【鳩山総理冒頭発言】
本日は、国民の皆様に、日本国民全体の安全と生活に直接関わる御報告をさせていただくため、記者会見を開くことに致しました。
当初予定した記者会見の時間を大幅に繰り下げたことなど、御迷惑をお掛けいたしました。本日は、私の率直な思いを申し上げるとともに、むしろ出来るだけ多くのご質問をお受けしたいと思います。
先程、政府は、いわゆる普天間の基地問題と沖縄県民の負担軽減について、閣議決定を致しました。
まず冒頭に、昨年秋の政権交代以来、私がこの問題に取り組んできた思いを一言申し述べさせていただきたいと思います。
現在の日本は、歴史的に見て、大きな曲がり角に立っております。
内政・外交ともに、おそらくは数十年に一度の激動期に差し掛っております。沖縄における基地問題も、そうした視点で解決策を見出す努力が必要だと、私は考えました。
日本の国土のわずか0.6%の沖縄県に、駐留米軍基地の75%が集中するという偏った負担がございます。米軍駐留に伴う爆音とも言えるほどの騒音などの負担や、基地が密集市街地に近接することの危険などを、沖縄の皆様方に背負っていただいてきたからこそ、今日の日本の平和と繁栄があると言っても過言ではありません。しかし、多くの日本人が、日常の日々の生活の中で、沖縄の、あるいは基地の所在する自治体の負担をつい忘れがちになっているのではないでしょうか。
沖縄は、先の大戦においても、国内でほぼ唯一の、最大規模の地上戦を経験し、多くの犠牲を強いられることとなりました。ここでもまた、沖縄が、本土の安全のための防波堤となったのであります。
戦後は、27年間にわたるアメリカ統治下でのご苦労、さらに返還後も、基地の負担を一身に担ってきたご苦労を思えば、現在の基地問題を、沖縄に対する不当な差別であると考える沖縄県民の皆様方のお気持ちは、痛いほど分かります。
しかし、同時に、米軍基地の存在もまた、日本の安全保障上、なくてはならないものでございます。遠く数千キロも郷里を離れて、日本に駐留し、日本を含む極東の安全保障のために日々汗を流してくれている米国の若者たちが約5万人も存在することを、私たちは日々実感しているでしょうか。彼らの犠牲もまた、私たちは忘れてはならないと思います。
「沖縄を平和の島とし、我が国とアジア大陸、東南アジア、さらに広く太平洋圏諸国との経済的、文化的交流の新たな舞台とすることこそ、この地に尊い生命をささげられた多くの方々の霊を慰める道であり、われわれ国民の誓いでなければならない。」
これは1972年5月15日、沖縄復帰にあたっての政府の声明であります。この声明が発表された後、38年を超える年月を重ねました。私たちは、祖国復帰を果たした沖縄への「誓い」を十分に果たすことができているのでしょうか?
日米安保条約改定から50年の節目の年に当たって、半世紀余にわたる日米の信頼関係をより緊密なものにしていくためにも、またさらに申し上げれば、戦後初めての選挙による政権交代を成し遂げた、国民の大きな期待の元に誕生した新政権の責務として、大きな転換が図れないか、真剣に検討いたしました。
市街地のど真ん中に位置する普天間基地の危険をどうにかして少しでも除去できないか、加えて、沖縄県民の過重な負担や危険を、少しでも、一歩ずつでも具体的に軽減する方策がないものか、真剣に検討を重ねてまいりました。
そのために、普天間の代替施設を「県外」に移せないか、徳之島をはじめ全国の他の地域で沖縄の御負担を少しでも引き受けていただけないか、私なりに一生懸命努力をしてまいったつもりでございます。
他方、私が悩んだのは、アジア太平洋地域には依然として不安定な・不確実な要素が残っている現実でごさいます。さる3月の韓国哨戒艦の沈没事案に象徴的なように、最近における朝鮮半島情勢など、東アジア情勢は極めて緊迫しています。日米同盟が果たしている東アジアの安全保障における大きな役割を如何に考えるか。
当然のことながら、米国との間では、安全保障上の観点に留意しながら、沖縄の負担軽減と普天間の危険性の除去を最大限実現するためにギリギリの交渉を行ってまいりました。
そうした中で、日本国民の平和と安全の維持の観点から、さらには日米のみならず東アジア全域の平和と安全秩序の維持の観点から、海兵隊を含む在日米軍の抑止力についても、慎重な熟慮を加えた結果が、本日の閣議決定でございます。
確かに、私が当初思い描いていた、沖縄県民の負担や危険性の抜本的な軽減、あるいは除去に比較すれば、この閣議決定は、最初の一歩、あるいは、小さな半歩かもしれません。
しかし、私たちは、前進をしなければなりません。少しずつでも、日本の安全保障を確保しながら、沖縄の負担を軽減する方策を、探っていかなければなりません。
普天間の問題については、地元・連立・米国、この三者の理解を得て、それぞれがこれで行こうという気持ちになっていただくことをこの5月末に目指してまいりました。米国との間では、今朝、オバマ大統領と電話で話をし、今回の合意に関し、21世紀にふさわしい形で日米同盟を深化させることで一致をし、私からは、今後とも沖縄の負担軽減に日米で協力したい旨、強く、その意思を表明し、日米双方で更に努力することとなりました。
残念ながら、現時点において、もっとも大切な沖縄県民の皆様方の御理解を得られるには至っていないと思っております。
また連立のパートナーであり、社民党党首であります福島大臣にも残念ながらご理解をいただけませんでした。結果として、福島大臣を罷免せざるを得ない事態に立ち至りました。
こうした状況のもとで、本日、閣議決定に至ったことは、誠に申し訳ない思いで一杯でございます。また、検討を重ねる過程で、関係閣僚も含めた政府部内での議論が、沖縄県民の皆様方や徳之島の住民の皆様を始め、多大のご心配やご不安をあおる結果になったことも含め、ここにお詫びを申しあげます。
私は、現在の内外環境において、本日決定した政府案、この一歩がなければ、この先、基地周辺の住民の皆様方の危険性の除去や、県民の皆様方の負担の軽減のさらなる前進はかなわないと確信をいたしております。
この一歩をひとつの出発点に、今後も、粘り強く、基地問題の解決に取り組み続けることが、自分の使命であると考えております。
私は、これまで申し上げてきました三者の御理解が何とかいただけるよう今後も全力を尽くします。また沖縄の負担軽減のためには、全国の皆様の御理解と御協力が何よりも大切でございます。
国民の皆様、どうか、是非、沖縄の痛みをわが身のこととお考え願いたい。沖縄の負担軽減に、どうかご協力いただきたい。あらためて強くお願いを申し上げます。
本日、私は、この厳しい決断をいたしました。私は、今後も、この問題の全面的な解決に向けて、命がけで取り組んでまいらなければならないと思っています。
沖縄の皆様、国民の皆様、どうか、ご理解とご協力をお願いいたします。
引き続き、閣議決定の具体的内容と経緯を、簡潔に、ご説明申し上げます。
民主党自身も野党時代に県外、国外移設を主張してきたという経緯がある中で、政府は昨年9月の発足以来、普天間飛行場の代替施設に関する過去の日米合意について、見直し作業を実施をいたしました。
鳩山政権として県外の可能性を米国に投げかけることもなく、現行案に同意することにはどうしても納得できなかったのでございます。
こうしたことから、昨年12月、新たな代替施設を探すことを決めました。
その後の5ヶ月間、何とか県外に代替施設を見つけられないか、という強い思いの下、沖縄県内と県外を含め、40数か所の場所について、移設の可能性を探りました。
しかし、大きな問題は、海兵隊の一体運用の必要性でございました。沖縄の海兵隊は、一体となって活動します。この全体を一括りにして本土に移すという選択肢は、現実にはありえませんでした。ヘリ部隊を地上部隊などと切り離し、沖縄から遠く離れた場所に移設する、ということもかないませんでした。
比較的沖縄に近い鹿児島県の徳之島への移設についても検討しましたが、米側とのやり取りの結果、距離的に困難、との結論に至りました。
この間、徳之島の方々には、ご心配とご迷惑をおかけし、厳しい声も頂戴しました。大変申し訳なく思っています。
国外・県外は困難、との結論に至ってからは、沖縄県内の辺野古周辺、という選択肢を検討せざるをえませんでした。
自分の言葉を守れなかったこと、それ以上に、沖縄の皆様方を結果的に傷つけることになったことに対して、心よりお詫びを申し上げます。
しかし、それでも私が沖縄県内、それも辺野古にお願いせざるをえないと決めたのは、代替施設を決めない限り、普天間飛行場が返還されることはないからでございます。海兵隊8千人等のグアム移転や、嘉手納以南の米軍基地の返還も、代替施設が決まらないと動きません。
この現実の下で、危険性の除去と負担軽減を優先する。それが、今回の決定であることを、どうかご理解を願いたい。
新たな代替施設については、詳細な場所や工法などについて環境面や地元の皆様への影響などを考慮して計画をつくります。地元の方々との対話を心がけてまいります。
沖縄の方々、特に名護市の多くの方々が、とても受け入れられない、とお怒りになられることは、重々わかります。それでも、私は敢えて、お願いをせざるをえません。
今回の決定は、米軍基地をめぐる沖縄の現状を放置する、ということではありません。
まずは、沖縄で行われている米軍の訓練を県外に移し、沖縄の負担軽減と危険性の除去の実(じつ)をあげてまいります。
そのためには、他の自治体に米軍等の訓練受入れをお願いしなければなりません。昨日、全国の知事さん方にもお願いしました。今後もご理解を求めてまいります。
また、今回の日米合意では、徳之島の皆様にご協力をお願いすることも検討することといたしました。今後もよく話し合ってまいります。
最後に、今回の日米合意による新たな負担軽減策についてでございます。
今まで沖縄県から要望を受けながら、前政権の下では、米国と交渉さえしてこなかったものが含まれております。
県外への訓練移転のほか、沖縄本島の東方海域の米軍訓練区域について、漁業関係者の方々などが通過できるよう合意をしました。また、基地をめぐる環境の問題についても、新たな合意をめざして検討することにいたしました。今後はその具体化に力を尽くしてまいります。
以上ご説明を申し上げましたが、ここに至るまでの間、国民の皆さんや沖縄県民、関係者の皆様にご心配とご迷惑をおかけしたことは、私自身が一番よくわかっているつもりでございます。あらためて、今一度、心からお詫びを申し上げます。
そのうえで、国民の皆様に申し上げます。
政府は、私が示しました方針に基づき、普天間飛行場返還のための代替施設の建設と、沖縄の負担軽減策の充実に向けて、これから邁進してまいります。
今後とも、沖縄のみなさんとは、真摯に話し合わせていただきたい。沖縄県以外の自治体の方々にも、協力をお願いしてまいりたい。
国民の皆様方が心を一つにして、基地問題の解決に向けて知恵を出し合っていきたいと思います。
そして、どんなに時間がかかっても、自国の平和を主体的に守ることができる国に日本をつくっていきたい、と私は考えております。日米同盟の深化や東アジア共同体構想を含め、私たち日本人の英知を結集していこうではありませんか。沖縄の基地問題の真の解決も、その先にあると、私は思っております。
最後に、二点、基地問題以外の重要問題について申し述べます。
まず、韓国の哨戒艦沈没事案について、明日から韓国を訪問するに当たり、改めて犠牲になった方々、その御家族、韓国国民の皆さんに対し、心からお悔やみを申し上げます。北朝鮮の行動は許し難いものであり、国際社会とともに強く非難いたします。日韓首脳会談、日韓中サミットにおいて、しっかり議論してまいります。
また、宮崎県において発生をいたしました口蹄疫によって、大変ご苦労されている農家の皆様方に、心からお見舞い申し上げます。さらに、不眠不休で防疫対応に取り組んでおられる関係者の方々に、心から敬意を表します。政府として、やれることはすべてやります。
以上で私の話を終わります。ご清聴ありがとうございました。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、質疑に移ります。私の方から指名いたしますので、指名をされたら、所属と名前を明らかにしてから質問をしてください。質問は簡潔にお願いいたします。
それでは、質問のある方、挙手を願います。中村さん。
(記者)
毎日新聞の中村と申します。冒頭発言でも触れられていましたけれども、首相は繰り返し普天間問題をめぐって5月末決着とおっしゃってきました。しかし、今日の合意は、沖縄と社民党の合意がない不完全なものと言えます。これで月末決着と言えるのでしょうか。
もう一点。参院選は、普天間問題が大きなテーマになると思います。「誠に申し訳ない思いでいっぱい」という発言がありましたけれども、普天間問題に職を賭すと繰り返してきた自らの発言を踏まえて、参院選の結果次第では責任をとられるお考えはありますでしょうか。
(鳩山総理)
今、御質問をいただきましたように、5月末までに連立3党、そして沖縄の皆さん、更にはアメリカの理解をいただきたいと、そのように再三申し上げてきたことは事実であります。
アメリカの理解は得られたわけでございますが、残念ながら、沖縄県民の皆さん、最も重要な方々の御理解をいただくには至っておりません。このことに関しては、これからも粘り強く沖縄の皆様方に御理解を深めていただくために、精いっぱい努力をしてまいらなければならないと思っています。
また、連立与党の一員であります社民党の福島党首を今回罷免せざるを得ないということになりました。まさに慚愧(ざんき)に耐えない思いでございます。この連立3党の維持は、これからも努めてまいりたいと思っておりますし、社民党さんに対しても、私どもの政府の今回の決定を更に粘り強く御理解を求めてまいりたい。私どもとしては、このことにこれからも最善を尽くすしかない。そのように考えております。
そして、参議院選挙ということでございますが、まずは当然、その1つのテーマになることは間違いないかと思っておりますし、私どもとして、現在参議院選挙、まだそのことを十分に考えるいとまもないほどでございますが、しっかりと戦ってまいらなければなりません。
責任という話に関しては、今、ここでは全力を尽くして、国民の皆さんに民主党の、特に連立与党の考え方に御理解を深めていただくために、これからも最善を尽くすしかない。そのことによって、その責めを果たしてまいりたいと考えております。
(内閣広報官)
次の質問を受けます。緒方さん、どうぞ。
(記者)
TBSの緒方です。本日発表になりました日米共同声明では、辺野古の代替施設について、位置や工法などの検討を8月末までに完了させ、次回の2プラス2、日米安全保障協議員会で確認する段取りになっています。この2プラス2はいつごろまでに開くのでしょうか。
また、沖縄県や地元名護市の反発が根強い中、2014年までの移設完了をどのように進めていくのか。更に、全国の自治体が受け入れに消極的なアメリカ軍の訓練の分散移転の検討など、移設に関わる今後のスケジュールをどのようにお考えでしょうか。
(鳩山総理)
まず、このSCC、すなわち2プラス2を次回いつ開くのかということでございますが、これはまだ日程的には決まっているわけではありません。ただ、常識的に考えれば、オバマ大統領が来日をされる予定のAPECまでの間には、当然2プラス2は開かれるものだと、そのように理解をいたしております。
それから、2014年までの移設完了に関してでございますが、当然のことながら、一番大事な沖縄県民の皆様方の御理解を深めていくということでございます。そのためには、仲井眞知事を始め、あるいは名護市民の皆様方の御理解を深めていくということ、そのことに誠心誠意、心を尽くしてまいりたいと思っておりまして、私ども辺野古周辺に代替の施設を建設をするということを2プラス2でアメリカとの間で申し合わせたわけでございますので、その方向に向けて最善の努力を積み重ねていく、そのことで環境のアセスの問題もあるわけでございますが、できる限り2014年までに完了できるようなスケジュール感を持って進めてまいりたいと、そのように考えております。
それから、訓練の分散移転でございますが、これはそれぞれの、もう既に自治体に訓練のお願いを申し上げ、もう既に行っているところもございますが、更に新たな地域に対して、これから自治体の皆様方と協議をしていきながら、できるだけ早く訓練の分散を図ってまいりたいと思っております。
また、自治体によらずに訓練の分散を県外に、事実上県外に移設をするということもさまざま考えてまいりたいと思っておりまして、いろいろなやり方があろうかと思っておりまして、それを最大限駆使して、できる限り普天間の現在の危険性というものを早急に除去する手立てを講じてまいりたい、そのことが私は一番重要なことだと考えております。
(内閣広報官)
こちらの側、西山さん、どうぞ。
(記者)
朝日新聞の西山と申します。総理は政治主導を掲げて政権をスタートされたと思います。ですが、結局移設先が辺野古に戻ってきたという移設の経緯を見ますと、この経緯で閣僚間で移設先を巡る発言がばらばらになったり、例えばこれまで交渉に携わってきた官庁、外務省、防衛省といった、これまでの交渉の蓄積や経験といったものが十分に生かされたのかという疑問があります。
今回の移設先を巡る一連の経緯を振り返られまして、政治主導での政策決定、こういったものについて、あるいは官庁との関係について何か反省すべき点があると考えでしょうか。あるとすればどういった点だと思われますでしょうか。
(鳩山総理)
確かに政治主導ということで、官僚の皆様方にはさまざまな知恵、知識というものを提供していただきながら、最終的な判断というものを政治家が中心となって行ってまいるように、今日まで、これは普天間の問題だけではありませんが、さまざまなテーマにおいてそのような方向で努力をしてまいりました。必ずしもそのことがまだ8か月の中で、よちよち歩きだという思いも皆さん方は思っておられると思いますが、必ずしも試行錯誤の中で十分に機能してこなかった部分があろうかと思います。ある意味で、政治家たち片意地張り過ぎて、全部自分たちが考えるんだ、という発想の中で、必ずしも十分優秀な官僚たちの知識、知恵というものを提供せずに行動してきたきらいがあるいはあるかもしれません。
ただ、普天間の問題に関しては、私は必ずしもそのことがすべて当たっているとは思っておりませんで、防衛省、外務省の官僚の皆さん方のお知恵もいただいてまいったところでございます。
ただ、そこの中で、私が1点申し上げることができるとすれば、やはり、このような大人数で、しかもある意味で、必ずしもすぐに公表することができないような、さまざまな情報というものが、かなりその途中の段階で漏れてしまうということがございました。その原因は必ずしも定かではありませんが、そのことによって報道がされ、さまざま国民の皆さんに御迷惑をおかけしたということも現実にありました。いわゆる保秘というか、秘密を守るという義務が必ずしも十分に果たされてこなかったということは、ある意味で政治主導の中で難しい官僚の皆さん方の知識をいただきながら歩ませていくという中での難しさかな、とそのように考えております。
(内閣広報官)
それでは、次の質問を受けます。神保さん、どうぞ。
(記者)
ビデオニュースの神保です。総理、今、言われたことは非常に重要だと思いますので、少しフォローの質問をさせていただきます。
今回、非常に迷走を繰り返したという印象を多くの方、一般市民が受けたと思うんです。その理由が、いろんな案が出ては消え、出ては消えを繰り返したからではないかと、その原因を実はさっき聞こうと思っていたんですが、今、総理は、本来は出るべきではない情報がどうも外に出てしまったようだとおっしゃった。これは政府としては非常にゆゆしき事態だと思うんですが、それについては総理、何か今回、ただそう言われるだけではなくて、何らかの対策を打たれることはやらないんでしょうか。つまり、政府の守秘情報が交渉の途中でどんどん外に流れてしまうという状況があって、結果的に非常に迷走したような印象を与えたとすれば、その情報管理について問題があったということを、今、総理が言われたのではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
(鳩山総理)
情報管理に関して、今、先ほどの御質問にお答えしたように、やはり問題ないとは言えなかった。そのように思っております。事が米軍の施設ということでありますだけに、例えば地域が漏れるということになれば、そのことによって、結果としてある意味で好意的に思っていた方も、大きな流れの中で極めて厳しいお考えになってしまうということもあろうかと思います。その意味で、情報管理が極めて不徹底な部分があったと申し上げなければなりません。そして、そのことの原因、やはり政権交代の難しさかなと実は私は思っている部分があります。
余りこれ以上申し上げるべきところではありませんし、私自身の不徳のいたすところかもしれません。すなわち新政権に対して、本来、政府がすべて一致して協力していかなければならないところが、必ずしもそのような思いでないようなところから情報が漏れるということもあったのではないかと思っておりまして、もっとみんなを信頼させるというような度量の深さ、広さというものが私自身に、あるいは閣僚に求められているのだな。そのように感じております。
(内閣広報官)
それでは、次の質問を受けます。松井さん。
(記者)
時事通信の松井でございます。今回、福島大臣を罷免するに至ったその原因はどこにあったかとお考えかという点が1点。
あと、連立の3党合意について、解釈が民主党と社民党で食い違うという場面がたびたびあったかと思うんですけれども、それについては総理はどういうふうにごらんになっていたかという2点をお伺いしたいと思います。
(鳩山総理)
残念ながら、福島大臣を罷免せざるを得なかった原因ということでございます。福島党首におかれては、まず、いわゆる基地問題に対して、社民党さんは大変以前から基地というものの縮小、あるいは県外というよりも国外ということを強く主張してこられた政党でございます。今でもそのとおりであると思います。そして、その根本的な部分において、基地問題に対する考え方の違いというものがございました。そして、今回は沖縄県の辺野古ということが日米で合意されている以上、他のどのような文書が交わされるとしても、そのことは党として、あるいは福島大臣として署名することができないということになったわけでございます。
私どもはやはり、日米の合意が2プラス2でなされた以上、この政権の責任において、これを当然のことながら、しっかりと守らなければなりません。言うまでもない話でございますが、その中で、やはり署名がされ得ないということであれば、罷免せざるを得ないという状況になったわけでございます。
また、連立3党の中で、私は連立3党の、特にいわゆる普天間を始めとする米軍再編に関する食い違いが際立ったところがございましたが、連立3党も真剣に政権の樹立のときに合意をいたした文書がございます。そこには米軍再編は見直すということが書かれておったわけでありますが、その合意文書の中に、必ずしも県外・国外ということを規定したわけではありません。ただ、私自身の発言、あるいは民主党自体がかつてそのことを主張していたという事実がございました。
したがって、連立3党の合意の中には、そのような県外・国外ということは書かれておりませんでしたけれども、発言の重さということをとらえた中での考え方の近似性の中で、社民党さんとすれば、政権はそれを守るべきだと主張された。そこの最終的な中での食い違いというものが表面化をしたということと理解をいたしております。
(内閣広報官)
それでは、次の質問を受けます。藤田さん。
(記者)
日本経済新聞の藤田です。普天間移設期限の決着については、総理御自身が5月末と決定されたと思うんですけれども、まず、この5月末決着という期限の設定の根拠について聞きたいということ。
それから、現在、沖縄県民からも非常に厳しい声が多く出ております。裏切られたとか、信じられないという声が多く寄せられております。こうした地元が非常に受け入れ難い、受け入れにくい状況の中で、福島大臣を罷免してまで、あえて日米合意にこだわったということはどういうことなのか、お聞かせください。
(鳩山総理)
まず、5月末の根拠でございますが、これは昨年12月に私が、この12月末には結論を出すことは極めて危ないと判断をいたして、半年近く延期いたしたわけでございます。そのとき、なぜ5月かということでございますが、まず、普天間の危険性の除去という、沖縄の皆様方のお気持ちからしても、あまりこれを1年、2年延ばすということは極めて不誠実に映るに違いない。更にアメリカ側から見ても、これを1年、2年延ばすということは不誠実に映るに違いない。したがって、そのような1年、2年は延ばすことはできないという判断の中で、私は半年程度という思いで5月末といたしたところでございます。
その意味するところも、例えば最初の3か月は予算の時期がございますので、必ずしも十分、熟慮を加えるには政府として時間的に短いのではないかということ。また、ゴールデンウィークというときがありましただけに、5月にさまざまな働きかけができるのではないか、という考えがあったこと。更には、参議院選挙の前までにこの問題に決着がつかなければ、この問題が最大のイシューになる可能性があるということで、その前に、やはり政府としては結論を見出す必要があろうかということ。更に申し上げれば、知事選の前にこのことは申し上げておくことが責務ではないかと感じたからでございます。そのような意味で、5月末というものに私は申し上げたところでございます。
地元の受け入れ難い状況の中で、なぜ、日米合意というものを優先させたかということでございますが、これは1つは、やはり日米の信頼関係というものを維持することが私は最大の抑止力であり、このことが今回いろいろと、韓国と北朝鮮との間の衝突事案もあったわけでありますから、東アジアの安全のために大変大きな役割がある。したがって私どもとしては、半年の間にアメリカとの間での交渉は成立をさせるべきだと考えたからでございます。
地元の受け入れ難い状況は存じ上げておりますが、これは粘り強く、仲井眞知事、あるいは名護の市長さん、市議会の皆さん方と交渉して理解を深めていきたいと願っているところでございます。
(内閣広報官)
それでは、引き続き、外国プレスの方の質問を受けたいと思います。それでは、どうぞ。
(記者)
イタリアSky TG24のピオ・デミリアです。御存じのように、イタリアでも最近同じ問題がありました。市民たちは連携をして、市長たちを含んで、大変な反対運動をしています。私も辺野古に取材に行きました。そこでは今でも座り込む人たちがいると思いますけれども、この件に関してはどういうふうにアプローチをされるのか。
(鳩山総理)
辺野古の海を汚すなということで、おじいちゃんおばあちゃんも含めて、多くの方々が今でも反対運動をされていることはよくわかっております。私もその方々にお会いしたこともございます。大事なことは、そういった方々にも理解を求めていくことが必要であって、いわゆる強権的な方策というものは、私は基本的には取るべきではないと、そのように基本的に考えているところでございまして、大事なことは民主主義の国でありますから、対話を通じて、そういった方々にも御理解を深めていく努力をするということに尽きると思っております。
(内閣広報官)
では、次の質問。五十嵐さん。
(記者)
読売新聞の五十嵐です。連立の枠組みについてお伺いします。総理は先ほど、3党の連立の維持に努めるとおっしゃいましたけれども、福島大臣を罷免されても3党の枠組というのは、連立政権に変化はないということでしょうか。社民党の方は連立離脱を視野に対応を検討するということですけれども、総理の考えはどうでしょうか。更に社民党から新たに閣僚の入閣を要請するお考えはありますでしょうか。
(鳩山総理)
社民党さんは、30日に全国の幹事長の方々をお集めになって、会議を開かれるということでございました。社民党さんの中にもさまざまなお考えがおありになろうかと思いますので、そこで多分結論が出るのではないかと思っています。
私としては、先ほど福島大臣と30分程度お話をいたした中で、できれば連立の中でこれからも御協力を願いたいと。例えば今日まで、大臣としてなさっていただいた障害者の問題とか、消費者の問題あるいは自殺の問題など、これからも協力を願いたいと。しかも、派遣法とか郵政の法案があります。そういった法案、今まで一緒に行動していただいただけに、これからも御協力を願いたいということは、申し上げたところでございます。
そのことに関して、やはり党首という立場で罷免をされるということであれば、なかなかそう簡単ではないのではないかという、すなわち連立を維持するのは、そう簡単ではないかもしれないという話がございましたが、民主党としては、あるいは私としては、連立を維持していきたいと、そのようにこれからも努めてまいりたいと思います。
そういう意味で、社民党さんの方がお望みであるならば、新たな閣僚の中に入っていただくということも当然視野にあることだと思っておりますが、そのことに関しては、社民党さん御自身が30日に議論をされて、お決めになることではないかと思っております。私の考え方はお伝えを申し上げております。
(内閣広報官)
それでは、後ろの女性の方、どうぞ。
(記者)
週刊朝日の川村と申します。3つ質問をしたいと思います。
今回、県外移設について四十数か所の検討をなさったということですけれども、アメリカに了解が得られなかったという説明が先ほどありましたが、やはりだめだったということなんですが、今後、県外に移設できる可能性というのは、総理御自身どれぐらいあるとお考えでしょうか。
それから、自治体によらない訓練分散というお話を先ほどされていらっしゃいましたが、どういうところが具体的にあり得るのかイメージがわかないので教えてください。
(内閣広報官)
手短にお願いします。
(記者(川村))
それから、四十数か所の移設先について検討した際に、自治体の方には何もお話をされなかったのかどうか確認したいと思います。
(内閣広報官)
質問は簡潔にお願いします。
(記者(川村))
では、とりあえずそれでお願いします。
(鳩山総理)
まず、県外の可能性でありますが、これは私どもが最終的な閣議決定の文言の中にも、これからも基地負担の沖縄県外または国外への分散及び在日米軍基地の縮小、整理に引き続いて取組むということを約束いたしているところでございます。
したがって、可能性ということになれば、これからもさまざまな可能性を検討してまいりたいと思っておりまして、どのぐらいのパーセントがあるかということを申し上げるつもりはありませんし、すぐできるという話ではありません。この半年、そのことを求めてまいりましたが、結果として不調に終わったということでございます。しかし、これからも訓練の分散も含めた県外への移設ということを考えて、少しでも沖縄の県民の皆様方の御負担を減らすような努力が極めて必要ではないかと思っております。
訓練の分散のイメージでございますが、海兵隊のヘリ部隊と陸上の地上部隊との間の合同の訓練というものを県外のどこかの地域で行うというようなこととか、あるいは実弾射撃の訓練のようなものを今、行っているわけでありますが、それを更に沖縄県の外で行えるようにするとか、さまざまなことが考えられると思っています。
また、その中で、例えば海上自衛官の中で共同訓練をアメリカ軍と一緒にするというようなことなども、将来検討してもらいたいということを防衛大臣には申し上げているところでございます。
それから、自治体に関して、四十数か所の候補を考えたときにということでございますが、基本的には四十数か所の可能性は独自に政府として考えたものでありまして、自治体との間の調整というものは基本的には必ずしも行っておらないと理解しております。
(内閣広報官)
それでは、次の質問をお受けします。真ん中の滝本さん。
(記者)
琉球新報の滝本と申します。県外の施設についての可能性を探られたということについて確認したいんですけれども、どれだけ本気で、全力で取り組まれたのかという点について確認させていただきます。
先ほど首相は、海兵隊全体をひとくくりにして本土に移転するという選択肢は、現実的にはあり得ないとおっしゃられたんですけれども、それがなぜあり得なかったのかということについて、理由を詳しく説明いただきたいと思います。
と言いますのは、沖縄は狭いところで、県外の方がより広い面積があるわけで、その中で一括して移すことがなぜ不可能だったのかということなんですけれども、県外移設を検討するという気持ちがあれば、この間、全国知事会でお話しされたときには、訓練の分散移転ということでお願いしたわけですけれども、そういう場で、もっと早い時期に基地そのものの移転ということについての協力を求めるということはあり得なかったのか、そうすべきではなかったのかと思います。
沖縄の差別ということを言及されましたけれども、その気持ちについて御理解されているということですが、その気持ちがあるということについて、その実態についてはどのようにお考えでしょうか。沖縄差別という声が上がっているという実態について。
(鳩山総理)
まず、県外に対して、どこまで真剣に考えたのか、その中で例として、本来、沖縄の海兵隊を普天間だけではなくて、すべてを移設されることができればパッケージになるわけですから、それは十分沖縄以外でも可能だと、そのように私も思います。
ただ、現実問題として、そのような地域、すなわちそれは全くこれから可能性がないとは思っておりませんで、実はまだそのような可能性というものも将来的にはあるのではないかと、地域は申し上げられませんが、そういうことも検討する必要はあろうかと思っていますが、少なくとも今回の四十数か所の候補の中では、海兵隊丸ごとという発想ではなく、この普天間の海兵隊をどこに移設するか、県外にということで検討をいたしたというのが実情でございまして、これからの課題として、おっしゃるとおり、すべてがパッケージとして沖縄全体の海兵隊を移設する可能性というものが、もしどこかの地域で引き受けていただくことがあれば、当然それは大変大きな魅力を持つものだと思っていますが、今まで、申し訳ありません、十分に沖縄の海兵隊全体を移設するということを十分に、現実の自治体も含めて検討いたしてはおりません。
それから、差別という声があるということでございます。まさに私も今日の冒頭の言葉の中にも、そのことを申し上げたところでございまして、そのようなお声をちょうだいしてしまっているということは、私どもとしては申し訳ない思いでございます。決してそのような差別ということではなく、結果として沖縄の地政学的なある意味での有利性というか、アメリカ軍にとっての有利性という意味でありますが、その意味での沖縄が使われてしまった。そこに対して、今日まで他の自治体が十分に配慮してこなかった、特に政府が、それが当然のことだというふうに思ってきたことで、県民の皆さんの中に差別ではないかと思われるお気持ちが出てこられることも、私は当然のことだと考えております。これからそのような思いから、少しでもそうではないということをお示しするためにも、まずは沖縄の負担をさまざまな形で軽減させていただくようなことを種々行っていくことが大事ではないかと思っております。
(内閣広報官)
そこの外国の方、どうぞ。
(記者)
Financial Timesのミュア・ディッキーと申します。総理は、海兵隊の抑止の役割を強調しましたが、もう少し抑止の役割が説明いただけないでしょうか。特に、どうして沖縄に海兵隊が必要なんでしょうか。それと、基地があれば、その海兵隊が何ができると、そういう説明をいただけますか。
(鳩山総理)
抑止力の御説明ということでございます。私は、先ほども若干申し上げましたけれども、日本とアメリカが信頼関係の下で結ばれているということが最大の日本にとっても、また東アジア、アジア全体にとっても最大の抑止力の効果があると、すなわち、そのことによって、アジアの国々の平和が保たれるという意味で抑止効果があると思っております。
したがって、アメリカあるいはアメリカ軍がパッケージとして日本に存在をしていることの意味合いが大変大きいと思っております。その中で沖縄における海兵隊が、これは御案内かと思いますが、指令部と地上部隊あるいは航空の部隊、更には後方支援の部隊とさまざまあるわけでございまして、それ全体が1つになって行動している。機能を果たしているということで、これはアジア全体の海兵隊の存在が抑止効果を持つと、私はそのように考えておりまして、その一部をなかなか外して機能を、例えば遠い県外に移すということは、日本にとっても抑止効果が失われるという思いの下で、極めて難しいという判断がなされたところでございます。
(内閣広報官)
そこの奥の、大谷さん、どうぞ。
(記者)
NHKの大谷です。2点お伺いいたします。先ほど総理は、5月末日までに期限を設けたことの説明がありましたが、この期間は十分な期間だったかどうか。社民党などからは、時期にこだわらず、十分時間を掛けて検討すべきなどという声もありましたが、そういった声にどういうふうに考えているのか。一時総理は国会答弁の中で腹案があるということをおっしゃっていましたが、そもそも腹案というものは具体的にどういったものだったのでしょうか。
(鳩山総理)
今、2問いただきました。5月末までの期限というものが十分でなかったんではないかということでございます。確かに、例えば、いわゆる予算を審議している中で、3月があっという間に過ぎたと。残るは2か月だという中で十分な調査が行き届いていたかどうかということになるかと。もっと時間があればという思いがなかったわけではありません。ただ、この5月末というものを決める私なりの理由というものがあったわけで、すなわち先ほど申し上げましたような理由の下で、5月末にセットすべきだと、そのように考えたわけでありまして、その中での期限つきの中での結論を見出さざるを得ないということで行動してきたところでございます。十分であったかどうかということになれば、確かにもっと時間があれば、そういう意味では、より幅広い観点からの議論がなされた可能性はあると思っております。
また、腹案ということでございますが、これはかつての話ではありますが、沖縄等、そして徳之島に関してさまざま議論がなされていたところでありますが、そのところで機能を移転をするような形での腹案を有しているということで、具体的にはそれ以上申し上げるつもりはございませんし、現実にこのような形に収束をしてきたわけでございますが、私としては、細かいところまで決めていたというわけではありませんが、地域的なことに関して、このような考え方を持っているということで腹案ということを申し上げたところでございます。
(内閣広報官)
一番奥の列、先ほどの女性の横の、そこの女性。どうぞ。
(記者)
フリーの政治ジャーナリストの細川珠生と申します。私からは、総理の安全保障に関するお考えをお聞きしたいと思います。今回の普天間の基地問題については、基地の移転ということのみに議論が集中していたように思いますが、先ほど総理が記者会見でおっしゃったように、負担軽減を今後図っていかれる、また閣議決定の文章にありますように、在日米軍の整理縮小ということを確実に履行していくためには、日本の安全保障をどういう体制で行っていくのかという根本的な議論がどうしても避けられないというふうに考えます。
それと併せて、そのバックグラウンドとして憲法の問題というものに触れざるを得ないのではないかというふうに思います。総理は、今年1月2日の私のラジオ番組に御出演していただいたときに、憲法はまず党内で議論をしてというふうにおっしゃっていましたが、政府で安全保障の議論をなさるのであれば、憲法を党内で議論するということは、なかなかそれを確実性に結び付けていくのは難しいと思いますが、その辺りはどういうふうにお考えなのかをお聞かせいただければと思います。
(鳩山総理)
根本的な安全保障のお話をいただきました。まさに日本の安全保障をどうとらえるかということの先に、普天間の問題がとらえられなければならないと思っています。その意味するところ、すなわち、私も先ほどのお話の最後にちらっと申し上げたわけでございますが、私はこれは50年あるいは100年かかっても、日本という国の安全保障、すなわち平和というものは、日本人自身で守らなければならないと思っております。そういう状況をどのようにしてつくり上げていくかということ、すなわち、そのために現在、何をするかという発想が必要だと考えております。
私はその意味で、さまざま技術的な部分も含めてでございますが、自衛隊の自衛力も含めて、全体としての日本の安全をどのようにして日本自身が守れるような環境にしていくかということを今から考えていく必要があると思っております。そのことを行っていきながら、一方で米軍の基地の整理縮小というものがなされても、この国の平和が守られると。
現実まだ御案内のとおり、そのトータルの安全保障の議論が必ずしも新政権の中ででき上がっていないところではございますけれども、その議論がある意味では根本的に重要だと私は考えておりまして、そのことがなされて、初めて沖縄の負担を軽減させ得ることを、先ほどもちらっとではありますが、申し上げてきたところでございます。
そういった日本の安全保障をトータルで考えていく中で、日本の憲法をどのように変える必要があるのか。このままでよいのかという議論は当然、将来的にはなされていかなければならないことだと思っております。私は細川さんのラジオ番組の中で申し上げたことは、この安全保障も大事だけれども、私がやりたいのは地域主権だと。地域主権のことでも持論を申し上げれば、本来、憲法を変える必要があるのではないかということは申し上げました。
一方でこの政府の中で憲法の遵守規定がある。一方では今の憲法を守りながら、他方で政府として憲法改正を大々的に議論をする前に、やはり党として、それぞれの政党が、特に民主党なら民主党が憲法の議論をできるだけ早い時期にしっかりとまとめ上げていくことが大事ではないか。
そして、そのことで党の議論の中で政府に対して主張していくというプロセスを経る必要があるのではないかということで、そのようなことを申し上げたと思っておりますが、今でも基本的にその考えは変わっていないところでございます。
(内閣広報官)
予定された時間が過ぎております。最後の質問ということで御了承いただきたいと思います。真ん中の、そこの方。
(記者)
テレビ朝日の中丸と申します。総理が自らおっしゃった約束が現在守られなかったことで、国民の中には、総理の実行力に対して、非常に不安感が広がっています。これから総理が総理でい続ける場合、政権運営で非常にこれが問題になると思いますけれども、総理は失った国民の信頼をどのように回復していくように考えていらっしゃいますか。現在、総理は国民に何か約束できることはありますでしょうか。
(鳩山総理)
ありがとうございます。私自身の実行力というお尋ねがありました。まさに今回、私が大変慙愧(ざんき)に耐えない思いの下で、福島大臣を罷免せざるを得なかったということは、やはり日本の安全保障ということを考えたときに、すなわち国民の皆さんの命を大切にするということを考えていく中で、今回の日米の共同声明というものをしっかりと履行する責務が政府にあると、そのように考えたからでございまして、総理の実行力というものを必ずしも十分に示されていない。あるいはそのように思われても仕方がないところがあろうかと思いますが、1つ大事なことは、私は民主主義の新しい政治の中で、いわゆる熟議の民主主義といいますか、皆様方が真剣に、それぞれの民間の皆様方が議論をしていきながら、その議論をしていく中で、最終的にその議論の結果というものを政府がしっかりと把握をして実行に移していく。政治主導というのは国民主導でありますが、首相が何でもかんでも乗り出して、すべてを決めていくということよりも、むしろ、より議論に議論を重ねて、その間にさまざまないろいろな意見があることも認めていきながら、しかし、結論というものを見出したならば、それに対して高い実行力を示すということが大事ではないかと思っています。
そういう意味で、私は「新しい公共」ということを是非国民の皆さんにもっと御理解をいただきたいと思っておりまして、新しい時代にふさわしい、すなわち民の力を最大限引き出していく。そういう社会を今つくらんとしておるところでございまして、税制改革、すなわち細川政権のときからやろうとして、なかなかできなかった部分を大きく変えていくことが今回できたと思っておりますが、そういった税額控除の問題も含めて、民の力を最大限引き出していけるような新しい社会をつくり上げていきたい。そのことを国民の皆さんにしっかりと見ていただいたことによって、「新しい政権ができたな、変わってきたな」という実感を皆さん方が持っていただけるのではないかと、そのように確信しています。
(内閣広報官)
それでは、これをもちまして、記者会見を終了いたします。御協力ありがとうございました。