泊施設、文化施設、その他の観光関連施設において、高齢者・障害者などの円滑な移動を確保するため、エレベーター・エスカレーターの設置、歩道などの施設の整備改善、障害物の除去などのバリアフリー化を推進するとともに、運賃の割引措置などを講じた。
3 観光資源の保全・保護施策の展開
自然環境の保全、文化遺産の保存・世界遺産の登録、観光資源の保護活動などを推進した。
4 観光レクリエーション施設などの整備施策の展開
公的観光レクリエーション施設などの整備を推進するとともに、民間による様々なレクリエーション施設の整備が進められた。
5 観光関連施設の整備施策の展開
博物館などの文化施設や体育・スポーツ施設の整備を推進した。
6 宿泊・休養施設の整備施策の展開
ホテル・旅館の整備とともに、国民宿舎、ユースホステルなどの公的施設の整備を推進した。
7 観光基盤施設の整備施策の展開
鉄道、道路交通、航空、海上交通など、各旅客輸送施設の整備を推進した。また、整備新幹線については、着実に整備を進めた。
8 観光に係る安全確保対策の展開
鉄道、道路、航空及び海上交通の交通安全対策、宿泊施設などにおける火災防止対策、食品衛生対策、気象、地震などの情報提供体制の整備などを推進した。
9 地方公共団体による観光振興施策の展開
地方公共団体は、自然環境の保全、文化財の保護、観光施設の整備など、観光振興に積極的に取り組んでおり、観光基本計画などを策定し、総合的な推進を図っている。
観光ボランティアガイドが全国各地で展開されており、地域の活性化・観光振興にとって重要な役割を果たしている。
【平成十三年度において講じようとする観光政策】
T 触れ合いと活力に満ちた観光交流大国日本の実現をめざして
1 基本的視点
我が国は二十一世紀初頭において、「観光交流大国」を国是として、以下のような視点から、観光振興を国づくりの大きな柱に据えていくべきである。
@ 誰もが「気軽」に楽しめる観光の振興
A 住民と旅人とが互いに交流しあう観光の振興
B 自然・社会環境と共生する観光の振興
2 重点的施策の方向
以下の施策を重点的に推進し、「触れ合いと活力に満ちた観光交流大国日本」を実現していく。
・観光まちづくりの推進
・観光分野でのITの積極的活用
・高齢者などが旅行しやすい環境づくり
・外国人観光客の来訪促進のための戦略的取組み
・観光産業の高度化・多様化
・連続休暇の拡大・普及促進と長期滞在型旅行の普及
・国民の意識喚起
U 国際観光の振興に向けた総合的施策の展開をめざして
―ワールドカップなどの開催をバネに―
1 「新ウェルカムプラン21」による外国人旅行者の訪日促進
「新ウェルカムプラン21」による外国人旅行者の訪日促進を図るため、国際観光テーマ地区の整備と重点的観光宣伝の実施、国際交流拠点・快適観光空間の整備、外国人旅行者の国内旅行費用の低廉化と接遇の向上、海外観光宣伝・キャンペーンの実施などを推進する。
2 世界観光機関総会、ワールドカップ等を契機とする国際観光の振興
十三年九月に大阪市で開催される世界観光機関(WTO)第十四回総会は、加盟国(百三十二か国)の観光担当大臣・次官を含め世界の官民観光関係者が一千人以上参加する予定の国際会議であり、総会参加者に対し積極的に宣伝活動を行う。
3 海外における訪日促進活動・国際交流
国際観光振興会により、韓国、中国などを対象として、日本の観光魅力をPRする訪日旅行促進キャンペーンを実施するなど、訪日旅行を促進するための諸事業を実施する。
また在外公館などで各種広報媒体を利用した日本の紹介活動を積極的に展開する。
4 国内における国際交流の推進対策
国際コンベンションの誘致の促進、開催の円滑化を柱とした総合的な施策を講じるとともに、日韓共催で行われる二〇〇二年のワールドカップサッカー大会についての支援・協力、愛知県における二〇〇五年日本国際博覧会の開催についての博覧会協会への支援、二〇〇八年オリンピックの大阪市への招致に向けた支援・協力などを行う。
また「外客誘致の促進」や「観光による地域振興」に資する映画のロケーション撮影をスムーズに進めるための支援組織(FC:Film Commission)の設立を積極的に支援する。
5 旅行関連手続の円滑化
出入国管理に関して、今後とも出入国審査の適正・円滑な処理に努めるとともに、出入国審査体制の整備を図るなど、旅行関連手続の適正・円滑な処理に努める。
6 日本人の海外旅行に対する施策
日本人海外旅行者の安全確保のため、外務省海外安全相談センターや国際観光振興会による旅行の安全に関する情報の提供、相談・案内業務の実施、安全対策の啓発、旅行業者などへの積極的な情報提供に努める。
7 観光の分野における国際協力など
世界観光機関(WTO)などが行う観光関係の活動について協力するとともに、開発途上国に対する技術協力の一環として、国際協力事業団を通じた観光分野の研修員の受入れ、専門家の派遣及び開発調査の充実を図る。
特に、二〇〇一年九月に日本と韓国で共同開催されるWTO総会は、世界各国から多数の出席者が見込まれ、我が国の国際観光の振興、国際親善などに大きな意義を有するため、総会の成功に向けて必要な支援・協力を行う。
V 国内観光振興のための幅広い施策の展開をめざして
―地域との触れ合いを求めて―
1 国・地方公共団体などの連携施策の展開
(1) 地方公共団体の観光施策への支援・協力
観光資源の保全・保護、公的観光レクリエーション地区・施設の整備、観光関連施設の整備、観光基盤施設の整備などを行う地方公共団体に対して支援・協力する。
(2) 長期滞在型観光の開発・普及
改正祝日法の施行を踏まえ、祝日三連休の倍増や長期休暇取得のための環境整備を図るとともに、国内観光機運の醸成などの旅行需要喚起などのための施策を推進する。
(3) 旅フェア二〇〇一の開催
国内旅行の促進を図るため、都道府県などと旅行関連産業が連携し開催する旅の総合見本市「旅フェア二〇〇一」を、東京ビッグサイトで開催する。
(4) リアル・ジャパン・キャンペーンの実施
十三年三月から実施されることとなった「リアル・ジャパン・キャンペーン」について、消費者に対する全国規模のPR活動、観光関係者による国内観光のレベルアップ運動などの活動を実施する。
(5) 広域観光テーマルート・バリアフリー観光空間の整備
「広域観光テーマルート」事業を行うほか、高齢者などの観光の促進などを目的とする「バリアフリー観光空間整備事業」を行う。
(6) 北海道の観光振興策の推進
北海道観光産業の飛躍的発展を図るため、道路・空港・港湾などの整備や、観光情報システムの充実などの観光基盤の整備などについて、各種の措置を講ずる。
十三年度においては、「北海道の観光を考える百人委員会」における北海道観光モデルルート設定を図るための支援などを行う。
(7) 沖縄の観光振興策の推進
沖縄の基幹産業ともいえる観光の振興を図るために、引き続き関連施設の整備促進を行う。
また観光振興地域制度及び沖縄型特定免税店制度に関して、魅力ある観光拠点の形成と制度の効果的な運用に努める。
2 旅行に係る消費者保護・サービス向上施策の展開
(1) 旅行に関する消費者保護、価格・サービスの多様化
旅行取引の公正さや一層の消費者保護などを図るため、旅行業法の円滑な実施を引き続き図る。
また運輸事業者が各種運賃・料金施策を引き続き行えるよう体制を整え、利用者サービスの一層の充実を図る。
(2) 観光情報提供の高度化
インターネットなどの情報通信メディアなどを活用し、国民に観光地の最新情報を正確かつ迅速に提供するための観光情報提供体制の整備を進めるとともに、国際相互理解の増進や観光振興を通じた地域の活性化に資するため、利用者が容易に検索可能な形で情報提供を行う、次世代観光情報基盤の整備を引き続き推進する。
(3) 高齢者・障害者などの円滑な移動の確保
十二年十一月に施行された「交通バリアフリー法」などにより、バリアフリー化の一層の推進を図るほか、各公共交通機関で身体障害者などの運賃割引を実施するなど、障害者などの円滑な移動の確保を図る。
3 観光資源の保全・保護施策の展開
自然環境の保全・文化遺産の保存、観光資源の保護活動などを行う。
4 観光レクリエーション施設などの整備施策の展開
オートキャンプ場、休暇村などの整備、農山漁村地域における交流・触れ合い施設などの整備、森林・公園などを活用したレクリエーション施設などの整備を行う。
5 観光関連施設の整備施策の展開
博物館、美術館や体育・スポーツ施設の整備・充実を図るとともに、新国立劇場においては、オペラ等の公演のほか、研修事業の実施などを行う。
6 宿泊・休養施設の整備施策の展開
宿泊施設の整備に対する融資制度による支援を行うとともに、高齢者などの利用に配慮した宿泊施設の整備を図るため、シルバー・スター登録制度の普及を促進する。
7 観光基盤施設の整備施策の展開
整備新幹線・大都市鉄道の整備、大都市圏の拠点空港の整備を優先課題とする空港整備、旅客船ターミナル・マリーナなどの整備を推進するとともに、道路整備五箇年計画に基づいて、道路政策を重点的かつ計画的に推進する。
8 観光に係る安全確保対策の展開
(1) 交通安全対策の推進
鉄道事故の防止を図るため、自動列車停止装置(ATS)などの整備を進める。
また近年の交通事故の多発傾向にかんがみ、安全かつ円滑・快適な道路交通環境の整備を図るため、特定交通安全施設等整備事業七箇年計画に基づいて、交通安全施設などの一層の整備拡充を図る。
航空交通については、安全性、効率性及び管制処理能力の向上を図るため、衛星を利用した航空管制を行うための航空衛星システムの整備を推進するとともに、航空路監視レーダーの性能向上整備の推進、方位・距離情報提供施設の性能向上整備などを進める。
また海上交通の安全を確保するため、海事関係法令の励行に重点を置くとともに、航路標識の新設などを計画的に推進する。
(2) 自然災害への対応と観光需要の喚起
有珠山噴火の影響により被害を受けた北海道、三宅島の噴火などにより被害を受けた伊豆諸島など及び鳥取県西部地震により被害を受けた鳥取県・島根県などを含めて、今後とも引き続き事故災害があった際の風評被害などに対応し、必要に応じ、観光促進キャンペーンなどの観光需要の喚起のための支援を実施する。
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消費支出(全世帯)は実質三・六%の減少
◇全世帯の家計
前年同期比でみると、全世帯の消費支出は、平成十一年七〜九月期以降五期連続の実質減少となり、十二年十〜十二月期、十三年一〜三月期は二期連続の実質増加となったが、四〜六月期は実質減少となった。
一人当たりの消費支出は九万三千四百五十八円で、前年同期に比べ実質三・〇%の減少となった。
◇勤労者世帯の家計
前年同期比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成九年十〜十二月期以降五期連続して実質減少となった後、十一年一〜三月期は実質増加、四〜六月期は前年同期と同水準となり、七〜九月期以降は八期連続の実質減少となった。
また、消費支出は、平成十二年七〜九月期、十〜十二月期と二期連続の実質減少となった後、十三年一〜三月期は実質増加となったが、四〜六月期は実質減少となった。
◇勤労者以外の世帯の家計
勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十六万九千百九十二円となり、前年同期に比べ、名目三・四%の減少、実質二・八%の減少となった。
◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)
季節調整値でみると、全世帯の消費支出は、前期に比べ実質二・三%の減少となった。
勤労者世帯の消費支出は、前期に比べ実質三・三%の減少となった。
●あなたのまちの幸せのために赤い羽根共同募金
毎年十月一日から十二月三十一日は、全国で一斉に「赤い羽根共同募金運動」が行われます。
昨年の共同募金運動で、皆さんの協力により集まった金額は、約二百四十八億円にも達しました。皆さんの募金は、
・ひとりぐらしのお年寄りに届けるお弁当
・寝たきりのお年寄りの入浴サービス
・お年寄りや障害者のリハビリ活動
・障害者の車いす
・障害者のスポーツ用具
・ブランコなどの公園の遊具
など、そのほかにも多くのものに姿を変えてたくさんの人たちのために役立てられています。
障害者やお年寄りなどが、安全に生活するためには多くのお金がかかります。例えば、目の不自由な人を助ける盲導犬を一頭育てるには、約二百五十万円ものお金が必要です。また、障害者やお年寄りが外出するために必要な車いす一台の値段は、約十万円。どれも個人で負担するには大きすぎる金額です。けれど、たとえ一人十円でも、一万人が募金をすれば車いすを購入することができます。二十五万人が協力すれば、盲導犬一頭を育てることができるのです。
「赤い羽根共同募金運動」への皆さんの協力は、確かな形となって、多くの方の助けとなっています。一人ではできないことも、みんなで協力すれば実現できることがあります。平成十三年の「赤い羽根共同募金運動」への、皆さんのあたたかいご協力をお待ちしています。
◇賃金の動き
七月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は、前年と同水準の四十三万四千八百九十八円であった。
現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万二千七百二十円、前年同月比〇・五%減であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万五千三百十五円、前年同月比〇・一%減、所定外給与は一万七千四百五円、前年同月比は五・七%減であった。
また、特別に支払われた給与は十五万二千百七十八円、前年同月比は〇・八%増であった。
実質賃金は、〇・九%増であった。
きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に金融・保険業二・五%増、電気・ガス・熱供給・水道業〇・五%増、卸売・小売業,飲食店〇・一%増、製造業〇・三%減、サービス業〇・七%減、鉱業一・〇%減、運輸・通信業一・二%減、不動産業一・五%減、建設業一・八%減であった。
◇労働時間の動き
七月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一五六・六時間、前年同月比は〇・一%減であった。
総実労働時間のうち、所定内労働時間は一四七・四時間、前年同月比〇・二%増、所定外労働時間は九・二時間、前年同月比五・二%減、所定外労働時間の季節調整値は、前月比二・〇%減であった。
製造業の所定外労働時間は一二・三時間、前年同月比一〇・二%減、季節調整値の前月比は一・六%減であった。
◇雇用の動き
七月の調査産業計の雇用の動きを前同月比によってみると、常用労働者全体で〇・二%減、常用労働者のうち一般労働者では〇・九%減、パートタイム労働者では二・六%増であった。
常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものは、サービス業二・二%増、不動産業〇・九%増、建設業〇・四%増であった。前年同月を下回ったものは、運輸・通信業〇・五%減、卸売・小売業,飲食店〇・八%減、鉱業〇・九%減、製造業一・九%減、金融・保険業四・三%減、電気・ガス・熱供給・水道業六・三%減であった。
主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・一%減、パートタイム労働者一・一%減、卸売・小売業,飲食店では一般労働者二・八%減、パートタイム労働者二・四%増、サービス業では一般労働者一・六%増、パートタイム労働者四・五%増であった。
●毎年十月一日〜七日は「全国労働衛生週間」
昨年の職業性疾患による被災者の総数は八千八十三人。十年前の約三分の二まで減少したものの、現在でも、依然として腰痛、じん肺症、有機溶剤中毒などの職業性疾患は後を絶ちません。また、ごみ焼却施設でのダイオキシン類問題が、労働環境でも大きな問題となっています。
労働者の健康状態についても、一般健康診断において所見を有する労働者が四割を超えるとともに、仕事や職場生活に関する強い不安や悩み、ストレスを感じる人の割合が年々増加しており、職場での労働者の心と体の健康づくりが重要な課題となっています。
毎年十月一日〜七日は、全国労働衛生週間。昭和二十五年から実施されているこの週間は、今年で五十二回目を迎えます。
この週間では、そうした労働衛生に関するさまざまな問題に対して、国民の皆さんの意識を高め、さらに事業場での自主的な労働衛生の管理活動を促すことで、労働者の健康の確保と快適な職場環境を形成することを目的としています。
●『新世紀標準! 健康であふれる快適職場』
今年の全国労働衛生週間のスローガンは、「新世紀標準! 健康であふれる快適職場」に決まりました。このスローガンは、これまでの職業性疾病予防対策の一層の推進に加えて、より健康で快適に働ける職場の実現をめざそうという意図が込められています。
このスローガンのもと、事業者、労働者、労働衛生管理スタッフの皆さんが連携して各職場の労働衛生管理活動を行っていくことが、安心して働ける快適な職場環境の実現に結びつくのです。
総 論
(我が国経済の基調判断)
景気は、引き続き悪化している。
・個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、一部で弱い動きがみられる。
・失業率は過去最高の五%台となり、求人や残業時間も弱含んでいる。
・輸出、生産が大幅に減少し、設備投資も減少している。
先行きについては、世界経済の一層の減速や在庫率が高水準にあることなど、懸念すべき点がみられる。
(政策の基本的態度)
政府は、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」に従い、日本経済の再生のための構造改革を断行することとしており、構造改革を強力かつ迅速に遂行するため、先行して決定・実施すべき施策を「改革先行プログラム」としてとりまとめ、平成十三年度補正予算を編成する。
なお、日本銀行においては、八月十四日に金融市場調整方針を変更し、日本銀行当座預金残高を六兆円程度に増額するとともに、長期国債の買い入れを月六千億円ペースに増額すること等を決定した。
各 論
一 消費・投資などの需要動向
平成十三年四〜六月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、民間最終消費支出がプラスに寄与したものの、民間企業設備、民間住宅がマイナスに寄与したことなどから、前期比で〇・八%減(年率三・二%減)となった。また、名目GDPの成長率は前期比で二・七%減となった。
◇個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、一部で弱い動きがみられる。
消費総合指数をみると、このところ減少が続いている。
また、需要側統計である家計調査でみると、実質消費支出は、平成十三年七月は前月を上回ったものの、このところ弱い動きが続いている。
販売側統計をみると、小売業販売額やチェーンストア販売額は、依然として弱い動きが続いている。百貨店販売額は、夏物クリアランスセールや中元ギフトセールの開催時期を早めたことの反動などにより、前年を下回った。
耐久消費財の販売については、新車販売台数は、新型車が好調に推移していることから、前年を上回った。一方、家電販売金額は、エアコンが引き続き大幅に増加したものの、パソコンの前年比減少幅が大きく拡大していることなどから、弱い動きが続いている。
旅行は、海外旅行は前年をやや下回ったものの、国内旅行は上回っており、総じてみると好調な動きとなっている。
こうした需要側と販売側の動向を総合してみると、個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、一部で弱い動きがみられる。
個人消費の動向を左右する家計収入の動きをみると、定期給与は引き続き前年を下回っており、弱い動きが続いている。また、現金給与総額は特別給与の増加により前年比横ばいとなった。
◇設備投資は、減少している。
設備投資は、平成十二年中は増加基調が続き、景気を支える要素であったが、生産の減少、企業収益の鈍化等を背景に平成十三年に入り頭打ちに転じ、このところ減少している。「法人企業統計季報」でみると、四〜六月期の設備投資は、減少している。また、機械設備投資の参考指標である資本財出荷は、年明け以降減少を続けている。
設備投資の今後の動向については、日銀短観の平成十三年度設備投資計画において非製造業を中心に減少が見込まれていること、機械設備投資の先行指標である機械受注が一〜三月期以降減少基調で推移し七〜九月期も減少の見通しとなっていることなどからみて、減少が続くものとみられる。
◇住宅建設は、減少している。
住宅建設は、平成十一年以降おおむね年率百二十万戸前後で推移してきたが、平成十三年四〜六月期は百十五万戸程度となり、前期と比べ2四半期連続で減少している。これは、昨年堅調であったマンションの着工が落ち着いてきたことに加え、年明け以降公庫持家の着工が大きく水準を下げて推移していることが主因である。この背景としては、資産価格が長期的に下落傾向にある中、雇用・所得環境が厳しさを増していることなど、消費者の住宅取得マインドが低下していることが考えられる。七月は年率百二十二・七万戸となり単月では水準を戻したが、これは共同建分譲住宅の着工が前月と比べ大幅に増加したことによる。
先行きについてみると、住宅金融公庫融資の申し込み戸数が減少していることなど、住宅着工を減少させる要因が引き続きみられる。
◇公共投資は、総じて低調に推移している。
公共投資は、総じて低調に推移している。工事の前払金保証契約実績に基づく公共工事請負金額は、昨年六月以降三月まで継続して前年を下回り、年度末にかけて発注が集中する一〜三月期の受注においても、前年を大きく下回る指標がみられた。
平成十三年度当初における公共事業関連予算をみると、国の公共事業関係費は前年度に近い予算現額を確保しているものの、地方の投資的経費は、厳しい財政状況を反映して引き続き前年度を下回っている。
このような状況を反映して、四〜六月期の受注額、請負金額は引き続き前年を下回った。ただし、七月の請負金額は前年を上回ったほか、大手五十社の受注額も前年に近い額となるなど、このところマイナス幅は縮小している。
七〜九月期の公共投資については、予算状況や執行方針などを踏まえると、引き続き前年を下回る可能性がある。
◇輸出は、大幅に減少している。輸入は、減少している。貿易・サービス収支の黒字は、減少している。
輸出は、世界経済の減速を背景として、半導体等電子部品などの電気機器に加え一般機械などが減少していることから、大幅に減少している。地域別にみると、アジア、アメリカ、EUのいずれの地域向けも減少している。今後も、世界経済の減速が続いた場合、これが我が国輸出の下押し要因として作用するものと見込まれる。
輸入は、内需の弱さを反映して、半導体等電子部品などの機械機器を中心に減少している。地域別にみると、アジアからの輸入はアジアNIEsからの輸入が機械機器を中心に大幅に減少するなど減少傾向で推移しており、アメリカ・EUからの輸入も減少している。
国際収支をみると、輸出・輸入数量ともに減少しているが、輸出数量が輸入数量の減少を上回って減少していることを要因として、貿易・サービス収支の黒字は、減少している。
二 企業活動と雇用情勢
◇生産は大幅に減少し、在庫率は高水準にある。
鉱工業生産は、今年に入ってから二期連続で大幅に減少し、七月も減少した。輸出の減少等により、IT関連品目の生産が減少していることが主因である。
生産の先行きについては、八月は増加、九月は減少が見込まれている。また、IT関連品目を中心に在庫が減少しているものの、在庫率は依然として高い水準にあることは、生産の先行きに関して懸念すべき点である。
一方、第三次産業活動の動向をみると、おおむね横ばいで推移している。
◇企業収益は、頭打ちとなっており、電気機械を中心に製造業では減益となっている。また、企業の業況判断は、製造業を中心に引き続き悪化している。倒産件数は、やや高い水準となっている。
企業収益は平成十一年以降改善が続いていたが、「法人企業統計季報」によると、人件費が増加してきたこと、売上高の増収幅が縮小してきたこと等により、全体としては頭打ちとなっている。さらに、平成十三年四〜六月期には電気機械を中心に製造業では減益に転じており、日銀短観によると平成十三年度上期は全産業で減益に転じる見込みとなっている。
企業の業況判断について日銀短観をみると、大企業・非製造業では横ばいとなったが、電気機械を中心に製造業で引き続き大幅に悪化するなど、厳しさがみられる。また、「法人企業動向調査」で大中堅企業の業界景気の判断をみると、製造業、非製造業ともに悪化している。
また、七月の倒産件数は、東京商工リサーチ調べで一千五百三十四件となるなど、やや高い水準となっている。
◇雇用情勢は、依然として厳しい。完全失業率が過去最高の五%台となり、求人や残業時間も弱含んでいる。
七月の完全失業率は、前月比〇・一%上昇し、五・〇%と過去最高になった。
他にも、雇用情勢の厳しさを示す動きが引き続きみられる。新規求人数は前月比、前年同月比とも増加に転じたものの、新規求職件数が大幅に増加したため、新規求人倍率、有効求人倍率とも前月比低下となった。製造業の残業時間については、九か月連続で前月比減となっている。雇用者数は、全体ではおおむね横ばいで推移しているものの、製造業において弱い動きがみられる。「残業規制」等の雇用調整を実施した事業所割合も、四〜六月期は上昇している。
三 物価と金融情勢
◇国内卸売物価、消費者物価は、ともに弱含んでいる。
輸入物価は、このところ、契約通貨ベース、円ベースともに下落している。国内卸売物価は、平成十三年入り後弱含んでいる。最近の動きをみると、石油・石炭製品などは値上がりしているものの、電気機器や非鉄金属などが値下がりしていることから、下落している。また、企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
消費者物価は、平成十二年秋以降弱含んでいる。最近の動きをみると、外食の下落の効果が一巡したことなどにより一般サービスは前年と比べ横ばいとなっているものの、耐久消費財の下落などにより一般商品は下落していることから、全体としては下落している(なお、消費者物価指数は平成十二年基準への改定が実施され、平成十三年入り後の前年比下落率が旧基準に比べ〇・三%ポイント程度拡大している)。
こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。
◇金融情勢については、株式相場は、七月以降、一段と下落している。
短期金利についてみると、オーバーナイトレートは、八月は、日本銀行による金融緩和措置を反映して、〇・〇一%近傍で推移した。二、三か月物は、四月以降、低位での推移が続いており、八月は、日銀の金融緩和拡大を受けてさらに低下した。長期金利は、昨年秋より低下基調で推移してきたが、国債の需給悪化を懸念する市場の見方などもあって、七月から八月上旬にかけて上昇した後、横ばいで推移した。
株式相場は、昨年春より下落基調で推移している。三月中旬から五月上旬にかけて一旦上昇したものの、七月以降、企業業績の悪化を懸念する市場の見方などもあって、一段と下落している。
対米ドル円相場は、六月以降、円安基調で推移し、七月上旬には百二十六円台まで下落したが、その後上昇に転じ、八月末にかけて百十八円台に上昇した。対ユーロ円相場は、六月から七月にかけて百九円台に下落した後、八月は百八円台から百十円台で推移した。
M2+CD(月中平均残高)は、昨年後半以降、おおむね前年同月比二・〇%増程度で推移してきたが、年明け以降、郵便貯金からの資金シフト等を受けて、やや伸び率を高めている(八月速報:前年同月比三・四%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、九六年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷などを背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、金融緩和などを背景に、年明け以降低下傾向にある。
四 海外経済
◇アメリカの景気は、弱い状態となっている。アジアでは景気は減速している。
世界経済をみると、全体として成長に減速がみられる。
アメリカでは、企業収益の悪化から設備投資が大幅に減少する一方で、個人消費に底堅い動きがみられ、住宅投資が増加していることなどから、内需は緩やかながら増加している。在庫調整が進むなかで、生産活動が停滞し、稼働率が低下している。雇用は製造業等を中心に減少しており、失業率は上昇している。景気は、弱い状態となっている。先行きについては、所得税減税の効果が注目される一方、輸出の減少などが懸念材料となっている。
ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は減速している。フランスでは、景気は安定した拡大を続けているものの、企業の先行き見通しは悪化している。イギリスでは、景気の拡大テンポは鈍化している。
アジアをみると、中国では、個人消費や固定資産投資が堅調に推移しているが、このところ輸出の伸びが鈍化していることから、景気の拡大テンポはやや鈍化している。韓国では、生産や輸出が減少するなど、景気は減速している。
金融情勢をみると、世界的に株安傾向が強まっている。ドルは、七月から八月中旬にかけて年初来のドル高傾向をやや修正する動きがみられた。アメリカ、ユーロ圏では、それぞれ八月二十一日、三十日に、いずれも〇・二五%ポイントの利下げが決定された。
国際商品市況をみると、CRB先物指数は、世界経済の減速による需要減を受けて、一年十か月ぶりに二百ポイントを割り込んだ。
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