日本経済団体連合会審議員会

平成29年12月26日
挨拶する安倍総理 挨拶する安倍総理
挨拶する安倍総理

 平成29年12月26日、安倍総理は、都内で開催された日本経済団体連合会審議員会に出席しました。

 安倍総理は、挨拶で次のように述べました。

「実は、本日で、第二次安倍内閣が発足して、ちょうど5年目を迎えました。つまりアベノミクスは、本日で5周年であります。正に、その記念すべき日に、この、年に一度の経団連審議員会にお招きいただきまして大変うれしく思います。実際には全くの偶然だと思いますが、感謝申し上げたいと、このように思います。
 この5年間、経済最優先で取り組み、法人税改革やコーポレートガバナンス改革など、様々な改革に全力で取り組んでまいりました。その結果、今、日本経済は7四半期連続のプラス成長。ここまでの景気拡大は2001年1−3月期以来のことでありますから、今世紀になって初めてと言っても良いレベルだと思います。
 業況判断も、政権交代前のマイナスからプラスへと大きく転換し、先日発表された日銀短観では、大企業・製造業においては、リーマンショック前の2006年12月以来の高水準となっています。
 2006年12月というのは、自慢するわけではございませんが、第一次安倍政権のときであります。念のために申し上げておきたいと思いますが、振り返れば、あの頃も日本企業は過去最高の収益を上げていました。11年ぶりの好景気であります。
 ただ、中小企業も含めた全規模・全産業で見ると、実はもっと久しぶりで、バブル景気以来26年ぶりの好景気なんです。その意味するところは、現在は大企業だけでなく、中小企業の景況感も良い、ということ。これが2006年との大きな違いです。
 特に、サービス業など中小の非製造業では、長引くデフレの下で、バブル崩壊後20年以上、日銀短観はずっとマイナスでありました。しかし、アベノミクスの下でプラスに転じ、この3年近く、基本的にプラスで推移し続けています。
 つまり、現在の景気回復は、第一次安倍内閣のときと一見同じように見えて、総理大臣が同じでありますから同じようには見えるんですが、実質は大きく異なっています。大企業、製造業だけにとどまらず、景気回復のうねりが、中小企業や非製造業の皆さんにも広がっています。正に、アベノミクスが目指してきた経済の好循環が、この5年間で確実に生まれている。そのことの証左だと思います。
 雇用や賃金を見れば、2006年との違いはもっと明らかです。
 有効求人倍率は、2006年のときも、全体では1倍をわずかに超えていましたが、北海道は0.6倍程度、青森や高知、沖縄では0.4倍余りにとどまっていた。地方は厳しい状況でありました。しかし現在は、全国津々浦々、47全ての都道府県で1倍を超えています。ここまでの全国的な雇用情勢の改善は、高度成長期ですら見られなかったことです。こうした中、正社員の有効求人倍率は、2006年は0.6倍程度だったものが、現在は、統計開始以来初めて、1倍を超えています。
 賃金についても、連合の調査によれば、4年連続で2%程度の賃上げが実現しました。これも、2006年の頃を上回り、今世紀で最も高い水準の賃上げとなります。
 景気回復の結果、意欲ある人は誰でも働くことができる。そして、頑張った人の賃金が上がる。そのことで投資や消費が更に拡大し、中小・小規模事業者やサービス業の皆さんのところにも景気回復の温かい風が届き、次なる経済成長が生まれる。この経済の好循環こそが、アベノミクスによる景気回復の原動力であります。まず、この場をお借りして、5年間の雇用の拡大と賃上げに対する経団連の皆さんへの深甚なる感謝の気持ちを申し上げたいと思います。
 その上で、そろそろ勘の良い皆さんはお気付きのことと思いますが、いよいよ長年の懸案であるデフレ脱却を実現するためにも、来年、平成30年も、この経済の好循環を更に力強いものとしながら継続していかなければならない。そのために一つお願いをさせていただきたいと思います。毎年同じような話で、榊原会長、岩沙議長を始め、御列席の皆様方には、申し訳ない気持ちで一杯でありますが、是非、来春も力強い賃上げ、ずばり3%以上の賃上げをお願いしたいと、こう思う次第でございます。
 しーんとしてしまいましたが、当然、企業の皆さんが賃上げを行うためには、労働生産性を高めることが必要です。そのために政府としても生産性革命という新しい旗を掲げ、税制・予算・規制改革、あらゆる政策を総動員することとしました。
 人工知能、ビッグデータ、ロボット、IoT。こうしたイノベーションの積極的な投資がもたらすのは、単なる効率化や省力化にとどまらない。ビジネスモデルの大変革です。個人や企業の潜在ニーズに直接つながることで、これまで想像もしなかった革新的なビジネスやサービスが、今、世界中でどんどん生まれています。
 Society 5.0時代の全く新しい付加価値を創りだすことで、生産性を劇的に押し上げる。かつての産業革命にも匹敵する、この生産性革命を、2020年までに、我が国が世界に先駆けて実現する。そのための政策パッケージを、先般取りまとめました。従来の規制にとらわれることなく、革新的なアイデアで新たなビジネスに挑戦できるように、規制のサンドボックスを設けます。
 3%以上の賃上げを行う。そのために、しっかりと投資を行う。そうした企業には、法人税負担をOECD平均の25%まで引き下げます。更に、革新的な技術の導入に果敢に挑戦する企業には、20%まで引き下げます。最近は、米国の税制改革が話題です。ただ、連邦税が21%に下がっても、州の法人税もあるので合計で28%程度の負担となります。安倍内閣は、この5年間で法人税率を7%引き下げ、20%台を実現しました。その上で、更に、今回の生産性革命に向けた税制では、国・地方をあわせた法人税負担を一気に20%まで引き下げる。正に革命的な政策であります。 このために麻生財務大臣にも、正に清水の舞台から、一応パラシュートは付けて、降りていただきました。
 他方、恐らく、この中にはいらっしゃらないと思いますが、過去最高の収益を上げながら、設備や人材への投資に消極的な企業があれば、研究開発減税を始め、優遇措置をストップさせていただく。めりはりのつけ方も、革命的なものであります。
 今、求められているのは、攻めの経営です。守りたければ攻めるしかない、というのは、前人未到の永世七冠、羽生善治さんの言葉ですが、私も、本年はそのことを身をもって感じました。皆さんも、来年こそはデフレマインドから完全に決別し、このチャンスをいかして、大胆な生産性向上投資にチャレンジしていただきたいと思っています。
 来年は、働き方改革も、最大の政治テーマとなります。経団連の皆様の御協力も頂き、経済界・労働界双方の合意の下に、罰則付き長時間労働規制に初めて踏み出します。ワークライフバランスの確保は、それ自体、生産性革命の強力な武器でありますが、労働時間を短縮し、働き方改革を進めていくためにも、労働生産性の向上に向けた設備投資は必要です。来年は、積極果敢な投資と、働き方改革、そして3%以上の賃上げ。これらを三位一体で実現することによって、我が国における生産性革命元年にしたい。そう考えています。
 少子高齢化が急速に進む我が国において、生産性革命と同時に、人づくり革命を進めていく。日本人一人一人が持っている可能性を、最大限に開花させることができる。そうした社会づくりが、待ったなしであります。
 この大改革に挑むため、本年は、解散総選挙にも挑戦しました。国民の皆様から信任を得て、消費税の使い道を見直すとともに、経済界からも力強い御協力を頂いて、2兆円規模の恒久財源により、幼児教育の無償化を始め、子供たちの未来に大胆に投資していく方針を決定しました。皆様の御協力に対して、この場をお借りいたしまして、改めて感謝申し上げる次第でございます。
 来年の夏に向けては、さらに、雇用保険制度の活用によるリカレント教育の充実についても検討を進め、我が国の社会保障制度を全世代型へと大きく改革していく決意であります。
 今月は、EUとの経済連携協定も5年近い交渉の末に妥結しました。先月は、TPP11が閣僚間で大筋合意に至りました。自由で、公正なルールに基づく経済圏を世界へと広げていく。これは、質の高い製品・サービスを提供する日本企業にとって、大きなチャンスであります。
 日本に再びオリンピック・パラリンピックがやって来る、2020年を大きな目標としながら、我が国の経済社会を大きく改革していく。未来を見据えた新たな国づくりに向かって、本年は、大きな一歩を踏み出すことができたと考えています。年が明ければ、2018年。あと2年しかない。余り時間の余裕はありません。ですから、来年もひたすらに、改革、改革、そして改革あるのみであります。
 相場の格言では、申酉(さるとり)騒ぐ戌(いぬ)笑う、と言うそうであります。本年の酉年は、余り多くは語りませんが、私にとっても、本当に騒がしい1年でありました。来年の戌年は、どうか、日本中で笑いの絶えない1年であってほしい。そう願っています。実際に、来年の年末のこの審議員会が、本当に、笑顔で迎えることができるかどうか。それは、ここからの1年間、政府も、経済界も、どれだけ、果敢に改革に挑戦するかどうかにかかっている。私は、そう考えています。どうか、新年も、共に、頑張ってまいりましょう。戌笑う来年が皆様方にとりまして、すばらしい年となることを御祈念いたしまして、御挨拶とさせていただきたいと思います。本日は、御招待賜り、また、御清聴いただきましてありがとうございました。」

関連動画

動画が再生できない方はこちら(政府広報オンライン)

総理の一日