▽月例経済報告(二月報告)……………経済企画庁
青少年白書のあらまし
<第一部> 青少年行政のあゆみと二十一世紀への展望
<第一章> 青少年行政のあゆみ
(1) 昭和二十年代〜戦後の緊急保護対策と基本的法制度の制定〜
(青少年をめぐる状況等)
終戦直後の社会的混乱から経済復興への過程で、戦災孤児、浮浪児及び家出少年が増加し、少年犯罪が激増した。少年犯罪の数の増加は、昭和二十六年ころまで激しい上昇を示し、戦後最初のピークを記録した(第1図参照)。
また、覚せい剤(ヒロポン)の流行や人身売買の問題、有害な出版物や映画等、戦後社会の不安定な状況に起因する様々な問題が起こっていた。
当時の青少年の不良化の原因として、家庭環境や社会の混乱の問題を挙げる者が多くなっている。
[青少年不良化の原因](全国二十五歳以上の者一千二百人対象)
・家庭環境(親のしつけ、家庭不和、愛情の欠如) 四二・九%
・混乱した社会のため(道義世相の退廃、大人が悪い、刑が軽い) 三九・四%
・戦後の青少年の特質(自由のはき違い、希望がない、好奇心、虚栄心等) 二一・三%
(複数回答、上位三つ)
(昭和二十五年三月国立世論調査所「青少年不良化防止に関する世論調査」)
(青少年施策の動向)
終戦直後の混乱した社会状況の中で、浮浪児や少年非行への対策が施策の中心であった。
一方、新憲法を始め、教育基本法、学校教育法、労働基準法、児童福祉法、少年法、社会教育法等の基本的な法律が相次いで制定され、今日に至るまでの社会の基盤となる諸制度が実施されていった。
ア 浮浪児の収容・保護等のための緊急対策が講じられた。
イ 児童福祉法が制定され(昭和二十二年)、児童福祉施設の拡充、児童相談所・児童福祉司の設置等、児童福祉の向上が図られたほか、児童育成の基本理念を示した児童憲章の制定(昭和二十六年)等が行われた。
ウ 教育基本法及び学校教育法が制定され(昭和二十二年)、教育の機会均等の理念に基づき、「六・三・三・四制」の新しい学校体系がつくられた。
エ 昭和二十四年には、社会教育法が制定され、社会教育に関する国と地方公共団体の任務や公民館の制度化等の規定が整備された。また、勤労青少年を対象とした青年学級は、青年学級振興法の制定により、一層普及することとなった。
オ 昭和二十二年に制定された労働基準法に基づき、事業場への監督を通じて年少労働者の保護が積極的に図られることとなった。
カ 昭和二十三年の少年法改正により、二十歳未満の者を少年とすること、家庭裁判所においては、保護処分を中心としつつも、十六歳以上の少年による死刑、懲役等の罪の事件で、刑事処分相当と認められる場合、事件を検察官に送致すること等が規定された。
キ 新憲法の下で制定された青少年をめぐる各種の法制度は、複雑に分化し、運用の足並みがそろわないといった問題や、関係機関相互の協力の不足、連絡調整の不十分さが指摘されていたが、昭和二十四年、国会における青少年犯罪防止に関する決議を受け、閣議決定により内閣官房に青少年問題対策協議会が設置された(同協議会は、二十五年には、総理府の附属機関である中央青少年問題協議会に改組)。
(2) 昭和三十年代〜戦後処理的対策から健全育成の推進へ〜
(青少年をめぐる状況等)
経済復興から高度経済成長へ移行する中で、国民の生活水準は向上し、テレビ等耐久消費財の普及がみられた。
消費ブームの中、一部の青少年の深夜外出、盛り場はいかい、深夜喫茶等への出入り等の問題に加え、青少年に有害な出版物、映画等の氾濫が問題となった。
また、勤労青少年の都市集中傾向の激化に伴い、中小企業に従事する年少労働者の労働条件の問題や余暇生活の充実等も大きな課題であった。
このような情勢を背景に、少年非行は再び増加に転じ、低年齢化、集団化といった特徴や、刃物を使った凶悪な非行の増加がみられ、刑法犯少年数は、昭和三十九年に戦後第二のピークを迎えた。
(青少年施策の動向)
青少年対策は、戦後の緊急保護対策的な取組から積極的な健全育成へと視点を拡げ、青少年健全育成施設の整備等が進められた。また、経済発展や国民生活の向上を背景に、児童福祉の進展や学校教育の改善がみられた。
ア 中央青少年問題協議会は、数多くの意見具申や基本要綱等の決定を行うなど、精力的な活動を行った。中央青少年問題協議会意見具申等を受けて、スポーツの振興(スポーツ振興法の制定)、青少年の刃物携帯問題対策(「刃物等をもたない運動」の実施、法規制)、有害な出版物・映画対策(優良映画の推薦、「太陽族映画」等有害な映画の「成人指定」措置等)、深夜喫茶対策(法規制)等が実施された。
また、同協議会により、青年海外派遣事業(昭和三十四年度から)、青少年保護育成運動、マスコミと青少年に関する懇談会等が行われた。
イ 地方公共団体においても、青少年に有害な出版物、映画等を規制するため青少年保護育成条例を制定するところが相次いだ。
ウ 家庭に関しては、市町村の開設する家庭教育学級の奨励、福祉事務所への家庭児童相談室の設置、児童厚生施設の整備、母子福祉法の制定、重度障害児に対する施策の実施等が行われた。
エ 学校教育に関しては、学習指導要領の改訂(道徳教育の徹底、基礎学力の充実、地理・歴史教育等の充実等)、学級編制等の標準の設定、高等学校の生徒の急増に対する施設、教員、学級規模等についての措置等が行われた。
オ 職域に関しては、年少労働者福祉員制度の創設、勤労青少年ホームの設置の促進、職業訓練法の制定等が行われた。
(3) 昭和四十年代〜国民的な運動の推進〜
(青少年をめぐる状況等)
高度経済成長下、国民は豊かな消費生活を享受する一方、急速な重化学工業化や都市化の進展に伴い、公害、交通戦争、住宅問題、享楽的風潮のまん延等がみられた。また、核家族化が進行するとともに、女性の就労の増加等により、保育サービスの需要が増大した。
所得水準の上昇による豊かな生活の実現を背景に、労働時間の短縮が進み、週休二日制の普及とあいまって増加した余暇時間の有効活用に対する人々の関心が高まった。また、社会の情報化が進む中で、テレビ等マスコミの青少年に与える影響力が強まっていった。
少年非行は、昭和三十九年をピークとして四十年代に入ると減少傾向をみせ始めた。
(青少年施策の動向)
昭和四十一年、青少年の指導、育成、保護及び矯正に関する基本的、総合的施策の調査審議を行う機関として青少年問題審議会が総理府に設置されるとともに、青少年行政における総合調整機能の強化に向けて、同年、総理府に青少年局(現総務庁青少年対策本部)が設置された。
また、非行防止の観点のみでなく、健全育成の積極的推進のために国民運動を推進することが重要との認識が広まり、昭和四十一年、青少年育成国民会議が結成された。
余暇時間の増大に対応した余暇関連施設の整備が進められたほか、核家族化等に対応した家庭支援の充実、進学率の向上に対応した高等学校の整備、勤労青少年の福祉対策の充実等が行われた。
非行対策については、少年補導センターの設置の促進、少年補導員制度の導入など、地域における非行防止の体制づくりが進められた。
ア オリンピック東京大会(昭和三十九年)を契機に国民一般の体力つくりの必要性が認識される中、四十年に「体力つくり国民会議」が発足した。また、四十四年度からは毎年十月が「体力つくり強調月間」とされ、国民一般の健康・体力つくり運動が展開されることとなった。
イ 青少年のニーズに即した青少年健全育成施設の体系的な整備、芸術鑑賞機会の提供、青年の船事業や青年海外協力隊事業等が開始された。
ウ 家庭に関しては、幼児をもつ親に対する相談事業や児童相談所等における家庭児童相談の拡充が図られたほか、保育所の整備、児童手当制度の創設、母子保健法の制定、心身障害者対策基本法の制定等が行われた。
エ 学校教育に関しては、学習指導要領の改訂(教育内容の精選・集約と時代の進展に対応した教育内容(集合論等)の導入等)や、定時制及び通信制の高等学校の設立等が行われた。
オ 職域に関しては、勤労青少年福祉法の制定、職業訓練法の制定、農林省農業者大学校の設置等が行われた。
(4) 昭和五十年代〜青少年施策の多様化と総合化に向けた動き〜
(青少年をめぐる状況等)
経済の高度成長は終焉を迎え、安定成長へと移行していった。生活水準の向上に伴い、人々の生活に対する考え方も変化し、物的な面での豊かさよりも、心の豊かさやゆとりのある生活を重視する人が増えていった。
核家族化、少子化の進行や都市化の進展に伴う家庭の孤立化等により、家庭の教育機能が低下する傾向がみられた。
学歴等を重視する傾向が広まる中、受験競争の過熱化がみられた。
また、都市化の進展に伴う人間関係の希薄化に加え、豊かな消費生活の中で性産業やゲームセンターの増加等享楽的傾向の強まり、情報化の進展による知識の豊富化や感覚的傾向の増大等、地域の育成環境が変化していった。
このような状況の中、少年非行情勢は戦後最悪の状況(昭和五十八年、戦後第三のピーク)を迎え、窃盗、校内暴力、家庭内暴力、いじめ等問題の多様化が進行した。
(青少年施策の動向)
青少年の非行等問題行動については、昭和五十七年六月の青少年問題審議会答申を契機に、関係省庁が総合的に取り組む体制が整備された。
また、各分野においても、家庭をめぐる状況の変化に対応した子育て支援の取組の充実、ゆとりある充実した学校生活の実現に向けた取組、高学歴化の進展に対応した大卒者への採用情報の提供の充実、国際交流の促進等が進められた。
ア 昭和五十七年に、青少年問題審議会答申を受けた閣議決定「青少年の非行防止対策について」を受けて、非行防止対策推進連絡会議が設置され、総合的な非行防止対策が採られることとなった。また、「青少年を非行からまもる全国強調月間」による広報啓発活動等の推進、風俗営業等に関する法規制の強化等が行われた。
イ 家庭に関しては、乳幼児学級や「明日の親のための学級」等市町村の行う家庭教育学級の拡充が図られたほか、留守家庭児童(いわゆる「鍵っ子」)のための都市児童健全育成事業の開始、夜間・延長保育等保育需要の多様化への対応、「障害者対策に関する長期計画」の策定等が行われた。
ウ 学校教育に関しては、学習指導要領の改訂により、ゆとりある充実した学校生活が送れるよう標準授業時数の削減や指導内容の精選等が図られたほか、養護学校教育の義務制の実施、新構想大学や放送大学の設置、共通第一次学力試験の実施、専修学校の創設等が行われた。
エ 職域に関しては、大卒等採用計画企業情報の提供、勤労青少年福祉員による中小企業の勤労青少年の福祉の増進、青年農業士や青年林業士の認定等が行われた。
(5) 昭和六十年代から現在〜総合的な施策の推進〜
(青少年をめぐる状況等)
バブル経済とその崩壊を経て、平成九年以降、景気の停滞が長引き、失業者の増加(特に若年層で高い失業率)が社会的問題となっている。
少子化の進行に伴い、異年齢の子ども同士の交流機会の減少や、親の過保護あるいは過干渉の問題など、家庭や地域の教育機能の低下が指摘されている。こうした中、保護者等による児童虐待の問題も、大きな問題となっている。
また、不登校児童生徒数の増加に関して指摘される学校に絶対行かなければならないという意識の希薄化や、いわゆるフリーアルバイターの増加にみられる若者の就業意識の変化など、青少年の意識の変化、多様化がみられる。
青少年を取り巻く社会環境については、様々なメディアを通じた有害情報の氾濫、テレホンクラブ、カラオケボックス等、不良行為を誘発、助長しやすい環境が問題となっている。
平成五年以降、主要刑法犯少年の人口比(少年人口千人当たりに占める主要刑法犯少年の人員)が増加し、青少年による薬物乱用、凶悪・粗暴な非行、いじめ・暴力行為、性の逸脱行為等問題が深刻化した。
(青少年施策の動向)
平成元年には、関係省庁の連携、協力の下、施策を効果的に推進していく枠組みが作られ、青少年施策の総合化の面で大きく前進することとなった。
各分野においても、社会経済情勢の変化への対応を進めつつ、一層の改善が図られた。家庭については、親への多様な学習機会の提供や相談体制の充実、児童福祉制度全体にわたる見直し等が行われた。学校教育については、これまでの知育偏重の風潮等を見直し、子ども一人一人の個性を生かし、豊かな人間性等をはぐくむ教育へと転換が図られている。また、地域社会における多様な体験活動を通じて、青少年の社会性等をはぐくんでいく方向が、近年、重視されている。
ア 青少年問題審議会意見具申を受け、平成元年九月に非行防止対策推進会議が青少年対策推進会議に発展的に改組されるとともに、政府の青少年行政の基本方針を定める青少年対策推進要綱が制定され、青少年行政の新たな枠組みの下で、対策が強化されることとなった。
現在、平成十一年七月の青少年問題審議会答申等を踏まえ、青少年対策推進要綱を改正し、青少年をはぐくむ社会環境づくりに向けた総合的な施策を推進しているところである。
イ 青少年の多様な学習・体験活動を推進するため、科学活動、自然体験活動、ふるさとについての学習活動、青少年団体による青少年交流、ボランティアを始めとする社会参加活動、文化活動、スポーツ活動、国際交流等が促進された。現在、平成十四年度からの完全学校週五日制の実施も踏まえ、地域で子どもを育てる環境を整備し、親と子どもたちの活動を振興する体制を整備する「全国子どもプラン(緊急三ヶ年戦略)」等により、多様な体験活動の機会の充実が進められている。
ウ 家庭に関しては、市町村による家庭教育学級の開設の促進や家庭でのしつけの在り方等を盛り込んだ家庭教育手帳等の母子保健の機会等を活用しての配布など、親等への多様な学習機会の提供が進められている。また、児童相談所を中心とする相談体制の整備や、家庭教育カウンセラーの活用、二十四時間親からの相談に対応できる体制の整備等相談体制の充実が図られている。
また、児童手当制度の充実、放課後児童健全育成事業の実施、子育て支援のための施策の総合的・計画的推進を図る「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(エンゼルプラン)の策定等が行われるとともに、平成九年六月には、利用者の立場に立った保育所制度の改善、放課後児童健全育成事業の法制化、児童福祉施設等の体系の見直し等を内容とする児童福祉法の改正が行われた。
エ 学校教育に関しては、子どもたちに様々な体験を行う場や機会を増やす学校週五日制の導入や学習指導要領の改訂による教育課程の改善充実に加え、暴力行為、いじめ、不登校といった問題の現状を踏まえ、教育相談体制の充実等が図られている。
また、単位制高等学校や総合学科の導入等高等学校教育の個性化、多様化の推進、中高一貫教育の導入(平成十一年度から)、大学審議会答申を踏まえた制度改正等高等教育の改革、特色ある多様な入学者選抜の実施等が進められている。
オ 職域に関しては、学生等が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うインターンシップの導入について、平成九年度から関係省庁が連携を図りつつ、総合的な推進が図られている。
また、求人秩序の確立に向けた取組、勤労青少年福祉対策基本方針に基づく勤労青少年の福祉対策、職業能力開発の促進等が進められている。
カ 青少年を取り巻く環境浄化については、関係行政機関や(社)青少年育成国民会議等により関係業界への自主規制の充実等の要請が行われるとともに、法令等による規制の強化(「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」の改正、「児童買春(かいしゅん)、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の制定等)が行われた。
また、平成十、十一年度には、「青少年と放送に関する調査研究会」及び「青少年と放送に関する専門家会合」が開催され、郵政省及び放送事業者により取組方針が取りまとめられるなど、放送の分野における取組が推進された。
<第二章> 日本の青少年の意識
〜諸外国の青少年との比較を通して〜
青少年問題審議会答申(平成十一年七月)においては、今日の青少年をめぐる問題の背景として、社会全体の風潮の問題、子どもに対する基本的なしつけの欠如及び青少年の人間関係の希薄さが指摘されている。そこで、総務庁青少年対策本部の行った「第六回世界青年意識調査」を中心に、こうした点に関して、我が国と諸外国の青少年の意識との比較等を通じて、我が国の青少年の意識の特徴や問題点等を明らかにする。
(1) 社会に関する意識
ア 社会に対する満足度
我が国社会への「満足層」は昭和六十三年調査以降減少傾向にあり(第2図参照)、各国と比べても低いものとなっている。
イ 日本社会の問題点
日本社会の問題点として、「学歴によって収入や仕事に格差がある」、「よい政治が行われていない」、「環境破壊に対して国民が無関心」、「就職が難しく、失業も多い」を挙げる者の割合が高い。特に、「学歴によって収入や仕事に格差がある」を挙げた者の割合は、各国中では、韓国に次いで二番目に高く、また、「就職が難しく、失業も多い」を挙げた者の割合については、平成五年調査と比較して大幅に上昇している。
ウ 社会への貢献意識
日本では、「自国のために役立つようなことをしたい」と考える者の割合及びボランティア活動の経験は、各国と比べて低いものとなっている(第3図、第4図参照)。
エ 社会のきまりに関する意識
「法律や規則を守ってばかりいると時には損をする」という意見に対し、我が国の中・高校生の多くがそう思うと答えている(第5図参照)。
オ 将来仕事を選ぶときに大切なもの
日本の高校生に将来仕事を選ぶとき何が一番大切かについて聞いたところ、「自分の才能が生かせられ、興味がもてること」(五八・〇%)、「安定した収入で、生活が保証されること」(一九・〇%)、「社会のためになり、やりがいがあること」(一〇・九%)、「のんびりと気楽に普通の生活ができること」(一一・四%)となっている。また、社会に出て成功するために大切なものとして、「努力すること」を挙げた者の割合が高く(中学生:五八・四%、高校生:五三・九%)、「高い学歴をつけること」を挙げた者の割合は低くなっている。
このように、我が国の青少年の多くは、社会において、自己の才能を生かして活躍したいと望んでおり、そのためには本人の努力が重要であると考えていることが分かる。
(2) 家庭に関する意識
ア 家庭教育
父親から生き方、行動の仕方、道徳などの社会生活についての指導を受けたことがあるか聞いたところ、日本では、「はい」と答えた者の割合は約六五%で、各国と比べて低いものとなっている(第6図参照)。
また、「タバコを吸う」、「友達と酒を飲む」、「深夜まで街で遊ぶ」といった未成年者の問題行動に対する保護者の意識として、「高校生ならばよい」、あるいは「高校を卒業したらよい」といった許容的な傾向が、若年の保護者になるほど高くなっている(第7図参照)。
イ 親子関係
理想の父親像として、日本では、「家庭重視」と答えた者の割合は、時系列的には増加しているが、各国と比べると低いものとなっている。
また、青少年の休日の過ごし方について聞いたところ、「家族と過ごす」と答えた者の割合は男子で一八・七%、女子で三八・七%となっており、各国と比べて低いものとなっている。
さらに、親子の対話の有無についてみると、非行少年の家庭では、一般少年の家庭に比べて親子の対話が乏しくなっている。
ウ 基本的生活習慣
「朝食を毎朝食べる」、「夕食を家族と一緒に食べる」、「決まった家事の手伝いがある」という家庭における基本的な生活習慣について、一般少年と非行少年の間で差が目立つ。例えば、「朝食を毎朝食べる」と答えた者の割合は、一般少年で七割強であるのに対し、非行少年では三割強にとどまっている。
(3) 人間関係に関する意識
ア 友人を得たきっかけ
友人を得たきっかけとして、各国とも「学校」、「職場」が多くなっているが、日本の場合、「近所」といった地域社会にかかわる項目が、各国と比べて非常に少ないことが注目され、日本においては、地域社会を基盤とする多様な人間関係の構築が行われにくくなっているものと思われる。
イ 悩みの相談相手
悩みや心配ごとがあった場合相談する相手として、両親(特に母親)と並んで友人を挙げる者の割合が高くなっている。特に日本の特徴として、友人と母親以外の相談相手を挙げた者の割合が低くなっている。
ウ 他者との関係を円滑に進める能力
「相手が怒っているときにうまくなだめる」、「知らない人とでも、すぐに会話を始める」、「話し合いの輪の中に、気軽に参加する」、「何か失敗したときに、すぐに謝る」、「自分とは違った考えをもっている人とうまくやっていく」の五項目について、「いつでもできる」、「なんとかできる」、「できない」の三段階でどの程度できるかを聞き、各項目について「いつでもできる」と答えた者の割合を加えてみると、日本の青少年については、各国と比べて低いものとなっている(第8図参照)。
(4) まとめ
二十一世紀の社会を担っていく青少年に規範意識や社会性の低下傾向等がうかがえることは憂慮せざるを得ない状況である。
この問題は、青少年自身の問題にとどまらず、青少年をはぐくむ環境としての社会全体の風潮、基本的なしつけを担当する家庭の役割あるいは地域社会の問題等、我が国社会全体の在り方にかかわる問題として考えていくべきである。
社会生活上の基本的な生活習慣やモラルといったものは、第一義的に家庭の責任において行われるべきものである。今日、特に父親が家庭で果たすべき役割や、職場優先の考え方について、国民一人一人が自ら問い直していく必要があろう。また、家族形態の変化や地域社会のつながりの希薄化等の中で子育てに十分な知識や助言を得られず自信を失っている親たちをいかに支えていくかを考えていかねばならない。
形式的な学歴がほかの多様な尺度よりも過度に重視される風潮は、青少年が志向や適性に応じて主体的に自己の実現を図っていくことを妨げていると考えられる。青少年の自己実現を支援し、青少年が将来に夢や希望をもてる社会にしていくという観点から、今後、個人の多様な経験、能力等が適切に評価される社会への転換を進めていくことが課題であろう。
日本の若者について、ボランティア経験等の少なさが指摘されるが、阪神・淡路大地震の際には、若者がボランティア活動の中心的な役割を果たした。多くの若者が活動に参加した背景には、震災の模様が、テレビ・新聞等で広く伝えられたことがある。このことは、活動の場や機会が提供されれば、進んでボランティア活動を行おうと考える若者が少なくないことを示唆していると考えられる。
我が国の青少年の人間関係の希薄化という状況を踏まえ、今後、こうしたボランティア活動等を通じて青少年が多様な人間関係を経験する機会を豊富に提供していくことが重要であり、平成十四年度からの完全学校週五日制の実施も踏まえ、多様な体験活動の機会を提供する潜在能力をもつ地域社会の役割が、今後、見直されていくべきものと考えられる。
<第三章> 青少年行政の二十一世紀への展望
(二十一世紀の青少年行政の方向性〜青少年問題審議会答申を踏まえて〜)
○ 国の青少年行政は、非行対策を中心としつつも、次第に健全育成の推進へと視野を拡げてきた。
二十一世紀に向けて国の行政システム全体の改革が進められる中、青少年行政についても、組織及び運営の在り方の変革を迫られている((注)中央省庁等改革に伴う審議会等の整理合理化により青少年問題審議会は廃止、青少年健全育成に関する総合調整機能は内閣府に移管)。
○ 青少年行政の基本方針は、青少年が、社会とのかかわりを自覚しつつ、自律的個人としての自己を確立し、向上させていけるよう支援し、また、健やかな成育を阻害する要因を除去していくことであり、このための施策の中心的方向は、
<第二部> 青少年の現状
<第一章> 青少年の人口
平成十年十月一日現在の青少年人口(〇〜二十四歳)は三千六百十二万六千人で、総人口の二八・七%を占めている(第9図参照)。
青少年人口を年齢別にみると、第二次ベビーブーム期(昭和四十六〜四十九年)に生まれた二十四歳の者が二百万人余りで多く、その後は減少傾向が続き、五歳未満では百二十万人程度の水準となっている。
<第二章> 青少年の健康と安全
栄養状態は平均的には良好であるが、個々人においては、栄養素等の過剰摂取や偏り等の問題が生じてきている。
なお、最近の青少年期における食生活の問題として、朝食欠食の習慣化が挙げられるが、欠食は、摂取栄養素のバランスを乱し、貧血症等の原因にもなっている。
平成十年に不慮の事故により死亡した青少年(〇〜二十四歳)の数は、四千九十三人となっており、〇〜二十四歳の全死亡数の二六・六%を占めている。不慮の事故の内訳では、交通事故が最も多くなっている。
<第三章> 青少年の教育
平成十一年五月一日現在の幼稚園から大学までの在学者数は、二千百九十四万三千人(男子一千百三十六万七千人、女子一千五十七万六千人)と、総人口の一七・三%を占めている。
このうち、小学生は七百五十万人、中学生は四百二十四万四千人、高校生は四百二十一万二千人、大学生は二百七十万一千人であり、小学生、中学生、高校生ともに在学者数は前年度に比べ減少している一方、大学生は増加し、過去最高となった。
平成十年度における高等学校、高等専門学校等への進学率は九六・九%(通信制課程(本科)への進学者を含む。)、大学・短期大学への進学率は四九・一%となっている。
<第四章> 青少年の労働
平成十年(年平均)の青少年就業者(十五〜二十九歳)は、一千五百二十一万人と、前年と比べ二十二万人減少しており、就業者総数に占める割合は二三・三%である。これを産業別にみると、「サービス業」二八・七%、「卸売・小売業、飲食店」二六・八%、「製造業」一九・五%と、これら三産業で全体の四分の三近くを占めている。
平成十一年三月の新規学校卒業者の就職状況は、中学校卒業者が一万六千八百八十人、高校卒業者が二十七万五千八百五十九人、大学卒業者は三十二万一千百九十一人となっており、中学、高校、大学ともに前年度に比べ減少している。
三十歳未満の青少年労働者の平成十年における離職率は二二・四%で、全労働者の離職率一五・一%を上回っている。
<第五章> 青少年の非行等問題行動
平成十年の刑法犯少年(十四歳以上二十歳未満の者)は、十五万七千三百八十五人(前年比四千五百六十人(三・〇%)増)、刑法犯少年の人口比(同年齢層の人口千人当たりの補導人員)は、十六・九(〇・八ポイント増)である。これを罪種別にみると、万引き、オートバイ盗、自転車盗などの窃盗犯が全体の六三・四%を占めて最も多く、年齢別にみると、十四〜十六歳の低年齢層が六五・八%を占めている。
不登校児童生徒数は年々増加しており、平成十年度において三十日以上学校を欠席した不登校児童生徒数は、小学生二万六千十七人(全児童数の〇・三五%)、中学生十万一千六百七十五人(全生徒数の二・四〇%)となっている。
<第三部> 青少年に関する国の施策
<第一章> 総合的な施策の推進
政府の推進する青少年行政の範囲は多岐にわたり、また、関係する行政機関は多数に及んでいる。総務庁では、こうした幅広い青少年行政に関する基本的かつ総合的な施策の樹立及び関係省庁の施策や事務の総合調整を行っており、青少年行政が整合性をもって総合的に推進されるよう努めている。
(1) 内閣総理大臣の諮問機関である青少年問題審議会は、平成十一年七月に「『戦後』を超えて―青少年の自立と大人社会の責任」と題する答申を行った。
(2) 青少年対策推進会議においては、青少年問題審議会答申(平成十一年七月)等を踏まえ、青少年対策推進要綱を平成十一年十月に青少年育成推進要綱に改め、同要綱に基づいて、関係省庁との緊密な連携の下に青少年施策を総合的かつ効果的に推進している。
(3) 我が国は、児童の権利に関する条約を平成六年四月に批准し、同条約の実施の確保に努めている。
(4) このほか、青少年に関する研究調査、青少年の健全育成及び非行防止対策の総合的推進、青少年育成国民運動(「大人が変われば、子どもも変わる運動」等)に対する支援、体力つくり国民運動の推進、青少年の国際交流の振興等を行っている。
<第二章> 青少年健全育成事業
(1) 地域で子どもを育てる環境を整備し、親と子どもたちの活動を振興する体制を整備するため、「全国子どもプラン(緊急三ヶ年戦略)」を策定し、衛星通信利用による「子ども放送局」推進事業、「子どもセンター」の全国展開、「子ども地域活動促進事業」等を推進している。
(2) マルチメディアを活用した学習環境の整備や科学技術に関する理解の増進を図っている。
(3) 地域における文化活動の奨励、スポーツ活動の振興等を図るための支援を行っている。
(4) 公民館、図書館等の社会教育関係施設、勤労青少年福祉施設、児童厚生施設、ユースホステル、公園等の整備を行っている。
(5) 社会教育主事や各種施設の指導員等の青少年指導者の養成、研修を行っている。
<第三章> 家庭に関する施策
(1) 家庭の教育力の充実を図るため、家庭教育に関する情報提供、相談体制の整備を進めており、「家庭教育手帳」等を新たに作成し、母子保健の機会等を活用して幅広く配布するとともに、家庭教育に関する二十四時間の電話相談体制の整備、専門的な知識や技能を有する「家庭教育カウンセラー」の活用等を進めている。また、「子育てひろば」など親同士のネットワークづくりや父親の家庭教育への参加の促進を図っている。
(2) 児童相談所、家庭児童相談室、児童家庭支援センター、保育所等において、家庭や児童に対する相談・支援活動を行っている。
(3) 社会的援助を必要とする児童・家庭に対する福祉向上のため、乳児院、児童養護施設、保育所等を整備し、母子家庭の福祉対策を講じており、また、母子保健の推進、障害児の福祉施策等を講じている。
(4) 家庭教育・子育て支援の充実、幼稚園と保育所の連携の促進等を図るため、「教育・児童福祉施策連携協議会」において協議が行われている。
<第四章> 学校教育に関する施策
(1) 平成十四年度から完全学校週五日制をすべての学校段階で一斉に実施することとしている。
(2) 平成十年度に改訂された学習指導要領は、完全学校週五日制の下、ゆとりの中で子どもたちに「生きる力」を育成することを基本的なねらいとして、「総合的な学習の時間」の創設、教育内容の厳選、道徳教育の充実等の改善を図っている。
(3) 学校における情報化への対応を円滑に進めるため、教育用コンピュータ及びソフトウェアの整備、インターネットへの接続、教育情報の通信ネットワークの整備等に加え、ネットワークの教育利用に関し各種の実践的な研究事業を実施している。
(4) いじめや不登校といった児童生徒の問題行動等に対応するため、スクールカウンセラーの拡充、「心の教室相談員」の配置、教員に対する専門的な研修等を実施している。
(5) 総合学科や単位制高校の設置、ボランティア活動や就業体験、スポーツ・文化活動等についての単位認定、高等学校入学者の選抜方法の多様化・選抜尺度の多元化など、高等学校教育の個性化・多様化を図っている。
(6) 中等教育の一層の多様化を推進し、生徒一人一人の個性をより重視した教育の実現を目指すものとして、平成十一年四月より中高一貫教育の導入が可能となっており、その積極的な推進を図ることとしている。
(7) 中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」(平成十一年十二月)では、初等教育と高等教育との接続の改善のための連携の在り方や接続を重視した大学入学者選抜の改善等について提言された。
<第五章> 職場に関する施策
(1) 厳しい雇用情勢の下、新規学校卒業者がその適性と能力に応じた職業選択を行えるよう、学校等との緊密な連携の下に、職業安定機関における職業指導、職業紹介、大学における就職指導等の充実を図っている。また、学生の職業意識の啓発のため、インターンシップの導入を促進している。
(2) 平成九年度から就職協定が締結されなくなったことに伴い、求人秩序の確立のための新たな取組が行われている。
(3) 勤労青少年の福祉向上のため、勤労青少年福祉対策基本方針を策定するとともに、「勤労青少年の日」を中心とした啓発活動、勤労青少年のクラブ活動の促進等を図っている。
(4) 青少年の多様な適性等に応じた職業能力開発を進めるため、民間企業における計画的な職業能力開発機会の確保と公共職業訓練の効果的な実施を促進している。
(5) 農山漁村における人材の育成・確保を図るため、都道府県等の行う研修教育を始めとする各種育成事業への支援等を行っている。
<第六章> 社会環境の整備に関する施策
(1) 青少年を取り巻く社会環境のうち、青少年の健全な育成に有害であると認められるものについては、関係業界による自主規制、環境浄化活動等住民の地域活動、法令及び青少年保護育成条例による規制等の対応策が講じられている。
関係業界による取組については、青少年問題審議会答申(平成十一年七月)の趣旨を踏まえた取組の充実についての協力依頼など、関係省庁等が自主規制の充実の要請等を行っている。
(2) 放送メディアと青少年の健全育成という課題に対し幅広い観点から検討を行うため、平成十年度に開催された「青少年と放送に関する調査研究会」の提言を受けて、「青少年と放送に関する専門家会合」が十一年一月から六月まで開催され、放送事業者の自主的な取組方針が取りまとめられ、順次実施に移されている。
(3) 児童買春(かいしゅん)や児童ポルノの販売等については、「児童買春(かいしゅん)、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(平成十一年十一月施行)の適正な運用を図っていくこととしている。
(4) 青少年の基本的人権が尊重されるような環境をつくるとともに、青少年自らが正しい人権意識を身につけられるよう、様々な啓発活動を行っている。
(5) 児童生徒に対する交通安全教育、運転免許保有者に対する講習の充実等、青少年の事故防止対策に努めている。
<第七章> 少年の非行防止と非行少年の処遇
(1) 少年の非行防止のため、各種月間(「青少年の非行問題に取り組む全国強調月間」等)を通じて広報啓発活動を推進している。
(2) 近年の薬物乱用問題の深刻な状況を踏まえ、平成十年五月に「薬物乱用防止五か年戦略」が決定され、これを踏まえ、関係省庁の連携の下、薬物乱用防止教室の開催の促進、広報啓発活動の徹底、乱用少年に対する取締り等関係施策の充実を図っている。
(3) 凶悪・粗暴な非行への対策について、平成十年三月、青少年対策推進会議において「凶悪・粗暴な非行等問題行動の対策について」を取りまとめている。
(4) 少年補導職員や少年相談専門職員を中核とする「少年サポートセンター」等により、関係機関、団体とのネットワークを構築しつつ、それぞれの地域の実情に応じて、非行少年等の補導活動、少年の薬物乱用防止対策、被害少年の保護活動、ヤング・テレホン・コーナー等の少年相談活動を推進している。
(5) 少年補導センター、防犯協会、母の会等の地域の非行防止組織の活動を促進している。
<第八章> 国際交流に関する施策
(1) 総務庁では、国際青年育成交流、日本・中国青年親善交流、日本・韓国青年親善交流、世界青年の船、東南アジア青年の船、アジア太平洋青年招へい、国際青年の村等の青年国際交流事業を行っている。
(2) 青年海外協力隊については、平成十一年十月末現在、六十一か国の開発途上国に、二千四百二十名の隊員が派遣されている。
(3) 留学生交流を推進するため、外国人留学生の受入体制の一層の整備を行うとともに、日本人学生の海外留学等に係る施策を進めている。
(4) 外国語教育の充実や地域レベルでの国際交流の推進を図るため、語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)において、平成十一年度には、世界三十七か国から約五千八百人の外国青年を招致している。
◇賃金の動き
十一月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は二十九万四千九円、前年同月比は一・〇%減であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万二千九百六十九円、前年同月比〇・二%増であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万四千二百五十二円、前年同月比〇・一%減、所定外給与は一万八千七百十七円、前年同月比は五・七%増であった。
また、特別に支払われた給与は一万一千四十円、前年同月比は二四・二%減であった。
実質賃金は、〇・四%増であった。
きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に金融・保険業一・三%増、電気・ガス・熱供給・水道業一・二%増、製造業〇・九%増、鉱業〇・八%増、運輸・通信業及びサービス業〇・七%増、建設業〇・四%減、卸売・小売業、飲食店一・二%減、不動産業三・〇%減であった。
◇労働時間の動き
十一月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百五十七・七時間、前年同月比〇・一%減であった。
総実労働時間のうち、所定内労働時間は百四十七・七時間、前年同月比〇・二%減、所定外労働時間は十・〇時間、前年同月比三・一%増、所定外労働時間の季節調整値は前月比一・一%増であった。
製造業の所定外労働時間は十三・三時間、前年同月比八・一%増、季節調整値の前月比は〇・三%減であった。
◇雇用の動き
十一月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・二%減、常用労働者のうち一般労働者では一・〇%減、パートタイム労働者では三・〇%増であった。
常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものは建設業二・四%増、サービス業一・七%増、電気・ガス・熱供給・水道業一・六%増、不動産業〇・二%増であった。前年同月を下回ったものは、運輸・通信業〇・七%減、卸売・小売業、飲食店一・四%減、金融・保険業一・九%減、製造業二・〇%減、鉱業三・〇%減であった。
主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・六%減、パートタイム労働者は三・二%増、卸売・小売業、飲食店では一般労働者四・三%減、パートタイム労働者三・五%増、サービス業では一般労働者一・四%増、パートタイム労働者二・三%増であった。
概 観
我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、収入が低迷していることから、足踏み状態となっており、年末にはボーナスが厳しかったことなどから減少した。住宅建設は、このところ好調に推移してきたマンションの着工が減少したことなどから、やや水準を下げている。設備投資は、減少基調が続いているが、一部に持ち直しの動きがみられる。公共投資は、事業の実施は前年を下回っているが、着工は、第二次補正予算などの効果もあり、このところやや水準を戻している。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。
在庫は、在庫率が前年水準を大幅に下回るなど、調整はおおむね終了しつつある。こうした中、生産は、緩やかに増加している。
雇用情勢は、残業時間や求人の増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
企業収益は、持ち直しの動きが続いている。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。
我が国経済は、民間需要の回復力が弱く、厳しい状況をなお脱していない。また、年末には需要がやや低迷した。しかし、各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響に加え、企業行動に前向きの動きもみられ、景気は、緩やかな改善が続いている。
政府は、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を築くため、経済新生対策を始めとする諸施策を推進する。
なお、一月二十八日に平成十二年度の実質経済成長率を一・〇%程度と見込んだ「平成十二年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」を閣議決定し、同日、八十四兆九千九百億円(前年度当初比三・八%増)の平成十二年度一般会計予算案を国会に提出した。
1 国内需要
―設備投資は、減少基調が続いているが、一部に 持ち直しの動きがみられる―
個人消費は、収入が低迷していることから、足踏み状態となっており、年末にはボーナスが厳しかったことなどから減少した。
家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で十一月二・九%減の後、十二月(速報値)は四・〇%減(季節調整済前月比三・九%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比四・七%減、勤労者以外の世帯では同二・五%減となった。形態別にみると、財、サービスともに減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比四・一%減、勤労者世帯では同五・〇%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で十一月〇・六%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で十一月二・九%減の後、十二月(速報値)は一・二%減(季節調整済前月比〇・四%増)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で十一月四・六%減の後、十二月(速報値)一・九%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で十一月八・二%減の後、十二月五・九%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で一月(速報値)は三・九%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で十二月は六・一%増となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、十二月は前年同月比で国内旅行が一・〇%減、海外旅行は一一・六%減となった。
当庁「消費動向調査」(十二月調査)によると、消費者態度指数(季節調整値)は、九月に前期差〇・三ポイント上昇の後、十二月には同一・四ポイントの上昇となった。
賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で十一月〇・一%増の後、十二月(速報)は二・九%減(事業所規模三十人以上では同二・八%減)となり、うち所定外給与は、十二月(速報)は同四・二%増(事業所規模三十人以上では同三・八%増)となった。実質賃金は、前年同月比で十一月一・五%増の後、十二月(速報)は一・六%減(事業所規模三十人以上では同一・六%減)となった。
住宅建設は、このところ好調に推移してきたマンションの着工が減少したことなどから、やや水準を下げている。
新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で十一月は四・四%増(前年同月比八・一%増)となった後、十二月は三・〇%減(前年同月比〇・八%減)の九万七千戸(年率百十六万戸)となった。十二月の着工床面積(季節調整値)は、前月比二・五%減(前年同月比三・七%増)となった。十二月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比四・四%増(前年同月比七・八%増)、貸家は同二・四%減(同八・九%減)、分譲住宅は同一六・二%減(同二・六%増)となっている。
設備投資は、減少基調が続いているが、一部に持ち直しの動きがみられる。
当庁「法人企業動向調査」(十一年十二月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、季節調整済前期比で十一年七〜九月期(実績)八・三%減(うち製造業一一・九%減、非製造業五・一%減)の後、十一年十〜十二月期(実績見込み)は二・七%増(同八・五%増、同一・一%減)となっている。年度計画では、前年比で十年度(実績)五・三%減(うち製造業六・三%減、非製造業四・八%減)の後、十一年度(計画)は七・二%減(同九・〇%減、同六・二%減)となっている。
なお、十一年七〜九月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で九・六%減(うち製造業二〇・二%減、非製造業三・四%減)となった。
先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で十一月は二・二%減(前年同月比一・八%減)の後、十二月は一六・一%増(同一四・七%増)となり、基調には全体として持ち直しの動きが見られる。
なお、十二年一〜三月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で一・六%減(前年同期比一・九%増)と見込まれている。
民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、このところやや増加しており、十二月は季節調整済前月比八・六%増(前年同月比一三・四%増)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比三・四%減(前年同月比二五・〇%増)、非製造業は同一一・六%増(同一一・二%増)となった。
公的需要関連指標をみると、公共投資は、事業の実施は前年を下回っているが、着工は、第二次補正予算などの効果もあり、このところやや水準を戻している。
公共工事着工総工事費は、前年同月比で十一月は一九・〇%減の後、十二月は九・五%増となった。公共工事請負金額は、前年同月比で十一月は二・五%減の後、十二月は一二・七%減となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で十一月一四・九%減の後、十二月は三一・九%減となった。
2 生産雇用
―生産は、緩やかに増加―
鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、在庫率が前年水準を大幅に下回るなど、調整はおおむね終了しつつある。こうした中、生産・出荷は、緩やかに増加している。
鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で十一月四・五%増の後、十二月(速報)は、一般機械、精密機械等が増加したものの、電気機械、輸送機械等が減少したことから、一・四%減となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で一月は電気機械、一般機械等により三・六%増の後、二月は輸送機械、化学等により〇・六%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で十一月四・〇%増の後、十二月(速報)は、資本財、生産財等が減少したことから、一・一%減となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で十一月〇・九%増の後、十二月(速報)は、化学、鉄鋼等が増加したものの、輸送機械、電気機械等が減少したことから、一・六%減となった。また、十二月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は九八・六と前月を〇・三ポイント上回った。
主な業種について最近の動きをみると、電気機械及び輸送機械では、生産は十二月は減少し、在庫は十二月は減少した。化学では、生産は十二月は減少し、在庫は十二月は増加した。
第三次産業の動向を通商産業省「第三次産業活動指数」(十一月調査、季節調整値)でみると、前月比で十月〇・七%減の後、十一月(速報)は、不動産業、電気・ガス・熱供給・水道業等が減少したものの、運輸・通信業、金融・保険業等が増加した結果、同〇・六%増となった。
雇用情勢は、残業時間や求人の増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、十一月〇・四九倍の後、十二月〇・四九倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、十一月〇・八八倍の後、十二月〇・九一倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、十一月は前年同月比〇・四%減(前年同月差十九万人減)の後、十二月は同〇・七%減(同三十七万人減)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、十一月前年同月比〇・二%減(季節調整済前月比〇・〇%)の後、十二月(速報)は同〇・二%減(同〇・〇%)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比一・四%減)、産業別には製造業では同二・一%減となった。十二月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差八万人増の三百十五万人、完全失業率(同)は、十一月四・五%の後、十二月四・六%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では十一月前年同月比八・九%増(季節調整済前月比〇・四%増)の後、十二月(速報)は同一〇・五%増(同一・六%増)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比九・六%増)。
企業の動向をみると、企業収益は、持ち直しの動きが続いている。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。
日本銀行「企業短期経済観測調査」(十二月調査)によると、大企業(全産業)では、経常利益は十一年度上期には前年同期比四・一%の増益の後、十一年度下期には同一九・八%の増益が見込まれている。産業別にみると、製造業では十一年度上期に前年同期比五・五%の減益の後、十一年度下期には同四九・七%の増益が見込まれている。また、非製造業では十一年度上期に前年同期比一三・六%の増益の後、十一年度下期には同〇・〇%で横ばいが見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では十一年度上期に三・三四%になった後、十一年度下期は三・九四%と見込まれている。また、非製造業では十一年度上期に二・三四%となった後、十一年度下期は二・二九%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。
また、中小企業の動向を同調査でみると、製造業では、経常利益は十一年度上期には前年同期比九八・五%の増益の後、十一年度下期には同四二・五%の増益が見込まれている。また、非製造業では、十一年度上期に前年同期比一四・六%の増益の後、十一年度下期には同一二・一%の増益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。
企業倒産の状況をみると、おおむね横ばいとなっている。
銀行取引停止処分者件数は、十二月は一千七十四件で前年同月比三九・七%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、卸売業で六五・六%の増加、建設業で五九・二%の増加となった。
3 国際収支
―輸出は、アジア向けを中心に、増加―
輸出は、アジア向けを中心に、増加している。
通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で十一月〇・二%減の後、十二月(速報)は〇・五%増(前年同月比九・八%増)となった。十二月の動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械、電気機器等が増加した。同じく地域別にみると、アメリカ、EU等が増加した。
輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で十一月一五・〇%増の後、十二月(速報)は一・三%減(前年同月比二〇・七%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(機械機器)、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。
通関収支差(季節調整値)は、十一月に六千五十六億円の黒字の後、十二月(速報)は七千七百七十二億円の黒字となった。
国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、緩やかに減少している。
十一月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、サービス収支の赤字幅が縮小したものの、貿易収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、五千百二十八億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が縮小したものの、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、九千八百二十七億円となった。投資収支(原数値)は、一兆四千四十一億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、一兆四千二百七十三億円の赤字となった。
一月末の外貨準備高は、前月比五十一億ドル増加して二千九百三十二億ドルとなった。
外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、一月は上旬に百五円台にまで下落した後、横ばいで推移したが、月末には百六円台まで下落した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、一月は中旬にかけて百九円台にまで下落したが、下旬にかけて百三円台にまで上昇した。
4 物価
―国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移―
国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。
一月の国内卸売物価は、食料用農畜水産物(鶏卵)等が下落したものの、電力・都市ガス・水道(大口電力)等が上昇したことから、前月比保合い(前年同月比〇・三%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで上昇したことから、円ベースでは前月比〇・八%の上昇(前年同月比四・八%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したことから、円ベースでは前月比一・〇%の上昇(前年同月比三・四%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・一%の上昇(前年同月比〇・五%の下落)となった。
企業向けサービス価格は、十二月は前年同月比〇・九%の下落(前月比〇・二%の下落)となった。
商品市況(月末対比)は化学等は下落したものの、繊維等の上昇により一月は上昇した。一月の動きを品目別にみると、カセイソーダ等は下落したものの、生糸等が上昇した。
消費者物価は、安定している。
全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で十一月〇・二%の下落の後、十二月は外食の上昇幅の拡大等により〇・一%の下落(前月比保合い、季節調整済前月比〇・一%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で十一月一・二%の下落の後、十二月は一昨年の生鮮食品の上昇の影響等により一・一%の下落(前月比〇・三%の下落、季節調整済前月比〇・二%の下落)となった。
東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で十二月〇・四%の下落の後、一月(中旬速報値)は、一般食料工業製品の下落幅の拡大等により〇・五%の下落(前月比〇・六%の下落、季節調整済前月比〇・一%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で十二月一・四%の下落の後、一月(中旬速報値)は昨年の生鮮食品の上昇の影響等により一・一%の下落(前月比〇・三%の下落、季節調整済前月比〇・一%の下落)となった。
5 金融財政
―株式相場は、月初に下落した後、月末にかけて上昇―
最近の金融情勢をみると、短期金利は、一月はやや低下した。長期金利は、一月は上旬から中旬にかけて横ばいで推移した後、やや低下した。株式相場は、一月は月初に下落した後、月末にかけて上昇した。M2+CDは、十二月は前年同月比二・六%増となった。
短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、一月は横ばいで推移した。二、三か月物は、一月はやや低下した。
公社債市場をみると、国債利回りは、一月は上旬から中旬にかけて横ばいで推移した後、やや低下した。
国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、十二月は短期は〇・〇〇四%ポイント低下し、長期は〇・一一五%ポイント上昇したことから、総合では前月比で〇・〇三〇%ポイント上昇し一・八二二%となった。
マネーサプライをみると、M2+CD(月中平均残高)は、十二月(速報)は前年同月比二・六%増となった。また、広義流動性は、十二月(速報)は同二・三%増となった。
企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、一月(速報)は前年同月比六・〇%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後二・四%減)となった。一月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、国内公募事業債の起債実績は四千五百億円(うち銀行起債分二千五百億円)となった。
以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。
株式市場をみると、日経平均株価は、一月は月初に下落した後、月末にかけて上昇した。
6 海外経済
―アメリカ、ユーロ圏、利上げ―
主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九九年七〜九月期前期比年率五・七%増の後、十〜十二月期は同五・八%増(暫定値)となった。個人消費は増加している。設備投資は七〜九月期の大幅増の反動もあり伸びが鈍化している。住宅投資は減少している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は十二月前月差三一・六万人増の後、一月は同三八・七万人増となった。失業率は一月四・〇%となった。物価は総じて安定している。十二月の消費者物価は前年同月比二・七%の上昇、十二月の生産者物価(完成財総合)は同三・〇%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。連邦準備制度は、二月二日に、公定歩合を〇・二五%ポイント引き上げ五・二五%、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を〇・二五%ポイント引き上げ五・七五%とし、今後の物価及び景気動向に対するリスク見通しをインフレ方向とした。一月の長期金利(三十年物国債)は、月前半は上昇したものの後半は低下し、月初と月末を比較するとやや低下した。株価(ダウ平均)は、月初に急落したもののその後は月半ばまで上昇した。しかし月後半は下落基調で推移し、月初と月末を比較すると下落した。
西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は改善している。フランス、イギリスでは、景気は拡大している。実質GDPは、ドイツ九九年七〜九月期前期比年率二・九%増、フランス同三・九%増、イギリスは十〜十二月期同三・三%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランス、イギリスでは増加している(鉱工業生産は、ドイツ十一月前月比〇・三%減、フランス十一月同一・六%増、イギリス十一月同〇・四%増)。失業率は、ドイツでは高水準ながらもこのところやや低下している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低下している(失業率は、ドイツ一月一〇・一%、フランス十二月一〇・六%、イギリス十二月四・〇%)。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランス、イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ二〇〇〇年一月前年同月比一・七%、フランス十二月同一・三%、イギリス十二月同一・八%)。欧州中央銀行は、二月三日、中期的な物価の安定に対するリスクを抑制するため、政策金利(主要オペレート)を〇・二五%ポイント引き上げ、三・二五%とした。
東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は増加している。韓国では、景気は拡大している。失業率は低下傾向にある。
国際金融市場の一月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、総じて上昇基調で推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)をみると、一月三十一日現在一〇八・七、十二月末比二・六%の増価となっている。内訳をみると、一月三十一日現在、対円では十二月末比五・二%増価、対ユーロでは同三・八%増価した。
国際商品市況の一月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬から中旬にかけ二一二ポイントまで急上昇した後、下旬は緩やかな下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、中旬に二十七ドル台まで急騰した後、下旬にかけてはやや下落した。
精神保健福祉士は、精神障害者の保健および福祉に関する専門的知識や技術をもって、精神病院その他の医療施設で精神障害の医療を受けている人、社会復帰に向けて施設を利用している人の相談に応じ、助言・指導などを行っています。平成十(一九九八)年四月に施行された精神保健福祉士法によって創設された資格です。
具体的な主な仕事は次のようなことです。@各種給付制度や税の減免措置などの経済的支援施策について、どのような選択肢を利用することが最も適しているかを提案するA退院後の住居や再就労の相談にのるB金銭の自己管理ができるように指導するC清掃、洗濯、買い物などを習慣づける訓練を手伝うD公共交通機関の利用に慣れるようにするE休業・休学・医療費確保の手続きを代行するなど。そのほかにも、多様な支援を行うことが求められます。
精神保健福祉士に関する詳しいことは、厚生省精神保健福祉課рO3―3503―1711(内)3059までお願いします。
(厚生省)
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