中東訪問についての内外記者会見

平成30年5月1日
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【安倍総理冒頭発言】
 はじめに、アブドッラー国王陛下とヨルダン国民の皆さんの心温まる歓待に、感謝いたします。そして、先般の洪水で被害を被られた方々に、心からのお見舞いを申し上げます。
 今、シリア危機に端を発して、各地に難民が押し寄せています。そうした中にあって、ヨルダンは、寛大な心で大変多くのシリア難民を受け入れ、多大な貢献をしています。敬意を表する次第です。
 ヨルダンは、地域の安定に中核的な役割を果たしてきました。我が国にとって、中東における偉大なパートナーです。日本は、アブドッラー国王陛下が積み重ねておられる努力を支援してまいります。
 日本は、半世紀にわたり、経済開発支援、教育、医療、人道支援など、我が国ならではのやり方で、中東のあらゆる国々との友情を築いてまいりました。そして、何より、日本は、エネルギーの大半をこの地域に頼っています。中東なくして、国民生活は成り立ちません。
 今回、アラブ首長国連邦において、アブダビ海上油田の権益を更新することができました。日本が最大のパートナーであり続けます。ムハンマド皇太子に、心からの感謝を申し上げます。さらに、投資協定にも署名し、幅広い関係を更に発展させていく重要な機会となったと思います。
 今回の訪問には、メーカー、商社、金融、農作物輸出、中小企業などの企業や大学のトップに同行していただいています。官民が一体となって、日本の中東協力への意志を示すものであります。今後、中東地域において、エネルギーのみならず、あらゆる分野で投資が活発化することを期待しています。
 パレスチナの地では、平和の苗が実を結びつつあります。農産加工団地が発展を遂げています。10年前、日本が提唱し、ヨルダンと協力して、イスラエル、パレスチナと手を携え、進めてまいりました。
 オリーブから石けんをつくる事業が、パレスチナの人たちの手によって立ち上がり、ヨーロッパへと輸出されています。ここでつくられたジュースやミネラルウオーターが、店頭に並ぶようになりました。200人の雇用が生まれています。明日、訪問する予定です。
 経済的な自立によって、人々の暮らしが豊かになれば、永続的な平和につながっていく。私は、そう確信しています。日本は、協力を惜しまず、支援を続けていく。そのことを、アッバース大統領とネタニヤフ首相にお伝えしたいと思います。
 経済の繁栄こそが、平和の礎となる。長年の友人として、日本ならではのやり方で、中東の平和と安定に貢献してまいります。
 中東の平和と安定は、世界の平和と繁栄の源であります。そして、北東アジアの平和と安定もまた、世界が求めています。
 先般の南北会談における文在寅(ムン・ジェイン)大統領の努力を称賛したいと思います。朝鮮半島の完全な非核化に向けて、この機運を前に進め、北朝鮮の具体的な行動へとつなげていかなければなりません。
 そのために、日米、日米韓の強い結束の下に、さらには中国、ロシアなど国際社会との連携を更に強め、その実現に向け、全力を挙げてまいります。
 そして、我が国は、日朝平壌(ピョンヤン)宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルの諸懸案を包括的に解決し、北朝鮮との間で、その不幸な過去を清算して、国交を正常化する。この一貫した方針の下、取り組んでまいります。
 今月9日に、文在寅大統領と李克強(り・こくきょう)首相を日本にお迎えし、日中韓サミットを開催いたします。日中、日韓関係の今後の発展のために、あらゆる角度から議論を尽くします。
 文在寅大統領とは、米朝の首脳会談に向けて、連携を確認したいと思います。
 そして、この機会に、李克強首相が、中国の首相としては8年ぶりに、5月8日から11日まで公賓として訪日されます。日中平和友好条約締結40周年に当たる本年、李克強首相の訪日を契機に新たなスタートを切った日中関係を、更に深めてまいります。
 私からは、以上であります。

【質疑応答】
(共同通信 光山記者)
 地域情勢についてお尋ねします。今回、それぞれの訪問国との首脳会談では北朝鮮情勢をめぐる意見交換も行われましたけれども、北朝鮮の非核化や拉致問題の解決を、今後どのように進めていくお考えでしょうか。また、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、先日の南北首脳会談で、いつでも日本と対話を行う用意がある、とそう述べたと韓国側は発表していますが、日本政府としては今後、日朝首脳会談の早期実現も視野に、対応を検討していかれるお考えでしょうか。お聞かせください。

(安倍総理)
 先般行われた南北首脳会談が、朝鮮半島の完全な非核化に向けた重要な一歩と評価しています。この重要な一歩を、北朝鮮の具体的な行動につなげていくことが極めて重要であり、つなげていかなければなりません。
 北朝鮮が、核兵器やその他の大量破壊兵器、そして米国のみならず、日本も射程に入れた弾道ミサイルを含め、完全に、そして検証ができる形で、後戻りできない、すなわち不可逆的な形で、その方法によって廃棄できるよう、引き続き、圧力を維持していかなければならないことを、日米、日韓、さらには各国首脳に訴え、緊密な連携を確認しました。
 来週開催する日中韓のサミット、非常に重要なサミットになると思っています。文在寅大統領、そして李克強首相と正に腹を割って話し合いたいと考えています。どのようにすれば北朝鮮が正しい道を歩み、拉致、核、ミサイルの問題を包括的に解決し、明るい未来を描いていくことができるか、じっくり話し合いたいと思っています。
 こうした国際社会の連携をバックに、来るべき米朝首脳会談において、北朝鮮の行動がより具体的なものとして示され、今後の道筋がより明確になっていくことを期待したいと思います。
 我が国の方針は、先ほど冒頭の発言でも申し上げましたように、一貫しております。日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルの諸懸案を包括的に解決し、北朝鮮との間で、その不幸な過去を清算して、国交の正常化を目指していくということであります。
 今後とも、国際社会との連携を更に強化しながら、この目標に向けて、最大限の努力を積み重ねていく考えであります。

(国営ペトラ通信 ハライファート記者兼編集者)
 総理にお尋ねします。シリア危機、イスラエル・パレスチナ問題等、現下の中東情勢に対する日本の見方について教えてください。また、この地域において日本が果たせる役割とは何でしょうか。

(安倍総理)
 中東地域の平和と安定は、世界の平和と安定にとって、極めて重要であると考えています。中東地域の安定に向けて、日本も今までも積極的に関わってまいりましたが、これからも中東地域の平和と安定のために貢献していきたいと考えています。
 シリアにつきましては、シリアの内戦が継続して、そして多くのシリア人が難民、避難民として厳しい生活を強いられていることに心を痛めています。即時停戦と人道アクセスの改善を求めたいと思います。同時に、国連の下での政治プロセスを通じて問題が解決されるよう、日本は国際社会の努力を後押しするとともに、人道支援を行っていく考えであります。
 また、中東和平については、日本は、イスラエル及びパレスチナが平和に共存する二国間解決実現を通じた問題の解決を支持しています。今後とも、様々なレベルで双方に和平努力の働きかけを継続し、信頼醸成に取り組む考えであります。
 日本が、ヨルダン、イスラエル、パレスチナと10年以上にわたって取り組んでいる平和と繁栄の回廊構想は、ジェリコ農産加工団地でパレスチナ企業が12社稼働するなど、パレスチナの経済的自立に向けて着実な成果を上げています。地域協力を通じて、和平当事者の信頼醸成を促すすばらしい例であると、このように考えております。今晩、パレスチナを訪問し、アッバース大統領と会談を行い、そして明日、イスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と会談をする予定であります。その中においては、中東和平に向けての働きかけを行いたいと思いますし、この平和と繁栄の回廊構想を進めていくことによって信頼醸成を深めていく、そのための協力を更に訴えていきたいと考えています。
 日本は、長年、あらゆる中東の国々と良好な関係を築き、難民・人道支援、経済支援など、この地域の平和と安定に役割を果たしてまいりました。日本と中東諸国がエネルギー分野のみでつながる時代は過去のこと、と言っていいと思います。日本はエネルギーに加えて科学技術や教育等、幅広い協力関係を積極的に構築してまいります。今後とも、この、これまで培ってきた中東地域の国々との信頼関係をベースとして、誠実な対話の橋渡し役としての役割を担っていきたいと考えております。

(朝日新聞 高橋記者)
 内政について伺います。自民党は、憲法9条への自衛隊明記など4項目の改憲案をまとめましたが、野党は今の混乱する国会状況で改憲議論には応じられないとしています。どのように対応されますか。また、現在も2020年の改正憲法施行を目指していらっしゃるのか、改憲発議を来年の参院選の後にするお考えはないのかについても伺います。もう一点、野党は、文書改ざん問題で麻生財務大臣の辞任を求めていますが、調査終了後も麻生大臣を続投させるお考えでしょうか。お願いします。

(安倍総理)
 日本国憲法は、施行されてから70年以上が経過をしています。この間、世界の情勢も、人々の暮らしも大きく変わった、社会も大きく変化したと言ってもいいと思います。憲法は、国の形、そして理想の姿を示すものでありまして、私たちは、時代の節目にあって、正にどのような国づくりを進めていくのかという議論を深めるべきときに来ていると考えています。
 そこで、ちょうど1年前、私は自由民主党の総裁として一石を投じる気持ちで憲法改正について発言しました。言うまでもなく、現行憲法の平和主義を始めとした基本原則を変えるつもりは全くありません。
 その上で、我が国の独立と平和を守る自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打つことは、今を生きる政治家としての責務と考えています。この1年間で改憲議論は活発化したと思います。賛成反対を含め様々な議論がなされていると思います。
 自民党においても、本年の党の運動方針として、具体的な4項目について議論を重ね、憲法改正案を示し、憲法改正の実現を目指すこととしたところであります。細田本部長、そして根本事務総長の下、憲法改正議論がいよいよ煮詰まってきていると考えております。
 これはもう1年前とは大きく変化している。この70年間、あるいは、自民党が立党されてからの60年間も、言わば党の大きな目標として掲げながら、なかなか進んでこなかった、遅々として進まなかったのは事実でありますが、この1年間で相当、批判も含めて議論が深まってきた、また広がってきたと、こう考えています。
 正に憲法というのは、国会が発議し、そして最終的には、国民が国民投票によって決める、これが法律とは大きく違うことであります。そのためにはしっかりと国会で議論がなされ、理解が深まっていくことが大切だろうと思います。今後、憲法審査会において、建設的な議論が深まっていくこと、それぞれの見識によって議論が深まっていくことが期待されているところだろうと、このように思っております。そもそもこれはスケジュールありきではありません。まずはしっかりと議論が深まっていくことが大切であろうと思います。
 また、今般の決裁文書に関わる問題については、国民の皆様から厳しい目が向けられていることを真摯(しんし)に受け止め、麻生財務大臣の指揮の下、徹底的な調査を進めていくように指示をしてきており、できる限り速やかに結果をお示ししたいと思います。その上で、麻生財務大臣には、再発防止を徹底するとともに、組織を立て直してもらいたい、その責務をしっかり果たしていってもらいたいと考えています。

(ヨルダン・タイムズ紙 ガザール編集局長)
 総理の今回の訪問には、注目を集めた民間企業の経済ミッションが同行しています。総理、これらの企業が、戦略的立地を有するヨルダンに対し投資を促進するには、どのような取組が必要とお考えでしょうか。また、日本政府は、日本の民間企業による対ヨルダン投資を後押しするために、どのような取組を行っているのでしょうか。

(安倍総理)
 今回、日本から民間企業のCEOの皆さんたちに同行してもらいました。そして先ほどは、アブドッラー国王御臨席の下に、ワーキングランチを共にしたところでありまして、各企業の皆さんは、既にヨルダンに投資をしている、あるいはヨルダンで仕事をしてきた、あるいは大きな興味を抱いている皆さんであります。
 ヨルダンは、中東地域内外の各国と良好な関係を有しており、そして安定しています。また物流の、情報のハブとしてのポテンシャルを持っています。こうしたヨルダンの優位性に着目して、日本の代表的な企業がヨルダンの太陽光や火力発電等のインフラ・プロジェクトに投資しており、貿易額も増加傾向にあります。さらに今般、日・ヨルダンの投資協定に実質合意しました。これは、投資環境が非常に整ってきたと言っても、改善されてきたと言ってもいいと思います。日本の企業はそのように捉えています。伝統的な大企業だけではなくて、今回はスタートアップ企業のCEOも同行しておりまして、ヨルダンの企業との協力、あるいはヨルダンの優秀な人材を活用して事業を展開したいという気持ちも持っているわけでございます。
 今回の訪問によって、大切なことは、企業の皆さんが実際に自分の目で見て、ヨルダンの実際の姿を知ることだろうと思います。そういう意味においては、今回の訪問によって、更に日本企業の投資が増えていくことを期待したいと、このように考えております。

関連リンク

総理の演説・記者会見など