官報資料版 平成12年6月21日




                  ▽漁業白書のあらまし……………………………………………………水 産 庁

                  ▽月例経済報告(五月報告)……………………………………………経済企画庁

                  ▽普通世帯の消費動向調査(平成十二年三月実施調査結果)………経済企画庁











漁業白書のあらまし


―平成11年度 漁業の動向に関する年次報告―


水 産 庁


 「平成十一年度漁業の動向に関する年次報告」及び「平成十二年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」(いわゆる漁業白書)は、平成十二年四月十一日、閣議決定の上、国会に提出、公表された。
 「平成十一年度漁業の動向に関する年次報告」の第一部「漁業の動向に関する報告書」においては、我が国が、水産業の持続的な発展を確保するため、来年の通常国会に向け、新たな基本法(仮称)をとりまとめることとしている状況の下で、今後の政策展開についての国民の理解や合意形成に資するような内容とすることを基本に作成している。具体的には、消費者の視点から、食において水産物が果たしている役割、国民と漁業地域のつながり等国民的な議論の素材を提供することに重点をおいて記述しているとともに、水産資源の持続的利用と海洋環境の保全、漁業生産構造と漁業経営の現状等、漁業を取り巻く動きについて幅広く分析、検討している。
 本報告書のあらましは次のとおりである。

はじめに

 我が国水産業は、平成八年六月の「国連海洋法条約」の批准により、本格的な二百海里時代を迎えた。また、水産業をめぐっては、周辺水域における水産資源の悪化等による漁獲量の減少、担い手の減少・高齢化の進行、漁業地域の活力の低下等厳しい状況に直面している。
 こうした中で、我が国水産業の持続的な発展を確保するためには、新たな海洋秩序に即応した水産行政の基本政策の確立が必要となっており、我が国水産業はいわば政策の転換点に立ち至っている。
 このような諸情勢の下、平成十一年十二月、今後の水産政策の指針となる水産基本政策大綱が決定されたところであり、今後これに沿って、平成十三年の通常国会に向けた新たな基本法のとりまとめ等施策の具体化が進められることとなっている。
 水産政策は、水産物の供給をはじめ国民生活に密接に関連した課題であることから、その確立に当たっては、我が国経済社会における水産業、漁業地域の役割や位置付けについての国民の理解や合意が必要である。
 十一年度の漁業の動向に関する年次報告は、このような観点に立ち、水産業、漁業地域をめぐる課題や今後のあるべき方向についての国民的な議論に資するよう、国民生活と水産業、漁業地域のかかわりを考える素材を提供することに重点をおいた。

第T章 国民生活と水産業、漁業地域のかかわり

一 我が国の水産物消費

(一) 水産物の消費量
(食料消費に占める水産物の位置)
 魚介類の供給量は増加傾向で推移してきたが、食料総供給量がほぼ頭打ちの状態となるのに伴い、近年では横ばいで推移している。純食料の供給熱量ベースでは、一人一日当たり総供給熱量の約五%を魚介類が占めている。
 また、魚介類は、国民への供給総たんぱく質の二割、動物性たんぱく質の四割を占める重要な食料であるとともに、魚介類や海藻類は、カルシウム、微量元素(鉄、亜鉛等)等の各種栄養素の重要な供給源ともなっている(第1図参照)。
(我が国の水産物消費の特徴)
 国民一人当たりの魚介類供給量は、世界の平均が一五・九キログラムであるのに対し、我が国の供給量は七〇・六キログラムとこれを大きく上回り、世界で四番目の水準である。我が国と主要国の食生活を比較すると、我が国の魚介類供給量が高水準であることを反映し、動物性たんぱく質の供給に占める魚介類の比率が高いことが特徴の一つに挙げられる。
 魚介類の消費状況を国内の地域ごとに比較してみると、北海道及び東北で摂取量が多く、沖縄県を含む南九州で少ない状況にある。また、家庭において購入する魚種内容も、北海道ではいかやさけが、関東地方ではまぐろが、北陸地方ではいかやぶりが多いなど地域による特色がある。
 また、祝事等において各地で固有の魚介類が用いられていることにみられるように、水産物は地域の伝統行事や食文化の形成に深くかかわっている。
 年齢階層別に魚介類の摂取量をみると、若年齢層よりも高年齢層で多く、五十歳代で頂点となっている。また、魚介類の摂取量は、年齢を加えるにつれて増加している。

(二) 多様化する水産物消費
(流通品目の多様化)
 国内で流通する水産物の品目は、全体的には増加している。これには、消費者の需要の変化とともに、内外の水産資源の変化、高速交通網の整備等の水産物流通体系の改善等の状況が反映されている。
(消費形態の多様化)
 家庭における魚介類の購入量の推移をみると、昭和三十八年当時、あじ、さば、いかの三魚種で全体の三一%を占めていたが、近年ではまぐろ、さけ、ぶり、えび、かに等の中高級魚介類が増加しており、かつてのような特定の魚種への消費の偏りは見られなくなっている。平成十年において購入量の多い魚介類は、いか、まぐろ、さけ、あじの順となっている。
 家庭における生鮮・塩干魚介類別の購入量の推移をみると、食生活が塩分を控える方向に変化していること等から、生鮮魚介類の割合が高まってきている。また、生鮮魚介類の購入形態も、家族構成員の減少等から、小口の切り身パックや刺身盛り合わせのようにそのまま食卓に供することができるものへと変化してきている。
 また、水産物は、近年、弁当やそう菜等の調理食品の購入(いわゆる「中食」)や外食形態での消費が増加していると考えられる。
(購入先の変化)
 家庭における魚介類の購入先は、かつては専門小売店(いわゆる魚屋)が主体であったが、近年ではスーパーマーケットの割合が高まっている。さらに、カタログ購入等水産物の購入先は多様化してきている。

(三) 水産物消費に関する消費者の意識
 魚料理に関する消費者の意識についてのアンケート調査結果からみると、「健康によい」との回答が九割を超え、特に高い評価となっている。これは、近年、我が国の食生活において、脂質の過剰摂取やカルシウムの摂取不足等が懸念されている中で、水産物の優れた栄養特性が注目されるようになっていることを反映していると考えられる。また、今後の水産物の利用については、「利用したい」という意向が極めて高い状況にある。
 漁獲や水揚げといった生産活動が一般的には国民の生活の場と離れたところで営まれていること等から、消費者にとって水産物の生産、流通等の事情を理解しにくい面がある。また、輸入品を含め多種多様な水産物がさまざまな形態で供給されている中で、スーパーマーケット等の伸展により対面販売の機会が減少していることもあって、消費者にとって購入しようとする水産物の素性が従来に増して分かりにくくなっている。こうした事から、食料についての鮮度や安全性への関心を高めている消費者は、水産物についても、品質表示等の的確で分かりやすい情報の提供を求めている。

二 消費者ニーズに対応した水産物の供給

(一) 漁業
 我が国周辺水域は世界的に見ても生産力の豊かな好漁場であることから、古くからさまざまな漁具漁法により水産物を漁獲してきている。
 我が国の漁業生産量は、漁船の漁獲能力の向上、漁場の外延的拡大、まいわし資源の増大等により、昭和五十九年には一千二百八十二万トンに達したものの、水産資源の減少、国際的な漁業規制の強まり等によって、遠洋漁業、沖合漁業を中心として、近年、減少傾向で推移し、平成十年には六百六十八万トンとなった。
 漁業生産においては、良質な水産物を求める消費者ニーズに対応して、各地で高品質の水産物の生産・出荷に向けた取組が行われるようになっている。また、漁業生産段階での安全性の確保として、「食品衛生法」においては、有毒ふぐの選別、生食用かきの清浄海水による浄化、毒化した貝類の出荷自主規制等の取組がなされているとともに、「薬事法」においては、養殖で使用される抗生物質等の薬剤について使用基準が定められ、休薬期間の遵守等の指導が行われている。
 ダイオキシン類の蓄積状況については、食品中のダイオキシン類の蓄積状況についてのサンプル調査の結果によれば、魚介類には肉類、乳製品、野菜等を上回る蓄積がみられるものの、食品、大気、土壌からの摂取を合わせた総摂取量は、我が国の耐容一日摂取量の範囲内となっており、平均的な食生活において、ダイオキシン類の摂取が健康に影響を及ぼすことはないと考えられる。しかしながら、ダイオキシン類の摂取による健康への悪影響の不安を払拭するため、各種の発生源対策のほか、食品への蓄積状況の調査の充実等を図る必要がある。

(二) 水産物貿易
 水産物に対する消費者ニーズが、国内漁業生産では十分に賄えない中高級魚介類へ移行してきたことや、我が国漁業生産量の減少を背景に、水産物輸入は総じて増加傾向で推移している。現在、食用魚介類の約四割が輸入水産物によって賄われている。
 近年の我が国の水産物輸入は、景気低迷に伴って国内需要が停滞していることに加え、ペルー、チリの魚粉生産の低迷等から数量ベースでは平成八年以降減少傾向にあり、十年の輸入は、三百十万トン、一兆七千四百十六億円となった。
 世界の水産物貿易の規模は、世界的な水産物に対する需要の高まりや、開発途上国において外貨獲得のための積極的な輸出振興策がとられていること等を背景として、拡大傾向で推移してきている。我が国は、世界の輸入貿易額全体の二八%、輸入貿易量の一五%を占め、一国としては世界最大の水産物貿易市場となっている。こうした事情を背景に、近年、我が国への輸出を目的として、便宜置籍漁船によるまぐろの漁獲等資源に対して無秩序で過剰な漁獲が行われる事例等の問題が生じている。
 水産物の主要輸出国は、輸入関税の撤廃等水産物貿易の一層の自由化を求める動きを強めており、世界貿易機関(WTO)等において国際的な貿易の枠組みのあり方等について議論が行われている。我が国は水産物貿易の一方的な自由化は適切でなく、水産資源の持続的利用に貢献する貿易ルールの確立が必要との考えを粘り強く主張してきている。一九九九年(平成十一年)十二月のWTO第三回閣僚会議においては、新ラウンドの立ち上げの合意には至らなかったが、我が国は主要国とともに引き続き新ラウンドの早期立ち上げに向けての努力を継続している。
 一方、我が国の水産物輸出は、真珠のほか、開発途上国の缶詰原料向けの冷凍魚類等が主体となっているが、総じて低調に推移している。十年の輸出は、二十八万トン、一千五百二十四億円となり、三年ぶりに減少した。

(三) 水産加工業
 水産加工業は、魚介類の多様な形態への加工により、食生活の多様化、調理の簡便化等消費者ニーズに対応した水産物の供給を担っている。また、漁業生産サイドにとっては、漁獲物の最大の仕向先となっている。近年、水産加工業の経営は、国内原料の減少、輸入原料の価格上昇、製品の売れ行き不振や低価格化等が相まって収益性が低下している。さらに、労働力の確保が難しくなっているなどさまざまな問題に直面している。
 水産加工品の生産は、総じて横ばい又は減少傾向で推移している。特に、ねり製品は総体的な消費の低迷や原料供給の不安定等により減少傾向で推移している。
 平成十年五月にいくら製品が原因のO157による食中毒事故が発生し、その後、水産加工品を原因とした広域的な食中毒も発生した。水産加工業においては、業界全体の衛生管理水準の底上げを図ることが急務となっているが、アンケート調査結果をみると、水産加工業者において、製品の品質・衛生管理の徹底に関する意識が高くなっている。また、七年の「製造物責任法」(PL法)の施行に伴い、製品に対する企業側の責任の意識は高まっており、最近では、大手水産加工業者を中心にHACCP(危害分析・重要管理点)方式を採用する企業が増えてきている。消費者に対する高品質で安全な水産物供給への対応のみならず、国際的な市場競争力の確保等の観点からも、HACCP方式による品質・衛生管理体制の早急な確立が必要となっている。

(四) 水産物流通
(水産物流通の仕組み)
 水産物の流通は、卸・小売業、貨物輸送業、冷蔵倉庫業等の関連産業により、多種多様な水産物を消費者や加工業者に安定的・効率的に供給する役割を果たしている(第2図参照)。
 近年、輸入水産物の増加、スーパーマーケットや外食産業等の大口需要者による直接買い付けの増加等から、市場を経由しない流通の比重が高まっている。
 生鮮魚介類の流通をみると、産地市場においてスチロール製魚箱に氷詰めされ、トラック輸送により消費地等へ搬送されており、消費者の高鮮度志向に対応している。近年、小口の保冷宅配輸送のネットワークが全国化するとともに急成長しており、水産物についても産地直送等に利用されている。
 冷凍水産物については、一貫した冷凍流通システム(コールドチェーン)を通じて、多種多様な水産物が高鮮度で供給されている。また、コールドチェーンにおいては、水産物の品質を一年以上保持することが可能であることから、水産物の年間を通じた安定供給にも寄与している。
 また、流通段階における安全性の確保として、「食品衛生法」に基づき、流通の各段階において、輸入水産物を含めたすべての水産物について、細菌数、抗菌性物質や環境汚染物質の残留等についての監視が行われている。
(水産物流通関連産業をめぐる動き)
 近年、産地市場における水揚量の減少、消費地市場における取扱高・取扱量の減少等により、卸売業者の経営状況は厳しいものになっている。また、卸売市場における取引形態も、せり及び入札の割合が低下し、相対取引が増加している。このような状況の下で、平成十一年七月、「卸売市場法」が改正され、卸売市場において、市場・品目ごとの実態に即してせり・入札取引と相対取引が活用されるような新たな取引ルールが導入された。
 水産物の小売りは、近年、食料品スーパー、総合スーパー等のセルフ販売方式による大規模な店舗数が増加傾向にある中で、小売業における水産物の販売競争は激化している。大規模スーパーマーケット等では、他店との差別化を図り消費者を引き付けるため、地域特産魚介類の販売フェア等さまざまな試みが行われている。
 また、水産物についての的確な情報提供への要請が強まっている中、「水産物表示ガイドライン」による表示の実施率も年々上がってきている。さらに、十一年七月のJAS法の改正により、全ての生鮮食品について原産地表示を行うこと等が義務付けられた。

(五) 水産物価格
 生鮮魚介類価格は、高度経済成長期や五十年代初めの諸外国の二百海里水域設定期に、食料品全体の価格や肉類の価格を大きく上回って上昇した。六十年以降の魚介類の価格は、肉類とともに、総じて食料品全体の価格の上昇を下回って推移しているものの、消費者の間には、水産物の割高感が依然として残っている状況にある。
 一方、水産物の流通マージンの割合は、小売価格の約七割を占めており、野菜類の五割程度と比較した場合高い状況にある。さらに近年、多様なパック包装、工夫を凝らした商品陳列等の鮮魚売り場づくり、高鮮度を求める消費者ニーズに対応した温度管理等のため、流通段階における経費の増大等を招きやすくなっていることから、水産物の産地と消費地の価格差は拡大する傾向にある。

(六) 我が国の水産物需給
 我が国の食用魚介類の需要量は、おおむね横ばい傾向で推移している。これに対し、供給面では国内生産量が減少する一方で水産物輸入が増加傾向にあることから、我が国の食用魚介類の自給率は低下傾向で推移しており、平成十年においては五七%と過去最も低い水準となった。また、海藻類の自給率も徐々に低下し、六三%となった(第3図参照)。
 主要魚種の自給率は、ほとんどの魚種で低下しており、まぐろ・かじき類四七%、さけ・ます類五一%、さば類六五%、あじ類七六%、いわし類九六%、えび類六%等となっている。
 我が国において、輸入水産物は豊かな食生活を支える重要な役割を担っている。しかしながら、水産物の輸入は、輸入元国における国内需要の増大及び資源状況の悪化の両面から,中長期的には不安定な要素をはらんでおり、我が国としては、国際的な水産資源の保存・管理と持続的利用に向けた取組を推進しつつ、引き続き、国内生産力の強化に努めていく必要がある。

三 国民生活と漁業地域

(一) 水産物の供給基地としての漁業地域
 我が国の沿岸地域には、二千九百四十三か所の漁港が点在しており、漁港を中心に水揚げされた魚介類は、漁港を起点に全国各地に供給されている。また、漁港の周辺には水産加工業等の関連産業が発達し、漁港を中心に形成される漁業地域は国民への水産物の供給基地になっている。

(二) 沿海地域の基幹産業としての水産業
 漁業は、沿海地域における重要な就業の場として、地域の所得確保、地域社会の維持等に大きく寄与している。特に、離島では漁業が基幹産業となっている。
 また、漁港の周辺に水産加工業等の漁業関連産業が立地し、地域経済を支えるとともに、地域に重要な雇用の場を創出している。

(三) 国民の豊かで安全な生活を支える漁業地域
 我が国では、釣り、潮干狩り等の遊漁に加え、近年ではヨット、水上オートバイ、ダイビング等の海洋性レクリエーションも盛んになってきている。
 漁業地域内の海水浴場、マリンスポーツ場、キャンプ場等の施設を利用する都市住民等が増加しており、漁業地域は国民の健全なレクリエーションの場を提供している(第4図参照)。
 漁業は、自然環境や生態系と調和して初めてその発展を期することができる産業であり、漁業地域では海浜の清掃等の環境保全活動が日常的に実施され、沿岸域の自然環境を保全する役割を果たしている。
 また、我が国沿岸における民間ボランティアの海難救助員の約九割が漁業者となっており、海難救助において不可欠の存在となっている。
 防波堤等の漁港施設や海岸保全施設は、地域住民を自然災害から防護するとともに、船舶の緊急避難の場等としても役立っている。また、沿岸域において日常的に漁業生産活動が行われていることを通じ、密入国や領海侵犯の防止等国境域の監視の役割も果たしており、国民の安全な暮らしを支えている。
 さらに、漁業地域では、特色ある漁業生産活動が継続されることを通じ、特徴ある漁法や漁労用具、地域色豊かな魚食文化、季節の伝統行事等が継承されている。

(四) 漁村の現状と漁業地域の活性化に向けた取組
(漁村の現状)
 漁村は、概して、前面が海、背後が山といった狭隘な土地に立地しており、特に家屋が密集していることから、地震、火災等の災害にぜい弱な面を有している。また、都市と比較して、道路、下水道、廃棄物処理施設、文化施設等の生活関連公共施設の整備が立ち後れている。
 また、漁業就業者の減少等により漁業世帯数、世帯員数ともに減少傾向で推移しているほか、漁業世帯員の三割が六十歳以上となっており、漁村の高齢化が進んでいる。こうした中、荷捌き場における防風・防暑施設の整備、岸壁や歩道等の段差の解消等高齢者に配慮した就労・生活両面にわたる環境の整備が進められている。
(漁業地域の活性化への取組)
 漁業地域においては、近年、地域の文化、伝統、景観等の地域資源を見直し、地域の活性化に結びつけようとする動きがみられるようになっている。漁港等における定期市・朝市や地域特産品の即売、ホエールウォッチングやダイビング等の案内も行われるようになっているとともに、体験学習の場の提供等による都市住民との交流により、地域の活性化を図ろうとする取組も行われている。
 このような漁業地域における都市住民との活発な交流の推進は、地域の活性化だけでなく、広く国民一般が、漁業や漁業地域に対する理解を深めることにも役立っている。
 一方、漁業地域における国民の余暇活動の増加に伴い、漁業者との間に多様なトラブルが発生しており、漁業活動と国民の余暇活動の共存に向けた取組を推進することが求められている。

第U章 水産資源の持続的利用と海洋環境の保全

一 漁業生産と我が国周辺水域の水産資源の動向

(一) 漁業生産の動向
 平成十年の漁業生産量は、前年に比べ一〇%減少し六百六十八万四千トンとなった。魚種別にみると、かたくちいわし、かつお等が増加したものの、さんま、まいわし、さば類、するめいか、さけ・ます類等が減少した(第5図参照)。
 漁業生産額(捕鯨を含む。)は、前年に比べ九%減少し二兆二百九十二億円となった。

(二) 我が国周辺水域の水産資源等の動向
 主要魚種の資源状態は、まあじ、かつお、しろざけ等の限られた魚種は高い水準にあるが、まいわし、まさば、さんま、多くの底魚類等多数の魚種で低い水準になっている。さらに、それぞれの資源は、多くの魚種、系群で横ばい又は減少の傾向にある。
 資源状態が悪化した背景として、漁場環境の悪化や漁獲努力量の増大が大きく関与していると考えられる。

二 水産資源の持続的利用に向けた取組

(一) 韓国、中国との新たな漁業秩序の構築
 平成十一年一月、我が国と韓国との間で、新たな漁業協定が発効し、両国間において「国連海洋法条約」の主旨に沿った水産資源の保存・管理体制が整えられた。
 また、我が国は、中国との間で、九年十一月に署名した新たな漁業協定の発効に向けて協議を重ね、十二年二月、閣僚協議において、暫定措置水域北側の東シナ海の一部の水域において、日中両国の漁船が相手国の許可証を取得せずに操業できることとすること、協定を十二年六月一日に発効させるよう推進することについて意見の一致をみた。

(二) 漁獲可能量制度の運用状況
 我が国においては、国連海洋法条約の主旨に沿って、平成九年から漁獲可能量(TAC)制度を導入し、現在、七魚種を対象にして制度が運用されている。十一年のTACの設定は、さんま、まあじ、さば類、するめいか、ずわいがにについて、これまで資源評価に含まれていなかった韓国漁船等による漁獲実績を反映させる等により、十年の数量に比べ上方修正した。まいわしについては、資源状況から下方修正した。
 TACの消化状況をみると、さんま、まあじ、さば類、するめいかにおいては低い状況になっている。これは、海況等の要因により漁場形成が悪かったこと等によると考えられる。

(三) 資源管理型漁業の現状
 漁業者の話し合いに基づき、自主的な漁獲制限等の取組を行う資源管理型漁業を実施する漁業管理組織の数は増加している。また、複数の漁業地区に及ぶ漁業管理組織も増加しており、資源管理への取組は広域化しつつある。

(四) つくり育てる漁業
 栽培漁業では、有用水産資源の維持・増大と漁業生産の向上を図るため、種苗生産、放流、育成管理等を行う栽培漁業への取組が全国で行われている。現在、我が国においては約八十種類の魚介類の種苗が放流されており、そのうち、さけ、まだい、くるまえび等十種については、年間一千万尾を超える種苗が放流されている。
 海面養殖業は、過密養殖や飼餌料の過剰投与により、養殖漁場の環境悪化がみられており、魚病被害の原因にもなっている中で、平成十一年五月、「持続的養殖生産確保法」が制定され、漁場改善計画制度や特定疾病のまん延防止措置等が導入された。近年、「薄飼い」方式を採用し、飼育密度を大幅に減らすことにより、投餌量の削減、魚病の発生減少、投薬量の削減等の成果を上げている養殖業者もみられるようになってきている。

(五) 遊漁と資源管理
 海面遊漁者数は、年々増加傾向にあり、平成十年では延べ三千八百六十八万人となった。
 近年、魚種によっては、一定の海域における遊漁者の採捕量が、漁業者の漁獲量を超えるものも出てきており、遊漁者も参加した水産資源の保存・管理措置が必要となっている。こうした中、遊漁関係者と漁業者が資源の増殖等に向けて協調する事例もみられる。
 内水面遊漁者数は、近年、増加傾向で推移してきたが、十年は一千三百二十三万人となり、五年に比べ一・五%減少した。これは河川の遊漁者が大幅に減少したためであるが、湖沼では、ルアーフィッシングの普及により大幅に増加した。
 近年、ブラックバス等の外来魚が多くの地域で漁業に被害を与えている。さらに、冷水性のこくちばすが生息域を拡大しており、我が国固有の希少な水生生物への影響も懸念されている。

(六) 試験研究の推進
 我が国周辺水域の水産資源の保存・管理とその高度利用を図るため、試験研究の積極的な推進が重要となっている。我が国周辺水域に生息する主要魚種の資源調査のほか、ウィルス病を予防するワクチンの開発、幼生の移動形態の解明等資源の持続的な利用等を図る上で重要な課題に対する試験研究が水産庁研究所を中心に行われている。

三 国際的な資源管理の推進と我が国漁業

(一) 世界の漁業生産の動向
 世界の漁業生産量(養殖業を含む。)は、増加傾向で推移しており、一九九七年(平成九年)は前年に比べ二%増加し一億三千五十七万トンとなった。養殖業の生産量が急激に増加する一方、養殖業を除いた漁業生産量は横ばい状態が続いている。
 国別には、中国の漁業生産量は三千九百九十四万トンで世界の漁業生産量の三割を超え、一九八八年(昭和六十三年)以降世界第一位の生産国となっている。中国の生産量のうち、養殖業は淡水性魚類を中心に二千四百三万トン、養殖業を除いた漁業生産量は海水性魚類を中心に一千五百九十一万トンであり、それぞれ世界の六七%、一七%を占めている。我が国をはじめ主要国の漁業生産量は、横ばい又は減少傾向で推移している。

(二) 水産資源の持続的利用に向けた国際動向
(FAOによる取組)
 国連食糧農業機関(FAO)は、過剰な漁獲を削減又は抑制するための方策がとられない場合には、漁獲量が減少する可能性が増大している旨指摘している。我が国は、FAOの「漁獲能力の管理に関する国際行動計画」に即応し、平成十一年三月末までに、我が国遠洋まぐろはえ縄漁船の二割に当たる百三十二隻の減船を実施した。また、多数の遠洋まぐろはえ縄漁船を擁する台湾や韓国に対して、減船の早期実施を働きかけている。
(地域漁業管理機関をめぐる動き)
 近年、地域漁業管理機関では、「便宜置籍漁船」による無秩序な漁獲が重大な懸念となっており、便宜置籍漁船等による操業の廃絶に向けた動きが活発化している。我が国は、国際的な資源管理を推進する観点から、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の勧告等に沿い、便宜置籍漁船対策を強化した。
 みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)においては、みなみまぐろ資源について、我が国とオーストラリア、ニュー・ジーランドとの間で評価が大きく分かれている。みなみまぐろの適切な管理及び利用に必要な科学的データの蓄積のために我が国が実施した調査漁獲をめぐり、十一年八月、国際海洋法裁判所から三国に対して暫定措置が言い渡された。我が国は、この暫定措置に従いつつ、引き続き行われる仲裁裁判において、調査漁獲の正当性等への理解を求めるとともに、みなみまぐろの保存管理に非協力的な国に対し、強い姿勢でCCSBTへの加入等の働きかけを行っていくこととしている。
 また、近年、地域漁業管理機関が設けられていない海域において、その設立に向けた動きが活発になっている。
(国際捕鯨委員会)
 国際捕鯨委員会(IWC)において、我が国は、科学的根拠に基づいた鯨資源の保存と持続的利用の必要性を一貫して主張している。

(三) 我が国漁船の外国二百海里水域内等での操業
 外国二百海里水域内における操業は、漁場を確保するための粘り強い交渉により入漁相手国は着実に増加しているが、漁獲割当量の削減等により漁獲量は減少してきている。
 公海においては、現在、地域漁業管理機関の定める資源管理措置等の下で、まぐろはえ縄漁船等が操業を行っている。こうした背景の下、公海における漁獲量は、近年おおむね横ばい状態で推移している。

(四) 国際漁業協力の現状
 我が国は、開発途上国の水域での操業の技術・経験のほか、水産物の生産から消費に至る一貫した技術等を有しており、これらの技術等を活用した水産無償資金協力や各種の技術協力等を実施してきている。
 今後とも、我が国のみならず、相手国、ひいては世界の将来にわたる水産食料需給の安定に資する観点から、国際協力や合弁事業等により、海外漁場の水産資源の合理的利用を推進していくことが重要である。

四 海洋環境の保全

(一) 漁業と環境とのかかわり
 漁業は、海洋及び内水面の生態系を構成する生物の一部を利用する産業であり、環境及び生態系を良好な状態に保全していくことは、漁業の健全かつ持続的な発展を図り、安全な水産物の生産と供給を行っていく上で極めて重要な課題である。

(二) 海洋環境の現状
 藻場・干潟、砂浜等は、依然として減少傾向にある。現存する天然の藻場・干潟等の維持・保全は、漁業のみならず、生態系の保全や沿岸域の水質保全等にとっても重要であることから、藻場・干潟の開発の検討に当たっては、代替案の十分な検討や、従来にも増して入念な影響調査を行うとともに、開発行為の影響を最小限に抑えるための技術開発と実用化の推進が必要である。
 内分泌かく乱物質については、内分泌かく乱作用を有する物質の種類、生態系等に対する影響等の実態、作用機構等いまだ不明な点が多いことから、内分泌かく乱物質の水産生物に対する影響等を把握するための調査が開始されている。
 赤潮は、近年、発生域が広域化するとともに原因プランクトンの種類も多様化してきている。特に、二枚貝に有害なプランクトンであるヘテロカプサが、西日本で分布域を拡大し、赤潮の発生が頻発している。赤潮発生予察及び漁業被害の軽減策等の対策を強化するとともに、産業系排水と併せて家庭排水による負荷の抑制が一層重要となっている。

(三) 海洋環境の保全に向けた取組
 漁協系統団体等による海浜清掃活動や漁業者による植林活動が広域的に展開されている。今後、海洋環境の保全に取り組むため、国民の意識の高揚を図るとともに、国民的かつ組織的な運動として推進していくことが重要となっている。

第V章 漁業生産構造と漁業経営の現状

一 漁業生産構造

(一) 漁業経営体の動向
 海面における漁業経営体数は、経営主の高齢化、後継者不足等により減少を続けている。平成十年の漁業経営体数は、五年に比べ一二%減少し十五万一千となった。
 内水面における漁業経営体は、湖沼漁業、養殖業とも減少傾向で推移している。十年の経営体数は、五年に比べそれぞれ一六%、二一%減の三千六百、五千七百となった。

(二) 漁業就業者の動向
 漁業就業者は、昭和二十八年の約八十万人を頂点として減少傾向が続いており、平成十年は五年に比べ一五%減少し二十七万七千人となった。また、六十歳以上の割合は八ポイント増加し四二%となった(第6図参照)。
 一方、新規学卒者及び離職者の就業により若年齢層の漁業への参入がみられるものの、漁業の離職者数に比較して就業者数は低水準にとどまっている。さらに、沿岸漁船漁業等をはじめとして後継者不足が深刻になっていることから、今後、漁家出身者以外も含め、漁業に取り組もうとする意欲ある若い担い手を積極的に確保していく必要がある。新規参入者の拡大及び定着を図るため、情報提供、漁業技術や経営技術の習得の支援、居住環境の整備、地元漁業者との交流促進等、漁業・生活双方にわたる総合的な支援策を講じることが必要となっている。

(三) 漁村の女性の役割
 平成十年の女性の漁業就業者数は、全漁業就業者数の一七%を占める四万六千人であり、そのほとんどが沿岸漁業に従事している。
 漁村の女性は、漁業への従事のほか地域に密着した社会活動を担っており、今後、女性が安定的に漁業に就業できるようにするための労働環境の整備を図るとともに、地域社会におけるさまざまな方針決定の場への女性の参加を促進するための具体的な取組を進めることが重要である。

(四) 漁船労働
 長期にわたる航海や洋上作業等の漁船労働の特殊性、雇用の不安定等から漁船船員の減少・高齢化が進行しており、将来の漁船船員の不足が懸念されている。
 こうした状況の下で、日本人の漁船部員の不足に対応するため、「マルシップ方式」の導入等により、一定の条件の下での外国人漁船部員の乗船が行われているところである。

二 漁業経営の現状

(一) 沿岸漁船漁業の経営
 沿岸漁船漁業の経営体は、家族労働を中心とした小規模経営体が多く、経営基盤がぜい弱であるとともに、近年の我が国沿岸水域の水産資源の悪化、魚価の低迷等により漁業所得は伸び悩んでいる。
 平成十年の沿岸漁船漁業の漁業所得は、漁業支出が販売手数料及び雇用労賃等の減少により前年に比べ二%減少したものの、漁業収入が漁獲量の減少等により前年に比べ七%減少したことから、前年に比べ一二%減少し二百十六万円となった。

(二) 海面養殖業の経営
 海面養殖業は、中高級魚介類の需要の増大に伴い、総じて着実な発展を遂げてきたが、近年、業種によっては、餌料価格の高騰等の生産面の問題に加え、経済の低迷による需要の低下等販売面での問題から、厳しい経営を強いられているものもある。
 平成十年度の海面養殖業の漁業所得は、わかめ養殖、たい類養殖、真珠母貝養殖では前年度を上回ったものの、その他の養殖部門では前年度を下回ったため、前年に比べ二〇%減少し六百三万円となった。

(三) 漁家の所得
 平成十年の漁家所得は、沿岸漁船漁業の漁家所得、海面養殖業の漁家所得がともに減少したことにより、前年に比べ九%減少し六百四十九万円となった。

(四) 中小・大規模漁業の経営
(中小漁業の経営)
 中小漁業は、これまで漁獲能力向上のため、漁船・漁労装置等の設備投資を積極的に進めてきたが、近年、漁獲対象資源の水準の悪化等から生産量が大幅に減少している。
 平成十年度の中小漁業の漁業利益は、漁業収入の減少等により前年度の黒字から赤字に転じた。 中小漁業の経営は、漁船建造等に多額の投資が必要であり、また、操業のための燃油等に多額の経費を要する等の構造的な問題を抱えている。こうした中で、漁獲対象資源の悪化による生産量の減少により、多くの経営体で過剰投資の状態となっていること等から、経営状態が悪化している。
(大規模漁業の経営)
 大規模漁業会社においては、漁労部門の一部維持を図りながら、商事部門、加工部門を中心に食品全般に関する水産系の総合製造販売業として事業内容の再構築が図られている。

三 漁業協同組合の組織体制の整備と強化

(一) 漁業協同組合の現状
 漁業協同組合(漁協)は、漁業者の協同組織として経済事業及び信用事業等の実施を通じて、水産業の振興及び組合員の福祉の向上、資源や漁場の管理、漁業地域の活性化等の広範な役割を果たしている。沿海地区出資漁協の平成九年度末における一組合当たりの正組合員数は百六十三人、職員数は十人であり、農業協同組合と比べると、正組合員数では約一/一六、職員数では約一/一三の規模となっている。
 漁協の実施する事業は、昭和五十年代後半以降は、漁業環境の変化を反映して、おおむね各事業とも横ばい又は縮小傾向で推移している。また、金融の自由化等が急速に進展する中で、漁協においても、経営の健全性の確保が不可欠となっている。

(二) 漁協合併を中心とした漁協の組織体制の整備と強化
 漁協の規模は依然として零細であり、協同化によるスケールメリットを十分に発揮できない現状にあることから、合併等による組織体制の整備と強化が必要である。合併等の推進に当たっては、漁協自らの主体的な努力が求められ、漁協役職員等の関係者が指導的役割を果たしながら、地域の実態に応じた形で積極的に推進していくことが重要である。
 昭和四十二年度から平成十年度までの間の合併実績は二百六十八件(参加八百十一漁協)と、農協や森林組合の合併の進捗状況と比較した場合、大きく立ち後れている。

四 漁業金融

 平成十年度末における漁業関係融資残高は、経営の悪化に伴う漁業経営体の信用力の低下を背景として、前年度末に比べ二・九%減少し二兆五千三百七十六億円となった。また、主要制度資金についてみると、厳しい漁業経営環境の影響を受け、新規借入れが進まず、融資残高は減少傾向にある。

むすび

 二十一世紀における国民生活の安定向上を実現する上で、水産業や漁業地域の果たす役割について、あらためて国民全体で考えることが重要である。その際、@国民の食生活における水産物の重要性、A安定的な水産物供給の確保、B国民にとっての水産業といった観点から、国民生活と水産業、漁業地域とのかかわりについて議論をしてみてはどうか。




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月例経済報告(五月報告)


経済企画庁


 概 観

 我が国経済は、全体として需要の回復が弱く、厳しい状況をなお脱していない。しかし、各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響に加え、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きも徐々に現れており、景気は、緩やかな改善が続いている。
 需要面をみると、個人消費は、収入が低迷していることから、おおむね横ばい状態となっている。住宅建設は、年初の高い水準から減少しているが、マンションなどは比較的堅調である。設備投資は、総じて下げ止まりつつある。製造業を中心に投資意欲に改善がみられ、持ち直しの動きが広がっている。公共投資は、第二次補正予算などの効果が現れているものの、全体としては高水準であった前年に比べればかなり下回っている。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。
 在庫は、調整を終了し、生産は、緩やかな増加が続いている。
 雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるものの、完全失業率がこれまでの最高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。
 政府は、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を築くため、日本経済の新生と大胆な構造改革に取り組む。

     ◇    ◇    ◇

 我が国経済
 需要面をみると、個人消費は、収入が低迷していることから、おおむね横ばい状態となっている。住宅建設は、年初の高い水準から減少しているが、マンションなどは比較的堅調である。設備投資は、総じて下げ止まりつつある。製造業を中心に投資意欲に改善がみられ、持ち直しの動きが広がっている。公共投資は、第二次補正予算などの効果が現れているものの、全体としては高水準であった前年に比べればかなり下回っている。
 産業面をみると、在庫は、調整を終了し、生産は、緩やかな増加が続いている。企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。企業倒産件数は、このところ増加している。
 雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるものの、完全失業率がこれまでの最高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 輸出入は、対アジア輸出入を中心に、増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、年末に減少した後増加がみられるが、基調としてはおおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、四月は百四円台から百六円台で推移した。
 物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、安定している。
 最近の金融情勢をみると、短期金利は、四月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、四月は横ばいで推移した。株式相場は、四月は月央にかけて一進一退で推移した後、大幅に下落したが、その後持ち直しの動きもみられる。マネーサプライ(M+CD)は、三月は前年同月比一・九%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

 海外経済
 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九九年十〜十二月期前期比年率七・三%増の後、二〇〇〇年一〜三月期は同五・四%増(暫定値)となった。個人消費は大幅に増加している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。四月の長期金利(三十年物国債)は、上旬は低下したが、中旬以降は二度下落する局面があったものの上昇基調で推移した。株価(ダウ平均)は、中旬(十四日)に史上最大の下げ幅を記録したが、その後反発した。月末と月初を比べると、やや下落した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに拡大している。フランス、イギリスでは、景気は拡大している。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ伸びが鈍化している。イギリスでは伸びが鈍化している。失業率は、ドイツでは高水準ながらもやや低下している。フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している。なお、欧州中央銀行は、四月二十七日、中期的な物価の安定に対する上振れリスクを抑制するために、政策金利(主要オペレート)を〇・二五%ポイント引き上げ、三・七五%とした。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっている。物価は、下落している。貿易は、輸出入ともに大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。
 国際金融市場の四月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価基調で推移した。
 国際商品市況の四月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬は下落基調で推移し、中旬にかけ急上昇したものの、下旬には下落した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から下落基調で推移し、一時二十一ドル割れを記録したが、中旬からは反発した。

1 国内需要
―個人消費は、収入が低迷していることから、おおむね横ばい状態―

 個人消費は、収入が低迷していることから、おおむね横ばい状態となっている。
 家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で二月四・二%増の後、三月(速報値)は四・三%減(季節調整済前月比四・五%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比一・三%減、勤労者以外の世帯では同九・五%減となった。形態別にみると、財、サービスともに減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比三・八%減、勤労者世帯では同〇・九%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で二月一・九%増となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で二月〇・一%減の後、三月(速報値)は三・五%減(季節調整済前月比〇・三%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で二月一・三%増の後、三月(速報値)二・七%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で二月〇・九%減の後、三月二・八%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で四月(速報値)は一・四%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で三月は一三・七%増となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、三月は前年同月比で国内旅行が〇・五%増、海外旅行は一・九%増となった。
 当庁「消費動向調査」(三月調査)によると、消費者態度指数(季節調整値)は、十二月に前期差一・三ポイント上昇の後、三月には同〇・七ポイントの上昇となった。
 賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で二月一・一%増の後、三月(速報)は〇・九%減(事業所規模三十人以上では同〇・九%減)となり、うち所定外給与は、三月(速報)は同四・〇%増(事業所規模三十人以上では同四・六%増)となった。実質賃金は、前年同月比で二月二・〇%増の後、三月(速報)は〇・二%減(事業所規模三十人以上では同〇・四%減)となった。
 住宅建設は、年初の高い水準から減少しているが、マンションなどは比較的堅調である。
 新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で二月は一〇・三%減(前年同月比二・四%増)となった後、三月は二・三%増(前年同月比三・六%減)の十万三千戸(年率百二十四万戸)となった。三月の着工床面積(季節調整値)は、前月比二・八%増(前年同月比四・七%減)となった。三月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比六・〇%増(前年同月比一一・六%減)、貸家は同〇・七%減(同二・六%減)、分譲住宅は同一・〇%減(同七・九%増)となっている。
 設備投資は、総じて下げ止まりつつある。製造業を中心に投資意欲に改善がみられ、持ち直しの動きが広がっている。
 当庁「法人企業動向調査」(十二年三月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、季節調整済前期比で十一年十〜十二月期(実績)五・七%増(うち製造業三・二%増、非製造業五・九%増)の後、十二年一〜三月期(実績見込み)は三・〇%減(同一・三%減、同四・二%減)となっている。年度計画では、前年度比で十一年度(実績見込み)五・一%減(うち製造業九・四%減、非製造業二・八%減)の後、十二年度(計画)は四・七%減(同二・六%増、同八・三%減)となっている。
 なお、十一年十〜十二月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で〇・七%減(うち製造業八・二%減、非製造業二・九%増)となった。
 先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で一月は〇・八%増(前年同月比二一・二%増)の後、二月は二・五%減(同一二・八%増)となり、基調は持ち直しの動きがみられる。
 なお、一〜三月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で一・六%減(前年同期比一・九%増)と見込まれている。
 民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、二月は季節調整済前月比二五・二%減であったが、三月は再び増加し、季節調整済前月比三六・八%増(前年同月比一二・八%増)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比一八・八%増(前年同月比二二・一%増)、非製造業は同三四・五%増(同一一・二%増)となった。
 公的需要関連指標をみると、公共投資は、第二次補正予算などの効果が現われているものの、全体としては高水準であった前年に比べればかなり下回っている。
 公共工事着工総工事費は、前年同月比で一月は一二・六%減の後、二月は一五・〇%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で二月は一・四%減の後、三月は一〇・二%減となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で二月一二・六%減の後、三月は一七・〇%減となった。

2 生産雇用
―在庫は、調整を終了し、生産は緩やかな増加が続く―

 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、調整を終了し、生産・出荷は、緩やかな増加が続いている。
 鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で二月三・三%増の後、三月(速報)は、電気機械、精密機械等が増加したものの、輸送機械、一般機械等が減少したことから、一・〇%減となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で四月は化学、輸送機械等により一・〇%減の後、五月は電気機械、化学等により、一・三%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で二月一・〇%増の後、三月(速報)は、耐久消費財、生産財等が減少したことから、〇・七%減となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で二月〇・三%増の後、三月(速報)は、一般機械、金属製品等が減少したものの、電気機械、輸送機械等が増加したことから、〇・七%増となった。また、三月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は九八・六と前月を〇・四ポイント上回った。
 主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は三か月連続で増加し、在庫も三か月連続で増加した。輸送機械では、生産は三月は減少し、在庫は三か月連続で増加した。鉄鋼では、生産は三月は減少し、在庫は三月は増加した。
 第三次産業の動向を通商産業省「第三次産業活動指数」(二月調査、季節調整値)でみると、前月比で一月〇・五%増の後、二月(速報)は、サービス業、運輸・通信業等が減少したものの、金融・保険業、不動産業が増加した結果、同〇・一%増となった。
 雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるものの、完全失業率がこれまでの最高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、二月〇・五二倍の後、三月〇・五三倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、二月〇・九三倍の後、三月〇・九七倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、二月は前年同月比〇・一%減(前年同月差六万人減)の後、三月は同〇・四%減(同二十一万人減)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、二月前年同月比〇・二%減(季節調整済前月比〇・一%増)の後、三月(速報)は同〇・二%減(同〇・二%減)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比一・二%減)、産業別には製造業では同一・九%減となった。三月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差三万人増の三百三十二万人、完全失業率(同)は、二月四・九%の後、三月四・九%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では二月前年同月比一一・六%増(季節調整済前月比〇・六%減)の後、三月(速報)は同一四・五%増(同三・八%増)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比一四・五%増)。
 企業の動向をみると、企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。
 大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(三月調査)でみると十二年一〜三月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」−「減少」)は、売上高は「増加」超に転じ、経常利益は「減少」超幅が縮小した。また、十二年一〜三月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」−「下降」)は「下降」超幅が若干拡大した。
 また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(三月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」−「減少」)は十二年一〜三月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」−「低下」)は「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」−「悪化」)は十二年一〜三月期は「悪化」超幅が縮小した。
 企業倒産の状況をみると、このところ増加している。
 銀行取引停止処分者件数は、三月は一千百八十八件で前年同月比五一・九%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、製造業で八二・九%の増加、建設業で七三・四%の増加となった。

3 国際収支
―輸出は、アジア向けを中心に、増加―

 輸出は、アジア向けを中心に、増加している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で二月五・五%増の後、三月は〇・九%減(前年同月比一四・一%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械、電気機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。
 輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で二月五・八%増の後、三月は三・八%増(前年同月比一五・一%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、中東等が増加した。
 通関収支差(季節調整値)は、二月に一兆二千三百二十六億円の黒字の後、三月は九千三百六十七億円の黒字となった。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、年末に減少した後増加がみられるが、基調としてはおおむね横ばいとなっている。
 二月の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大し、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、九千三百五十八億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が縮小するとともに、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、一兆五千二百六十六億円となった。投資収支(原数値)は、一兆五千三百七十二億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、一兆五千九百九十八億円の赤字となった。
 四月末の外貨準備高は、前月比三百三十一億ドル増加して三千三百八十六億ドルとなった。
 外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、四月は百四円台から百六円台で推移した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、四月は月初の九十九円台から百二円台まで下落したが、月末にかけて九十六円台に上昇した。

4 物価
―国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移―

 国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。
 三月の国内卸売物価は、石油・石炭製品(燃料油)等が上昇したものの、電気機器(集積回路)等が下落したことから、前月比保合い(前年同月比〇・一%の上昇)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで保合いだったものの、円高から円ベースでは前月比二・二%の下落(前年同月比六・九%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比一・六%の下落(前年同月比四・一%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・四%の下落(前年同月比〇・四%の下落)となった。
 企業向けサービス価格は、三月は前年同月比〇・六%の下落(前月比〇・四%の上昇)となった。
 商品市況(月末対比)は非鉄等は下落したものの、紙・板紙等の上昇により四月は上昇した。四月の動きを品目別にみると、アルミニウム地金等は下落したものの、上質紙等が上昇した。
 消費者物価は、安定している。
 全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で二月〇・一%の下落の後、三月は外食が上昇から下落に転じたこと等により〇・三%の下落(前月比〇・一%の上昇、季節調整済前月比〇・二%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で二月〇・六%の下落の後、三月は〇・五%の下落(前月比〇・二%の上昇、季節調整済前月比〇・一%の下落)となった。
 東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で三月〇・四%の下落の後、四月(中旬速報値)は、家賃の上昇幅の縮小等により〇・五%の下落(前月比〇・二%の上昇、季節調整済前月比〇・二%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で三月〇・七%の下落の後、四月(中旬速報値)は〇・九%の下落(前月比〇・二%の上昇、季節調整済前月比〇・三%の下落)となった。

5 金融財政
―株式相場は、月央にかけて一進一退で推移した後、大幅に下落したがその後持ち直しの動きもみられる―

 最近の金融情勢をみると、短期金利は、四月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、四月は横ばいで推移した。株式相場は、四月は月央にかけて一進一退で推移した後、大幅に下落したが、その後持ち直しの動きもみられる。M+CDは、三月は前年同月比一・九%増となった。
 短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、四月は横ばいで推移した。二、三3か月物は、四月はおおむね横ばいで推移した。
 公社債市場をみると、国債利回りは、四月は横ばいで推移した。
 国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、二月は前月比で短期は〇・〇〇八%ポイント低下し、長期は〇・一〇三%ポイント低下したことから、総合では〇・〇二五%ポイント低下し一・七三九%となった。
 マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、三月(速報)は前年同月比一・九%増となった。また、広義流動性は、三月(速報)は同一・九%増となった。
 企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、三月(速報)は前年同月比六・〇%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後二・一%減)となった。四月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が百億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は六千七百二十億円(うち銀行起債分二千六百億円)となった。
 「全国企業短期経済観測調査」(全国企業、三月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いているものの、金融機関の貸出態度は「厳しい」超幅が縮小しゼロとなった。特に、大企業だけでなく、中堅企業においても改善の動きがみられる。
 以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。
 株式市場をみると、日経平均株価は、四月は月央にかけて一進一退で推移した後、大幅に下落した。東証株価指数(TOPIX)は、四月は月央にかけて一進一退で推移した後、大幅に下落したが、その後持ち直した。

6 海外経済
―アメリカ、個人消費、設備投資が大幅に増加―

 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九九年十〜十二月期前期比年率七・三%増の後、二〇〇〇年一〜三月期は同五・四%増(暫定値)となった。個人消費は大幅に増加している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は三月前月差四五・八万人増の後、四月は同三四・〇万人増となった。失業率は四月三・九%と七〇年一月以来の低水準となった。物価は総じて安定している。三月の消費者物価は前年同月比三・七%の上昇、三月の生産者物価(完成財総合)は同四・五%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。四月の長期金利(三十年物国債)は、上旬は低下したが、中旬以降は二度下落する局面があったものの上昇基調で推移した。株価(ダウ平均)は、中旬(十四日)に史上最大の下げ幅を記録したが、その後反発した。月末と月初を比べると、やや下落した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに拡大している。フランス、イギリスでは、景気は拡大している。実質GDPは、ドイツ十〜十二月期前期比年率二・七%増、フランス同三・〇%増、イギリスは二〇〇〇年一〜三月期同一・八%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ伸びが鈍化している。イギリスでは伸びが鈍化している(鉱工業生産は、ドイツ三月前月比二・五%減、フランス二月同一・一%増、イギリス二月同〇・六%減)。失業率は、ドイツでは高水準ながらもやや低下している。フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ三月一〇・〇%、フランス三月一〇・〇%、イギリス三月四・〇%)。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ四月前年同月比一・五%、フランス三月同一・五%、イギリス三月同二・六%)。なお、欧州中央銀行は、四月二十七日、中期的な物価の安定に対する上振れリスクを抑制するために、政策金利(主要オペレート)を〇・二五%ポイント引き上げ、三・七五%とした。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっている。物価は、下落している。貿易は、輸出入ともに大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。
 国際金融市場の四月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価基調で推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)をみると、四月二十八日現在一一二・五、三月末比四・〇%の増価となっている。内訳をみると、四月二十八日現在、対円では三月末比四・九%増価、対ユーロでは同四・九%増価した。
 国際商品市況の四月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬は下落基調で推移し、中旬にかけ急上昇したものの、下旬には下落した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から下落基調で推移し、一時二十一ドル割れを記録したが、中旬からは反発した。


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普通世帯の消費動向調査


―平成十二年三月実施調査結果―


経済企画庁


 消費動向調査は、家計消費の動向を迅速に把握し、景気動向判断の基礎資料とするために、全国の普通世帯(単身世帯及び外国人世帯を除いた約三千万世帯)を対象に、約五千世帯を抽出して、消費者の意識、主要耐久消費財等の購入状況、旅行の実績・予定、サービス等の支出予定について、四半期ごとに調査している。また、年度末にあたる三月調査時には、主要耐久財等の保有状況、住宅の総床面積についても併せて調査している。
 今回の報告は、平成十二年三月に実施した調査結果の概要である。

1 調査世帯の特性

 平成十二年三月の調査世帯の世帯主の平均年齢は五二・一歳(全世帯、以下同じ)、平均世帯人員は三・五人、うち就業者数は一・七人、平均持家率は七二・八%となっている。また、有効回答率は九九・九%(有効回答世帯数は五千三十六世帯)となっている。

2 消費者の意識

 (1) 消費者態度指数(季節調整値)の調査結果
 消費者意識指標七項目中五項目を総合した消費者態度指数は、「暮らし向き」に関する意識が悪化したものの、「雇用環境」、「物価の上がり方」、「耐久消費財の買い時判断」及び「収入の増え方」に関する意識が改善したため、四二・二(前期差〇・七ポイント上昇)となり、三期連続で上昇した(第1図参照)。
 (2) 各調査項目ごとの消費者意識指標(季節調整値)の調査結果
 各消費者意識指標について十二年三月の動向を前期差でみると、「暮らし向き」に関する意識(〇・二ポイント低下)が悪化したものの、「雇用環境」に関する意識(一・七ポイント上昇)、「物価の上がり方」に関する意識(〇・九ポイント上昇)、「耐久消費財の買い時判断」に関する意識(〇・五ポイント上昇)及び「収入の増え方」に関する意識(〇・三ポイント上昇)が改善を示した(第1表参照)。

3 サービス等の支出予定(季節調整値)

 十二年四〜六月期のサービス等の支出予定八項目の動きを「今より増やす予定と回答した世帯割合」から「今より減らす予定と回答した世帯割合」を控除した数値(サービス支出DI)でみると、以下のとおりである(第2図参照)。
 (1) 高額ファッション関連支出DIは、このところ低下傾向を示してきたが、前期がマイナス五・六%のところ、今期はマイナス五・二%となっている。
 (2) 学習塾等補習教育費DIは、他の支出DIと比較して高い水準にあり、前期が六・三%のところ、今期は六・七%となっている。
 (3) けいこ事等の月謝類DIは、他の支出DIと比較して高い水準にあり、前期が二・八%のところ、今期は二・九%となっている。
 (4) スポーツ活動費DIは、平成十年より低下傾向を示していたが、前期が一・八%のところ、今期は二・〇%と持ち直している。
 (5) コンサート等の入場料DIは、平成十年より低下傾向を示していたが、前期が三・九%のところ、今期は四・八%と持ち直している。
 (6) 遊園地等娯楽費DIは、このところ低下傾向を示してきたが、前期がマイナス七・五%のところ、今期はマイナス六・八%となっている。
 (7) レストラン等外食費DIは、このところ低下傾向を示してきたが、前期がマイナス一五・一%のところ、今期はマイナス一二・九%となっている。
 (8) 家事代行サービスDIは、おおむね安定した動きが続いており、前期がマイナス一・七%のところ、今期もマイナス一・七%となっている。

4 旅行の実績・予定(季節調整値)

 (1) 国内旅行
 十二年一〜三月期に国内旅行(日帰り旅行を含む)をした世帯割合は、前期差で二・五ポイント上昇し三六・八%となった。旅行をした世帯当たりの平均人数は、前期差で横ばいの二・九人となった。
 十二年四〜六月期に国内旅行をする予定の世帯割合は、十二年一〜三月期計画(以下「前期計画」)差で〇・八ポイント上昇し三三・五%、その平均人数は、前期計画差で横ばいの二・九人となっている。
 (2) 海外旅行
 十二年一〜三月期に海外旅行をした世帯割合は、前期差で〇・三ポイント低下し四・六%となった。その平均人数は、前期差で〇・一人増加し一・八人となった。
 十二年四〜六月期に海外旅行をする予定の世帯割合は、前期計画差で〇・七ポイント上昇し五・四%、その平均人数は、前期計画差で横ばいの一・八人となっている。

5 主要耐久消費財等の普及・保有状況

 (1) 普及状況(所有している世帯数の割合)
 平成十二年三月末における主要耐久消費財等の普及率をみると、第2表のとおりである。パソコン(十一年三月末二九・五%→十二年三月末三八・六%、以下同じ)、ファクシミリ(二六・四%→三二・九%)、温水洗浄便座(三六・五%→四一・〇%)、システムキッチン(三五・五%→三九・九%)及び洗髪洗面化粧台(四〇・三%→四三・九%)などの普及率が前年度に比べて上昇した。
 また、ルームエアコン、電気洗たく機及び電気冷蔵庫については、大型化、高性能化を反映して下位品目の普及率が低下し、上位品目の普及率が伸びている(ルームエアコン・冷暖房用六七・〇%→七一・七%、電気洗たく機・全自動七五・三%→七八・六%、電気冷蔵庫・三百リットル以上六八・六%→七〇・二%)(第2表参照)。
 (2) 保有状況(百世帯当たりの保有数量)
 平成十二年三月末における主要耐久消費財等の百世帯当たりの保有数量をみると、第3表のとおりである。パソコン(十二年三月末四八・六台、前年度差一一・九台増、以下同じ)、プッシュホン(一二三・二台、八・二台増)、ルームエアコン(二〇七・六台、六・九台増)及びVTR(一二二・六台、五・三台増)などの保有数量が前年度に比べて増加した。
 また、ルームエアコン、電気洗たく機及び電気冷蔵庫については、下位品目の保有数量が減少し、上位品目の保有数量が増加している(ルームエアコン・冷暖房用一五二・六台、一二・〇台増、電気洗たく機・全自動八一・一台、三・一台増、電気冷蔵庫・三百リットル以上七六・〇台、一・七台増)(第3表参照)。

<参 考>

1 消費者意識指標(季節調整値)
   (レジャー時間、資産価値)

 十二年三月の「レジャー時間」に関する意識は、前期差で〇・九ポイント上昇し四五・一となった。
 「資産価値」に関する意識は、前期差で一・二ポイント上昇し四三・八となった。

2 主要耐久消費財等の購入状況
   品目別購入世帯割合の動き
(原数値)

 十二年一〜三月期実績は、二十八品目中十九品目の購入世帯割合が前年同期に比べて増加し、四品目が減少した。なお、五品目が横ばいとなった。
 十二年四〜六月期実績見込みは、二十八品目中十四品目の購入世帯割合が前年同期に比べて増加し、九品目が減少している。なお、五品目が横ばいとなっている(第4表参照)。

3 主要耐久消費財の買替え状況

 十二年一〜三月期に買替えをした世帯について買替え前に使用していたものの平均使用年数をみると、普及率の高い電気冷蔵庫、電気洗濯機などは八〜十一年となっており、その理由については故障が多い。また、「上位品目への移行」による買替えが多いものとしてワープロ、「住居の変更」による買替えが多いものとしては、ルームエアコンがあげられる。

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暴走族の取り締まりの強化


 例年六月は、春先からゴールデンウィークにかけて暴走族の新規グループの結成や組織の再編成を終えた暴走族が、その勢力を見せつけるため頻繁に暴走行為を行うなど、暴走族の活動が活発になります。
 暴走族が引き起こす犯罪は、道路交通関係法令違反のほか、強盗、強姦(ごうかん)、薬物乱用など、さまざまな罪種にわたっています。特に、平成十一年中には、暴走族同士の縄張りをめぐる対立抗争や脱会者に対する暴行から、殺人事件や傷害致死事件が七件発生するなど、凶悪化、粗暴化の傾向が深まっています。
 警察では、毎年六月に暴走族取り締まり強化期間を設け、暴走族による各種不法事案の取り締まりを強化します。交通の安全と危険防止を図り、国民の平穏な生活環境を確保するように努めています。
●各種違反の取り締まり強化
・集団暴走による信号無視、広がり走行などの共同危険行為などの禁止違反
・ハンドル、車体の不法改造車両の運転などの整備不良車両運転違反
・エンジンの空ふかし、車両の急加速、急発進など騒音違反
・マフラーの切断、消音器の取り外しなど消音器不備違反
●暴走族グループの解体補導の徹底
 最近の暴走族は、約八〇%が少年で構成され、犯罪行為もグループ内のリンチ、対立抗争による殺人事件を引き起こすなど、悪質化、凶悪化しています。違法行為の検挙補導を強化し、暴走族グループからの脱会、グループの解体を図ります。
●暴走族根絶の機運を高める
 暴走族の根絶には取り締まりと合わせ、地域での暴走族を許さない社会環境づくりが重要です。
 その一環として現在、全国各地で「暴走族根絶条例」の制定がなされています。こうした機運をさらに高め、暴走族の根絶を図ります。
(警察庁)

六月の気象


◇梅雨入り

 平年では六月には、九州地方南部から東北地方北部まで梅雨に入ります。
 梅雨入りといっても、ある日を境にしてはっきりと雨の降る日が続く年は少なく、梅雨入り前に比べて曇りや雨の日が多くなり、次第に移り変わる年が多く見られます。
 気象庁は、過去数日間の天気経過と週間天気予報によるこれから数日間の天気経過の予想を比較して、晴天から曇雨天へ移り変わる中間の日を梅雨入りとしています。関東・甲信地方を担当する気象庁本庁のほか、各地方を担当する九気象台から、「〇〇地方は、六月〇日ごろ梅雨入りしたと見られます。」のような梅雨に関する天候情報を発表しています。

◇大雨

 六月は春に比べて気温が高く、大気が水蒸気を多量に含むようになり、大雨が降りやすくなります。地元の気象台が発表する警報や気象情報に注意して、災害に備えて早めに対策を取りましょう。
 最近の六月の大雨の例としては、平成十一年六月二十三日から七月三日にかけて梅雨前線の活動が活発になり、西日本から北日本にかけての広い範囲で大雨が降りました。
 また、六月は梅雨前線による大雨のほかに、台風による大雨が発生する年もあります。平年値による六月の台風の発生は二個、沖縄地方への接近が一個ですが、平成九年の六月には三個発生して二個が日本に接近し上陸しました。
(気象庁)





    <6月28日号の主な予定>

 ▽中小企業白書のあらまし………中小企業庁 

 ▽我が国のこどもの数……………総 務 庁 




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