菅内閣総理大臣記者会見


平成23年4月1日(金)
  政府インターネットテレビ

【菅総理冒頭発言】

 今日で震災発生から、ちょうど3週間が経過をいたしました。先ほどの持回り閣議で、今回の震災について「東日本大震災」と呼ぶことを決定をいたしました。改めて犠牲になられた皆様、御家族に心からお悔やみを申し上げ、被災された皆さんにお見舞いを改めて申し上げたいと思います。また、支援に当たっておられる自治体関係者、自衛隊、消防、警察など、本当に身を賭しての活動をされていることに心から敬意を表し、また、そうした公務員を持っていることを、私は総理として誇りに思っているところであります。

 更には世界から多くの支援の申し出を受け、御支援いただいていることも、この場を借りて改めてお礼を申し上げたいと思います。

 さて、今日は4月1日、新年度がスタートをいたしました。今年度予算は既に一部の関連法案とともに成立をいたしております。しかし、この予算提案後に起きた「東日本大震災」を受けて、まず最優先すべきはこの震災に対して被災者の支援、更には復旧復興に向けての政策を最優先しなければなりません。そこで、成立した予算ではありますけれども、一部を執行停止して、そして、そうした大震災の被災者に充てるための補正予算の準備に入りたいと思っております。補正予算は復旧復興の段階に応じて何段階かで必要になると考えておりまして、まず第一弾としてはがれきの処理、仮設住宅、更には雇用の確保、そして産業復旧の準備、こうしたことを第一弾として準備をしてまいりたい。今月中には第1次補正の中身をかためて、国会に提出をしていきたいと考えております。

 次いで、いよいよ復興に向けての準備に入らなければなりません。復興は従来に戻すという復旧を超えて、素晴らしい東北を、素晴らしい日本をつくっていく。そういう大きな夢を持った復興計画を進めてまいりたいと思っております。この間、被災を受けられた自治体の市町村長の皆さんと電話などでいろいろと御意見を伺いました。そうした御意見も踏まえて、例えばこれからは山を削って高台に住むところを置き、そして海岸沿いに水産業、漁港などまでは通勤する。更には地域で植物、バイオマスを使った地域暖房を完備したエコタウンをつくる。そこで福祉都市としての性格も持たせる。そうした世界で1つのモデルになるような新たな町づくりを是非、目指してまいりたいと思っております。

 更に復興の中でも雇用の問題が重要であります。この地域はいろいろな部品の工場など、製造業もありますが、同時に農林漁業、特に漁業の盛んな地域であります。何としても1次産業を再生させていく、このことが重要だと考えております。

 こうした復興に向けて、その青写真を描くために、有識者や地元の関係者からなる「復興構想会議」を、震災1か月目となる今月11日までに立ち上げたいと、このように考えております。それとともに、この「復興構想会議」から出されるいろいろな提案や計画を、実行に移すための政府としての態勢づくりに入り、今月中にはその態勢もかためてまいりたいと、このように思っております。

 この復旧復興に関しては、野党の皆さんも積極的に協力を申し出ていただいておりますので、与野党超えて協力をして推し進める態勢をつくっていくことを考えており、また、そうなることを私としては切望をいたしております。

 次に、福島原発についてであります。この原子力事故に対しては3つの原則に立ってこれまでも取組み、これからも取り組んでまいります。

 その第一は、何よりも住民、国民の健康そして安全を最優先して事に当たる。このことであります。

 第二には、そこまでやらなくてもよかっただろうと言われるぐらいに、しっかりとリスクマネジメントをして対応していくということであります。

 そして第三には、あらゆる起こり得ることについてきちんとシナリオを予想し、それらに対してどういう状況が起きても、きちんと対処できるような態勢をつくっていくということであります。

 この3つの原則に立って現在、対応を進めているところであります。

 福島原発を安定状態に戻すため、現在2つの力を結集して対応を進めております。

 1つは言うまでもありません。政府、そして事業者である東京電力や関連企業、更には原子力委員会など、専門家の皆さん総力をあげ協力をして、この問題に取り組んでいただいている、あるいは取り組んでおります。

 もう一つは国際的な協力であります。特にアメリカの関係者は既に事故対策に本格的に加わっていただき、共同作業に入っていただいております。また、オバマ大統領も先日の電話対談で、改めて全面的な協力を約束いただきました。昨日来日されたサルコジ大統領は、原発先進国としてフランスの関係者による協力に加えて、G8、G20の議長として、そうした立場での協力を申し出ていただきました。

 更にIAEAも既に専門家を派遣いただいて、いろいろと対応をいただいております。この福島原発については、長期戦も覚悟して、必ず勝ち抜いていく。その覚悟をもって臨んでまいります。国民の皆様にもいろいろと御不便をおかけいたしますけれども、必ずこの問題に打ち勝って、安心できる体制に戻していくことをお約束いたしたいと思います。

 次に、この震災発生から3週間の中で、私は本当にある意味でこの悲惨な震災ではありますけれども、一方で、大変心を揺さぶられるような姿を今、見ております。それは日本の中で、そして世界の中で、私たち日本のこの危機に対して、連帯して取り組もうという、そういう機運が非常に高まっていることであります。

 国内でも、ややもすれば日本では人と人との絆が薄れてきたと言われてきましたけれども、今回の震災に関しては、自治体の皆さん、企業の皆さん、NPOの皆さん、そして個々人が自らの意思で何とか支援をしよう、協力をしよう、立ち上がっていただいております。私はこうした人々の絆が改めて強く結ばれ、その結び付きが広がっていることは、日本の新しいすばらしい未来を予感されるもの。必ずやすばらしい未来を勝ち取ることができると確信をいたしております。

 災害について多くの随筆を残した物理学者の寺田寅彦さんは、日本人を日本人らしくしたのは神代から今日まで根気よく続けられてきた災害教育だと、その随筆の中で述べておられます。

 私は、今回の「東日本大震災」を乗り越える中で、日本人が改めて絆を取り戻し、そしてすばらしい日本を再生することができると確認いたしております。そしてその中で私自身、そして私の内閣は、皆さんの先頭に立って全力を挙げて頑張り抜くことをお約束を申し上げて、この記者会見冒頭の発言とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。


【質疑応答】

(内閣広報官)
 それでは、質疑に移ります。質問される方は私の方から指名させていただきますが、所属と名前をおっしゃってからよろしくお願いいたします。それでは、どうぞ。
 青山さん、どうぞ。

(記者)
 日本テレビの青山です。
 福島第一原発の事故についてお伺いします。震災から3週間経って、周辺住民のみならず国民も大きな不安をいまだに抱いていると思うんですけれども、総理はこれまで予断を許さない状況と繰り返しおっしゃってきましたけれども、まずその現状認識と今後どういう対応や手段で事態を収拾させる考えなのか。また、最悪の事態を避けるためにどういうオプションを持っているかなどを具体的にお聞かせください。
 また、いつになれば事態が落ち着くと見ているのか、めどもしくは目標について、率直にお考えをお聞かせください。

(菅総理)
 まず、福島原発事故によって避難など大変御不自由をおかけしている皆さんにおわびを申し上げるとともに、いろいろな形で野菜など被害を受けておられる皆さんにもおわびを申し上げたいと思っております。
 現在の福島原子力発電所の状況についてでありますけれども、先ほど申し上げましたように、専門家の皆さんの力を総結集して、この安定化に取り組んでいるところであります。現在の段階で、まだ十分安定化したというところまでは立ち至っておりません。しかし、先ほども申し上げましたように、あらゆる状況にそなえての対応を準備しておりますので、必ずやそうした安定化にこぎつけることができると考えております。
 時期的なめどについては、今の時点で明確に言うことはまだできない状況にある。精いっぱい努力をしている状況にある。こういうことを申し上げておきます。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。
 では、五十嵐さん、どうぞ。

(記者)
読売新聞の五十嵐です。
 総理、復興についてもう少し具体的なことをお伺いしたいと思います。先ほど有識者や地元関係者による「復興構想会議」を設立されるということでしたけれども、政府の態勢としては、例えば閣僚による本部のようなものを考えてらっしゃるのか。その場合には復興担当相を置かれると思うんですけれども、具体的な人選に入っておられるのかお伺いしたいと思います。
 特に担当相については、自民党の谷垣総裁に入閣を要請されて拒否されたわけですけれども、改めて協力を要請する考えはおありでしょうか。
 また、中長期的な復興計画の作成というのが必要になってくると思うんですけれども、いつごろをめどに策定されるおつもりなのか。
 また、巨額になるということが確実な復興財源ですけれども、補正予算等の対応に加えまして、消費税とか、あるいは所得税とかの増税についても選択肢としてお考えでしょうか。
 多岐にわたって恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

(菅総理)
 先ほど申し上げましたように、がれき処理など、まずは被災者支援、復旧に向けての補正予算をつくりながら、復興に向けての準備を進めてまいりたいと思います。これも先ほど申し上げましたが、震災から1か月目となる今月11日をめどに、「復興構想会議」を立ち上げて、その中でどのような形で復興に臨んでいくのか。地元関係者を含め、有識者を含め、しっかりと議論をいただきたいと思っております。
 また同時に、そうした提案を受け止めて実行する体制について、どのような形にしていくかということも、この間、議論を進めていくことにいたしております。かつて後藤新平さんがこういうことをしたとか、ああいう例があるとか、あるいは阪神・淡路のように本部をつくってやったとか、いろいろな過去の例も私自身もお聞きいたしております。是非とも効率的で、そして対応力の高い態勢をつくっていきたい。このことはどのような形がふさわしいかをこれから並行的に検討してまいりたいと思っております。そういった中で復興担当相というものを置く、置かない、あるいはどういう形にする。これもおのずから決まってくることだと思っております。
 また、それに必要な財源についても、先ほど申し上げましたように、一部は今年度予算の一部凍結などを振り向ける部分もありますけれども、それだけで十分でないことは明らかでありますので、その財源の在り方についてもそういった「復興構想会議」、あるいは場合によっては与野党の協議の中で議論を進め、合意形成を図っていきたい。このように考えております。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。
 松浦さん、どうぞ。

(記者)
 共同通信の松浦です。
 19日に総理は、自民党の谷垣総裁に入閣を要請して拒否されたわけですけれども、今後も呼びかけを続けるお考えはあるかということと、今までの与野党対立の経緯を踏まえれば大連立はなかなか難しいかと思うんですが、どのような環境整備をなさるおつもりなのか。その2点をお願いできますでしょうか。

(菅総理)
 私が谷垣さんに電話を差し上げたことは事実ですけれども、是非お会いしてお話をしたいということを申し上げたわけでありまして、その内容について私の方からこの間、何を言ったかということを申し上げたことはありません。そういう中で、いずれにいたしましても、先ほども申し上げたように、この大震災に当たっては自由民主党始め各野党の皆さんも、この点についてはしっかり協力をするということを言っていただいておりますので、できればそうした皆さんの力を借りる、あるいは更に言えば、共に計画を立てていく。そういう形が生まれてくることを期待し、私としては切望いたしております。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。
 山口さん、どうぞ。

(記者)
 NHKの山口です。
 復興のための財源についてお伺いします。総理は予算の組み替えだけでは足らないとおっしゃいましたけれども、それでは赤字国債というものを視野に入れているのか。それとも、また増税というものを視野に入れているのか。その両方なのか。総理のお考えをお聞かせください。

(菅総理)
 これも今、申し上げたところですが、今年度予算が成立をしておりますが、一部の凍結ということも決めておりますけれども、それだけで勿論、復興資金として十分でないことは明らかだと思っております。そういう中で、どういう財源をもって充てていくかということ自身も、ある意味、「復興構想会議」の重要なテーマであると同時に、やはり与野党の協力あるいは合意がなければそうした予算なり関連法案を成立させることもできないわけでありますから、そういう中で議論をし、合意形成を図っていきたい。こう考えております。

(記者)
 総理のお考えはどうなんですか。

(菅総理)
 この段階で、まだそういう「復興構想会議」をこれからつくろうという、あるいは与野党で本格的な議論をこれから始めようというところで私がこれでいくと言うのは、やはりそういうことにとっては、まずはいろんな意見を聞くというのが今の私の姿勢です。

(内閣広報官)
 それでは、次に外国プレスの方から、関口さんどうぞ。

(記者)
 ダウジョーンズの関口と申します。
 今回の原発事故を受けて、対応に莫大な資金が必要とされる東京電力ですが、日本政府の公的資金投入や債務保証の可能性についてお話しください。

(菅総理)
 東京電力の事故によっていろいろな補償の義務が生じることは当然予想されます。また同時に、政府としても最終的にはそうした東京電力の第一義的な義務・責任を超える場合には、やはり政府としても責任を持って対応しなければならないと考えております。その上で現在、東京電力は民間事業者としてこの間、経営がされてきたわけでありますから、今、申し上げたような形で支援をすることは必要だと思っておりますけれども、基本的には民間事業者として頑張っていただきたい。このように思っております。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。
 坂尻さん、どうぞ。  

(記者)
 朝日新聞の坂尻です。
 原発問題に関して伺います。これまでの対応は自衛隊なり消防なり、かなり日本一国で解決を図ろうとする姿勢が強かったと思うんですが、総理が冒頭でも紹介されたように、ここ最近は国際社会の協力ということを強調されています。これは裏を返すと、国際社会の英知を集めなければならないほど事態は深刻になっているのかということを伺いたいのが1点。
 2点目は、先ほども質問がありました具体的なオプションなんですが、今、福島第一原発でやっていることは、とにかく冷却しなければいけない。真水を注入して冷却作業を続ける一方で、汚染水の処理も同時に進めなければならないという一進一退の攻防が続いているんですが、このオプションを当面続けなければならないのか。あるいは具体的にこれ以外のオプションというものが取り得るのかどうか。そこをお聞かせください。

(菅総理)
 まず国際社会との関係ですが、米国からは非常に早い段階からいろいろな提案をいただいておりまして、私が少なくとも受け止めているところで言えば、そういった申し出に対してほぼすべてといいますか、必要なものについてはすべて是非お願いするという姿勢で臨んでまいりました。現在、統合本部を中心にして事業者、原子力安全・保安院、あるいは原子力安全委員会も含めて連日、米国の専門家との間でいろいろな課題について協議をし、あるいはいろいろな準備をいたしております。そういう意味で当初から、特に米国に関しては、この対策に対して全面的な協力をいただき、共同して事に当たってきているところであります。加えて、先ほど申し上げたように、フランスやIAEA、更に多くの国から、この原子力事故に関しての協力要請もいただいておりまして、相当の協力をお願いいたしているところであります。
 それで、どういうオプションがあるのかということを言われましたけれども、これは基本的にはそれぞれ専門家集団が協議をする中で、対応を日々、スケジュールを立てて進めているところであります。私の理解をするところによれば、やはり冷却ということは極めて重要な、そして継続しなければならない一つの作業である。それに伴って現在、水の汚染とかいろいろなことが発生しておりますけれども、そうしたものに対してもきちんと対応しなければならない。こういう冷却が将来、冷却機能としてきちんと回復をする。そのところまでしっかりとつなげていくことがやはり一つのまず目標であろう。このように考えております。
 よろしいでしょうか。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。
 そちらの方、どうぞ。  

(記者)
 河北新報社の元柏と申します。
 被災者の生活再建についてお伺いします。今回の津波では、全財産を流されて避難なさっている方が大勢いらっしゃいますけれども、現行の生活再建支援法では、支給額は限定的で、また再び故郷に戻って生活を立て直して住居を構えるというのは、容易でないと思われます。政府内でも検討は進められていると思いますけれども、支援法の見直しや拡充についての総理の御認識と、今後も大きな課題になるであろう地域の雇用創出についての現在のお考えというのをお聞かせください。

(菅総理)
 仙台も含む宮城県、福島県、岩手県を始め、多くの東北の各県、あるいは一部関東各県の皆さんに本当に多大な被害が発生し、御苦労をいただいていることに、改めておわびを申し上げ、あるいは激励を申し上げたいと思います。
 今、生活再建について、それぞれの被災者に対する支援をどうするのか、更に増やすのかというような御質問だと思いますが、そのことについては、できるだけ十分な支援ができるよう努力していきたい、このように考えております。
 また、雇用については、まずはがれきの処理など、それぞれの自治体で生じるいろいろな作業について、場合によっては雇用という形で協力をいただき、そして産業基盤を再生させる。そうした中で新たな雇用あるいは旧来の雇用を回復する。そういったことが極めて重要だと、こう考えております。

(内閣広報官)
 それでは、七尾さん、どうぞ。

(記者)
 ニコニコ動画の七尾です。よろしくお願いします。
 福島原発におけます退避区域についていまだに問題となっておりまして、地元の方々を始め、国民が不安、不信に陥っております。
 昨日のサルコジ大統領との会談におかれまして、G8などで国際的な原発の安全基準について話し合うとの提案が出ましたが、こうしたことに加えまして、原発事故に伴う退避区域の世界安全基準を国際社会の場で改めてお決めになるお考えはありませんでしょうか。これにより国民も安心し、無用な風評被害を防止できるのではないでしょうか。

(菅総理)
 昨日、サルコジ大統領といろいろと意見交換をいたしました。その中で、原子炉、原子力発電所の安全性に関しての国際基準というものが、現在決まっていないという中で、そういったことをしっかり国際的な場で議論をして決めていこうではないかという話をいたしたところです。その中に避難区域に関しての共通的なルールまで含まれるか、含まれないかということまでは、議論いたしておりません。まずは炉の問題として、そういうものが必要だということを申し上げました。
 現在、我が国では、御承知のように、原子力安全委員会が政府に専門家としての助言をする。勿論そのベースには、いろいろなモニタリングなど、あるいはいろいろな原発におけるオペレーションなども考えて、専門家の知識を集めて助言をすると。そういう中で助言をいただいて、専門家の皆さんのある意味の提案を尊重する中で、その範囲を決めているというのが我が国の状況でありますから、それは日本としては、国民の皆さんにその基準を守っていただいておれば、健康に対しての被害が生じることはないという、そういうことでお願いをしているところであります。

(内閣広報官)
 それでは、次の方、どうぞ。
 では、後藤さん、どうぞ。

(記者)
 時事通信の後藤です。
 先ほど、総理は今年度予算の一部凍結について発表されましたけれども、凍結ではなくて、例えば撤回とか修正を考える歳出項目はございますでしょうか。特にマニフェストで掲げている子ども手当について、修正もしくは撤回されることはございますでしょうか。お聞かせください。

(菅総理)
 御承知のように、いろいろな国会での与野党の議論の中で、子ども手当についての今回、本来なら1万3,000円を3歳児までは2万円に引き上げるといった部分についての政府の案を国会に出していたわけですが、それを現在取り下げたところであります。
 そういうことを含めて、今後、子ども手当を含めて、どういう形でそれを継続する、あるいはどういう形にしていくかというのは、今後の勿論党内の議論も必要でありますけれども、現在のつなぎ法案の成立の過程を含めて、与野党の間でしっかり議論をして、合意形成を図っていきたいと、こう思っております。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。
 犬童さん、どうぞ。  

(記者)
 日本経済新聞の犬童です。
 原子力政策の大きな方向性について伺いたいんですが、昨日、サルコジ大統領は安全性の話をおっしゃって、厳しい基準をつくる必要があるということで議論されるということとともに、フランスでは原子力政策については前に進めていくというメッセージを発信されていたと思います。
 総理は、事故の検証を含めてお考えになるということでしたが、サルコジさんとの会談の前の志位さんとの会談では、各紙でエネルギー計画を見直すということだけが紹介されております。総理としては、原子力政策を前に進める方向で考えておられるのか、あるいは本当に脱原発ということで代替のエネルギーを考えているのか。大きな方向感としてはどちらなのでしょうか。

(菅総理)
 まず、現在、日本の原子力事故としては、勿論過去にない最大の事故を、現在招いておりますし、世界的に見ても、勿論もっと大きな事故もありましたけれども、最大級の事故が現在起きているわけですから、何をおいても、やはりこの問題がある程度安定した段階で、徹底的な検証というのが再スタートのまさにスタート点にならなければならない。これはだれもが同意されることではないでしょうか。
 ですから、そういう意味で、まず今回も、この問題が少し安定した段階から、徹底した検証を始めていく。その中でどういう安全性を確保すれば、我が国の中でこれからの国民の安心も含めて、確保できるのか。このことはその検証の中から明らかになってくるだろうと思っております。あらかじめこういう方向で行くというよりは、検証からスタートするということであります。エネルギー政策の見直しという表現がありますけれども、それはあくまで今できている原発の計画について、当然それが今回の検証の中で、十分な安全性を保ったものになるのかならないのかという、そういうことも検討する必要があるという意味で申し上げたわけでありまして、結論的にもう全部やめたとか、全部そのままやるとか、そういう意味で申し上げたわけではありません。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。畠山さん、どうぞ。

(記者)
 フリーランスの畠山理仁と申します。
 20〜30kmの範囲の屋内退避について伺います。IAEA、米国環境保護庁、フランス、欧州委員会の原子力事故に対する緊急事態対策マニュアルでは、木造建築物では外部被曝の低減はほとんど期待できないとなっています。また、吸入による内部被曝を低減する屋内退避についても、許容時間は48時間程度と制限しており、それ以降は事態の収拾により退避措置が解除されるか、避難が決定されるとしています。既に3週間が経ちますが、屋内退避圏には現在も2万人の方々が残っており、退避圏内であるがゆえに思うように物資も届かず、非常に不自由な暮らしをされています。それでもなお、内部被曝の低減も期待できない屋内退避が解除されない理由をお聞かせいただければと思います。

(菅総理)
 まず先ほども申し上げましたが、こうした避難あるいは退避の判断をする場合には、原子力安全委員会の助言を求め、勿論それ以外の皆さんのいろいろな意見もお聞きをしておりますけれども、基本的にはそうした助言を尊重しながら対応いたしております。現在、基本的には20kmまでで安全であるけれども、20〜30km圏は屋内にいていただく限りは大丈夫だという、そういう判断の下に、そうしたことをお願いいたしております。
 ただ、御指摘のように、安全性の問題と少し別な形で、生活をしていく上で、例えば物資の供給が20〜30kmの間について非常に困難であるとか、そういった問題が生じていること自体は、私たちも承知をいたしております。それに対して、それぞれの自治体なり対策本部の方で対応もいたしておりますけれども、その問題について、どのような形で対応すべきなのか。これは原子力安全委員会と同時に社会的な便宜がどうであるかということも含めて、地元自治体ともいろいろ意見交換をいたしている。それが現状です。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。松山さん、どうぞ。

(記者)
 フジテレビの松山です。
 被災地の復興についてお伺いしたいのですけれども、総理は先ほど、東北地方を新たな再生のモデルにしたいとおっしゃいましたけれども、そうした意味では今後の「復興構想会議」などにおいては、被害の激しい被災地について、沿岸部で特にひどい地域がありますけれども、そうした地域で一部土地の国有化や公有化なども念頭に入れていらっしゃるのでしょうか。また、福島第一原発の周辺についても長期戦の覚悟で必ず勝ち抜くとおっしゃいましたけれども、長期戦という以上はある程度の長いスパンでの避難ということを念頭に置かれていると思いますが、今後その10年、20年単位で一定区域を立入禁止区域にするなどの考えはおありでしょうか。

(菅総理)
 こういう大きな震災が起きた後によく有名な話は、後藤新平さんの首都の大改造と言いましょうか、そういうものを並行してやろうとされて、一部実現し、必ずしも構想されたところすべてはできなかったといったような歴史上の事実も私なりに少し読んだり、話を聞いたりいたしております。
 そういう意味で、先ほど申し上げたように、北陸のリアス式海岸において、過去においてもかなり大きな津波が来たところもありますし、今回はある意味初めて、それほどリアス式でないところまで高い津波が来ておりますので、そういうことを考えたときに、どういう土地利用の在り方がいいのか。これは地元の首長さんもそれぞれの方によって、いろいろな意見をお持ちの方があります。
 そういった意味で、まさに「復興構想会議」などにそういった土地利用の専門家にも加わっていただいて、どういう形であり得るのか。しっかりと検討し、地元あるいは土地所有者の皆さんとの合意も含めた中でなければ、こういうことはなかなか進みませんので、一つの検討の大きな課題だと、こう考えております。

(記者)
 原発周辺の立入禁止エリアの設定についてはいかがでしょうか。

(菅総理)
 これは何度も申し上げますように、現在はまだ非常に状況が渦中にありますので、まだその後のことまで申し上げるのは、少し今日の時点では早過ぎるのではないかと思っています。

(内閣広報官)
 それでは、時間が来ておりますので、最後の一問とさせていただきます。それでは、荒木さん、どうぞ。  

(記者)
 中国新聞の荒木と申します。
 今回の原発事故についてお伺いしますけれども、広島、長崎で経験した放射線の怖さというものが再び現実になって、非常に住民は不安を抱えているわけですが、原発の安全神話というものも今回の事故を機に崩れてしまった中で、先ほど総理は、まずは検証からとおっしゃったわけですが、原発を今後減らしていくという方向性は、総理としては持っていないということなのでしょうか。

(菅総理)
 先ほど申し上げたことに尽きますけれども、まず現時点で言えば、これだけの原子力発電所の大きな事故が起きているわけですありますから、これがある程度の安定した段階でしっかりした検証が必要だということに、この問題自体で言えば尽きるわけです。
 同時に多少申し上げれば、エネルギーの利用の在り方として、この間、CO2を発生しないエネルギー源ということで、勿論、太陽エネルギー、風力あるいはバイオマス等も大変重要でありますが、ある意味、原子力というものもCO2を発生しないという意味で、ある意味、見直されてきたところもあったと思います。そういうとも含めて、日本において、それではどういうエネルギーのバランスの供給を考えるのかということも、当然ながらこれまでも考えてきましたし、これからも考えなければならない問題だと思っております。ですから、そういう意味を含めて、すべては検証するところから始まっていくと、このように考えております。

(内閣広報官)
 それでは、これをもちまして、総理会見を終わります。御協力どうも大変ありがとうございました。