平成30年沖縄全戦没者追悼式における内閣総理大臣挨拶
平成30年沖縄全戦没者追悼式が執り行われるに当たり、沖縄戦において、戦場に斃(たお)れた御霊(みたま)、戦禍に遭われ亡くなられた御霊に向かい、謹んで哀悼の誠を捧(ささ)げます。
先の大戦において、ここ沖縄は、苛烈を極めた地上戦の場となりました。20万人もの尊い命が無残にも奪われ、この地の誇る豊かな海と緑は破壊され、沖縄の地は焦土と化しました。多くの夢や希望を抱きながら斃れた若者たち、我が子の無事を願いながら息絶えた父や母、平和の礎(いしじ)に刻まれた全ての戦没者の無念を思うとき、胸の潰れる思いです。
今日、私たちが享受する平和と繁栄は、沖縄の人々の、筆舌に尽くしがたい困難と癒えることのない深い悲しみの上にある。そのことを深く噛(か)み締めながら、静かに頭(こうべ)を垂れたいと思います。
我が国は、戦後一貫して、平和を重んじる国として、ひたすらに歩んでまいりました。戦争の惨禍を二度と繰り返さない。この決然たる誓いを貫き、万人が心豊かに暮らせる世の中を実現する。そのことに不断の努力を重ねていくことを、改めて、御霊にお誓い申し上げます。
沖縄の方々には、永きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいております。この現状は、何としても変えていかなければなりません。政府として、基地負担を減らすため、一つ一つ、確実に、結果を出していく決意であります。
本年3月には、嘉手納(かでな)以南の西普天間住宅地区跡地の引渡しが実現し、跡地利用の取組が進んでおります。「できることは全て行う」。引き続き、この方針の下、沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしてまいります。
今、沖縄は、美しい自然、東アジアの中心に位置する地理的特性をいかし、飛躍的な発展を遂げています。昨年、沖縄県を訪れた観光客の数はハワイを上回りました。今や、沖縄は、かつての琉球の大交易時代に謳(うた)われたように、「万国津梁(しんりょう)」、世界の架け橋の地位を占めつつあります。アジアと日本をつなぐゲートウェイとして、沖縄が日本の発展を牽引(けんいん)する、そのことが現実のものとなってきたと実感しています。この流れを更に加速させるため、私が先頭に立って、沖縄の振興を前に進めてまいります。
結びに、この地に眠る御霊の安らかならんこと、御遺族の方々の御平安を、心からお祈りし、私の挨拶といたします。
平成三十年六月二十三日
内閣総理大臣 安倍晋三