【菅総理冒頭発言】
本日、新しい大臣、あるいは新しい役割を従来の大臣にお願いを致しました。この目的は震災に対する復旧・復興を進めること、そして原子力発電所の事故の再発を防止する体制を作ること。この二つに目的は尽きております。復興大臣については松本龍さんにお願いをし、そして原子力事故担当大臣には細野豪志さんにお願いを致しました。
松本大臣は震災発生の時から防災大臣として最前線で指揮を執り、被災地に関しては最も良く理解をしている方でありまして、復旧から復興への継続性からも適任だと判断を致しました。また、細野大臣は原子力事故発生の時から総理大臣補佐官として原子力事故を担当し、東電との統合対策本部、現在の連絡室の事務局長を務めました。また、IAEAへの報告書の作成の責任者も務め、原子力行政の問題点を身に染みて感じている、そういう立場にあります。是非細野大臣に原子力事故再発防止の青写真を作る責任者を務めてもらいたいと、こういう趣旨で任命を致しました。
次に6月2日の民主党の代議士会において、私が震災と原子力事故対応に一定のめどが立った段階で、若い人に責任を引き継ぎたい、それまで責任を果たしたいと申し上げたところです。私としては第2次補正予算の成立、そして再生可能エネルギー促進法の成立、そして公債特例法の成立。これが一つのめどになると、このように考えております。
第2次補正予算では第1次補正予算に盛り込めなかった予算の中で、急ぐべきものを中心に盛り込んで参りたいと思います。例えば先日釜石に出掛けましたが、漁に出たいんだけれども氷の手当が付かない。製氷機や冷蔵庫といったものが流されて存在しない。こういうお話もありました。2次補正の中で、二重ローンにならないでこういったものが手当てできるようにということで、盛り込むことを指示を致しました。また、瓦礫の処理の中で、木質の瓦礫がかなり多く含まれております。これらを、例えば木質系の発電所などを作って、処理をしていく。そして将来はこの地域の林業を活性化させて、その間伐材などを使ってこのバイオマス発電を継続していく。こういった問題についても計画を立てる上での調査費を盛り込むように、指示を致しました。また子どもを守るという観点から、線量計を手当をする、あるいは通学路など除染を徹底してやっていく。こういったものにも2次補正できちんと手当をしていきたい。こうした形で2次補正をしっかりと立案し、成立をさせて参りたい。このように考えております。
また、原子力事故の再発防止にも、できる範囲でしっかりと取り組んで参りたいと思います。3月11日の事故発生から1週間、私は本当に心配で眠れない夜を過ごしました。率直に言って、今回のようなシビアな原子力事故に対する我が国の備えは極めて脆弱でありました。IAEAに提出した報告書でも、できるだけ率直に問題点を明らかにしてきたところであります。原子力事故の再発防止体制について、できるだけ早い段階で、せめて概略の青写真を示すようにしたい。この中心に細野原子力事故担当大臣に仕事を担っていただきたいと、このように考えております。私からは以上です。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、質疑に移ります。質問された方は、まず所属とお名前をおっしゃってから質問をお願いいたします。
それでは、どうぞ。
山口さん、どうぞ。
(記者)
NHKの山口です。総理は先ほど退陣の3条件を示されましたけれども、そうすると逆に言うと再生エネルギーですとか、公債特例法案が成立しなければ9月1日以降も総理を続投するという理解でよろしいでしょうか。
(菅総理)
先ほど申し上げましたように、6月2日の代議士会で私は震災や原子力事故に対する一定のめどがついた段階で、若い世代に責任を引き継ぎたい、それまではしっかり責任を果たしていきたいと申し上げました。その一定のめどということについて、先ほど申し上げましたように、一つは2次補正の成立、一つは公債特例法の成立、一つは再生可能な自然エネルギー促進法案の成立、この三つをもってこの一定のめどと、そのように考えるということを申し上げさせていただきました。まさにそのように考えているということです。
(内閣広報官)
相本さん、どうぞ。
(記者)
西日本新聞の相本です。総理は今3つ挙げられましたその内の一つ、エネルギー政策の見直しについて、強い意欲を示されておりますが、もし延命という批判が当たらないということであれば、総理の覚悟をお聞きしたいと思うんですが、今国会に提出されている法案の成立に野党の協力が得られず成立が出来ない場合は、そのエネルギー政策について国民に信を問うというふうなお考えはおありなんでしょうか。
(菅総理)
今回の東電、福島原発の事故を経験して、我が国のエネルギー政策をどのようにしていくべきか、これから本格的な議論を始めなければならないと思っております。私はすでに、従来のエネルギーの基本計画は現実に合わなくなっているということで、白紙からの見直しということを申し上げ、そして従来の化石燃料、原子力燃料に大きく依存してきたエネルギー政策を、再生可能エネルギーと省エネルギーという2つの柱を加えて、そちらの方向に進むべきだということを言って参りました。そういう方向性と、すでに法案を提出している自然エネルギーの促進法は、全く軌を一にするものでありますから、何としても私の内閣の責任で成立をさせたい、そのように考えております。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
田中さん、どうぞ。
(記者)
毎日新聞の田中です。総務政務官に浜田さんを起用された人事について伺います。浜田さん、自民党からの起用、離党なさいましたけれども、自民党からの起用ということで、野党、自民党を中心に野党がすでに猛烈な反発をしております。総理が先ほど示された三つの法案を成立させるにあたり、野党との協力関係が不可欠だと思うんですが、その条件を壊すような形になったことについて、民主党内でも冷ややかな空気が流れてる状況になっております。総理として浜田さんをどういうつもりで起用なさったのか、現在野党が反発しているこの状況をどういうふうに打開していこうと考えていらっしゃるか、それをお聞かせください。
(菅総理)
私は浜田議員が今のこの大震災を経験する中で、是非とも復旧・復興に自らの力を、是非そういう場面で自分の力を発揮して、そういった復旧や復興に貢献したいという、そういう思いを強く持っておられて、そういう中でそういった役割を担うということの思いの中で判断をされ、そのことが私のところにも伝わってきましたので、そういう趣旨であれば是非一緒に復旧・復興に携わっていただきたいということで、そういった位置付けをさせていただいたところであります。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
五十嵐さん、どうぞ。
(記者)
読売新聞の五十嵐です。細野大臣の起用について伺います。総理は先ほど原発事故の再発防止に向けた概略の青写真を示すようにしたいということですけれども、これも一定のめど、また総理の退陣の時期の新たな条件として加わるのでしょうか。また原発事故の再発、また原子力行政の見直しという大変なお仕事だと思うんですけれども、総理、常々おっしゃっているように、閣僚一人ではなかなか動かせないことが多いと思います。副大臣、政務官はじめ、細野大臣のサポート体制というものはお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
(菅総理)
3月11日の原子力事故の発生から、最もこの問題に取り組んできた中心の一人が細野さんだと、私自身もそういう立場で仕事をしていただいたので良く知っております。そして震災から3カ月余りが経過を致しましたが、いよいよこれからこういった事故の発生を防ぎ、万々が一にもこうした事故があった時に、的確な体制、あるいは対応ができるような体制が今のままでいいのかという、そういう議論が始まる時期にあります。そういった意味で、私はこの時点で原子力事故担当大臣をきちんと位置付けて、概略の青写真といったものを示すことが必要だと、このように考えました。そのことと私が申し上げた一定のめどということにわざわざ関連させるという、そういった意図を持って申し上げたわけではありません。
この原子力事故の問題は、本当に全ての日本人、あるいは全ての世界の人が心配をされておりますので、それに対する適切な対応、方向性を示すこと、もちろんこれはIAEAの中での議論とか、あるいは事故調査検証委員会での調査とか、いろいろな場がありますけれども、内閣の中でしっかりとその問題を受け止める、そういう体制を作らなければならないということで担当大臣を置いたわけであります。それに対する、さらに補佐をする副大臣、政務官といったものについても、大変閣僚や政務三役の人数が制約されている中でありますけれども、出来る限りそうした仕事が迅速に進むような体制になるよう、私もさらなる努力をしたいと、こう考えております。
(内閣広報官)
それでは、竹中さん、どうぞ。
(記者)
ロイター通信の竹中です。日中関係のことで一つお伺いします。この週末にアメリカと中国がハワイで高官同士、会談をやりまして、南シナ海における中国と周辺諸国の緊張などについて話し合いが行われております。また、先週日本では、宮城沖の排他的経済水域の中での中国調査船の調査がありまして、日本から中国への抗議が行われました。沖縄においてもやはり、中国海軍の活動、沖縄の周辺においても活動は活発になっているということです。こういった一連の動きについて、総理はどういったふうな受け止めをしていらっしゃいますでしょうか。そして長い交流があると同時に、経済、軍事大国でもある中国とこれからどういうふうに付き合っていくべきとお考えであるか。その辺り、お聞かせ願えますでしょうか。
(菅総理)
中国が、海洋へのいろいろな活動を強めているということは、十分に認識しております。そのことがどういう形で我が国なり、近隣諸国に影響していくのか。やはり大きな国は大きな国としての責任というものがありますので、そうした責任ある行動をとってもらいたい、そのように考えております。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
島田さん、どうぞ。
(記者)
フリーランスの島田と申します。よろしくお願いします。3・11の後に、日本の国民性、社会性というものにいろいろな変化が起こったと、いろいろな言論が増えております。菅総理の中で3・11後、哲学が変わったこと、またそれをどう国民に、菅総理の哲学を伝え、それを指導していこうと思っていらっしゃるのか。その辺のご自身のご意志をお伺いしたいと思います。
(菅総理)
私はこの3・11、地震、津波、そして原発事故、これを体験した多くの国民、あるいは全ての国民は、このことを自分の中でいろいろな形で考え、そして自分の行動の中にその経験をある意味で活かそうとしておられるんだと思っております。やはり何といっても、こういった大変な災害が生じたときに、家族やあるいは近隣の皆さんとの関係、あるいは会社や自治体や企業や、色々な人間と人間のつながりこそが、やはり最も頼りになる、あるいは自分たちが生きていく上で重要だということを、それぞれの立場で痛感をされていると、そのように感じております。そういったことをこれからの日本の再生に向けて、是非色々な形で活かしていきたいと考えております。
先日も「新しい公共」、鳩山前首相のときから取り組んできたこの中で、NPO等に対する寄付金の控除を大幅に拡大する法案が成立を致しました。こうしたことも、今回の大きな事故、失礼、大きな災害というものから立ち上がっていく上で、国の力あるいは税金による支援と言いましょうか、そういうものももちろん重要でありますけれども、やはり一人ひとりの人たちがその気持ちを持ち寄ってお互いを支え合う、そういうことがもっともっと拡大するように、そういった税制度についても一歩前進が出来たと、このように思っております。
あまり思い出話をしても恐縮ですが、私が1年生議員の頃にアメリカに出掛けて、コモンコーズとかコンシューマーズ・ユニオンとか多くの市民団体を訪れました。ほとんどの団体は100人、200人という、給料はそう高くないけれども、給料を払って雇っているスタッフがおりました。そのお金は、ほぼ全て寄付によるものでありました。私は日本に帰って来て、そういう寄付文化について、日本でももっと広げられないのか。市川房枝先生の選挙などはカンパとボランティアと言われておりましたけれども、しかし規模において、アメリカのそうしたNPO、市民団体の財政の大きさとは、もう桁違いに違っておりました。それから既に30年が経過致しましたけれども、今回のこの大震災の中で、そうした助け合いというものが、例えば今申し上げたような寄付という形で、そうした具体的な形が広がるとすれば、私は大きな進歩ではないかと、このように考えております。
(内閣広報官)
それでは、次の方どうぞ。
青山さん、どうぞ。
(記者)
日本テレビの青山です。先ほどの浜田参議院議員の件なんですけれども、そういう強い思いを持っていたから加えたというのでは、あまりにも、菅総理が今後、野党側の協力をどのように得ていくのか、法案を成立させていくのかという、その戦略というか考え方が分からないんですけれども、こういった参議院議員を一人ひとり切り崩して、ねじれ国会を解消していくという方向に道筋を付けようとしていらっしゃるのか、それともやはり野党側との法案協力の姿勢を導き出したいと思っていらっしゃるのか。それとも先ほど言った3つの条件の法案を通すために、私を辞めさせたいなら、その法案を通せというような、この前総理がおっしゃったような方法で迫っていくということを考えているのか、今この段階で総理はどのようにこの法案成立の道筋を付けていこうとお考えなんでしょうか。
(菅総理)
先ほどお答えしたのは、浜田議員が自らこの大震災に当たって、国際的にもいろいろなつながりがあると、そういうものを活かしていきたいという、そういうお話の中で行動されたということについて申し上げたところです。この大震災に当たっては、従来から党派と言いましょうか、そういうものを超えて協力をしていただきたい、あるいは協力をして欲しいということを、いろいろな機会に申し上げて参りました。例えば今回の基本法などでは、改めて自民、公明、民主で法案を出し直す形で協力の上での法案が成立したことは大変良かったと思っております。
また例えば、大臣や副大臣、政務官の数が大変制約をされておりまして、今回のこの復興本部の立ち上げにおいても、非常に、日常的な各省庁の仕事と、この震災復興のための、例えば現地に派遣する本部長の仕事と、もう少し政務三役に委任を、参加をさせてもらいたいと、こう思っているわけですけれども、まだこういった分野ではなかなか合意が得られておりません。いずれにしても、政党間の問題ではなくて、国民の皆さんにとって、あるいは被災地の皆さんにとって何が最も必要なのかと、こういう観点にお互い立つことが出来れば、私は多くの課題について前進が出来ると、このように考えております。
(内閣広報官)
それでは、次の方どうぞ。
坂尻さんどうぞ。
(記者)
朝日新聞の坂尻です。原発の再稼働問題についてお尋ねします。先日、経済産業大臣は、定期検査などで停止している原発、既存の原発について安全性が確認出来れば再稼働を容認するという方針を示されました。総理も安全が確認されれば原発の再稼働を容認するということで良いのかどうかということをお聞きしたいのと、この問題を巡っては、その経産省側が、この週末から各地に赴いて現地の県側の説得、説明というのを行っております。先ほど総理もおっしゃったように、これからこの延長国会でも内閣の重要課題としてこの原発問題を取り上げるということですが、そうであれば、経産大臣ではなくて、総理が自ら現地に赴いて説明されるということがあっても良いように思うんですが、その辺りはどのようにお考えですか。
(菅総理)
まず、今回の事故を受けて、原子力発電所の安全性ということが極めて重要だということは、これは全ての国民の共通した、私は理解だろうと、このように思っております。そういった意味では、定期点検中のものについてもしっかりと安全性を確認をすると、このことは当然行わなければなりません。その中で、私は、多少中長期的に見れば、ある時期、石油や天然ガスや石炭といった化石燃料をもう少し使うことが、少なくともある時期必要になるのではないかと、こういうふうに見ております。と言いますのは、再生可能な自然エネルギーは、現在は電力で言えば、水力を除けば全体の発電量の1%程度に留まっておりますので、すぐにそういったものが、化石燃料や原子力、従来の原子力エネルギーを代わって供給、それだけの量を供給するということは難しいわけでありますから、そういうどうしてもの時は、自家発電所なども総動員して、必要な電力量は賄っていくことが必要だろうと。現在、どの程度の自家発電所が存在し、どの程度のいわゆる化石燃料による火力発電所が稼働が可能かを、今調査をさせております。そういったことも併せて、先ほど申し上げました原子力発電所については安全性をきちんと確認した中で、それぞれ地域の皆さんも心配されているわけですから、しっかりと説明をして、安全が確認されたものについては稼働をさせていくということになると、こう考えております。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
岩上さんどうぞ。
(記者)
定期検査中の原発の再稼働のことについて、今総理からお話がありましたけれども、安全性が確認されたものから稼働させていく、再稼働させていくということでありますと、従来通り原発は維持ということで、総理のお考えはよろしいのでしょうか。再生可能エネルギー促進法案の成立に意欲を見せる菅総理のお考えとしては、原発の縮小、廃炉という方向性に舵を切るというお考えはないのでしょうか。原発の維持なのか、それとも廃炉に向かうのか、大まかな方向性、菅総理のお考えを示していただきたいと思います。よろしくお願いします。
(菅総理)
この安全性というものの考え方そのものが今問われているんだと思っています。従来も一定の基準があって、それの基準では安全だということで動いていたわけですが、それが結果において大きな事故に至ってしまったわけでありますから、安全性そのものが今問われているわけです。ですからそういった安全性をどのように確保するかというのは、従来の基準なり従来の考え方のままで良いということにならないというのは、これは当然だと思っております。
そういうところから入らないと、今のご質問のように、何かこう、先に、全ての結論を持って対応するというのは、今の私の立場からすればそうではなくて、安全性というものを徹底的に検証をしていくと。そこからスタートをすることが必要だろうと。と同時に、何度も申し上げておりますが、従来化石燃料と原子力燃料に、エネルギーに大きく依存してきた我が国のエネルギー政策を、方向としてはそれら、長期的には、それらの依存度を下げて、自然エネルギーや省エネルギーにもっとそれらに頼るような、そういう方向性は、私はとっていくことが必要だと、こう考えております。
(内閣広報官)
それでは、時間がきておりますので、これで総理会見を終了させていただきます。どうも大変ありがとうございました。