安倍内閣総理大臣記者会見
【安倍総理冒頭発言】
本日、臨時国会が閉会いたしました。この国会では、9,000億円余りの補正予算が成立しました。
本年は、大阪府北部地震、7月豪雨、台風21号、北海道胆振(いぶり)東部地震など、全国各地で大きな自然災害が相次ぎました。被災者の方々の一日も早い生活の再建、道路や河川、ため池の復旧を進め、農業者の皆さんの営農再開、中小・小規模事業者の皆さんの事業再建に向けた努力を後押ししてまいります。
北海道で起きた大停電によって、酪農を営む皆さんの生産活動に大きな支障を生じるなど、道民の皆様に大変な御苦労をおかけいたしました。電力や交通など、生活や産業活動に欠くことのできないインフラはいかなる災害が起きたとしてもしっかりと維持されるよう、万全を期してまいります。
防災・減災、国土強靱化のための集中対策を急がなければなりません。全国のインフラの総点検を既に終えたところであり、二次補正予算を編成し、直ちに今年度から対策をスタートする考えです。来年度予算の編成に当たっては、景気への懸念を払拭し、経済の回復基調を持続させ、さらには新しい成長軌道を生み出すために万全な対策を盛り込みます。
十二分の消費税対策を講じながら、来年10月からの幼児教育の無償化を実現いたします。未来を担う子供たちへしっかりと投資してまいります。
この国会では、EU(欧州連合)との経済連携協定も承認されました。来年にはTPP(環太平洋パートナーシップ)11も発効します。これは安全でおいしい日本の農産品にとって大きなチャンスです。先の日中首脳会談において、習近平主席と共に新潟のお米の中国への輸出解禁を歓迎いたしました。
70年ぶりとなる漁業法改正も行いました。今後、思い切った予算措置を講じ、浜の皆さんの未来に向けた取組を全力で応援していく考えです。
本年も、農林水産物の輸出は過去最高を上回るペースで増加しています。二次補正予算も活用し、農家の皆さんの世界への挑戦を力強く後押ししてまいります。
出入国管理法の改正案が成立しました。全国的な人手不足の中、優秀な外国人材の皆さんにもっと日本で活躍していただくためにこの制度は必要であります。直ちに、しっかりとした運用体制を構築してまいります。
今回の制度は移民政策ではないかという懸念について、私はいわゆる移民政策ではないと申し上げてきました。受け入れる人数には明確に上限を設けます。そして、期間を限定します。皆様が心配されているような、いわゆる移民政策ではありません。
現在、有効求人倍率は47全ての都道府県で1倍を超える中で、全国で多くの、特に地方において中小・小規模事業者の皆さんが深刻な人手不足に直面しています。この現実に向き合わなければなりません。中小・小規模事業者の皆さんは、設備投資などにより生産性向上に懸命に取り組んでおられます。こうした取組を行ってもなお、介護、農業、建設業など、特に人手不足が深刻な分野に限って就労の資格を設けます。即戦力となる外国人材を受け入れ、日本経済を支える一員となっていただく。そのために、日本人と同等の職場環境、賃金面での待遇はしっかりと確保していきたいと考えています。
同時に、健康保険などの適用については、不正があってはなりません。今後、厳格な対策を講じます。
出入国在留管理庁を新たに設置し、国民の皆さんの不安にしっかり応えられるよう、在留管理を徹底していきます。この国会における議論も十分に踏まえながら、技能実習制度を含め、今後、制度の運営に万全を期してまいります。
皇位継承が行われる5月1日を国民の祝日とすることを決定いたしました。来年は、平成のその先の時代に向かって、新しい日本を切り開く一年であります。
先日のアルゼンチンでのG20(金融世界経済に関する首脳会合)サミットでは、貿易をめぐる激しい議論が交わされました。グローバル化の急速な進展に対するさまざまな不安や不満に対して、公正なルールをしっかりと打ち立てることで、自由貿易を更に発展させていかなければなりません。国際社会には常にさまざまな課題がありますが、世界経済をリードするG20のリーダーたちには、率直な話し合いを通じて、その解決策を見出していく責任があります。半年後に我が国で初めて開催するG20サミットでは、そうした責任感のもとに、世界の課題についてリーダーたちとじっくりと話し合いたいと思います。
秋にはラグビーワールドカップ、そして、年が明ければ東京オリンピック・パラリンピックがいよいよ日本にやってきます。2025年、国際博覧会を大阪で開催することが決定されました。1964年の東京五輪、そして、70年の大阪万博が開かれ、日本が大きく生まれ変わったあの時代のように、私たちは再び、オリンピック・パラリンピックと万博の両方のビッグイベントを立て続けに経験できます。次の時代を担う子供たちのために新たな時代の日本を切り開いていく。引き続きその先頭に立つ決意です。
国民の皆様の御理解と御支援を賜りますように、よろしくお願いいたします。
私からは以上であります。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、皆様から御質問を頂きます。
質問は、所属とお名前を明らかにした上でお願いいたします。
それでは、幹事社の方から始めたいと思います。どうぞ。
(記者)
朝日新聞の田伏と申します。
先ほど言及がありました出入国管理法についてお伺いします。
この法案をめぐっては、内容の是非だけではなくて、内容が十分詰まっていないという声が与党にもありました。日々の国会運営は国会の判断ですが、今年6月の骨太方針で政府として来年4月の施行を目指すという方針を決め、それに沿った形となりました。拙速だという批判も相次ぐ中ですが、こうした国会のありようについて、総理はどのようにお考えでしょうか。
(安倍総理)
なぜ、私たちが今回、この国会で成立をさせなければならないということでみんなで頑張ったのかといえば、それは現在、有効求人倍率が47全ての都道府県で1倍を超えています。その中で、全国では、特に地方においては、中小・小規模事業者の皆さんは深刻な人手不足に直面をしています。人手がいないから仕事を受けることができない、あるいは場合によっては、もうなかなか人が集まらないからこの仕事は畳まなければならない、そう考え始めている人たちもいるわけでして、生産性の向上や国内人材の確保に手を尽くしてもなお人手不足が深刻な介護、農業、建設業などの分野に限って、即戦力となる外国人材を受け入れるものであります。これは待ったなしの喫緊の課題であり、政府として今回、改正法案を成立させ、来年4月から制度のスタートを目指しています。
そして、出入国管理や難民認定法は、入国、在留する外国人の動向や経済、社会情勢の変化に機敏に対応するため、在留資格に関する具体的な事項は法務省令等の下位法令に委ねることが多くなったわけでありますが、国会における御議論や、大島衆議院議長から御指摘を頂きました。そうした御指摘、議論を重く受け止めまして、年内に政府基本方針や分野別運用方針、そして、外国人の受け入れ、共生のための総合的対応策をお示しをするとともに、本改正法施行前には政省令事項を含む法制度の全体像を国会に報告をし、制度の全容をお示しいたします。
その上で、今後、新設する出入国在留管理庁の下で在留管理を徹底し、制度の運用に万全を期してまいる考えであります。
(内閣広報官)
それでは、幹事社の方、もう1問お受けします。 どうぞ。
(記者)
テレビ朝日の吉野と申します。
憲法改正についてお伺いいたします。安倍総理は臨時国会に自民党案を提示したいとおっしゃっていましたけれども、結果的に野党の審議出席が得られませんで、できませんでした。まず、これについての受け止めと、もう一つ、安倍総理は2020年に新しい憲法が施行される年にしたいと、このようにおっしゃっていたわけですけれども、この考えに変わりがないかどうかもお聞かせください。
(安倍総理)
私は、憲法改正について、国民的な議論を深めていくために一石を投じなければならないという思いで、2020年は新しい憲法が施行される年にしたいと申し上げましたが、今もその気持ちには変わりはありません。憲法審査会の運営については、野党の皆さんの対応を含め、政府としてはコメントを差し控えなければならないと思いますが、国民の皆様の判断に委ねたいと思います。憲法改正を最終的に決めるのは、主権者である国民の皆様であるからであります。まさに国会議員、私も総理大臣であると同時に一国会議員でもありますが、この憲法の課題については、最終的に決めるのは国民の皆様であるという認識を強く持つべきだろうとこう思っています。
つまり、国民の皆様が決める上においては、しっかりとこの議論を進めていくことが大切なのではないのかなとこんなように感じています。言わばそれぞれの政党が、憲法についてどういう考え、どういう改正案について考え方を持っているかということを開陳しなければ、国民の皆さんもやはりこの議論を深めようがないのではないのかなとこう思います。いずれにせよ、まずは具体的な改正案が示され、国民的な議論が深められることが肝要であります。そうした中から、与党、野党といった政治的な立場を超えて、できるだけ幅広い合意が得られることを期待しています。
その後のスケジュールは国会次第でありまして、予断を持つことはできないと考えています。
(内閣広報官)
それでは、これから、幹事社以外の皆様からの質問を頂きます。質問を御希望の方は手を挙げていただきたいと思います。私が指名いたしますので、所属とお名前を明らかにしてお願いいたします。
それでは、どうぞ。 それでは、白い水玉のお召し物の御婦人、どうぞ。
(記者)
AP通信の山口と申します。よろしくお願いします。
日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン氏の事件に関しましては、拘留中の2名のほか、日産自動車も法人として本日、金融商品取引法違反で起訴されました。日本を代表するグローバル企業のガバナンスが問われるこの事件について、総理はどのように御覧になっておられますでしょうか。
日仏関係を始め、国内外への影響なども含め、お聞かせください。よろしくお願いします。
(安倍総理)
まず、個別の刑事事件については、コメントは差し控えたいと思います。日仏産業協力の象徴である日産、ルノー、三菱のアライアンスについては、安定的な関係を維持していくことが重要と認識をしています。この点については、先般、アルゼンチンでフランスのマクロン大統領と首脳会談を行いましたが、マクロン大統領とも認識を共有することができました。しっかりとしたガバナンスのもとで、アライアンスの強化に向けた建設的な議論が当事者間で行えることを期待しています。
そして、ガバナンス改革について申し上げれば、ガバナンス改革は、我が国経済の持続的な成長のために重要と考えています。安倍内閣はこれまでグローバルスタンダードに沿って、コーポレートガバナンス改革を強力に進めてきました。我々はまさにコーポレートガバナンス改革を進めてきたのだと。それもグローバルスタンダードに合った形で進めてきたのだということを、まさに誤解がないように、世界に向けて申し上げたいと思うのですが、その結果、我が国の上場企業では、社外取締役が2名以上の企業が政権交代前は2割でありました。今、足元では9割以上に増加するなど、ガバナンス改革は着実に進んでいます。経済のグローバル化が急速に進む時代にあって、我が国としては引き続きコーポレートガバナンスを実効的なものとするための取組を進めてまいりたいとこう考えております。
また、日仏関係について言えば、私もマクロン大統領と今まで何回も首脳会談を行ってまいりましたが、その結果、現在、外交、経済、文化、そして安全保障、人と人との交流、また、国際場裏での協力等も含めても、相当幅広い協力、緊密な協力が進んでいると思います。こうした出来事によって、それが揺らぐことはないと確信をしています。
(内閣広報官)
それでは、もう1問だけ質問を頂きます。
じゃあ、重田さん。
(記者)
日本経済新聞の重田です。
政府は本日、中央省庁や自衛隊が使う通信機器の調達に関する指針を取りまとめまして、今後、調達の際に安全保障上のリスクを考慮するという方針を確認しました。米国は中国のファーウェイとの取引を禁じる措置を講じましたが、日本政府としてもサイバーセキュリティ上の観点から同社などの製品を排除するお考えはあるのでしょうか。
(安倍総理)
サイバーセキュリティを確保する上で、情報の摂取、破壊、情報システムの停止等、悪意のある機能が組み込まれた機器を調達しないようにすることが極めて重要であると認識をしています。そのため、政府におけるIT調達に係るサイバーセキュリティの一層の確保を図るため、関係省庁による申し合わせを行ったところです。
各府省庁において、特に防護すべきシステムと、その調達手段を定めたものでありまして、特定の企業や機器を排除することを目的としたものではありません。
(内閣広報官)
それでは、予定をしておりました時間になりましたので、以上をもちまして、安倍総理大臣によります記者会見を終わらせていただきます。
皆様の御協力に感謝申し上げます。ありがとうございました。
(安倍総理)
どうもありがとうございました。